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ウィメンズヘルス理学療法

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Academic year: 2021

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はじめに  ウィメンズヘルス分野は日本では新規分野であると認識さ れつつあるが,世界的な視点で見てみると,その歴史は長い。 ウィメンズヘルス分野の理学療法のはじまりは,1912 年のイ ギリスにおいて出産後に行う健康のための運動を開発したこと であった1)。そして現在,北米や北欧諸国などでは理学療法の 一領域として確立されている分野である。また,ウィメンズヘ ルス分野を取りまとめる世界的組織 International Organization of Physical Therapy in Women’s Health(以下,IOPTWH)は, World Congress of Physical Therapy(以下,WCPT)の下部 組織であることから,本分野は理学療法の中でも不可欠な分野 であると考えられる。今回の第 48 回日本理学療法学術大会に おいて,ウィメンズヘルス分野の理学療法を紹介する機会を得 られたことは,我が国においても本分野への関心の高まってい ることを表していると考えられる。しかし,今後,その実践を 行っていく時には,一貫した指針に則って発展させていくこと が必要である。ウィメンズヘルス分野においては,すでに世界 的に確立されている指針が存在することからそれに準じること により,我が国のセラピストがグローバルスタンダードへ達す るための近道を辿ることができると考えられる。 ウィメンズヘルス分野の理学療法の範囲  まず,ウィメンズヘルス分野の理学療法では,どのよう な疾患や状態の人を対象とするのか確認する。前述のよう に WCPT の サ ブ グ ル ー プ で あ る IOPTWH は,“Scope of practice”2)と呼ばれる活動指針を 2005 年に発表している。こ の中では,ウィメンズヘルス分野の理学療法が対応する対象を 3 つの段階で説明している。まず,1 段階目として挙げられて いるのは 1997 年より世界保健機関 World Health Organization (WHO)が示している健康の状態である。つまり,完全な身 体的,精神的,社会的な健康であり,疾患もしくは虚弱な状態 を呈しないことである。したがって,私達が目指す目標はこの

状態から逸脱してしまった人が対象となる。次に,示されて いるのは 1985 年に United States Department of Health and Human Services(DHHS)からの「疾患が女性であるが故の 特徴をもっていること,より一般的であること,より重度とな ること,異なったリスクファクターをもっていること,治療を 要する状態であることのいずれかに該当すること」という定義 である。そして,3 段階目に IOPTWH により理学療法士が携 わる対象をより詳細に示している(表 1)。大きなテーマとし て掲げられているのは「ライフステージを通して女性の評価, 治療,教育を行うこと」である。そして,ここでは大きく妊娠 期と婦人科・泌尿器系・消化器系の疾患を有する場合とに分け られている。まず,妊娠期は,女性のライフステージにおい て,心身やその環境に大きな変化をもたらす非常に大きなライ フイベントであり,妊娠中から出産後に至る間に女性の身体は 大きく変化することから,理学療法士が担うべきことも多い。 まず,正常に妊娠が経過している場合,その目的は,筋骨格系 障害の予防である。妊娠中は胎児が成長に伴い重心位置が変化 していくことがわかっている3)4)。また,関節を弛緩させるホ ルモンが分泌される5)ことから,姿勢の変化や動きのメカニ ズムについて教育し,適切な運動習慣に導いていくことが役割 となる。また,妊娠期に筋骨格・整形外科系障害が生じた場合 も対象となり,理学療法士は障害の評価治療に携わる。妊娠中 に生じるトラブルとして多く生じるのは仙腸関節の機能不全6) や恥骨結合の離開,腰痛7)が多い。胎児の成長に伴い体重の 増加が見られる8)ことから,適正に体重をコントロールする ための出産前の運動指導や出産後の運動指導も行う。また,出 産時には骨盤底筋が伸張されることにより機能障害が生じるこ とがある9)ため,それらの予防と管理を行うことも役割のひ とつである。出産時の疼痛をコントロールするための技術を妊 婦本人だけでなくそのパートナーに教育指導するという役割も 担うと示されている。さらに,特別なケアが必要な妊娠をハイ リスク妊娠と呼ぶ。様々な状態が該当するが母体の状態により 臥床が必要となり日常生活活動が制限される10)ことがある。 運動量の維持が難しくなると出産時の体力に影響することが予 測されることから,理学療法士は妊婦の運動量の管理も行うこ とが必要となる。また,帝王切開での出産の場合,創部痛や術 後の膀胱直腸活動への対応など,自然分娩時とは異なったリハ ビリテーションプログラムが必要となる9)。また,障害をもつ 女性,文化の異なる女性,妊娠中の運動選手,若年・高齢妊娠

