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教育費の公私負担意識: 社会空間アプローチによる世論の分析

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【要旨】 近年,格差是正や少子化対策の一環として教育の無償化が議論されている。こ れについては賛否両論があるものの,意見の分布に階層差はとくに見られないと いう。しかし,個人化された社会で人々の意識を扱うには単独の意見ではなく, 諸々の意見が織り成す文脈に焦点を当てる必要がある。本稿では,ブルデューの 社会空間アプローチを用いてこの問題に取り組んだ。具体的には,子どもの教育 と高齢者の社会保障について個人と政府の責任を問うた質問(JGSS-2012)に 注目し,それと他の諸々の意見との関連を多重対応分析により吟味した。 分析の結果,まず第 1 - 2 主成分で構築した政治的意識空間が経済的適応度と 政治的参加志向によって特徴づけられることが示された。また,取り上げた意見 の多くは第 2 象限から第 4 象限にかけて展開し,その並びが階層的様相をもつ ことが示された。社会的属性変数の布置からは,その並びが資本総量に一致する ことが確認された。他方,費用負担意識はそれに直交する第 1 象限と第 3 象限 にかけて展開し,他の意識との関連は希薄であった。社会的属性の布置も,僅か に伝統的専門職と経営者・業主の間に対立的関係が見られるに過ぎなかった。さ らに,意外なことに,学生や若者の位置が政府の責任増大を否定する領域に見出 された。これらは,この問題が未だ議論として定着しておらず,単に現状を反映 した回答がなされているに過ぎないことを示唆している。全体を通して,教育費 負担意識の現状と社会意識分析に対する社会空間アプローチの有効性が示された。 キーワード:教育費無償化,社会空間,多重対応分析 教育社会学研究第104集(2019)

教育費の公私負担意識:

社会空間アプローチによる世論の分析

近藤…博之

大阪大学大学院人間科学研究科

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1. はじめに 近年の日本では,少子化対策や格差是正策の一環として教育の無償化が話題に なっている。安倍内閣は,すでに消費税率の引上げを財源として教育無償化を含む 「新しい経済政策パッケージ」を閣議決定しており(平成29年12月 8 日),野党各党 も幼児教育や高等教育の無償化を重要な政策課題としている。しかし,マスコミの 調査によると,そのような方向が必ずしも全面的に支持されているわけではない。 たとえば,産経・FNN 合同世論調査(平成30年 5 月実施)によると,高等教育無 償化に反対する者が回答者の 4 割に上っている。また,朝日新聞社・ベネッセが 行った小中学生の保護者に対する意識調査(平成29年12月実施)でも,教育費を個 人ではなく税金で負担すべきだとする割合が,「国公立大学の授業料」で63.4%, 「私立大学の授業料」で33.9%,「幼稚園・保育園の保育料」で54.4%に留まってい る。教育の無償化をめぐり人々の意見を分けるものは何か。それは現代の社会意識 の潮流とどう重なっているか。また,それらの意識に回答者の社会的属性はどう関 係しているのか。ここでは教育費の公私負担意識を取り上げ,ブルデューの社会空 間アプローチを用いてその社会的文脈を探ってみる。 2. 教育費負担意識をめぐる議論 2.1. 対立的な諸契機 1990年代以降,教育費の高騰を背景に,家計の教育費支出や親の教育費負担意識 が注目されている。子どもの教育達成の文脈で,どういう特徴をもつ親が,どんな 理由で,教育費を積極的に支出しているのかという問題関心が一般的なものだが (末冨 2005,古田 2007,都村・岩井 2008),最近では政策的な関心から教育費 の公的負担意識に焦点を絞った分析も行われている(Nakazawa… 2015,矢野ほか  2016,小川 2017)。 公的負担に賛成する理由としてもっとも分かりやすいのは,子どもの教育に対し て投資動機をもつ親が,年々増大する金銭的負担の軽減を期待するという場合であ ろう。だが,家計の教育費支出の分析によると,親の意識のなかでそうした動機が 占める比重は小さいようだ(都村・岩井 2008)。投資動機を強くもつのは,教育 機会が不平等でかつ自らの階層的地位が低いという状況認識をもつグループに限ら れるともいう(古田 2007)。教育費支出が投資ではなく,象徴的意味をもつ消費 や子どもからの見返りを期待しない贈与(末冨 2005)であれば,たしかに親の意

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志が前面に出る私的支出にこそ意味があり,公的財源によって肩代わりしてもらう 必要はない。また,子どもの教育費は親が負担するのが当たり前という親負担主義 が,この問題の支配的規範になっているとの見方もなされている(矢野ほか 2016, pp.75-79)。教育熱心な親がつくる過熱ぎみの進学状況が,教育政策を立案する側 に家計教育費の過剰感を抱かせ,公的支援は不要との判断を導いてきたのだとする 議論(末冨 2010,pp.176-188)も,それと同じ観点に立つものといえるだろう。 他方,教育費の公的負担は,個人ではなく社会全体の義務や利益といった観点か ら考えていくことができる。現在の政策的論議で期待されているのは,むしろその ような認識の共有であろう。しかし,その認識が単純に公的負担の支持につながる わけではない。教育費の公的負担を拡充するには,増税による財源の確保や他の分 野の公的支出の削減が前提となるからだ。さらには,現在の政府や学校といった制 度に対する信頼も関係してくる。たとえば,Nakazawa(2015)は,増税をともな う公的支出増を支持する者が一定の割合で存在するものの,その大半は政府を信頼 しておらず,自らの主張を政策に反映させる回路をもっていないと分析している。 反対に,政府に信頼を寄せる者はどちらかというと階層的地位の高い層に属してお り,彼らは公的支出増の必要性をあまり感じていないという。 2.2. 階層との関連 このように,教育費負担意識については多様な分析が存在するが,社会階層との 関連があまり見られないとする点はどの研究も一致している。実際,社会的属性の 説明力は微弱で,それよりは子どもの世帯類型や年齢といった当事者性の方が有意 なようだ。しかし,従来の分析が個別の教育費負担意識をターゲットにしたもので あるという点に注意が必要である。現代のように社会の個人化が進んでくれば, 個々の意識を規定する要因も個人が置かれた状況に応じて多様化し,複雑化してく る。したがって,単独の意識からイデオロギー性を読み取ることはますます難しく なっている。教育費負担意識についても,諸々の社会意識との関連からその文脈を 明らかにし,そこでの階層性を問題にしていく必要があろう。 また,学歴との関連が見られないというのも教育社会学の観点からは見逃せない 点である。というのも,教育制度の発達が近代的な価値観や合理的な思考様式を広 め,市民社会の発展に寄与しているというのがこの学問の一般的な理解だからであ る(Kamens…2009,…Baker…2014)。政治的態度に関する多くの実証分析も,高学歴者 ほどリベラルな価値志向をもつことを明らかにしている(イングルハート 1993,

