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画像診断、最新の話題 脳・脊髄の領域から : 中枢神経系のMRI診断

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シンポジウム

画像診断,最新の話題

脳・脊髄の領域から

一中枢神経系のMRI診断一

二京女子医科大学 脳神経センター神経放射線科 コバ ヤシ ナオ トシ

小 林 直 紀

(受付 平成元年1月31日)

MRI and Central Nervous System

Naotoshi KOBAYASHI

Department of Neuroradiology, Neurological Institute, Tokyo Women’s Medical College The principle of magnetic resonance imaging(MRI)is shortly interpreted, and the diagnos− tic point in MRI of central nervous system lesions is discussed, from points of views of the morphology and signal intensity of lesions.

はじめに

MRI(magnetic resonance imaging,磁気共鳴 画像)は1945年にBrochおよびCarpercellらに よって発見された核磁気共鳴現象(nuclear mag− netic resonance, NMR)を利用した画像法であ る.NMRは化学分析の手段として用いられてき たが,Laughterberによる傾斜磁場の応用による

位置情報の収録方法の開発とX線CTの開発に

端を発する画像構成手法の急速な進歩がMRIの 出現を可能ならしめた.現在MRIとして一般に 用いられているものは水素の原子核すなわち protonを対象にしたものであり,その画像はpro− ton密度, T、およびT2緩和時間,流速より成り 立っている.まず,MRIの画像構成の原理につい て簡単に現象論的に説明し,さらにこれによる中 枢神経疾患の診断について解説する.

NMRとMRI

原子核はその軸を中心に回転している(核スピ ン).電価を持ったものが一定方向に回転していれ ばそこに磁場が発生するので,1個1個の原子核 は1つの棒磁石と考えることができる(図1).生 体内ではこの軸は各々自由な方向に向いている が,ある磁場内に置かれるとその静磁場内でその 磁場の方向に平行に配列される.このとき原子核 の棒磁石はあるものは静磁場の方向(低エネル ギー群)に他のものは反対方向(高エネルギー群) に並ぶ(図1).同方向に並ぶものが反対方向に並 ぶものより多いが,この差は非常に小さく,NMR 現象を言えるのに最も効率の高い水素元子(pro一 5

a b C 図1 Protonの棒磁石と磁場内の配列 a.Protonは陽電気を有し一つの軸のまわりを回転 している(核spin)ために一個の棒磁石と考えること ができる.b。この棒磁石は普通は色々な方向を向い ているために全体として磁場を有していない.c.静磁 場内に置かれるとprotonの棒磁石は磁場の方向に 沿って同方向と逆方向に配列する. 一286一

(2)

