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里の舞台としての道の駅

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Academic year: 2021

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(1)里の舞台としての道の駅 −「上田道と川の駅」の20年. −. Roadside Station as a Stage of Community 山崎隆之. YAMAZAKI Takayuki. 長野大学. Nagano University. 1.はじめに. いる。「道の駅」部分は面積約41,400㎡で、駐車場に面して. 「道の駅」は、24時間無料で利用できる駐車場・トイレなど. トイレ、食堂・物販施設、交流施設が建ち、「川の駅」との間. の「休憩機能」、道路情報・観光情報・緊急医療情報などを提. は広い芝生広場になっている。芝生広場の一部には、ドッグラ. 供する「情報提供機能」 、文化教養施設、観光レクリエーショ. ンやヘリポートなども設置されている。(図3). ン施設などの地域振興施設で地域と交流を図る「地域連携機. 施設運営については、現在、地域住民を中心とした任意団体. 能」の3つの機能を持つ施設である。1993年から国土交通省. 「上田道と川の駅おとぎの里」が指定管理者となり、「おとぎの. (当時は建設省)により登録開始され、2016年には1,100ヵ. 里」を構成する8つの部会(4章で後述)が連携しながら運営. 所以上の施設が登録されており、現在では、全国どこへ出かけ. を行っている。広い敷地の維持管理、食堂の運営、物販施設に. ても見かけることのできるお馴染みの施設となっている。. おける土産物、農産物、手芸・工芸品の販売、交流施設におけ. 近年の「道の駅」は、食堂でご当地グルメが楽しめるように. るわら細工やフェイクスイーツなどの体験教室運営のほか、冬. なっていたり、土産物の販売だけでなく地元の野菜の直売に力. 季を除く4月∼12月までの間、下記のような様々なイベント. を入れていたりする施設も多く見られる。また、訪れた地域の. を行っていることが特徴となっている。. 特色を「道の駅」で知ろうと、「道の駅」を旅の目的地のひと. 4∼5月 「岩鼻の“はな”まつり」(ライブステージ等). つとして立ち寄ることも多い。こうした状況から、特に地方農. 6月. 村部においては、地域を PR する集客施設として、地域側と来. 7∼8月 「おとぎの里の夏祭り」(体験学習イベント等). 訪客側の双方から期待される施設となっていると言える。. 9月. 「安全・安心イベント」(スタンプラリー等). 10月. 「えぇじゃないか」. 本稿では、筆者も運営団体の一員として活動する道の駅であ る「上田道と川の駅」を取り上げ、これまでの活動の経過と現. 「水無月市」(もったいない市、手打そば等). (飲食ブースとパフォーマンス等). 在の活動を紹介するとともに、「道の駅」を活用した地方農村. 11月. 「秋穫祭」(大鍋、抽選会等). 部の振興という観点から、その活動の特徴を整理したい。. 12月. 「新米餅つき大会」. このほか、「川の駅」や隣接する「岩鼻」周辺を活用してか. 2.「上田道と川の駅」の概要 「上田道と川の駅」は、長野県東部地域の中心都市である上 田市の郊外に位置し、国道18号線のバイパス(上田坂城バイ. ぶと虫捕りを行う「かぶと虫育て隊」、水質や川に棲む生き物 を調べる「河川調査会」といった環境学習の取り組みなども行 われている。. パス)に面している。また、大正期に日本百景に選ばれた奇岩 「岩鼻」に隣接し、敷地の後背部では浦野川が千曲川に合流す る。(図1・図2). 3.「上田道と川の駅」20年のあゆみ 「上田道と川の駅」は、上記の概要を記載すると、非常に充. 敷地周辺はロードサイド型店舗が立ち並ぶ郊外から次第に農. 実した施設環境を持ち、それをもとに集客を図っている事例の. 村地帯に遷移していく境界エリアとなっており、岩鼻の山麓部. ようにも見えるが、実際には、困難を乗り越えて今日の姿に. に位置する集落は中山間地的性格も有している。また、“道と. 至っており、それが地域住民主導で拡大されてきたことが最大. 川の駅”という名称が示すように、「道の駅」と国土交通省河. の特徴となっている。ここでは、上田市における「道の駅」検. 川局の「水辺プラザ」 に登録されている「川の駅」が一体と. 討開始から現在までの約20年の活動経過を振り返る。(表1). なって整備されている。「道の駅」と「川の駅」の一体整備と. 3.1. 「道の駅」検討から頓挫まで(1996年頃〜2001年). 1). しては全国初の事例で、こうした事例は現在でもまだ数カ所し かない。. 上田市における「道の駅」設置の検討が開始されたのは 1996年である。検討の途上で隣接地での「川の駅」 (水辺プ. 「川の駅」部分は面積約46,400㎡で、浦野川沿いの親水路. ラザ)と合体した全国初の「道と川の駅」というプランが浮上. のほか、グラウンド(多目的広場)、緑地広場、園路となって. し、1998年に建設省道路局において「道の駅」が、建設省河 デザイン学研究特集号 Special Issue of Japanese Society for the Science of Design Vol.24-4 No.96 2017. 41.

