• 検索結果がありません。

ジグソー学習によって文学の読みの変容を図る一考察 : 第6学年「やまなし」の場合

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "ジグソー学習によって文学の読みの変容を図る一考察 : 第6学年「やまなし」の場合"

Copied!
107
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

平成

27年

研究報告書

ジグ ソー学 習 に よ って文学の読みの変容 を図 る一考察

―第

6学

年「やまなし」の場合一

兵庫教育大学大学院

学校教育研究科

教育実践高度化専攻

小学校教員養成特別 コース

P13072E

高木富也

(2)

ジグソー学習によって文学の読みの変容を図る一考察

― 第

6学

年 「や まな し」の場合― 目次 序章 研究の 目的 と方法 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1 第1節 研究の 目的・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1 第

1項

協同学習に関す る先行研究 ・・・・・・・・・・・・・・・・ 。・・・ 。1 第

2項

平成26年度 ジグ ソー学習実践のアンケー ト結果分析・・・・・・・・・・2 第

2節

研 究の方法 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 。・・・・・・・・・3 第

1章

国語科における協同学習の先行研究・・・・・・・・・・・・・・・・・・・5 第1節 国語科 にお ける話 し合い活動指導の実態 ・・・・・・・・・・・・・・・・5 第

1項

話 し合い活動の形態に関す る高橋の研究 ・・・・・・・・・・・・・・・6 第

2項

デ ィベー トを用いて文学を読むことに関す る堀江・井上の研究 。・・・・8 第

3項

ジグソー学習に関す る難波の研究 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・9 第

2節

文学的文章教材 を協同的に読む価値 ・・ 。・・・・・・・・・・・・・・・9 第

2章

先行研究におけるジグソー学習の実態・・・・・・・・・・・・・・・・・

11

第1節 ジグソー学習 とは ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

11

2節

ジグソー学習の分類提案 。・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

12

3節

従来のジグソー学習の課題 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 。

15

3章

メタ認知 と読みの変容の関係性・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

17

第1節 メタ認知の教育的価値 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 。・

17

2節

メタ認知 と読みの変容の関係性 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 。

19

4章

授業実践 「やまな し」・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 。

22

第1節 宮沢賢治作品の分析 と仮説 一二作品 。一作者 による多読 ―・・・・・・ 。

22

2節

ジグソー学習を取 り入れた授業の概要 ・・・・・・・・・・・・・・ 。

24

3節

本実践 にお ける特徴的な手立て 。・・・・・・・・・・・・・・・・ 。

25

1項

メタ認知的変容 を促す手立て 。・・・・・・・・・・・・・・・・・

25

2項

思考 を焦点化す るための手立て 。・・・・・・・・・・・・・・・・

28

4節

発話 プ ロ トコル分析 と成果物の考察 ・・・・・・・・・・・・・・・・

35

1項

ルーブ リックによる評価 と量的分析 ・・・・・・・・・・・・・・ 。

35

2項

対象児童 の選定 と質的分析の 目的 ・・・・・・・・・・・・・・・ 。

38

3項

発話 プ ロ トコル分析 と考察 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 。

39

5節

アンケー ト分析か ら判明 した専門家 グループの重要性 ・・・・・・・・

53

6節

実践の成果 と今後の課題 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

55

終章 本研究の成果 と今後の課題 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

56

第1節 研究の成果 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

56

(3)

2節

今後の課題 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ・・・・・・・

56

引用 口参考文献一覧 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

57

謝辞 巻末資料 資料

1

単元指導計画

,学

習指導案・・・・・・・・・・・・・・ ・・・・・・・

59

資料

2

ワー クシー ト・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

69

資料

3

板書・・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ・・ ・・・

73

資料

4

ア ンケー ト用紙・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 。・・・・・

74

資料

5

ア ンケー ト結果・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

76

資料

6

ジグソー学習分析一覧・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

84

資料

7

使用教材文・・・・・・・・・・・・・・・・ ・・・・・・・・・・・

lo3

(4)

序章 研究の 目的 と方法 第1節 研究の 目的 第1項 協 同学習に関す る先行研究 近年教育現場で協同学習が注 目され

,そ

の効果 と重要性 に関す る研究が

,数

多 く報告 さ れている。 藤村宣之(2013)は

,国

内外の学力調査 を認知心理学の視点か ら分析 した上で, 日本の子 どもは解き方の定まった問題 を解決すること (定型的問題解決

)は

得意 としてい るが

,多

様 な知識 を関連づ けることで解き方や答 えが一つに定ま らない問題 にアプローチす ること (非定型的問題解決

)は

相対的に苦手としている, と指摘 している lヽ この非定型的問題 解決の育成について

,石

田裕久(2001)は

,他

者 と相互交渉する力

,仲

間 と力を合わせてひ とつのことを成 し遂げた り

,情

報を集め協力 し合つて活動 した りする社会的技能は教育に よつて教えなければな らず

,そ

のための有効な機会が 「協同」とい う学習形態である,と い うことを述べている2ゝ 協同学習が求められる理由として,学力観の転換 とい う面がある。三宅なほみ(2015)は, これからの社会が求める知性 とは

,わ

かっていることを説明できることより

,わ

か りかけ ていることを積極的にことばにしながら考えて

,一

人ひ とり自分で答えを作 り出すことが できるようになるべきである,と い うことを述べている3、 この点について杉江修治(20H) は

,子

どもが実際に 「参加」 し

,互

いに 「協同」 し, 自分自身の 「成就」感を味わえる学 習過程を得なくては

,期

待する変化は生 じないだろ う, とい うことを指摘 している4ゝ 藤村

,石

,三

,杉

江の指摘を統合するならば

,多

様な角牢き方や答えに対 して

,一

人 ではなく他者 と関わ り合いながら学習 し

,自

分の中で納得できる答えを作 り出すことが重 要であるとい うことである。従来の一問一答型の授業や

,教

師主体の授業

,国

語科におけ る一人読み中心の読解型授業を改善 しなければならない。そのためには

,非

定型的な課題 に向けて自分の考えを他者の考えを交流 し

,交

流か ら得た考えか ら自己の解釈を広げると いつた

,協

同的な課題解決学習をしていくことが必要なのである。 り藤村宣之 「協同的探究学習とは :理念 とデザイン」名古屋大学教育学部附属中 。高等学 校『 協同と探究で 「学び」が変わる一個別的・ ドリル的学習だけでは育たないカー』学 事出版

,2013年

,p.26。 助石田裕久 「序文」

Yシ

ャラン 。S.シャラン『「協同」による総合学習の設計―グループ・ プロジェク ト入門―』北大路書房

,2001年

,p.1。 3)三 宅なほみ他 「協調学習 授業デザインハン ドブ ックー知識構成型 ジグソー法を用いた 授業作 リー」東京大学 大学発教育支援 コンソーシアム推進機構(CoFこF),2015年,pp.8-17。

h"p://corefu―tokvo.ac.ip/wordpКsywp_contenプuJoads2015/04ハandbook JLpdf

(アクセス:2015年 5月 1日 )

(5)

