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国際医療福祉大学審査学位論文 ( 博士 ) 大学院医療福祉学研究科博士課程 中 高年者に対する運動習慣を目指した神楽体操の試行とその効果 平成 27 年度 保健医療学専攻 先進的ケア ネットワーク開発研究分野介護福祉学領域学籍番号 :13S3022 氏名 : 木下勝範指導教員 : 竹内孝仁教授

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国際医療福祉大学審査学位論文(博士)

大学院医療福祉学研究科博士課程

「中・高年者に対する運動習慣を目指した神楽体

操の試行とその効果」

平成 27 年度

保健医療学専攻・先進的ケア・ネットワーク開発研究分野

介護福祉学領域

学籍番号:13S3022 氏名:木下勝範

指導教員:竹内孝仁教授

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【題目】中・高年者に対する運動習慣を目指した神楽体操の試行とその効果 木下勝範 【要旨】 地域に根差した動きと音を用いて“神楽体操”を開発し,40 歳以上の中高年者 83 名を対 象に 3 ヶ月間で 6 回の神楽体操教室を実施して神楽体操の印象の質問紙調査を行い,その 後に 65 歳以上高齢者 215 名を対象に 5 ヶ月間で 10 回の神楽体操教室を実施して身体機能, 健康関連 QOL,運動習慣の効果検証を行った. 調査地域では,運動習慣保有者が 15‐30%と全国に比べ低かった.神楽体操参加者は「楽 しさ」「関心」「興味」を感じ,「体操継続希望」の印象を有していた.神楽体操の動きに音 楽の有無による 2 群比較では,「音楽あり」は痛みの軽減,活力,心の健康の QOL が向上 した.「音楽なし」は運動仲間の形成によって外出頻度や交流頻度に有意な増加を認めた. また体力測定は,後期高齢者の下肢機能のみに有意な向上を認めた.運動習慣は,男女と もに改善し,運動を継続していた. よって,地域に根差した動きに音を組み合わせることで一定の効果を得られることが示 唆された. 【キーワード】中・高年者,運動習慣,音

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Title: The Trial and Effect of Kagura Exercise Aiming to Get

Middle-Aged and Elder to Exercise Habits

Katsunori Kinoshita

ABSTRACT:We developed a “Kagura Exercise” employing the movement

and music rooted in the community. Then, we conducted six lessons of the

Kagura Exercise class with 83 middle-aged, over-40-years-old residents for

three months followed by the questionnaire survey. Also, we conducted ten

lessons with 215 residents aged over 65 followed by the verification of effects

on physical function, health-related QOL and the habituation of exercise.

In the study region, 15-30 % of residents were accustomed to perform

exercise. The participants of Kagura Exercise felt “enjoying”, “attractive” and

“interested”, and indicated that they “hope to continue” the Exercise.

The comparative analysis on two groups, one “with music” and the other

“without music” for Kagura Exercise movements,showed that the improved

QOL for the relief of pain, vitality, and mental health in the group “with

music”.The frequency of outing and that of interaction were significantly

increased by exercise partners in the group “without music”.Also physical

fitness test, showed a significantly improve lower extremity function in

elderly only in the.Males and females showed significant improvement of

exercise habits,continued to exercise.

Thus, that certain effect obtained by combining music that the movement,

rooted in the community.

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目 次

序章 背景と目的 1 節 背景……….……….….……….……1 2 節 研究目的..……….……….………4 3 節 先行研究レビュー ..………….……….……….………..4 1 項 中高年者の身体活動に関する論文 ....…….…….………4 2 項 中高年者の精神機能,QOL に関する論文….………5 3 項 運動習慣の向上や生活習慣の改善に関する論文…...……….……….6 4 項 音楽や体操に関する実践事例と要因分析に関する論文 ……….……7 4 節 本研究の枠組み………8 第 2 章 研究対象地域の健康意識の特性 1 節 本章の目的………..18 2 節 方法 1 項 調査対象と調査方法 1) 調査対象……….18 2) 調査対象地域の概況………19 3) 調査方法……….19 4) 質問紙など評価方法………19 5) 分析方法……….22 3 節 結果 1 項 対象の属性……….22 2 項 調査 1) 主観的健康感………22 2) IPAQ の結果………..………23

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3) SF36v2 の結果………..…….………24 4) SDS の結果………..……….……….26 5) 神楽の嗜好...26 4 節 考察………..27 第 3 章 神楽体操の開発 1 節 本章の目的……….31 2 節 開発手法 1 項 音曲選定と動作選定 1) 音曲選定..………..31 2) 動作選定………...32 3) 安全配慮………...32 3 節 開発した神楽体操の手法 1 項 動作内容 1) 体操手順………...33 2) 運動指導方法……….…...34 第 4 章 神楽体操の構成概念 1 節 本章の目的………...35 2 節 方法 1 項 調査対象と調査方法 1) 対象者………...36 2) 実施期間………...36 3) アンケート項目………...36 4) 運動指導方法………...37

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5) 分析方法………...38 3 節 結果 1 項 対象の属性………...38 2 項 アンケート調査結果 1) アンケート調査項目別回答人数………...39 2) 年齢階級と動機づけ………...40 3) 因子分析結果………...40 4) 共分散構造分析………...41 4 節 考察………...42 第 5 章 神楽体操の効果 第 1 節 本章の目的………...43 第 2 節 方法 1 項 対象者と研究デザイン 1) 研究デザイン………...44 2) 対象者………...44 3) プログラム (1) 実施期間,頻度………...44 (2) プログラムの概要………...45 4) 評価・測定項目………...46 5) 統計解析………...47 6) 倫理配慮………...48 第 3 節 結果 1 項 対象者属性………...48

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2 項 教室介入内容の違いが体力測定・健康関連 QOL に及ぼす影響について ………...49 3 項 教室介入内容と性別による参加人数の推移について ………...50 4 項 教室介入内容と性別による自宅運動実施率について ………...50 5 項 教室介入内容と性別による運動習慣の定着について ………...53 第 4 節 考察………....54 1 項 教室介入内容の違いが体力測定・健康関連 QOL に及ぼす影響の検討 ………...54 2 項 教室介入内容と性別による参加人数の推移の検討 ………...56 3 項 教室介入内容と性別による自宅運動実施率に関する検討 ………...57 4 項 教室介入内容と性別による運動習慣の定着に関する検討 ………...57 第 6 章 本研究の総括 第 1 節 結果の要約………...60 第 2 節 総合考察………...64 第 3 節 結論………...67 第 4 節 限界および今後の展望………...67 謝辞………...69 文献一覧………...71 資料一覧 資料 1 健康づくりアンケート………...83 資料 2 IPAQ 質問紙………...87 資料 3 SF36v2 質問紙………...94 資料 4 SDS 質問紙………...100 資料 5 神楽体操動作図………...101

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資料 6 体調管理票………...111

資料 7 体操カレンダー………..112

資料 8 老研式活動能力指標………..113

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序章 背景と目的 1 節 背景 平成 26 年 10 月時点においてわが国の人口は約 1 億 2708 万人で,65 歳以上の高齢者人 口は,過去最高の 3300 万人となり,高齢化率(総人口に占める割合)も 26.0%となった. 65 歳以上の高齢者人口を男女別にみると,男性は 1423 万人,女性は 1877 万人,75 歳以上 人口は 1592 万人で男性 612 万人,女性 979 万人であった. 一方で,高齢者人口の推移では,「団塊の世代 (昭和 22‐24 年生まれ)」が 65 歳以上と なる平成 27 年には 3395 万人となり,75 歳以上となる平成 37 年には 3657 万人に達すると 見込まれている.その後も高齢者人口は増加を続け,平成 54 年に 3878 万人でピークを迎 え,その後は減少に転じると推計されている.つまり,総人口が減少する 中,高齢者が増 加することによって高齢化率は上昇を続け,平成 47 年には 33.4%,3 人に 1 人が高齢者と なると推測されている 1) また,介護保険に関して,平成 12 年の第 1 号被保険者数は 2242 万人,要支援者 102.5 万人に対して,平成 24 年度末の第 1 号被保険者数は 3094 万人,要支援者 149.5 万人であ った 1).この状況について,要支援者のみ着目した場合に,第 1 号被保険者の増加率 138.0% に対して,要支援者数の増加率は 145.8%となり大きく上回っていた 2).これらを改善す る目的から,平成 18 年に介護保険改正によって「予防重視型システムへの転換」を図り, 「運動器の機能向上」「栄養改善」「閉じこもり予防」「口腔機能向上」「うつ・認知機 能」などの介護予防事業が創設され,虚弱高齢者を対象とした二次予防事業には高齢者人 口の 5%が参加することを目指して取り組んできた 3) しかし,近年のこれら二次予防事業の利用実績において参加率が 0.8%(平成 25 年度)と 低調なことが報告された 3).このような介護予防事業への参加の低さを改善するには,「可 能な限り,地域において自立した日常生活を営むことができるよう支援する」とした地域 支援事業の目的において健康行動を促進する地域づくりの視点による工夫がより一層求め られている 5)