(2) 図1 「上田道と川の駅」施設外観と奇岩「岩鼻」. 図4 秋穫祭2001の様子. 図2 「上田道と川の駅」周辺略図. 図5 秋穫祭2001で鍋をふるまう「くいやしょー」 メンバー. と川の駅」整備計画が検討された。 また、2000年に「上田道と川の駅」オープン後に活躍が期 待される地元主婦を中心とした地域活性化グループ「くいや 図3 「道の駅」「川の駅」の敷地区分. しょー」も発足し、2002年7月とされる「上田道と川の駅」 供用開始を目指して、2001年10月に供用開始プレイベントを 同地で開催しようと準備がすすめられていた。. 川局において「水辺プラザ」が登録をうけ、本格的な施設整備 の計画・整備が開始された。. 野県知事による2001年6月の「上田道と川の駅」予定地への. 一方、こうした行政主導での検討とは別に、地元では1994. 現地視察後、「道の駅」の計画は頓挫ということになった。設. 年ごろから、地域住民が川との親しみを失っていることを憂え. 計図面も検討されていた中での頓挫は、着々と供用開始プレイ. た住民有志により、地域の子供たちと川遊びや川のゴミ拾いを. ベントの準備をすすめていた地域住民側にとっては青天の霹靂. 行う活動が始められ、「道の駅」登録のころには地元青年団活. というべきものであった。. 動のひとつとなっていた。. 42. そんな中、公共事業の見直しを掲げていた当時の田中康夫長. 道の駅開業のめどが立たない状況ではあったが、せっかく準. この青年団のメンバーも加わって、1999年には「上田道と. 備してきたものを無駄にはできないと、供用開始プレイベント. 川の駅」地域振興施設研究準備会、2000年には「上田道と川. は道の駅運営シュミレーションイベント「秋穫祭2001」と名. の駅」地域振興施設研究委員会が開催され、具体的な「上田道. 称を変え実施された。(図4、図5). デザイン学研究特集号 Special Issue of Japanese Society for the Science of Design Vol.24-4 No.96 2017.

(3) 表1「上田道と川の駅」をめぐる出来事と活動の経過. 3.2.「道の駅」頓挫中(2002年〜2010年). 始となった。しかしながら、完成した「道の駅」は計画頓挫前. 「道の駅」が頓挫してしまった一方で、「川の駅」 (水辺プラ. に検討されていたものではなく、整備されたのは、災害時の備. ザ)については2002年4月に整備が完了した。地域住民側で. 蓄倉庫を併設するトイレ施設と災害時の調理室を併設する交流. は「上田水辺プラザ整備連絡協議会」を発足し、川の駅敷地内. センターの二施設で、供用開始当初の物販設備は屋外の飲料自. の維持管理業務を上田市より受託して草刈りや水辺の維持管理. 動販売機のみという「道の駅」としては最小限のものであった。. 作業を始めたほか、地域環境の勉強会の開催、フリーマーケッ. 3.3. 「上田道と川の駅」供用開始から現在まで(2010年〜. トや毎年の秋穫祭の実施など、道の駅が整備されるかわからな い先の見えない中ではあったが、道の駅整備後に思い描いてい た様々な活動を地道に取り組み、継続していった。 「道の駅」計画頓挫から8年を経て、2009年に「道の駅」の 地域振興施設の用地取得や実施設計などが再開され、2010年 4月に「道の駅」施設が完成し、 「上田道と川の駅」が供用開. 2016年) 「道の駅」供用開始後、せっかく出来上がった道の駅が閑散 としている様子を見かねた「くいやしょー」が交流センターの 目的外使用を申請し、2010年8月より飲食・物販の提供を開 始した。 地元産品や食事の提供に加え、「秋穫祭」などのイベントも デザイン学研究特集号 Special Issue of Japanese Society for the Science of Design Vol.24-4 No.96 2017. 43.