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片瀬・海野 2000,Weakliem…2002)。実際,高学歴者は機会の平等や社会福祉の 理念に馴染んでおり,自らの教育経験の上に日常生活を築いていることからも,教 育費の公的負担を支持しやすい立場にあるといえる。 ただし,個人の意識において社会的位置が重要であるなら,単純に学歴を区別し ただけでは明瞭な差が見いだせないかもしれない。たとえば,学歴資格を条件に公 的部門に地位を得ている者は,教育費の公的負担増を自らの地位再生産を安定化す るものとして受け止めやすいだろう。これに対して,私的部門の競争的な環境にお いて地位を築いている者は,教育に対する依存度が相対的に低い分,公的負担増を 自分たちの負担を軽減するというよりは,他人の利益を後押しするものとみなしや すい。また,子どもの存在が身近になければ,彼らが切実と考える教育以外の政策 課題が重視され,教育費については自分たちが経験したのと同じ受益者負担の理屈 が通りやすい。 人がどの社会的位置において教育と関わっているかを押えるために,まずは社会 意識がもつ多様な次元に目を向ける必要がある。この点について,たとえば本稿と 同様の観点から人々の政治的態度を分析した欧州の研究例は,政治意識の主要な次 元として,経済的財の分配に関わる「古典的な政治」の次元と,日常生活に関する 多様な価値観の対比からなる「新しい政治」の次元を区別している(Harrits…et…al.… 2009,…Atkinson…2017)。前者の次元を形づくっているのは不平等や格差をめぐる意 識であり,現在の政治経済的体制に対する支持・不支持が主な対立軸となる。後者 の次元には,経済的利害に直接には関わらない,女性,移民,環境,福祉,道徳, 等の争点が含まれ,個人の自由や寛容性を強調するリベラルな価値観と,伝統的な 慣習や規範を重視する権威主義の価値観が主な対立軸となる。その「新しい政治」 の担い手が,日常生活のなかに合理的な思考を持ち込み,世間の関心を動員する政 治技能を有しているとされる高学歴者たちなのである。 教育費負担意識をこのような政治意識の文脈に置くことで,恐らく階層変数との 関連もより把握しやすいものになるだろう。かりに,現代日本の社会意識が財の分 配をめぐる古典的な次元に集中しているなら,その空間は一次元性の強いものとな り,教育に関する意識にも学歴主義の私的利害が色濃く反映されるはずである。他 方,意識空間が多次元性をもつ場合は,教育費負担意識がそれらの次元においてど う展開し,誰が,どんな文脈でそれに関わっているかが問題となる。あるいは,先 行の分析が指摘するように,そこに階層との関連が何も認められないようであれば, この問題に「格差社会」の論点を持ち込むことは的外れとなる。

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3. 意識の文脈を探る課題 意識の文脈を探るために本稿で採用するアプローチについて説明しよう。 どんな意見にも,賛成,反対,態度保留があり,それぞれが世論の形成に同等に 寄与している。教育問題のように一定の期待や規範をもとに調査が行われる場合, 賛成または反対の一方の割合にのみ関心が集中し,他方の動向が無視されてしまう ことがあるが,意識の文脈を探るには分布全体を視野に入れる必要がある。集団の 間で意見を比較する場合も同じである。しばしば,ある意見の割合を 2 つの集団 A と B で比較し,P  >P  の結果について意味解釈がなされる。しかし,その差 は反対側にも P  <P  の方向で同程度の差をつくりだしていることに注意しなけ ればならない。そのような意見の対称性に留意しながら,賛成や反対の回答が他の 意見の賛成や反対の分布とどう重なっているかを問うていくのである。 データから情報を引き出す方法も重要である。ここでの課題にとって回帰分析の 手法は適当ではない。というのも,回帰分析がもたらす変数効果は他の変数の効果 を文字通り除去して得られる結果だからである。実際に行ってみれば確認できるこ とだが,重回帰分析における独立変数 Xj=nの偏回帰係数は,他のすべての変数 Xj≠nが従属変数 Y に対して及ぼす効果を除去したときの残差を,同じく他のすべ ての独立変数 Xj≠nが独立変数 Xj=nに対して及ぼす効果を除去したときの残差に回 帰させたときの効果(回帰係数)にほかならない。したがって,従属変数に対する 直接的効果,とりわけ従属変数との関連が最も強い変数の効果が幅を利かし,その 他の変数が従属変数との間に維持している多様で複雑な関連は独立した効果をもた ないものとして端から除外されている。これは,意識の文脈を明らかにしようとす る者の手足を最初から縛ってしまうに等しい。 ブルデューが『ディスタンクシオン』のなかで強調していたのも,まさにそのこ とであった。 「(政治的意見のような)従属変数と,性別,年齢,宗教,さらには教育水準,収 入,職業といったいわゆる独立変数群との間の個々の関係は,それら個々の相関 に示された効果について具体的な強さと形態を決めている真の原理を構成すると ころの,諸関係の完全な体系を覆い隠してしまう傾向がある。「独立」変数のう ちでも最も独立性の強い変数が,所与の意見や実践との関係性のなかに暗に存在 する統計的諸関係の全体的ネットワークを隠してしまうのである」(Bourdieu… A yes Byes A no Bno