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また,これらの健康・地域づくりの観点の 1 つに高齢者に対する支援だけでなく,中年 期からの生活習慣の改善が課題として挙げられており,効果的かつ効率的な身体活動や運 動支援の方法が模索されている 6).それらの 1 つとして,運動習慣のある者の方が,より 健康的な生活習慣であったとされ 7),主観的健康感が高いことが報告されている8) さらに,運動習慣のある者の割合は,男性 33.8%,女性 27.2%であり,男女ともに 30 歳台で最も低かった一方で,男性では 70 歳以上,女性では 60 歳台が最も高く,それぞれ 44.9%,43.1%であったことが報告されている 9).これらから,年齢が低いほど運動習慣が 見られず,年齢が高くなるにつれて運動している傾向が示され,運動習慣を獲得 できてい ない中高年者に対する運動習慣の改善を目的とした介入が改めて重要であると考えられる. しかし,一方的に生活習慣の改善を促すことは,個人の嗜好や生活歴,文化,歴史,宗 教,経済,教育,気候や風土などの個人を取り巻く背景の多様性を損なう危険性があり, 長年慣れ親しんだ生活習慣の変更に伴う苦痛やストレスが大きくなると指摘されている 10).この多様な背景とストレスの危険性も一要因となり,介護予防や健康づくり教室にお ける参加率や継続率の低さが報告される一方で 3),運動や音楽を用いた教室参加者は「運 動してすっきりした気分になった」「他人との緊張が少なくなった」「馴染みのある歌の替 え歌は面白かった」など精神的な気分に有意な変化が生じていることがわかった 11).これ らは,社会‐文化的な背景 12,13),楽しさや運動中の音楽が重要であったことを示している 14,15) また,種田 16)は「国民は楽しく無理なく目標を達成でき,継続しやすい健康づくり活動 を求めている.このような健康づくり活動を全国各地で実施するには,健康行動を起こし たくなるような仕掛けをあらゆる場に配置し,その仕掛けから出てくる情報とサービスを すべてのチャンネルを通じて広く住民に伝達・ 提供することである」と述べている.この ように運動を実施する際に,音楽の付加的な要素を活用することは,身体的効果や気分の 改善など心理的効果が得られやすいと考えられる. しかし,使用する音楽はさまざまであるが,世代間を通じた音楽による検討はなく,さ

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らに運動や音楽の効果はそれぞれで検討されており,介護予防教室や健康づくり教室に地 元の文化や音楽を用いた体操の報告は散見される程度であった 17).また,教室参加者の運 動の効果および Quality of life(以下,QOL)を測定した研究は数多く報告されていたが,地 元の文化や音楽を用いた運動教室終了後の運動 の継続状況および教室参加率に関して調査 した報告は少なかった 18) これらの地元の音楽を用いた文化として 19,20),神楽が盛んに行われており,週末には 多くの場所で芸能伝統として披露されているほどである.この神楽は,そもそも神職によ る神事であったが,明治政府からの神職の演舞を禁止されたために,土地の人々に受け継 がれ,民俗芸能として演舞されるようになった.大阪万博での上演を機に,全国に知られ るようになり,スケールの大きさとダイナミックな動きによって演じられ,演目は 30 種類 にも上っている.リズムは,大太鼓,小太鼓,手拍子,笛,鐘などを用いてお囃子で演じ られる.調子は,六調子と八調子があり,六調子は神楽の原型と言われ,泥田を歩くかつ ての労働の動作に通じる部分があるといわれている.他方で,八調子は,明治初期,国学 者藤井宗雄,牛尾弘篤氏によって速いテンポに 改良されたものである.奏楽は,4つから 構成されている.1 つ目は,神舞の音として,緩やかな神舞から鬼舞へ移行する段階の囃 子であり,軽やかなこのリズムは聴いていて心地よく,観客にとっては,これから出てく る鬼への期待感が高まる囃子である. 2 つ目は,鬼舞の音として,迫力ある鬼舞に合わせ て,軽快で激しく奏でられ,心を揺さぶられるほどの大迫力であり,八調子神楽の代名詞 ともいえる奏楽になっている.3 つ目は,姫舞の音として,ゆったりと流れるような囃子 となっており,笛の奏でるメロディーが美しく,姫のしっとりした舞を思わせ,やさしい 奏楽である.4 つ目は,蛇舞であり,早いテンポで一定のリズムをとるために連打される 太鼓の音が特徴である.また,笛の音色も独特で, 太鼓のリズムに合わせ低音から高音へ と音を奏でる奏楽になっている.この神楽が演舞されている会場では,子どもから高齢者 まで多くの人が訪れ鑑賞しており,「神楽談義」がさまざまなところで繰り広げられ 関心の 高さをうかがい知ることができる.

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他方で,運動開始および継続に関する調査から「なんとなく運動機会がない」といった 理由や 21),運動の継続は,身近な地域での実施が重要であるとされている 22) そこで,地域に根差した神楽の動きや音に着目し,取り組みやすい体操として構成する ことで,運動開始のきっかけや継続に活かしながら,体操による運動の効果およびそれに 音楽を加えた場合について,総合的に検討する必要があると考えた. 2 節 研究目的 前述した研究背景および先行研究から,地域に根差している神楽の動きと音楽を用いた 体操を開発し,運動介入として実践し,中高年者の身体機能や健康関連 QOL および運動 習慣の関連について検討することを本論文の研究目的とした . 仮説1 「地域に根差している音楽や動きは,体操(以下,神楽体操)に活用でき,教室 参加者に受け入れられる.」 仮説 2 「神楽体操は運動習慣に寄与し,また外出頻度の増加,体力の向上, QOL を高め る.」 3 節 先行研究レビュー 上述した研究背景で述べた事柄を踏まえ,健康教室や介護予防教室参加者の中高年者の 身体活動や身体機能の改善および精神機能,QOL の向上,運動習慣の向上や生活習慣の改 善,音楽や体操の実践事例と要因分析に関する先行事例を挙げた. 1 項 中高年者の身体活動に関する論文 運動が及ぼす関連要因について,70歳以上の地域高齢者における日常の身体活動レベル は,身体,心理および社会的要因と関連することが示唆され23),運動器の機能向上プログ ラムの介入が心身機能向上に寄与し,普段の生活での役割や社会活動参加などに結びつけ ていけるか否かが長期的な介護予防には重要であることが報告されている24).また,転倒