なお

,協

同学習 とい う呼称は,「協同」「協働 」「共同」「協調」な ど研究者 によって異な るが

,広

義では同義語 として捉 え

,本

稿 では 「協同学習」 として統一す ることとす る。 第

2項

平成26年度 ジグソー学習実践のア ンケー ト結果分析 協同学習の一つの方法 として

,稿

者 はジグソー学習に着 日した。 ジグソー学習 とは

,19

世紀にアメ リカの社会心理学者であるエ リオ ッ ト・ アロンソンらによつて考案 された

,協

同的な学習形態である。 ジグソー学習の詳細については

,第

2章

で述べ ることとす る。 稿者 は平成26年度 の実習において

,文

学的文章教材 「初雪のふ る 日」(光村図書 国語 四下 はばたき

)に

お けるジグソー学習実践 と

,ジ

グソー学習に関す るアンケー ト調査を 行 つた。以下に示す図

1,図

2は ,平

成26年度実践のアンケー ト結果 の一部を比較 した も のである。 ② 自分 と同 じ視点の人の話をよく 聞けま したか (専門家 グループ :意欲) °

%

露4 そ う思 う ⑤同 じ視点の人 と相談すると自分 の考えに自信 をもつ ことができま すか(専門家グループ :変容) 4% 業

3

どちらか とい えばそ う思 う 艤

2

どちらか とい えばそ う思わな そ う思 わない 墨

3

どちらか とい えばそ う思 う 52%爾

2

どちらか とい えばそ う思わな い 壼1 そ う思わない ■4 そ う思 う 蒻3 どち らか とい えばそ う思 う 難2 どち らか とい えばそ う思わな い ●1 そ う思わない ③ 自分 と違 う視点の人の話を よく聞けま したか (ジグソーグループ :意欲) =4 そ う思 う ⑥違 う視点の人 と相談すると, 自分の考えが広が りますか (ジグソーグループ :変 容) ●4 そ う思 う 総

3

どち らかとい えばそ う思 う 簿

2

どち らかとい えばそ う思わない ●1 そ う思わない 読みが変容 していないと感 じている児童が

23%

1

専門家グループの学習意欲と変容度の比較 (平成 26年 度実践)

3%4%

読みが変容 していないと感 じている児童が

22%

2

ジグソーグループの学習意欲と変容度の比較 (平成 26年 度実践)

(6)

質問項 目② と③ は

,相

手の話 を聞けたか とい う意欲面を調査 した ものである。質問項 目 ② では100%,質問項 目③では

93%の

児童が,よ く聞けていた とい う肯定的な回答 を した。 つま り

,ジ

グソー学習に対す る児童の学習意欲は高い傾 向があった。児童は協同的な学習 に対 して

,肯

定的な印象 をもつていることがわかった。 一方

,質

問項 目⑤ は専門家 グループ

,質

問項 目⑥はジグソー グループの

,そ

れぞれの対 話 を通 して読みの変容 を実感できたかについて調査 した ものである。図のよ うに質問項 目 ② と⑤ を比較 してみ る と

,23%の

児童が読みの変容 を実感す ることができていない, とい う結果 になった。質問項 目③ と⑥ も同様 に

,22%の

児童が読みの変容 を実感できていなか つた。つま り

,ジ

グソー学習を通 して読みの変容を実感できている児童の割合 について, 学習意欲 の高 さと比較するとやや低い傾 向にあった

,と

い う結果 を得た。 以上のアンケー ト結果分析か ら

,児

童が読みの変容 を実感す るための指導は どのよ うに あるべ きなのか

,読

みの変容の要因は どこにあるのか, どの よ うな対話が成果物 に反映 さ れ てい るのか,と い うよ うな課題 を質的に研究す る必要がある,と い う問題意識 をもつた。 先の実践では傾向を把握す るまでに留ま り

,原

因追究まで至ってお らず

,本

研究 によって 解明 しなけれ ばな らない と考える。 この よ うな課題 を解決す るためには

,ジ

グソー学習中の児童の対話の様子

,対

話か らう まれた成果物 を質的に分析す る必要がある。 これまでのジグソー学習実践は

,学

習効果や 評価規準等 について総括的な結果分析が多 く見 られた。質的な変容 を研究す ることに関 し ては研究の余地が残 されている。 そ こで本研究では

,ジ

グソー学習を取 り入れた実践 を通 して

,読

みが どのよ うに変容 し ているかを

,発

話 プ ロ トコル と成果物 を関連 させなが ら質的分析 を行い

,読

みの変容 を可 視化す ることを新奇l■とした。 ジグソー学習における理論的側面 と実践的側面の双方か ら 研究を行い

,読

みの変容 を図 るジグ ソー学習指導の在 り方について検討 した。 第

2節

研究の方法 本研 究は

,過

去のジグソー学習実践を分析す ることを通 して

,ジ

グソー学習の実態及び 課題 を明確 に し

,そ

の課題 を克月艮す るために仮説を立てて実践を行 つた。研究の方法は, 文献研究による分析 (第1章 。第

2章

。第

3章 )と

,授

業実践 (第

4章

)で

ある。 ジグソ ー学習によって読みの変容 を図る指導方法について

,理

論的側面 と実践的側面の双方か ら 考察す る。 第1章では

,国

語科 にお ける話 し合い活動や協同学習の実態について

,文

献研究を行 っ た。 まず

,こ

れ までの話 し合い活動の形態 と目的

,課

題 について

,先

行研究 を整理 した。 次にそれ らの課題 を克服す る方法 として

,ジ

グソー学習に着 日し

,ジ

グ ソー学習特有の効 果 について述べた。加 えて

,文

学的文章教材 の価値 について文献研究を基に概観 し

,文

学 的文章教材 を協同的に読む必要性 について述べた。

(7)

2章

では

,過

去のジグソー学習の実態を分析 し

,傾

向や課題 を明確 に した。加 えて, 過去の実践 の学習指導案を基に 「ジグソー学習を行 う目的」に着 日し

,分

類す ることを通 して,「読解型 ジグ ソー学習」「比較型 ジグソー学習」「創作型 ジグソー学習」の三つに細分 化す ることを提案 した。 第

3章

では

,読

みの変容 の理論的側面 として,メ タ認知に着 目し

,文

献研 究 を行 つた。 メタ認知の教育的価値 に加 え

,読

みの変容 にはメタ認知的変容が欠かせ ないことを理論的 に述べ

,メ

タ認知的変容 を促す指導が重要であることを明確 に した。そ して

,ジ

グソー学 習 とメタ認知的変容 の関係性 について考察 した。 第

4章

では

,文

学的文章教 材 「や まな し」(光村図書 六年 創造

)に

おいて

,ジ

グソー 学習 を取 り入れた授業実践及び考察 を行 つた。仮説 を基に,メ タ認知的変容 を促す手立て, 思考 を焦点化す る手立ての二つを実践 し

,発

話プ ロ トコル と成果物 を関連 させなが ら指導 の成果 を述べた。理論 と実践を往還す ることを通 して

,追

加 資料 によつて思考を焦点化す るジグソー学習のモデル図を新提案 した。 また

,成

果物の評価基準についてルー ブ リック を作成 し

,成

果物 の評価 について量的分析

,質

的分析 の両面か らジグソー学習の効果につ いて述べた。 終章では

,本

研 究における成果 と今後 の課題 について述べた。 巻末資料 には

,本

実践の単元指導 計画

,学

習指導案

,ワ

ー クシー ト

,板

書写真

,ア

ンケ ー ト用紙

,ア

ンケー ト結果

,ジ

グソー学習分析一覧

,教

材 と して扱 つた,「や まな し」「イ ーハ トー ヴの夢」「畑のヘ リ」「めくらぶ どうと虹」「雨ニモマケズ」の教材文を添付 した。 以上の方法で研 究を進 めていき

