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(1)

商法二三条と手形行為

著者

盛岡 一夫

著者別名

K. Morioka

雑誌名

東洋法学

25

2

ページ

p57-92

発行年

1982-03

URL

http://id.nii.ac.jp/1060/00006007/

Creative Commons : 表示 - 非営利 - 改変禁止 http://creativecommons.org/licenses/by-nc-nd/3.0/deed.ja

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商法二三条と手形行為

盛 岡

一 はしがき 二 営業について名義貸がなされ営業に関連して手形行為がなされた場合 三 手形行為にのみ名義貸がなされた場合  e 名義貸人の責任  口 名義借人の責任  日 名義貸人と名義借人の連帯責任 四 営業について名義貸がなされたが手形行為にのみ使用された場合 五 むすぴ

東洋法 学

五七

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商法二三条と手形行為 五八 はしがき  商法≡二条は、自己の氏、氏名または商号を使用して営業をなすことを他人に許諾した者は、自己を営業主と誤認 して取引をなした者に対し、その取引によって生じた債務につき、その他人と連帯して弁済の責に任じなければなら ないと規定している。これは名義貸人が営業主であるという外観を信頼して取引した第三者を保護するために、名義 貸を帰責原因として名義貸人に責任を負わせるのであり、この名義貸人の責任は禁反言則ないし外観法理に基づくも のである。名義借人は名義貸人の名義で名義借人自身の営業をなすのであるから、名義借人が企業の主体となるので あって、名義貸人が主体となるのではない。名義借人が取引の当事者として責任を負うのは当然であるが、名義貸人 が責任を負うのは、名義貸人が自己を営業主と誤認させるような外観を作出したのであるから、外観を信頼して取引 した第三者に対して名義借人と連帯して責任を負うのである。この場合の連帯債務は不真正連帯債務であると解され ている。  そこで、名義借人が名義貸人名義の手形行為をした場合に名義貸人は手形上の責任を負うか否か問題となる。手形 行為の名義貸において商法二三条が適用ないし類推適用されるかの問題については、次の三つの場合に分けて検討す る必要がある。  第一は、名義貸人が自己の名称を使用して営業をなすことを許諾したときに、名義借人がその営業に関連して名義 貸人の名称を使用してなした手形行為について責任を負うか、第二は、名義貸人が営業について自己の名称の使用を

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許諾したのではなくて、単に銀行との当座預金取引ないし手形行為についてのみその使用を許諾した場合に、名義借 人がその名称を使相してなした手形行為について責任を負うか。第三は、名義貸人が営業について自己の名称の使用 を許諾した場合に、名義借人がその名称を営業には使用しないで手形行為にのみ使用したときに責任を負うか。これ らの場合に名義貸人は商法⋮二条の適用ないし類推適用によって手形上の責任を負うのであろうか。以下、手形行為 と商法二三条に関する問題点、とくに単に当座預金取引ないし手形行為についてのみ名称の使用許諾をした場合につ いて、名義貸人が責任を負う理論構成、また、名義借人は手形上の責任を負うか、さらに、名義貸人は名義借人と連 帯して責任を負うか。これらの間題についてはすでに多くの学説・判例があるので、これらを整理し参照しながら順 次検討してみよう。 二 営業について名義貸がなされ営業に関連して手形行為がなされた場合  名義貸人が自己の名称を使用して営業をなすことを許諾し、名義借人がその営業に関して名義貸人名義の手形行為        ︵1︶ をした場合について、最高裁昭和四二年二月九日判決は、﹁商法二三条は名板借人と取引行為をした第三者が名板貸 人を営業主と誤認した場合において、右第三者をして右名板貸人に対し右取引の責任を追及することをえせしめ、右 第三者の利益を保護するために設けられた規定であるから、右認定のごとくYがAの行為について商法二三条の責任 を負うべぎ以上、Yは、同AがYの意思にもとづかずしてY名義をもって振り出した本件手形につぎ善意の第三者で あるXに対しその支払の責に任ずべきものと解するのが相当である﹂と判示している。

    東洋法学       五九

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    商法二三条と手形行為       六〇     ︵2︶  また、学説においても、手形行為は一般に営業上の行為に含まれるというべきであるから、その営業に関して名義 借人が名義貸人名義の手形を振出したときには商法壬二条の責任を負わなければならないと解されており、異論はな い。名義貸人が自己の名称を使用して営業をなすことを許諾している場合に、その営業に関して名義借人が名義貸人 名義でする手形行為は、営業に関連する行為であって、営業取引中には金銭債務決済の手段として手形行為が当然含 まれるのであるから、商法二三条の適用によって名義貸人は手形上の責任を負わなければならない。

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判例時報四八三号六〇頁 大隅健一郎翻河本一郎・注釈手形法・小切手法一〇八頁など。 三 手形行為にのみ名義貸がなされた場合  8 名義貸人の責任  名義貸人が営業のために自己の名称の使用を許諾したのではなく、単に銀行との当座預金取引ないし手形行為につ いてのみ名称の使用を許諾した場合にも、名義貸人は名義借人が名義貸人名義でなした手形行為について、商法二三 条の規定により手形上の責任を負うか否かについて考える前に、まず、判例・学説を概観しておこう。      リ   ピ  G  寧  夢  右の場合について、最高裁は昭和四二年六月六日の判決で商法≡二条の適用による名義貸人の責任を否定している

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ので、この判決以前と判決以後に分けて整理することにする。     イ 最高裁昭和四二年六月六日判決以前のもの  ︵  @ 商法二三条の類推適用を認めるもの  商法二三条を類推適用して名義貸人の手形責任を肯定する東京地裁昭和三七年九月一〇日判決は、﹁手形を振出す 行為は、絶対的商行為であると規定されているが、本来営業性と直接の関係を有しないので、継続的な手形行為であ っても、これを目して、右の﹃特定の営業をするとぎ﹄に該るということを得ない。しかしながら、営業上の信用を 伴う自分の氏名を、他人に使用することを許諾したものは、右名板貸の場合を類推して、その他人が、自己名義でし た取引の相手方に対し責任を負わねばならないと解するのが相当である︵この場合、その他人は専ら、本人の信用に       ︵1︶ 依存し、本人の署名の代行機関として、手形署名をしたということになる。︶﹂と判示している。  ㈲ 商法二三条および民法一〇九条の各規定を類推適用するもの  商法二三条および民法一〇九条の各規定を類推適用して名義貸人に手形責任を肯定する高松高裁昭和三九年一月三 一日判決は、﹁他人に対し、自己の署名を代行する方法で法律行為をなす権限を与えることは︵その他人が代理人で あるか機関であるかを間わず︶、自己のためにする意思、すなわち、自己がその行為の主体であるという意思の存在 を要素とするに対し、他人に対し、単に自己の氏名を用いて法律行為をなすことを許諾することは、右の意思を欠い ているから、両者は観念的にも異なる﹂が、しかしながら、﹁民法一〇九条及び商法二三条の各規定の趣旨を類推す れば、他人に対し自己の氏名を用いて法律行為をなすことを許諾した者は、その許諾に基づいてなされた法律行為の     東 洋 法  愚子       六一