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に関して,地域在住高齢者の加齢,体の痛みや病気の出現, Instrumental activities of daily living(以下,IADL),主観的健康感の低下が関連していること や25),他方で高齢女性に運動 による介入を行ったが,転倒率は低下しなかったことが報告されている26) さらに,高齢者の身体活動等に関連した要因として,年齢,低い自立度,家屋構造の問 題点の存在が活動的余命,生命予後の短縮と関連し,健診受診等の健康行動や日常活動, 生きがい,やりたいことの存在が活動的余命や生命予後の延長と関連したこと が示唆され ている27).運動の充実が及ぼす影響として,身体活動量にかかわらず,主観的な運動充足 感が高い高齢者ほど精神・心理的健康度が高いことが明らかとなり,運動充足感を得られ る運動が高齢者の健康増進に寄与する可能性が示唆されている28) 2 項 中高年者の精神機能, QOL に関する論文 運動の持ち越し効果に関して,包括的筋力トレーニングが,虚弱高齢者の QOL向上に影 響を与えたことや身体機能に関するQOLは,トレーニング終了3か月後において改善効果 が維持されたことが示されている29).また,運動を行う際に影響を及ぼす運動器疾患に関 して,地域在住高齢者のロコモティブシンドロームは,主観的健康感や健康関連 QOLの低 下に関与することが示唆されている30).さらに,疾病や配偶者の死などは運動からの離脱 につながり生活満足度にマイナスの影響を及ぼし,運動の阻害要因であることが報告され ている31) 一方で,健康関連QOLの満足度を高めるには主観的健康管理能力の改善や健康・体力状 況の維持・増進を図ること32),また高齢者のQOL維持・向上のためには高齢者の自己効力 感および社会関係を充実させることが重要であると報告されている33).社会活動において, 交流頻度は大きな意味を持つが,女性の虚弱高齢者 の交流頻度の多寡には聴力と高次生活 活動能力が影響しており,とくにコミュニケーションの基盤となる聴覚機能に着目する重 要性が示唆されている34) また,教室の参加者は,女性が多く11),生活が自立し,自ら希望して体力測定に参加す

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るような高齢女性においても潜在的なうつ傾向は示され,また下肢筋力や持久力は ,生活 習慣や活動状況と独立して抑うつ状態に関連することがわかっており,下肢の筋力向上を 意識した運動介入は,うつに有効な可能性が示唆されている35) 3 項 運動習慣の向上や生活習慣の改善に関する論文 運動習慣の改善を目的とした行動変容の取り組みは,参加を募集する形から運動の重要 性を認識していない対象者を踏まえた形に発展すること,運動行動変容を促進する行動科 学的な理論・アプローチの体系化,費用対効果を考慮した取り組みとするために ,方法論 の統制された研究報告の蓄積が必要であることが示されている36).この費用対効果につい て,健康教室を実施した際の医療費分析では,医療費の抑制に明らかな効果はみられなか った一方で,セルフケア能力,主観的健康度,客観 的健康度の改善がみられたことが報告 されている37) また,中高年者の主観的健康感と生活習慣との間には直接的な関係は認められなかった が,健康状態の比較,Body mass index,通院状況,生活満足度,主観的ストレス量の関係 を認めたことが報告されている38).他方で,転倒予防教室を実施した際の不参加者の特徴 として,社会参加が少ないこと,自己効力感が低いこと,男性であることがわかっている 39).しかし,男性が多い500人程度の職場規模にあっては,健康教室の参加者を通じ た学習 内容が人から人へ伝達され,教室に参加していない社員においては,参加者からの情報の 授受が多い人ほど健康に関する知識・意欲・行動等に良好な影響があったことがわかって おり,教育効果の波及が可能であることが示唆されている40) 運動習慣の維持において,運動習慣をもたらす指導方法やプログラム提供が,運動習慣 のない高齢者の基礎体力に一次的な効果をもたらす一方で,維持することはできず41),集 団運動による活気の向上や運動習慣の形成が,その後の個別運動に好影響を及ぼすことを 示唆している42) さらに,地域高齢者の介護予防参加者における運動指導内容の定着には,クラスのもつ

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雰囲気づくりが重要であるとし,無理のない運動強度の設定や運動種目を選択するだけで なく,主観的健康感,性別,年齢構成,体力, Activities of daily living (以下,ADL)のレベ ルなどの参加者背景を踏まえ,参加者が喜んで参加できる場を提供できるプログラムが必 要であるとしている43).また,スクエアステップを取り入れた運動教室参加者の教室終了 後も運動を継続する理由について,仲間の存在や仲間との関わり,自主活動の公平な運営, 運動による健康効果への期待,簡単・気楽にできる運 動,運動参加に対する家族のサポー トを挙げている44).一方で,運動の実施による身体活動や精神面の賦活作用によって,女 性では視力低下,運動器系,男性では呼吸器系の不定愁訴に影響を及ぼしたことが報告さ れている45) 教室の参加方法について,若い層や有職者,男性が地域保健事業に参加するためには, 形式の異なるプログラムを用意することは有効であるとしている46).運動習慣における健 康づくりの目安として,高齢期における 1日平均歩数は歩行速度や歩行バランスなどの歩行 能力と関連しており,特に定期的な散歩習慣は歩数の多さに 寄与していたことから,高齢 期の健康づくりに歩数を用いて指導することは有用であると結論付けている47) 4 項 音楽や体操に関する実践事例と要因分析に関する論文 音楽の嗜好について,Zillmann,Dら48)は,文化差や人種差,パーソナリティ,性差だけ でなく,聴取する場面や聴取時の個人の心理状態なども影響を及ぼすこと を示している. また,音楽の明暗について,やや悲しい場合に悲しい音楽を聴くと悲しみは低下しないが, 非常に悲しい場合に悲しい音楽を聴くと悲しみは低下することを示唆しており,悲しみが 強い時には悲しい音楽を好み,悲しみが弱い時には明るい音楽を好む傾向が気分の変化の 観点から確かめられたことが報告されている49).これらは,音楽を選択する際に重要な因 子であると考えられる. また,地域で行われている健康づくり教室や介護予防教室は,転倒予防効果のある「棒 体操」50),高齢者の運動を促し運動参加の意欲や身体機能の向上に有効であった「安芸の

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元気体操」51),運動器の機能の維持改善を目的とした「てんとう虫体操」52),地域のお祭 りの名前を使用した「お元気しゃんしゃん体操」53),太極拳を利用した「太極拳ゆったり 体操」54),地名を教室の名称に利用した「荒川ころばん体操」55)が取り組まれていた.し かし,運動効果や運動疲労感などは示されて いたが,自宅での運動習慣あるいは教室の参 加率に関する追跡は不十分であった. また,これらの体操を考案する際に「楽しさ」は重要であるとされ14),楽しさとFunctional Independence Measure(以下,FIM)は正の相関を示し,作業の楽しさは「熱中」,「頑張り」, 「またやりたい」ことと関連していたことが報告されている56) リズムとしては,集団リズム運動は高齢者の身 体機能,精神機能の改善に有益な運動療 法の一つになる可能性が示されており57),また,転倒予防目的において効果の高いリズム としては,「参加者の体重がかかる動作」「水平方向の素早い移動動作」「垂直方向への 振幅の大きい動作」が挙げられ58),さらに運動自体は細部の動作にこだわりすぎず,身体 全体を楽しく動かすことに着目し簡単で効果的な動作指導が重要であるとしている59) 4 節 本研究の枠組み 上述の研究レビューから得られた知見の整理を表 1,研究枠組みを表 2 に示した. 第 2 章では,前段階の研究として実施した研究対象地域の健康意識結果,また神楽に対 する嗜好を検討する. 第 3 章では,地域で実践可能な神楽体操を開発すること. 第 4 章では,神楽体操に参加した者を対象に「きつさ (運動強度)」「達成感」などに関す る要因のアンケート調査を行い,神楽体操に対するイメージについて検討する. 第 5 章では,神楽体操を実践し,身体機能,健康関連 QOL,外出・交流頻度,手段的な 日常生活の効果,神楽体操参加者の教室参加率および運動習慣の継続状況の検証を行う. 第 6 章では,2 章から 5 章までの知見を整理し,総括的考察を行う.