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1979,…pp.114- 5 )。 回帰分析によって効果なしと判断された変数が,特定の教育意識とまったく関連 をもたないということはない。たとえば,学歴のみが統計的に有意で性別や年齢に は有意な効果が認められないとしても,それは研究者の分析的な視点によるもので, 対象者の認識と同じではない。彼らは,性別や年齢の見えやすい特徴を目印に教育 意識をジェンダー差あるいは世代差として形成し,そのイメージに従って行動して いるかもしれない。意識の文脈を理解するには,あくまでも意識の担い手である個 人の水準で,その意識と諸々の変数がつくりだす関連に焦点を合わせなければなら ないのである。それは,回帰分析において変数の相互作用を検討するのとは本質的 に異なる作業となる。 この観点からブルデューが採用するようになったのが多重対応分析(以下では MCA と表記する)である。それは,人々の多様な特徴を幾何学的な空間の上で把 握し,そこでの傾向を集合的な生活条件の違いから理解していこうとするもので, その客観的な生活条件を「社会空間」として描いたことから(Bourdieu 訳書 1990 [I],…pp.166-198),この方法はデータ分析の社会空間アプローチと呼ばれている。 ブルデューは,周知のように人々の間に象徴的な差異をつくりだし権力分配の基 礎となるものを資本と呼び,現代社会の主要な資本形態として経済資本と文化資本 を区別している。各人がもつそれらの資本の総量と資本タイプの構成が連続的な社 会空間を形づくるとみなすのである。先に紹介した欧州の分析例も,その観点から 人々の政治的態度を分析し,そこでの空間的布置が社会空間の構造に重なることを 明らかにしている。本稿でも,教育費の公私負担意識を含む諸々の意見を同時に扱 い,意識空間の構造的特徴と社会空間との相同性を吟味していく。 4. データと方法 ここで使用するデータは JGSS-2012(日本版 General…Social…Surveys)である。 そのなかから,「高齢者の生活保障(生活費)」,「高齢者の医療・介護」,「子どもの 教育」,「保育・育児」について,それぞれ国や地方公共団体の責任か個人や家族の 責任かを尋ねた 4 つの質問項目に焦点を当てる。図 1 に示すように,高齢者問題の 場合は公的責任を求める割合が圧倒的に高く,子ども問題の場合は私的責任と公的 責任が拮抗している。費用についての直接的な言及はないが,この調査は民主党政 権による子ども手当や高校授業料無償化の導入後に行われているので,子ども問題

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に対する回答も費用負担の観点からなされているとみなしてよいだろう。以下では, これらをまとめて「公私負担意識」と呼ぶことにする。 表 1 に示したのが,公私負担意識とともに MCA に用いる質問群である。「不平 等に関する意識」,「政治的アイデンティティ」,「税制及び環境問題に関する意見」, 「家族規範意識」,「社会的信頼と承認の意識」,「社会的関心と政治的効能感」など, 多少とも政治的意味合いを含む質問で構成されている。これらの意識がつくる空間 を,以下では便宜的に政治的意識空間(または意識空間)と呼ぶことにする。ただ し,これらすべてを空間構築に用いるのではなく,一部の質問は構築された空間を 解釈するためのサプリメンタリー変数として扱っている⑴。また,各質問の選択肢 は質問 9 と質問11を除いて 2 または 3 個のカテゴリーに集約したが,高齢者問題に 関する質問 1 と質問 2 は分布の対称性を考慮して選択肢 4 を中間カテゴリーとした。 分析の対象は,20~69才の男女3,727人,空間構築に用いたアクティブ変数は20個, 総カテゴリー数は52個である。 「個人×変数カテゴリー」の行列(ここでは3,727行×52列)が MCA の基本デー タ・セットとなる。この行列は,各変数の回答パターンをプロフィールとする個人 の集合とも,個人の回答分布をプロフィールとする変数カテゴリーの集合ともみな すことができる。MCA では,集合内のプロフィールの類似度をカイ 2 乗距離に よって定義し,個人は個人の超空間(しばしば「雲」と呼ばれる)に,変数カテゴ リーは変数カテゴリーの超空間に,プロフィール間の距離を保ちながら重みを有す る点として存在すると考える。そうして空間全体の重心を定め,射影点の分散(「イ ナーシャ」や「固有値」とも言う)が最大となる方向に主軸を決めていくのである⑵。 この計算システムでは,個人の集合でも,変数カテゴリーの集合でも,各主軸 (成分)の分散が同じ大きさとなり,どちらの成分スコアから説明しても結果が同 高齢者の生活保障 子どもの教育 高齢者の医療・介護 保育・育児 1.5 2.0 1.5 0% 2.1 20% 40% 60% 80% 100% 5.8 10.1 27.1 27.8 27.7 2.7 17.4 16.2 6.1 21.1 20.7 22.7 30.6 31.1 34.6 15.4 16.7 32.4 13.5 13.3 27.8 27.7 22.7 30.6 31.1 34.6 15.4 16.7 32.4 13.5 13.3 1:個人や家族の責任 2 3 4 5:国や自治体の責任 無回答 27.1 図 1  高齢者問題と子ども問題の公私負担に関する回答結果

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表 1  多重対応分析に使用した変数 質問項目の内容a)b) カテゴリー区分と表示ラベルc) A. 公私負担意識〔国や自治体の責任か個人や家族の責任か〕   1 . 高齢者の生活保障(生活費)   2 . 高齢者の医療・介護   3 . 子どもの教育   4 . 保育・育児  高齢者保障公|・|高齢者保障私  高齢者医療公|・|高齢者医療私  子ども教育公|・|子ども教育私  子ども保育公|・|子ども保育私 B. 不平等に関する意識   5 . 今の社会に,生活水準向上の機会がどのくらいあるか   6 . 今後の生活について,経済的に不安を感じているか   7 . 政府は家庭の収入差を縮めるための対策をとるべきだ   8 . 現在の家計状態にどのくらい満足しているか   9 . 現在の日本社会を 5 つの層にわけるならどれに入るか  機会豊富|・|機会不足  経済不安大|・|経済不安小  収入差是正|・|収入差容認  (家計満足|・|家計不満)  (階層帰属上|中上|中中|中下|下) C. 政治的アイデンティティ  10. あなたの政治的な考えは保守 - 革新の 5 段階でどれか  11. あなたはどの政党を支持しているか  保守的|・|革新的 …(自民党|民主党|公明党|社民党| 共産党|みんなの党|支持無) D. 税制及び環境問題に関する意見  12. 消費税をどのくらいにすべきだと思うか  13. あなたに課されている所得税は高いと思うか  14. 東日本大震災復興の財源確保のための増税に賛成か  15. 国民の生活水準が低下しても電力消費を抑えるべきだ  16. 日本の原子力政策は,今後どの方向に進めるべきか  17. あなたの生活地域に外国人が増えることに賛成か  消費税増税|・|消費税減税  (税適切|・|税高い)  復興増税賛成|復興増税反対  電力制限|電力非制限  原発維持|廃炉促進  外国人増賛成|外国人増反対 E. 家族規範意識  18. 結婚相手に満足できなければいつでも離婚すればよい  19. なんといっても女性の幸福は結婚にある  20. 夫は外で働き,妻は家庭を守るべきだ  21. 夫に充分な収入あるなら,妻は仕事をもたない方がよい  22. 母親が仕事をもつと就学前の子によくない影響がある  離婚是|離婚非  結婚=女幸|結婚≠女幸  性別役割是|性別役割非  (妻仕事非|・|妻仕事是)  (母仕事非|・|母仕事是) F. 社会的信頼と承認の意識  23. 一般的に,人は信用できるか,または用心すべきか  24. 学校をどれくらい信頼しているか  25. 中央官庁をどれくらい信頼しているか  26. 私の権利は社会から尊重されていると感じている  27. 私は,社会に貢献できる人間だと認められている  他者信用|他者不信  (学校信頼高|・|学校信頼低)  (官庁信頼高|・|官庁信頼低)  (権利受容|権利不受容)  (貢献認知|貢献不認知) G. 社会的関心と政治的効能感  28*. 私は,政治に対して関心がある  29*. 私は,社会のために役立ちたい  30. 機会があればボランティア活動に参加したいと思う  31. 自分のような普通の市民に,政府を左右する力はない  32. 政治や政府は複雑で,何をやっているか理解できない  33. 自分の人生を変える重大な決断ができると感じている  政治関心高|・|政治関心低  役立関心高|・|役立関心低  ボラ参加意欲高|・|ボラ参加意欲無  (市民力有|・|市民力無)  (政治理解高|・|政治理解低)  (人生可変|・|人生不可変) a)質問項目番号の下線は,サプリメンタリー変数として扱ったことを意味し,一重線はその質問が留置 調査の A 票か B 票のいずれか一方に含まれること,二重線は A 票と B 票の両方に含まれることを表 わしている。 b)質問項目番号28*と29は,A 票と B 票で設問形式が異なるが,内容的に同一とみなして合併してい る。 c)質問項目を変数化したときのカテゴリー数が 2 の場合は「|」で, 3 の場合は中間を省略して 「|・|」で表わしている。( )は追加処理による表示を意味している。

