Title
Synergistic Growth Inhibition by 9-cis-Retinoic Acid Plus
Trastuzumab in Human Hepatocellular Carcinoma Cells( 内容の
要旨(Summary) )
Author(s)
建部, 英春
Report No.(Doctoral
Degree)
博士(医学)甲 第759号
Issue Date
2008-03-25
Type
博士論文
Version
URL
http://hdl.handle.net/20.500.12099/23126
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氏名(本籍) 学位の種類 学位授与番号 学位授与日付 学位才受与要件 学位論文題目 審 査 委 員
【42】
建 部 英 春(岐阜県) 博 士(医学) 甲第 759 号 平成 20 年 3 月 25 日 学位規則第4条第1項該当Synergistic Growthlnhibition by9-C/s-Retinoic Acid Plus Trastuzumabin Human HepatoceJlular Carcinoma Ce[ls
(主査)教授 森 脇 久 隆 (副査)教授 高 見 剛 教授 吉 田 和 弘 論文内容の要旨 【背景・目的】 肝細胞癌(HCC)は近年の診断法や治療法の発展にも関わらず,未だ最も予後不良な癌の一つである。 したがって,HCCの有効な予防・治療法の開発は臨床において緊急の課題であるとともに,肝発癌の メカニズムの解明は,これらの課題を克服していく上で重要なprocessであると考えられる。我々は 今まで,合成レチノイドの一つである非環式レチノイドによる肝癌化学予防の有効性を報告してき
た。レチノイドは,核内受容体である retinoic acid receptor(RAR)またはretinoid X receptor
(RXR)に1igand として結合し二量体を形成したのち,DNA上の応答領域である retinoic acid
response element(RARE)あるいはretinoid X response element(RXRE)に結合して様々な標的遺
伝子の発現を調節する。特にRXRは,RARのみならず様々な核内受容体とヘテロニ量体を形成し種々 の遺伝子の発現を調節するため,核内受容体familyの"master regulator"としての役割を果たし ている。RXR,RARによって制御される遺伝子は,細胞の分化・増殖・死(apoptosis)といった基本的 活動を制御しているため,これら核内受容体の発現・機能異常は,細胞の異型化・悪性化に直接関与 するものと考えられている。 我々は今までに,RXRαがRas/ERK/MAPKにより特定のアミノ酸残基で恒常的にリン酸化され転写活 性機能を喪失していること,更にはリン酸化されたRXRαはユビキチン/プロテオソーム系による分 解を受けずに細胞内異常蓄積し,dominantnegativeに正常RXRの働きを阻害することを明らかにし てきた。この結果は,肝発癌メカニズムの一つとしてRXRαのリン酸化にともなう機能不全とレチノ イド不応性の状態が存在することを意味するとともに,RXRαとRXRαのリン酸化シグナルを標的とす る新たな肝発癌予防法の可能性を示唆するものである。そこで本研究では,受容体型チロシンキナー ゼ(RTK)に属するEGFRfamilyの一員で,Ras/ERK/MAPKを活性化するHER2に対するヒト化モノクロ ナール抗体であるTrastuzumab(Herceptin◎)と,RXRの1igandである9TCIs-retinoic acid(9cRA) の併用処理が,ヒト肝癌細胞に対して相乗的な増殖抑制効果を及ぼすか否かを検討し,そのメカニズ ムについて解析した。 【方法】 まず,ヒト肝癌細胞株6種(HLF,HLE,HepG2,Hep3B,HuH7,PLC/PRF/5),および正常ヒト肝細胞株 (Hc)のEGFR,HER2,HER3,ERK,Akt蛋白の発現および活性化(リン酸化)を,Western Blot(WB)法を 用いて比較検討した。次に,HLFとHc細胞を,9cRA,およびTrastuzumabでそれぞれ濃度を変えなが ら単独あるいは併用処理し,細胞増殖抑制の相乗効果をCIindexを用いて検討した。また,HLF細胞 を5pM9cRA,10トIg/mlTrastuzumab,およびこれらの薬剤で併用処理し,HER2,RXRα,ERK,Akt,Stat3蛋 白のリン酸化状態をWBにて検討した。また,同条件下におけるアポトーシスの誘導をTUNEL法に