a

[コ

b

C

図2 磁場内におけるprotQnの歳差運動 a,Protonの棒磁石は磁場内ではその磁場の方向に 沿った軸を中心に歳差運動と呼ばれるコマが傾いて回 るような運動をしている.b.磁場内のprotonの棒磁 石の向きと歳差運動.この棒磁石の向きは静磁場の方 向と同じものが反対向きのものよりわずかに多い、C. その差を表わしたもので巨視的磁場と呼ばれる. ton)で2百万個に10個の割合に過ぎない.さらに 磁場内では実際にはこの棒磁石はある一点を支点 として一定の軸の周りをコマが斜めに回転するよ うに回転している(歳差運動)(図2).このとき の歳差運動の角速度(周波数)は原子核の種類と 静磁場の大きさによって一定である,この状態の ところにその一定の周波数の電磁波(ラジオ波, RF)を与えると静磁場の方向に配列された棒磁石 である原子核の一部(水素原子で2百万個に対し 5個)が歳差運動の角度を大きくしながら反対方 向に向きを変え(共鳴),高エネルギー群と低エネ ルギー群のものが同数となる.これが核磁気共鳴 (NMR)である.この後,外から与えた電磁波を 切るとエネルギーを放出しながら反対方向すなわ ちエネルギーの高い方向を向いた原子核の棒磁石 はエネルギーの低い静磁場と同方向に向きを変え て元の安定した状態に戻る.この時電磁波(電波, ラジオ波,RF)を出すが,このRFは被写体の周 囲においたアンテナ(coil)で感受される,この電 波の強さはそこにある原子核の量に比例する.均 一な静磁場であっても,原子のまわりにある電子 の存在により,同部の磁場にゆがみを生じるが, この磁場の変化は,同じ水素元子であっても他の 原子との結合の仕方の違いによって(例えば一〇H や一CH3の水素元子)異なってくる.したがって, その結合の仕方により各原子のまわりの磁場が異 なるため,核磁気共鳴を起こすための電磁波の共 鳴周波数も異なってくる(化学シフトchemical shift).この現象は物質の化学分析に古くから応 用されている.連続的に種々の周波数のRFを与 えそれぞれ核磁気共鳴を起こさせ,これより放出 されるRFの量を各周波数上に測定すれぽ検体の 構造式が推定され得る.この化学シフトは1.5T (テスラ)以上の高静磁場の場合に見られ,MRIの 機械を用いて生体内の物質の分布の測定にも MRS(MR−spectroscopy)として用いられている (例えば,31Pを対象として,臓器内の一定の体積 内の無機燐,phosphocreatinine,α,β,γ, ATP の割合を調べるなど).高磁場の場合,後に述べる MRIでこの化学シフトが画像のゆがみを生じさ せることがあり,アーチファクトの原因ともなり 得る. 核磁気共鳴現象の後,エネルギーを放出しなが ら元の状態に戻るが,これを緩和と呼び,この緩 和には2種類の仕方がある.1つは縦緩和あるい はspin−lattice緩和, T、緩和(T、 relaxation)と 呼ばれるものであり,周囲にエネルギーを熱とし て放散し,自身が緩和するものであり,他は横緩 和あるいはspin−spin緩和, T2緩和(T2 relaxa− tion)と呼ばれるもので,周囲の原子にエネルギー を与えて自身が緩和するものである.このとき, RFを放出するが,このままでは一塊の物質とし ての情報しか得られない.身体の断面を画像とし て再構築するには被写体の位置情報が必要であ る.このためにはMRIでは,均一の静磁場内に, 三軸,前額面および水平面の各方向について連続 的に磁場の違いを生じさせ(傾斜磁場),各部位で のRFの共鳴周波数に違いを持たせて位置情報を 得ている.

MRIにおける信号強度

MRIでは信号(RF信号)を得る方向が一定し ていることと位置情報を得るための傾斜磁場を用 いるために,化学分析を用いるNMRのように緩

和して行く過程(free induction decay)の信号を

そのまま取り出して画像を作ることはできず,複

雑な励起方法と受信方法(pulse sequence)が用い

られる.静磁場内に配列されたprotonのごく一 部が与えられたRFによってその方向を変えるこ とは前述したが,NMR現象の説明に当ってはこ

(3)

一 h 一一

¥

/一

a b c d 図3 巨視的磁場での磁気共鳴とMRI信号を得るまでの模型図(SE法) a.励起RFを与える前の状態. b.900pulseを印加する. c.このとき実際には傾斜磁 場のためにpixel内の個々のprotonの歳差運動の速さの違いにより一方向のみに向 いていないため信号が得られない(この図のみ回転座標でばない).d.一定の時間を 待って1800pulseを印加するとpixel内のすべてのprotonが同一方向を向く。これで MRI信号が得られる. の方向を変えるもののみを一括して図示する方法 が一般に用いられている(巨視的磁場,図2c).さ らに,このprotonは歳差運動を行なっているの で座表軸もこれと同時に回転させた回転座表を用 いて説明するのが一般的である(図3).現在一般 的に用いられているpulse sequenceは2通りあ