,ジ

グソー学習によって読みの変容 を図る方法について 検討 した。

(8)

第1章 国語科における協同学習の先行研究 本章では

,国

語科 における話 し合い活動の実態

,文

学的文章教材 を協同的 に読む価値 に ついて述べ る。先行研 究を分析 し

,国

語科 にお ける協同学習に対す る必要な要素を明確に してい く。 第1節 国語科 における話 し合い活動指導の実態 協同学習の在 り方

,価

値 について述べ る前に

,こ

れ までの話 し合い活動の実態や課題 を 整理す る必要がある。 平成20年度 の学習指導要領改訂 によって 「言語活動の充実」が記載 され てか ら

,教

育現 場では言語活動 を取 り入れ た授業が活発 に行われてきた。 しか しなが ら言語活動の実践に 対 して,「活動 あつて

,学

びな し。」 と椰楡 され ることも多い。 小学校学習指導要領解説国語編には,「学校や児童の実態に応 じて,様々な言語活動 を工 夫 し

,そ

の充実を図つてい くことが重要である。」とい うことが記載 されている1)。 授業に おいて言語活動の充実及び創意工夫を図ることは学校教育の大きな課題である。言語活動 には様 々な種類や方法が存在す る。学校教育現場の指導場面において

,全

く言語活動が行 われ ない とい うことは皆無 と言 つてよい程である。それ ほど

,言

語活動 は現在の教育にお いて欠かせない存在であ り

,便

利で有用な もの とい うことである。 しか し

,そ

の言語活動の一つである話 し合い活動の実態について野 口芳宏(1988)は

,話

し合い学習の進 め方について意識的な指導はあま りな されていなかった

,活

動はあるが指 導はない, とい うことを指摘 している場。換言すれば

,話

し合い活動は積極的に行われて い るものの,そこに指導はな く,形式のみの活動になつて しまつている とい うことである。 すなわち

,学

習 日標 を達成す るために効果的な話 し合い活動が行 われていない とい うこと であ り,「活動 あって

,学

びな し。」 と椰楡 され る大きな要因であるといえる。 そ して現在

,話

し合い活動は一つの転機を迎 えている。 アクティブ・ ラーニングの導入 である。アクテ ィブ・ ラーニングについて

,文

部科学省 は

,学

習者 の能動的な学習への参 加 を取 り入れた教授 。学習方法の総称 とし

,具

体的な活動 として

,教

室での グループ・デ ィスカ ッシ ョン

,デ

ィベー ト

,グ

ループ 。ワー ク等 も有効なアクテ ィブ・ ラーニングの方 法である, とい うことを述べている∋。つま り

,教

師が話 し合 い活動 を 「させ る」のでは 1)文 部科学省『小学校学習指導要領解説 国語編』東洋館出版

,2008年

,p.7。 助 野口芳宏『話 し言葉で鍛える』明治図書

,1988年

,pp.歩3。

"

文部科学省 「教育課程企画特別部会における論点整理について(報告)」 p.189,2015年 12月 10日取得。

h■ p:〃

ww‐

mext.gojpた omponenυЪ_menu/shingiた oushi涎_icsFiles/aneldnle/2015/12/H/1361

(9)

な く

,学

習者 が話 し合 い活動 を 「能動的に求めて行 う」 ことが重要なのである。 さらに文部科学省 は

,ア

クテ ィブ 。ラーニングにおける求め られ る教師の姿 として

,子

どもたちの思考を深 め発言 を促 した り

,気

付いていない視点 を提示 した りす るな ど

,学

び に必要な指導の在 り方 を追求 し

,必

要な学習環境 を積極的に設定 してい くことが求め られ る, とい うことを述べている4し っま り

,話

し合い活動の方法論だけを充実 させ るのでは な く

,指

導者 と しての指導の在 り方 も問われている とい うことである。 したがつて今後の話 し合い活動指導 とは,「活動」のみで終 えるのではな く

,話

し合い活 動が 「学び」のために活用 され

,そ

の効果を児童が実感 し

,児

童 自らが話 し合 いを求め, 能動的に話 し合 うこと

,そ

してその活動における指導 と評価 を明確 にす ることが重要であ る

,と

い うことである。 第

1項

話 し合 い活動の形態に関す る高橋の研究 話 し合い活動の形態 は多岐に亘っている。研究 を進 めるに当たつて

,こ

れ まで実践 され てきた話 し合い活動の実態について整理 しなければな らない。 高橋俊三(1994)は

,話

し合い活動の形態の分類について, 目的

,形

,コ

ミュニケーシ

ョンの様態という観点に注目し,以 下の三つの類型にして捉えている

5t

1,話

し合い活動 ○フリー・ トーキング (フ リー・ディスカッション) ○グループ 。ディスカッション (バズ 。セ ッション)

2,討

議・討論・論争 考えを競 うもの

考えを深めるもの ○ディベー ト

○パネル・ディスカッション (フォーラム・ディスカッション

)

○シンポジウム

3,会

議 図

1

話 し合 い活動の類型 (高橋,1994) 第一の類型 は

,読

書過程の中な どにあつて

,学

習 を進 めるための話 し合 いである。活動 形態例 は

,フ

リー・ トー キング(フ リー・ デ ィスカ ッシ ョン

),グ

ループ 。デ ィスカ ッシ ョ ン(バズ 。セ ツシ ヨン)である

6こ

れ らの活動では

,学

級 または小 グループ とい う

,ひ

とつ の組織の中で, 自由な雰囲気で発言す ることができる。 しか し高橋は, 自由な中で も

,発

表 の し合 いではな く

,話

し合い活動にす ることに留意

0前

掲書3),pp.17-19。 つ高橋俊三『話し合 うことの指導』明治図書

,1994年

,p.202。

(10)

