Title
マレーシアの会社法における会計規則
Author(s)
奥山, 正剛
Citation
沖大経済論叢 = OKIDAI KEIZAI RONSO, 19(1): 73-82
Issue Date
1996-09-30
URL
http://hdl.handle.net/20.500.12001/6826
[資料]
マレーシアの会社法における会計規制
奥山正剛
目次 1.はじめに 2.保持すべき書類 3.会計期間 4.株主総会提出資料 5.貸借対照表と損益計算書の様式 6.連結 7.監査 1.はじめにマレーシアの会社法は1965年に議会で承認され、翌年4月15曰に施
行された。その後幾たび力、の改訂が加えられ現在に至っている。最近では
1992年に改訂がなされている。この会社法では、第165条から175条までにおいて、おもに会計規制に
係る定めがなされている。ただ会計処理よりもむしろ財務情報の開示に関して
の規制を行っている。本稿ではその概要をみてみよう。(注)
-73-2.保持すべき書類
すべての会社ならびにその取締役は、会社の取引とその財政状態を十分に説
明し、真実かつ公正な損益計算書と貸借対照表およびそれに付属する書類を適
時に作成し得るよう会計記録その他の記録を備え置き、また、これらの記録を
適宜かつ適正に監査し得る形で備え置かなければならない(第167条1項)
とし、それらの記録は、取引が完了した曰から60曰以内に適切に行わなけれ
ばならなく(同条1A項)、さらに、取引あるいは業務の完了後7年間、保管
されなければならない。(同条2項)
これらの記録は会社の登録事務所あるいは取締役が適当と考えるマレーシア
国内の他の場所に保管され、いつでも取締役の閲覧に供されなければならない。
(同条3項)しかしこの規定に拘らず、マレーシア国外での業務に関するそれらの記録を
その会社がマレーシア国外に保管することが認められており、その場合は、そ
の記録された業務に関する報告書がマレーシア国内に送付され、保管され、い
つでも取締役の閲覧に供され、真実かつ公正な損益計算書と貸借対照表および
それに付属する書類を作成し得るよう保存されねばならない。(同条4項)た
だし、マレーシア国外にそれらの記録が保管される場合でも、登記官が国内に
記録を保持するよう要求すれば、会社はそれに応じなければならない。(同条
5項)3.会計期間
会計期間に関しては、第169条1項に、取締役は、会社設立後18カ月以
内に、また、その後は15カ月以上の間隔を置かないように毎歴年最低1回の
株主総会を開催し、とだけ定められている。ただし、登記官は、特別な理由が
ある場合は、この18カ月と15カ月という期間を延長することができる。
(同条2項) -74-4.総会提出書類
取締役は、総会前の6カ月以内に作成された損益計算書とその損益計算書が 作成された曰現在の貸借対照表を作成し、株主総会に提出しなければならず (第169条3項)、その損益計算書と貸借対照表は、株主総会に提出される 前に監査を受けなければならない。(同条4項) また、総会に提出されるこれら損益計算書と貸借対照表の写しは(以下に述 べる添付書類の写しと共に)、監査報告書の写しを添えて、総会開催の通知を 受ける権限のあるものに対して、総会開催の14曰前までに送付されなければ ならない。(第170条1項) 損益計算書と貸借対照表以外に、取締役は、損益の状況と年度末の経営状況 について、取締役会の決議を経た、取締役2名以上の書名のなされたREPORT を、貸借対照表に添付し、提出しなければならない。なお、子会社を有する場 合は、子会社の状況も併せて報告書を提出しなければならない。(第169条 5項) その報告書には、(a)取締役の名前、(b)会社の基本的な活動状況と当 該年度中のその活動の重要な変化、(c)税引き前の純利益額、(d)準備金、 積立金の振替の額と説明、(e)当該期間中に新株または社債を発行した場合、 発行の目的、発行された株式または社債の種類、種類別の発行数、発行条件な どが記載される(同条6項) また、総会に提出される貸借対照表と損益計算書(連結貸借対照表と連結損 益計算書を含む)には、取締役会を代表して2名以上の取締役のサインがなさ れたSTATEMENTが添付されなければならない。そこには、損益計算書および 貸借対照表が真実かつ公正な概観を呈するよう作成されていることについて意 見が述べられる。(同条15項) さらに、貸借対照表と損益計算書(添付される連結貸借対照表と連結損益計 算書を含む)には、貸借対照表と損益計算書の正当さに関して、1人の取締役 またはその取締役が財務管理に責任を有していない場合はそれ相当の責任ある 人物によるASTATUTORYDECLARATIONが添付されなければならない。(同条 -75-16項) これらの添付書類以外に、貸借対照表、損益計算書には財政状態変動表が添 付されなければならないことを、スケジュール9は定めている。これは経営活 動から生じ、それに運用されている資金と、それ以外の源泉から生じ、それに 運用されている資金を区別することが求められている。(Sch、9,para4) 連結の場合は、連結財政状態変動表が添付される必要があり、親会社だけの 財政状態変動表は添付の必要はない。