り,一つはスピンエコー法(spin echo, SE)と呼

ばれるものであり,他は反転回復法(inversion

recovery, IR)と呼ばれる方法である. SE法にお

ける信号が得られるまでを図3に示す.SE法で は静磁場内におかれたproton(spin)(a)に先ず 外から90.傾くまでのRF波(90.pulse)を与える (b).このときspinはXY平面に沿って歳差運動 をしている訳であるが,実際にはpixel内の各 spinは傾斜磁場によるpixe1内の部位の磁場の違 いによりその角速度が異なっている(c).これで は信号が得られないので,一定時間(τ)を待って さらに180.回転さぜる180.pulseを印加する.これ により回転が逆転したことになり,その後のτの 時間後に各spinが同期しX軸方向から信号を得 ることができ,これを繰り返してslice上の各 pixelより信号を得ることができる(d)(実際には slice面の全てのpixelより信号を得ると膨大な 時間を要するために二次元Fourier変換法が用い られる).IR法では最初に180.pulseを印加し, spinを逆転した後, SE法と同様,90.および180. pulseを印加して信号が得られ,これを繰り返す. SE法, IR法ともに,最初の900pulseから次の90. pulseまでの間を繰り返し時間(repeated time, TR),900pulseを与えてから信号を得るまでの時 1、。…{1一・xp(一箸)}・xp(一駐) 90。 180・ echo

に矧

90● ・・一一一一一一一ヨ スピンエコー法 恥…{1一…p(一二)…p(一二)}…(一途) 90●180。 90・ 180。

陣___州

反転回復法 輪4 スピンエコー法(SE)と反転回復法(IR)にお ける信号強度とpulse sequence ISE, IIR:SEおよびIRの信号強度, TR:操り返し時 間,TE:エコー時間, TD:反転時間, T、T2:T、T2 緩和時間.

間(2τ)をエコー時間(echo time, TE)と呼び,

IR法での最初の180.pulseより90.pulseまでの時

間を反転時間(inversion time, TIまたはTD)

と呼ぶ.これらによって得られる信号強度は上記 のTR, TE, TDと緩和時間の函数として表わさ れる.緩和時間には緩和の仕方によりT、緩和時間 (T、)とT2緩和時問(T2)があり,これらはそれ ぞれT1およびT2緩和により緩和が完了するまで の1/eの時間すなわち時定数で表わされる.これ 一288一

(4)

らのpulse sequenceの模式図と信号強度を図4 に示す.この式で見られるとおりIR法はその信 号強度は主にT、によって規定され,T2強調画像 と呼ばれる.一方,SE法ではTRが短かいとT2 やproton密度の影響が少なく,その信号は主に

Tlによって規定される.このためTRの短かい

SE法をT1強調SE(像)と呼ぶ(TRの短いSE法

ということでshort SEと呼ぶものもある).同様

にTRの長いSE法では, TEが短かい場合には

proton密度によって(proton強調画像), TEが長 い場合にはT2によって(T2強調画像)信号強度が 規定されることになる(long SEと呼ぶものもあ

る).T1強調SE(TI weighted SE, T、 WSE)

ではT、が長くなれぽなる程信号強度は小さくな り,写真上黒く現れ,proton密度,およびT2強調 SE(proton weighted SE, proton WSE, T2 weighted SE, T2 WSE)ではそれらが大きくな ればなる程信号強度は大きくなり,写真上白く現 れる.TR, TEの長さと強調される要素の関係を 表1にまとめるが,TRが中間位に長く,TEが比

較的長いSEではproton密度, T、, T2のすべてが

信号強度に影響を与える.T、強調, T,強調, proton

密度強調SEあるいはshort SEやlong SEなど 色々表現がありまぎらわしいため,写真謡曲やレ

ポート記載に際しては,例えばTR 2,000msec,

TE 100msecのSE(long TR, long TE・SE) の場合にはSE(2,000/100)のように記載し,こ れを好んで用いるものもある.IRでは,例えば

TR 1,500msec, TD 400msec, TE 40msecの場 合にはIR(1,500/400/40)と記載する.

Proton MRI(ここではこれからすべてこの proton(1H)MRIについて述べる)ではTIT2は

表1SEのpulse sequenceにおけるTR, TEと強

調される要素(長さはmsec)

TE

TR

R00−500Short Long2000−3000 Short P5−30 T、一weighted Proton−weighted Long T0−150 T2・weighted Signal ↓ ↑ protonの量すなわち水分の量とその水の性質す なわち自由水と結合水の比率によって決まる.水 分量の多いところはTIT2が長く,T、WSEあるい はIRでは黒く,T2WSEでは白く描写される.結 合水は自由水に比し,protonの励起されたエネル ギーを放出し易く,TIT2は短かくなる.正常脳で は脳脊髄液はその長いTIT2を反映した信号強度 を示し,灰白質は白質よりT、T2がやや長い.骨皮 質は水分を含まないため無信号であり,内板と外 板に狭まれた板間の信号のみが見られる(写真 2).眼窩内脂肪や皮下脂肪は中性脂肪の化学的構 造によりそのT、T2は短かく,TIWSEで白く見ら れる(写真5).

