滋賀大学経済学部研究叢書第
6号
現代西ドイツ直接原価計算論序説
一一一
相対的直接原価計算論を中心として
両 頭 正 明 著
滋賀大学経済学部研究叢書第
6
号
現代西ドイツ直接原価計算論序説
一一相対的直接原価計算論を中心として一一
両 頭 正 明 著
は し が き
まず,本書のねらいと構成について述べておきたい。本書は標題が示すよう に,現代における西ドイツの直接原価計算論をリーベル (Riebel,P.)の相対的 直接原価計算論を中心としてわれわれの解釈によってその体系ならびに機能に ついて論じたものである。西ドイツにおける真に経営経済学的な意味での直接 原価計算論は,われわれの見解によると,シュマーレンパッハ(Schmalenbach, E.)の限界原価計算(Grenzkostenrechnung)から発展してきたものと考えら れる。しかし,本書ではテーマの関係から西ドイツにおける直接原価計算論の 歴史的な発展過程についてはごく簡単に触れるに止めた。これは他日を期さな ければならない。 本書では,第I部において現代西ドイツ直接原価計算の形態としてその類型 的な発展をわれわれの解釈によって検討した。第I
部第1
章では,われわれの 解釈する直接原価計算論の主張を交えて,直接原価計算の基本形態を考察した。 われわれの解釈では,現代の代表的な西ドイツの直接原価計算論はリーベルに よって提唱されている相対的直接原価計算論であると考える。相対的直接原価 計算は多様な作周囲と基準対象にもとづいて相対的な直接原価と直接収益に関 する情報を多面的に提供する機能をもつものである。この点において,英米の ダイレクト・コスティング (directcosting)と基本的に異なる性格をもってい る。つまり,ダイレクト・コスティングの場合,操業という1
つの原価作用因 を基礎に原価の固・変分解を行い,各種の機能を遂行するための原価情報を提 供するものである。われわれは西ドイツにおける直接原価計算の発展過程をみ るとき,シュマーレンバッハにみられるように操業という1
つの原価作用因を 基礎にした限界原価計算からより多くの原価作用因を基礎にした直接原価計算 へと展開されてきた過程を直接原価概念の相対化・多様化過程として把握する ことができる。そして,そこにおいて現在の段階では,漸く支配的な直接原価 計算形態となりつつある相対的直接原価計算までの発展の姿を認めることがで きる。われわれは企業の経営事象を的確に原価計算システムに反映・写像させ るには多様な原価作用因を基礎にした相対的直接原価計算システムが有効であると考えている。第I部第2章ではシミーレビッツ CChmielewicz,K.)の直接 原価計算論をわれわれの立場から紹介・検討した。 第
1
1
部では第I
部の論述を踏まえて,現代西ドイツにおいて支配的な原価計 算形態となりつつある相対的直接原価計算論を研究した。まず,第1
主義ではそ の概説を行った。相対的直接原価計算論の簡単な歴史的位置づけをし,基礎計 算の意義と特色を述べ,相対的直接原価計算の機能面である特別計算としての 原価管理,経営意思決定 価格政策その他,棚卸資産評価の問題をごく簡潔 に要点のみを述べた。第2章では相対的直接原価計算における原価の本質につ いて考察した。第3章では目的中立的・普遍的な原価情報を提供する基礎計算 の意義と内容,ならびに,その時間関連性の問題について検討した。第4
章以 下は相対的直接原価計算の機能的側面(特別計算機能)を取り扱っている。第 4章では相対的直接原価計算の価格政策機能を検討した。付論では価格下限論 を考察した。なお,本書で付論というのはその直前の章の理解を深めるために 付したものである。第5章では相対的直接原価計算の棚卸資産評価(財務諸表 上の損益決定)機能を考察した。また,付論では直接原価計算の棚卸資産評価 機能を論じた。第6章では相対的直接原価計算の短期経営成果計算機能を考察 した。付論では短期経営成果計算の方法について歴史的な観点をも考慮に入れ ながら直接原価計算の立場から検討した。第7章では相対的直接原価計算の実 務への適用例について考察した。 以上が本書の構成とねらいの一端である。もちろん,本書でもって相対的直 接原価計算論のすべてを論じたとは考えていなし、。その扉を少し聞いた段階で あり,無数の研究すべき課題が横たわっているのが実情である。本書を今後の 研究のためのスタート台としたい。 誠に拙い本書ではあるが,本書が成るまでには実に多くの方々のご温情を賜 わった。ここに記して感謝の意を表わしたし、。まず,神戸大学経営学部教授溝 口一雄先生には大学院在学以来今日まで大変長い間にわたって筆舌に尽し難い ほど多大のご指導・ご厚情を賜わっている。先生は小生に西ドイツ・フンボル ト財団 CAlexandervon Humboldt-Stiftung)の留学研究員として西ドイツの ゲッテインゲン大学CUniv.Gδttingen)での研究に従事する機会を与えて下さっ大学のリュッケ教授 CProf.Dr. Lucke, W.)には1年3カ月の間快適な研究環境 を与えて下さり,ご親切なご指導を賜わった。西ドイツでは,また,フランク フル卜大学のリーベル教授にもご指導を賜わった。また,神戸商科大学名誉教 授,大阪学院大学商学部教授阪本安一先生には学部のゼミナール以来実に長い 間絶えず小生を励まし続けて下さっている。到底,本書では御高恩に報いるこ とはできないが,本書を出発点としてさらに精進を誓うものである。溝口先生 を中心とする神戸大学管理会計研究会の諸先生,特に,小林哲夫教授,谷武幸 助教授には日噴貴重なご教示を賜わっている。また,阪本先生を中心とする会 計学研究会の諸先生にも変らぬご指導を頂戴している。勤務先の滋賀大学経済 学部の諸教授,特に,小倉栄一郎先生,小林健吾先生,大矢知浩司先生,清水哲 雄先生にはつねに温かいご指導・ご厚情を賜わっている。また,文部省科学研 究費補助金,ならびに,財団法人村尾育英会から本書の研究についてご援助を 賜わった。最後に,本書の刊行を認めて下さった滋賀大学経済学部に謝意を表 わしたい。 昭和55年12月16日 両 頭 正 明
目 次
はしがき第
I
部 現代西ドイツ直接原価計算の形態...・H ・...・H・....・H ・....・H ・.1
第1
章 西 ド イ ツ 直 接 原 価 計 算 の 形 態(
1
)
…H ・H・....・H ・...・H ・...・H ・....・H ・.3
ー 一 わ れ わ れ の 見 解 I はじめに・・・・・・…・…・・…・…・・・……・・・…・・…・…・・・・・・・・・・…・・・・・・…・・・・…. 3 II 全部原価計算と直接原価計算の関係………...・H ・..………. 4I
I
I
直接原価計算の性格と分類のメルクマール………...・H ・...5
I
V
直接原価計算の基本形態………...・H ・..……...・H ・...7
V 結び...・H ・..……...・H・..………...・H ・H ・H ・...・H ・..…・ 13 第2章 西 ド イ ツ 直 接 原 価 計 算 の 形 態(2)…・…………H ・H・-…H ・H ・....・H ・..14 一一一ンミーレビソアの所説を中心とLてI
はじめに………..…-…・・・……・・・…...…..…・…・・・・……...……...14 II 直接原価計算形態の分類…...・H ・...・H ・..………...・H ・...・H・14m
比例原価計算(限界原価計算)・・……・H ・H ・H ・H ・...・H ・...・H ・..…..16I
V
相対的直接原価計算………...・H ・-…...・H ・....・H ・...・H ・...・H ・....19 V 相対的比例直接原価計算...・H ・...・H ・..…………...・H ・..…….23V