(4) 「上田道と川の駅」を拠点にした様々な自律的な活動が生ま れ、それらが団結して「上田道と川の駅」を発展させていこう とする体制も整ってきたが、収益事業の核となる「道の駅」施 設は間借り状態で飲食・物販施設としては設備も充分とは言え ない状況が続いていた。 そこで「任意団体おとぎの里」は、2012年10月より“おと ぎの里の楽市楽座”をテーマに、飲食ブースによる食品・特産 品の販売と太鼓やダンスなどのパフォーマンスを二本柱とする 屋外イベント「えぇじゃないか」(図6)を開始した。このイ ベントは、「集客による上田道と川の駅」の認知度向上とにぎ わい創出、それによる「道の駅」施設拡充への機運の醸成を目 図6 「えぇじゃないか」の会場風景. 的とし、「任意団体おとぎの里」の全ての部会が関わる年間最 大の行事となった(2013年以降も毎年10月に開催)。. 引き続き実施されていくなかで、それらの活動に参加する個人. このほか、「道の駅」供用開始前から続けられている「秋穫. や企業が集まり、加工食品や野菜、工芸品を販売する個人な. 祭」などに加え、6月の「水無月市」、ゴールデンウィーク期. どによる「よりやしょー」、飲食・物販に協力する業者による. 間中の「岩鼻の“はな”まつり」などが順次開始され、春から. 「うりやしょー」、広報活動やイベント時の舞台設営などをサ ポートする企業や個人による「やりやしょー」といった新たな 活動グループも生まれた。 また、次第に常設的に販売する商品が増えてきたことから、. 秋までイベントが目白押しという現在の状況に至っている。 こうした、地域住民側の取り組みが功を奏して「上田道と川 の駅」の来訪客数や飲食・物販施設の売り上げは次第に増加し てきた。このことを受けて、上田市により2013年5月に交流. 2011年7月に上記の活動グループの手によって、交流セン. センターの隣に食堂を中心とする飲食・物販の独立した施設が. ターの隣に仮設テントの物販所「おとぎの里物販所」が設置さ. 新設され、2014年4月には「任意団体おとぎの里」が「上田. れ(2014年2月の大雪で倒壊し、その後2015年6月にユニッ. 道と川の駅」の指定管理者となった。. トハウスで再建)、この仮設テントでは農産物の販売やわら細 工の実演・体験などが行われるようになった。. 現在はさらに来訪客数が増加し、新設された飲食・物販施設 も手狭になってきたため、物販の一部を交流センターに移し、. そして、2012年4月「くいやしょー」を中心に「上田道と. 仮設物販所を交流施設として体験教室や会議に利用することで. 川の駅」を拠点に活動してきた各グループを関係法令・活動内. 売り場を確保している状況だが、農産物直売所を中心とした物. 容別に分類した8部会とする任意団体「上田道と川の駅おとぎ. 販施設のさらなる増設を目指して上田市への要望などを行って. の里」 (以下、「任意団体おとぎの里」と表記)が発足した。. いる。. 2). この8部会の中には、「道の駅」供用開始以前から「川の駅」 (水辺プラザ)で活動してきたグループも加わっている(各部 会の概要は4章で詳述)。 