TIT2の正確な値はMRIで測定することがで

きるが,このTIT,の値は使用するMRI機種の静 磁場の大きさによって変化するため,組織のT、 T2の長さの比較は同一機種によってのみ可能で ある.臨床的にはT、T,の長さはそれが長い脳脊 髄液とそれが短い脂肪組織を基準として相対的に 推定すれぽ十分である. MRIによる中枢神経系の診断 MRIによる脳および脊髄疾患の診断は, CTに よる診断がこれらの形と病変の異常X線吸収値 によってなされるように,構造と病変の信号強度 によってなされる. 1.MRIによる中枢神経系構造診断の有用性 MRIの非常に大きな利点は,脳脊髄液と脳や脊 髄の実質とのコントラストが良好なこと,軸心断 のみならず矢状面や冠状断あるいはこれらの面に ある角度を持たせた面など,被検者の体位を換え ることなく,傾斜磁場の利用により電気的に自由 に裁面を選択することができること,および骨皮 質によるアーチファクトのないことである. CTでは頭蓋内に占拠性病変がある場合,脳室 や脳槽が狭小化し,これらの構造が見難くなり, 正確な脳の構造が不明瞭となり正確な病変の位置 の診断に苦慮することも多い.この場合には脳の 血管が脳の表面を走ることを利用して脳血管撮影 が利用されて来た.MRIでは正常脳においても CT以上に脳構造の把握が容易であるが,占拠性 病変の存在によって狭小化したクモ膜下官や脳室

(5)

a b 写真1 小脳虫部の星細胞腫 a.CT(造影剤注入後),第4脳室が消失しており,腫瘍の発生部位が不明であり組織 の推定が困難である。b. MRI(SE 400/20, TIWSE),第4脳室が前方に圧排されて おり腫瘍が小脳より出た神経膠腫であることの推定が簡単にできる(小脳扁桃の下垂 も明瞭に認められる), をも明瞭に見ることができる(写真1). 骨皮質によるアーチファクトがないことにより CTが不得手とした後頭蓋窩や脊椎管内の診断に MRIは非常に有効に使用でき, CTの出現によっ て気脳撮影が殆んど不要になったように,脊髄撮 影の大部分をMRIによっておきかえることが可 能である1》.骨によるアーチファクトがないこと により脳底部の小腫瘍の診断にもMRIを有効に 使用することができ,内耳道内に限局する小腫瘍 の診断もair CTの助けを借りることなく可能と なった. 軸位断のみならず冠状断や矢状断像が得られる ことは脳の構造や病変を立体的に把握するのに都 合が良いぽかりではなく,脊椎管のように上下に 長い構造の診断にも有効である(写真12). 2.信号強度による病変の診断 MRIの信号は前述のproton密度, T、, T2と流 速(血流や脳脊髄液の流れ)より成り立っている. 前述のように,一般に水分量の多い組織はT、 T2が長い.したがって,嚢胞や壊死巣あるいは脳 浮腫は長いTIT2を反映し, T、WSEでは黒く,T2 WSEでは白く描写される(写真2).この関係は

水分量の多いところがX線CTでX線吸収値が

下がりCT上黒く描写されるのに似ている.腫瘍 の実質においてはTエT2の比較的長いものや短か いものが存在する.我々の髄膜腫と神経鞘腫のT、

WSEおよびIRによる信号強度の比較において

は細胞が大きく粗に存在するものではTlは長く, 細胞が小さく密に存在するものではT、が短かい 傾向にあった(写真3,図5).これは腫瘍内の細 胞膜成分と関係し,細胞が小さく密に存在する腫 瘍では単位体積内の細胞膜成分が多く,相対的に 水成分が少なくなり,逆の場合は同様に水成分が 多くなるためにTIT2の長さに反映するものと考 えられる2).腫瘍の場合は一般に,CTで吸収値の 低いものはTIT2が比較的長く, X線吸収値の大 きなものはT、T2が比較的短かいといえる(写真 2).腫瘍のMRI上の信号強度に関しては細胞膜 成分の他,細胞間組成や原形質と核との比なども 水分量の点からT、T2に影響し得る.このように 一290一