I
結び……...・H ・..………一…...・H ・H ・H ・..………...・H ・..……..24 第1
1
部 相 対 的 直 接 原 価 計 算 論 第1章相対的直接原価計算論概説…………....・H ・..…...・H ・....・H ・....・H ・.29 I はじめに・・・・・・……・・・・・・・・・・・・・・…・・・・・・…・・…・…・…・・・・・・…・・…・…・…...29 II リーベルの所説の位置づけ………...・H ・...・H ・..……….29 凹 基礎計算の意義...・H ・..…………・・………...・H ・...・H ・..…...・H ・..…・・ 31I
V
基礎計算の特色…………...・H ・..…………...・H ・...・H・...・H ・..…….32 V 原価管理...・H ・..………...・H ・...・H ・..………...・H ・..……….39V
I
経営意思決定一一価格政策その他...・H・-………H ・H ・-…・・…4
0
V
I
I
棚卸資産評価...・H ・.,………..,・H ・...・H ・H ・H ・..………...・H・..…4
1
v
m
結 び・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・4
2
第2章 原価の本質……...・H ・...・H ・-……・・……...・H ・..……...・H ・H ・H ・..43 I はじめに・・…・………・・…....・H ・..……...・H ・..…...・H ・..……...・H ・....431
1
リーベルの問題提起…...・H ・...・H ・..………...・H ・..……'"・H ・..…….4
4
m
価値的原価概念の問題点...・H ・..…………...・H ・..……...・H・...・H ・...45I
V
帰属計算問題としての原価額の決定………...・H ・..……'"・H ・.,…….4
9
V 結び………...・H ・..………...・H ・...・H ・...・H ・..……...・H ・..….55 第3章基礎計算論...・H ・..…....・H ・..…...・H ・..………...・H ・..…・・H ・H ・..,・H ・5
7
第1
節基礎計算の意義…...・H ・..…...・H ・..…...・H ・..…………...・H ・..….5
7
I
はじめに....・H ・-…...・H ・..………-…・・……...・H ・...・H ・5
7
1
1
基礎計算の意義...・H ・..………...・H ・..……...・H ・..…...・H ・H ・H ・..….5
7
凹基礎計算の特色...・H ・..……...・H ・...・H ・..…………'"・H ・H ・H・...5
9
I
V
基礎計算における原価範曙……...・H・..…...・H ・..…...・H ・...・H ・...6
0
V 基礎計算における基準対象………...・H ・...・H ・..………...・H・..…・ 64V
I
結び…....・H ・H ・H ・..………・・…...・H ・'"・H ・..……・…'"・H ・...・H ・6
7
第2節基礎計算の時間関連性………...・H ・...・H ・...・H・...・H ・68 I はじめに………...・H ・..………...・H ・...・H ・H ・H ・..………….681
1
基礎計算の概念と本質...・H ・...・H・...・H ・..……...・H ・..………….6
9
皿基礎計算の時間関連性・H ・H ・H ・H ・..…………...・H ・...・H ・..………・ 70I
V
暦時期間基礎計算...・H ・...・H ・..………...・H ・H ・H ・-・…・……・….72 V 時間経過計算による補足………...・H・...・H・..……・7
5
V
I
結び・…...・H ・...・H ・...・H ・-………'"・H ・...・H ・-…....・H ・...…7
8
第4章価格政策…...・H ・H ・H ・..………...・H ・...・H ・...・H ・..80 I はじめに……・・…・・…・・…・・………...・H ・...……...・H ・..……・… 80II リーベル理論の概要...・H・-・……...・H・..………...・H・...・H・...80 皿 相対的直接原価計算と価格政策...・H・H ・H・...・H・...………...・H・...84
I
V
結び…...・H ・..…...・H・H・H・..………....・H・..…H・H・...…...・H・..9
6
(付論〉 価格下限論…・.
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1
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価格下限の意義...・H・..…...・H・-・…...・H・...・H ・...・H・-・……...・H・.
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(1)価格下限の意義……...・H・..……...・H ・..………...・H・H・H・...・H・.
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)
全部原価補償と価格下限...・H・-・…...・H・-・……...・H・...・H・-….
1
0
0
(
3
)
部分原価補償と価格下限…...・H ・...・H・-…...・H・H・H・..…...・H・.
.
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4
)
結 び.
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1
0
9
II 価格下限の決定……...・H・H・H・..……...・H・..…...・H・..……...・H・..….
1
0
9
(1) 価格下限の意義……...・H・..…………...・H・...・H・H・H・..…...・H・.
.
.
1
0
9
(2) 生産能力が一定の場合の価格下限の決定………...・H・..…...・H・...112 (3) 生産能力が変化する場合の価格下限の決定...・H・..…………...・H・118(
4
)
結び・...・H・H・H・...・H・....・H・-・…...・H・...・H・....・H・...・H・...・H・1
2
3
第5章棚卸資産評価………...・H・...・H ・...・H・...・H・..……125 I はじめに…...・H・...・H・..…...・H・...…・・…・・…・・…・・……...・H・...・H・125 II 棚卸資産評価の特徴……・・H・H・...・H・-…...・H・....・H・...・H・....・H・.
1
2
6
III 棚卸資産の製造原価…………...・H ・..……...・H・...・H・...・H・...・H・..128W
商事貸借対照表と相対的直接原価計算の承認可能性...・H ・...・H ・...129V
商事貸借対照表と相対的直接原価計算の合目的性……...・H ・..…・…1
3
3
V
I
税務貸借対照表と相対的直接原価計算の承認可能性...・H ・...・H ・.
.
.
1
3
5
W
結び…...・H・...…………...・H・..………・H・H・..………...・H・...・H・..138 (付論〉 直接原価計算と棚卸資産評価・…....・H・H・H・...・H・...・H・H・H・.
.
.