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    商法二三条と手形行為       六二 相手方が許諾老の法律行為であると過失なくして信じたときにかぎり、相手方に対しその行為の主体としての責任を       ︵2︶ 免れない﹂と判示している。     q 最高裁昭和四二年六月六βの判決  ︵  手形行為に商法二三条の適用を否定する右判決は、﹁商法二三条にいう営業とは、事業を営むことをいい、単に手 形行為をすることはこれに含まれないと解すべきところ、前記確定事実によれば、前記許諾はA会社の営業である繊 維製品販売業についてなされたものでないことが明らかであるのみならず、同条は、他人の氏名商号等を用いて営業 をした者︵営業主︶が第三者との取引において債務を負担した場合において、その氏名、商号等の使用を許諾した者 に対しても、営業主の右債務につき連帯責任を負担させることを定めたものと解されるところ、手形行為の本質にか んがみれば、ある者が氏名、商号等の使用を許諾した者の名義で手形上に記名押印しても、その者自身としての手形 行為が成立する余地はなく、したがってその者は手形上の債務を負担することはなく、その名義人がその者と連帯し て手形上の債務を負担することもありえないから、この点からみても、手形行為上自己の氏名商号等を使用すること       ︵3︶ を許諾したにすぎない者については、同条は適用されないものと解するのが相当である﹂と判示している。  右の判決は、商法二三条の適馬を否定する理由として、第一に、商法二三条にいう営業とは、事業を営むことをい い、単に手形行為をすることは含まれないこと、第二に、手形行為の本質にかんがみれば、ある者が名義使用許諾者 の名義で手形上に記名押印しても、その者自身としての手形行為が成立する余地はなく、したがって、その者は手形 上の債務を負担することはなく、その名義人がその者乏連帯して手形上の債務を負担することはありえないことにあ

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るとしている。     ハ 最高裁昭和四二年六月六日判決以後のもの  ︵  ⑥ 商法二三条の適用を認めないもの  右の最高裁判決にしたがい商法二三条の適用を否定する判決は少なく、右判決の差戻審である大阪高裁昭和四三年      ︵4﹀      ︵5︶ 三月二九日判決と東京高裁昭和四八年一〇月三日判決ぐらいである。  ㈲ 商法二三条の適用を認めるもの  商法二三条を適用して名義貸人に手形責任を肯定する札幌地裁昭和四五年二月一八日判決は、﹁営業名義の貸与 でない場合には商法二三条は適用されないとの見解もあるが、同条をそのように限定的に解釈するのは正当ではない し、また、商法二三条が名義貸与者と名義借用者の連帯責任を規定していることから同条を適用するためには名義借 用者の行為によって借用者自身が責任を負う場合でなければならないとして、名義貸与者の名義のみを表示して手形 行為をした場合には名義貸与者の手形行為自体が成立しないとして名義貸与者の責任をも否定する見解もあるが、手 形行為が何人の名義を用いようとも、その名義が行為者の通称であると否とを問わず、その名義を自己を表示するた めの名称として使用した限り、その者の手形行為とみるべきものであるから、商法二三条を適用するうえに妨げはな         ︵6︶ い﹂と判示している。  ⑥ 商法二三条の類推適用を認めるもの  多くの下級審判決は、商法壬二条の類推適用によって名義貸人に手形責任を肯定している。大阪高裁昭和四四年一

    東洋法学      

六三

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    商法二三条と手形行為      六四      ︵7︶      ︵8︶      ︵9︶ ○月二八日判決、東京高裁昭和四五年三月二七鷺判決、福岡高裁昭和四六年六月≡二日判決、東京高裁昭和四七年一      ︵鐙︶       ︵難︶ 一月二九日判決、福岡高裁昭和五五年五月二九目判決等がある。例えぼ、最近の福岡高裁昭和五五年五月二九日判決 は、﹁手形行為そのものは絶対的商行為ではあっても、それ自体営業とは直接関係がないので、本件手形の振出した 営業をなすことの許諾を前提とする商法≡二条の名板貸の責任に関する規定をそのまま適用することはできないにし ても、やはり自己の氏名を使用して手形を振出すことを他人︵本件ではA︶に許諾している以上、名義貸与者である Yが手形行為者であるとの外観を信頼した善意の手形取得者に対しては、商法二三条の類推適用により、右手形を振 出したAと連帯して手形上の責任を負担することになるのはやむを得ないものというべきである﹂と判示している。  ⑥ 商法二三条または民法一〇九条の規定を類推適用するもの  商法⋮二条を類推適用するか、あるいは禁反言の法理に淵源する民法一〇九条の趣旨を推して名義貸人に手形責任 を肯定する東京高裁昭和四四年一二月二五日判決は、﹁たんに他人の営業のため自己の当座預金口座を利用して手形 を振り出すことを許諾した者の責任はどうか、これを商法第二三条の文字どおりにみるかぎり、その適用のないこと は、上に述べたとおりこれを当然としなければならない。しかし、そもそも、商法第二三条はその根源を禁反言の法 理に発し、自己の名義の使用を他人に許諾した者は、その使用によって生ずべぎ結果を甘受しなければならないとす るにあるから、その趣旨は、自己名義の貸与がたとい直接に営業に関しない場合すなわち、本件のごとくたんに預金 口座名義の貸与の場合にも拡大して類推さるべぎ可能性を含むものといわなければならない。大体当座預金濤座は多 く営業のために利用されるものであって、その名義を貸与することは、外観上営業名義を貸与することと大差がない。

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そして、そのP座を利用してその名義を用いて振り出された手形は、第三者において当然に真正に振り出されたもの とみるべく、第三者がかく信ずるにいたるのは、口座名義人がその利用を他人に許したためである。とすれば、かか る口座の名義貸人につき、右の法条を類推すべきは、あまりにも明白であると信ずるのである。かりに、これを不可 としても、ひとしく禁反言の法理に淵源する民法第一〇九条の趣旨を推して名義貸人の責任を肯定するか、直接に右 の法理を援用してその責任を認むべく、いずれにせよ、名義貸人の責任を否定することは許されないものと考える﹂      ︵鴛︶ と判示している。  @ 民法一〇九条の類推適用を認めるもの  民法一〇九条を類推適用して名義貸人に手形責任を肯定する東京地裁昭和四五年一〇月六日判決は、﹁当座預金口 座の名義貸与者は、禁反言の原則に根底をおく民法一〇九条の規定の趣旨を類推して、右預金口座の名義借用者のな した手形取引につきその責任を負うものと認めるのが、名義貸与者が与って作出した取引の外観に信頼をおいた第三        ︵娼︶ 者︵本件においてはX︶の保護をはかるゆえんであるからである﹂と判示している。  ω 学 説  学説は、④商法二三条を適用して名義貸人の責任を肯定する説、@商法壬二条を類推適用して名義貸人の責任を肯 定する説、㊦民法の表見代理ないし表見法理一般によって名義貸人に責任を肯定する説に大別される。     イ 商法二三条適用説  ︵  この説は、商法二三条の立法趣旨を生かして拡張解釈し、単に手形行為について名義貸がなされた場合にも同条の     宙く ”拝  法  惑子       ぬハ五