ー83-て,RAREおよびRXREの転写活性の変化をLuciferase reporter assayにてそれぞれ比較検討した。 【結果】 肝癌細胞株HLF細胞ではEGFR,HER2,リン酸化HER2(p-HER2),p-HER3蛋白が過剰発現し,その他, 今回検討したすべての肝癌細胞株でHER3蛋白の発現を認めたが,正常ヒト肝細胞株Hc細胞ではこれ らの蛋白の発現は認められなかった。9cRAおよびTrastuzumabは,Hc細胞と比較し低濃度で,HLF細 胞の増殖を抑制した。また,これらの薬剤の併用は,HLF細胞に対して相乗的なアポトーシスの誘導 と,細胞増殖の抑制効果を示した。HLF細胞においてTrastuzumabは,HER2,RXRα,ERK,Akt,および Stat3蛋白のリン酸化を抑制し,9cRAもHER2,RXRα,ERK,およびAkt蛋白のリン酸化を抑制したが, 両剤の併用処理によってこれらの抑制効果は更に増強された。また、RAREおよびRXREの転写活性 も9cRAおよびTrastuzumabの併用処理によって有意に上昇した。 【考察・結論】 肝発癌の過程において,RXRαはリン酸化され機能不全をおこし,レチノイド不応性の状態に陥って いるため,RXRαのリン酸化を阻害しその機能を回復することは,肝発癌予防(治療)における有効な strategyである。本研究では,抗HER2モノクロナール抗体であるTrastuzumabが,HER2の活性化(リン 酸化)を阻害することで,その下流に位置するRas/MAPK,PI3K/Akt,Jak/Stat3といった細胞内シグナル を抑制し,結果としてRXRαのリン酸化を抑制してその機能を回復することが明らかになった。すなわ ち本研究では,Trastuzumabの作用によって十分な非リン酸化RXRαが確保されたところに,1igandであ る9cRAが作用することによって,RARE,RXREの転写活性が有意に増強し,相乗的なapoptosisの誘導と 肝癌細胞の増殖抑制効果が発揮されたものと考えられた。また,9cRAそのものにもHER2の活性化阻害 作用が認められたことより,9cRAとTrastuzumabは協同的にHER2に作用している可能性も示唆された。 データは非掲載であるが,Trastuzumabとレチノイドとの併用による,相乗的な肝癌細胞に対する抗腫 瘍効果は,9cRAのみならず非環式レチノイドとTrastuzumabのcombinationでも認められている。近年, 様々なRTKやリン酸化シグナルに対する分子標的薬剤の開発が進んでいるが,その中でも特 に,multikinaseinhibitorであるsorafenibが,第Ⅲ相試験においてHCC患者の0Verallsurvivalを改 善したことは注目すべき報告である。今回の我々の発見は,RXRαの1igandであるレチノイドと,RXRα のリン酸化シグナルをtargetとする分子標的薬剤との併用による,新たなる肝発癌予防法の可能性を 切り開くものであり,今後,肝癌の化学予防研究を進め,有効な肝発癌予防法(治療法)を開発してい く上で,非常に意義深い結果であると考えられた。 論文審査の結果の要 旨 申請者 建部英春は,ヒト肝癌細胞株HLFを用い,レセプター・チロシン・キナーゼHER2を抗体 Trastuzumabで阻害することにより,核受容体RXRαのリン酸化すなわち不活化が抑制され,HLF細胞 のレチノイド感受性が回復することを明らかにした。この知見は,肝癌の combination chemoprevention/chemotherapyに新しい展開をもたらし,臨床腫瘍学及び肝臓病学の進歩に少なか らず寄与するものと認める。 [主論文公表誌]
Synergistic Growth Inhibition by 9-Cl㌻-Retinoic Acid Plus Trastuzumab in Human HepatocellularCarcinoma Cells
Clin Cancer Res14,2806T2812(2008).