1
3
9
H.G.クルーゼの所説の検討I
はじめに…...・H・-…・…・・・…・・……・・・……・…・…・・…...・H・..…..…..…1
3
9
II 損益決定のための原価計算に対する要請……...・H・..…・H・H・..……・1
4
0
III 全部原価計算と棚卸資産評価………...・ ・....…...・ ・・・...・ ・...143 IV 直接原価計算と棚卸資産評価………...・H ・...・H ・....…...・H ・-………151
V
結び...・H・..………...・H ・..……...・H ・..………...…….157 第6章短期経営成果計算...・H・...……H ・H ・H ・H ・....…...・H ・....……H ・H ・...160 I はじめに一一短期経営成果計算の意義・………H ・H ・-一…H ・H ・-…一1601
1
リーベルの相対的直接原価計算の検討………...・H ・..…・162 III ラスマンの期間成果計算の検討...・H ・..……...・H ・..…………...・H ・...164 IV 結ひ¥………...・H ・...・H ・-…...・H ・H・H ・..…...・H ・..………・173 (付論) 短期経営成果計算の方法……...・H ・H ・H・..………・175 I はじめに・・…・……ー・…・…・・・・・・・・・・・……・…・・…・・…・…・…・・……・…...1751
1
短期経営成果計算の方法…...・H ・..………...・H ・..……...・H ・H ・H ・..…・176 III 全体原価法による短期経営成果計算………...・H ・-…...・H・-…・179 IV 売上原価法による短期経営成果計算……...・H ・..…H ・H ・..…...・H ・-…185 V 結び...・H ・..…...・H ・H ・H ・..………...・H ・..………...・H ・-……….201 第7章相対的直接原価計算の実務的適用…...・H ・..………...・H ・...・H・...202I
はじめに……・…・・……・・……・…...・H ・…・・…・・…・……・・・…・……...2021
1
原価部門計算……...・H ・..…...・H ・-…....・H ・....・H ・...・H ・H ・H ・....・H ・..203 田原価負担者計算...・H ・..…………...・H ・-………...・H ・...・H ・...206 IV 成果計算……・……・・H ・H ・-……...・H ・...・H ・...・H ・...・H ・...・H ・...210 V 結び………...・H ・..………...・H ・H ・H ・..…………...・H ・...・H ・...212第
1
章
西ドイツ直接原価計算の形態(1)
一 一 わ れ わ れ の 見 解 一 一
1 . は じ め に 西ドイツにおける直接原価計算の発展過程を考察する場合,われわれは限界 原価計算(
G
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から相対的直接原価計算(
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へとL、う大きな流れを認めることができる。限界原価計算は変 動原価計算(
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ということもでき, これには(1)総括的固定原 価補償を行う変動原価計算(
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summarischer F
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と(
2
)
段階的固定原価補償を行う変動原価計算C
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との2
つの形態のものがみられる。これに対 して,相対的直接原価計算には(
3
)
総括的固定原価補償を行う相対的比例直接原 価 計 算(
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と.(4)段階的間接原価補償を行う相対的純粋直接原価計算(
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との2
つの形態のものがみられる。1)われわれは,本書では一貫して以上のよう な西ドイツにおける変動原価計算または限界原価計算から相対的直接原価計算 への発展過程を広くわれわれのいう直接原価計算の発展過程として捉えていこ うとするものである。本章ではこのような西ドイツにおける直接原価計算の発 展過程におけるその基本的な形態分類の素描を目的としている。 1)Moews
,D
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, Zur Aussag,ゆhigkeil neuerer Koslenrechnungsve柿hren,B
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, 1969, 5.16.33.C
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, Beln.ebliches Rechnungswesen--2. E:げolgsrechnungR
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, 1973, 5.149・176 なお,メ←ヴスの直接原価計算の形態論に ついては,河野二男教授著「原価計算と価格決定」昭和52年1月,中央経済社, 39~45 頁に固定費回収計算の観点からの論評がある。4 第I部 現代西トイツ直接原価計算の形態
I
I
.
全部原価計算と直接原価計算の関係
まずはじめに,全部原価計算と直接原価計算の関係についてのわれわれの基 本的な理解を明らかにする。この両者の関係を明らかにするさいに重要なのは, 伝統的な全部原価計算と近代的な直接原価計算とを峻別するメルクマールは何 であるかということである。その決定的なメルクマールは結合原価(Verbun -dene Kosten)の取扱で、ある。直接原価計算では結合原価が原価負担者へ配賦き れないのがその基本的な特徴である。従って, このことから直接原価計算は部 分原価計算 CTeilkostenrechnung)とよばれることもある。2) 原価の結合性 CVerbundenheitder Kosten),従ってその基礎になっている 給付の結合性は,給付種類CLeistungsart)および給付単位CLeistungseinheiten) に関連してみられる。まず,給付種類(製品の種類〕についてみると,ただ1 つの給付種類に作用する原価は給付種類の直接原価(Einzelkosten)であり,複 数の給付種類に共通して作用する原価は給付種類の間接原価 CGemeinkosten) と よ ば れ て い る 。 直 接 原 価 計 算 で は 個 々 の 給 付 種 類 に 対 し て 真 の 間 接 原 価 (Echte Gemeinkosten)の配賦を行わないのである。ここに,真の間接原価と 2 ) 原価計算の形態を捉える場合,全部原価計算と部分原価計算とし、う分類と,全部原 価計算と直接原価計算とL、う分類とがある。前者は給付単位の原価構成の範囲につい て全部原価か部分原価かを考えるものである。後者では,直接原価計算とは給付単位 の原価構成のみならず,場所(職場,部門.領域,工場なと〕ごとに.または,各種 の意思決定左統制のために広く直接原価を使用する原価計算方法をL、う。そこでわれ われは本書ではこのような後者の観点,すなわち,全部原価計算と直接原価計算との 分類の観点から西ドイソの直接原価計算を考察の対象にするo直接原価計算を部分原 価計算とLて捉えないわけである。もL.直接原価計算を部分原価計算として捉える なら:
i
.
18世紀の素価計算(primecosting)にまで遡らなげれぽならないからである。 これはわれわれの直接原価計算にとってあまり意味がないと考える。溝口一雄教長は この点について次のような見解を述べておられる。「直接原価計算における製品原価 は,現在のところで』工部分原価左Lての扱いをうけているとも考えられる杭 この原価 計算の適用範囲は次第にひろがりつつあるので.その今後の動向いかんによっては, 全部原価と部分原価の区別それ自体の意義は失われるかもLれなL、。」同教授著「最新 例解原価計算」中央経済社.39頁。は厳密に原価の把握が行われる場合には,個々の基準値に対して帰属計算させ ることができない原価である。次に,給付単位(製品の単位)についてみると, 個々の給付単位に作用する原価は操業依存原価または変動原価(比例原価〉で あり,すべての給付単位に共通して作用する原価は操業非依存原価または固定 原価である。直接原価計算では給付単位に対して固定原価は配賦されないので ある。 これに対して,全部原価計算の場合には,給付種類に対して間接原価を配賦 し,また,給付単位に対して固定原価を配賦するのである。この場合,給付種 類の全部平均原価が明らかにされるので,平均原価計算ともよばれる。このよ うな全部原価計算の場合には,全部単位原価は飯売価格と対比されて,給付単 位当りの全部原価利益が明らかにされる。従って,それは給付単位損益計算と L 、う特徴をもっているといえる。これに対して,われわれのL、う直接原価計算 の場合,全体利益または全体原価は,全部原価計算の場合のように給付単位の 単位原価または単位利益としてや,給付種類の期間原価または期間利益として 決定されないで,つねに企業全体の期間損益額として決定される。従って,こ の場合,期間損益計算としての特徴をもっているといえる。 次に,原価概念の把握・理解については,全部原価計算と直接原価計算との 聞には何ら相違はみられない。従って,原価把握
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)
原価の 具体的な把握の仕方ーについても両者の聞に相違はないのである。両者の相違 は把握された原価を給付対象および給付領域に対して帰属計算させる場合にあ らわれる。全部原価計算--r-はすべての原価が給付単位にまで帰属計算されるの に対して,直接原価計算の場合には,給付単位または給付種類に対して直接的 に作用する原価だけが帰属計算されることになる。 以上がわれわれの全部原価計算と直接原価計算の基本的な関係についての理 解である。このような理解を基礎にして,われわれは以下の議論を進めていき たし、と思う。I
I
I
.