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    商法二三条と手形行為       六六 適用を認める見解である。すなわち、商法二三条は、外観を信頼した取引相手方保護のために、事実と異なる外観を 作出したことに責任のある者に対し外観どおりの責任を負わせる趣旨であって、禁反言則の一表現であるから、同条 は法文どおりに厳格に解すべきではなく、できるだけ社会的要求に合するように拡張解釈すべぎであること、および 手形を取得して所持人となる者にとっては、その手形行為の名義人が営業について名義貸をしたか、単に手形行為に        ︵1 4︶ ついてのみ名義貸をしたかによって区別的取扱いを受ける理由がないことなどを理由としている。     口 商法二三条類推適用説  ︵  この説は、商法二三条の名義貸人の責任は外観保護に基づくものであるから、名義借人が営業を行なって商人であ る場合に限定する積極的理由は乏しく、したがって、名義借人が商人でない場合にも商法二三条を類推適用すること        ︵焉︶ が妥当であるとするならば、手形行為のためにのみ名義を貸した場合にも同条を類推適用すべきであるとか、商法工 三条は営業について許諾を要件とはしているがそれはその営業についての許諾そのものが重要であるからではなくて、 営業についての許諾の結果、第三者が名義貸人をして取引行為の主体と誤認せしめることになるそのことが重要だか らであるとし、したがって、営業をなすこと自体について名義使用の許諾がなされていなくても、第三者が行為の主 体を名義人であると誤認するような取引上の外観が客観的に存在すれば、商法≡二条の適用あるいは、その法文の文       ︵1 6︶ 言を厳密に扱うならば類推すべぎ基礎はあると考えなければならないとする。商法二三条の類推適用は認めるが、名 義借人の手形行為は存在しないので名義貸人と連帯責任は成立しないとし、この場合名義貸人は自己の名義の使用許 諾により、名義借人を機関として自己が手形行為者であると表示したことになり、結果的には広義の機関による自己自

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      ︵17︶      ︵18︶ 身の手形行為による責任という構成をとることになるとの見解がある。この商法≡二条類推適用説が多数説である。     ハ 民法の表見代理ないし表見法理一般による説  ︵  この説は、商法二三条は営業をなすことについての名義使用許諾に限定すべぎであるとし、単なる手形行為の名義        ︵想︶ 使用許諾の場合には、民法の表見代理ないし表見法理一般によって解決しうるとする。商法二三条によってその信頼 が保護される外観は、名義貸人が営業主であるという表見的事実であって、そこに責任の連帯性の基礎がある。この 場合と、手形行為は本来営業性と直接の関係を有しないので、単に手形行為のみに自己の名義の使用を許諾した場合 とは異なる。すなわち、後者の場合で、名義使用許諾に署名代行をさせる趣旨が含まれているときは機関による手形 行為の間題として解決され、また自己の氏名を行為者がその別名として使用することを許諾したにすぎない場合は、 署名代行権あるものとの第三者の信頼保護をはかるため、表見機関による手形行為の問題として解決さるべきである。 すなわち、それは表見代理ないし一般表見法理による保護であるべきである。しかして、表見代理の規定によってそ        ︵20︶ の信頼を保護される外観は、表見的な授与行為にあるゆえ、そこには責任の連帯性を認める基礎がないとする。  ㈲ 問題点の整理・検討  右にみてきたように、単に当座預金取引ないし手形行為についてのみ名称の使用許諾をしたとぎに、名義借人が名 義貸人の名称で手形を振り出した場合に、名義貸人は商法壬二条の適用ないし類推適用によって責任を負うと解する には、次の点が問題となる。  ω 商法二三条の適用を否定する理由として、商法二三条にいう営業とは事業を営むことをいい、単に手形行為を     東洋法 学       六七

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    商法二三条と手形行為       六八 することはこれに含まれないとする見解があること。  @ 民法一〇九条等の表見代理ないし表見法理一般によって名義貸人に責任を認める見解があること。  の 商法⋮二条の適用ないし類推適用によって名義貸人に責任を肯定するとした場合に、この名義貸人の手形債務 の成立をどのように理論構成するかということ。  ◎ 名義借人の名称が手形上に現われないので、名義借人は手形上の責任を負うことがなく、名義貸人が名義借人 と連帯責任を負うことがないとの見解があること。  以上の問題点について、順次検討する。     イ まず、商法二三条にいう営業とは事業を営むことをいい、単に手形行為をすることはこれに含まれないことを  ︵ 理由として、商法二三条の適用による名義貸人の責任を否定する見解について検討する。  たしかに、商法二三条は営業をなすことの許諾を要件としているが、それはその営業についての許諾そのものが重 要だからではなく、営業についての許諾の結果、第三者が名義貸人をして取引行為の主体と誤認せしめることになる        ︵班︶ そのことが重要であるとか、また、商法一⋮条の営業ないし営業主を商法四条の商人としての狭い意昧に限ることな        ︵22︶ く、そこから類推して広義に解すべきであるとの見解が妥当であろう。  商法二三条は、外観を信頼して取引した善意の相手方が不測の損害を被ることのないように保護し、取引の安全を 期すため、事実と異なるような外観を作出した者にその取引上の責任を負わせようとするものであり、名義貸を帰責 原因として名義貸人に責任を負わせるのであって、禁反言則ないし外観法理に基づくものである。

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 したがって、取引の安全を保護するために法文を厳格に解すべぎではない。とくに手形行為は、一般の取引行為よ りも外観の保護を必要とするものであるから、単に手形行為についてのみ名義使用の許諾がなされた場合にも商法二 三条の適用ないし類推適用を認めてよいであろう。手形の取得者にとって、名義貸人が自己の名称の使用許諾を営業 のためにしたのか、単に手形行為のみについてしたのかによって異なった取扱いをされる理由はない。手形の取得者 が、名義貸人を手形行為者であると誤認して手形を取得した場合に、単に手形行為のみについて許諾したことを理由       ︵23︶ に名義貸人の責任を否定することは手形取引の安全を害することになる。商法壬二条は外観を信頼した者を保護する ために、自己の名称の使用許諾を帰責原因として名義貸人に責任を認めるのであるから、名義貸人が手形行為者であ るという外観が存在していれば、単なる手形行為に使用する名称の許諾であっても、その名称の使用許諾がこのよう な外観を構成したものとみて名義貸人の責任を認めるべきである。  商法二三条は自己の名称を使用して営業をなすために許諾することを要件としているが、同条は名義貸人が自己の 名称の使用を許諾することによって、名義貸人自身がその取引の主体であるかのような外観を作出した結果、取引の 相手方が取引行為の主体を誤認した場合に不測の損害を被ることのないように保護するために、名義貸人の責任を認 めることに主眼があるのであるから、営業をなすために許諾がなされていなくても、取引の相手方が行為の主体を名       ︵鍛︶ 義貸人であると誤認するような外観が存在すれば名義貸人に責任を負わせるべぎである。名義貸人が自己の名称使用 を営業のために許諾したか、単に手形行為のためにのみ許諾したかによって異なった取扱いをすれば、手形取得者は        ︵25︶ 不測の損害を被るおそれがある。これに反し、名義貸人は自己の名称を使用許諾することによって、自己が手形行為     東洋法学      穴九

