小林佳澄 59) 2005 転倒予防効果の高い ” リズム運動 ” の応用 高齢者を対象としたリズム運動を行い全身の筋肉,バランス訓練をすること リズム運動のパターンと音楽を選択していくことが重要である 指導として,運動の細部にこだわらずに全身を動かすことを伝えていく必要がある
5) 分析方法
統計解析は,属性やアンケート項目との関連は,χ2検定,t検定,Fisherの直接確率法
101)で分析し,最尤法を用いたプロマックス斜交回転による探索的因子分析を行った.抽出 された因子によって潜在変数を設定し,体操継続と関連すると考えられるモデル を作成す るために,共分散構造分析を行い説明力や適合度が高いモデルを採択した 102-104).統計処 理には,SPSS for Windows ver.21.0およびAmos21.0 for Windows を用いた.モデルの適合 度の指標として,GFI(Goodness of Fit Index),NFI(Normal Fit Index),RMSEA(Root Mean Square Error of Approximation)を用いた.有意水準は両側5%とした.
3節 結果
1項 対象の属性
回答の平均年齢69.2±8.3歳,女性の参加者が68人(81.9%)であった.年齢階級では,65-69 歳が27人(32.6%)と最も多く,次いで60-64歳が17人(20.5%),70-74歳が15人(18.1%)であっ た.これらの平均年齢の有意差は認めなかったが,年齢階級では有意差を認めた. これら を表11に示した.
男性 女性 総計
(n=15) (n=68) (n=83)
.537
年齢階級(人(%)) 50-54歳 1 (6.7) 2 (2.9) 3 (3.6)
55-59歳 1 (6.7) 2 (2.9) 3 (3.6)
60-64歳 6 (40.0) 11 (16.2) 17 (20.5)
65-69歳 3 (20.0) 24 (35.3) 27 (32.6)
70-74歳 0 (0.0) 15 (22.1) 15 (18.1)
75-79歳 1 (6.7) 7 (10.3) 8 (9.6)
80-84歳 2 (13.2) 1 (1.5) 3 (3.6)
85歳以上 1 (6.7) 6 (8.8) 7 (8.4)
* 表11 神楽体操参加者の性、年齢階級別の分布
P値
*P<.05.年齢は対応のないt検定,年齢階級はχ2検定を行った.
69.5±7.7 69.2±8.3
68.0±10.5 年齢 (歳)
(平均値±標準偏差)
.027
2項 アンケート調査結果
1) アンケート調査項目別回答人数
アンケートの項目である「関心」「興味」「有能感」「楽しさ」「効果感」「継続」に 関して,肯定的な回答がいずれも90%を超えていた.しかし「主観的運動強度」について は「かなりきつい」「きつい」「ややきつい」の総計が53人(51.8%)であり,「楽である」
「かなり楽である」の総計40人(48.2%)を上回っていた.有意差は「楽しさ」に認めており,
表12に示した.アンケート調査の内的一貫性において,Cronbachのアルファ値は0.757であ った.
項目 質問 カテゴリー 人数 % P値
関心 体操に興味はありましたか ある 57 68.7
どちらかといえばある 24 28.9 どちらかといえばない 2 2.4
ない 0 0.0
興味 体操に関心はわきましたか わいた 49 59.0
どちらかといえばわいた 31 37.4 どちらかといえばわかなかった 2 2.4
わかなかった 1 1.2
主観的運動強度 体操のきつさはどうでしたか 非常にきつい 0 0.0
かなりきつい 4 4.8
きつい 2 2.4
ややきつい 37 44.6
楽である 31 37.4
かなり楽である 9 10.8
非常に楽である 0 0.0
有能感 体操は、あなたにもできると感じましたか できる 40 48.2
どちらかといえばできる 38 45.8 どちらかといえばできない 3 3.6
できない 2 2.4
楽しさ 体操は楽しいと感じましたか 楽しい 56 67.5
どちらかといえば楽しい 22 26.5 どちらかといえば楽しくない 4 4.8
楽しくない 1 1.2
効果感 体操は効果があると感じましたか 効果がある 54 65.1
どちらかといえば効果がある 29 34.9 どちらかといえば効果がない 0 0.0
効果がない 0 0.0
継続感 体操を続けたいと感じましたか 続けたい 41 49.4
どちらかといえば続けたい 38 45.8 どちらかといえば続けたくない 2 2.4
続けたくない 2 2.4
表12 神楽体操 調査項目および人数分布
それぞれの設問に対してχ2検定を行った.*:P<.05
.492
.630
.859
.622
.024
.885
.310
*
2) 年齢階級と動機づけ
表13に示したとおり,統計学的な有意差は認めなかったが,人数分布では 「外発的動機 づけ」が「内発的動機づけ」を上回っていた.また,年代比較では50歳から74歳までは「内 発的動機づけ」の割合が高かったが,75歳以降は「外発的動機づけ」が高い傾向であった.