直接原価計算の性格と分類のメルクマール
すでに述べたように,全部原価計算と直接原価計算とを峻別する決定的な基6 第I部 現代西ドイツ直接原価計算の形態 準は,直接原価計算では給付種類に対する間接原価の配賦および給付単位に対 する固定原価の配賦を断念することである。その他のメルクマールはこの基本 的な基準から導き出すことができる。ここでは,すべての直接原価計算形態に 共通する性格を考察する。 直接原価計算は売上高と原価との結びつきから補償貢献額計算 (Deckungs-beitragsrechnung)とよばれてL、る。われわれは, リーベル (Riebel,P.)にも とづいて,補償貢献額とは売上高と一定の原価との差額であると規定すること ができる。的このことから,すべての直接原価計算を補償貢献額計算という名称 のもとに総括して捉えることができる。そこで,個々の直接原価計算の諸形態 はそれぞれの補償貢献額の具体的内容によって相違することになるといえる。 以上が,すべての直接原価計算形態に共通する性格である。 われわれはこのように直接原価計算を補償貢献額計算として捉え,補償貢献 額を何らかの原価に対する売上高の余剰額(残額)として理解した。そこで, 直接原価計算形態を分類するためのメルクマールは,第
1
に,補償貢献額を算 定するために売上高と比較される原価範曙 (Kostenkategorien)であり,第2 に,補償貢献額算定以後の計算の内容である。ここで‘の原価範曙につu
、ては, 期間原価全体を操業依存性によって比例原価(変動原価)と固定原価とに区分 する。そしてまた,原価負担者に対する直接的な帰属計算可能性によって原価 負担者直接原価と原価負担者間接原価とに区分できる。このような2
つのメル クマールを組合わせることによって,次のような 4つの原価範曙がえられる 4) (a)比例原価負担者直接原価 (b)比例原価負担者間接原価 (c)固定原価負担者直接原価 (d)固定原価負担者間接原価 このような比例原価と固定原価,直接原価と間接原価という1
対の概念の区3 ) Riebe.IP., Das Rechnen mit Einzelkosten und Deckungsbeitragen,刀hF,N.F.,
11 Jg. 1959, S.225. Riebel, P., Einzelkosten-und Deckungsbeitragsrechnung,
Opladen, 1972, S.46. 4 ) Moews, D., a. a.0.,S.24.
分はそれぞれ相対的なものである。従って,つねに,その区分の基準値が明示 されていなければならなL、。例えは,比例原価と固定原価の概念は操業,生産 量,顧客の注文量, ロット量というような基準値に関連づけられる。直接原価 と間接原価の概念は,例えば,原価負担者,原価負担者グループ,原価部門, 原価部門グループ,工場というような基準値に関連づけられる。この場合,あ る基準値において直接原価として把握された原価は,それより下位の分解段階 の基準値では間接原価となる。工場間接原価のように最高の基準値の段階にお いて直接的に帰属計算できない原価は企業の直接原価として把握される。従っ て,企業のすべての原価はつねに伺らかの基準値階層において直接原価となる。 相対的直接原価といわれるゆえんである。 そこで,以上のことから補償貢献額の算定の仕方によって,次の4つの直接 原価計算(補償貢献額計算〉の基本形態が成立する。そのさい,個々の直接原 価計算の形態における補償貢献額は売上高とすでに述べた4つの原価範曙との 差額である。5) (直接原価計算の基本形態円 (原価範鳴〕 (I)総括的変動原価計算…………・比例直接原価・比例間接原価 (2)段階的変動原価計算...・H・-…ー比例直接原価・比例間接原価・固定直接原価 (3)総括的相対的直接原価計算・・・・・・比例直接原価 (4)段階的相対的直接原価計算・・…比例直接原価・固定直接原価
I
V
.
直接原価計算の基本形態
次に,われわれはメーヴス7)があげている例を手掛りにして,直接原価計算(補 償貢献額計算〉の基本形態を明らかにする。いま,A
,B
,C
,の3
つの製品 を製造している企業がある。製品A
,B
は製造過程において一定の類似性をもっ ているので,一定の原価を原価負担者グループ直接原価として直接的に帰属計 算することができる。第1
表では,各製品について売上高と原価が示されてい る(括弧内の数字は間接原価の配賦によって算定されるものである)。 5 ) Moews, D., a. a.0., 5.25. 6) これは筆者がメーヴスの原価の図表に手を加えて作成したものである。 7) Moews, D., a. a.0., 5.25ff.8 第I部 現代西ドイア直接原価計算の形態 第1表 (Moews,D., a. a. 0., S.26) 基 準 値 製 品 A 製 品 B 製品グノレプA B 製 品 C 企業全体 純売上高 3,105 1,638 4,743 984 5,727 製品の比例直接原価 1,380 702 2,082 615 2,697 製品グループA Bの比例直接原価 (152) ( 77) 229 229 製品全体の比例間接原価 ( 69) ( 35) (104) ( 31) 135 製品の固定直接原価 560 220 780 280 1,060 製品グループA Bの固定直接原価 610 610 すへての製品の固定間接原価 (1)総括的固定原価補償を行う変動原価計算 まず最初の直接原価計算の基本形態は,変動原価計算で総括的な固定原価補 償を行うものである。この直接原価計算の形態は,ふつう,変動原価計算,直 接原価計算(DirectCosting),限界原価計算(MarginalCosting,
Grenzkosten-rechnung)または,限界計画原価計算 CGrenzplankostenrechnung)とよばれ ているもので,補償貢献額計算の一種である。8) 変動原価計算システムでは比例原価(変動原価)だけが給付単位に付加され る。これに対して,固定原価の取扱いは一様ではない。ここでの総括的な固定 原価補償の場合には,固定原価はただ
1
つのブロックとして総括されており, その全体額が一括して個々の製品の補償貢献額から補償される。補償貢献額が 固定原価のブロックよりも全体として大きい場合には,企業は期間利益を得る ことになる。 変動原価計算システムにおいて,補償貢献額を売上高とすべての比例原価(変 動原価)との差額と考える場合には,比例製品間接原価の配賦が必要となる。 この限りでは,直接原価計算の基本原則である間接原価の配賦を行わないとい う原則は部分的に破られることになる。 総括的固定原価補償を行う変動原価計算にもとづく損益計算は,第1
表の 8 ) この直接原価計算の形態は伝統的に各論者によって展開されてきているものである。Schmalenbach, E., Rummel, K.,Plaut, H. G., Kilger, W., Agplan (ドイツ計画計算
研究会)の人々などがその代表的な論者である。なお, Agplanについては,番場嘉一 郎編「新版会計学大辞典J(中央経済社)720頁の拙稿を参照のこと。
第2表 (Moews,D., a. a. 0., S.27.) 原 価 負 担 者 A B C 純売上高 3,105 1,638 984 比例原価負担者直接原価 -1,380 702 - 615 比例原価負担者間接原価 221 - 112 31 補償貢献額 ,1504 824 338 2,666 固定原価 -2,510 期間利益 156 データから,第2表のようになる。 (2)段階的固定原価補償を行う変動原価計算 以上のような総括的な固定原価補償に対して, ここではアクテ (Agthe,K.) の変動原価計算システムにおける段階的固定原価補償が問題となる。叫アクテ は,企業の固定原価全体を1つのブロックとして取扱う方法について,それは 「伝統的な計算方法にみられる総括的な計算方法への
1
つの後退」として批判 している。つまり, Iそれは伝統的な平均原価計算における完全な原価再転嫁の 試みであり,直接原価計算の場合の発生原因原則の観点および帰属計算可能性 の観点によって区分された固定原価の補償を完全に放棄することであるJ