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    商法二三条と手形行為       七〇 者であるかのような外観を作出すことを許諾したのであるから責任を負うことになってもやむを得ない。以上の理由 により、名義貸人は、単に当座預金取引ないし手形行為についてのみ名称の使用を許諾L︶た場合にも、商法二三条の       ︵26︶ 法文を厳格に解したとしても、少なくとも同条の類推適用によって責任を負うべきである。     q 次に、商法二三条の適用ではなく、民法一〇九条等の表見代理ないし表見法理一般によって解決すべきである  ︵ との見解について検討する。  手形行為について名称を許諾する場合には、名義貸人にその行為の主体となる意思がないのであり、また、相手方 も名義貸人を手形行為者であると誤認するのであるから、商法二三条によって解決すべぎ間題であって、相手方が名        ︵27︶ 義貸人自身を手形行為者であると誤認した場合には、表見的代理関係の誤認はないので表見代理の間題ではない。民 法一〇九条の適用ないし類推適用があるためには、少なくとも名義使用の許諾が代理権を与えた旨の表示と同様に、        ︵28︶ それ自体第三者に対して直接、名義貸人をして取引の主体とみせる外観を作出している必要があろう。  他人に手形行為の代理または代行をなす権限を与える場合には、その他人が代理人であるか機関であるかを間わず、 自己のためにする意思を有しているのに対し、他人に対して単に自己の名称を用いて手形行為をすることを許諾する 場合には、自己のためにする意思を有するものではないから、手形行為の名義貸と手形行為の代理または代行とは異      ︵29︶ なるものである。自己の名称を用いて手形行為をすることを他人に許諾する場合の法律関係には、④承諾者がその手 形行為の主体になる意思で他人︵被承諾者︶に権限を与える場合と、@他人が承諾者の名称を他人の別名として使用 することを承諾する場合とに分類でぎ、手形行為の主体が承諾者である④の場合が代理または代行権限の付与であり、

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手形行為の主体が他人である@の場合が名義貸であって、名義貸の場合は名義貸人が自分で手形債務を負う意思はな    ︵30︶ いのである。  この両者の区別について、名古屋高裁昭和四七年七月八日判決は、﹁手形の名義貸と記名押印の代行とは、現実の 手形行為者と名義人とが別人になっている点では共通しているが、元々別個の観念であり、その要件劾果も異なるし、 その前提となっている社会関係も相違するから、両者は明確に区別されなければならない。而して手形行為の名義人 と現実の行為者とが共に同一経営体に属する場合のうち、名義人が経営主で行為者が被使用人である場合とか、名義 人と行為者とが共同経営主である場合などは、両者の間に記名押印代行の関係︵機関関係︶を認むべぎであるが、反 対に行為者が経営主で名義人がその被用者であるような場合には両者の間に記名押印代行の関係︵機関関係︶は認め        ︵駁︶ 難く、両者の間には名義貸の関係が存するものと認むべぎである﹂とする。  このように名義貸人はその名称の使用を名義借人に対して許諾するのであって、その手形行為の主体となる意思を 有するのではなく、代理権または代行権を与えたとはいえない。また、名義借人も自己のために手形行為をしている        ︵32︶ のであり、自己を表示するために名義貸人の名義を使用しているのである。名義借人は名義貸人のために手形行為を        ︵33︶ しているのではない。名義貸の場合には、保護される者としては、その取引の相手方の同一性を誤認するのであるの        ︵3 4︶ に対し、表見代理は、その者が代理人であることの誤認の問題であって、両者は元来異質的な関係にある。表見代理 は代理権の誤認に関する問題であり、それは無権代理行為の相手方において、その手形行為は権限のある代理人によ って行なわれたと信じ、他方、そのような事情を生ぜしめたことについて本人に責任のある場合に本人に責任を負わ

    東洋法学       七一

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    商法二三条と手形行為       七二 せるのに対し、名義貸の場合は取引主体の誤認の問題である。単に手形行為についてのみ名称の許諾をしたときに、 名義借人が名義貸人の名称で手形を振出した場合に、その手形の所持人は名義貸人を手形行為者であると誤認するの であるから、この場合には民法の表見代理によるのではなく、商法二三条の適用ないし類推適用によって名義貸人に 責任を認めるべきである。     ハ 商法二三条の適用ないし類推適用によって名義貸人に手形上の責任が肯定されるとした場合に、みずから手形  ︵ 行為をしない名義貸人の責任が認められる理論構成について検討されなければならない。  この理論構成については、名義借人は名義貸人の署名の代行機関として、手形署名をしたということになるとする  ︵35︶ 判例や、名義貸人はその名称の使用許諾によって名義借人に機関として手形行為をなす権限を与えたことになり、機        ︵36︶ 関による名義貸人自身の手形行為として手形上の責任を負うとする見解とか、名義貸人は自己の名義の使用許諾によ り、名義借人を機関として自己が手形行為者であると表示したことになり、結果的には、広義の機関による自己自身        ︵3 7︶ の手形行為による責任という構成をとることになるとの見解がある。  右の見解に対しては、名義借人の手形行為を機関としての行為であるとすると、これは商法二三条における名義貸 人と名義借人の責任関係の構成とも一致しなくなるとの批判がある。この見解によると、商法二三条においては、名 義借人が取引の当事者としての責任を負い、名義貸人はそれと同時に表見法理によって名義借人が負うのと同じ責任 を負わされる。ところが、名義貸人の手形債務について、これを名義借人の機関としての手形行為によるという構成 に引直すと、名義借人は自己の名で行為したのでなく、名義貸人の名においてその機関として手形行為をしたことに

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       ︵器︶ なるから名義借人の手形優務は生じえないことになると解し、あるいは、名義貸の法理においては名義借人がまず取 引の当事者として責任を負い、これと同一の責任が名義貸人の連帯責任として発生するのであるが、右の機関方式の 手形理論によるとぎは名義借人は自己の名で行為したのではなく、名義貸人の名において、その機関として手形行為        ︵39︶ をしたことになるから名義借人自身の手形行為を認める余地はなくなると解している。  前述のように、手形行為について自己の名称の使用を許諾する場合には、名義貸人は手形行為の主体になるという 意思を有せず、自己の名称を使用して手形行為をなすことを許諾するにとどまるのに対し、代行による手形行為の場 合には、本人がその手形行為の主体になるという意思を有しているのであるから両者は異なる。  したがって、名義貸人は、みずからの手形行為は行なっていないが、手形行為を行なったのと同様の責任を商法二       ︵40︶ 三条の効果として負うと解すべきである。名義借人は手形行為をなすことによって責任を負い、名義貸人は表見法理       ︵妊︶ によって責任を負うことになる。名義貸人が自己の名称を使用して手形行為をなすことを名義借人に許諾した場合に、 名義貸人を手形行為の主体であると誤認した者に対しては、商法壬二条の適用ないし類推適用によって責任を負わな ければならないが、これは、名義貸人が手形行為者であるという外観を信頼した相手方を保護するために、自己の名 称の使用許諾を帰責原因として名義貸人が責任を負うのである。名義貸人の責任は、名義借人の機関方式によって成 立するのではなく、商法壬二条によって認めるべきである。 ︵1︶ 判例時報一三三号七頁Q名義貸の判例については、

東洋法学

米沢明﹁名板貸一ー五﹂民商法雑誌五四巻四号・五五巻一号・六号・        七三

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︵6︶ ︵7︶ ︵8︶ ︵9︶ ︵鈴︶ ︵U︶ ︵捻︶ ︵13︶ ︵M︶ ︵娼︶ ︵賂︶  商法二三条と手形行為      七四 五八巻五号・五九巻二号が詳しい。  判例時報三七五号七四頁o  判例時報四八七号五六頁。本判決の評釈として、位野木益雄・金融法務事情五〇一号八頁、鈴木竹雄・ジュリスト四四七 号コニ九頁、鴻常夫・ジュリスト三九八号三八二頁、並木俊守・金融商事判例六七号二頁、米沢・判例時報互三号二圭ハ 頁、島十四郎・手形小切手判例百選︵第三版︶四四頁などがある。  金融法務事情五二一号四六頁。  週間金融・商事判例三九七号九頁、本判決の評釈として、木内宜彦・週間金融・商事判例四〇九号二頁がある。なお、商 法二三条の適用を否定したものに、盛岡地裁花巻支部昭和五一年八月一二日判決︵判例時報八三七号九二頁︶があるとの見 解があるが、これは商法二三条を問題とすべぎ事案ではないと解する。右判決の評釈として、服部栄三・ジュリスト七〇四 号一二六頁がある。  判例時報六一九号八八頁。  下級民集二〇巻九・一〇号七七三頁。  金融法務事情五八一号二八頁、ただし、第三者が悪意であることによって名義貸人の責任を否定している・  判例時報六四七号八一頁。  判例タイムズニ九一号三四三頁。  判例タイムズ四二五号一五九頁。  判例時報五八○号七九頁、本判決評釈として、菅原菊志・判例時報五九〇号二二七頁がある。  判例時報六ニニ号八七頁、本判決評釈として、中馬義直・ジュリスト五五四号一一〇頁があるQ  田中誠二・手形・小切手法詳論︵上︶一八二頁、並木・前掲三頁。  服部・商法総馴二一六頁以下。  木内・前掲判例批評四頁以下、同・手形法小切手法︵企業法学皿︶一〇一頁。