(6)

a

嬉難聴羅趨『【熱盤驚一

b c d 写真2 右前頭葉内の星細胞腫 a.CT(造影剤注入後), b. CT(造影剤注入前), c. MRI(T且WSE, SE 400/20), d.MRI(T2WSE, SE 2500/100). CTにおける吸収値の変化とMRIにおける信号の 関係が類似している. 病変のT、T2に影響を及ぼす最も大きな要素は水 分量である.この点ではCTと比較して利点がな いように思われるが,MRIの最も大きな特徴の一 つはこの組織の水っぽさを非常に敏感に把えるこ とにある.特にそのT2WSEでの水に対する感度 の良好性は,脳梗塞(写真4),脳炎(写真5), あるいは多発性硬化症や白質変性症(写真6)な どの脱髄疾患の病巣の検出に威力を発揮する. ProtonのT、T2に影響を及ぼす組織の自由水 と結合水の比もMRIにおける診断の重要な要素

(7)

キ 麓 養 ? 歪 藁 { ヒ γ

く 、蕎 轍. 、

写真3 右小脳橋角部の聴神経鞘腫(Antoni B型)(上段)と髄膜腫(丘broblastic type)

(下段)のMRI ともに左よりSE(500/30), SE(1,200/60)およびIR(1,500/400/30). Poor Poor L8r5e 》8nOU5 IR ・一一一一一一一一 品瀬瀬7m。『一一一一一一一一一D剛ch

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・・。N一一一一一一一膿舗ula「一一一一一一一一一一φ…h ・。。・←一一一一一一臨謹謝翫m。,一一一一一一一州・・h 神経鞘腫と髄膜腫の組織型とIRにおけるMRI信号強度(文献2より引用) _?qワ_

(8)

a b ・勃 し 轟

、鍵‘

潔欝

1嵐 ’舗・., c d 写真4 右中大脳動脈のほぼ全領域にわたる脳梗塞のCTとMRI a.発症3時間後,b.発症5日後のCT, c.発症2時間後, d.発症5日後のMRI(T2 WSE, SE 3,000/80).発症早期の浮腫が明瞭にとらえられている, であり,腫瘍組織内での生物学的polymerの多寡 も腫瘍の信号強度に影響を及ぼし,蛋白成分の多 い嚢胞ではそれの少ないものに比しTIT2は短か くなる.我々の施設における下垂体腺腫のMRI 上の信号強度の検討では,ホルモン分泌性の腺腫 のT1強調画像上の信号強度の方が非分泌性の腺 腫より大きい傾向にあった3).これはホルモン分 泌性の腺腫ではそれに含まれるアミノ酸の含量が 多く,結合水含量が多いためのT、短縮の結果と推 定される.

(9)

・織

騰1

’鍵毒、 a b 写真5 ヘルペス脳炎のMRL

a.TLWSE, SE400/20, b. T2WSE, SE 2,500/100. T2WSEで左側頭葉前外側と左 島部外側に高信号が明瞭に見られる.

1糠

a b 写真6 AdrenoleukodystrophyのMRI a.TIWSE, SE 400/20, b. T2WSE, SE 2,500/100. 中性脂肪は前述のようにT、T2が短かく,皮下 脂肪や脳梁あるいは脂肪腫はT、WSEで高信号 に,T2WSEでは低信号に描写される.しかし, CT で同様に低吸収部として出現する非中性脂肪の類 表皮嚢胞は同じ脂肪組織であってもT、T2短縮の 信号強度を示さず(写真7),脳脊髄液とほぼ同じ 信号強度で見られ,クモ膜下嚢胞と信号強度の上 で区別できない. 出血巣はMRI上独特な信号強度を示す.赤血 球が血管外に出ると,その中のoxyhemoglobin