lOlと している。このような理由から,アクテは帰属計算可能性によって企業の固定 原価の分割を行い,それを製品固定原価,製品グループ固定原価,原価部門固 定原価,領域固定原価,および,企業固定原価に区分Lている。固定原価は基 準値階層 (BezugsgrδBenhierarchie)の最も下位のところで示され,そこでは 直接原価(Einzelkosten)として把握される。このような固定原価ブロックの分 割は,個々の給付単位への固定原価の帰属計算を意味するのではないのである。 それは,次のより高い段階の固定原価の補償に貢献する前に,原価負担者の補 償貢献額から,まず,その原価負担者にだけ作用する固定原価を補償しようと 9 ) この直接原価計算の形態はAgthe,K.,Mellerowicz, K.によって主張されている。 10) Agthe, K.,Stufenweise Fixkostendeckung im System des Direct Costing, ZjB 29 ]g.1959, S.40610 第I部 現代西トイツ直接原価計算の形態 する目的で行われるものであり,原価負担者,原価負担者グループ等に対する 発生原因原則による固定原価の帰属計算を意味している。従って,この変動原 価計算システムにおける原価負担者補償貢献額は原価負担者の売上高からその 比例直接原価,比例間接原価,および,固定直接原価を控除したものになる。 それは第3表のようなシェーマになる。 第3表 (Moews.D..a. a.O. S.29.) 原 価 負 担 者 A B C 純売上高 3.105 1.638 984 比例原価負担者直接原価 -1.380 - 702 - 615 比例原価負担者間接原価 - 221 - 112 31 補償貢献額I 1.504 824 338 固定原価負担者直接原価 - 560 220 - 280 補償貢献額II 944 604 58 1.548 固定原価負担者グループ直接原価 - 610 補償貢献額III 938 58 996 固定企業直接原価 - 840 期間利益 156
(
3
)
総括的固定原価補償を行う相対的比例直接原価計算 (1)と(2)の変動原価計算の基本形態では,比例間接原価が原価負担者に配賦さ れるので,間接原価の配賦を行わないとし、う直接原価計算の基本原則が破られ ることになる。しかし,この場合,固定原価についてはこの原則が守られてい る。すなわち,原価負担者に配賦されていないのである。これに対して,これ から述べる(3)と(4)の相対的直接原価計算 CRelative Einzelkostenrechnung)の 基本形態では結合原価の配賦を全く回避するのである。つまり,給付単位に対す る固定原価の配賦は,変動原価計算の場合と同様に.(3)と(4)の相対的直接原価 計算システムにおいても行われないのである。 ここで問題となる相対的直接原価計算の形態は相対的直接原価CRelative Einzelkosten)にもとづく補償貢献額計算といわれるもので.1958年にリーベル CRiebel. P.)によって主張されたものである。11)リーベルは,伝統的な給付単位に対する全体の原価の帰属計算に反対した。その理由は次のとおりである。「原 価負担者計算を原価計算の本来の目的として考える限り,その説明には問題が 残る。その理由は,製品に対して真の間接原価(EchteGemeinkosten)および 固定原価を帰属計算させることは決して正しい解決とはならないからである。 真の間接原価を配賦する場合には,経営における生産の結合性を否定すること になる。そして,固定原価を技術的に比例化する場合には,固定原価の性格を 否定することになる。従って,原価部門および原価負担者についての意思決定 が全部原価にもとづいて行われるときには,大きな不確定性をもつことになり, 誤りを招くことになる。J12)と述べている。 相対的直接原価による損益計算は,企業損益の決定と同時に,より一層広範 な管理目的のために実施されるという点が重要であるo ある意思決定にとって は原価負担者,原価負担者グループ,給付領域の全部直接原価 (Volle Einzel -kosten)が重要であるが,他の意思決定にとっては比例直接原価 CProportionale Einzelkosten)だけが重要となる。このようなことから,次の 2つの相対的直接 原価計算の基本形態が導き出される。13)それは, (3)の総括的固定原価補償を行う 相対的比例直接原価計算と(4)の段階的間接原価補償を行う相対的純粋直接原価 計算である。 まず, (3)の総括的固定原価補償を行う相対的比例直接原価計算であるが,そ こでの原価負担者補償貢献額は原価負担者の純売上高からその比例直接原価を 控除したものになる。次に,この原価負担者補償貢献額から比例原価負担者グ ループ直接原価が補償され,それから,比例企業直接原価まで基準値階層のよ り高い順序のすべての比例原価が補償され,最後に
1
つのブロックとしての 11) Riebel, P., Das Rech町nmit Einzelkosten und Deckungsbeitragen, ZfhF, N. F., 11Jg.1959, 5.213.238.(これは1958年 10月17日にフランクフルト・アム・7 インの化 学工業連合会の経営経済委員会でリ ベノレ教綬が行った講演要旨である。)この論文は 同教綬著 Einzelkosten.und 白ckungsbeitrags陀chnung,Opladen, 1972, 5.35叩 . に収められている。
12) Riebel, P., a. a.0.,5.213. 13) Moews, D., a. a.0., 5.30ff.
12 第I部 現代西ドイツ直接原価計算の形態 企業全体の固定原価が補償される。つまり, ここでは,固定原価ブロックを相 対的直接原価に分割しないのである。なぜなら,すでに,企業の全体の製品に 関する補償貢献額が比例原価全体をこえる全体補償貢献額として総括されてい るからである。14)このような相対的直接原価計算は第
4
表のようになる。 第4表 (Moews,D., a. a. 0., S. 31.) 原 価 負 担 者 A B C 純売上高 3,105 ,1638 984 比例原価負担者直接原価 -1,380 ー 702 - 615 補償貢献額I ,1725 936 369 2.661 比例原価負担者グループ直接原価 - 229 補償貢献額11 2,432 2,801 比例企業直接原価 135 補償貢献額III 2,666 固定原価 -2,510 期間利益 156 (4)段階的間接原価補償を行う相対的純粋直接原価計算 (3)の相対的比例直接原価計算の場合には,固定直接原価は基準値にもとづL、 て分割されないで1
つのブロックとして全体の原価負担者の補償貢献額から 補償される。しかし,一定の問題を解決するためには,原価負担者,原価負担 者グループ等に対して固定原価を分割することが必要である。例えば,ある原 価負担者の売上高がその全部直接原価,すなわち,比例直接原価と固定直接原 価とを補償するのに十分であるかどうかを検討する場合には,ここでの段階的 間接原価補償を行う相対的純粋直接原価計算を適用しなければならない。そ こでは,原価負担者補償貢献額は原価負担者の純売上高とその比例直接原価・ 固定直接原価との差額として把握される。この補償貢献額の合計額から比例原 14) ここでは,これまでの議論と同じように,他の観点からの原価の区分,例えば,原 価の流動性の作用からの区分(支出の作用からの原価区分),除去可能性からの区分は 省略されている。価負担者グルJ プ直接原価および固定原価負担者グループ直接原価とが補償さ れ,さらに,比例企業直接原価および固定企業直接原価が補償される。このよ うな意味から,この相対的直接原価計算の形態は相対的純粋直接原価計算とい われる。第
5
表にこの相対的直接原価計算が示されている。15) 第5表 CMoews,D., a. a. 0., S.32.) 原 価 負 担 者 A B C 純売上高 3,105 1,638 984 比例原価負担者直接原価 , 3180 - 702 - 615 固定原価負担者直接原価 560 - 220 280 補 償 貢 献 額I 1,165 716 89 1,881 比 例 原 価 負 担 者 グ ル ー プ 直 接 原 価 - 229 固定原価負担者グループ直接原価 610 補 償 貢 献 額II 1,042 89 1,131 比例企業直接原価 135 固定企業直接原価 840 期 間 利 益 156V.