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︵17︶ ︵18︶ (19 ) ︵20︶ ︵飢︶ ︵22︶ ︵23︶ ︵鍛︶ ︵25︶  米沢・﹁手形行為と名板貸﹂民商法雑誌八四巻二号一八二頁以下・  高窪利一・現代手形・小切手法二九頁以下、加美和照・判例時報九九八号一八三頁、中村真澄・商法︵総則・商行為︶ 判例百選五七頁、松岡誠之助﹁手形行為と名板貸﹂現代商法学の課題中︵鈴木竹雄先生古稀記念︶九四三頁、永井和之﹁名 板貸人の責任﹂商法の争点一七頁、本問輝雄・法律のひろば三四巻六号八二頁以下。  鴻・前掲三八三頁、島・前掲四五頁は、名義使用許諾に署名代行させる趣旨が含まれているとぎは機関による手形行為の 問題となり、また自己の氏名を行為者がその別名として使用することを許諾したにすぎない場合は、外観を信頼した第三者 を保護するため表見法理、外観理論の問題として解決さるべきものとなるので、そこには責任の連帯性を認める基礎はない とする。  菅原・前掲一三九頁。  木内・前掲判例批評四頁以下、同・前掲書一〇一頁、本間・前掲八三頁。  田中︵誠︶・商法総則詳論二七闘頁以下。  加美・前掲一八三頁は、手形所持人にとっても手形の書面行為性からその手形行為の名義人が、営業に関しての名義貸か、 または単に手形行為のみについての名義貸かによって区別すべき根拠も存しないとする。本間・前掲八二頁参照。  木内・前掲判例批評四頁以下は、判例のなかからこのようなルールを引出すことが可能であるとする。  保護されるのは、名義借人の直接の相手方に限るのか、それともその後の第三取得者も含むのかが問題となる。名義貸人 の貴任も表見代理における本人の賛任も表見法理に基づくものであるから、まず手形行為の表見代理における第三者につい てみると、判例は、直接の相手方に限るとの立場をとり︵最判昭和三六年二一月一二日民集一五巻二号二七五六頁︶、多 数説は、手形取引の安全を図るため直接の相手方のみならずその後の手形取得者も含むと解している︵鈴木・手形法・小切 手法一六〇頁など︶。名義貸の場合にも、直接の相手方に限るとの下級審判決︵前掲高松高裁昭和三九年一旦三日判決︶ と善意の第三取得者を含むとの学説がある︵松岡・前掲九三九頁以下︶が、手形は軽転流通するものであるから、第三取得 者が手形上に表示された名義人たる名義貸人を手形行為者であると誤認したときは保護すべぎである。  東洋法学       七五

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︵2 6︶ ︵27︶ ︵28︶ ︵29︶ ︵30︶ ︵31︶ ︵3 2︶ ︵33︶ ︵3 4︶ ︵35︶ ︵36︶ ︵37︶ ︵38︶ ︵39︶  商法二三条と手形行為       七六  木内・前掲書一〇一頁は、商法二三条の適用あるいは、その法文の文言を厳密に扱うならば、類推すべぎ基礎はあると考 えなければならないとする。  米沢・前掲﹁手形行為と名板貸﹂一八五頁参照。  加美・前掲一八四頁、木内・前掲判例批評六頁は、使用人に名義使用の許諾を与えたとか、出張所長等の肩書で手形取引 を行なうことを許諾したような特殊な事情がある場合に限るとする。  田中︵誠︶・手形・小切手法評論︵上︶一四一頁、加美・前掲一八四頁、藤井昭治﹁名板貸による手形行為﹂手形法小切手法 八二頁参照。  江頭憲治郎・ジュリスト四五五号一二四頁参照。  判例時報六八二号七七頁、前掲高松高判昭和三九年一月三一β参照。  服部・前掲判例批評二一八頁参照。  田中昭﹁商法二三条と手形行為﹂甲南法学九巻一・二号三二一頁以下参照。  高島正夫﹁名義貸与者の責任﹂比較法と私法の諸問題︵小池降一博士還暦記念論文集︶三〇一頁以下参照。  前掲東京地判昭和三七年九月一〇霞。  鈴木・前掲一四一頁。  米沢・前掲﹁手形行為と名板貸﹂一八八頁は、商法二三条の類推適用によって名義貸人の手形上の責任を認める場合にも、 名義貸人が自己の名義の使用許諾によって自己が手形行為者であると表示し、またはその外観を作出したことに対し責任を 負わせることになるが、その表示または外観の作出は、名義借人による名義貸人名義の手形行為によって実現されているの であるから、名義貸人は名義借人をその機関として自己の手形行為を代行させたことと結果的には隅様であり、名義貸人は 広義の機関による自己自身の手形行為として責任を負うことになると解する。  中村・前掲五七頁。  松岡・前掲九三一頁以下。

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︵40︶ 大隅日河本・前掲は、表見理論によって、名義貸人はみずからの手形行為を行なったのと同様の責任を負担せしめられる   べきであると解する。 ︵遍︶ 江頭・前掲一二三頁は、名義借人は手形行為者としての責任を負い、名義貸人は商法三二条の効果として、自己も名義借   人と連帯︵合岡︶して手形上の責任を負うのであり、これは、名義借人は手形行為者としての責任、名義貸人は商法二三条   の法定責任という趣旨であるとする・  口 名義借人の責任  当座預金取引ないし手形行為に関して名称の使用許諾がなされた場合に、商法二三条の適用ないし類推適用がある とすると、名義貸人は名義借人の債務について連帯責任を負うことになるが、この点について、否定説は名義借人が 手形上の責任を負うことはないという。その理由として、﹁手形行為の本質にかんがみれば、ある者が氏名、商号等 の使用を許諾した者の名義で手形上に記名押印しても、その者自身としての手形行為が成立する余地はなく、したが ってその者は手形上の債務を負担することはなく、その名義人がその者と連帯して手形上の債務を負担することはあ          ︵1︶ りえない﹂と主張する。  この論理によると、前述の名義借人が自己の名称を使用して営業をなすことを許諾した場合にも、手形行為につい ては商法二三条の適用はありえないことになり、不当である。  以下、名義貸人が名義借人と連帯責任を負う前提として、手形上に名称の表示されない名義借人が手形上の責任を 負うかという点について考える。     東洋法学       七七

