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巻頭言「人間関係の構築としての国際会議」

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Academic year: 2021

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1 人 工 知 能  34 巻 1 号(2019 年 1 月) 以前,文部科学省の方が出雲に来られ,どうして先生は国際的に活躍されているのですか,と聞かれたことがある. 自分のことをあまりそのように考えたことはないし,大したことはしていないが,いろいろな国際会議に参加して, 一つ思っていたことがあるので,ここで記しておきたい. 人工知能の医療応用の研究を始めて,30 年以上の月日が経過した.最初はエキスパートシステム,その後定性推論 を経て,データマイニングの研究に進んだ.運良く,データマイニングの黎明期に研究発表をすることができ,その後, IEEE ICDM,IEEE Big Data の立上げに関わってきた.

さて,どうしてこういう国際会議に参加して来られたかということを考えると,1993 年にラフ集合のワークショッ プに出席したということが大きい.当時,自分が手がけたエキスパートシステムのルールの帰納的な生成がラフ集 合の枠組みで記述できることに気付き,このことを国際会議で発表し,ぜひ海外の研究者の意見を聞きたいと思っ た.Banff のモーテルで 3 泊 4 日の合宿のような形のワークショップであったが,Nick Cercone, Jinwei Han, Jan Zytkowといったラフ集合以外の研究者が参加していた.筆者の発表はラフ集合の研究者に評価されたが,それだけ ではなく,大学院の学生達と昼も夜も議論をすることができたのが重要であった.この議論の中で,自分の研究の意 味を海外の人から見るとどのように見えるかがわかり,自分の書いたドラフトを見てもらいながら,いろいろな意見 をもらい,自分の研究を丁寧にまとめることができ,最終的に筆者の学位論文に結実した.また,この学位論文をベー スにした論文がラフ集合の医療応用として,特に中国の研究者にとって,ラフ集合の基本的論文として扱われて,引 用数を稼ぐことになった.こういう論文についての成果は短期的な意味での国際会議参加のメリットといえる. しかし,若い友人達との議論はこのような短期的なメリットにはとどまらなかった.彼らとは,不思議なことに, 馬が合い,今後の研究の方向性を徹底的に議論し,一緒にやっていこうと盛り上がり,その後,彼らと付き合ってき た.KDD を始めとしたいろいろな国際会議で会い,そのつど,議論を進めた.このときの友人関係が,IEEE ICDM や IEEE Big Data に関わることにその後,大きく発展していった.これが,20 年以上前の友人関係の長期的なメリッ トといえるもので,現在の自分の研究活動を支えている. さて,この 20 年,いろいろな国際会議で日本人の発表を聞いてとても残念に思うのは,皆さん,素晴らしい発表 をされているのだが,そこで満足されて終わっているように見えることである.十分な準備をした素晴らしい発表を 武器に,いろいろな話を海外の研究者とできるのに,と感じることがある.国際会議のメリットは他国の研究者がど う考えているのかということに直接触れ,自分がもっているアイディアを彼らにぶつけて,直接彼らの反応を肌で感 じることができることにある.もちろん,他国の研究者と考え方が共有できるわけではない.しかし,もし共有でき ればそれが新しい分野の創出につながることがある.そういう分野は自分の考えが投影されていくことになり,その 全体像を把握することが容易で,みずから,その分野の進路に大きく関わることになる.もちろん,友人どうしの義 理とでもいえる,いろいろな雑用も回ってくるだろう.失敗の繰返し,雑用の増加は時間のむだと感じるかもしれない. しかし,そういう失敗はむだというわけではなく,自分の考え方を他人に伝える技術は向上していく.一見むだと思 えることも,失敗を重ねることで自らの能力を高めることができる. 筆者は,若い研究者にぜひ国際的な研究分野を先導していってほしいと思っているが,そのためには,海外の人達 と交流して,自分の考えを素直にぶつけていく,批判されてもその批判を乗り越えて,自らの考え方を深めていく機 会を有効に使ってほしいと思う.また,考え方を共有できる友人とともに,新しい分野を発展させることにトライし てほしい. 国際会議で自分の研究成果を報告するというのは,国際会議の一つの面を見ているに過ぎない.国際会議には,新 しい種が埋もれている.その埋もれた種を取り出し,種をまいて育てるというのが,もう一つの面である.まいた種 から良い果実が生まれるかどうか,何年かかるかはわからない.しかし,それが良い果実になるように努力すること 自体が自らのスキルとなって将来生きてくる. 若い研究者には,冒険心をもって果敢に新しい技術的課題に挑戦し,海外の若手とともに新しい分野を創出・発展 させていってほしい.

巻頭言

人間関係の構築としての国際会議

津本 周作

(島根大学医学部医療情報学)

参照

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