結 び
以上,本章では西ドイツにおける直接原価計算の発展について,主として, その基本的な形態分類に問題を限定して考察してきた。今後われわれは本章で 明らかにした直接原価計算の基本形態を基礎にして,西ドイツにおける直接原 価計算の諸形態の発展過程について, さらに厳密に具体的に明らかにしなけれ ばならない。その場合,直接原価計算における諸概念の発展,直接原価計算の 機能の発展が具体的な課題となる。 15) このような直接原価計算形態はRiebel,P., a. a.0., S.228にみられる。14 第I部 現代西ドイツ直接原価計算の形態
第
2
章
西ドイツ直接原価計算の形態
(
2
)
一 一 シ ミ ー レ ビ ッ ツ の 所 説 を 中 心 と し て 一 一 し は じ め に われわれは西ドイツにおける直接原価計算の発展過程を変動原価計算(限界 原価計算,比例原価計算)から相対的直接原価計算への一連の流れとして捉え ようとする見解を前章において明らかにした。そこでは,変動原価計算として, (1)総括的固定原価補償を行う変動原価計算と(2
)段階的固定原価補償を 行う変動原価計算とがみられ,相対的直接原価計算として (3) 総括的固定原 価補償を行う相対的比例直接原価計算と(4)段階的間接原価補償を行う相対 的純粋直接原価計算とがみられ,それぞれを西ドイツにおける直接原価計算の 発展過程の上に位置づけようとした。本章では,このようなわれわれの考え方に 沿うものとして,ルール大学 (Ruhr-Uni_ Bochum)のシミーレビッツ教授 (Chmielewicz, K.)の直接原価計算の形態論を取上げて,検討を加えることに するJ
その理由は,シミーレビッツの直接原価計算論には,現代の西ドイツに おける直接原価計算についての一つの典型的な議論がみられると考えられるか らである。I
I
.
直接原価計算形態の分類 直接原価計算の形態はその適用目的からみて,次の2つの観点から規定する ことヵ:で、きる。2) (1)原価範曙の観点(
2
)固定原価または間接原価の処理の観点 まず, (1)の原価範曙の観点からの直接原価計算形態であるが, これは原価 1 ) Chmielewicz, K., Betriebliches Rechnungsw仰 n一一2.Eげolgsrechnung一一, Reinbek bei Hamburg, 1973, S.126~176. 2) Chmielewicz, K., a. a.0., S. 150ff.負担者に対して賦課される原価の範囲による直接原価計算形態を意味してい る。この観点からは,次の3つの直接原価計算形態が考えられる。 (a)比例原価計算(Proportionalkostenrechnung)(限界原価計算,変動原価 計算)一一変動原価,比例原価または比例限界原価だけを原価負担者へ賦 課する場合である。 (b)相対的直接原価計算 (RelativeEinzelkostenrechnung)一一原価負担者 直接原価だけを原価負担者へ賦課し,間接原価の原価負担者への配賦を行 わない場合である。 (c)相 対 的 比 例 直 接 原 価 計 算 (Relativeproportionale・Einzelkostenrech -nung)一一(a )と (b)との結合形態であり,変動(比例)直接原価だけ を原価負担者へ賦課する場合である。 以上述べた(1)の原価範需の観点からの直接原価計算形態は,第1表に表 わされている。3)太い線は原価負担者に対して賦課される原価範曙としての変動 原価ないしは直接原価を意味している。 第1表 直 接 原 価 計 算 の 形 態 原価の把 賦 課 握と賦課1原 価 種 類 原 価 部 門 1原 価 負 担 者 に よ る 把 握 原価計算 の形態 若干の原価部門│全体の原価部門製品) 2 3 直接, (a)( I)~ 原価 l(b)( II)~---一一一一一一一一一 計 算 l(c)(lII)亡三三三三三三三士三三三三 全部原価計算ー---空---.--4 さて次に, (2)の固定原価または間接原価の処理の観点からの直接原価計算 形態であるが,これは(1)の原価範噂の観点からの直接原価計算において原 価負担者への賦課から除外された固定原価または間接原価がどのように表わさ れ,また,どのような段階で配賦されるかということが問題となるのである。 3 ) Chmielewicz, K.,a. a.0..S. 151.
16 第I部 現代西ドイツ直接原価計算の形態 これは第1表の点線によって示されており,次の 3つの形態に区分されている。 第(1)形態一一固定原価または間接原価は原価種類計算にだけ現われ,原 価部門や原価負担者に対しては配賦されない。 第 (II) 形態一一固定原価または間接原価は原価種類計算を経て,若干の原 価部門に対して配賦されるが,全体の原価部門に対して配賦されるわけでは ない。また,原価負担者への配賦は行われなL。、 第(l
I
D
形態 固定原価または間接原価は全体の原価部門に対して配賦さ れる,しかし,原価負担者への配賦は行われなL。、 以上の2つの観点による直接原価計算形態を組合わせることによって,直接 原価計算形態は厳密に特徴づけることができる。 (a) (1)の直接原価計算形態の場合には,比例原価(限界原価)は原価負 担者に賦課されるが,固定原価は原価種類計算においてだけ把握される。 (b) CII) の直接原価計算形態の場合には,原価負担者直接原価だけが原価負担者 に賦課され,間接原価は若干の原価部門に対してだけ配賦される。この場合, 原価負担者間接原価を若干の原価部門に対して原価部門直接原価として直接的 に帰属計算させるのである。(c) (III)の直接原価計算形態の場合には,比例 直接原価だけが原価負担者に賦課され,固定原価または間接原価は原価種類計 算および全体の原価部門計算に現われる。以上は,上述の2
つの観点からの直 接原価計算形態の代表的な3つの組合わせであるが,もちろん他の組合わせも 考えることができる。このことは個々の形態について述べるときにふれること にする。 次に,シミーレビッツのあげている直接原価計算の形態である比例原価計算 (限界原価計算),相対的直接原価計算,および,相対的比例直接原価計算の3 つを順に考察する。阻.比例原価計算(限界原価計算)
比例原価計算(限界原価計算)(
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)
の形態には,次の2
つのものがみられる。(1)固定原価ブロックを伴った(固 定原価をブロックとして処理する)比例原価計算(限界原価計算)C
2
)段階的固定原価補償計算がこれである 4) (1)固定原価ブロックを伴った比例原価計算(限界原価計算)(Proportion -al-oder Grenzkostenrechnung mit Fixkostenblock) まずはじめに, (a)の直接原価計算形態,すなわち,比例原価計算(限界原 価計算)を考察する。この場合,変動原価または比例原価だけが原価負担者ま で賦課され,固定原価は原価負担者への配賦から除外される。 (a)(1), (a) (11), (a) (III)とし、う組合わせに従って,固定原価は原価種類計算,若干の 原価部門,そして,全体の原価部門にまで帰属計算せられる。しかし, (a)(I) がふつうの場合である。この直接原価計算形態はンユマーレンバッハ (Schma-lenbach, K) (1899年)によって論じられたものである。シュマーレンバッハは この直接原価計算の形態を比例原価と限界原価との同質性から限界原価計算 (Grenzkostenrechnung)とよんでいる。さらに,限界原価計算は変動原価計 算 (VariableCosting)またはダイレクト・コスティング(DirectCosting)と よばれている。限界原価計算の基本的な考え方は,周知のように,原価を固定 原価と比例原価とに分解し,比例原価は製品に賦課され,固定原価は製品に配 賦されないで固定原価プロックとして残されるというところにある。従って, ルンメル (Rummel,K)はこの原価計算システムをブロック原価計算 (Block -koste町民胎1Ung)とよんだのである。 限界原価計算の特質は単位補償貢献額(単位価格一比例単位原価)および期 間補償貢献額が算定されることにある。期間補償貢献額は利益と固定原価の合 計額であり,また,それは各製品種類についての販売数量×単位補償貢献額を 合計したものである。このような限界原価計算の要点は,個々の製品の単位補 償貢献額ならびに期間補償貢献額はそれぞれ計画利益と固定原価ブロックとを 補償するのに十分なものでなければならない, というところにある。比例原価 計算(限界原価計算)を表で示すと,第2表のようになる。5) 以上のような比例原価計算(限界原価計算)は,原価額を固定原価と比例原 4) Chmielewicz, K., a. a.0., S. 152ff. 5 ) Chmielewicz, K., a. a.0.,S. 154
