34 第II部 相対的直接原価計算論
の領域には入らないで,特別計算の領域に入るものとわれわれは考える。従っ て, リーベルの基礎計算表にもそれは含まれていないのである。
軍量
支出の性格 (J)対象的 (2)時間的
計算期間に 対する帰属 計算可能性
主要作周囲 に対する短 期的な態様 販売給付・
製造給付に 対する帰属 計算可能性
亙盤望墾全宣塑
第1 35 出が遠い原価に関する補償額(回収額〉は償却費と引当金とに区別される。こ れに対して,支出が近い原価は計算期間に対する帰属計算可能性にもとづいて,
期間直接原価
( P e r i o d e n
・E i n z e l k o s t e n )
と期間間接原価とに区分しなければな らない。また,計算期間に対する帰属計算可能性の観点から,準備原価( B e r e i t ‑ s c h a f t s k o s t e n )
を各種の原価範曙の階層に分類することができる。18)支出の性格による原価範曙と計算期間への帰属計算可能性による原価範曙が 相違する点は,図から分かるように,期間間接原価が支出が近い原価と支出が 遠い原価との双方に区分されるところにみられる。支出が近い期間間接原価は,
さらに,これが一定の区分されたより長期の期間一一上位に順序づけられた期 間の直接原価
( E i n z e l k o s t e nd e r u b e r g e o r d n e t e n P e r i o d e )
として把握される かどうか(例えば,ある年度の休暇賃金,年末賞与等)によって区分され,また これが将来の未確定の期間の直接原価( E i n z e l k o s t e no f f e n e r P e r i o d e n )
とし て決定することができるかどうか(例えば,修繕費,宣伝費等〉によって区分 される。次に,原価の主要作用因に対する態様にもとづく原価範曙について考察す る。19)この原価範曜は,とりわけ,すべての給付の種類,およびその数量につい ての短期的な処理に適用することができる。給付の種類,およびその数量が変 動するときに,それにともなって短期的に自動的に変動する原価を給付原価
( L e i s t u n g s k o s t e n )
として規定する。これは短期的に変動する期間直接原価を 構成する。それに対して,短期的には変動しないが,特定の意思決定,例えば,超過時間,労働力の操業短縮・交替・停止・解雇というような意思決定によっ て適応することができる原価は,準備原価の
1
部分を構成し,短期的には変動 しない期間直接原価(後述の除去可能操業固定原価)として集計される。準備 原価は,その主要作用因および適応可能性が一義的に規定される場合には,さ らに,その除去可能性( A b b a u f a h i g k e i t )
によって細分することができる。給 付原価はそれが給付の製造によって生ずるのか,その販売のために生ずるのか18) これについては,本書第11部第3章第1節・第2節を参照のこと。
19) Vg ,.lRiebel, P., a. a. 0., S. 138ff.
36 第II部 相対的直接原価計算論
によって,製造依存原価と販売依存原価とに区分される。この場合,製造給付 (および,その給付グループ),または,販売給付〔および,その給付グループ〉
に対する原価の帰属計算可能性を考慮しなければならない。販売依存原価につ いては,取引税,手数料,特許料,保険料などのような原価種類があり,それ は売上金額に依存しており(売上依存原価),他のものはふつう売上数量,注文 の数量・大きさ,運送距離などのような多くの複数の要因によって決定される (多くの複数の要因に依存する原価〕。また,製造依存原価についても,ロット (製造注文)数に依存する原価と製品あるいはロットの大きさの種類・数量に 依存する原価とに区分することができる。
図では,原価範曙の階層における原価種類は下から上へと集計されていくの で,基礎計算では給付原価,期間直接原価,支出が近い原価,支出作用的原価 が順に各段階において把握されることになる。これに対して,準備原価は期間 直接原価と期間間接原価とに区分され,期間間接原価はさらに支出が近い原価 と支出が遠い原価とに区分される。この図と同様のことが,他の観点によって 形成された原価範曜の階層についてもいうことができる。20)基礎計算では各種 の計算目的に応じることができるように,原価を広範に区分することが望まし い。その場合,当該経営あるいは部門の特性によって分類された原価範曙を形 成することが要請せられる。次の表はリーベルの考えているモデル経営におけ る給付の流れを前提にして作成されたもので,実務に比較的近いと思われる原 価範時の分類にもとづく基礎計算表である。
さらに,基礎計算においては,原価を把握し集計するための基準対象
( B e z u g s ‑
objekt)(工程,組織,経営部分,給付等〉の選択とそのグループ化が経営の構 造,計算の目的に適応するように行なわれなければならない。21)そのさい,生産 領域にお噴ける関係ばかりでなく,販売領域における関係も考慮しなければなら ない。基準対象をグループ化するための標識として,企業組織における責任領 域の階層によるグループ化や,生産領域および、販売領域における給付の流れに20) これについては,本書第II部第3章 第l節・第2節を参照のこと。
21) Vg ,.lRiebe!, P., a. a. 0., S. 140ff.