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じとなる「双対性」が成り立っている。その関係を利用すると,実際には空間構築 に関わっていない個人や変数カテゴリーにも,各々のプロフィール情報をもとに空 間上に仮想的な位置を与えることが可能となる。よって,調査票に含まれるどんな 質問項目も基本的にサプリメンタリー変数の候補となり得るが,通常は意識空間に 対する客観的構造の影響を吟味する目的で,対象者の社会的属性がサプリメンタ リー変数として用いられる。つまり,意識空間における個人の位置がデモグラ フィックな要因によってどれだけ説明できるかを比較的に問うのである。 5. 現代日本の政治的意識空間 5.1. 意識の多次元性 表 2 が,MCA の結果である。ここでのように,内容の異なる多数の変数を同時 に扱うと各軸の説明力は自ずと小さなものとなり,最大の分散を示す第 1 軸でも全 体の 7 %程度を説明するに過ぎない。ただし,MCA の定式には必然的に変数間関 連以外の夾雑物が含まれるので,通常は平均的な分散を上回る成分のみが有意味な ものとして扱われる⑶。その観点から25個の有意味な成分に限定して修正固有値を 求めると,各成分の修正寄与率は,第 1 軸で26.0%,第 2 軸で18.9%,第 3 軸で 12.4%となる。第 6 軸までを含めると,その大きさは 4 分の 3 程度になる。 表 2 の「主な対比」は,各軸に対して寄与の大きな質問群を表 1 の記号で示した ものである。それより,番号の若い,分散の大きな軸に,公私負担意識に関する項 目(A)が集中しているのが分かる。なお,第 3 軸と第 4 軸の Ā は,そこでの寄 与が「賛成」または「反対」の明確な回答と「どちらでもない」の中間的な回答と の対比であることを表している。ブルデューは,その形の対比を意見生産能力の違 いとして問題にしているが(Bourdieu 訳書 1990[II],…pp.232-256),ここではそ の論点には立ち入らず,あくまでも「賛成」と「反対」が対立的な位置関係にある 表 2  多重対応分析の結果 第 1 軸 第 2 軸 第 3 軸 第 4 軸 第 5 軸 第 6 軸 分散(固有値) 0.1166 0.1040 0.0902 0.0781 0.0755 0.0673 寄与率(%) 7.2 6.4 5.6 4.8 4.7 4.2 修正固有値 0.0081 0.0059 0.0039 0.0024 0.0022 0.0015 修正寄与率 26.0 18.9 12.4 7.8 7.0 4.7 累積率 26.0 44.9 57.3 65.1 72.1 76.8

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第 1 軸,第 2 軸,第 6 軸に注目する。 図 2 が,第 1 - 2 軸の成分スコアを用いて政治的意識空間のマップを作成したも のである。ラベルの前にある★は第 1 軸の形成に関して,ラベルの後にある☆は第 2 軸の形成に関して平均以上の寄与があることを示している。( )付きのラベル は,空間解釈のために事後的に位置が与えられたことを表わしている。 第 1 軸(y 軸)の上下を分けているのは,不平等に関する意識,増税の支持・不 支持,それに社会への役立ち関心の高さなどである。階層帰属意識や家計満足度な どのサプリメンタリー変数の布置からも,第 1 軸は現在の経済体制や経済生活に対 する肯定または否定の態度をとらえていると考えられる。公私負担意識も第 1 軸に 沿って分化しており,現在の経済生活を肯定的にとらえている者ほど私的負担を支 図 2  政治的意識の空間マップ ★機会豊富 ・ 機会不足 ★経済不安大 ・ ★経済不安小 保守的 ・ 革新的☆ ★高齢者保障私☆ ・ ★高齢者保障公☆ ★高齢者医療私☆ ・ ★高齢者医療公☆ 子ども教育私 ・ ★子ども教育公☆ 子ども保育私☆ ・ ★子ども保育公☆ 収入差是正 ・ 収入差容認 ★消費税減税 ・ ★消費税増税☆ 原発維持 廃炉促進 電力制限 電力非制限 離婚是 離婚非 結婚=女幸 結婚≠女幸 性別役割是 性別役割非 他者信用 ★他者不信 ★復興増税賛成☆ ★復興増税反対☆ 外国人増賛成 外国人増反対 ボラ参加意欲高☆ ・ ★ボラ参加意欲無☆ ★政治関心高☆ ・ 政治関心低☆ ★役立関心高☆ ・ ★役立関心低☆ (家計満足) (家計不満) (税適切) (税高い) (中上) (中中) (中下) (下) (自民党) (民主党) (公明党) (共産党) (社民党) (みんなの党) (支持無) (妻仕事非) (妻仕事是) (母仕事非) (母仕事是) (学校信頼高) (学校信頼低) (官庁信頼高) (官庁信頼低) (市民力無) (市民力有) (政治理解低) (政治理解高) (権利受容) (権利不受容) (貢献認知) (貢献不認知) (人生不可変) (人生可変) (階層帰属上) -1 -0.5 0.5 1 1 5 . 0 0 5 . 0 -1 -λ1 = 0.1166(26.0%) λ2= 0.1040(18.9%) 0