18 第I部 現代西トイツ直接原価計算の形態 第2表 闘定原価ブロ yクを伴った比例原価計算 製 品〔原価負担者) 製品グループI 製フ品ク'ノレ 11 合 計 額 製 品 1 製 品 2 製 品 3 1 .売上数量 100 200 500 2.売上価格 100 300 60 3.単位比例原価 50 100 40 , 4.単位補償貢献額C2 - 3) 50 200 20 5.期間給付C1 x 2) 10.000 60.000 30.000 100.000 6.期間比例原価clx 3) 5.000 20.000 -20.000 45.000 7 .期間補償貢献額C1X4.5-6) 二 5.000 =40.000 = 10 .000 =55.000 8.固定原価 45.000 9.期間利益c7-8) =10.000 10.補償貢献率(7/ 5 x 100) 50% 67% 33% 55% 11.売上利益率C9 / 5 x 100) 10% 価(限界原価)とに分解し,原価負担者に対して比例原価(限界原価)だけを 負担させ,固定原価を
1
つのブロックとしてしか考えないので,そこに実務上 の適用の限界がみられると考えられる。 ( 2 )段階的固定原価補償計算 (StufenweiseFixkostendeckungsrech -nung) アクテ (Agthe,K.)は比例原価計算(限界原価計算)の発展形態として,こ の段階的固定原価補償計算のシステムを提案した。アクテは限界原価計算のよ うに固定原価を1つのブロックとして取扱うことは1つの後退を意味している としている。その理由は,限界原価計算の場合,固定原価と間接原価との区別 が十分なされていないことや,製品の補償貢献額はそれに帰属する固定原価を 認識しない限り意味はない, ということにある。また,製品に関する意思決定 にともなって新たに固定原価が発生する場合や,また,現在の固定原価を除去 する場合には,補償貢献額ばかりでなく,固定原価が知られていなければなら ない, としている。さらに,全部原価にしめる固定原価の割合が増大する場合 には,固定原価の帰属計算の必要性がますます大きくなるとしている。このようなアクテの基本的思考は,固定原価を単一のプロックとして考えるのではな くて,固定原価をその直接原価としての性格 (Einzelkostencharakter)に従っ て段階的に考えなければならない, というところにある。アクテの段階的固定 原価補償計算は第3表および第4表に示されている。酎 アクテの段階的固定原価補償計算は比例原価計算(限界原価計算)と較べて 損益状況をよりよく表示することができ,その限りでは一歩前進させたもので あるといえる。固定原価全体額のうちで,固定原価負担者直接原価,および, 原価負担者グループ直接原価の割合が大きくなればなるほど,それだけ比例原 価計算(限界原価計算)に接近することになる。また,アクテの固定原価の帰 属計算の方法については,たんに直接的な配賦が行われるだけで異論はないと いえる。しかし,その方法の出発点としての比例原価計算(限界原価計算)で は,直接賦課される変動原価の中に変動直接原価 (VariableEinzelkosten)ば かりでなく変動間接原価 (VariableGemeinkosten)をも含んでし、る。従って, アクテが固定間接原価については配賦を意識的に避けていることは注目すべき であるが,変動間接原価についてはその配賦が暗黙の前提とされている。この 点にわれわれは注意しておく必要があると考える。
I
V
.
相対的直接原価計算
次に,われわれは相対的直接原価計算 (RelativeEinzelkostenrechnung, またたんに Einzelkostenrechnungともいう)を考察する。7)(b)の直接原価 計算形態である相対的直接原価計算では,製品は直接原価CEinzelkosten)だけ を負担し,そしてここでは固定原価ではなく間接原価(Gemeinkosten)が問題 となる。 (b) CI) の相対的直接原価計算形態の場合には,間接原価は原価種 類計算にだけあらわれ, (b) (11)の場合には間接原価は若干の原価部門計算 にまであらわれ,さらに, (b) (IIDの場合には間接原価は全体の原価部門計 算にまであらわれる。 6) Chmielewicz, K., a. a.0., S.162u.163. 7) Chmielewicz, K.,a. a. 0., S.164ff.20 第I部 現代西ドイ 7直接原価計算の形態 第3表 段 階 的 固 定 原 価 補 償 計 算 売上給付ニ売上収益 変動原価(比例原価) 製品補償貢献額 一 製品固定原価(=固定原価負担者直接原価) 残余補償貢献額I 一 製品グノレープ固定原価(=固定原価負担者グループ直接原価) 残余補償貢献額II 原価部門固定原価(=固定原価部門直接原価) 残余補償貢献額四 一 領滅固定原価(三固定原価部門グループ直接原価) 残余補償貢献額IV 一 企業固定原価(=固定企業直接原価) 純損益(二期間損益〕 第4表 段 階 的 固 定 原 価 補 償 計 算 製 品(原価負担者〕 製品グループI 製ブ品グノレ II 製 品 1 製 品 2 製 品 3 1.期間給付 10,000 60,000 30,000 2.期間比例原価 一一5,000 20,000 20,000 3.期間補償貢献額CI-2) =5,000 =40,000 =10.000 4.固定原価負担者直接原価 -1,000 -3,000 1,000 =4,000 =37,000 5.残余補償貢献額1(3-4) 二9.000 =4,1000 6.直固定接原原価価負担者グループ 25,000
。
7.残余補償貢献額II(5-6) 二16,000 二9.000 8.固定企業直接原価 9.期間利益(7 - 8) 10.補償貢献率(3/ 1 x 100) 50% 67% 33% 11補償貢献率1(511 xI00) 40% 62% 30% 12補償貢献率II( 7 / 1 x 100) 23% 30% 13.売上利益率(911xI00) 合 計 額 100,000 -45,000 =55,000 -5,000 =50,000 -25,000 =25,000 -15,000 =10,000 55% 50% 25% 10%相対的直接原価計算の基本的思考は直接原価だけを製品に直接的に賦課し, 間接原価の製品への配賦は避けなければならない,というところにある。また, 相対的直接原価計算の目的は,第
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に,実質的に信頼でき計算技術的に正確な 原価額を決定することにあり,第2
に,経営管理に原価数値を役立てることに ある。このような相対的直接原価計算はリーベル(
R
i
e
b
e
l
,P
.