5.貸借対照表と損益計算書の様式
貸借対照表は、当該年度末の企業の経営状況に関して、真実かつ公正な概観 を呈していなければならないし、また、損益計算書は、当該期間中の企業の損 益の状況に関して、真実かつ公正な概観を呈していなければならないと定めら れているが、その様式は第9スケジュールの要求にできる限り従わなければな らないとされている。(同条14条) それでは、この第9スケジュールによって損益計算書と貸借対照表の内容を みてみよう。(NinethSchedule)まず、第1項に損益計算書に関して、会計 期間に係る以下のものが表示されるべき、と以下のように列記されていく。 (a)売上もしくはその他の営業収益とそれらの計上基準 (b)営業活動から生じた純損益 (c)子会社への投資から生じた所得税控除前の収益 (d)以下の区別の下で、その他の投資から生じた所得税控除前の収益 (1)マレーシア国内の証券取引所で取り扱われている株式社債から生じた 収益 (2)国外の証券取引所で取り扱われている株式社債から生じた収益 (3)その他の株式社債から生じた収益 (e)以下の額 (1)受取利息(社債を除く) -76-(2)土地建物の賃貸から生じた収益 (f)以下の減価償却額、さらに償却方法の変更による重要な影響額を、変更 理由を明示して脚注の形式で記す (1)固定資産について、償却性資産の項目別にその償却額を (2)営業権その他の無形固定資産について (3)投資について (9)以下の支払い額 (1)社債その他の借入れに係る利息 (2)土地建物の賃借に係るもの (3)プラント・機械など諸設備の賃借に係るもの (4)研究開発費(過年度償却分も含む) (h)固定資産の売却処分から生じた重要な損益 (i)留保される、また取り崩される剰余金額 (j)適切な項目別に分類して、固定資産の減価償却、更新、縮小以外の目的 で留保された重要な剰余金額、またそうした剰余金額の取り崩し額と目的外 の取り崩し額 (k)株式あるいは社債の償還のためのそれぞれ留保された剰余金額 (1)以下の区別の下で、全ての所得税に対する充当額 (1)マレーシアで免除される二重課税前の税額 (2)マレーシア国外の税額 (3)二重課税のために免除される額 (4)繰延べ税額 (、)損失課税について (1)損失期の課税免除額 (2)損失期に計上されなかった繰延損失課税の実現による課税免除額 (3)税効果が計上されなかった損失課税の額と将来利用可能性 (、)支払配当金、未払配当金それぞれの総額 (o)現在あるいは過去の取締役に関して以下の金額 (1)会社あるいは子会社へのサービスの見返りとして会社あるいは子会社 -77-
が取締役に支払った手数料その他の報酬(区別して)で、それにはあら ゆる手数料、歩合、特別手当、報酬、損失補償、年金・退職金制度での 優遇、会社・親子会社の株式・社債の募集に関わって支払われた報酬を 含むが、ただし、ある取締役があるいはその取締役がメンバーになって いる会社がある専門的能力でもって会社にサービスを提供する場合は、 その取締役また会社の提供するサービスに対して支払われた金額は含ま れないが、脚注のような方法で別に表示されるべきであろう。 (2)会社・子会社から現金以外のもので取締役が受け取った便益の、脚注 その他の方法での見積現金価値額 (p)現在のあるいは過去の取締役によって会社・子会社に提供されたサービ スについて第三者によって受払いされた総額 (q)監査人としてのサービスの報酬として監査人によって受け払いされた総 額で、会社・子会社によって支払われたすべての手数料、報酬などの支払 いを含む額 (r)重要な臨時的損益とそれに対する税の影響 (s)重要な過年度損益項目とそれに対する税の影響 (t)重要な会計的見積額の変化 (u)関係企業との重要な取引 以上が損益計算書に係る規定である。次に、第2項目において、貸借対照表 に関して、会計期末現在における以下のものが表示されるべき、と以下のよう に列記している。 (a)授権資本額と発行済株式を、配当・償還などに関しての権利・制限を貸 借対照表に注記して明示しながら株式種類別に表示する。 (b)償還優先株について、その償還曰、企業が償還権を持っている最も早い 曰、償還の際のプレミアム額。 (c)損益計算書に表示されていない場合、株式について当該年度に資本から 支払われた利息とその利率。 (。)当該年度の変動を明示しつつ、以下の区分での余剰金額 (1)株式プレミアム -78-