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カテゴリー 著者 文献 番号 報告年 論文タイトル 目的 結果 考察 田中千晶ら 23) 2006 地域高齢者における身体活動量と身 体,心理,社会的要因との関連 地域高齢者における日常の身 体活動レベルと身体・心理・ 社会的要因との関係を検討す ること 身体活動レベルは,高次生活機能,体力 などの身体要因,抑うつなどの心理的要 因,家の中での役割などの社会的要因, 喫煙習慣と関連を認めた 身体活動レベルと外出頻度,親しい 友達の有無,役割・仕事の有無に関 連が見られ,外出頻度が少ない場合 は身体活動レベルが低いことが示唆 された 加藤智香子ら 24) 2013 二次予防事業対象者に対する運動器 機能向上プログラムの参加者特性と 介入効果の検証 二次予防事業対象者に対する 運動器機能向上プログラムの 介入効果の検証を行うこと 主観的健康感の改善が認められ,基本 チェックリストによるリスクも軽減され た.握力,片脚立ち, T U G, 5m 歩行時 間に男女とも改善が見られた 体力測定項目に改善が見られ,女性 の改善度が高く,男女に違いが見ら れた.運動習慣を身につけ体力の改 善を図り社会活動に結びつけること が重要である 加藤龍一ら 25) 2012 地域在住高齢者の転倒の関連要因と 3 年後の生存 転倒や転倒による骨折に関連 する各種要因について縦断的 に分析し,高齢者のその後の 生存の影響を明らかにするこ と 転倒による骨折率は,男性 16. 4%,女性 27. 8%と女性に高率であった.強い関連 要因は痛みであり,転倒しやすかった. その他に,主観的健康感, IA D Lが挙げ られた 転倒の発生には,加齢,痛み,病 気, IA D L,主観的健康感の低下が関 連し,転倒経験は生存に関連してい ることが示された K irs tiU us i-R as iら 26) 2015 N eit he r vi tam inD nor exe rc ise af fe cte d fa ll r ate s a m aong w om en in Finl and 高齢女性の運動トレーニング とビタミン D摂取による転倒 予防効果の検討 ビタミン Dおよび運動も全般的な転倒率 の低下を導かなかった 転倒リスクが複合的な要因によって 引き起こされていることから,外傷 性転倒予防戦略を考慮する必要があ る 本間義之ら 27) 1999 高齢者における身体・社会活動と活 動的余命,生命予後の関連について 地域高齢者における身体・社 会活動の生命および活動的日 常生活の喪失に対する影響を 36 か月追跡によって明らかに すること 年齢,低い自立度,言語障害,浴室構造 に問題は,生命予後の短縮,やりたいこ とありは生命予後の延長と関連を認めた 社会活動では,日常活動の個別項目 とそれぞれに関する生きがいの満足 感が一体となっており,活動内容を 一つ一つ評価する必要がある 桜井良太ら 28) 2012 運動に対する充足感が高齢者および 高齢者の運動介入効果に与える影響 運動充足感の違いが高齢者の 心身機能に与える影響,運動 を中心とした介入後の運動充 足感による介入効果の違いを 明らかにすること 運動高充足群は,低充足群に比べ, BM I,握力,最大歩行速度, W H O -5得 点, SF -8の値が良好であった.介入終了 後の運動充足感が高いと同様に良好な値 であった 身体活動量にかかわらず,主観的な 運動充足感が高い高齢者は精神・心 理的健康度が高いことが明らかとな り,運動充足感が得られる運動は高 齢者の健康増進に寄与することが示 唆された 表 1 先行研究の知見一覧 その 1 身体活動に関する要因

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カテゴリー 著者 文献 番号 報告年 論文タイトル 目的 結果 考察 千葉敦子ら 29) 2006 虚弱高齢者における包括的筋力ト レーニングが QOL に及ぼす影響 介護予防筋力トレーニング事 業マニュアルに基づいた包括 的な筋力向上プログラムが虚 弱高齢者の健康関連 QOL に及 ぼす影響を検討すること 介入後に身体機能,身体の痛み,全体的 健康感,活力の QOL が改善し,トレーニ ング終了 3か月後においても身体機能の QOL は維持されていた 包括的なトレーニングは虚弱高齢者 の QOL の向上に影響を与え,トレー ニング終了後も維持され,役割意識 や外出の影響につながり,高齢者の 自立につながる可能性を示した 海老原和恵ら 30) 2013 地域在住中高年者のロコモティブシ ンドロームと Q ua lity of L ife の関連 地域在住中高年者のロコモ ティブシンドロームと主観的 健康感, QOL との関連性を検 討すること ロコモティブシンドローム群は非ロコモ 群に比べ QOL の移動の程度,普段の生 活,痛みが低値を示した 生活動作ができないことが主観的健 康感の低下につながることがわか り,ロコモを予防することは運動機 能の低下, QOL 低下を予防できるこ とを示唆している 石澤伸弘 31) 2004 後期高齢者の生活満足度に影響を及 ぼす運動・スポーツ活動と日常生活 動作 (A D L )のケーススタディ 量的,質的なアプローチを用 いてケーススタディを行い, 後期高齢者の生活満足度を規 定する要因を運動・スポーツ 活動と A D Lに着目して明らか にすること 疾病や配偶者の死などで運動・スポーツ 活動から離脱し,活動頻度が低下した者 は A D Lも低下し,生活満足度もマイナス の影響を及ぼしている 高齢者全体の共通戦略ではなく,各 年齢層別の特性や態度,あるいは行 動変容に合致した差別的なプロモー ション活動の展開が必要である 青木邦男 32) 2014 在宅高齢者の主観的健康管理能力, 健康情報等利用状況,健康・体力状 況,運動実施状況,食習慣ならびに 健康関連 QOL 満足度の関連性 健康行動に関する効力感や統 制感として主観的健康管理能 力による行動変容の動機づけ 等と健康関連 QOL の関連性を 明らかにする 共分散構造分析によって,男女ともに運 動実施状況などと主観的健康管理能力は 正の相関であり,自己効力感が高まり健 康関連 QOL 満足度を高めていた 高齢者に対して相応しい適切な運 動・身体活動プログラムが展開さ れ,参加を通して効力感を高め,健 康・体力の維持・改善が図られる政 策,介入が必要である 青木邦男 33) 2014 在宅高齢者の Q ua lity of lif eに関連する 要因の関連性 在宅高齢者の QOL に関連する 多くの要因の相互関連,因果 関連を明らかにすること 男女ともに身体活動,社会活動,役割遂 行,自己効力感,社会関係状況が影響 し,精神的健康,身体的健康状態,生き がい感が関連を示し, QOL に影響してい た 高齢者の固有の適性,能力や意欲を 引出し,達成可能な遂行行動や課題 に挑戦させる機会や環境を整えてい くことが重要である 中村恵子ら 34) 2011 A県郊外に在住する虚弱高齢者の交流 頻度とその関連要因 閉じこもりの効果的な交流支 援を検討し,虚弱高齢者の交 流頻度,身体,心理,社会的 要因との関連を明らかにする こと 閉じこもりの要因として男性は認めな かったが,女性は聴力,老研式活動能力 指標に相関が認められ,聴力が良好であ り老研式活動能力指標が高い人は交流の 数が多かった コミュニケーションの基盤となる聴 覚機能に着目する重要性が示され, 高齢者の支援には聴力検査,補聴器 への対応が必要である 山縣恵美ら 35) 2013 地域在住の自立高齢女性における体 力と抑うつ状態との関連 地域在住の自立高齢女性の体 力要素と抑うつ状態との関連 を明らかにすること 抑うつ群は非抑うつ群に比べて,筋パ ワー,敏捷性,筋力,持久力,歩行能力 が低い値であった.運動習慣等の調整に おいても下肢筋力に関連する体力・持久 力が低い値であった 高齢者のうつ予防には,レジスタン ス運動の中でも,とくに下肢の筋力 向上を意識した運動や有酸素運動が 有効である可能性が示唆される 精神機能・ QOL に関する 要因 表 1 先行研究の知見一覧 その 2