ウィメンズヘルス理学療法

─グローバルスタンダードを目指して─

松 谷 綾 子

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ランチョンセミナー

Physical Therapy in Women’s Health: Moving Toward the Global Standard

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甲南女子大学看護リハビリテーション学部理学療法学科 (〒 658‒0001 兵庫県神戸市東灘区森北町 6‒2‒23)

Ayako Matsuya, PT: Department of Physical Therapy, Faculty of Nursing and Rehabilitation, Konan Women’s University

キーワード: ウィメンズヘルス理学療法,グローバルスタンダード, IOPTWH

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者と様々な状況に置かれた女性に対して,それぞれの患者層の ニーズに合わせた対応をすることも求められる。次に婦人科・ 泌尿器系・消化器系の疾患を有する場合について述べる。まず 挙げられているのは,骨盤底筋の障害であり,これは分娩時外 傷や手術,加齢など様々な原因で生じる11)12)。その結果起こ る尿失禁や便失禁,骨盤内臓器脱,筋力低下に伴う障害などに 対して対応する。また,痛みに対する治療もウィメンズヘルス 分野の重要な要素である。膀胱や尿道といった排尿に関する臓 器の痛みだけでなく,慢性的な骨盤帯周囲の痛みも対象となる と述べられている。婦人科系・腹部手術後も対象となる。女性 においては骨粗しょう症13)などといった閉経後の骨の変化も 生じてくるため,その管理といった役割もあると述べられてい る。乳癌による乳房への手術後に生じる筋骨格系障害,リンパ 浮腫へも対応する14)。筋線維症は,患者の 85 ∼ 90%が女性で ある疾患であり15)16),その痛みが遷延することにより慢性痛 症候群17)18)につながる可能性もあることからその管理も行う。 過剰なダイエットから起こる摂食障害に対する教育,日常生活 活動,可能で安全な運動プログラムの立案にも関わるとされて いる。更年期に生じてくる様々な変化への準備や対応や障害や 問題を抱えていない場合においても健康的な老化を目指すため の注意を行う。その反対に若年者に特有の問題についても注意 を行う。女性のアスリートに生じやすい健康障害19)といった スポーツ医学の分野や,閉経によってホルモン分泌が変化する ことが心血管リスクを高めるといった心臓血管の問題20)など 女性特有の問題についても携わると示されている。虐待により 健康被害をこうむる場合や紛争地域での拷問被害により健康的 損失も生じる21)ことがある。そのような場合においても治療 を行うことが示されている。  このように,ウィメンズヘルス分野は多岐に渡る。したがっ て,多くの人は臨床活動においてウィメンズヘルスに関わる問 題に直面するのではないかと思われる。