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小林佳澄 59) 2005 転倒予防効果の高い ” リズム運動 ” の応用 高齢者を対象としたリズム運動を行い全身の筋肉,バランス訓練をすること リズム運動のパターンと音楽を選択していくことが重要である 指導として,運動の細部にこだわらずに全身を動かすことを伝えていく必要がある

4) SDSの結果

SDSでは,性別に有意差を認めた.性別では,男性の「うつリスクあり」が有意に高く,

60歳台以降は年代が上がるにつれ,割合が増加した.これを表8に示す.

全体 398 100.0 383 96.2 15 3.8

性別 男性 196 100.0 184 93.9 12 6.1

女性 202 100.0 199 98.5 3 1.5

年代 40-49 45 100.0 44 97.8 1 2.2

50-59 77 100.0 77 100.0 0 0.0

60-69 113 100.0 109 96.5 4 3.5

70-79 86 100.0 81 94.2 5 5.8

80-89 77 100.0 72 93.5 5 6.5

.207

*有意差P<.05,性別および年代間のうつリスクなしvsうつリスクありのχ2検定を行った.

SDS得点の50点以上をうつリスクありとした.

.015 8 SDSの状況

うつリスクなし うつリスクあり

P 全体

5) 神楽の嗜好

表9で示したとおり,調査対象者の約90.3%が神楽を知っており,調査対象者の家族も約 88.3%が「知っている」に回答した.また神楽の観賞や曲の既知,曲の好感度の項目では,

それぞれ約60%が「知っている」「好き」に回答しており,興味を尋ねた項目では50.6%

が「ある」に回答した.また,女性の方が有意に神楽を知っており,「家族が神楽を知ら ない」と回答した割合は低かった.

さらに,神楽を演じた経験は,女性の方が有意に少なく,82.4%であった.表10で示し た年代の比較においては,「あなたの家族は神楽を知っていますか」の設問に対して有意 差が認められ,40-50歳台のそれぞれ約6%が「知らない」に回答していた.

また,「あなたは神楽の曲が好きですか」に有意差が認められ,60歳台は50%台,他の年

代では60%以上が「好きである」に回答した.

あなたは神楽を知っていますか 男性 181 89.2 6 3.0 16 7.9

女性 201 91.4 0 0.0 19 8.6 小計 382 90.3 6 1.4 35 8.3 あなたはの家族は神楽を知っていますか 男性 170 86.3 7 3.6 20 10.2 女性 200 90.1 1 0.5 21 9.5 小計 370 88.3 8 1.9 41 9.8 あなたは神楽を観賞するのが好きですか 男性 119 60.1 49 24.7 30 15.2 女性 123 55.4 58 26.1 41 18.5 小計 242 57.6 107 25.5 71 16.9 あなたは神楽の曲を知っていますか 男性 117 59.4 58 29.4 22 11.2 女性 109 49.1 86 38.7 27 12.2 小計 226 53.9 144 34.4 49 11.7 あなたは神楽の曲が好きですか 男性 132 65.2 41 20.2 30 41.7 女性 137 61.7 43 19.4 42 18.9 小計 269 63.3 84 19.8 72 16.9 あなたは神楽を演じたことがありますか 男性 60 29.6 126 62.1 17 8.4 女性 15 6.8 183 82.4 24 10.8 小計 75 17.6 309 72.7 41 9.6 あなたは神楽に興味がありますか 男性 100 51.8 70 36.3 23 11.9 女性 115 49.6 81 34.9 36 15.5 小計 215 50.6 151 35.5 59 13.9 表9 神楽嗜好アンケートの性別比較

※有意差P<.05,質問項目ごとにχ2検定を行った.

質問項目毎の人数を分母とし,回答した者を分子として割合を計算した.

無回答

はい いいえ

P

.036

.064

.560

.092

.524

.000

.565

4節 考察

B町の健康意識調査結果から,運動習慣における性別の有意差は認めなかったが,男性 の運動習慣者が少ない傾向であった.

また,主観的健康感の性別に有意差は示されなかった一方で,SDSにおいては男性の「う つリスクあり」が有意に高かった.これは,生活習慣や活動とうつとの関連が示されてお り 35,本章の結果と一致していると考えられる.

しかし,SDSや主観的健康感の設問は,いずれも主観的な回答であるにも関わらず,結 果として主観的健康感に有意差が示されなかった原因は,気分的にうつであっても身体 や

生活に大きな問題がないために,調査対象者自身が「自分は健康である」と感じているの ではないかと推測される.