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カテゴリー 著者 文献 番号 報告年 論文タイトル 目的 結果 考察 野村卓生ら 36) 2008 予防医学的観点からの運動行動変容 への取り組みの知見の整理 一次・二次・三次予防の観点 から,介入による運動行動の 変化に関する知見を整理し, 知見が十分でない部分を明ら かにすること 一次予防は高齢者の転倒予防が中心,二 次予防では介護認定となりうる高齢者の 早期発見・早期対応,三次予防では,リ ハビリテーションの実施による身体機能 等の向上が行われている 今後はソーシャルキャピタルを考慮 した運動習慣定着の取り組みが課題 である.行動変容,医療費分析,ア プローチ方法の効果の検討が必要で ある 宍戸由美子ら 37) 2003 運動指導教室参加者の運動習慣・医 療費などの変化に関する研究 生活習慣改善のための健康教 室を複数の指標を用いて教室 参加前後の比較を行い,教室 の評価を行うこととした セルフケア能力の改善,主観的健康度の 改善が見られ,拡張期血圧,体脂肪率が 下がっていた.しかし医療費は教室参加 の前後で変化は見られなかった 医療費の効果は示されなかったが, セルフケア能力,主観的・客観的健 康度の改善がみられ社会支援環境が 整備されつつある 五十嵐久人ら 38) 2006 主観的健康感に影響を及ぼす生活習 慣と健康関連要因 主観的健康感に関連する生活 習慣を明らかにするために労 働者を対象に調査すること 主観的健康感に影響する生活習慣は少な く,生活満足度,主観的ストレス量など 精神的な要因の影響が認められた 自らが体調の悪化を感じとり,生活 満足度の判断を低くさせることがわ かった.ストレス量をコントロール することで主観的健康感が高くなる 大山さくらら 39) 2005 高齢者の転倒予防教室に対する不参 加者の特性 地域在宅高齢者の転倒予防教 室への不参加者の特性を明ら かにすること 老研式活動能力指標が 10 点以下の高齢者 の分析から,自己効力感が低いこと,男 性であること,社会参加が少ないことが 特性として示された 教室の参加には,地域のネットワー クづくりが重要であり,参加者同士 による勧誘,配偶者を巻き込んだ働 きかけが必要である 千葉敦子ら 40) 2011 職域における健康教室参加者からの 教育波及効果を意図した保健指導プ ログラムの効果 男性の多い職場において保健 指導プログラムを開発し波及 効果の可能性を検討すること 教室参加者の 9割が学習内容を同僚に伝 達したい意欲を有し,実際に 8割程度が 伝達していた.教室非参加者は,伝達内 容の授受に関し知識等に良好な影響が あったと回答していた 健康教室参加者の学習内容が他者へ 伝達されることが示され,良好な健 康行動実践者を増加することや社員 同士のつながりを促進することで健 康風土の環境を醸成する可能性が期 待できる 花岡美智子ら 41) 2005 中高齢者における運動実施の効果 高齢者の自立した生活に必要 な基礎体力の維持・増進を図 るための運動プログラムを開 発すること 短期間の運動効果は認めたが,長期的に は低下傾向であった 器具やチューブなど不慣れであり, 常時できない種目が組み込まれてい たために困難さや負担感が増大し運 動継続や持続につながらなかった 運動習慣・生活習慣に関 する要因 表 1 先行研究の知見一覧 その 3

(21)

カテゴリー 著者 文献 番号 報告年 論文タイトル 目的 結果 考察 中川和昌ら 42) 2008 要支援・軽度要介護高齢者に対する 個別運度介入に集団運動がもたらす 効果 要介護高齢者に対する集団運 動の介入がその後の個別運動 に与える影響を検討すること 集団運動及び個別運動を実施した群に, 下肢筋力,精神面の改善を認めた 集団運動による活気の向上や運動習 慣の形成が,その後の個別運動に好 影響を及ぼすことが示唆された 小島真二ら 43) 2007 地域高齢者への運動指導における運 動定着に寄与する要因の検討 日本の地域在住高齢者への運 動指導における日常生活への 運動の定着に影響を及ぼす要 因について検討すること 運動習慣は増加傾向であり, T U Gの向上 を認めたが,筋力に関しては低下してい た.運動定着を及ぼす要因は,主観的健 康感があげられた 参加者の運動の定着を高めるには, 社会活動参加に導くようなサポー ト,適切な情報提供による主観的健 康感を高める工夫が望まれる 重松良祐ら 44) 2011 スクエアステップを取り入れた運動 教室に参加した高齢者がその後も自 主的に運動を継続している理由 スクエアステップの運動を継 続している理由を質的研究手 法を用いて聴取し,運動継続 に必要な要因を検討すること 継続理由として,仲間の存在や関わり, 自主活動の公平な運営,健康効果への期 待,簡単・気軽にできる運動,運動参加 に対する家族のサポートが明らかになっ た スクエアステップ以外の運動は検討 していないため継続して検討する必 要がある.特徴を有した運動種目は 連帯感を生むことが考えられる 南雅樹ら 45) 2002 市町村行事に参加した高齢者の生活 習慣,健康状態と不定愁訴の特徴: 性および年齢階級差の観点から 性別,年齢階級別の観点によ る市町村行事に参加した高齢 者の生活習慣,健康状態およ び不定愁訴の特徴を明らかに すること 自転車の乗車が男性に多くみられ運動習 慣につながっていた.不定愁訴は男性が 咳や痰,喉が渇く,女性が関節の痛み, 浮腫,目がかすむなどであった 運動・スポーツの実施による身体活 動や精神面の賦活作用が不定愁訴に 影響を及ぼし,顕著な年齢階級差と して出現した可能性がある 中根明美ら 46) 2011 形式の異なる生活習慣改善プログラ ム選択の参加者属性および継続者と 脱落者を判別する要因の検討 地域保健事業の生活習慣改善 プログラム選択の参加者属性 とプログラム継続,脱落者を 判別する要因を検討する 面接型と通信型のプログラムは面接型の 継続が高かった.継続と脱落の判別は, プログラム形式,ウエスト周囲径, H D L コレステロール値であった 若年層,有職者,男性が地域保健に 参加しやすいプログラムを用意する ことが有効であり,脱落しやすい層 に丁寧に対応することが必要である 渋谷孝裕 47) 2007 地域高齢者の健康づくりにおける 1日 平均歩数の有用性について 地域高齢者の 1日平均歩数が健 康づくりに指標として活用で きるか明らかにすること 1日平均歩数の平均値は男性 8075 歩,女 性 7902 歩であり健康日本 21 の目標値未満 であった.要因に未満群は間欠性跛行の 自覚があり,達成群は健康維持が関連し ていた 定期的な散歩習慣は歩数の多さに寄 与しており,高齢期の健康づくりに 歩数を用いて指導することは有用と 考える 運動習慣・生活習慣に関 する要因 表 1 先行研究の知見一覧 その 4

(22)

カテゴリー 著者 文献 番号 報告年 論文タイトル 目的 結果 考察 音楽や体操に関する実践 事例の要因分析 Zill m ann Dら 48) 1997 M us ica l ta ste in adol es ce nc e 青年期の音楽聴取が内省的な 心理の違いによる場面での影 響を探索することである 音楽によって愛情,祝福,悲嘆な表現を 示していることがわかった.しかし,社 会や個人の成育歴などの要因が影響して いることが示された 音楽を用いる際に,社会的な背景で ある人種,文化,個人,性別による 違いのみではなく思春期など個人の 心理状態も影響を及ぼすと考えられ る 松本じゅん子 49) 2002 音楽の気分誘導効果に関する実証的 研究 音楽聴取によって,気分がど のようにポジティブ,ネガ ティブな効果を示すのか検討 すること やや悲しい場合に悲しい音楽を聴くと悲 しみは低下しないが,非常に悲しい場合 に悲しい音楽を聴くと低下することが示 唆された 悲しみが強い時には悲しい音楽を好 み,悲しみが弱い時には明るい音楽 を好む傾向であることがわかり,ネ ガティブな性質の音楽の利点が明ら かになった 横井賀津志ら 50) 2012 地域在住高齢者に対する「棒体操」 の転倒予防効果 棒体操が高齢者の転倒予防に 及ぼす効果,効果発揮時間と 効果持続時間を検討すること 棒体操実施のアドヒアランスは 87. 5%, 転倒者数と躓き者数,転倒の内的要因に 改善がみられた.体操効果 1か月後から 見られ,終了後 6か月間持続した. 手軽で特殊な器具を必要としないこ とが体操実施のアドヒアランスにつ ながった.今後は大規模な追跡調査 が必要である 元吉明ら 51) 2010 地域高齢者の運動行動を促す運動プ ログラムの考案‐安芸の元気体操の 効果 -開発した体操が,運動療法へ の参加,継続,身体機能の向 上に有用であるか検討するこ と 運動参加日数は,介入期には平均週 4 日,体脂肪率, 5m 最大歩行速度, T U G に改善を認めた 下肢筋力に改善が認められず,頻 度,運動負荷が不十分であった可能 性がある 成田大一ら 52) 2009 特定高齢者に対する運動器機能向上 プログラムの効果 -弘前大学「てんと う虫体操」の考案 -高齢者の運動器機能の維持, 改善を図るために体操を考案 し,効果を検証すること 30 秒椅子立ち上がりテスト,片脚立位時 間, FR T, 5m 最大歩行時間, T U Gに改善 を認めた 難易度が高く体操実施が出来ない項 目もあり,様々な難易度の設定,ま た心理社会面も検討する必要がある 稲垣敦ら 53) 2012 介護予防運動「お元気しゃんしゃん 体操」の効果 開発した体操の運動機能の効 果,主観的な効果,継続可能 性,安全性について検討する こと 週に 3-4日の体操実施が見られ,ケガの 受傷者はいなかった.男女に差異はある が,上肢屈曲角,最大 1歩幅, 10m 歩 行,収縮期血圧に改善がみられた.体の 動きが良くなったなど主観的な効果を認 めた 自宅で一人でも継続しやすい体操で あり,転倒不安を低減させる効果が ある.平衡性,敏捷性を高めるエク ササイズの導入などの検討が必要で ある 表 1 先行研究の知見一覧 その 5