しかしながら,女性の 健康に関わる問題は,医療機関に援助を求めないケースが多い と報告されている22)ことから,患者様の日常に近いところで 携わる理学療法士は,その対応範囲を認識し,問題に対応でき る基本的な知識・技術をもつことが重要であると考えられる。 日本におけるウィメンズヘルス分野の理学療法  ウィメンズヘルス分野で,未だ後進国である我が国が,グ ローバルスタンダードに近づくために,現在の日本の状況がど うなっているのかを確認する。まずは,一般社会におけるウィ メンズヘルスと理学療法士のつながりがどのように認識されて いるのかについて考えてみたい。某検索サイトにおいて「ウィ メンズヘルス」「理学療法士」をキーワードにして検索したと ころ,該当件数は 2,360 件であった。それらのサイトの掲載内 容を順に確認したところ,約 90 件までが妊娠時の身体的サポー トや骨盤底筋のケアなど,ウィメンズヘルスという健康分野を 扱う理学療法士が開催している研究会やサポートグループのサ イトであった。このように,ひとつのキーワードで数百万件と いうサイトが検索される昨今の情報社会の中で「ウィメンズヘ ルス」と「理学療法士」のつながりは未だ強くなることがうか がえた。  次に,我が国の理学療法士内でのウィメンズヘルス分野の広 がりについて,学術集会に発表された演題タイトルから考えて みる。現在,我が国の学術集会においては,ウィメンズヘルス 分野のセッションは設けられていないが,2010 ∼ 2013 年に発 表された演題タイトルの内容から本分野に関連していると思わ れるものを調べた。その結果,表 2 のようになり,各年約 20 件の演題発表が行われていることがわかった。内容は,基礎系 分野においては,妊婦の運動学的分析,高齢者の姿勢に関する 分析,骨盤底筋・尿失禁にかかわる研究についての発表が多 かった。そして,骨関節・運動器の分野では,女性アスリート における障害,妊婦に生じる障害,尿失禁に関するものが多 かった。内部障害分野では,婦人科系がんの発表がほとんどで 妊娠期 筋骨格系障害の予防 筋骨格・整形外科系障害の評価と治療 出産前後の運動指導 骨盤底筋障害の予防と管理 出産時の疼痛管理技術の教育指導 ハイリスク妊娠時の管理 帝王切開後のリハビリテーション それぞれの患者層のニーズに合わせた対応 障害をもつ女性,文化の異なる女性,妊娠中の運動選手, 若年・高齢妊娠者 婦人科・泌尿器系・消化器系の疾患を有する場合 骨盤底機能の障害 筋力低下・過活動に伴う尿・便失禁,骨盤内臓器脱, 筋力低下による性機能障害, 過活動・疼痛による排尿機能障害 膀胱,尿道の疼痛や機能障害 慢性的な骨盤の痛み 膀胱炎,過敏性大腸,便秘,子宮内膜症,月経困難症, 性交疼痛,外陰部痛 婦人科系・腹部手術後のリハビリテーション その他 骨の健康 骨粗しょう症やその他の関連疾患の予防,理学療法管理 乳房の手術後 筋骨格系障害,リンパ浮腫への対応 線維筋痛症や慢性痛症候群の管理 摂食障害 教育,日常生活活動,可能で安全な運動プログラムの 立案 更年期で生じてくる変化への準備や対応 老化に伴う注意 健康的な老化,その他の老化 若年者に特有の注意 女性特有の問題 スポーツ医学,心臓血管 虐待や拷問被害女性への治療 表 1 ウィメンズヘルス分野の理学療法が対応する疾患や症状