間滞凋菌叫↓織部首開削揖 w
..,
岡商品の場合 O I 11 皿w v
、
n四咽E E E E E皿111' lV E咽E咽E咽111時 7 」竺
原価部門原価負担者原価全体 製造部門販売部門その他製品グループa製品グ
員量
商商品グルー品フ負担者 z ループ p, 1 P. 1 p, 1 V, 1 V. 1 u a, " "..
a, a b z 合計総額全体司、bh 1 22 25 8 71 初2611 41 5 7 54 54 2 期的短28 32 11 9哩却41C 61 l 自652 65: 3 z売上依存原価50 57 19 16 69 6711 1.021 7 9~ 1.199 l.H提 4 =1 2岨29 28.'! 28! 5 v 注文処理原価41 7 7( 6 期品的E 多〈の要因に依存Lてい 五る販売依存変動原価‑1 31 41 ーあ毛一泊4 7 間てうz ‑1 31 41 ‑1 351 日5 19配6 67 1.0国75虫1.199 1.55~ 8出 直撃
変価製依造存原価l
原材料(商品投入欄)) 初44 酎1.47173 ‑‑3.73292 t 6.74 1.29 1.5O! 9.H52Z S 9.541 9 包装材料2 1 副31 52 5到 10ヵ:z ‑1 326 45 ~ 1.52! 7由‑1 4.121 7.26 1.29 1.5倒10.回E10.醐 11 接z 31 41 351 37' 51 前1.曲E83 ‑1 4.792 8.2田1.37 1.曲11.26 11.62! 12近 原宮短動力費・工場消耗品費19 169 4制 ~~唱E 38 抽' 13 事務用消耗品費41 121 12! 14 価高旅費‑1 59 副318 18: 151'、郵便料・電話料金‑1 9 1334刷46 2駈281 16 し貰金(社会的公課を含む)431 1.167 52型129E7 2.23 2.23: 17原な給料(社会的公課を含む)56 137 202 201 831 83 18 L 、租税・寄付金・謝礼金‑1 241 241 24 19価原価z 5崎1.473 副M4611 5~ 師~4.2置4.29C 初E 5冊1.473 敏光778 62 66~ 4.641 376 51 8~ 1.6割83 ‑1 4.792 8.292 1.37 1.60 11.26 15.91! 21 期間原外部修繕費621 169 副 4C l 四E3122 33: 22 宣伝費5 101 7~犯76 17 30 23 間接価顧問料および監査費22 1 4 81 ーま3 11' 24 E 621 191 副4S曲9 541 ‑1 134 7 209 回575l 25 z 568 1,砧467 82 7 75~ 5,18 37, 51 8~ 1.6副83 134 4,師8,回11,37 1,曲11,47 16,師l 26 出ヵ支:遺綾間閉原減価慣却費1181 111 剖5 7 5 44 44: 2711!l , 、引当金20 2( 21 28期価z 1181 111 割5 7 7 46 ‑1 46: 29原価総額6踊1,775 7刷酷277 82唱5,65137, 51 ~ 1,曲883 1剖4,668.50 11 1,37l 1,剖11,47 17,12' 却z期問問接原価1801 3世呈蝿1O~ 154 1刷1,冊‑1 134 7 2国‑1国1,21: 311 }; 支出が近く、短期的には変動しない期間 直接原価および間接原価5681 1目664670 5(児師75~ 4.831 1剖7~田目耳5.041
原価集計表における帰属計算対象の伝統的なグループ且化による基礎計算((Riebel, P.,a.a.O., S.153.)
38 第II部 相 対 的 直 接 原 価 計 算 論
よるグループ化が考えられる。22)リーベルはモデル経営を用いて,生産領域およ び販売領域での一定の給付の流れを仮定し,そこにおいて基準対象を各種の観 点から選択しグループ化している。従って,基礎計算における基準対象の選択 とそのグループ化は,計算の目的が,例えば,責任領域の統制にあるか,製品 グループ別の利益管理にあるか,または,その他の目的にあるかによって規定 される。一定の計算目的,例えば,利益管理のためには,しばしば多くの基準 値階層が同時に考慮きれなければならない。そこでは,各種の内容をもった相 対的直接原価計算が実施されることになる。従って,われわれは,基礎計算に おいては,各種の計算目的を遂行するための一般的な原価情報を多面的に提供 することができるように,基準対象を選択し,グループ化しておかなければな
らないといえる。
以上,われわれはリーベルの相対的直接原価計算の基礎となっている基礎計 算の意義と特色について考察してきた。問題点として,次のようなことがらを 指摘することができる。
1.ザイヒトも指摘しているように 23)各種の原価の区分の基準が必ずしも一 義的に明確ではないとL、う欠陥が存在すること。これをわれわれなりに解釈し て,より明確な原価の区分の基準を明らかにしていかなければならなL。、
2 .