)
によって主張さ れているものである。酎彼によると,直接原価はできるだけ小さな基準基礎 ( Bezugsbasen)にもとづいて賦課きれなければならない。単純に直接原価と間 接原価とを区分・対照させるのではなくて,段階化された直接原価(第5
表, 第6表,第7表参照)9)が使用され,それらがつねにできる限り直接的に賦課さ れることになる。つまり,原価負担者直接原価は原価負担者に賦課され,原価 負担者グループ直接原価は原価負担者グループに賦課され,原価部門直接原価 直接原価の種類 1. 原(原価価負部担門者直直接接B原価 原価) 2.接原原原価価価(原)負価担部者門グループ直接グループ直 3.工場直接原価 4.工場グループ直接原価 5.企業直接原価 第5表 原 価 範 時 1.比例原価 比例直接原価 比例間接原価 第6表 段 階 的 直 接 原 価原(原価価負部担門者~I
原(原グ価価ル負部ー担門プ者i
I
工 場 │ 中 レ │ 企 直接的賦課 二直接原価 間接的配賦 1m
山 osten 二間接原価 (Gemeinkosten) 8 ) Riebel, P., Einzelkosten-und Deckungsbeitrags陀chnung. Opladen, 1972. 9) Chmielewicz, K., a. a.0., S. 126, 131 u. 141 業22 第I部 現代西ドイツ直接原価計算の形態 第7表 原 価 範 鳴 の 区 分 1.比例原価 2. 飛躍原価 3. 固定原価 1.原価負担者直接原価 11 12 13 2. 原価負担者グループ直接原価 21 22 23 3. 原価部門直接原価 31 32 33 4. 原価部門グループ直接原価 41 42 43 5. 工場直接原価 51 52 53 6. 工場グループ直接原価 61 62 63 7. 企業直接原価 71 72 73 は原価部門に賦課され,工場直接原価は工場に賦課される。 リーベルの相対的直接原価計算 (1958年)はほとんど同時にあらわれたアク テの思考(1959年)と一見類似しているが, リーベルの場合には,第5表 第 7表から明らかなように,原価の帰属計算が比例原価(変動原価)ばかりでは なく固定原価にも及んでいる。リーベルは期間給付(収益)からの控除項目の 順序はその時々の計算目的(問題設定〉に依存していることを強調している。 さらに,彼は補償貢献額の概念について,それを売上収益から任意の原価を控 除した余剰額と規定している。10) 第8表はシミーレヴィッツによって単純化された相対的直接原価計算の例で あり,リーベルの思考の基本原理だけを明らかにしようとするものである。11)第 2行自において,原価負担者直接原価が控除されているのが特徴である。また, 相対的直接原価計算では,第8表から分かるように,補償貢献額が階層として 明らかにされ,その目標値を前もって与えることができるので利益計画の設定 に利用することができる。第8図の列にみられるように,原価の帰属計算の基 準対象が大きくなればなるほど,それだけ補償貢献額は利益に近づくことにな る。さらに,第8表の上方にみられる直接原価が大きくなればなるほど,それ だけ相対的直接原価計算システムの説明力は大きくなるといえる。また,相対 10) Riebel, P., a. a.0., S.46. 11) Chmielewicz, K., a. a.0., S. 166.
第8表 相 対 的 直 接 原 価 計 算 製 品(原価負担者) 製品グループI 製フ品ク'ノレー 11 合 計 額 製 品 製 品 2 製 品 3 1.期間給付 10,000 60,000 30.000 100,000 2.原価負担者直接原価 一4,000 20,000 16,000 -40,000 =6,000 =40,000 3.補償貢献額1(1-2) =14,000 =60,000 46,000 4.原価負担者グループ直接原価 27,000
。
一27,000 5.補償貢献額11(3-4) =19,000 =14.000 =33,000 6企業直接原価 -23,000 7.利 益(5-6) =10,000 8.補償貢献率1( 3 / 1x
100) 60% 67% 47% 60% 9.補償貢献率11( 511x
100) 27% 47% 33% 10.売上利益率(7 / 1x
100) 10% 的直接原価計算では間接原価の配賦が行われないので,原価部門の経済性管理 に有益である。さらに,必要な場合には,第8表におけるすべての原価額を比 例原価(変動原価〉と固定原価とに分解することができる。 リーベルの相対的直接原価計算は各種の原価計算の目的を達成するために, 多元的な原価分類にもとづくさまざまな形での補償貢献額を伴った原価計算制 度としての意味をもっていると評価することができる。単純な形での限界原価 計算では解決することができない多岐にわたる原価計算に対する実際的な情報 要求を満たそうとするところにリーベルの相対的直接原価計算の狙いがあると 考える。v
.
相対的比例直接原価計算
以上述べてきた2
つの直接原価計算システム,すなわち,比例原価計算(限 界原価計算)と相対的直接原価計算は長所と同時にまた短所をもっている。一 方のシステムの支持者は他方のシステムに対して批判をもっている。つまり, 相対的直接原価計算の支持者は,比例原価計算(限界原価計算)に対して,そ24 第I部 現代西ドイツ直接原価計算の形態 こでは比例直接原価の他に比例間接原価をも製品に配賦されることになると批 判するのである。逆に,比例原価計算(限界原価計算)の支持者は相対的直接 原価計算に対して,そこでは直接的に賦課される相対的直接原価には比例原価 もまた固定原価も含まれているので固定原価が製品に対して配賦されることに なると批判するのである。このような双方の批判は,固定原価も間接原価も原 価負担者に対して配賦しない場合に解決されることになる。そこで, (c)の直 接原価計算形態である相対的比例直接原価計算が成立する。これは変動直接原 価または比例直接原価だけを原価負担者に負担させる直接原価計算形態であ る。12)リーベルおよびメーヴス (Moews,D.)がこの直接原価計算を取上げてい る。13)このような相対的比例直接原価計算は製品に対していかなる固定原価も 間接原価も帰属計算させないのであるから,実務上その適用に限界があるとい える。
V
I . 結 び 本章では,われわれは西ドイツの直接原価計算の発展過程におけるその代表 的な形態について,シミーレピッツの所説にもとづいて素描し若干の整理・検 討を加えた。変動原価計算(限界原価計算,比例原価計算)から相対的直接原 価計算への発展過程についての類型別分類を明らかにした。このような直接原 価計算の形態はその時代的・経済的背景にもとづいて発展してきたものである ことはいうまでもないが,この点については割愛した。最後に,西ドイツにお ける直接原価計算の特徴を若干述べて本章の結び‘に代えたい。 (1)西ドイツの直接原価計算システムでは,会計データを取扱う場合,基 礎 計 算 (Grundrechnung)と特別計算(目的別・機能別計算)(Sonder -rechnung)とに分けて考えられていること。 ( 2 )限界原価計算(変動原価計算,比例原価計算)ではどちらかといえば 原価負担者計算・結付単位計算が強調され,相対的直接原価計算では期間 12) ChrnielewIcz, K.,a. a.0., S. 167ff 13) 本書第1章参照。計算が重視されていること。 ( 3 )原価理論との関連において,原価範曙の分類を直接原価計算の中に導 入していること。 (4)相対的直接原価計算については,企業プロセスの写像という点や,期 間計算の立場からそのメリットが高く評価されていること。凶しかし,相対 的直接原価計算では基礎計算においては間接原価の配賦は行われないが, 計画や統制のためにはある程度の配賦計算が行われなければならなし、。そ こでそのように拡大された局面で‘はそれが結果的にいわゆる直接原価計算 (変動原価計算)の適用とどれだけ異るかとL、う批判がある 15)われわれは これについては,相対的直接原価計算では多元的な基準値によって原価を 帰属計算させるという点で変動原価計算とは基本的に異っていると考え る。もちろん,多元的な原価の帰属計算の困難性については問題が多いと いうことも指摘することができる。しかし,原価計算は企業の多様な側面 をできるだけ,実際に則して反映する原価情報を提供しなければならない。 今後,原価計算システムはこのように多元的な原価情報を提供しなければ ならない。そのことによって,原価計算は多くの目的(機能〉に有用な原 価情報を提供することができる。また,そのさい,他の会計情報システム との関連性にも十分注意、を払わなければならないのである。 14) 小林哲夫教綬「短期成果管理計算の機能と構造」神戸大学経営学部研究年報X 1 X, 1973, 245-299頁,および,同教綬「書評;Schweitzer