はdeoxyhemoglobinを経てmethemoglobinに

変化する.この変化は出血後2∼3日に血腫の表 一294一

(10)

a b

写真7 第4脳室内類表皮嚢胞のMRI

a.TIWSE(400/30)矢状断像, b. T2WSE(2,500/100)軸位断像. T且,T2WSEと

もに腫瘍は脳脊髄液と同じ信号強度を持ち,皮下脂肪の信号強度とは異っている. 面より起こって来る.さらに出血後数日で血腫周 辺に毛細管に富んだ被膜が形成されるが,ここで 貧食細胞により赤血球は食食され,methemog・

10binがhemosiderinに変化する.この

deoxyhemoglobin, methemoglobinおよび

hemosiderinは常磁性体であるために周囲のpro− tonの緩時間に影響を与え,そのT1を短縮させ る.したがって,T、強調画像では,出血直後は血 腫は正常の脳白質と同じ信号強度を有するが(但 し血腫の周囲は脳浮腫および血漿成分によりT、 は延長している),2∼3日後より周囲より高信号 部が現われて来る(写真8).血腫が吸収され嚢胞 状になったところはT、延長部として固定する.一

方T2WSEではその信号強度はやや異なってい

る.発症早期の血腫はTlWSE同様T2WSEでも

正常脳白質と同じ信号強度を有し,その周囲に浮 腫および血漿成分による高信号域が見られる(写 真8).その後は,その信号強度は使用するMRI

機種の静磁場強度によって異なってくる.

0.1∼0.2Tの低磁場のものではその後の血腫は 高信号として見られる.しかし0.5T以上の中高 表2 中高磁場MRIにおいて赤血球成分によって 影響を受ける周囲のprotonのT1およびT2 Tl T2 Oxyhemo910b’1n → → Deoxyhemo910bin intracellular ↓ ↓ extracellular ↓ Methemoglobin extracellular ↓ Hemosiderin ↓ ↓ 磁場では,血液成分の常磁性が周囲のprotonの T2に及ぼす影響は低磁場の場合と異なる4). Deox・ yhemoglobinやmethemoglobinは水に溶けない ために周囲のprotonのT2には影響しないが,こ れらが赤血球内にある場合にはその細胞膜を介し てその周囲の磁場に傾斜を形成させ,これがT2を 短縮させる結果となり,さらにhemosiderinはこ の存在により,周囲のprotonのT2を短縮させる.

ProtonのT2が短縮した部位ではT2WSEで信号

は低下し黒く描写される(写真9).以上の中高磁 場における血液成分のprotonのT1, T2に対する 影響の関係を表2にまとめる.

(11)

a C

謎1懸

欝灘

謙ざ

il盤・,熱

鷺ぎ1

1響鞭

沸瀞ボ槻 弩匙 ,, d b 写真8 右被殻部の高血圧性脳内血腫のMRI(静磁場強度0.15T) a.発症約30時間後のTIWSE(500/40), b.同T2WSE(1,400/60), c.発症約10日 目のTIWSE(500/40), d.同T2WSE(1,400/60)(本文参照). 3.流速と信号強度 血流や脳脊髄液のような流れのあるところで は,MRIのpulse sequenceと流れの位相の違い

により信号に変化が見られる.High velocity sig・

nal loss, turbulance, odd−echo dephasingによ

り信号は低下し,How related enhancement,

even・echo rephasing, diastoric pseudogatingに

よって信号は増強する5)が,一般には,流れが遅い

場合には信号は増強し(How related enhance−

ment, paradoxical enhancement),流れが速い場

合には信号は低下する(high velocity signal loss,

now void sign)と理解すれぽ良い(図6).流れ

のある中脳水道や脊椎管内,動脈腔にflow void 120 100 壽80

5

§6。 ξ 甚4。

9

20 一296一 Fbw vebClty{cm/s[ 1 2 3 も 5 10 10 50 り00 500 F[ow rde lmレmln} 図6 MRIにおける流速と信号強度(SE 500/43) (文献6より引用)

(12)

a b 写真9 腫瘍内に凝血を有する左鈎回の海綿状血管腫のMRI(静磁場強度0.5T) a.T且WSE(400/20),凝血はすべて高信号域として見られる. b. T2WSE(2,500/ 100),凝血の信号強度は大きいものと小さいものとがある.赤血球成分の変化の違 いによると考えられる. .1脚1 ド マキ

「 「

懸鐘陶

講・

獲園

圃熱、鱗

a b 写真10 脳梁部脳動静脈奇形のMRI

a.TIWSE(400/30), b. T2WSEまたはproton WSE(2,500/50).