しなければな らない, とい うことを述べている6ゝ 換言すれ ば

,児

童が 自分の意見や考え を列挙す るだけでは

,話

し合い活動 にはな らない とい うことである。すなわち

,話

し合い 活動では

,互

いの意見や考 えの共通点や相違点を比較 し

,整

理 し

,解

決 に導いてい くこと が重要である。 第二の類型 は,特 に話題 を選び,互 いの考えを競 つた り,深 めた りす る話 し合いである。 活動形態例 は

,デ

ィベー ト(フォー ラム・デ ィスカ ッシ ョン),パ ネル・デ ィスカ ッシ ョン, シンポジウムである。 これ らの活動は

,第

一で述べたフ リー・ トーキングや グループ 。デ ィスカ ッシ ョンよ りも, 自由度 が減少 し形式的な話 し合い活動 となつている。 また高橋は

,活

動の 目的 として

,デ

ィベー トは考 えを競 うものであ り

,パ

ネル 。デ ィス カ ッシ ョン

,シ

ンポジ ウムは考 えを深めるものである, とい うことを述べている 7ゝ 換言 すれば

,活

動形態 にはそれぞれ 目的や児童 に定着 させ る力が異な るとい うことである。 た とえば

,デ

ィベー トでは

,異

な る二派の意見に分かれて立論や反駁 を し

,勝

敗 を決定す る が

,パ

ネル・デ ィスカ ッシ ョンでは論点や解決策が複数考 え られ

,二

派以上の意見に分か れ る場合で も用い ることができる。すなわち

,指

導 目的 によって話 し合 い活動の取 り入れ 方が異なるとい うことである。 第二の類型 は

,学

級や学校 の身近で具体的な諸問題 を

,実

践的に解決す るための話 し合 いである。活動形態例は

,会

議である。 フ リー・ トー キング

,グ

ループ 。デ ィスカ ッシ ョ ン

,デ

ィベー ト

,パ

ネル 。デ ィスカ ッシ ョン

,シ

ンポジ ウム とは活動形態が異な り

,よ

り 細かなルールが定め られてい る。 高橋 は

,会

議 はグループ・ デ ィスカ ッシ ョンの手順で進 め られ るものの

,発

表 の仕方や 処理は

,ル

ール を守 ることが必要である, とい うことを述べている8ゝ 換言すれ ば

,公

的 要素が強 くな り

,司

,議

,提

案者 な どの権威が強 くなることで

,話

し手の話す機会が 保障 され るとい うことである。すなわち

,児

童 に とつて慣れ ない環境のため

,複

数回にわ たる指導が必要になるとい うことである。 以上の話 し合い活動の形態 に関す る研究は

,話

し合い活動の実態を整理 し

,話

し合い活 動の形態や特性 を明確 に区別す るための ものである。話 し合 い活動の形態は

,そ

れぞれ活 動 目的

,方

,特

,児

童が習得す る力が異なることが明 らか となった。加 えて

,児

童の 実態 を考慮 し

,あ

る課題 に対 して, どの活動形態が適切 か, どのよ うな力を習得できるの か, どのよ うに指導 し評価す るのか

,な

どを見極めることが重要である。 本研 究では高橋 が分類 した活動形態の うち

,第

二の類型である

,特

に話題 を選び

,互

い の考えを競 つた り

,深

めた りす る話 し合い活動形態に着 日してい くこととす る。 ① 前掲書5),pp.203-205。 7)前 掲書5),pp.206‐210。 め 前掲書5),pp.210-211。

(11)

2項

デ ィベー トを用 いて文学 を読む ことに関す る堀江 口井上の研究 あるテーマに対 して考 えを競 つた り深 めた りす るための話 し合 い活動 として

,デ

ィベー トがある。デ ィベー トとは討論の形態の一つである。小学校国語科においては第5。

6学

年 の言語活動例 として討論が記 されていることか らも

,デ

ィベー トを用いた学習指導 を行 う 必要性があるといえる。 堀江祐爾(2001)は

,今

後 の文学作品の授業の方向性 について

,す

ぐれた芸術 である文学 作品が,生徒それぞれ の中に生み出 さ じめた (読み)を互いに「伝 え合い」,そ れぞれの(読 み

)の

特性や位 置 を確認 していき

,文

学作品を豊かに読み深 めてい くよ うな授業が求 め ら れ てい る

,と

い うことを述べている 動。換言すれば

,個

人の読み を深 めるのではな く

,話

し合い活動な どで 自己の考 えを伝 えあ う協同的な学びを通 して

,文

学 を読み深 めてい くこ とが重要である

,と

い うことである。 まずデ ィベー トの定義についてであるが

,高

橋 は

,①

肯定イ則・否定側 にはつき り分かれ る問題 について

,②

形式的に両派 に分かれ

,③

ルール に従 つて

,立

論 と反駁 を行 い

,④

審 判が

,説

得力 の視点か ら勝敗 を決定す る討論のゲー ムである

,と

述べている1の。 また

,デ

ィベー トの価値 について井上雅彦(2001)は

,国

際化

,情

報化社会への対応や

,こ

れ までの 文字言語偏重の国語教育の反省 か ら,音声言語教育の重要性 が指摘 されてお り,国語科 は, 音声言語活動 と文字言語活動 とか らなる言語の教育であるため

,テ

クス トを読む ことで議 論 について検討 してい くよ うな

,テ

クス トを主 として扱 うデ ィベー トが よ り望 ま しい,と い うことを述べている Hゝ 換言すれ ば

,テ

クス ト(教材)をよ り深 く理解す るためにデ ィベ ー トを行 うことが重要であるとい うことである。 しか し

,デ

ィベー ト活動は学習 目標 によつては適 さない場合 もある。例 えば

,稿

者が平 成26年度に実践 した文学作品 「初雪のふ る 日」では,「読後感 の基 とな る作品の秘密 を見 つ ける」 ことが学習 目標であつた。読後感 とは

,文

学作品を読んだ後 に心に残 る漠然 とし た感覚のことであ り

,児

童個人によつて様々であることか ら

,デ

ィベー トの よ うに二値的 な論題 で絞 ることは難 しい。またデ ィベー トの よ うに,「

Aの

読後感や秘密 よ り

,Bの

読後 感や秘密の方が正 しい。」 と勝敗 を決す ることも望ま しくない。 話 し合 い活動 を通 して文学作品を読み深める とい うことは

,あ

くまでい くつかの解釈 を 出 し合 つて読み を広げた り深 めた りす ることである。デ ィベー トとい う学習形態 の価値は 認 め られ るものの

,論

題 のために価値 を絞 つた り勝敗 を決 した りとい うデ ィベー トの特性 は万能ではない とい う点に課題 が残 るといえる。

"堀

江祐爾 「〔二値〕を乗 り越え,〔多値 。多様〕な (読み

)を

生み出す豊かな (ディベ ー ト活動)」 井上雅彦『ディベー トを用いて文学を (読む〉―伝え合いとしてのディベ ー ト学習活動一』明治図書

,2001年

,p.3。 10) 11) 前掲書5),p.206。 井上雅彦『ディベー トを用いて文学を (読む〉―伝え合いとしてのディベー ト学習活 動―』明治図書

,2001年

,pp.23‐24。

(12)