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あった。神経系で発表されたものは脳性まひ児についてであっ た。生活支援系では,高齢女性の転倒や,妊婦の問題,尿失禁 が含まれていた。教育分野の発表は,女性理学療法士に関する ものであった。物理療法分野では,該当する演題がなかった。 そして,新人理学療法士によるセッションが設けられた年にお いては,妊婦の問題についての演題が発表されていた。このよ うに前述したウィメンズヘルスの対象の様々な領域からの演題 発表がすでに行われている。この中には,ウィメンズヘルスを 専門としないセラピストの発表も含まれていると考えられる が,他の分野を専門とする理学療法士であっても,研究テーマ としてウィメンズヘルス分野への関わりをもつ機会が多くなっ ていると考えられる。特に女性においては,自身の健康や妊 娠・出産などを通し,ウィメンズヘルス分野に関わりをもつ機 会が多いと考えられる。  ここで,本分野で活動するセラピストの一部を紹介する。筆 者は 2012 年にウィメンズヘルス理学療法研究会という会を発 足した。発足メンバーは,筆者の他 5 名の研究者であり,年 2 回の会合を開催している。会への参加者は,研究者だけでなく ウィメンズヘルス分野に興味をもち活動している臨床家も多 く,医療施設を主体とした活動よりも,セラピスト個人で活動 している方が多いのが特徴である。我々以外にも,日本には研 究会や勉強グループを設立し,積極的に活動もされている方も いるが,ここではウィメンズヘルス理学療法研究会に所属して いる方々の活動を中心に紹介する。まずは,研究者として活動 されている方々である。現在は,妊娠期と尿失禁に関するテー マを研究している人が多く,妊娠期については妊婦の姿勢や腰 痛の関連に関する研究23‒26)や,妊婦の特徴的な姿勢や動作に ついて三次元動作解析装置を用いて分析している研究3)4)27) が行われている。尿失禁に関するものでは,高齢者の腹圧性尿 失禁の治療27‒29)をテーマにしている。次に,臨床家として活 動されているセラピストを紹介する。多くは尿失禁治療や妊婦 への指導活動に携わっている方が多い。妊娠期における関わり は,母親教室などで個人的な関係を構築し活動する人が多い が,中には所属病院において婦人科専属に配置された人も出て きている。尿失禁治療へ関わる方は,女性専門のクリニックに おいて勤務されている。さらに,乳癌を原因とした乳房切除術 後の女性へのリンパマッサージを専門として治療を提供されて いる方もいる。このように,日本のウィメンズヘルス分野の活 動は,まだ個人レベルにとどまっているがその活動は非常に実 践的で活発であることから,今後,施設単位の取り組みに変化 させることにより,さらに広い範囲の方々に本分野の知識や技 術を還元できるようになると考える。 世界のウィメンズヘルス分野の理学療法  次に我々が目指すグローバルスタンダードについて見てい く。世界に目を向けると,前述のようにウィメンズヘルス分野 の理学療法は,ひとつの専門分野として確立されている。北 米,北欧諸国では,産前産後のケアや尿失禁に対する治療は, 協会公認の専門分野のひとつとして,多くの研修会が開催され ている。世界のウィメンズヘルス分野に携わる理学療法士を統 括しているのは IOPTWH であり,WCPT の公式下部組織で もある。その使命は,「ウィメンズヘルス分野における理学療 法の促進と支援を通して,世界の女性の健康を向上させるこ と」である。現在,会長は Rebecca Stephenson 氏であり,米 国において産科に関わる理学療法に携わっておられる方であ る。IOPTWH に加盟する国は,現在 23 ヵ国であり,表 3 に示 された国々を見るとヨーロッパ,北米地区に加盟国が多い。加 盟には,国内の理学療法士協会で公認された専門領域グループ が対象となることが必要であるため,現在,日本は未加盟国で ある。IOPTWH は 5 つの活動目標が掲げられている(表 4)。 ブラジルは 2007 年に南米ではじめて加盟した国であるが,活 動目標の 5 番目に掲げられた IOPTWH の支援を受けることで 加盟が実現している。IOPTWH に加盟するメリットは大きく, そのひとつは,その世界的なネットワークを通じて本分野に関 する情報が先進諸国から入手しやすくなることである。現在 は,“Friends of IOPTWH”として登録された個人に対して最 新情報がメール配信され,その個人から日本国内に情報発信さ れている状況であるが,研究会の参加者に配信するためその範 囲は限られている。また,活動目標の 2 番目の標準的能力向上, および 3 番目に掲げられている相互交流や情報提供の活動とし て,提供されている学会の情報も入手しやすくなると考えられ 基礎系 骨関節・ 運動器 内部障害 神経系 生活支援系 教育 物理療法 新人 合計 2010 0 10 6 0 3 0 0 1 20 2011 5 10 2 0 5 2 0 0 24 2012 4 6 1 0 6 0 0 0 16 2013 9 4 2 1 7 1 0 0 24 表 2 日本理学療法学術大会におけるウィメンズヘルス分野に関連する演題数 地域 加盟国 ヨーロッパ クロアチア,デンマーク,フィンラン ド,ドイツ,アイルランド,オランダ, ノルウェー,ポルトガル,スロベニア, スウェーデン,イギリス 北米 カナダ,アメリカ,バミューダ 南米 ブラジル アジア,環太平洋 オーストラリア,香港, ニュージーランド 中東 イスラエル,サウジアラビア,トルコ アフリカ ナイジェリア,南アフリカ共和国 表 3 IOPTWH の地域別加盟国