signが見られ,流れの遅い静脈腔にnow related enhancementが見られる.脳動静脈奇形ではその 流入動脈,病巣および流出静脈の内腔が無信号と

して見られ(写真10),中脳水道の脳脊髄液の流れ

の有無の判定にもこの現象が利用される(写真11

(13)

a b 写真11椎骨動脈動脈瘤のMRI a.TLWSE(500/40), b. T2WSE(1,400/60)下矢状静脈洞,直静脈洞,脳底動脈, 中脳水道もHow voidのため低信号となっている. 見られるが(写真11),この場合には中の凝血や石 灰化も信号に影響を与える.石灰化巣は水分を含 まないために無信号となるが,この小さいもので はCTに比して検出率は良くない. MRIと造影剤 脳内出血の項で述べたとおり,常磁性体が存在 a b c 写真12 胸部脊髄血管芽腫の矢状断MRI a.T夏WSE(500/30), b. T2WSE(2,000/60),脊髄は全体にび漫性に腫大し,浮腫 によるTIT2延長を反映した信号強度を示すが,腫瘍の位置は不明瞭である. c. Gd・ DTPA(0.1mmo1/kg)投与後のT、WSE,腫瘍が明瞭にエンハンスされている. 一298一

(14)

するとその周囲のprotonの緩和時間が短縮す

る.このような物質を安全な形で何らかの方法で 病巣部にとどめ得るならぽその部の緩和時間を短 縮させ信号強度に変化を与え,病巣の検出をよ.り 容易ならしめたり,あるいは病変の性質の推定に 寄与し得ると考えられる.現在この目的で磁性の 強い希土類であるgadoliniumをキレート剤であ

るDTPAによってつつみ込んだGd−DTPA

(gadopentetate, magnevist⑪)が用いられてい る.Gd−DTPAは血管造影剤とほぼ同じ分子量を 持ち,生物学的にはこれとほぼ同じ体内動態を示 す.この0.1m mol/kg前後を経静脈的に投与する と脳血液関門の破綻部あるいはこれが存在しない ところに集積される..このGd−DTPAは特にその protonのT、短縮作用が強く,短時間で検査を終 了できるTIWSEで同部の信号が増加する. Gd−

DTPAによるenhancementはCTと同様の目的

で使用でき,検査時間の短縮に寄与し,MRIで時 に病変と周囲の浮腫との区別が困難なものでの鑑 別に有効である(写真12). おわりに MRIの原理とこれによる中枢神経疾患診断の 既要について述べたが,現在,検査時間の短縮の ための小切ip angle法やgradient echo法など pulse sequenceに対する種々の改良が行われてお り,さらに流速の測定や流れによる信号の違いを 利用した血管像の作成など種々の試みもなされて いる.増々MRIが広く利用されるとともにその応 用範囲も広がって行くと考えられる.この点より, MRIを理解するには本稿で述べたことが決して 十分なものとは考えられないが,MRI診断の一助 となれば幸いである. 文 献 1)小林直紀,小野由子,柿木良夫ほか:脊髄疾患の MRI一その有用性と形態診断における位置一.日 独医報 30:656−665,1985

2)Hiyama H, Kobayashi N, Ono Y et aL Cor・ relation between MR signal intensity and his−

tological丘ndings in neurinomas and menin・

giomas of the brain. Acta Radiol 369(Suppl):

176−181, 1986

3)日山博文,久保長生,喜多村孝一ほか:下垂体腺

腫のMRI−functioning tumorとnon−

functioning tumorの比較一.第5回下垂体腫瘍

work shop講演集:67−70,1986

4)Gomori JM, Gmssman RI, Goldberg HI et a1:

Intracranial hematoma:Imaging by high field MRI. Radiology 157:87−92,1985

5)Bradley WG:Flow phenomena.1%Magnetic Resonance Imaging.(Stalk DD, Bradley W ed) pp108−137, Mosby, St Luis・Washington DC・

Tronto(1988)

6)Roth K:NMR・tomography and Spectros・ copy in Medicine. Springer−Verlag。Berlin・ Heidelberg・New York・Tokyo(1984)

参照

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