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    商法二三条と手形行為       七八     イ 他人名義を使用して手形行為がなされた場合に、その行為者自身の手形行為を認めることができるか否か。こ  ︵ の点については、他人名義を使用した手形行為は、その名義が行為者自身の通称・別名と認められる場合に限って行        ︵2︶ 為者の署名があると解して手形上の責任を負わせてよいとの見解がある。この見解によると、名義貸人の名称を名義 借人が使用したとぎに、名義貸人の名称が名義借人の通称・別名となっている場合を除いて、手形行為について商法 二三条が適用されないことになる。  しかし、他人の名称を平常使用し、それが周知されているような名称でなく、そのときにだけ使用された名称であ ろうと、いやしくも自己を表示するためにその名称を用いた以上は、その行為者に当然手形上の責任が認められると   ︵3︶ する見解が妥当であろう。  他人の名称を使用する場合に他人のためではなく、自己を表示するために使用したと認められるとぎには、他人の        ︵壊︶ 名称で自己の手形行為をしたものといわなければならない。他人の名称を使用した場合でも、その名称を自己を表示       ︵5︶ するために使用している限り、みずから手形行為をしているのであるから、手形上の責任を認めるべきである。した がって、名義借人が名義貸人の名称を使用しているときは、名義借人は自己を表示するために名義貸人の名称を僅用       ︵6︶ しているのであるから、名義借人に手形上の責任を認めるべぎである。  ただ、このような見解に対しては、手形行為者が他人の名称を使用して、自己の手形行為をしていることを手形の 記載から判断できないので、手形外の資料によって判断しなければならないが、これは手形行為の文言性に反するの でそれが許されるか否かとの問題がある。しかし、この問題点については、手形行為の内容︵金額、満期等︶につい

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ては手形面の記載によって判断すべく、手形外の資料をもって判断できないのであるが、手形行為の当事者が誰であ るか、行為能力があるかなどについては手形行為の内容ではなく、手形行為の当事者や能力の問題であるから、それ       ︵7︶ は手形面の記載だけではなく、手形外のあらゆる資料を総合して判断すべきであると解されている。  他人の名称を使用して手形行為をした者が手形責任を負うためには、その名称が手形行為者自身の名称として慣用 され、周知されていなくてはならないことを要件とすると、手形行為者は周知性がないことなどを理由に手形上の責 任を否定するであろう。これを理由にして手形上の責任を免れることは、手形取得者の利益を無視して手形行為者を       ︵8︶ 不当に利せしめることになり妥当でない。手形行為における署名は、手形行為者の正式の名称に限らず、行為者を表       ︵9︶ 示し、その同一性を確認できる名称であれば通称・雅号・芸名でもよいとされており、また、最高裁昭和四三年一二 月二一日判決では、多数回にわたり他人名義で手形を振り出していたが、その名称が手形行為者の名称として取引上 周知と認められるにいたっていない場合に、手形行為者は自己を表示する名称として他人の名称を使用したものと認       ︵10︶ めて手形上の責任を肯定している。  これは手形取得者に手形行為者が誰であるかを確知させるために周知性が必要であるとするものであり、手形取得 者を保護するためである。他人名義で手形を振り出した者に、それが周知でない場合にも、その他人の名称を自己を 表示する名称として使用したものであるとして手形上の責任を認めた判例もあり、周知性は手形行為者が他人の名称 を自己の名称として使用していることを立証するための証拠として有利になるにすぎないと考えられるから、たとえ 周知性がなくても他人の名称が手形行為者自身の名称として使用していることが立証された場合には、その行為者に

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    商法二三条と手形行為       八○        ︵1 1︶ 手形上の責任を認めてよいであろう。  判例が取引上周知でなく、単に何度か他人の名称を手形振出に慣用していたというにすぎないような場合にも、自 己を表示する名称として他人の名称を使用したと考えるのなら、単に一回だけ他人名称を使用した場合にも自己を表 章するものとして使用したと解するのが自然であり、そうでなければ、いったい何回以上慣用すると行為者本人を表 示する名称と解されることになるのかという問題を生ずることにもなるとし、また、このように解することがヤいか なる名義を使用しようとみずから行為した者が行為者としての責を負うという法の一般原則︵商二〇一条参照︶にも       ︵把︶ 合致するとの見解がある。  右の見解のように、単に一回だけ他人の名称を使用した場合でも、自己を表示するために使用したとぎには、みず から手形行為をしているのであるから、手形上の責任を負うのは当然である。したがって、手形行為者が他人の名称 を使用して自己の手形行為をした以上は、たとえ一回だけ使用した名称であっても、その行為者を表示するために他       ︵葛︶ 人の名称を使用したことの立証があれば行為者としての手形上の責任を負わせるべきであると解する。右の立証をす るために、周知性等は有利な証拠となるにすぎないのであって、他人の名称を自己の名称として使用したことを何ら かの方法で立証すれば十分であるが、名義貸の場合には、その立証は可能である。この点について、単に手形行為を なすことを目的として自己の名称を許諾したというような事情があるとぎは、名義借人については、その他人の名義       ︵猛︶ を自己の名称として使用するものであることを認定しうる客観的事実が存在するといってよいとの見解もある。  したがって、手形行為の名義貸においては、名義借人が名義貸人の名称を自己を表示する名称として手形行為をし

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た以上、その手形行為者は明らかに名義借人自身であって、名義借人はこの手形の署名者としてその手形行為につい て手形上の責任を負うことになる。     口 また、判例は偽造者に手形上の責任を肯定しているのであるから、名義借人に手形上の責任が生じないとはい  ︵      ︵15︶       ︵弼︶    ︵17︶ えないであろう。従来の判例、多数説は、他人の名称で手形行為をした者は手形取得者に対し手形上の責任を負わな いと解していた。その理由は、偽造者はその氏名が手形上に表示されていないからであるとされていた。       ︵娼︶  しかし、最近の判例は、無権代理人の責任を定めた手形法八条を類推適用して偽造者に手形上の責任を認めている。        ︵担︶       ︵20︶ 学説は、偽造者に手形上の責任を認めるための理論構成として、手形法八条類推適用説と偽造者行為説とがある。後 説は、偽造者は他人の名称を自己を表示する名称として使用したものであるからみずから手形行為をした本人として 寅任を負うべぎであるとする。この説に対しては、偽造者の意思は自己の手形行為をなすに当り、自分自身を表示す       ︵雄︶ る名称として他人の名称を使用したのではないとの批判があるが、これについては、偽造者は無権限で被偽造者の署 名を代行したのであるから、手形法的にはむしろ被偽造者のためではなく、自己のために被偽造者の名称を使用した       ︵22︶ ものと認められ、したがって被偽造者の名称で自己の署名︵手形行為︶をしたものといわなければならないとか、行 為者の主観的意図を基準にしたのでは、手形取得者の立場はぎわめて不安定になってしまい妥当でないといわれてい ︵23︶      ︵胆︶ る。この偽造者行為説が妥当であろう。  偽造者も名義借人も手形上にはその名称が表示されていないのであるが、偽造者は手形上の責任を負うべきである と解されているのであるから、名義借人にその名称が手形上に表示されていないことを理由として手形上の責任を否