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持し,否定的にとらえている者ほど公的負担を求めている。それは,高齢者問題で も,子ども問題でも同じである。こうして,経済生活に対する適応度の違いが費用 負担意識から最初に読み取るべき文脈となる。 つぎに,第 2 軸(x 軸)の左右を分けているのは,政治的関心の高さやボラン ティア活動の参加意欲などである。環境問題や家族規範に関する意識はいずれも原 点付近に集まり,横軸の形成に有意な寄与をなしていないが,対比の方向はいずれ も左側がリベラルあるいは革新的な価値観,右側が伝統的あるいは保守的な価値観 に対応している。自他に対する信頼も左側の方が高く,政治的アイデンティティに 対する認知も左側が革新的,右側が保守的となっている。したがって,第 2 軸は政 治的参加志向の強弱を表わしているとみなすことができる。ここでも公私負担意識 の寄与は大きく,市民がもつ政治力を信頼し,社会参加に積極的な態度をもつ者ほ ど公的負担を求め,他者に対する信頼が低く,社会参加に消極的な態度をもつ者ほ ど私的負担を支持しているといえる。 ところで,図 2 では,サプリメンタリー変数も含めて多くの変数カテゴリーが第 2 象限と第 4 象限に集まっている。一方にあるのは現代社会において経済的・政治 的に価値を付与されている意識の様態であり,他方にあるのは概ね否定的な評価が 与えられる意識の様態である。これらをまとめて眺めるなら,左上から右下の領域 にかけて階層意識が多様な形で姿を現わしているとみることができる。それに対し て,公私負担意識は階層意識に直交するように右上の第 1 象限から左下の第 3 象限 にかけて展開している。その分布は,経済的適応者(相対的なものである)のなか の保守的な志向と経済的不適応者(やはり相対的なものである)のなかのリベラル な志向とを括りだしているといえる。ただし,支持政党をみるとわずかに共産党と 自民党が公私負担意識の並びで対立的な位置関係にあるに過ぎず,その対比が政治 の枠組みのなかで争点化されているとは必ずしもいえない。 5.2. 相同性仮説の検討 つぎに,図 3 は,社会的属性の諸カテゴリーの布置をみるために,同じ第 1 - 2 軸の個人の成分スコアの平均値をプロットしたものである⑷。表示したのは,性別 と年齢階級,本人の学歴,父母の学歴(父を F,母を M とし,初等 - 中等 - 高等 の別を 1 - 2 - 3 の数字で表わしている),雇用上の地位(民間正規,民間非正規, 自営業,官公庁),個人所得と世帯所得( 5 段階の区分を線で結んでいる),社会経 済的職業分類(下線を施している)である。社会経済的職業分類は国勢調査で用い

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られているものだが,ブルデューが描く社会空間によく対応していることから(近 藤 2019),ここでも階層的関連をとらえる目的で利用している。なお,円の大き さは各職業分類(学生と無職を含む)の規模に対応させている。 すでに述べたように,図 3 の並びに対しても MCA の原理から図 2 と同じ解釈が 当てはめられる。つまり上下は経済生活の適応度,左右は政治的参加志向の強弱に 関連するとみなせるのだが,それらの差異と社会的属性の布置は明らかに対応して いる。実際,学歴,職業,所得における地位の違いが第 2 象限から第 4 象限にかけ て広がっており,その並びはブルデューの言う「資本総量」の差に重なっている。 図 3  政治的意識空間と社会空間の相同性 男 女 20 30 40 50 60 中学 高校 短専 大学 大学院 F1 F2 F3 M1 M2 M3 (民常雇) (民臨雇) (官公庁) (自営業) 無職 学生 農林漁業 会社団体役員 商店主 工場主 サービス・他業主 専門職 技術者 教員・宗教家 文筆家・芸術家・芸能家 管理職 事務職 販売人 技能者 労務作業者 個人サービス 保安職 個人所得低 個人所得高 世帯所得低 世帯所得高 70+ -0.15 0 0.15 0.3 0.15 0 -0.15 -0.3 資本総量軸 資本構成軸

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これらの変数は空間構築に関与しておらず,政治的意識空間の上にいわば事後的に 投影されたものであることに注意して欲しい。両者の関連は,これまで個別意識の 回帰分析を通して示唆されていたよりもずっと高いのである。 他方,「資本総量」に直交する「資本構成」の違いは,第 2 象限における専門職 と管理職及び会社団体役員との対比や中間のノンマニュアル層と自営業主との対比 に見て取ることができる。すでに説明したように,資本総量の各水準で経済的適応 が相対的に高く保守的志向が強い場合は個人の位置を右側の私的負担の極に,経済 的適応が相対的に低くリベラル志向が強い場合は個人の位置を左側の公的負担の極 に移していくが,上位の階層ほどそれらの傾向の違いが明瞭であるために各職業の 重心が左右に分かれている。それに対して下位の階層では内部の意見対立の様子が どれもよく似ているために,各職業の重心が中央付近に集まっている。 性別と年齢の位置関係も興味深い。男女が資本総量の方向で対照的な位置関係に あるのは予想通りだが,年齢階級の分布は若年から中年にかけて右から左に推移し, 中年から高年になると再び右に推移するという変則的な傾向を示している。つまり, 若年層ほど保守的志向をもち,個人による費用負担を支持していることになる。 もっとも,先に紹介した欧州の分析例でも,若年層は権威主義的な価値を支持し, そこからリベラルな価値の領域に向かった後に高年になるとまた権威主義の領域に 移行してくるというパターンが示されているので(Harrits…et…al.…2009),日本の若 年層のみが特異なわけではない。ともかく,政治的意識空間と社会空間とが軸を回 転してきっちり重なること,社会的属性の全体的な布置がほぼ同じであることなど, ここでの結果が欧州の分析例によく似ていることを強調しておきたい⑸。 5.3. 高齢者問題と子ども問題の選好度 さらに,図 4 は第 6 軸の様子を示したものである。ここでは,左右の違いを公私 負担意識に対応させるために,図 2 の対角軸(x 軸を左に45度回転させたもの)を 横軸にとって成分スコアを表示している。第 6 軸がつくる分散はさらに小さなもの となるが,高齢者問題と子ども問題とで公私負担の傾向が上下に分化し,両者の選 好度が区別される形になっている。つまり,公的負担に注目した場合,上の領域は 「子ども 高齢者」,下の領域は「高齢者 子ども」の優先関係になっている。図 4 には,統計的に有意な変数カテゴリーのみ表示したが⑹,基本的には経済的適応の 意識が上下の対比に重なっている。政治的参加志向に関しては限定的な傾向が見ら れ,社会活動への参加意欲や役立ち関心が高いほど「高齢者 子ども」の下の領域

