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1 . は じ め に

われわれは,まず,本章において,現代の西ドイツにおける代表的な直接原 価計算論者の1人であるリーベルの相対的直接原価計算論を概観し,次章以下 に展開される各論の手掛りをえたいと考える。まず, リーベルの所説の位置づ けを行い,さらに,基礎計算の意義と特色,原価管理,経営意思決定,棚卸資 産評価の諸問題を考察する。1)

II.  リーベルの所説の位置づけ

西ドイツにおける直接原価計算は,プラウト

( P l a u t

H. G . )

によって,

1 9 5 0  

年頃から「限界計画原価計算

J ( G r e n z p l a n k o s t e n r e c h n u n g )

という名称で,従 来からの「弾力的全部計画原価計算

J ( D i e  a u f   V  o l l k o s t e n  b a s i e r e n d e  f l e x i b l e   P l a n k o s t e n r e c h n u n g )

の批判の上に立った新しし、形態として実務に取り入れら れるようになった。2)しかし,プラウトの限界計画原価計算の理論的な基礎は,

キルガー

( K i l g e r

W.)

も指摘しているように,却すでにシュマーレンバッハ

(Schmalenbach

, E.)の「限界原価理論JC

G r e n z k o s t e n t h e o r i e )

,ルンメル

(Rummel

, K.)の「ブロック原価計算

J ( B l o c k k o s t e n r e c h n u n g )

にみられる。

また,アメリカの「ダイレクト・コスティング

J ( d i r e c t  c o s t i n g )

の議論が限 界計画原価計算の生成に大きな影響を及ぼしたことも事実である。

限界計画原価計算の特徴は原価を比例原価(すなわち,限界原価)と固定原 1 ) 

R i e b e l

, 

P a u l

, Einzelkosten.  und Deckungsbeitragsrechnung, 

O p l a d e n  

1972, 359S.  2) 

Vg

 ,.l

P l a u t

, H. G., 

Wo  s t e h t  d i e  P l a n k o s t e n r e c h n u n g  i n  d e r  P r a x i s ?

, ZfhF 1952, 

S.396ff. 

3) 

Vg

 ,.i

K i l g e r

, 

W.

, Flexible Plankostenrechnung, 

K o l n  u .   O p l a d e n

, 3. 

A u f

 ,.i1967  S.117. (豊島義一・近藤恭正教授訳

i W .

キノレガ一弾力的計画原価計算論」日本経営出 版会, 1970年9 145頁。)

30  II部 相 対 的 直 接 原 価 計 算 論

価とに分解し,比例原価だけが製品に賦課され,固定原価は期間原価として処 理され,各種の計算目的に使用されるところにある。われわれの解釈によると,

シュマーレンバッハの限界原価計算も,ルンメルのブロック原価計算も,また,プ ラウトの限界計画原価計算も,ともに,原価を単純に限界原価ないしは比例原価 と固定原価とに分解するだけであって,その結果,原価計算に対して要請せら れる各種の多様な目的を達成するための原価情報の提供(例えば,原価範曙の 各種の基準による区分とそのグループ化による多様な原価情報の提供)のため には自ら限界をもっていたものと考えられる。そこで,われわれは, リーベル の直接原価計算,すなわち, i相対的直接原価およ Eひびf補償貢献額計算J

( R e l a t i v e   E i

n z

e l k ω o s

t e

n ‑

l dI

弘冶恥

ck

ung

s

b e i

t

r

a g s

r e

ch

mu

mg)

一一相対的直接原価計算が,従 来の限界計画原価計算の批判の上に 1つの発展的な形態として提唱されてき たものと位置づけるのである。

キルガーは, リーベルの直接原価計算を,ベーム・ヴィレ

(Bohm

H .  H .   u .   F .  W i l l e )

の「補償貢献額計算J(De

c k u n g s b e i t r a g s r e c h n u n g )

,メレロヴィッ

ツ・アクテ

(Me

l1

e r o w i c z

,K. 

u .  

K. 