3項

ジグソー学習に関する難波の研究 デ ィベー ト活動 の課題 を解消 しつつ

,話

し合 う活動 を通 して文学を読み深 める学習形態 として

,稿

者 はジグ ソー学習 に着 目した。 ジグソー学習について

,特

に国語科の文学的文 章教材 を対象 としたジグソー学習は

,難

波博孝 。尾道市立因北小学校(2010)が実践及び研 究 を進 めている。 ジグソー学習 とデ ィベー トの違いは

,視

点や立場は絞 るものの

,そ

こか ら生まれた児童 の価値 を絞 ることはせず

,勝

敗 を決す ることもない とい うことである。「言い負 か し合い」 ではな く

,あ

くまで 「学び合い

,高

め合 う」 ことが 目的 となる。 また

,ジ

グ ソー学習特有の効果 も存在す る。それは 「対話の必然性」である。対話の必 然性 について,ジグソー学習実践モデル校の広島県尾道市立因北小学校は,「課題別 グルー プ」で学習 したことを「ジグソー グループ」のメンバーに伝 えなけれ ばな らない とい う「対 話の必然性」が生まれ た ことが

,一

人一人の学習の 目的 をよ り明確 な ものに し,「対話」で 互いの読みを交流す る楽 しさを感 じなが ら,主体的に学びあ う力が高ま り,「読む ことの力」 の向上にもつながつた, とい うことを述べている 12、 この点について志賀玲子(20H)は 学 力低位生徒に着 目した上で

,ジ

グソー学習は教室で 「弱者」 となつている生徒にも役割を 与え

,授

業に参加 し

,ク

ラスメー トは競争相手ではなく協力 し合 うべき存在であることの 意識を持ち

,す

べての生徒が 「平等に参加でき

,発

言できる場を作 り出す」ことが目的で あった

,と

い うことを述べている13ゝ っま り

,ジ

グソー学習での話 し合い活動は

,学

習が 得意な児童も苦手な児童も必然的に話 し合 うことができる,とい う点に大きな価値がある。 しか しながら,「児童個人がどのように変化 したのか」とい う「個」の変化に着 目した研 究は多く見られず

,研

究の余地が残 されている。 本項ではジグソー学習の概観を述べたに過ぎない。ジグソー学習に関する実態,詳細は, 第

2章

で述べることとする。 第

2節

文学的文章教材を協同的に読む価値 第1節で話 し合い活動の形態や価値

,本

研究の主題であるジグソー学習について

,文

献 研究を基に述べた。本研究では,「話 し合い活動によつて読みが変容する」とい うことに着 目する。そのために

,本

研究の実践対象である

,文

学的文章教材の価値について述べるこ とで,「文学的文章を話 し合いながら読む」ことの価値を明 らかにする必要がある。文学研 難波博孝・尾道市立因北小学校『 ジグソー学習を取 り入れた文学を読む力の育成』明 治図書

,2010年

,p.33。 志賀玲子「日本語教育における新たな役割 としての協働学習の提案―教室環境作 りの試 みを通 して一」 日本語

/日

本語教育研究

,20H年

,p.35。

(13)

究は様 々な研 究者 によつて行 われているが

,本

節 においては

,江

口季好

,辻

村敬三

,松

本 修の論 を参考 とした。 まず

,な

ぜ 文学的文章教材 を教育す る必要があるのか

,そ

の価値 について述べ る。文学 教育の価値 に関 して

,江

口季好(1988)は

,文

学はあ らゆる人間を形象 して読者 に生 き方 を 考 えさせ

,そ

れ らの作品への共感 または批評 によつて

,人

間の心に生 きる力 を与 え

,生

き る喜びを培 つてい くものである, とい うことを述べている14、 っま り文学教育 とは

,学

校 教育の 目標 である 「生 きる力の育成」 を

,文

学 とい う芸術作品か らアプ ローチ してい くと い うことに価値があ り

,重

要な指導内容 である。 続いて,文 学 とは どのような特質 をもつ ものなのかについて述べ る。辻村敬三(2010)は, 文学を読む重要な特質 は虚構体験であるとし

,内

容 を正確 に過不足な く理解す ることだけ に注視す るよ うな学習指導を批判 している。辻村は

,読

者 がイ メー ジの働 きによつて

,在

りもしない し在 り得 るはず もない “虚構 の世界

"に

引きこまれ

,物

語の世界の出来事 を我 が ことのよ うに

,実

感 を伴 つて感 じ取 ることこそが物語 を読む魅力であ り目的である

,と

いうことを述べている

15し

っまり,文 学を読み,虚構体験を通して強い感動を得るような

体験が必要 なのである。 最後 に

,文

学教育の 日標 について述べ る。松本修(2006)は

,文

学は名付 けがたい ものヘ の名付 けとい う意味での創造行為であ り

,関

係 の中に 自己を紡 ぎだ してい くとい う意味で の創造行為で もあるか ら

,認

識 と認識主体 とを ともに鍛 え

,文

学 を読み

,そ

の読みを交流 す ることの二つ を推進す ることが文学教育の 目標である

,と

い うことを述べている16ゝ ま り,文学 を読む ことで得た考 えを他者 と交流す ることが必要である,と い うことである。 江 口

,辻

,松

本 の論 を統合す るな らば

,自

己の生 き方 を考 えるために

,虚

構 の世界で ある文学の世界 を楽 しんで読み

,そ

こか ら得た生き方 。考 え方な どを自己の読みだけでな く他者 と交流す ることが重要である, とい うことである。文学を読み深めることで主人公 や作者 の思考 と自己を照 らし合わせ, 自己の生 き方 。考 え方 を創造 し生 きる力 につなげる ことが

,小

学校段階の文学教育 として重要である。 以上の先行研究 は

,な

ぜ文学的文章教材 「やまな し」を協同的に読む必要があるのか, とい うことについて先行研 究をま とめ

,実

践の意図に根拠 を示す ための ものである。 次章では

,本

実践の指導方法であるジグソー学習について述べてい く。 ジグソー学習の 価値

,ジ

グソー学習の分類提案

,過

去の実践の成果 と課題 を述べ ることで

,指

導方法 を具 体化 してい く。 江口季好 「これからの文学教育」西郷 。浜本・足立『文学教育基本論文集』第

4巻

明 治図書

,1988年

,pp.300-302。 辻村敬三『物語を読む力を育てる学習指導論―もう一つの“読解力"を拓 く―』漢水社, 20104「, pp.78-79。 松本修『文学の読みと交流のナラ トロジー』東洋館出版

,2006年

,pp.19-20。 10

(14)

2章

先行研究におけるジグソー学習の実態 本章では

,第

1章で述べた協同学習の方法の中で

,ジ

グソー学習に着 目し

,過

去の実践 分析 を通 して傾 向 と課題 について述べてい く。 第1節 ジグ ソー学習 とは ジグソー学習 とは

,19世

紀 にアメ リカの社会心理学者 であるエ リオ ッ ト・ア ロンソンら によつて考案 された学習形態である。 当時

,競

争主義や母語や文化 の相違 による差別 問題 が多 く見 られた米国社会において

,学

級 内の子 どもたちが協同的 に学習できる形態 として 導入 された ものである。 エ リオ ッ ト・ ア ロンソンは

,ジ

グソー学習の価値について

,児

童 たちの中に 「自分の情 報が必要 とされ る」 とい う相互依存性 の要因があ り

,児

童は他人に とつて価値 ある情報の 供給源 とな り

,お

互いの能力を競い合お うとい う欲求を低減 させ る, とい うことを述べて いる 1ヽ つま り

,単

な る調べ学習の分担作業や

,で

きる児童のみで話が進む よ うなグルー プ ワー クではな く,「無価値 な情報や児童が存在 しない」「対話 によつて高め合 う」 とい う 価値がある とい うことである。 日本においては