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    商法二三条と手形行為       八二 定する見解は妥当でない。判例も偽造者に手形上の責任を認めているのであるから、他人の名称を使用しても行為者 自身としての手形行為が成立する余地がないとの理由で名義借人の責任を否定することはできないであろう。     ハ 名義借人が責任を負うことを商法壬二条の要件とする必要はないとの見解がある。この見解は、商法二三条の  ︵ 名義貸人の責任は、相手方の誤認に基づく責任であるから、名義借人が責任を負うことを絶対的要件とするとみる必 要はないとして、かりに名義借人が責任を負わない場合であっても、このことから直ちに商法二三条の適用ないし類       ︵25︶ 推適用を否定することは妥当でないと解し、あるいは、商法二三条の要件は名義貸人が自己の名称の使用を許諾する ことによって、名義貸人自身がその営業の主任者であるかのような外観を作出し、その結果、相手方が営業主体を誤 認して取引したことのみであり、名義借人が債務を負うこと自体はなんら名義貸の本質でも要件でもないと解してい ︵26︶ る。  前述のように、商法二三条は取引の安全を保護するために、事実と異なるような外観を作出した名義貸人に責任を 負わせようとするものであって、禁反言則ないし外観法理に基づくものであるから、名義貸人の責任を認めることに 主眼があるのであり、名義貸人の責任は相手方の誤認に基づく責任であるから名義借人が責任を負うか否かはそれほ ど問題にする必要はないとも考えられる。 ︵1︶ 前掲最判昭和四二年六月六日。 ︵2︶ 鴻﹁署名と記名捺印﹂手形法・小切手法講座︵1︶二二七頁、大判明治三九年一〇月四β民録二一輯二一〇三頁は﹁本人ノ   慣用二依リ知人又ハ隣佑問、其称呼ナルコトヲ知レルし名称であれば、通称、雅号、芸名等でも差支えないとしている。

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︵3︶ ︵4︶ ︵5︶ ︵6︶ ︵7︶

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︵10︶ ︵11︶ ︵12︶ ︵捻︶  鈴木﹁手形行為の解釈e﹂法学協会雑誌八○巻二号一六八頁、田中︵誠︶・手形・小切手法詳論︵上と八三頁。  服部﹁手形行為における表見代理し法学教室七号七五頁参照。  田中︵昭Y前掲一三三頁参照。  本問・前掲八二頁参照。  田中︵誠︶・手形・小切手法詳論︵上と八四頁、鈴木・前掲論文一六八頁、田中︵誠︶罷山村忠平紅堀旦旦・コンメンタール 手形法三八五頁以下。  鈴木・手形小切手判例百選︵第三版︶二頁参照。  他人名義による手形行為に関する学説・判例は、鈴木・前掲論文一六三頁、鴻・前掲論文一二五頁、大山俊彦﹁他人名義 による手形行為﹂商法H︵判例と学説6︶一八三頁、島﹁他人名義による手形行為﹂商法の争点二七四頁参照。  民集一ご一巻二舌写二九六三頁、会社の代表取締役Yは、会社が銀行取引停止処分を受けたので、実兄A名義の当座取引口 座を設け、半年間に多数回にわたりA名義で手形を振り出していた事案において、﹁Yは、自己を表示する名称としてA名 義を使用したものと認めることができるから、その名義を用いた手形署名はY自身の署名とみるべきであり、したがって、 Yは、本件約束手形の振出人として、その手形金支払の義務を負うものといわなければならない﹂と判示している。  高窪・前掲一一七頁以下参照。  竹内昭夫・手形小切手判例百選︵第三版︶五九頁。  大隅﹁手形行為者の名称﹂商法の諸問題三五九頁以下は、たまたま手形行為者がその場かぎりで他人の名称を用いて署名 または記名捺印した場合においても、それが当該行為者を表示するものとして使用されている以上、その者に手形上の責任 を帰せしめるのが筋道ではないであろうかとされる。そして、手形行為者が平素一般生活においてまたは取引に当たりその 名称を使用しているか、あるいはたまたま一回かぎりそれを使用したかということは、その名称が当該行為者を表示するも のであることの立証の要否または難易の問題にすぎなく、それが当該行為者を表示するものとして使用されている点に変り がない。したがって、この事実が立証されるかぎり、その行為者の手形上の責任を否定する理由はありえないと解する。

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︵鋲︶ ︵蔦︶ ︵絡︶ ︵葺︶ ︵1 8︶ ︵19︶ ︵20︶ ︵21︶ ︵22︶ ︵23︶ ︵24︶  商法二三条と手形行為       八四  大隅H河本・前掲一一〇頁。  永井・前掲一七頁参照。  最判昭和二七年一〇月二一日民集六巻九号八四一頁は、﹁手形の被偽造者は偽造手形により何ら手形上の義務を負うもの ではなく、このことは被偽造者に重大な過失があったと否と、また受取人が善意であったと否とにかかわからない﹂と判示 している。  田中耕太郎・手形法小切手法概論二〇四頁など・  最判昭和四九年六月二八日民集二八巻五号六五五頁は、﹁手形法八条による無権代理人の責任は、責任負担のための署名 による責任ではなく、名義人本人が手形上の責任を負うかのように表示したことに対する担保責任であると解すべきところ、 手形偽造の場合も、名義人本人の氏名を使用するについて何らの権限のない者が、あたかも名義人本人が手形上の責任を負 うものであるかのように表示する点においては、無権代理人の場合とかわりなく、したがって、手形署名を作出した行為者 の責任を論ずるにあたり、代理表示の有無によって本質的な差異をきたすものではなく、代理表示をせずに直接本人の署名 を作患した偽造者に対しても、手形法八条の規定を類推適用して無権代理人と同様の手形上の担保責任を負わせて然るべき ものと考えられるからであると﹂判示している。  伊沢孝平・手形法小切手法一七一頁、竹田省・手形法・小切手法三三頁など。  大隅・前掲論文三六〇頁以下、服部・手形・小切手法綱要九三頁、竹内・前掲五九頁、蓮井良憲﹁手形の偽造﹂手形法・ 小切手法講座−二四九頁など。  田中︵誠︶・手形・小切手法詳論︵上と九五頁。  服部・前掲﹁手形行為における表見代理﹂七五頁。  竹内・前掲五九頁。  竹内・前掲五九頁、蓮井﹁手形偽造者の手形上の責任﹂商法の争点二七九頁は、偽造者行為説はいかなる名義を用いよう とみずから行為した者が行為者としての責任を負うという法の一般原則にも合致し、今日の判例の流れにも沿うとする。

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︵25︶ ︵26︶  服部・商法総則二一八頁、加美・前掲一八三頁参照。位野木・前掲一 責任の有無を決するのは合理的理由に乏しいとしている。  江頭・前掲一二三頁以下。 一頁は、名義借人の責任の有無によって名義貸人の  国 名義貸人と名義借人の連帯責任  商法二三条は、名義貸人が名義借人と連帯責任を負う旨規定しているから、手形行為の名義貸においても名義貸人 と名義借人とが連帯責任を負うか否かについて問題となる。商法二三条の劾果としては、同条の要件が充たされた場 合に、名義貸人は名義借人と連帯して責任を負い、善意の相手方はその選択によって名義貸人または名義借人のいず        ︵王︶ れに対しても債務の弁済をすることができるとし、この場合の連帯債務は不真正連帯債務であると解されている。  名義貸人と名義借人の連帯責任を否定する見解によると、手形行為の名義貸の場合には名義借人の名称が手形上に       ︵2︶ 記載されていないので名義貸人が名義借人と連帯責任を負うことはないと解し、あるいは、一個の署名︵記名捺印︶ から名義貸人の手形行為と同時に名義借人の手形行為を併存的に認めることはできないとし、手形上における名義貸 人名義の署名により名義貸人が手形行為者であると解釈される限り、名義借人との手形上の債務につき連帯責任を認        ︵3︶ めることは困難であると解している。  これに対し、名義貸人と名義借人の連帯責任を認める見解は、名義貸人は表見法理によって名義借人と同一の責任 を負わされるが、これは名義貸人の手形行為に基づいて生ずる手形債務ではないから、手形債務成立の根拠に関する     東 洋 法 学       八五