A g t h e )

の「段階的固定原価補償計算」

( S t u f e n w e i s e  F i x k o s t e n d e c k u n g s r e c h n u n g )

ととも

t

こ,限界計画原価計算に 対する補足計算

( E r g a n z u n g s r e c h n u n g )

として位置づけている。叫しかし,われ われはリーベルの直接原価計算を従来の限界計画原価計算に対するたんなる補 足計算としてではなしに,限界計画原価計算の発展形態と考えるものである。

それは,各種の原価計算の目的を達成するために,さまざまな形での補償貢献 額を伴なった原価計算制度としての意味をリーベルの相対的直接原価計算は もっているものと考えるからである。単純な限界計画原価計算では解決するこ とができない多岐にわたる原価計算に対する実際的な情報要求を満たそうとす るところにリーベル相対的直接原価計算の優れた点がみられる。

以下, リーベルの相対的直接原価計算を,特に,基礎計算の意義と特色を中 心に検討して,その特徴と論点を概観し,次章以下の手掛をえたいと思う。

4)  V g ,.lKilger, W., a.  a. 0..  S.  119.  (訳書, 146頁。)

1 相対的直接原価計算論概説 31 

1 1 1 .

基礎計算の意義

リーベルの相対的直接原価計算論を解明するためには,まず,基礎計算の意 義と特色を考察する必要があると思われる

( 3 4

頁の図と

3 7

頁の表を参照)05)

相対的直接原価計算を実施するために必要な一定期間の原価総額は基礎計算 (Grundrechnung)において集められる。ここで,一定期間の原価総額とは,

当該計算期間に帰属計算させることができ,その期聞における製造給付と販売 給付からなる給付原価 (Leistungskosten)および準備原価 CBereitschaftskos‑ ten)の合計額を意味している汁基礎計算という名称は,周知のように,シュマー

レンバッハによって与えられたものである♂この基礎計算は, リーベルによる と間接原価との相対的な関係で決定される直接原価,すなわち,相対的直接原 価 (RelativeEinzelkosten)を一般的に各種の計算目的のために利用できるよ うに集計し,さまざまな方法でその相対的な直接原価は組み合わされ,そして,

さまざまな計算目的一一情報要求ーーに対する特別計算 CSonderrechnung)を 迅速に構成することができるようにするものである汁われわれは, リーベルの 相対的直接原価計算の理論的な背景にはシュマーレンバッハの基礎計算と特別 計算の思考が存在しているものと考える。シュマーレンパッハは,原価計算の 分類の

1

っとして,原価計算を制度的原価計算 CSystematischeKostenrech‑ nung)と臨時的原価計算(BehelfsmasigeKostenrechnung)とに区分し,前者 を基礎計算,後者を特別計算とよんでいるグこの場合,臨時的原価計算は何ら かの特定の計算目的を果たすための原価計算(目的に応じた原価計算〉を意味 しているものとわれわれは考える。リーベルの相対的直接原価計算は,このよ うなシュマーレンバッハの基礎計算と特別計算の思考を基礎にして,それをよ

5)  Vg ,.lRiebel, P., a.  a. 0., S.135ff.  6)  Vg ,.lRiebel, P., a.  a. 0., S.142. 

7 )  V g ,.lSchmalenbach, E., Kosterechnungud Preispolitik, 7.  Auf ,.lKoln u.  Opladen 1956, S.267ff. u.  S.280. 

8)  Vg ,.lRiebel, P., a.  a. 0.,  S.135  9)  Vg ,.lSchmalenbach, E., a.  a.  0., S.267. 

32  11部 相対的直接原価計算論

り厳密にしかも実践的に適用できるように,多面的に発展させようとするもの であると考えられる。すなわち, リーベルの相対的直接原価計算の理論的基礎 はシュマーレンバッハの基礎計算を展開したものであり,その機能的な側面は 特別計算を発展させようとするものである。基礎計算は原価種類計算,原価部 門計算,および,原価負担者計算の

3

つの計算からなっている。ここに,われ われはリーベルの基礎計算がシュマーレンバッハのコンテンラーメン

( K o n t e n ‑ rahmen)

の思考を基礎にしているのを見い出すことができるのである。

I V .