「任意団体おとぎの里」は、 “持続可能な豊かな地域の創造”. ① あきない部会 2000年に発足した地元主婦を中心とした地域活性化グルー. を理念に掲げ、“地域住民が主体となり、地域の抱える課題を. プ「くいやしょー」から発展した部会。現在は、「道の駅」施. 地域資源を活かしながら、ビジネス的手法を用いて解決し、コ. 設における飲食・物販の営業を行い(図7)、後述する「食品. ミュニティーの再生を通じてその利益を地域に還元する”こと. 部会」「農林水産物部会」「あとりえ部会」会員が出品する商品. を目指すとしている。8つの部会は、収益事業である「あきな. の販売委託を請け負っているほか、各部会に所属する会員の取. い部会」「食品部会」「農林水産物部会」「あとりえ部会」と、. りまとめや各種事務手続き、施設の運営・管理業務も担ってい. 公益事業である「ふるさと部会」「てらこや部会」「安全・安心. る。. 部会」、両事業をサポートする「企画・プロモーション部会」. また、営業規模の拡大に伴い、2013年に「株式会社おとぎ. という構成となっており、収益事業と公益事業を同時展開し、. の里」という名称で法人化している。. 収益事業により公益事業を支える旧来の村社会のようなかたち. ② 食品部会. を取りつつ、「上田道と川の駅」を新しい公共の場としていく ことが意図されている。. 44. 4.「上田道と川の駅おとぎの里」8部会の概要. デザイン学研究特集号 Special Issue of Japanese Society for the Science of Design Vol.24-4 No.96 2017. 「あきない部会」と同様に「くいやしょー」に起源をもつ部 会。「任意団体おとぎの里」発足にともない、施設における飲.

(5) 図7 飲食・物販施設内の食事処「岩鼻」. 図8 自家製味. 図9 交流センター内の農産物コーナー. 図10 交流センター内の手芸・工芸品コーナー. 図11 体験教室の様子. 図12 環境整備活動の様子. 食・物販の営業を「あきない部会」とし、食に関する商品開発 を「食品部会」とした。かつて養蚕の盛んだった上田市を象徴. の仕込み風景. 「任意団体おとぎの里」会員企業の味. 蔵で熟成され、「上田道. と川の駅」の食堂の料理に利用されている。. する桑の実を使ったソフトクリームなどの地元産の農産物をつ. 最近では、手打ちそばづくりのグループが新たに立ち上が. かったオリジナル商品を開発し「上田道と川の駅」で販売して. り、イベント時の販売や手打ちそば体験のプログラムも実施さ. いる。. れている。. また、「任意団体おとぎの里」の理念である“持続可能な豊 かな地域”を実現するため、地域住民参加の食づくりを進めて おり、毎年12月に行われる自家製味. の仕込みは「上田道と. 川の駅」の恒例行事となっている(図8)。仕込まれた味. は. ③ 農林水産物部会 「道の駅」供用開始後に生まれた「よりやしょー」のうち、 農林水産物を販売する個人会員により、構成された部会。「道 の駅」物販施設における農林水産物の販売(図9)を通じた地 デザイン学研究特集号 Special Issue of Japanese Society for the Science of Design Vol.24-4 No.96 2017. 45.