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    商法二三条と手形行為      八六 限り名義借人の手形債務と同一ではない。手形上の手形行為から生ずる手形債務は、つねに手形行為者たる名義借人 の手形債務であって、これと手形行為以外の根拠から生じた名義貸人の手形債務との同時的併存を認めることができ       ︵4︶ るから、両者の間に商法壬二条による連帯関係を認めることができると解し、あるいは、名義貸人の名称が名義借人 の名称として認められる場合に、名義貸人の責任が否定されるわけではなく、この場合にも名義貸人は手形上に名義 貸人の名称が記載されているのであるから記載通り手形上の責任を負わなけれぽならないので連帯債務が発生すると     ︵5︶ 解している。  前述のように、名義借人は名称の慣用や周知性にかかわらず、他人の名称を単に一回だけ使用した場合でも自己を 表示するものとして使用したと解することができるから、名義借人は名義貸人の名称を名義借人自身を表示する名称 として手形行為をなしたことにより手形上の責任を負い、名義貸人はみずから手形行為は行なっていないが、それを       ︵6︶ 行なったのと同様の責任を商法壬二条によって負うことになる。したがって、商法二三条によって名義貸人は名義借 人と手形上の債務について連帯して責任を負うと解することができる。  名義借人は名義貸人の名称を自己を表示するために使用することによって手形行為者としての責任を負い、名義貸 人は商法壬二条の効果として名義借人と手形上の債務について連帯責任を負うことになるが、両者の関係は手形法的       ︵7︶ には合同責任︵手四七条︶と解する。  なお、商法二三条の趣旨は名義貸人の責任を認めることに主眼があるのであって、通常の場合営業主も責任を負う のであろうから、それと連帯責任を負うと定めてはいるが、営業主と連帯責任を負うことは必ずしもその本質的要素

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       ︵8︶ とみる必要はないとの見解がある。前述のように商法二三条は外観法理に基づくものであるから、名義借人が責任を 負うか否かはそれほど問題にすることもなく、また、連帯責任についてもそれほど問題にする必要はないとも考えら れる。 ︵1︶ ︵2︶ ︵3︶ ︵4︶ ︵5︶ ︵6︶ ︵7︶ ︵8︶  大隅・商法総則︵新版︶三〇九頁、田中︵誠︶・商法総則詳論二八一頁。  前掲最判昭和四二年六月六日。  米沢・前掲﹁手形行為と名板貸﹂一八九頁は、商法二三条による連帯責任は同条適用の効果であって、連帯責任が成立し ないということから同条の適用または類推適用がでぎないということにはならないと解している。  松岡・前掲九三一頁以下。田中︵昭Y前掲三ニニ頁は、商法二三条により名義貸人が名義借人の手形上の債務に連帯責任 を負う場合、名義貸人の負う債務の内容は名義借人の手形上の債務と同一内容であるが、手形上の債務として手形上におい て負うものではなく、商法の二三条の規定により手形外により手形外において負う債務であると解している。  石田栄一・金融・商事判例六一八号五五頁以下。  大隅翻河本・前掲二〇頁以下参照。  江頭・前掲一二四頁は、合同責任と解する理由として、手形の共同振出人についても合同責任と解されているのであるか ら、それ以上に主観的共同関係を欠く手形行為の名義貸の場合が、民法四三二条以下の連帯債務であるはずがないとする。 大隅”河本・前掲一〇九頁以下参照、前掲大阪高判昭和四四年一〇月二八日は合同貴任であるとしている。  位野木・前掲一一頁。

東洋法 学

八七

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商法二三条と手形行為 八八 四 営業について名義貸がなされたが手形行為にのみ使用された場合  自己の名称を使用して営業を営むことを許諾した場合に、名義借人がその名称を使用して営業を営まないで手形行 為にその名称を使用したとぎに名義貸人は責任を負うか否かについて検討してみよう。  この問題については最近の最高裁昭和五五年七月一五日判決を中心に考えることにする。事実の概要は次の通りで ある。YはAに対し﹁精華住設機器Y﹂の名称で商売をすることを許諾した。しかし、Aは右の名称を使用して新規 の店舗を開店することなく、B相互銀行O支店との間で右名義の当座預金臼座を開設し、Yの了解なしにA会社の営 業に関連してY名義の約束手形を振り出した。Yは右の事実を知っていたが黙認していた。Xは﹁精華住設機器Y﹂ 振出名義の約束手形の割引を依頼された際、支払場所であるB相互銀行O支店に信用状態を照会したところ、従来は 無事決済されているとの回答を得たので以後三回にわたって手形を割引いてきたがいずれも決済されている。しかし、 本件手形が決済されなかったのでXがYに対して手形金の支払を請求した。  右最高裁は、﹁右事実関係のもとでは、Aに﹃精華住設機器﹄を冠した自己の名称を使用して営業を営むことを許 諾したYが、右の名称使用を許諾した営業の範囲内と認められるガス配管工事やプ﹃ハンガスその他の燃料の販売を 業務内容とする訴外A会社の営業のためにY名義で振り出された本件手形につき、Aが右の名称を使用して営業を営 むことがなかったにも拘らず、これまでにその名称でB相互銀行O支店との問で当座勘定取引口座を利用した前記振 出名義の約束手形が無事決済されてきた状況を確かめたうえでその裏書譲渡を受けたXに対し、商法二三条の規定の

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類推適用により、手形金の支払義務があるものとした原審の判決は、正当として是認することができる。所論引用の 判例︵最高裁昭和三九年︵オ︶第八一五号同四二年六月六日第三小法廷判決・裁判集八七号九四一頁︶は、本件と事        ︵1︶ 実を異にし適切でない。﹂と判示している。  右の事案は、これまで検討してぎた④名義貸人が自己の名称を使用して営業をなすことを許諾したとぎに、名義借 人がその営業に関連してその名称を使用して手形行為をした場合と、@名義貸人が単に当座預金取引ないし手形行為 についてのみに自己の名称の許諾をし、名義借人が手形行為にその名称を使用した場合との中間に位置するようにも みえる。また、自己の名称を営業に使用することを許諾しているのであるから④の場合に属するようであるが、実際        ︵2︶ には営業には使用しないで手形行為に使用したのであるから@の場合に属すると思われる。  本件が④の場合と@の場合の中間に属する事案であるとする見解は、本判決が自己の名称を使用して他人に営業を 営むことを許諾した場合に、名義借人がその名称を使用して営業を営むことがなくても、その名称を使用した当座勘       ︵3︶ 定取引に基づく手形行為について、商法二三条の類推適用により名義貸人の責任を肯定したことは正当であるとか、 本件については表見法理を適用して名義貸人に手形上の責任を認めることもできるが、さらに一歩進んで商法二三条       ︵4︶ を適用しまたは類推適用する余地はあるとしている。  本件が@の場合に属するとの見解は、本件に手形行為の主体に誤認を生ぜしめる場合に、手形行為者の名義人に名 義貸の責任を帰することができるかの問題であり、名義貸人が手形行為そのものについて名義使用許諾をしているか 否かの側面から責任を判断すべぎであるとし、商法二三条をでぎるだけ拡張して手形行為にも適用すべぎであるとの

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