(2)再評価剰余金 (3)損益残高 (4)その他 (e)注記での次期繰越損益 (f)以下の項目の未償却残高 (1)創業費 (2)株式発行費 (3)社債発行費 (4)社債発行差金 (5)株式発行割引額 (6)営業権、特許権、商標権 (7)開発費 (8)その他繰延費用 なお、注記で繰延処理の基礎を明らかにすること。 (9)会社が再発行権を持つ償還社債の説明 (h)固定資産、流動資産、負債、引当金を適切に区分すること。なお、資産 については当該金額算定の基礎。但し、重要性の判断を行うこと。 (i)固定資産については (1)適切な区分のもとで、金額を明示する。 (2)このスケジュール第3項に定められた方法で金額の算定がなされた固定 資産については、評価のなされた年度、外部者の評価であるかどうか、ま た評価の基礎。 (3)土地については、自由土地保有権の額、リースの額 (4)権利の制限 (5)分割返済で取得された資産額 (6)遊休資産または処分よう資産の額 (7)減価償却方法、償却率、償却年度を注記で (j)投資について、以下のように適切な区分において、評価の基礎と証券取 引所の相場価値を開示する。 -79-
(1)連邦政府発行有価証券への投資 (2)他の政府、市などの公債への投資 (3)子会社への投資 (4)マレーシア証券取引所その他で上場されている株式への投資 (5)上場されていない株式への投資 (6)マレーシア証券取引所その他で上場されている社債への投資 (7)上場されていない社債への投資 (8)株式会社へのその他の投資 (9)その他 (k)資産の在庫を適切な区分のもとで開示し、その金額は原価と正味実現可 能価額のいずれか低い方で評価する。 (1)長期請負工事による資産の在庫について (1)資産額算定の基礎 (2)当該工事に係る受取額、前受額など (、)以下の項目をそれぞれ別区分で (1)親会社への債権 (2)子会社への債権 (3)関連会社への債権 (4)営業債権と受取手形 (5)会社あるいは関連会社の取締役への債権 (6)その他 (7)銀行や金融会社への預金 (、)以下の項目を、12ヵ月以内に決済もしくは償還されるか否かを区別し て (1)社債 (2)担保付き負債 (3)銀行ローンと当座借越 (4)その他無担保債務 (O)以下の項目を別区分で -80-
(1)親会社への債務 (2)子会社への債務 (3)関連会社への債務 (4)営業上の債務(関連会社に対するもの以外) (5)会社あるいは子会社の取締役への債務 (6)その他 (p)未払及び繰延を区別した税金充当額 (q)年金及び退職後ベネフィットへの引当金 (r)未払配当金 (s)優先株への配当未払額 (t)偶発債務
6.連結
第5条は親会社、子会社の規定をしている。それによれば、ある会社が他の 会社の経営をコントロールしている場合、他の会社の議決権株式の過半数をコ ントロールしている場合、また、発行済み株式の過半数を所有している場合、 他の会社はある会社の子会社とされる。また親会社と子会社の連結損益計算書 と連結貸借対照表は、株主総会で親会社の損益計算書と貸借対照表に添付され なければならない。また、子会社では親会社の名、場所、基本的な活動内容、 所有されている株式割合が開示されなければならない。(sch、9,para5)7.監査
監査役は株主総会前に取締役によって、あるいは総会において会社によって 任命される。監査役の資格は財務大臣によって審査される。任命された監査役 は次年度の株主総会まで任務を務める。(第8条、172条) -81-監査役は株主総会に提出される報告書やその報告書の基礎になった帳簿、会 計処理に関して、総会メンバーに報告しなければならない。親会社である場合 は、連結報告書が報告されなければならない。(第174条1項) この報告書には、企業の状況に関して、また169条で定められているよう な事柄について真実かつ公正な概観を呈しているかどうか、この会社法で要求 されている会計記録、帳簿などが適正に保持されているかどうかなどについて、 監査人の意見が述べられる。 (注)MDCLegalAdvisers,CompaniesActandCompaniesRegulations, KualaLumpur:llDCSdn・Bhd.,1994. (参考文献) (1)Chang,YoungHangAComparativeStudyoftheAccounting SystemofFiveCountriesinEastandSouthernAsia, (2)平松一夫監修、的手美与子・御薗恵著『タイ、マレーシアの会計・開 示制度』中央経済社平成4年 -82-