年代(歳)

あなたは神楽を知っていますか 40-49 43 91.5 2 4.3 2 4.3

50-59 73 93.6 0 0.0 5 6.4

60-69 108 90.0 2 1.7 10 8.3

70-79 82 92.1 2 2.2 5 5.6

80- 78 85.7 0 0.0 13 14.3

あなたの家族は神楽を知っていますか 40-49 40 88.9 3 6.7 2 4.4

50-59 68 87.2 5 6.4 5 6.4

60-69 106 89.8 0 0.0 12 10.2

70-79 80 92.0 0 0.0 7 8.0

80- 76 83.5 0 0.0 15 16.5

あなたは神楽を観賞するのが好きですか 40-49 32 71.1 10 22.2 3 6.7

50-59 47 60.3 20 25.6 11 14.1

60-69 59 50.0 36 30.5 23 19.5

70-79 62 71.3 16 18.4 9 10.3

80- 51 56.0 15 16.5 25 27.5

あなたは神楽の曲を知っていますか 40-49 31 68.9 12 26.7 2 4.4

50-59 47 60.3 25 32.1 6 7.7

60-69 58 49.2 46 39.0 14 11.9

70-79 53 60.9 26 29.9 8 9.2

80- 37 40.7 35 38.5 19 20.9

あなたは神楽の曲が好きですか 40-49 31 68.9 10 22.2 4 8.9

50-59 52 66.7 16 20.5 10 12.8

60-69 63 53.4 32 27.1 23 19.5

70-79 65 74.7 8 9.2 14 16.1

80- 58 63.7 12 13.2 21 23.1

あなたは神楽を演じたことがありますか 40-49 10 22.2 33 73.3 2 4.4

50-59 14 17.9 59 75.6 5 6.4

60-69 20 16.9 88 74.6 10 8.5

70-79 20 23.0 62 71.3 5 5.7

80- 11 12.1 61 67.0 19 20.9

あなたは神楽に興味がありますか 40-49 26 57.8 17 37.8 2 4.4

50-59 37 47.4 33 42.3 8 10.3

60-69 51 43.2 47 39.8 20 16.9

70-79 58 66.7 21 24.1 8 9.2

80- 43 47.3 27 29.7 21 23.1

.170

.120

*有意差P<.05,各質問項目ごとの年代間においてχ2検定を行った.

質問項目ごとの人数を分母とし,回答した者を分子として割合を計算した.

.248 .426

.022

.339

.025

表10 神楽嗜好アンケートの年代別比較

はい いいえ 無回答

P値

また,3コンポーネントサマリーの RCSにおいて,60歳台から年代の上昇とともに,点 数が低くなっていた.これについて,特に男性単身高齢者でも前期高齢者である場合,定 年退職などによる社会的役割の離脱を経験することが身体的・心理的に負の影響を与える

ことがわかっており 66),本調査の男性における 60歳台の結果と一致していた.このこと から,今後において,生きがいや社会的役割の維持・形成へ向けた支援が重要であると考 えられる.

また,近所付き合いの満足度が単身高齢者の主観的健康感に最も有意に関連することが 指摘されているが 80),本調査のGHにおいては,年代の上昇とともに点数が下がり,また MHも同様に50歳台をピークに点数が下がっていた.一方で,MCSは加齢とともに点数 が向上していた.これは,調査対象者が加齢とともに健康感や精神における健康側面に不 安が生じたことによって点数が下がった一方で,B町の過疎地域の地理特性である社会的 なつながりが高齢者の MCSに有効的に作用したと考えられる.

SDSに関して,単身高齢者の QOLの低下は,うつ症状,孤独感,社会的孤立によって 引き起こされる一方で,女性の単身後期高齢者の QOLを高める要因として,近所付き合 いや買い物を活発に行い,食事を自分で作り,毎日入浴していることが 報告されている 81). 本調査の年代では,60歳台以降において次第に「うつリスクあり」の割合が高くなったこ とと一致していた.

しかし,本調査対象地域の「うつリスクあり」では,女性と比較して男性により多く認 める結果となった.このことについて,PFや SFにおいては,男性が有意に高かったが,

RP,REは有意差を認めなかったことから,男性は農作業などの仕事や町内会活動などの

組織的な社会活動が多くを占め,女性は近所付き合いや家庭内の役割を中心に行っている ことが影響したと考えられる.

神楽の嗜好性アンケートについて,アンケート回答者の 約 90%が神楽を知っており,半 数以上が神楽の観賞や曲を知っていると回答している.このことから,対象地域のほぼす べての住民が神楽を知っており,半数近くは興味や好感を抱いていることがわかった.