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が選択されている。 社会的諸属性について,個人の成分スコアからこれと同じ空間に位置を求めたの が図 5 である。統計的に有意とみなせるカテゴリーには下線を施している。横軸は, 左に行くほど公的負担を,右に行くほど私的負担を求めているとみなしてよく,す でに見たように専門職と経営者・業主がその方向で明確な対比をつくっている。こ こに図 4 の傾向を重ねると,専門職の場合は公的負担を求める程度が高いが,なか でも子ども問題に関する公的責任をより強く認識していることが分かる。経営者・ 業主の場合は,その反対となる。つまり,どちらの問題にも私的負担を求める程度 が高いが,高齢者問題に関してより強く私的責任を意識していることになる。学生 が高齢者や経営者・業主と同様に公的負担を支持していないことは図 3 からも読み 取れるが,ここではそのような低い水準の支持でも,高齢者問題よりは子ども問題 を優先していることが示されている。 他方,図から確認できるように左右の対比をつくっている職業カテゴリーの比重 はきわめて小さく,ほとんどの職業カテゴリーは原点付近に分布の中心を置いてい る。つまり,公私の責任が拮抗しているそれら大多数の職業が全体の傾向を形づ くっている。ただし,そこにも選好度の違いは存在する。図 4 の上下の対比が経済 的優位性を示唆していたように,ここでも高学歴者や高所得者が「子ども 高齢 者」の上の領域に位置している。さらに,30代や乳幼児の親も上の領域に位置する ので,選好度の違いには当事者性が反映されているとみなしてよい。これに対して, 「高齢者 子ども」の下の領域には,低所得層や労務,女性や非正規雇用など社会 的弱者とみなせる存在が集まっている。子ども問題よりも高齢者問題の方が切実だ というのがそこでの一般的な認識である。さらに,意外なことに,教員・宗教家も 高齢者問題の方を重視する下の領域に位置している。もっとも,彼らの職業的倫理 は,その領域を特徴づける社会への役立関心や人生を可変的とみなす態度に一致し ているので,それほど不自然な結果というわけではない。 6. まとめと議論 教育無償化に関する意識の文脈を探る狙いで,MCA による政治的意識の分析を 行ってきた。それより,まずは政治的意識空間が経済的適応度の差異と政治的参加 志向の強さを反映した 2 軸によって構成されることが示された。そこにおいて,一 般に高い価値を与えられる意識の様態と否定的な評価が与えられる意識の様態とが 区別され,その対比が広義の階層意識をとらえていると解釈された。実際に,意識

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図 4  公私負担の支持と子ども問題対高齢者問題の選好 公的負担支持 私的負担支持 λ6 = 0.0673 (4.7%) -0.5 0.5 1 1 0.5 -0.5 -1 (中上) 高齢者医療私 高齢者保障私 経済不安小 収入差容認 子ども保育公 子ども教育公 高齢者医療公 高齢者保障公 経済不安大 (下) (妻仕事是) (家計不満) (公明党) 子ども保育私 子ども教育私 ボ ラ参加意欲無 消費税増税 (税適切) (家計満足) (自民党) (中中) (権利受容) (政治理解低) (みんなの党) (市民力無) (中下) (人生可変) 役立関心高 0 0 子ども問題   高齢者問題 高齢者問題   子ども問題 図 5  第 6 軸における社会的属性の布置 男 女 20 30 40 50 60 70+ 子0~5才 中学 高校 短専 大学 大学院 M1 M2 民臨雇 無職 学生 農林漁 会社団体役員 商店主 工場主 サービス・他業主 専門職 技術者 教員・宗教家 文筆家・芸術家 管理職 事務職 技能者 労務 個人サ 保安職 所得1 所得5 世帯1 世帯3 -0.06 0 0.06 0.12 0.18 0.12 0.06 0 -0.06 -0.12 -0.18 販売人

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空間に社会的属性をプロットしてみると,その並びはいわゆる「資本総量」の違い に対応しており,意識空間の構造と社会の客観的構造とが予想以上に関連している (相同である)ことが明らかとなった。 他方,原発問題,家族規範,外国人受容などの日常的トピックスは階層性をもた ないものの,それに代わる有力軸を形成するほどではなかった。「新しい政治」の 展開を強調する欧州の分析例に比較すると,日本の場合は意識にしろ,行動にしろ, 空間の一次元性が強いように思われる。そのことは,階層横断的な参加が期待され る市民の社会活動が,結局のところ「メリトクラシー社会に対抗するためというよ りはむしろ補完するための機能を果たしている」(土場 2010)とする現代日本の 市民社会の分析結果に符合している。つまり,教育を含む諸々の社会意識が階層的 次元に吸収されてしまうのである。階級政治が衰退したとしても,意識の階層性は 依然として残されている。 そうしたなか,本稿のテーマである公私負担意識は階層的次元とは異なる新しい 対立軸を形成しているように見える。そこにあるのは,経済的適応度が高く政治的 参加志向の弱い者が私的負担を求め,経済的適応度が低く政治的参加志向の強い者 が公的負担を求めるという対立である。しかし,その対立関係は他の政治的意識を 伴っておらず,公私負担意識のみが突出した空間的位置を占めている。本来,それ に関連するはずの税制度についての意見や中央官庁及び学校に対する信頼などとも ほとんど重なっていない。高齢者問題にしろ,子ども問題にしろ,公私負担の議論 は依然として新奇性を帯びており,他の社会制度との関連で体系だった認識がつく られていないということである。 社会空間(社会的属性)の側から見てもその印象は変わらない。ブルデューのい う「資本構成」による意識の分化は,上位の階層において専門職-管理職-会社団 体役員の間に認められるに過ぎない。公的負担の拡充を共通理解としているのは, 教育を不可欠の要件として,それをもっとも効率よく利用している一部の伝統的専 門職に限られるのである。他の多くの職業層では,公私負担に関する見方が定まら ず,またどちらかというと子ども問題よりも高齢者問題の方が優先度は高い。 この調査が行われてから数年が経過した現在,教育無償化の動きは幼児教育につ いても,高等教育についても,技術論のレベルで具体的な実施策を検討する段階に 入っている。だが,公私負担に対する世間の認識はほとんど変化していないように 見える。実際,教育費の公的負担増については財源の見通しが不明なだけでなく, 高等教育非進学者に対する不公平をどう考えるか,私立教育を無償化する意味がど