,東

京大学 大学発教育支援 コンソー シアム推進機構(以下

,CouF)が

, ジグ ソー学習の研究を進め

,各

学校種で実践 を行 つている。 ジグソー学習の具体的な方法 としては

,あ

るテーマについて複数 の視点で書かれ た資料 を,「専門家 グループ」と「ジグソー グループ」の二つのグループに所属 し

,そ

れぞれの仲 間 と交流 しなが ら課題解決 を してい く。児童 には,「専門家 グループ」で学習 した ことを「ジ グソー グループ」 に もち寄つて伝 えなけれ ばな らず

,知

識 を伝 え合わなけれ ば学習が成 り 立たないため

,話

し合 うことに責任が生 じる。そ して最後に 「全体交流 (ク ロス トーク)」 を行 い

,学

級全体で横断的に意見交流 を行 い

,中

心課題 に対す る最終的な答 えをもつ。 こ れ ら「専門家 グループ」「ジグソーグループ」「全体交流 (ク ロス トー ク)」 とい う三段階で 学習 してい くことに特徴がある。 ジグ ソー学習のモデル図は以下の図1のよ うに示す ことがで きる。 この図は

,難

波,

CoREF,論

点整理の三者が示すモデル図を参考に

,稿

者が作成 した ものである。 なお

,ジ

グソー学習の用語 は研究者 によつて呼称が異なる。本論文においては

,実

践時 に児童 に伝 えた,「専門家 グループ」「ジグ ソー グループ」「全体交流」とい う呼称 で

,統

一す ることと す る。 1)エ

リオット・アロンソン他『ジグソー学級』松山安雄訳,原 書房,1986年

,pp.1721。

(15)

①専門家グループ 1つの資料を基に

,同

質的な対話を通 して考えを深め

,ジ

グソー グループに伝 えることを決める。 ②ジグソーグループ 専門家 グルー プで得 た考 えをもち寄 り

,異

質的な対話を通 して

,複

数の資料 と考えを比較 し考えを広げる。 ③全体交流 学級全体で横断的な意見交換 を し

,グ

ルー プ の枠 を超 えた共通点や相違点 を 見つ け

,中

心課題 に対する最終的な答 え をま とめる。 図

1

ジグソー学習モデル図 (難波

,CoREF,論

点整理を基に高木作成) 本節 では

,ジ

グ ソー学習考案者 であるエ リオ ッ ト・ア ロン ソン と

,CoREFの

二者の研究 を基 にジグソー学習の価値 を明確 に し

,ジ

グソー学習の外観 を示すモデル図を作成 した。 次節か らは過去の実践 を量的 に分析す ることで,ジグ ソー学習をよ り細か く研究 してい く。 第

2節

ジグ ソー学習の分類提案 ジグ ソー学習指導の実態を把握す るために

,過

去の国語科におけるジグソー学習実践の 指導案 を分析 した。分析の視点 として 「ジグソー学習 を行 う目的」 に着 日し

,分

類 を行 つ た。分析数は小学校実践28件

,中

学校実践 14件

,高

等学校実践 13件

,合

計55件である。 (平成27年9月 8日) 分析 を行 つた結果か ら

,稿

者 はジグ ソー学習の分類 と目的について

,次

の図

2,表

1の よ うに分類す る。 なお

,分

析 の詳細は巻末資料 に添付す ることとす る。 ①読解型 :内 容を読み深めるために行 うジグソー学習。(習得) ②比較型 :学んだ内容 と共通 した内容の他の文章や

,同

作者 (筆者

)が

書いた複数の作 品を比較 し作者の思想を読み深め

,特

徴や共通点を探すために行 うジグソー 学習。(活用) ③創作型 :学 んだことを活用 し

,創

作活動へ移る際に行 うジグソー学習。(活用) 図

2

ジグソー学習の分類と目的 (高木,2016) 12

(16)

1

ジグソー学習実践分類表 (高木,2016) (注) (文

)は

文学的文章教材

,(説

)は

説 明的文章教材

,(話

)は

話す こと 。聞 くこ と領域, (書

)は

書 くこと領域,(伝

)は

伝統的な言語文化 と国語の特質 に関す る事項の教材である ことを示す。 小学校 中学校 高等学校 読 解 型 「だれがたべたので しょう」(説) 「みぶ りでつたえる」(説) 「どうぶつの赤ちゃん」(説) 「お手紙」(文

)(2件

) 「海をかつとばせ」(文) 「ちいちゃんのかげお くり」(文) 「夏のわすれ もの」(文) 「ごんぎつね」(文

)(4件

) 「大造 じい さん とガン」(文

)(2件

) 「カ レー ライス」(文

)(2件

) 「きつねの窓」(文) 「やまな し」 「少年の 日の思い出」 (文

)(2件

) 「走れメロス」(文

)(3

件) 「蓬莱の玉の枝」(伝) 「ゼブラ」(文) 「五重塔はなぜ倒れない か」(説) 評論 「君は『 最後の晩餐』 を知 つてい るか (説) 「故郷」(文) 「漢詩の風景」(伝) 「高瀬舟」(文) 「こ ころ」(文) 「評論『癒 しとしての死 の哲学』」(説) 「伊勢物語」(伝) 比 較 型 「読書の世界を広げる」(説) 「宮沢賢治の作品世界に迫る」(文) 「椋鳩十の作品世界を味わお う」 (文) 「近現代の短歌・俳句」 (伝) 「現代文『 実用の文書』」 (説) 「意見を述べる」(説) 「『 である』ことと『 す る』 こと」(説) 「詩の鑑賞」(伝) 「三大和歌集」(伝) 「桃花源記」(伝) 創 作 型 「たんぽぽのちえ」(説) 「お手紙」(文) 「ようすをあらわす ことば」(話) 「組み立てを考えて書 こう」(書) 「話 し合いの仕方について考えよ う」(話) 「表現を工夫 して書 こ う」(書) 「意見文を書 こう」(書) 「平家物語『扇の的』」 (伝) 「こころ」(文) 「小論文の書き方」(説) 「源氏物語」(伝) 「り│1柳(伝)

(17)

①読解型ジグソー学習 ①の読解型は

,内

容を読み取つた り

,読

み深めた りすることをね らいとして行 うジグソ ー学習である。表1に示 したように

,実

践数は33件であつた。ジグソー学習指導時期は, 学習の山場や知識の習得場面に設定 され,「読むためのジグソー学習」であると言える。視 点については二つの傾向が見 られた。三つの視点全てを登場人物に立てる傾向と