また「神楽の曲は好きですか」の設問では有意差を認め,40-60歳台では「いいえ」と 回答した割合がそれぞれ20%台であった.他方で, 70歳台以降は10%台と低下しており,

年代によって神楽の曲に対する印象が違っていることがわかった.

さらに,男性は神楽を演じたことがある割合が,女性と比べて高く有意差を示していた 一方で,女性は「神楽を演じたことがない」が82.4%であり,ほぼすべての年代において,

体験したことがない特徴が示された.つまり,神楽の動きおよび神楽の曲は多くの人が知 っており,また好きである回答が多かった一方で,年代による好感度や性別による神楽の 体験の違いが明らかになった.これらから,神楽演目および神楽の曲は多く の人が知って おり,研究対象地域においては,地域に根差した音楽や動きであると考える.

3章 神楽体操の開発 1節 本章の目的

B町では,石見神楽の実演が毎週行われ,子どもから高齢者までが鑑賞している.また,

B町の伝統文化として,地域に点在する社中(神楽の伝承団体)が神楽の舞を引き継いでい る.これらのリズムは 8調子によって構成され,太鼓,囃子,鐘,鈴などが楽器として用 いられており,舞をする際の動く速度や音域は調整が可能である.そのため,本研究にお ける神楽体操は視覚・視力や聴力の低下から 34,すべての体操の動作を行うことが困難な 場合でも,参加者自身によって運動動作の調整が可能であると考えた.また,神楽の動作 は,しゃがんだり立ち上がったり,左右の重心移動,回転など豊富な動きを備えている.

よって,本章の研究の目的は,地域に根差した神楽の動作や音曲を用いて,バランスや 筋力の向上,また楽しさを与える体操を開発することである.

2節 開発手法

1項 音曲選定と動作選定 1) 音曲選定

体操に用いる音の種類や曲の長さについては,音楽療法士,保健師,理学療法士,作業 療法士が集まり選定した.先行研究から,音楽のテンポと心拍は同期現象が生じ82),好み の音楽は交感神経活動を促進増加させることから83,先ずゆっくりしたテンポである「遅 い動作の体操」から開始し,さらに奏楽は軽やかなリズムである神舞を用いた演目の大社,

潮祓の2つの演目を組み合わせて使用した.音曲の特徴は,ゆっくりとしたお囃子と一定の

リズムの鐘を用いていることである.次に「 速い動作の体操」は,奏楽は蛇舞の演目の大 蛇を使用した.この大蛇の特徴は,早く一定のリズムをとる太鼓を多く用いていることで ある.

また,呼吸困難感や下肢疲労感による先行事例84から検討を重ねた結果,それぞれのテ ンポの曲の長さを6分以内で構成した.演目を選択する際は,音リズム刺激によって85

参加者自身がリズムを取りやすいようにテンポのある音を選択した.

2) 動作選定

動作手順は,上述と同様に音楽療法士,保健師,理学療法士,作業療法士が集まり,動 作の順番や振付けを検討した.

要素は,関節を大きく動かすこと,バランスを必要とする 重心移動,下肢筋力を必要と する動作,ストレッチの要素を取り入れ59),有酸素運動を伴う動作とした(資料5).これに ついて,加齢による筋量の低下を抑制するためには,速筋繊維を中心に動員する筋力トレ ーニングのような中・高強度な運動が必要であることが報告されている86).他方で,3年間 継続的にマシンを使用せず,自体重を負荷した筋力トレーニングでは,大腰筋横断面積は3 年前より約20%増大したのに対し,対照者は約4%低下していたことがわかっている87).つ まり,自体重負荷による筋力トレーニングは高齢者であっても有効であると考えられる.

これらから,神楽体操の動きは,大蛇,大社,潮祓の神楽の動きを運動指導用に修正し,

組み合わせた反復動作とした.また,20ポイントBorg指数88-91)を用いた主観的運動強度は,

Borg指数11-13の範囲とし「楽である」から「ややきつい」とした.よって,運動強度は,

65歳から75歳の女性であれば運動強度は70%から80%となり,疾患等の既往によるリスク

管理から80%以上の負荷は行わないように留意した.

3) 安全配慮

体操を実施する上で立位動作のため,立位保持が困難,バランスが不安定,疾患による 運動禁忌の者は対象外とした.また,有害事象を防止する観点から ,神楽体操の音楽と動 作を収録したDVDを内科医と整形外科医が確認した.これについて,曲や動作の変更の指 示や指摘はなかった.

さらに,神楽体操を実施する前には,B町保健師による体調の問診を行い,運動実施前 後には血圧測定,脈拍測定を実施し,医学的な安全配慮に留意した(資料6).

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