基礎計算の特色

次に,われわれは基礎計算の特色について考察する。

相対的直接原価計算を実施する場合に,その基礎となる基礎計算における原 価の把握

( K o s t e n e r f a s s u n g )

の特色は,できるだけ多くの原価を直接的に把握 するというところにあり,そのために従来の原価計算におけるよりも,より多 くの厳格な基準を基礎としなければならない。10)基礎計算における原価の把握 と従来の原価計算における原価の把握との相違は,次の

2

点にあるといえる 11)

1

に,基礎計算では原価種類計算において原価を把握し集計する場合に,個々 の原価範時

( K o s t e n k a t e g o r i e )

に対するその帰属可能性

( Z u g e h o r i g k e i t )

を 考慮しなければならないこと,第2に,基礎計算では通常の原価部門,および,

原価負担のほかに,さらに,より大きな基準値,例えば,品種の変更,注文,

販売地域,顧客グループ,販売方法などを考えることができる。その場合,原 価はしばしば同時に多くの基準値に直接的に帰属計算させることができる 12)

このようなときには,計算の経済性を考慮に入れた上で,原価を基準値階層

( B e z u g s g r o s e n h i e r a r c h i e )

のできるだけ下位の段階で把握しなければならな

。、

さらに,基礎計算を構成する場合,次の

2

つの問題を規定しておく必要があ

10) 

Vg

 ,.l

R i e b e l

, 

P .

, a.  a. 

0 .

, 

S

.l

4 2 .  

11) 

Vg

 ,.l

R i e b e l

, P., a.  a. 0., S.136.  12) 

Vg

 ,.l

R i e b e l

, P., a.  a. 0., S.  136ff 

13)

(1)原価範曙による原価種類の区分とそのグループ化の問題 ( 2 )原価範曙決定の順序の問題

まず,原価範曙による原価種類の区分とそのグループ化の問題であるが, こ のことによって直接原価計算の各種の機能をより効果的に遂行することができ る。そこで,原価範曙の形成についての重要な標識として.

r

原価の主要作用因

( H a u p t e i n f l u s f a k t o r )

に対する態様

J

と「原価の支出の性格

( A u s g a b e n c h a r a ‑ k t e r ) J

とが考えられる。14)また,期間計算の正確性を期するために.

r

原価の計 算 期 間 に 対 す る 帰 属 計 算 可 能 性

( Z u r e c h e n b a r k e i t )J

による区分が重要であ る。15)なお,その上に原価の把握を正確に行なうために,各種の観点から原価 を区分することができる。

以上のような幅の広い標識によって形成された原価範曙が,基礎計算におい てどのような形で考慮されるかは,経営の構造および各種の計算目的に依存し ているといえる。その場合,原価範時はさまざまな標識によって形成されるの で,その標識による区分の順序,および,その特徴を規定しておくことが必要 である。これが第

2

の問題,すなわち,原価範囲毒決定の順序の問題である。

原価範曙の階層

( H i e r a r c h i e )

についての例が図に示されている。凶そこでは,

原価範噂が原価の支出の性格とし、う特徴によって区分されている。閉その場合,

まずはじめに.

r

原価の支出の性格」を対象との関連で特徴づけると,原価は支 出 作 用 的 原 価

(Ausgabenwirksame K o s t e n )

と 非 支 出 作 用 的 原 価

( N i c h t ausgabenwirksame K o s t e n )

とに区分しなければならない。支出作用的原価と は支出を導き出す原価で,材料費,労務費,外部用役費,租税などがこれであ る。非支出作用的原価とは支出を導き出さない原価で,自己資本に対する計算 利子,計算的企業家賃金などがこれである。この非支出作用的原価は基礎計算

13)  Vg ,.lRiebe!, P., a.  a. 0., S.  136.  14)  Vg ,.lRiebe!, P., a.  a. 0., S.  136  15)  Vg ,.lRiebe!, P., a.  a.  0., S.  137.  16)  Vg ,.lRiebe!, P., a.  a.  0., S.137.  17)  V g ,.lRiebe!, P., a.  a. 0., S.137 ff. 

34  II 相対的直接原価計算論

の領域には入らないで,特別計算の領域に入るものとわれわれは考える。従っ て, リーベルの基礎計算表にもそれは含まれていないのである。

軍量

支出の性格 (J)対象的 (2)時間的

計算期間に 対する帰属 計算可能性

主要作周囲 に対する短 期的な態様 販売給付・

製造給付に 対する帰属 計算可能性

亙盤望墾全宣塑

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