,登

場人 物に加 え作者 (情景描写

)の

視点を立てる傾向である。 この点について

,尾

道市立因北小学校は,「カレーライス」実践において

,一

人称で書か れた物語は登場人物の視点を中心にすることで

,そ

れぞれの立場の違いに分かれて心情を より強 く感 じながら読み深めることができる

,と

い うことを述べている2ゝ

_方

,3年

間にわたる 「ごんぎつね」の実践比較を通 して

,登

場人物の心情を想像を広げなが ら読む ための手がか りとして情景描写に視点を当てて読む意味は大きい, とい うことも述べてい る3ゝ 換言すれば

,物

語の特性に応 じて作者 (情景描写

)視

点を導入するかを判断 しなければ ならないとい うことである。登場人物の心情の移 り変わ りや立場の違いに注 目することに 重点を置 くのであれば

,三

つの視点は登場人物に置 くことが望ま しい。それに力日えて

,叙

述や情景描写に注 目することが必要な物語の場合は

,作

者 (情景描写

)と

い うような客観 的な視点を加えることで読みを深めていくことを通 して,読角峯力を身につける効果がある。 ②比較型ジグソー学習 ②の比較型は

,学

んだ内容 と共通 した内容の他の文章や

,同

作者 (筆者

)が

書いた複数 の作品を比較 し

,作

者の思想を読み深め

,特

徴や共通点を探すためのジグソー学習が行わ れている。表1に示 したように

,実

践数は 10件 であつた。比較型の特徴は

,既

に学習 した ことをさらに発展 させ るためにジグソー学習を行つていることである。 ジグソー学習指導 時期は

,学

習のまとめや活用 として設定 され,「比較するためのジグソー学習」 と言える。 児童は学んだ物語 と

,作

者の他の物語を比較 し共通点を探す ことで

,作

者の一貫 した思想 などに気づいてい く。つまり

,比

較思考が働 くとい うことである。 専門家グループの視点の設定は

,教

材 と同 じ作者の他の作品を三つ設定 している実践が

7件

,新

聞記事などの資料を二つ設定 している実践が

2件 ,二

人の作者を設定 し比較 して いる実践が 1件 とい う内訳であつた。多読 とい う形式で三作品を読み比べ

,作

者像に迫る とい う実践が大半を占めているといえる。

CoREFの

実践を例に挙げると,「宮沢賢治の作品世界に迫る」とい う大きな課題を置き, 「宮沢賢治作品に共通する書き方の特色や

,作

者のものの見方考え方は?」 とい うジグソ 難波博孝・尾道市立因北小学校『 ジグソー学習を取 り入れた文学を読む力の育成』明 治図書

,2010年

,p.84。 同書3),p.60。 14

(18)

―課題 を設定 し,「よだかの星」,「なめ とこ山の くま」,「虔十公園林」の三つの物語 を比較 させている。教科書教材 となっている物語のみで学習 を終えるのではな く

,多

読 を通 して 宮沢賢治作品の特徴である, 自然の生き物の描写

,擬

音語や擬態語

,方

言の使用

,命

や 自 然の大切 さ

,人

間愛 な どを見つ けるためにジグソー学習 を行 うことで

,比

較思考 を身 につ ける効果がある。 ③創作型ジグソー学習 ③の創作型は

,学

んだことを活か し

,創

作活動へ移る際に行 うジグソー学習である。表 1に 示 したように

,実

践数は 12件 であつた。ジグソー学習指導時期は

,学

習の発展の書 く や音読劇などの活用の場面に設定され,「倉1作するためのジグソー学習」であると言える。 ジグソー学習の課題は 「○○を作る

,書

く」 とい うように設定される。

CoREFの

実践を例に挙げると,「原発は必要か」とい う大きな課題を置き,「原子力発電 を推進すべきか どうかについて

,あ

なたの意見を述べなさい」 とい うジグソー課題を設定 している。生徒は

,A原

子力発電はコス トがかからない

,B原

子力発電は

C02を

排出 しな い

,C原

子力発電所が建設 される地元を豊かにする, とい う三つの視点に別れて原子力発 電の有効性 を各グループで見つけ共有 し合い

,そ

れぞれの意見文を書 くとい う活動につな げている。学んだことを書 く活動に定着 させるために,「自分だつたらどのように書 くか」 とい うことをジグソー学習を通 して交流 し

,作

者の書き方や工夫を自己の書きに転換 させ ることをね らうとい うことである。 以上①から③のジグソー学習分類について考察することを通 して

,ジ

グソー学習は目的 や視点の立て方

,身

につ く力が異なることがわかる。そこで本研究では

,②

比較型ジグソ ー学習に焦点を置き

,実

践研究をしていくものとする。 第

3節

従来のジグソー学習の課題

CoREFを

中心とした数多 くの実践や成果の報告か ら,ジグソー学習は教育現場で価値が あるものとして捉 えられている。また,ア クティブ・ラーニングの導入による影響 もあり, 今後更に実践 されていくことが予想できる。 しか しなが ら

,ジ

グソー学習には課題 も多く 存在する。本節では

,ジ

グソー学習の課題を整理する。 第一に

,指

導上の留意点等が不明確な点である。

CoREFは ,ジ

グソー学習の指導におけ る留意点や工夫点などを紹介 している。 しか しながらそれ らは網羅的であ り

,具

体性に乏 しい。実践の指導案集を見ても

,意

図的な工夫や留意点などの記載はあま り見られない。 ジグソー学習 とい う型に満足することなく

,指

導者がどのような点に留意 して教材研究, 教具作 り

,指

導を行えばいいのかを明確に していかなければならない。 第二に

,ジ

グソー学習を 「活用」のために導入できていない点である。勝見健史(2014) は

,知

識基盤社会の到来を見通 した学力観 として

,身

につけた教科の知識・技能をどのよ

(19)

うに駆使 して局面の角牢決を図るかとい う「活用の学習」を視野に入れた教科指導を行 うこ とが求められている,と い うことを指摘 している4ゝ 稿者が分析 した55件の実践を見てみ ると,「習得」に位置づ く「読解型ジグソー学習」が33件と半数以上を占めた。「活用」に 位置づ く「比較型ジグソー学習」は 10件

,晴

1作型ジグソー学習」は 12件 とい う結果であ つた。つま り

,一

つの教材をジグソー学習によつて読み深める 「読解」の学習は盛んに行 われているものの

,複

数の教材をジグソー学習によつて読みを比較 し考えを広げる

,成

果 物作成のためにジグソー学習を行 う,な どとい うような「活用」の学習が行われていない, とい うことである。 第二に,評価が不明確な点である。過去のジグソー学習実践においても評価に関 しては, 対話中の児童の様子が良い姿であったとい うような

,印

象論的な評価が大半を占める。難 波は

,ジ

グソー学習では児童の学び合いは外か らなかなか見えない, と指摘 し

,指

導 と評 価の観点の明確化を指摘 している5し また

,ジ

グソー学習実践校である尾道市立因北小学 校の教師の課題でも

,最

後に個の読みが どのように変わつたのかわからない, とい う課題 意識が挙がつていた6ゝ っま り

,指

導と評価をより具体的な物に しつつ

,ジ

グソー学習に よって児童の学びが どのようなものであったかを質的に検討する必要があるとい うことで ある。 以上,「指導上の留意点」「活用の学習」「評価の明確化及び質的分析」の三点の課題点を 整理 した。 これ らは本実践にて改善 していくための視点 とする。実践するにあたつて