(6) 域の農林水産業の振興と地産地消、および里山・里川の保全活 動を行っている。 部会内では、りんご、ぶどう、野菜など同じ農産物をつくる 生産者で「部門」をつくり、基準を定めて出荷する農産物の品 質向上に努めているほか、旬の時期には「ぶどう祭り」「りん ご祭り」といった農林水産物部会独自の販売イベントも開催し ている。 また、里山保全の目的で地元産の「まき」や「まきストー ブ」も販売し、消費者へ里山の手入れの重要性を伝えるととも にエコライフの提案を行っている。 ④ あとりえ部会 「道の駅」供用開始後に生まれた「よりやしょー」のうち、. 図13 河川調査会の様子. 手芸・工芸品の制作・販売を行う個人会員により構成された部 会。「道の駅」物販施設における手芸・工芸品の販売(図10) のほか、わら細工などの伝統技術の伝承のための実演・体験、 芸術・趣味の表現活動を行う会員による体験教室の実施(図 11)やギャラリー展示も行う。 ⑤ ふるさと部会 「川の駅」整備後に「上田水辺プラザ整備連絡協議会」で取 り組んできた草刈りや水辺の維持管理作業などを担ってきたグ ループからなる部会である。地元諸団体と連携しながら、花植 え・草刈り・ゴミ拾いなど、「上田道と川の駅」や地域の魅力 アップ活動・環境整備活動(図12)を行っている。. 図14 川遊びの様子. 2013年度には、上田市「わがまち魅力アップ応援事業」の 助成を受け、「上田道と川の駅」と岩鼻の千曲公園・里山遊歩 道などに花桃を植樹し、地域振興と賑わいの創出を図る「はな もも大作戦」に取り組んだ。 ⑥ てらこや部会 「川の駅」整備後に「上田水辺プラザ整備連絡協議会」で環 境学習に取り組んできたグループからなる部会。地域の文化や 自然環境を知る・学ぶ・教えあうことを通じて地域への興味を 誘起することを目的に活動を行っている。 漁業協同組合との連携により実施されている「鮎の稚魚放流 会」、指標とする水棲昆虫を採取し水質を評価しながら川への 興味と理解を深める「河川調査会」(図13)、浦野川親水路で の「鮎のつかみどり」、定期的に整備を実施している浅瀬を利. 独立して開催され、翌年から9月開催に移行して「安全・安心. 用しての「川遊び」(図14)など、主に地域の子供たちの参加. イベント」と改称して現在に至っている。. (同行する父兄を含む)を募り、各種の環境学習活動が行われ. 「安全・安心イベント」は、ぺリポートや備蓄倉庫が設置さ. ている。. れるなど地域の防災拠点となっている「上田道と川の駅」の役. ⑦ 安全・安心部会. 割を紹介することを目的に、消防署・警察署・自衛隊など協力. 地域の防災・交通安全の推進と健康づくりを掲げ、「道の駅」. 団体による出展(降雨体験車、消防自動車、自動車走行シュミ. 供用開始以前から「秋穫祭」内の「防災コーナー」などのイベ. レーターなどを展示)を見て回りながら防災について学ぶ「安. ントを実施してきたメンバーからなる部会。. 全スタンプラリー」を中心に、「防災ディスカッション」「炊き. このイベントは、2011年11月には「防災イベント」として. 46. 図15 安全・安心イベントの様子. デザイン学研究特集号 Special Issue of Japanese Society for the Science of Design Vol.24-4 No.96 2017. 出し訓練」などが行われ、楽しみながら安全について学ぶこと.

(7) 5.「上田道と川の駅」の特徴 道路利用者の利便施設である各地の「道の駅」が日常的に利 用される飲食・物販施設において地域の物産を拡充させている 現状に対し、「上田道と川の駅」が前述のような春から秋にか けて多数のイベントを実施していることは、非常に珍しいこと のように思える。 だが、3章で述べたこれまでの経緯を踏まえると、「上田道 と川の駅」という場所に人々が集い楽しむイベントこそが「上 田道と川の駅」の原点であったと言える。 「上田道と川の駅」は計画の頓挫から施設の供用開始までの 図16 イベント時のステージパフォーマンスの様子. 8年の間、「秋穫祭」などのイベントを繰り返し実施してきた。 このことは、この場所の価値を示して「道の駅」整備を願うあ る種の“市民運動”であったとも言える。また、「上田道と川 の駅」供用開始後もその思いは続いており、2012年より開催 されている秋のイベント「えぇじゃないか」の開始目的のひと つは、一日も早く施設の拡充が図られることを目指し、にぎわ いを創出することであった。 