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こにあるのかなど,受益者負担を促す論点に対して十分な答えが与えられていない。 教育と全体社会とのマクロな関係についても,教育の社会的効用ではなく教育費支 出の負担面にばかり議論が集中している。つまり,当事者の負担が不平等問題の文 脈で議論されているに過ぎず,それ以上の展開がない。現状がそのようなものであ る以上,教育無償化に対する関心と祖父母による孫への教育贈与という格差拡大の 可能性を含む関心とが世間的には両立してしまうのである。 他方,そのような曖昧な状況のなかで,若年層の多くがこの問題について公的負 担よりも私的負担を求めていることが明らかとなった。とくに学生の場合は,広範 な専門的職業の予備軍として,それらの職業とともに第 2 象限に位置を占めてよい はずだが,政治的意識空間における彼らの重心は経済的適応度が高く政治的参加志 向の弱い第 1 象限に見出された。この結果は,教育システムの発達をリベラルな価 値の拡大に結びつけてきたこれまでの常識に反するものである。 高齢者問題はともかくとして,子ども問題については当事者に近いはずの学生や 若者が公的負担に消極的な態度を示しているのは何故なのだろうか。これ以上の情 報がないので推察するしかないが,この問題についての確たる理解が未だ定着して いないことから,単純に費用負担の現状をそのまま常識として受け入れているのか もしれない。公的負担を支持する積極的な世論が存在しない以上,経済的適応度の 高い部類に属する学生が費用負担にこだわらない姿勢を示しているとしても不思議 はない。しかし,そのことは彼らが教育と社会の望ましいあり方について明確な理 念をもっていないことを示唆している。学校化社会の進展が学生たちに経済的適応 を強く促し,政治的関心を細らせてきたことの影響がまったくないとはいえまい。 それとも,平等の価値をかつてほど重視せず,何ごとにつけ個人主義を志向するリ バータリアニズムが現代日本の若者の心をとらえているのだろうか。 いずれにせよ,現在の教育システムと人々の政治的意識との関係を教育社会学の 観点から改めて問うてみる必要がある。そのような課題に対して社会空間アプロー チが有効なことは,本稿の分析によって示されたのではないかと思う。 〈注〉 ⑴ 調査が 2 種類の質問紙を用いて行われたことから,表 1 には一方にしか存在し ない変数が含まれている。それらは,空間構築に関わるアクティブ変数ではなく, 事後的に空間解釈に利用するサプリメンタリー変数として扱った。なお,「支持 政党」は共通の調査項目だが,多肢の名目変数であること,度数の小さなカテゴ

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リーが含まれていることから,やはりサプリメンタリー変数として扱った。 ⑵ 本稿の分析は,部分的な無回答を含むケースも分析対象とする「特殊 - 多重対 応分析」(Le…Roux…&…Rouanet…2004)を用いた。実際の計算は,筆者が作成した Basic プログラムによる。 ⑶ これについては Benzecri(1992,pp.409-412)を参照のこと。 ⑷ 表 1 の各変数についても,個人の成分スコアから同様にカテゴリーの平均値を 求め,それを(×1 ⁄  λj )でスケールし直せば,図 2 と同じ配置が得られる。 ⑸ 日本の結果が欧州の分析例によく似ているという事実は,教育費負担意識の現 状を日本の文化や制度の特殊性から説明する試みに疑問を投げかけている。 ⑹ 大隅・ルバールほか(1994,pp.158- 9 )の検定値を用いて判断した。 〈文献〉

Atkinson,…W.,…2017,…Class in the New Millennium: The Structure, Homologies and Experience of the British Social Space,…Routledge.

Baker,…D.…P.,…2014,…The Schooled Society: The Educational Transformation of Global Culture,…Stanford…University…Press.

Benzecri,…J.-P.,…1992,…Correspondence Analysis Handbook,…Marcel…Dekker.

Bourdieu,…P.,…1979,…La Distinction: Critique sociale du jugement,…Les…Éditions…de… Minuit.(=1990,石井洋二郎訳『ディスタンクシオン』[I][II],藤原書店). 土場学,2010,「格差と政治的価値―メリトクラシ一社会の理念と市民社会の理念」 斉藤友里子・三隅一人編『現代の階層社会 3 …流動化のなかの社会意識』東京大 学出版会,pp.205-217. 古田和久,2007,「教育費支出の動機構造の解明にむけて―教育意識の決定木分析」 『教育社会学研究』第80集,pp.207-225. Harrits,…G.…S.,…A.…Prieur,…L.…Rosenlund,…and…J.…S.…Larsen,…2009,…“Class…and…Politics…in… Denmark:…Are…Both…Old…and…New…Politics…Structured…by…Class?”…Nordic Politi-cal Science Association, 32(1),…pp. 1 -27.

イングルハート,R.,…1993,『カルチャーシフトと政治変動』村山皓ほか訳,東洋経 済新報社.

Kamens,…D.…H.,…2009,…“The…Expanding…Polity:…Theorizing…the…Links…between…Ex-panded…Higher…Education…and…the…New…Politics…of…the…Post-1970s,”…American Journal of Education, 116,…pp.99-124.

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片瀬一男・海野道郎,2000,「無党派層は政治にどう関わるのか―無党派層の変貌 と政治参加の行方」海野道郎編『日本の階層システム 2 …公平感と政治意識』東 京大学出版会,pp.217-240.

近藤博之,2019,「現代日本における階層化の諸相」金子勇編『変動のマクロ社会 学―ゼーション理論の到達点』ミネルヴァ書房,pp.161-187.

Le…Roux,…B.…and…H.…Rouanet,…2004,…Geometric Data Analysis: From Correspondence Analysis to Structured Data Analysis,…Kluwer…Academic…Publishers.

Nakazawa,…W.,…2015,…“Attitudes…toward…Education…Expenditures…in…Japan:…Com-parisons…with…Social…Security…and…Welfare…Services…Expenditures,”…Educational Studies in Japan: International Yearbook,…No. 9 ,…pp.55-68.