(23)

カテゴリー

著者

文献

番号

報告年

論文タイトル

目的

結果

考察

音楽や体操に関する実践

事例の要因分析

安村誠司ら

54)

2010

太極拳ゆったり体操による高齢者運

動機能の回復-介護予防を目的とし

た体操開発

-虚弱高齢者のために太極拳を

用いた運動を開発すること

最大歩幅の拡大,バランス機能の向上,

10m

最大歩行時間の短縮が得られた

体操の普及のためのリーダー育成が

今後に必要である

山田拓実ら

55)

2005

実例集荒川ころばん体操

高齢者の筋力向上を目的とし

公共施設で行える体操を実践

すること

4か月間の運動実践により片足立ち時

間,

10m

歩行速度,最大

1歩幅,

TU

G,

FSST

,膝進展トルクに改善があった

前期高齢者と後期高齢者による差異

はみられなかった.長期的に転倒発

生率を追跡する必要がある

本家寿洋ら

56)

2011

通所リハビリテーションにおける作

業の楽しさ

-作業の楽しさと楽しさに

関係する想いと

FIM

との関係につい

-通所リハビリテーションでの

作業の楽しさが「熱中」など

の想いや

FIM

と関係している

か否か検討すること

作業の楽しさは「熱中」「頑張」

FIM

」などと正の相関が見られた.ま

た,注意力や集中力と関係し,在宅での

介助量を軽減することと関係がある

高齢者の通所リハビリテーションに

おいて作業の楽しさを提供すること

が,通所リハビリテーションで行う

作業継続への動機づけを高めること

になる

杉浦令人ら

57)

2010

要支援・軽度要介護高齢者に対する

集団リズム運動が心身機能にもたら

す効果

要支援,軽度要介護高齢者が

行える集団リズム運動が心身

機能に与える効果を検証する

こと

下肢筋力に改善が見られ,バランス能

力,歩行能力,精神機能に改善が見られ

集団リズム運動は,高齢者の身体機

能,精神機能の改善に有益な運動療

法となる可能性が示唆された

W

hippl

e R

H

58)

1997

Im

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ovi

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ini

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高齢者のための運動トレーニ

ング方法

バランス訓練は,自己の体重負荷が十分

にかかる,水平方向の動き,頭部や体幹

の連動がある相互作用,垂直方向への振

幅を含んだリズムがよい

前方や側方、後方への転倒を防ぐに

は戦略的で重要な運動トレーニング

を行うことで効果が期待できる

小林佳澄

59)

2005

転倒予防効果の高い

”リズム運動

”の

応用

高齢者を対象としたリズム運

動を行い全身の筋肉,バラン

ス訓練をすること

リズム運動のパターンと音楽を選択して

いくことが重要である

指導として,運動の細部にこだわら

ずに全身を動かすことを伝えていく

必要がある

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1 先行研究の知見一覧 その

6

(24)

表 2 研究の枠組みと調査方法 本論の展開 論文構成 調査方法 図・表 先行研究・背景 第 1 章 地域にお ける健康増進及び 介護予防の取り組 み 文献レビュー 表 1 先行研究からの知 見一覧 研究疑問 第 1 章 研究目的 第 1 章 研究の枠組み 第 1 章 本研究の 枠組みと調査 表 2 研究の枠組みと調 査方法 研究対象地域の健 康意識の特性 第 2 章 対象地域 の健康意識,運動習 慣(IPAQ)と HRQOL( SF36v2), SDS,神楽の嗜好 対象地域の年齢・性 別・地区別を層化後 に質問紙郵送(614 名) 表 3 アンケート発送と 回収状況 表 4 主観的健康感の状 況 表 5 運動習慣の状況 表 6 SF36v2 の性別に よる結果 表 7 SF36v2 の年代別 による結果 表 8 SDS の結果 表 9 神楽嗜好アンケー トの性別比較 表 10 神楽嗜好アンケー トの年代別比較

(25)

図 1 神楽嗜好アンケー ト 体操(神楽体操) の開発 第 3 章 神楽体操 の開発 図 2 神楽体操の解説 体操参加者におけ る神楽体操の構成 概念 第 4 章 神楽体操 のイメージの構成 概念提示 地域中高年者の神楽 体操実施者 83 名ア ンケート調査 図 3 神楽体操後アンケ ート 表 11 神楽体操参加者の 性,年齢階級別の分布 表 12 神楽体操調査項目 および人数分布 表 13 動機付けと年齢階 級別の分布 表 14 調査項目の因子構 造(最尤度プロマックス 回転) 図 4 神楽体操の構成概 念パス図 体操の効果検証 第 5 章 神楽体操 の参加による身体 機能・社会的役割・ 交流頻度・健康関連 QOL の効果・教室 参加率,自宅での運 動習慣状況の検証 地域在住高齢者 A 群 (100 名 神楽動作 と音楽の組合せ),B 群(115 名 神楽動 作のみ) 図 5 対象者抽出と研究 手順 表 15 参加者のうち前期 高齢者の特徴 表 16 参加者のうち後期 高齢者の特徴 表 17 参加者のうち前期高

(26)

齢者の教室介入内容の違 いによる効果 表 18 参加者のうち後期 高齢者の教室介入内容の 違いによる効果 表 19 参加者のうち前期 高齢者の教室別介入 5 か 月後の運動習慣 表 20 参加者のうち後期 高齢者の教室別介入 5 か 月後の運動習慣 総合結果・考察 第 6 章 表 21 確認および新たな 知見一覧

(27)

第 2 章 研究対象地域の健康意識の特性 1 節 本章の目的 わが国は,高齢者の増加の一方で,生産年齢人口は縮小の一途をたどっている 60).その ような中,厚生労働省は新たな健診・保健指導として平成 17 年「医療制度改革大綱」を踏 まえ,平成 20 年から「高齢者の医療の確保に関する法律」などにおいて ,生活習慣病に関 する健康診査やその後の保健指導を義務づけることなどを 行ってきた 61).このように国策 として,あらゆる地域で熱狂的な健康づくりを推進していることになる. しかし,わが国の多くは次第に人口が減っており,いわゆる過疎地域も多くなっている 62).これらの過疎地域と健康や QOL,主観的幸福感,主観的健康感に関する先行研究とし て,離島に住む中高年者の健康習慣について, 健康意識と生活習慣の関係,健康意識と生 活満足度の関係の関連性が示されている 63).また,配偶者と同居している高齢者と比較し て,単身高齢者は主観的幸福感,人生の満足感が低いことが報告されている 64).これらに は男女差が存在しており,男性の単身高齢者は女性より生活満足度 65)や主観的幸福感が低 いことがわかっている 66) さらに,居住自治体の人口規模と身体活動との間に関連が認められ,大都市に居住する ほど歩行数が多く,運動習慣者が多いことが明らかになっており 67),3Mets 以下の低強度 の活動が,日常における身体活動量の多くを占めている問題が示された 68,69) そこで,介入対象地域の運動習慣,健康関連 QOL,うつに関する実態把握を調査目的と した. 2 節 方法 1項 調査対象と調査方法 1) 調査対象 対象は,研究協力が得られた島根県A市B町在住の40歳以上89歳以下とした.第1次抽出 単位を行政管轄による5ブロック分割にした調査区とし,第2次抽出単位を性,年齢とした

(28)

