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ナトリウム利尿ペプチド/cGMP/cGMP依存性プロテインキナーゼ系の抗肥満作用と糖脂質代謝に及ぼす効果の検討

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Academic year: 2021

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(1)

はじめに

ナ ト リ ウ ム 利 尿 ペ プ チ ド( N P )は ANP, BNP, CNPの三者からなる,心 臓ないしは血管壁に由来するホルモン であり,細胞膜に存在するグアニル酸 シクラーゼであるGC-A, GC-Bを受容 体とし,細胞内のcGMP濃度を上げ c G M P 依 存 性 プ ロ テ イ ン キ ナ ー ゼ (cGK)を活性化することにより作用を 発揮する1) .NPの循環器系組織におけ る作用はこれまでにもよく知られてお り,血管拡張,ナトリウム利尿,ミネ ラルコルチコイド分泌抑制を介して, Na過多や血管内容量増加に拮抗する 作用を発揮する.最近,NPが脂肪細 胞にも作用し,cGKを介してホルモン 感受性リパーゼを活性化することで, 脂肪分解を促進することが明らかにさ れた2).また,フラミンガムスタディ ーのサブ解析においては,肥満患者で NP濃度が低下していることが報告さ れた3) .これらNPの代謝制御における 意義を示唆する知見を背景に,今回 我々は脳性ナトリウム利尿ペプチド (BNP)ないしはcGKを過剰発現するト ランスジェニック(Tg)マウスを用い て,NP/cGKカスケードの抗肥満作用 と糖脂質代謝に及ぼす効果を検討した.

対象と方法

これまでに我々が開発したBNP-Tg マウスとcGK-Tgマウスに10週齢から 高脂肪食(脂肪重量比60%)を与え,体 重,血糖値等を評価した4,5) .BNP-Tg マウスは血清アミロイドPプロモータ ーにより,肝臓特異的にBNPを過剰発 現しており,Tgマウスの血漿BNP濃 度は野生型(Wt)マウスのおよそ100倍 であった.cGK-TgマウスはCAGプロ モーターによりcGK-Iαを全身性に過 剰発現しており,脂肪組織,骨格筋, 肝臓におけるcGKの発現はWtの数十 倍であった.

結 果

8週間の高脂肪食負荷後,BNP-Tg マウスの体重はWtと比較して有意に 減少していた(18週齢オスWt 43.0± 0.9g, BNP-Tg 38.9±0.9g;p<0.01). 体重補正摂食量はTgとWtで差を認め なかった.脂肪組織重量はBNP-Tgマ ウスで有意に低下し,脂肪細胞径が縮 小していた.高脂肪食負荷に伴う脂肪 肝の発症はBNP-Tgマウスで有意に抑 制され,肝臓および骨格筋の中性脂肪 含量が低下していた.高脂肪食マウス における糖負荷試験での血糖上昇は, BNP-Tgマウスにおいて有意に抑制さ れ(血糖30分値Wt 340.2±14.9mg/dl, BNP-Tg 287.7± 12.7gmg/dl;p< 0.01),インスリン負荷試験では野生型 と比較して血糖値が有意に低下した. 血中レプチン濃度はBNP-Tgマウスで 低下し,アディポネクチン濃度は上昇 していた(図1). BNPの下流シグナル分子であるcGK の全身過剰発現Tgマウスでは,BNP-Tgマウス同様の表現系がより強く認 められた.cGK-Tgマウスの体重は普 通 食 下 に お い て も W t と 比 較 し て 約 10%減少し(18週齢Wt 32.0±0.6g, cGK-Tg 27.6±0.4g;p<0.01),8週間の高 脂肪食負荷後には約20%減少した(18 週齢Wt 43.9±1.2g, cGK-Tg 35.7± 1.4g;p<0.01).肝臓および骨格筋の 中性脂肪含量の低下が高脂肪食負荷 cGK-Tgマウスで認められた.糖負荷 試験ではcGK-Tgマウスの血糖上昇は 野生型と比較して有意に抑制され(血 糖30分値 Wt 362.1±16.1mg/dl, cGK-Tg 267.3±26.5gmg/dl;p<0.01),イ ンスリン負荷試験では血糖値の有意な 低下を認めた(図2). cGK-Tgマウスにおいて呼気ガス分 析を施行したところ,標準食下で酸素 消費量の増加と呼吸商の低下を認め た.またcGK-Tgマウスでは,骨格筋 におけるPPARδとUCP-3,褐色脂肪 組織でのUCP-1の発現が亢進してい た.BNP-Tgマウスにおいても酸素消 費量の増加を認めた.