なし 内発的動機
づけ
外発的動機
づけ 総計
(n=10) (n=32) (n=41) (n=83)
年齢階級(人(%)) 50-54歳 0 (0.0) 2 (6.3) 1 (2.4) 3 (3.6)
55-59歳 1 (10.0) 1 (3.1) 1 (2.4) 3 (3.6)
60-64歳 0 (0.0) 8 (25.0) 9 (22.0) 17 (20.5)
65-69歳 2 (20.0) 11 (34.4) 14 (34.2) 27 (32.6)
70-74歳 2 (20.0) 8 (25.0) 5 (12.2) 15 (18.1)
75-79歳 3 (30.0) 1 (3.1) 4 (9.8) 8 (9.6)
80-84歳 1 (10.0) 1 (3.1) 1 (2.4) 3 (3.6)
85歳以上 1 (10.0) 0 (0.0) 6 (14.6) 7 (8.4)
内発的動機vs外発的動機の年齢階級について,χ2検定を行った。*:P<.05
P値
.140 表13 動機付けと年齢階級別の分布
3) 因子分析結果
運動を継続する関連要因について,共分散構造分析の潜在変数を設定するための探索的 因子分析を行った(表14).それらの結果から,第一因子は6項目となり「興味」「関心」「楽 しさ」「効果感」「継続希望」「有能感」であった.さらに,第二因子は「疲労度」「年
齢」の2項目となった.この2つの因子で全分散を説明する割合は45.8%であった.
因子1 因子2
興味 .827 -.085
関心 .755 .097
楽しさ .747 -.086
効果感 .616 -.217
継続希望 .588 .296
有能感 .561 .140
疲労度 -.159 .562
年齢 -.111 .774
累積寄与率(%) 37.568 45.813 因子間相関 .36
表14 調査項目の因子構造(最尤度プロマックス回転)
4) 共分散構造分析
共分散構造分析では,前述の因子分析による2つの因子をもとに,神楽体操のもつイメー ジを表現するためのモデルを構築する必要がある.そのため,仮説モデルを設定し,また モデルの修正を繰り返しながら適合度の高いモデルを探索した(図4).その結果「神楽体操 の印象」と命名した潜在変数については「有能感」「興味」「楽しさ」「効果感」「関心」
「継続希望」を観測変数とした.同様に「年齢層と疲労」と命名した潜在変数には「(自覚 的)運動強度」「年齢」「継続希望」を観測変数とした.これらのモデルの適合度について,
GFI=0.938,RMSEA=0.036,NFI=0.893であった.GFIは,1に近いほどモデルの当てはまり
が良く,NFIはモデルの当てはまりの良さを示しており,またRMSEAは0.05より小さい時
に当てはまりが良く,0.1より大きい時はモデルの採用はしな いことが多い99-101).本モデル
のRMSEAは適合度が良く,また「神楽体操の印象」から「継続希望」の標準化推定値は0.66
であることから神楽体操継続に関し一定の影響があることが示唆された.
