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対人不安傾向が会話内容の記憶に及ぼす影響 ~会話が喚起する感情との関連の検討~

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Academic year: 2021

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対人不安傾向が会話内容の記憶に及ぼす影響

会話が喚起する感情との関連の検討

学校教育専攻 人間形成コース 吉 里 肇 はじめに 対人不安傾向が高いことが原因で人と接 することに困難を感じてしまう人がいる。 人間は,人とかかわりを持たなければ生き ていけない。対人不安傾向の高い人は,様々 な問題を抱えていることが多い。このこと から,対人不安傾向を低減させると同時に, 対人的場面で積極的に生活できるようにな ることは意義深いことであると考えられる。 これまでに多くの不安を含む感情と記憶 の間の関連の研究が,行われている(e.g・9

Bradley, Greenwald, Petry, & Lang, 1992 神谷, 1997 1998 Wagenaar, 1986 ; Wenzel & Holt, 2002)。しかしなが ら,これらの研究においては,アプローチ 法の問題や,刺激の信頼性,妥当性の問題 などが挙げられている。 そこで本研究では,感情全般と記憶との 関 連 の 理 論 を 用 い て , 刺 激 と し て , 神 谷 (1998)のようなさまざまな感情を喚起する 会話文を用い,対人不安傾向と記憶との関 連を検討することにより,対人不安傾向の 一側面を明らかにすることを目的として研 究を進めた。 研究 I 目的 Neisser (1978) の提言や,神谷 (1998) の研究における問題を考慮、した上で,新た に,実生活の場面に即した形での様々な感 指 導 教 員 皆 川 直 凡 情を喚起する会話文を作成することを試み ることを目的とした。 方法 大学生の対入場面で伏,不快感情を喚起し た出来事を自由記述で収集した。その後収 集したエピソードより会話文を作成し,大 学生に評定を求めた被験者は,大学生 113 名で、あった。 結果および考察 様々な感情を喚起する会話文を被験者の 評定を基に因子分析を行った口その結果, 様々な感情を喚起する会話文は,快,不快 および中性の 3因子で構成されていた。さ らに確証的因子分析の結果,快,不快およ び中性の感情は AICの値が,直交モデ、ル よりも斜交モデ、ルを支持した結果より,相 互に関連した次元であることが明らかにな った。 以上のことより,実験室場面においても, 伏,不快および中性という快一不快度を喚 起することができ, Neisser (1978)の述べ ている生態学的妥当性のある日常の生活に 準拠した記憶課題を作成することに成功し たD 研 究E 目的 対人不安傾向という個人差要因が,様々 な感情を喚起する会話場面の記憶課題にど のような影響を及ぼすかの検討することを A 斗 品 つ 〆 ω

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目的とした口 方法 対人不安傾向の高低という個人差要因を 有する大学生 54名に様々な感情を喚起す る会話文を読んだ際にどのような感情を喚 起するかを評定させた。その後,様々な感 情を喚起する会話文内容の偶発的自由再生 課題を行った。 結果および考察 様々な感情を喚起する会話文の偶発的自 由再生課題において,会話文の快-不快度 および興奮一安静度による再生成績への影 響が示された。 対人不安傾向という個人差要因ごとの反 復測定分散分析の結果,対人不安傾向の高 い被験者は,会話文の快-不快度と興奮一 安静度の交互作用が示されなかったのに対 して,対人不安傾向の低い被験者において は,両要因の交互作用が見られることが明 らかになった。この対人不安傾向の低い被 験者における交互作用は,興奮度が高く不 快感情を喚起する会話文を有意に再生する ことを示していた。 総合的考察および今後の研究 本研究の結果は, Wenzel

&

Holt (2002) による,対人不安傾向の高い被験者は,脅 威的な刺激に関して,その刺激の脅威的な 部分にのみ注意をするために,精綴化処理 を行いにくいという結論と一致している。 この結果は,対人不安傾向の高い被験者は, 刺激内容の不快な部分にリソースを消費し てしまうために,記憶課題の精綴化処理を 行わないという Ellis& Ashbrook (1988) の 提 唱 し て い る Resource Allocation Theory を支持するものであると考えられ る。

Mogg, Mathews, & Weinman,(1987)の 強調している Vigilance-AvoidanceTheory を対人不安傾向に当てはめて考えると,対 人不安傾向の高い個々人は,対入場面での 不安を発見することを促進するために不安 に関する注意バイアスを示すが,長い間そ の状況に自分を晒すことに耐えられず,実 際にはその状況の精微化処理を回避すると いうことになる。そのため,対人不安傾向 の高い個々人は,その不安場面を現実的に 評価するために不安場面を正確に再生する ことが困難になると考えられる。この結果 は,対人不安傾向の高い被験者が対人不安 を維持してしまうことに影響を与えている と考えられる。 また,治療的介入として,自己教示訓練 によって対人不安傾向が改善されることが 明らかになっている(例えば,根建, 2002; 伊藤・根建・長江, 2000;長江・根建・関 口, 1999)。自己教示訓練において対人不安 傾向が改善される理由は,本研究の結果か ら説明することができる。つまり,対人不 安傾向の側面と考えられる不快内容の記憶 への脆弱性が改善されることで対人不安傾 向が改善していると考えられる。 先に述べたが,対人不安が改善されるこ とによって, 日常生活をより快適に過ごす ことが可能になると考えられることより, 本研究の成果は,非常に有意義なものであ るだろうO 今後は,対人不安研究における基礎研究 を進めるとともに,対人不安に関する臨床 的介入研究を促進し,相互の研究を発展さ せていくことが望まれる。 F h υ 円 / ω

参照

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