名簿を作成した.その後に,等間隔抽出法によって計 614人を抽出した.抽出の際に,回答 比率0.5,許容誤差5%,信頼水準95%,回収率50%を用いた.総配布数614人,回収数は425 人(69.2%),欠損値があった者を除いた対象者419人(68.2%)を分析対象とした.これを表3 に示す. 2) 調査対象地域の概況 対象地域のA市は,島根県西部に位置しており,B町は広島県境の中国山地沿いの豪雪地 方でもある.人口は平成26年10月末時点3053人であり,高齢化率39.3%となっている.B 町には5つの地区があり,公共施設,金融機関などは町中心部に集中している.また,B町 では水稲,果樹,花などの生産,温泉,スキー場などの交流施設も点在する70). 3) 調査方法 平成25年2月に調査対象者に無記名自記式質問紙(資料1)を郵送し,同年3月末までの回答 期限をもって回収とした.B町の個人情報保護に関する審査,国際医療福祉大学倫 理審査 の承認を得て(13-Io-70),個人情報の保護および倫理的に配慮した調査を実施した. 4) 質問紙など評価方法 属性の調査は,年齢や性別,居住地区として, 10歳級間の年代区分を行った.また,主 観的健康感について,「健康である」「まあまあ健康である」「健康でない」「わからな い」の4つの選択肢を準備し質問した.これについて「健康である」「まあまあ健康である」 を「健康である」とし,「健康である」「健康でない」「わからない」の 3区分のうち,「健 康である」「健康でない」を分析対象とした.

その他に,運動習慣を把握する目的から, International Physical Activity Questionnaire(以 下,IPAQ)を用いた(資料2).IPAQは,1週間における高強度および中強度の身体活動を行 う日数および時間を質問し,仕事中,移動中,家庭内,レジャータイムなどの生活場面別

(29)

に質問する Long Versionと強度別のみで質問するShort Versionの2種類がある.IPAQの妥当 性を検証した先行研究から71,72),1日の歩数,消費エネルギー,肢位別総時間との関連が 知られている.本研究では,最近一週間における活動を調査する項目中にある質問項目 4a の「この一週間で,余暇時間に散歩やウォーキングを 10分以上続けて行った日はあります か」に着目し47),何らかの運動がある場合「運動習慣あり」,運動を行っていない場合「運 動習慣なし」とした. QOLに関しては,包括的な健康関連 QOLを把握する目的からSF-36v273-75),3コンポーネ ントサマリースコアを採用した(資料3).SF-36は包括的尺度であり,主観的健康状態を測 定する質問紙調査として,世界中で最も普及している評価である.福原ら74,75)は,本質問 紙の特徴として,人の健康に関するQOLは身体的な側面と精神的な側面の2つの因子によ って規定され,それらの2つの健康側面は8つの健康概念をもって表示される概念モデルで あると説明している.これら8つの健康概念を測定するために,35個の質問項目と健康変化 を測定する1個の項目から成り立っている.8つの健康概念は身体機能physical functioning(以下,PF),日常役割機能(身体)role-physical(以下,RP),体の痛みbodily pain(以 下,BP),全体的健康感general health(以下,GH),活力vitality(以下,VT),社会生活機能social functioning(以下,SF),日常役割機能(精神)role-emotional(以下,RE),心の健康 mental health(以 下,MH)である.これらの8つの概念は下位尺度に位置づけられ,それぞれ重み付けをされ た後に下位尺度得点を項目別に100点満点に点数化する.その際に,日本人の性別及び年代 別の国民標準値の尺度得点が用いられる.これらから, 8つの下位尺度得点をさらに2つの コンポーネント(要素)である「身体的側面のQOLをあらわすサマリースコアPhysical Component Summary(以下,PCS)」と「精神的側面のQOLをあらわすサマリースコア Mental Component Summary(以下,MCS)」に要約することが可能であり,得られた得点をサマリ ースコアと呼んでいる.しかし,日本においては SF-36の因子構造が欧米とは異なることか ら,2コンポーネントサマリースコア法の使用に問題があるとされ, PCS,MCSに「役割/ 社会的健康をあらわすコンポーネントサマリースコア Role-social Component Summary(以下,

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RCS)」を加えた3つのサマリースコアにまとめられる方法が開発された.このスコアリン グ法から得られる得点は,2コンポーネントサマリースコアと区別して,3コンポーネント サマリースコアと呼ばれている.また,SF-36は特定の年齢層や特定の疾病・治療に関わっ ている集団を対象として作られた質問紙ではないため,一般の人と特定の集団を比較した り,疾病の症状の相対的な重症度,異なる治療の効果,個々の患者の特徴を記述したり, あるいは医療費の予測などの様々な目的に対して有 用であることが明らかになっている. 今回使用するにあたり,申請・登録を行い,許可を得た後に使用した.

うつ尺度として,日本版Self-rating Depression Scale(以下,SDS)76)を用いた(資料4).SDS

は,質問紙法による情意テストであり,20項目から構成されている.項目それぞれに「な い」から「いつもある」の4段階の尺度が分けられ点数化されている.総合得点 (粗点 )は, 理論上は20点,最高80点となり,点数が高いほど抑うつ性が強いことを示している. SDS については,Zungの分類に従い,50点以上を「中等度うつあり」,50点未満を「中等度う つなし」として区分した77,78) また,神楽の嗜好アンケートを行い(図1),興味や関心などの質問を行った79) 地区コード: グループコード: 利用者コード: 実施日:平成   年   月   日  前 ・ 後 1 あなたは神楽を知っていますか 知っている 知らない 2 あなたの家族は神楽を知っていますか 知っている 知らない 3 あなたは神楽を観賞するのが好きですか 好き 嫌い 4 あなたは神楽の曲を知っていますか 知っている 知らない 5 あなたは神楽の曲が好きですか 好き 嫌い 6 あなたは神楽を演じたことがありますか ある ない 7 あなたは神楽に興味がありますか ある ない 以上です。ありがとうございました。 神楽の趣向についてお尋ねします。 以下の項目で当てはまるところを○で囲んでください。 お名前: 図1 神楽嗜好アンケート

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5) 分析方法

統計解析は,年代および性別による解析を中心とし ており,クロス集計にはχ2検定,ま

た,SF36v2の性別比較は対応のないt検定,年代区分の比較には一元配置分散分析を用い た.神楽嗜好アンケートにおいて,「神楽を知らない」と回答した者は他の質問 項目では 除いて分析した.統計処理には, SPSS for Windows ver.21.0を用い,有意水準は両側5%と した.分析では,変数による欠損値が異なるため,分析ごとに対象者数が異なっている. 3 節 結果 1項 対象の属性 回答の平均年齢66.2±12.5歳であった.年齢や性別の有意差は認めなかった.回収状況を 表3に示す. 回収 発送 回収 発送 回収 発送 回収率(%) 全体 n 203 300 222 314 425 614 69.2 40-49 26 54 21 36 47 90 52.2 50-59 44 64 34 52 78 116 67.2 60-69 57 80 63 68 120 148 81.1 70-79 41 50 48 66 89 116 76.7 80-89 35 52 56 92 91 144 63.2 回収率(%) 67.7 70.7 69.2 男性 女性 表3 アンケート発送と回収状況 全体 2項 調査 1) 主観的健康感 性別に関して,「主観的健康感あり」が男女ともに 70%を超えていたが,統計学的な有 意差は認めなかった.年代に関して,「主観的健康感なし」が徐々に上昇し, 70歳台以上 では20%を超えている.この年代区分については有意差を示した. これを表4に示す.