大隅昇・L.…ルバール・A.…モリノウ・K.…M.…ワーウィック・馬場康維,1994,『記述 的多変量解析法』日科技連. 小川和孝,2017,「日本社会における教育政策への人々の選好に関する研究―公的支 出の水準/配分の区別に焦点を当てて」『教育社会学研究』第100集,pp.225-244. 末冨芳,2005,「教育費スポンサーとしての保護者モデル再考―高校生・大学生保 護者質問紙の分析から」『教育社会学研究』第77集,pp. 5 -25. 末冨芳,2010,『教育費の政治経済学』勁草書房. 都村聞人・岩井八郎,2008,「家計における教育費負担」谷岡一郎ほか編『日本人 の意識と行動―日本版総合的社会調査 JGSS による分析』東京大学出版会, pp.195-210. Weakliem,…D.…L.,…2002,…“The…Effects…of…Education…on…Political…Opinions:…An…Inter-national… Study,”… International Journal of Public Opinion Research,… 13(2),… pp.141-157.

矢野眞和・濱中淳子・小川和孝,2016,『教育劣位社会―教育費をめぐる世論の社 会学』岩波書店.

〈謝辞〉

本研究のために,東京大学社会科学研究所附属社会調査・データアーカイブ研究 センターSSJ データアーカイブから,「日本版 General… Social… Surveys〈JGSS-2012〉」(大阪商業大学)の個票データの提供を受けた。データの利用に当たり,大 阪商業大学 JGSS 研究センター(文部科学大臣認定日本版総合的社会調査共同研究 拠点)に感謝する。

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In…contemporary…Japan,…tuition-free…education…is…discussed…as…a…solution…for…so- cial…problems…such…as…the…growth…of…inequality…or…the…low…birth…rate,…and…the…cabi- net…has…decided…to…promote…a…‘new…economic…policy…package’…including…the…provi-sion…of…free…early…childhood…education…and…free…higher…education.…However,…opinion… polls…reveal…that…there…is…no…consensus…on…such…a…policy.…Research…on…this…topic… also…points…out…that…there…is…no…difference…among…social…classes…in…terms…of…their… agreement…or…disagreement.…Furthermore,…it…shows…that…a…respondent’s…education… makes…no…difference…in…their…attitudes…toward…government…responsibility.…This… seems…to…contradict…a…common…view…that…higher…education…develops…politically…lib-eral…values…among…its…graduates. However,…it…is…difficult…to…discern…ideological…elements…in…an…isolated…question…in… an…opinion…poll.…Instead,…we…should…find…a…tendency…among…social…classes…in…a…com-bination…of…related…questions.…From…this…point…of…view,…this…paper…analyzed…a…group… of…opinions…about…the…relative…importance…of…responsibility…between…the…individual… and…the…government…both…on…the…education…of…children…and…social…security…for…the… elderly…and…examined…whether…the…social…background…of…respondents…had…any…ef- fect.…To…this…end,…the…paper…used…a…Bourdieusian…social…space…approach…and…ap-plied…a…multiple…correspondence…analysis…(MCA)…to…the…data…from…JGSS-2012. Various…questions…were…also…used…to…construct…a…space…for…opinions…other…than… on…the…relative…importance…of…responsibility.…These…were…questions…about…econom-ic…inequality,…the…taxation…system,…atomic…energy…policy,…family…norms,…social…trust,… social…interest,…political…efficacy,…and…political…identity.…The…principal…component… scores…of…the…first…two…axes…of…MCA…were…mainly…used…to…describe…the…relations… among…52…modalities…with…20…variables…and…then…respondents’…demographic…vari-ables…were…located…on…a…space…through…a…supplementary…procedure.…The…findings… ABSTRACT

Assigning Responsibility on Education between the Private

and the Public: An Analysis of Public Opinion from

a Social Space Approach

KONDO, Hiroyuki

(Graduate…School…of…Osaka…University) 1-2…Yamadaoka,…Suita,…Osaka,…565-0871…Japan

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are…as…follows. First,…political…attitudes…could…be…described…as…a…map…with…the…two…dimensions… of…economic…adaptability…and…attitudes…toward…political…participation.…Second,…we… found…the…positive…values…of…many…opinions…were…located…in…the…North-West…and… the…negative…values…in…the…South-East…of…the…map.…This…contrast…reflected…a…gradi-ent…of…social…class…and…corresponded…to…the…line…of…Bourdieu’s…‘capital…volume.’… Third,…although,…from…the…idea…of…Bourdieu’s…‘capital…composition’,…an…attitude…to-ward…a…so-called…‘new…politics’…was…expected…to…stretch…over…both…the…North-East… and…the…South-West,…such…a…tendency…could…not…be…confirmed.…Only…opinions…on… the…relative…importance…of…responsibility…formed…such…a…contrast.…In…the…same…way,… most…occupations…were…located…in…a…group…on…the…line…in…that…direction…with…the… exception…of…a…small…contrast…between…traditional…professionals…and…managers…or… proprietors.…These…facts…mean…that…the…idea…of…tuition-free…education…has…not…be- come…a…political…argument…in…society…as…a…whole.…Finally,…young…people…and…stu-dents…were…found…in…the…area…characterized…by…individual…responsibility.…This…fact… also…implies…that…they…simply…accept…actual…conditions…without…considering…them… to…be…controversial.…On…the…whole,…the…usefulness…of…the…social…space…approach…in… the…analysis…of…political…attitudes…seems…to…be…confirmed.

Keywords: tuition-free education, social space, multiple correspondence analy-sis (MCA)

表 1  多重対応分析に使用した変数 質問項目の内容 a)b) カテゴリー区分と表示ラベル c) A. 公私負担意識〔国や自治体の責任か個人や家族の責任か〕   1 . 高齢者の生活保障(生活費)   2 . 高齢者の医療・介護   3 . 子どもの教育   4 . 保育・育児  高齢者保障公|・|高齢者保障私 高齢者医療公|・|高齢者医療私 子ども教育公|・|子ども教育私 子ども保育公|・|子ども保育私 B. 不平等に関する意識   5 . 今の社会に,生活水準向上の機会がどのくらいあるか   6 . 今
図 4  公私負担の支持と子ども問題対高齢者問題の選好公的負担支持 私的負担支持λ6 = 0.0673 (4.7%)-0.50.5110.5-0.5-1(中上)高齢者医療私高齢者保障私経済不安小収入差容認子ども保育公子ども教育公高齢者医療公高齢者保障公経済不安大(下)(妻仕事是)(家計不満)(公明党)子ども保育私子ども教育私ボラ参加意欲無消費税増税(税適切)(家計満足)(自民党)(中中)(権利受容)(政治理解低)(みんなの党)(市民力無)(中下)(人生可変)役立関心高00子ども問題   高齢者問題高齢者問題

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