この“市民運動”の担い手の中心となっているは、「上田道 と川の駅」の立地する地元(上田市半過地区周辺)の住民たち であるが、「上田道と川の駅」の整備が地元への利益誘導とし て考えられていたわけではない。現在の「上田道と川の駅」運 営団体である「任意団体おとぎの里」の会員は、上田市内各所 や隣接町村にも広がっている。「任意団体おとぎの里」代表世. 図17 地域貢献型自動販売機. ができる地域住民向けイベントとなっている。(図15). 話人の石井孝二氏の言を借りれば『パフォーマンスでも販売で も、この場所で何かを表現したい人が「おとぎの里」の仲間 (会員)』なのであり、この場所での様々な活動は、地元の子供. このほか、安全・安心部会では、岩鼻など「上田道と川の. たちと始めた川遊びやゴミ拾いに端を発しているが、その当初. 駅」周辺を歩く「健康ウォーキング」や、「上田道と川の駅」. から趣旨に賛同する地域外の人々にも門戸が開かれたもので. の敷地及び周辺の安全パトロールなどに取り組んでいる。. あった。. また、地元との結びつきの強い部会であることから、2016. 「任意団体おとぎの里」の掲げる目標には、「地域」という言. 年度より、「上田道と川の駅」が立地する半過(はんが)自治. 葉が何度も登場するが、そこで捉えられている地域の枠組みは. 会の役員が部会長を務め連携を図っていく体制となっている。. ゆるやかなものになっている。むしろ「上田道と川の駅」で. ⑧ 企画プロモーション部会. は、ここを拠点に活動しようとする人々の輪が“地域”であ. 「道の駅」供用開始後に生まれた「やりやしょー」から発展. り、その総体が運営団体の名称にもなっている「おとぎの“里. した部会。「上田道と川の駅」で行われる様々なイベントの運. (コミュニティ)”」なのである。その意味で、「上田道と川の. 営のほか、マスメディア広告(テレビ・ラジオ・雑誌・新聞. 駅」は、地縁の縛りから解放された現代的なコミュニティに. 等)の企画制作や「おとぎの里ホームページ」の管理運営、印. よって、地域振興施設として期待される「道の駅」が運営され. 刷物(ポスター、チラシ等)の制作など、「上田道と川の駅」. ている、という独自性を有している。. の広報活動を行なっている。(図16). 道路利用者のための休憩施設を核として誕生した「道の駅」. また、「上田道と川の駅」全体に関わる各種の企画について. は、この20年の間に地域振興施設としての性格を強めてきた. 立案・実施をサポートしており、2016年度には売り上げの一. が、「上田道と川の駅」は地域に立脚しつつも“里(コミュニ. 部を「上田道と川の駅」での地域貢献活動費として地域に還元. ティ)”が様々な活動を展開するための“舞台(ステージ)”と. するなどの仕組みを持つ「地域貢献型自動販売機」の設置につ. して施設を活用していく「道の駅」の新たな展開可能性を示す. いての企画・調整に取り組んだ。(図17). 事例ではないかと考える。 デザイン学研究特集号 Special Issue of Japanese Society for the Science of Design Vol.24-4 No.96 2017. 47.

(8) 6.おわりに まとまった文章で「上田道と川の駅 おとぎの里」の活動が 紹介されるのは、おそらく本稿が初となる。多岐にわたる活動 が展開されている現状を十分に説明しきれなかった部分もある かと思うが、活発に活動を展開するこの「道の駅らしからぬ道 の駅」に、筆者と同様に可能性を感じ、関心をいだいていただ ければ幸いである。 最後に、本稿の執筆にあたっては、「任意団体おとぎの里」 代表世話人の石井孝二氏にこれまでの経緯について、詳しくお 話を聞かせていただくとともに、資料を提供していただいた。 記して謝意を表したい。 【補注】 1) 「水辺プラザ」は,水辺のにぎわい創出を目的に,市町村 の行う河川,渓流沿いの交流拠点整備と一体・連携して, 基盤として必要な河川整備等を国土交通省が実施する事 業. 「おとぎの里」の名称は,この地域に伝わる唐猫伝説(湖 2) だった上田盆地が村人を困らせるネズミをネコが追い出し た際,岩を食い破って逃げたことで湖の水が流れ出し,千 曲川と岩鼻が誕生した)に由来している.. 48. デザイン学研究特集号 Special Issue of Japanese Society for the Science of Design Vol.24-4 No.96 2017.

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