4節 考察
「神楽体操の印象」の潜在変数に対する「有能感」「興味」「楽し さ」「効果感」「関 心」の観測変数の標準化推定値は,いずれも0.5より高かったことから,神楽体操のイメー ジに一定程度関係していることが推測される.また,観測変数 の「楽しさ」,「興味」,
「関心」の決定係数が0.5より高く,「効果感」「有能感」はそれよりも低かった.これは
「運動効果」や「運動目的」などの外発的動機づけから「面白そう」「もっと上手にでき るようになる」などの内発的動機づけに関する要因に関心があったことが推測される.
さらに,「神楽体操の印象」から「継続希望」の標準化推定値は0.66であり,体操継続 に肯定的な影響を与えることがわかった.他方で,「年齢層と疲労」の潜在変数を構成す る「運度強度」,「年齢」の観測変数では,年齢は強い関連を示している一方で,運動強 度は弱いながらも負の相関を示した.また,「年齢層と疲労」から「神楽体操の印象」を 経由した観測変数である「継続希望」の間接効果は0.10であり,「年齢層と疲労」から「継 続希望」の直接効果の0.23より小さかった.これは,同じ運動や体操においても年齢の上 昇によって自覚的運動強度の感じ方は違うことが推測され, 内発的動機づけの「神楽体操 の印象」を経由しても「継続希望」に与える否定的な影響が少なからず生じることを示し ている.つまり,運動継続を目的とした神楽体操の実践・利用には参加者の年代層,また は自覚的運動強度の調整が重要であることを示唆している.
しかし,今回の教室に参加した者の年齢階級に有意差を認め,選択的バイアスは歪めな いことから,地域在住者の教室の参加方法について今後の課題となろう. 一方で,先行研
究から7,44,97-99)いずれの観測変数の要因についても,本研究のテーマでもある「運動の
開始のきっかけ」「運動継続」において重要であることが知られており, 地域に根差した 音や動きを用いた体操として,今後の介護予防または健康教室等での利用が可能と考えら れる.
第 5章 神楽体操の効果 第 1節 本章の目的
運動実践の効果として,中年期の生活習慣病の予防や高齢者の転倒予防が期待されてい る.一方で,心身両面にわたる健康保持増進のための措置を行っている事業所は 5%とさ れており 105),有病が増える中年期,または定年を延長している今日においては,運動を 実践しやすい環境改善が必要であるといえる.
また,老化現象の影響で最も深刻なのが歩行能力の低下であり,大きな原因として加齢 に伴い筋量が減少し,筋力が低下することが報告されている 106).一方で,中年女性に対 する減量プログラムにおいて,有酸素性運動に加えて筋力トレーニングを用いることによ って,全身の筋量減少を抑制できることが報告されている 107).他方で,高齢者が実施す る筋力トレーニングは,安全性の配慮から 1回あたりの強度や頻度を低く設定することや
106),低強度の自重負荷筋力トレーニングを週 5日,6か月間実施することによって効果が 得られたとしており86),運動実践につながる要因を考慮していく必要性を示している108). 前述した神楽体操の運動負荷において,年齢によって自覚運動強度の違いが示されたこと から,ライフステージを意識した運動強度の設定が必要であると考えられる.
また,農村に居住する 65歳以上の高齢者において,活動参加,趣味,積極性が乏しい と死亡率が高かったこと 109)や外出頻度の低い高齢者は,ほとんどすべての身体・心理 ・ 社会的な側面で健康水準が低かったことが報告されている 110).これらは,外出や社会と のつながりが重要であることを示唆しており,健康的な生活を過ごす上で大切な健康に関 する因子であると考えられる.
さらに,教室の継続参加者は,運動自信感,健康管理の自信感が高まり 111),身体活動の 多い者は QOLが高く維持されていたことが報告されている 112).
そこで,本章では年代による運動強度の違いを考慮し,高齢者を対象とした神楽体操の 実践によって,運動の継続率,教室の参加率の推移を検証し,身体機能,健康関連 QOL,
交流頻度,外出頻度,社会的役割に及ぼす効果や影響について検討することを目的とした.