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る。本年度の学会は,IOPTWH と IPTOP(The International Association of Physical Therapists Working with Older People)の合同学会であり 4 月 26 ∼ 28 日,アメリカ,ボスト ンにおいて開催された。学会での講演やシンポジウムは,女性 のライフサイクルを通して骨関節における問題から,癌の治 療,最近の手術の紹介などといったウィメンズヘルス分野の全 範囲を網羅した内容(表 5)であり,我が国のセラピストにとっ ても非常に有用な内容であった。しかしながら,日本から多く の参加を得ることは難しかった。その原因としては,学会情報 の配信に時間がかかったこと,学会参加への時間や費用の確保 が難しかったことが考えられ,より速い情報の配信によりセラ ピスト個別に行き渡るようになれば,学会参加への準備を考え る人が増加するものと考えられる。そして,相互交流が活発に なることにより,技術研修のための講師派遣を依頼・招聘する ことがより容易かつ円滑となることが考えられる。  IOPTWH では,将来これからカリキュラムを作成していく 国々や学習をはじめるセラピストに対し,ウィメンズヘルス分 野に携わる理学療法士を養成するための指針を示している。そ の中で理学療法士養成課程におけるカリキュラムに含むことが 望ましい学習項目として,解剖学・生理学,女性の生理学・内 分泌,尿失禁について,便失禁について,産科学,骨粗しょう 症について,乳房の健康について,性別に関係する疾患や女性 に特有な疾患が挙げられている。今後,教育面を整備していく うえでは,参考になる情報である。  次に,海外における専門教育の一例として米国の認定資格制 度を紹介する。この制度は,アメリカ理学療法士協会のウィ メンズヘルス部門(American Physical Therapy Association, Section of Women’s Health) に お い て 提 供 さ れ て い る 制 度