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n % n % n % n % 全体 416 100.0 317 76.2 87 20.9 12 2.9 性別 男性 200 100.0 154 77.0 41 20.5 5 2.5 女性 216 100.0 163 75.5 46 21.3 7 3.2 年代 40-49 47 100.0 41 87.2 2 4.3 4 8.5 50-59 78 100.0 62 79.5 12 15.4 4 5.1 60-69 117 100.0 95 81.2 21 17.9 1 0.9 * 70-79 88 100.0 66 75.0 21 23.9 1 1.1 80-89 86 100.0 53 61.6 31 36.0 2 2.3 表4 主観的健康感の状況 P<.001 *有意差P<.05,性別および年代間の主観的健康感ありvs主観的健康感なしのχ2検定を行った.期待度数未満はFisher検定を行った. 割合は,各カテゴリ-の人数を分母とし,回答した者を分子として計算した. わからない 全体 主観的健康感あり 主観的健康感なし .878 P 値 2) IPAQの結果 「運動習慣あり」の割合は,女性の方が高かった.全体では,対象者の 26.9%が「運動 習慣あり」と回答しており,約4人に1人が運動している傾向であった.年代では,統計学 的な有意差を認めなかったが,60歳台から運動習慣ありが30%を超えており,40歳台の約2 倍の運動習慣保有者が存在する状況であった. これを表5に示す. n % n % n % 全体 398 100.0 291 73.1 107 26.9 性別 男性 196 100.0 151 77.0 45 23.0 女性 202 100.0 140 69.3 62 30.7 年代 40-49 45 100.0 37 82.2 8 17.8 50-59 77 100.0 63 81.8 14 18.2 60-69 113 100.0 78 69.0 35 31.0 70-79 86 100.0 59 68.6 27 31.4 80-89 77 100.0 54 70.1 23 29.9 .132 P 値 全体 *有意差P<.05,性別および年代間の運動習慣なしvs運動習慣ありのχ2検定を行った. 割合は,各カテゴリ-の人数を分母とし,回答した者を分子として計算した. 表5 運動習慣の状況 運動習慣なし 運動習慣あり .082

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3) SF36v2の結果 表6に示した性別による比較では,下位尺度である8項目および3コンポーネントサマリー において,女性のPF,PCSが30点台,男性のMCSが50点台を示し,他方でそれら以外の項 目は40点台を示していた.これらの有意差が示した項目はPF,SF,PCSであり,男性がい ずれも有意に高かった(それぞれp=.001,p=.011,p=.041).表7に示した年代別による比較 では,PFが60歳台を分岐点として70,80歳台の2区分化していた.RP,BP,GHでは,年代 が高くなるにつれ低下していた.VTは,いずれの年代間も有意差を認めなかった.SFでは, 80歳台と比較し,50歳台に有意に高い値を認めた. REでは,40-60歳台の点数がほぼ同じ であるが,70歳台から有意に低くなっていた.MHでは,いずれの年代も有意差を示さな かった.これらから,年代間の下位尺度で有意差を示さなかったのは,VT,MHの2項目で あった. 3コンポーネントサマリーでは,PCSは年代が高くなるにつれ,次第に点数が低くなって おり,70歳台は30点台,80歳台では20点台であった.MCSでは,40-60歳台は40点後半であ 平均 標準偏差 平均 標準偏差 平均 標準偏差 下位尺度項目 PF 40.9 16.3 43.6 15.3 38.2 16.8 .001* RP 42.7 14.2 43.7 14.4 41.8 13.9 .202 BP 45.3 10.5 46.1 10.8 44.5 10.2 .136 GH 44.7 10.1 45.1 10.7 44.3 9.6 .452 VT 48.7 11.2 49.3 11.8 48.0 10.5 .264 SF 48.3 10.9 49.7 9.9 46.9 11.6 .011* RE 44.8 13.8 45.2 14.0 44.4 13.6 .551 MH 48.0 10.3 48.6 10.6 47.4 10.0 .265 3コンポーネントサマリー PCS 40.5 14.3 42.9 13.9 39.0 14.7 .041* MCS 50.4 9.9 50.6 10.5 48.1 12.9 .822 RCS 47.6 12.8 48.1 12.9 47.1 12.6 .460 P 値 *有意差P<.05,性別間のそれぞれの下位尺度,3コンポーネントサマリーについて対応のないt検定を行った. PF:身体機能,RP:日常役割機能(身体),BP:体の痛み,GH:全体的健康観,VT:活力,SF:社会生活機 能,RE:日常役割機能(精神),MH:心の健康,PCS:身体的健康度,MCS:精神的健康度,RCS:役割/社会 的健康度 表6 HRQOL(SF36v2)の性別による結果 男性(n=186) 女性(n=191) 全体(n=377)

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った一方で,70歳台から50点を超えており有意に高い値であった.RCSでは,60歳台ま で50点台であったが,80歳台では30点台後半となった. 平均 標準偏差 平均 標準偏差 平均 標準偏差 平均 標準偏差 平均 標準偏差 平均 標準偏差 平均 標準偏差 平均 標準偏差 年代(歳) 全体 40.9 16.3 42.7 14.2 45.3 10.5 44.7 10.1 48.7 11.3 48.3 10.9 44.8 13.8 48.0 10.7 40-49 48.6 10.7 *4,5 49.4 10.7 *4,5 49.2 10.6 *4,5 49.1 9.8 *4,5 47.6 11.3 51.2 9.8 49.9 9.0 *4,5 47.6 10.5 50-59 49.4 8.2 *4,5 47.6 12.3 *4,5 48.2 9.9 *4,5 45.9 10.1 48.6 10.4 51.1 8.9 *5 50.2 9.0 *4,5 49.2 9.6 60-69 45.1 12.4 *4,5 46.1 11.5 *4,5 46.3 9.4 *5 45.0 9.5 50.1 10.6 48.8 9.0 49.0 10.2 *4,5 48.4 9.4 70-79 35.5 17.9 *1,2,3,5 40.1 13.0 *1,2,3,5 43.1 10.5 *1,2 43.3 9.5 *1 49.7 10.5 46.1 11.2 41.5 13.9 *1,2,3,5 47.9 10.4 80-89 27.5 18.0 *1,2,3,4 31.5 15.7 *1,2,3,4 40.9 11.0 *1,2,3 41.8 11.1 *1 46.0 13.1 45.2 14.1 *2 33.1 17.0 *1,2,3,4 46.3 12.0 PF:身体機能,RP:日常役割機能(身体),BP:体の痛み,GH:全体的健康観,VT:活力,SF:社会生活機能,RE:日常役割機能(精神),MH:心の健康,PCS:身体的健康度,MCS:精神的健康度,RCS:役割/社会的健康度 年代間のそれぞれの下位尺度,3コンポーネントサマリーについて,Schffeの一元配置分散分析を行った. *P<.05 *1:vs40,2:vs50,3:vs60,4:vs70,5:vs80歳代の有意差を示す. 平均 標準偏差 平均 標準偏差 平均 標準偏差 年代(歳) 全体 40.5 14.1 50.4 9.9 47.6 12.8 40-49 48.8 10.5 *4,5 48.1 10.7 *5 51.0 10.9 *5 50-59 46.5 8.5 *4,5 48.2 10.0 *5 52.3 11.3 *4,5 60-69 43.5 11.8 *4,5 48.9 8.7 *5 50.8 10.1 *4,5 70-79 36.0 15.1 *1,2,3,5 52.4 8.8 45.0 11.8 *2,3,5 80-89 29.4 15.8 *1,2,3,4 54.4 10.9 *1,2,3 38.3 14.8 *1,2,3,4 国民標準値 表7 HRQOL(SF36v2)の年代別による結果 VT SF RE PF RP BP GH P値 P値 P値 P値 P値 P値 3コンポーネントサマリー PCS MCS RCS MH P値 P値 P値 P値 P値

表 2  研究の枠組みと調査方法  本論の展開  論文構成  調査方法  図・表  先行研究・背景  第 1 章  地域における健康増進及び 介護予防の取り組 み  文献レビュー  表 1  先行研究からの知見一覧  研究疑問  第 1 章  研究目的  第 1 章  研究の枠組み  第 1 章  本研究の 枠組みと調査  表 2  研究の枠組みと調査方法  研究対象地域の健 康意識の特性  第 2 章  対象地域 の健康意識,運動習慣(IPAQ)と HRQOL (SF36v2), SDS,神楽の嗜好 対象
図 1  神楽嗜好アンケー ト  体操(神楽体操) の開発  第 3 章  神楽体操の開発  図 2  神楽体操の解説  体操参加者におけ る神楽体操の構成 概念  第 4 章  神楽体操のイメージの構成概念提示  地域中高年者の神楽体操実施者83名アンケート調査  図 3  神楽体操後アンケート 表 11  神楽体操参加者の性,年齢階級別の分布 表12  神楽体操調査項目および人数分布 表13  動機付けと年齢階級別の分布  表 14  調査項目の因子構 造(最尤度プロマックス 回転)  図 4  神楽体

参照

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