考 察

骨格筋のPPARδやUCP-3は脂肪酸 酸化やエネルギー消費に関与し,褐色 脂肪組織のUCP-1は熱産生に関与する ことが知られている6,7) .したがって, NP/cGKカスケードの活性化は,マウ ス骨格筋において脂肪酸酸化を促進 「肥満研究」Vol. 13 No. 1 2007 <トピックス> 宮下和季,ほか

トピックス

87

ナトリウム利尿ペプチド/cGMP/cGMP依存性プロ

テインキナーゼ系の抗肥満作用と糖脂質代謝に及ぼ

す効果の検討

宮下 和季

*1

,伊藤  裕

*2

,辻本 浩一

*1

,曽根 正勝

*1

朴  貴典

*1

,小山田尚史

*1

,澤田 直哉

*1

,田浦 大輔

*1

犬塚  恵

*1

,園山 拓洋

*1

,田村 尚久

*1

,中尾 一和

*1 *1 京都大学大学院医学研究科内分泌代謝内科 *2 慶應義塾大学医学部腎臓内分泌代謝内科

(2)

し,褐色脂肪組織において熱産生を促 進することで,酸素消費量を増加させ, 呼吸商を低下させると考えられた.そ の結果,脂肪組織が減少して体重が低 下し,高脂肪食に伴う脂肪肝やインス リン抵抗性も抑制されることが示唆さ れた.以上BNP-TgマウスとcGK-Tgマ ウスを用いた検討より,NP/cGKカス ケードの活性化は,エネルギー消費を 増加させ,抗肥満作用と抗糖尿病作用 を発揮する可能性が明らかになった. 現在,脂肪,骨格筋,肝臓,中枢神経 系の各組織における詳細な作用機序に ついて検討している. 「肥満研究」Vol. 13 No. 1 2007 <トピックス> 宮下和季,ほか

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図1 高脂肪食負荷BNP-Tgマウスにおける肥満,脂肪肝,インスリン抵抗性の抑制 A 野生型マウス(Wt)とBNP-Tgマウスの6∼18週齢の体重.高脂肪食群は10週齢から高脂肪食(重量脂肪比60%)を負荷 * p<0.05, ** p<0.01 n=10∼18 B 高脂肪食負荷野生型マウス(Wt)とBNP-Tgマウスの肝臓肉眼像 C オイルレッドオー染色による顕微鏡的脂肪肝精査 D 高脂肪食負荷野生型マウス(Wt)とBNP-Tgマウスの糖負荷試験およびインスリン負荷試験での血糖値 *p<0.05 45 A B D C 40 35 30 25 20 15 6 100 200 300 400 (mg/dl) 0 0 15 30 * 120(分) 60 8 10 12 14 16 18(週齢) 標準食 糖負荷試験 Wt (g) (g) BNP-Tg Wt BNP-Tg 50 100 150 (%basal) 0 0 15 * ** * * * * * 30 * 120(分) 60 インスリン負荷試験 Wt BNP-Tg 45 40 35 30 25 20 15 6 8 10 12 14 16 18(週齢) 高脂肪食 Wt BNP-Tg 高脂肪食(重量比60%) BNP-Tg Wt Wt 100μm BNP-Tg 100μm

