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特集 多主体複雑系のパラダイム 特集にあたって

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Academic year: 2021

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・特集にあたって

木嶋 恭一

‖=‖=l川‖=川===‖‖‖‖==‖‖=‖川Il‖‖川‖‖=‖=‖川‖lI‖川‖=‖川‖‖=‖‖l‖‖l=‖====‖川‖川l=lll=‖‖‖‖==什‖‖‖川==ll州l=‖=州 を構成していくべきか等,基礎的な方法論から実践的 な問題分析まで課題は無数にある. 最近,企業経営では,進化,ホロン型経営,インキ ュベーション(ふ化)など企業を1つの生物とみなす ことにより,「生命体」に学ぶ洞察的な議論が展開さ れ,新しい経営理論が創造されつつある.戦後,近代 合理性科学へのアンチテーゼとしてシステム論が生物 学等を中心に生まれてきた状況となんと似ていること だろう. 変動の時代に科学を捉え直すには勇気が必要である. その中で,人間を含むシステムの科学も現在大きな変 革の時期を迎え,人間や組織を要素とする複雑なシス テムに関する知見はここしばらくの間にかつてないほ ど充実してきている. 本特集で,我々は,要素還元論・機械的世界観・2 項対立図式で特徴づけられる近代合理主義科学だけで はもはや閉塞状態であると確信し,多主体複雑系と呼 ぶ新しいパラダイムを提案する.このパラダイムでは, 個人や組織,社会の様々な知的決定主体(エージェン ト)は何らかの固有のリアリティ(内部モデル)に準 拠しあるいはそれを相互に参照・共有する中で活動し ていると見る.このように,何らかの世界についての リアリティを表す内部モデルを持ち,それを相互に参 照し活動し,さらに高次のエージェントを構成するよ うな自律的エージェントからなるシステムを多主体複 雑系と呼ぶ.すなわち,多主体複雑系パラダイムは, 人間や組織・集団を典型的な例とする異質で複数の意 思決定主体が関与する状況を,内部参照モデルを持っ た知的決定主体がネットワーク的に相互作用するシス テムとして捉え,その構造や相互作用を解明しようと するものである.

2.各論文の概要

本特集の題材は,社会システム,経済システム,組 織論,さらにはこれらを対象としたシミュレーション など多岐にわたっており,また人工的なエージェント オペレーションズ・リサーチ

1.特集のねらい

本特集の目的は,社会科学の境界領域を積極的に探  ̄求するために,社会システム,経済システムなど様々 な分野での現実に対する問い直しと再構築のための理 論的,方法論的基礎を論じ,多主体複雑系(あるいは, ポ1)エージェントシステムPolyLagent System)と呼 ぶ新しいシステムパラダイムを提唱することにある. 今までとは違ったことが社会全体で確かに起こりつ つある.それも政治の変革,経鱒構造の激変,消費者 行動様式の変化など枚挙にいとまがないほど様々な局 面で.特に,社会の情報インフラストラクチャの分野 では,情報通信技術がネットワーク,オープンシステ ム,ダウンサイジング, マルチメディアに代表される 革新を加速し,経済成長鈍化と技術革新とのギャップ が拡がりつつある.そのような中で,ギャップの主な 原因は,社会・経済・企業・個人など技術革新を活用 する側が,旧態依然たるパラダイムしか持ちあわせて いないからではないか,という点がしばしば指摘され ている. 現象の変化の速度は我々が社会を捉える目よりも速 く動いているように見える.科学技術によって社会経 済システムが強く連結された世界が,地球規模で出現 しようとしている.ひょっとすると我々は,産業革命 以上の社会的変革の渦中にいるのかもしれない. 社会的変革の現象は,組織,経済,社会システムの あらゆる分野にわたって,新しい方法論を求めている. 複雑なシステムとしての組織や個人からなる人間活動 システムをどのように扱うか,社会を構成する基礎原 理であるシンボル的相互作用のマルチメディアや情報 ネ■ットワークによる変化をどのように捉えるべきか, また技術と社会のかかわりをどのように捉えるか,環 境問題などに村し我々はどのような問題解決システム きじま きょういち 東京工業大学大学院 〒152 目黒区大岡山2−12−1 580(4) © 日本オペレーションズ・リサーチ学会. 無断複写・複製・転載を禁ず.

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のシミュレーションによる分析など新しい方法論も積 極的に模索されている.しかし,様々な領域でのダイ ナミックで自律的なエージェントの相互作用,エージ ェントが持つ世界観の変換とそのための方法は,各執 筆者共通の関心の対象になっている. まず,木嶋論文では,多主体複雑系パラダイムを3 つのキーワード(すなわち,システムと環境の融合, 内部モデル,ネットワーク)で特徴づけ,その葦昧を いわゆるシステム論の立場と関連させながら解説して いる.ついで,多主体複雑系パラダイム に基づく具体 的なモデルとして知的ポリエージェント学習モデル

(Intelligent PolyLagent Learning Model;I− PALM)を提唱しその基本的アイディアを展開してい る. 次に,高木論文は,電子空間に入り込んだ人間同士 でつくるポリエージェントシステムの挙動に関心を向 け,人間はマルチメディアを使うときどのような心理 的特徴を示すのかを検討している.人間が言語を使っ て状況的認識をすると循環性や物語性というコミュニ ケーションの構造特性が現れるが,表象情報の扱いが 容易となるマルチメディア空間では,その特徴がます ますあらわになり,そこでは表象コミュニケーション による心理活動とその交換による架空の社会的活動が 進行すると述べている.その結果,人間は電子空間の 中でもともと持っている心理特性を一層あらわにする と結論づけている. 3番目の出口論文では,社会科学にとってのポリエ ージェントシステム観の意味を説明し,複数のエージ ェ 形成するメカニズムやエージェント間の階層的関係を 分析している.特に,複雑なシステムとしての社会科 学の特質と複数のリアリティを扱う科学としての社会 科学の特質の2つの軸を重視して,自律的エージェン トのリサーチイニシアチブとしてのポリエージェント システムの分析と社会科学の関係について解説してい る. 寺野論文は,「計算論的組織理論」と呼ばれる立場か ら,単純な機能を持つエージェント群に適当なパラメ タを設定することによって,社会システムにみられる 協調,競合,流行,問題解決などの現象を説明しよう と試みている.特に,分散環境で協調しながら問題解 決を行う学習可能なエージェントに適したアーキテク チャ「組織学習指向型分類子システム」に基づき,社 会システムの分析研究にとって人工知能の技術の適用 が有効で,そこから得られる知見がORの対象とする ようなきわめて実践的な問題の解決にも適用可能であ ると主張している.

最後に,畝見論文は人工生命に関する最新の研究成

果を解説している.進化のシミュレーションを用い集 団行動を考察し,また学習するエージェントの集団行 動についても,適応速度と安定性のトレードオフを指 摘したうえ,社会システムの設計と理解の面での,人 工生命の視点の社会科学の重要性を強調している. 本特集がきっかけとなって,社会システム,経済シ ステムなど様々な分野での現実のシステムに対する問 い直しと再構築に読者の関心が少しでも向けばこれに まさることはない. 参考文献 [1]高木・木嶋・出口(監修・執筆),マルチメディア時 代の人間と社会−:ポリエージェントソサイエティ, シリーズ社会科学のフロンティア第1巻,日科技連出 版,1995 [2]高木・木嶋(編),マルチメディア社会システムの諸 相,シリーズ社会科学のフロンティア第12巻,日科技連 出版,1997 1997年9 月号 (5)581 © 日本オペレーションズ・リサーチ学会. 無断複写・複製・転載を禁ず.

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