であり,Professional Development Opportunities in Women’s Health PT と呼ばれるものである。これは,ウィメンズヘル ス分野を専門にするための研修とその認定を行う制度であ り,骨盤底に関わる知識や技術について認定する Certifi cate of Achievement in Pelvic PT(CAPP-pelvic)と妊娠/産褥に関 わる知識や技術について認定する Certifi cate of Achievement in Pregnancy/Postpartum(CAPP-obstetrics) と い う 認 定 制 度,臨床研修制度である Residency Education,総合的な知 識や技術をもつ専門理学療法士としての認定である ABPTS Clinical Specialist が用意されている。認定のプロセスは,定 められた講習を受講した後,推薦書を添えた申請書の提出,筆 記試験の受験,その後実技試験が行われ,合格した者にその称 号が与えられる。受講科目は基本的な内容から高度な内容へ段 階的になっている(図 1)。アメリカにおいてウィメンズヘル ス分野での臨床活動には,この称号を有することは必須ではな い。しかしながら,保証された質の高い専門性を得るためには, このような認定制度の受講科目として構築された知識や技術を 修了していくことが効率的ではないかと考えられる。 日本のウィメンズヘルス分野の問題点と対策  最後に,これから到達をしようとしているグローバルスタン ダード,つまり世界的水準に追いつくためにはどうすればよい のかについて,現在の問題点と対策を考えてみる。まず,第一 の問題点として考えられるのは,ウィメンズヘルスの情報の大 半が英語表記であることである。国際的に専門的知識を交換す る際に,語学は日本人にとって大きな障害物となることが多 い。世界共通語である英語の習得は必須であると考えられる。 英語で執筆された書籍では,分野の全範囲を網羅された書籍が 出版されているが,国内での知識の習得の促進のためには,日 本語で書かれた書籍が必要であると考えられる。第二の問題点 として考えられるのは,国内で行われる技術研修会が少ないこ とである。書籍から得られる知識には限りがあるため,講師と 直接質疑応答できる機会は非常に重要である。より多くのセラ ピストにウィメンズヘルス分野の知識や技術を習得してもらう ためには,技術研修のための講師招聘を行いやすい環境づく り,つまり国際的な関係づくりが必要であると考えられる。第 三の問題点は,他の医療従事者からの理解を得たうえでの臨床 現場の確保である。ウィメンズヘルス分野の理学療法を行うに は様々な医療従事者の関わりが必要となる。現在,ウィメンズ ヘルス分野の理学療法を実施する機会が少ないことから,産婦 人科や泌尿器科などの関連分野の医師からの理解を得て,協力 関係を構築することが大切であると考えられる。 1)ウィメンズヘルス分野に携わる各国理学療法士間の協力体制の支援 2)理学療法士が提供する女性の健康ケアの標準的能力向上と実践継続の奨励 3)相互交流や情報提供による理学療法実践の向上 4)ウィメンズヘルス分野における最新知見の発信支援および科学的研究の奨励 5)WCPT 加盟各国におけるウィメンズヘルス分野の公式専門領域グループの設立支援 表 4 IOPTWH の活動目標 より健康なライフスタイルのために専門家ができること あなたは患者さん / 利用者さんに十分負荷をかけていますか ? 理学療法士と骨粗しょう症:女性と高齢者に対する目標と 対策 女性のライフサイクルを通した栄養と運動 未来の姿勢:ピラティスと骨の健康 失禁と骨盤内臓器脱、老化との関連 最新の泌尿器婦人科の手術 性転換を行った女性と男性の老化 乳癌と QOL:高齢者に対する治療効果 IOPTWH 症例検討 表 5 IOPTWH,IPTOP 合同学会における講演タイトル

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 ウィメンズヘルス分野においては,まだ揃えるべき事柄が多 くあるが我が国においては大きな可能性をもつ分野であり,今 後発展させる必要があると考えられる。

文  献

1) Irion JM, Boissonnault JS: Historical perspective of women’s health care. Chap1: Irion JM and Irion GL (eds): Women’s Health in Physical Therapy, Lippincott Williams & Wilkins, Philadelphia, 2010, pp. 1‒17.

2) International organization of Physical Therapy in Women’s Health [Internet]. Boston: The Scope of Practice; c2005-2013. Available from: http://www.ioptwh.org/pdfs/IOPTWHscopeofpractice.pdf 3) 武田 要,勝平純司,他:妊婦の経時的姿勢,運動変化が腰部に

与える影響.理学療法科学.2007; 22: 281‒285.

4) 武田 要,勝平純司,他:妊娠末期における歩行時の身体負荷量 分析.理学療法科学.2008; 23: 573‒577.

5) Kristiansson P, Sardsudd K, et al.: Serum relaxin, symphyseal pain, and back pain during pregnancy. Am J Obstet Gynecol. 1996; 175: 1342‒1347.

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7) 大野弘恵,村松十和,他:妊産婦の腰痛の実態─産褥早期腰痛か らの検討─.岐阜医療技術短期大学紀要.2004; 20: 35‒39. 8) 山本樹生:妊娠の生理,標準産婦人科学(第 4 版).岡井 崇(編)

医学書院,東京,2011,pp. 294‒323.

9) Herman H, Irion JM: Physical therapy intervention during labor and delivery and postpartum care. Chap15: Irion JM and Irion GL (eds): Women’s Health in Physical Therapy, Lippincott Williams & Wilkins, Philadelphia, 2010, pp. 294‒326.