(3)

NP/cGKカスケードによる代謝制御

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図2 cGK-Tgマウスにおける肥満,インスリン抵抗性の抑制,酸素消費量亢進と呼吸商の低下 A 野生型マウス(Wt)とcGK-Tgマウスの6∼18週齢の体重.高脂肪食群は10週齢から高脂肪食(重量脂肪比60%)を負荷 * p<0.05, ** p<0.01 n=12 B 高脂肪食負荷野生型マウス(Wt)とcGK-Tgマウスの糖負荷試験およびインスリン負荷試験での血糖値 ** p<0.01 C 標準食野生型マウス(Wt)とcGK-Tgマウスの呼気ガス分析における酸素消費量と呼吸商 * p<0.05, ** p<0.01 45 A B 40 35 30 25 20 15 6 100 200 300 400 (mg/dl) 0 0 15 30 ** ** ** ** ** * * * ** ** * * ** * ** * * * 120(分) 60 8 10 12 14 16 18(週齢) 標準食 糖負荷試験 Wt (g) (g) cGK-Tg Wt cGK-Tg 50 100 150 (%basal) 0 0 15 ** ** ** ** ** ** ** ** ** ** ** ** ** ** * ** ** ** ** ** ** ** ** 30 ** ** ** 120(分) 60 インスリン負荷試験 Wt cGK-Tg 45 40 35 30 25 20 15 6 8 10 12 14 16 18(週齢) 高脂肪食 Wt cGK-Tg 高脂肪食(重量比60%) 100 C 80 60 40 20 24 4 8 12 16 20(時) 20 24 4 8 12 16 20(時) 酸素消費量 (ml/min/kg BW) Wt cGK-Tg 呼吸商 夜間帯 昼間帯 1.05 1.00 0.95 0.90 0.85 Wt cGK-Tg 夜間帯 昼間帯

(4)

文 献

1)Levin E R, Gardner D G, Samson W K: Mechanisms of Disease: Natriuretic Peptides. N Engl J Med 1998, 339:321-328.

2)Sengenes C, Berlan M, De Glisezinski I, et al.:Natriuretic peptides:a new lipolytic pathway in human adipocytes. FASEB J 2000, 14:1345-1351.

3)Wang TJ, Larson MG, Levy D, et al.:Impact of obesity on plasma

natriuretic peptide levels. Circulation 2004, 109:594-600.

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7)Evans RM, Barish GD, Wang YX: PPARs and the complex journey to obesity. Nat Med 2004, 10:355-361.

「肥満研究」Vol. 13 No. 1 2007 <トピックス> 宮下和季,ほか

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*本論文の内容は2006年度日本肥満学会若手研究奨励賞(YIA)の受賞対象となったものである

「井村臨床研究賞」

「井村臨床研究奨励賞」

「岡本研究奨励賞」

「井村臨床研究賞」 対  象:人,特に患者を対象とした成人血管病に関する研究で①基礎研究の成果の臨床への橋渡し研究,②疾患 の成因や病態生理の解明,③疾患の新しい診断・治療・予防法の開発などの分野で顕著な業績をあげた 研究者,研究グループ 受賞人数:研究者1名,または研究グループ1団体 締め切り:平成19年5月31日 「井村臨床研究奨励賞」 対  象:上記の研究分野で注目すべき成果をあげている45歳未満の若手研究者 受賞人数:3名以内 締め切り:平成19年5月31日 「岡本研究奨励賞」 対  象:高血圧,動脈硬化,糖尿病など成人血管病の成因,予防,治療に関する基礎的研究にあたる40歳未満の 優秀な研究成績をあげている研究者 受賞人数:5名以内 締め切り:平成19年5月20日 問合せ先:財団法人成人血管病研究振興財団 〒606−8413京都府京都市左京区浄土寺下馬場町86番地 国際健寿ビル1F TEL:075−761−2381 FAX:075−761−2382

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