基礎計算と特別計算との関係をはっきりとさせておかなければならない こと。すでに指摘したように, リーベルの相対的直接原価計算の理論的基礎と その機能的側面は,シュマーレンバッハの基礎計算と特別計算を展開したもの であるといえる。しかし, リーベルの基礎計算とシュマーレンバッハの基礎計 算(コンテンラーメン)との聞には,若干の相違がみられる。それは,すでに 指摘したように,非支出作用的原価(計算的自己資本利子,計算的企業家賃金 等〉の取扱いである。コンテンラーメンの場合には, このような非支出作用的 原価は付加原価として原価計算(基礎計算)の対象になる。しかし, リーベル22) Vg ,.lRiebel, P., a. a. 0., S. 140.
23) V g ,.lSeicht, G., Die stufenweise Grenzkostem官 hnung,ZjB 33 Jg. 1963, Nr. 12 S.700‑701.
第I 39 の場合には,このような非支出作用的原価は基礎計算には入らないで,特別計 算の領域に入り,ある特定の計算目的を達成するために必要な原価情報である,
とわれわれは理解している。
3 .
リーベルの基礎計算には,なお多くの問題点,例えば,各原価範曙にお ける個々の原価種類の性格の問題,勘定機構の問題などが残されていると考え られるが,これらについては,今後検討し一層明確に展開してし、かなければな らないと思う。相対的直接原価計算は以上のような基礎計算において組織的に把握された原 価情報にもとづいて,各種の計算目的に応じた特別計算を実施するのである。
直接原価計算の目的としては,ふつう, (1)原価管理(2 )経営意思決定(ま たは,経営計画)(3)棚卸資産評価(公表財務諸表の作成〉の3つが考えられ るが,制われわれは以下,リーベルの相対的直接原価計算において,これらがど のように考えられているかを概説的にその要点を検討しようと考える。
v .
原 価 管 理リーベルは原価計算による経営統制の原則
( G r u n d r e g e l nd e r B e t r i e b s k o n t ‑ r o l l e )
として,次の4
つのものをあげている。25)1. (a)ある責任領域の内部では,その部門でその消費数量に対して直接的 に影響を与えることができる「部門直接原価
J( S t e l l e n e i n z e l k o s t e n )
だけが統 制可能であること。(b)原価負担者計算では,原価負担者について直接的に付加的に発生す る直接原価だけが統制可能であること。
2 .
ある責任領域の内部では,その消費数量を実際に測定することができる ような「部門直接原価」だけが統制可能であること。3 .
偶然の影響をかなり大きく受ける事象は,考察例の数が「大数の法則」( G e s e t z d e r groβen Z a h l )
を満足させ,従って,偶然による変動が調整され24) 溝口一雄教授著「最新例解原価計算」中央経済社,昭和46年, 333‑340頁参照。
25) Vg ,.lRiebel, P., a. a. 0., S.12.18
40 第II部 相 対 的 直 接 原 価 計 算 論
る場合にだけ,統制可能であること。
4 ̲原価統制は関連する原価種類,および,その責任領域の内部においての み意味をもっ固有の関連システム(
B e z u g s s y s t e m )
であること。 L、し、かえれば,ある責任領域の内部では,個々の原価種類をその時々の固有の作用因,比例性 要因,および,基準値
( E i n f l u s ‑
,P r o p o r t i o n a l i t a t s ‑und Masgrose)
に関連 させることができる場合にのみ,原価に対する統制が可能となる。以上の各原則の内容については,紙幅の関係からその説明を割愛するが,各 原則から必要とされる原価管理のための原価情報は,主として,すでに述べた 基礎計算からえることができる。しかし,その基礎計算からえられる原価情報 が原価管理のために十分でないときには,原価管理のための特別計算において,
問題ごとに必要な原価情報をえるように,その場合場合に応じて計算しなけれ ばならないものと考えられる。
VI.経営意思決定→面格政策その他
リーベルは彼の相対的直接原価計算論を基礎にして,意思決定問題を次の
2
つの分野に分けて考察しているものと考えられる。制第1
は,価格政策C P r e i s ‑ p o l i t i k )
の問題であり,第2
は, プログラム・プラヌングCProgrammplanung)
および方法選択C V e r f a h r e n s w a h l )
の問題である。このうち, リーベルは価格 政策の問題を中心的に取扱っているのである。これらの問題についてのリーベル の所説の内容はここでは紙幅の関係で省略するが,いずれの問題の場合にも,リーベルは,相対的直接原価計算を基礎にして,その意思決定を行なわなければ ならない,と主張している。その結果,現実的な成果がえられるものとしている。
われわれは, リーベルの価格政策,ならびに,プログラム・プラヌングおよ び方法選択の問題について,その問題点を簡単に指摘しておくことにする。
第
1
に, リーベルの完全操業の場合の例で は,陸路要素が1
つに限られてい26) Vg ,.lRiebel, P., a. a. 0., S.35・66u. S.190‑293.価格政策,プログラム・プラヌン
グ.および,方法選択の問題については,本書第II部 第4章およびその付論を参照の こ左。