10) Irion JM: Medical management and physical therapy management of high-risk pregnancy. Chap16: Irion JM and Irion GL (eds): Women’s Health in Physical Therapy, Lippincott Williams & Wilkins, Philadelphia, 2010, pp. 327‒362. 11) 山名哲郎,高橋知子,他:便失禁患者の診療の現状.日本大腸肛 門病会誌.2007; 60: 895‒900. 12) 田舎中真由美:骨盤底筋群機能障害に対する評価とアプローチ. 理学療法学.2008; 35: 212‒215. 13) 宗圓 聰:骨粗鬆症,ウェルエイジングのための女性医療.太田 博明(編),メジカルレビュー社,東京,2011,pp. 103‒110. 14) 廣田彰男(監修):リンパ浮腫の分類と診断,看護師・理学療法士 のためのリンパ浮腫の手技とケア.学研メディカル秀潤社,東京, 2012,pp. 26‒42.

15) Rich NC: Musculoskeletal disorders during the middle years and beyond. Chap19: Irion JM and Irion GL (eds): Women’s Health in Physical Therapy, Lippincott Williams & Wilkins, Philadelphia, 2010, pp. 420‒454.

16) 村上正人:線維筋痛症(fi bromyalgia: FM)の診断・治療指針,運 動器診療最新ガイドライン.中村耕三(編),総合医学社,東京, 2012,pp. 173‒177.

17) Figuers CC: Physical therapy management of pelvic pain. Chap8: Irion JM and Irion GL (eds): Women’s Health in Physical Therapy, Lippincott Williams & Wilkins, Philadelphia, 2010, pp. 144‒162. 18) 山下敏彦:慢性疼痛の診断・治療指針,運動器診療最新ガイドラ

イン.中村耕三(編),総合医学社,東京,2012,pp. 163‒167. 19) Brody LT, Irion JM: The female athlete. Chap24: Irion JM and

Irion GL (eds): Women’s Health in Physical Therapy, Lippincott Williams & Wilkins, Philadelphia, 2010, pp. 558‒582.

20) 稲葉雅章:動脈硬化(脂質異常症・高血圧・心血管系疾患),ウェ ルエイジングのための女性医療.太田博明(編),メジカルレビュー 社,東京,2011,pp. 111‒116.

21) Pabilonia W, Combs SP, et al.: Knowledge and quality of life in female torture survivors. Torture. 2010; 10: 4‒17.

22) 村井みどり,楠見由里子,他:妊婦および褥婦における腰痛の実 態調査.茨城県立医療大学紀要.2005; 10: 47‒53. 23) 岡西奈津子,木藤伸宏,他:産後の身体のマイナートラブルに対 する理学療法.医療工学雑誌 . 2010; 4: 1‒7. 24) 岡西奈津子,木藤伸宏,他:主成分分析を用いた妊婦の姿勢分類 の有用性―妊婦の姿勢変化と身体症状の関係性に関する基礎調 査―.医療工学雑誌.2010; 5: 1‒8. 25) 松谷綾子,左右田裕生,他:妊婦の腰痛に関連する新しい評価指 標―妊娠後期における前額面の姿勢と筋硬度の変化―.甲南女子 大学研究紀要看護学・リハビリテーション学編.2008; 1: 73‒80. 26) 松谷綾子,左右田裕生,他:妊娠中から出産後の姿勢アライメン トおよび筋硬度の経時的変化と腰痛の特徴.甲南女子大学研究紀 要看護学・リハビリテーション学編.2009; 2: 51‒58. 27) 平川倫恵:腹圧性尿失禁に対する理学療法.理学療法学.2010; 37: 292‒293. 28) 平川倫恵,加藤久美子,他:腹圧性尿失禁に対する理学療法.難 病と在宅ケア.2012; 18: 25‒28.

29) Hirakawa T, Suzuki S, et al.: Randomized controlled trial of pelvic floor muscle training with or without biofeedback for urinary incontinence. Int Urogynecol J. Epub 2013 Jan 11.

30) Sunaga Y, Anan M, et al.: Biomechanics of rising from a chair and walking in pregnant women. Appl Ergon. 2013; 44: 792‒798. 図 1  アメリカ理学療法士協会ウィメンズヘルス部門における専門認定のための

図 1  アメリカ理学療法士協会ウィメンズヘルス部門における専門認定のための

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