,ジ

グソー学習そのものを質的に研究 していく必要がある。 本章では

,過

去のジグソー学習実践を分析することを中心に研究を進めたことで

,ジ

グ ソー学習の実態を把握 し

,課

題 を整理 した。ジグソー学習に関する研究を進めることで, 「ジグソー学習の改善案」は見えてきた。 しか し

,本

研究の 目的である 「児童の読みの変 容を図る」ために必要な要素は何かが明 らかになつていない。ジグソー学習 とい う学習形 態に拘るのではなく

,そ

もそも読みの変容 とは何か

,読

みの交流に必要な要素は何か

,と

い う観点を明確に しなければならない。 次章では

,理

論的背景 として読みの変容の定義を明確に し

,読

みの交流におけるメタ認 知の役割について述べていく。

0勝

見健史『「活用」の授業で鍛える国語学力∼単元。本時デザインの具体的方法∼』文 漢堂

,2014年

,pp.10-12。

'前

掲書2),p.80。 ①前掲書 2),pp.80124。 16

(20)

3章

メタ認知 と読みの変容の関係性 本章では

,第

2章

で述べた協同学習を通 して読みを変容す るための理論的側面について 述べ る。 メタ認知に関 しては三宮真智子

,読

みの変容 については松本修 の理論 を中心に文 献研究を行 い

,メ

タ認知 と読みの変容の関係性 について述べてい く。 第1節 メタ認知の教育的価値 「メタ認知」とい う概念は

,1970年

代 半ば頃か ら認知研 究の世界で盛 んに研 究が行われ てきた。近年では教育界においても研究が行われている。 メタ認知に関 しては

,研

究者 によつて構成要素の分類や定義が異なる。本稿 では

,三

宮 真智子

,三

宅なほみ

,松

本修

,勝

見健史のメタ認知 に関す る指摘や定義 を参考 にす るもの とす る。 三宮真智子(2008)は

,メ

タ認知の定義 について

,認

知 についての認知 を意味す る とし, 自分の考 えの矛盾 に気づいた り

,課

題 の特性 を把握 した うえで解決方略 を選択 した りす る な ど

,通

常の認知 よ りも高次の認知である,と している1)。 またメタ認知は,メ タ認知的 知識 とメタ認知的活動の二つに分類することができるとしている。次に示すのは,メ タ認 知的知識 とメタ認知的活動 の概念である2ゝ ○ メタ認 知的知識

(1)人

間の認 知特性 につ いての知識 ① 自分 自身の認知特性についての知識:個人内での認知特性についての知識。た とえば, 「私は英文読解は得意だが英作文は苦手だ」など。 ②個人間の認知特性の比較に基づく知識 :個 人間の比較に基づく

,認

知的な傾向・特性 についての知識。たとえば,「

Aさ

んはBさんより理解が早い」など。 ③一般的な認知特性についての知識 :人 間の認知についての一般的な知識。た とえば, 「目標をもつて学習 したことは身につきやすい」など。

(2)課

題についての知識 課題の性質が

,私

たちの認知活動に及ぼす影響についての知識。たとえば,「計算課題 では数字の桁数が増えるほど計算の ミスが増える」など。

(3)方

略についての知識 目的に応 じた効果的な方略の使用についての知識。たとえば,「本目手がよく知っている 内容にたとえることで

,難

しい話を理解 しやす くすることができる」など。 l)三 官真智子『メタ認知 学習力を支える高次認知機能』北大路書房

,2008年

,pp.1…2。 2)同 書1),pp.7-12。

(21)

○ メタ認知的活動 メタ認知的モニタ リング :認知についての気づき 。フィー リング・予想 。点検 。評価等 メタ認知的 コン トロール :認 知についての 目標設定 。計画・修正な ど メタ認知的モニタ リングとメタ認知的 コン トロールは

,循

環的 に働 くと考 え られ る。以 下に示すのは三官が作成 したメタ認知の分類図である。 個 人 内 の 調 知 特 性 に つ い て の 知 腱 個 人 間 の3E知特 性 に つ い て の 知 餞 人 間 一 般 の 認 知 特 性 に つ い て の 知 ロ 方 略 に つ い て の 知 餞 (資雷 的,手 続 き 的.条件09知口) 童 雷 的 知 議 :どの よ う な 方 略 か 手 続 き 的 知 調 :その 方88はど う 使 う の か 条 件 的 知 口 : そ の 方 皓 は しヽつ 使 う の か, ・ な ぜ 使 う の か くど の よ う な 効 果 が あ る の か) メ タ 澪 知 的 モ ニ タ リ ン グ : 艶 知 に つ い て の 気 づ き ‐フ イー リン グ・ 予 想 ‐点 検 ・ 評 価 な ど メ タ 認 知 的 コ ン ト ロ ー ル = 配 知 に つ い て の 日 標 設 定 。計 画 ・ 修 正 な ど 図

1

メタ認知の分類図 (三宮,2008) また三官は

,メ

タ認知研究の実用的意義 (応用的価値

)に

ついて

,以

下の三点 を指摘 し ている3ゝ ①学習法

,教

授法の改善に向けての指針を提供 :メ タ認知は教育可能と考えられるため, 学習者や教師のメタ認知に働きかけることで学習法や教授法が改善される。 ②感情障害に対する治療の指針を提供:認知の歪みに起因する感情障害については

,メ

タ認知に働きかけて認知の歪みを是正することで改善を図ることができる。 ③学習障害に対する支援の指針を提供:学習障害児のメタ認知に働きかけ

,学

習障害を 自ら補償することが可能になるような支援を追求することが考えられる。 3)前 掲書 1),p.13。 18

(22)

この三点の指摘の中で

,稿

者は①の 「学習者や教師のメタ認知に働 きかけることで学習 方法や教授法が改善される」 とい う意義に着 目した。 ジグソー学習の指導を行 う際に

,児

童のメタ認知を促すような指導を取 り入れることで

,読

みの変容を図ることができるので はないか

,と

考えた。

メタ認知を促す指導について

,三

宅なほみ(2015)は,Nationd Research CoundIの メタ認 知研究の報告書 (Bransford,ct J,1999)に おける

,今

後の学習研究が取るべき観点を取 り上 げてお り

,メ

タ認知は自己内対話であるため

,生

徒たちはメタ認知の重要性に気づかない ことが多いため

,教

師がメタ認知の重要性を強調する必要がある, と指摘 している4、 さ らにこの点に関 して勝見健史(2014)は

,学

びをメタ思考する活動を教師が意図的に実践の 中に位置付け

,メ

タ思考 した内容を言語化 させることを意図的に行 うことが重要になる, と述べている5、 三宅

,勝

見の指摘を換言すれば

,教

師の意図的な介入によって

,児

童の メタ認知思考を言語化 させることが必要である

,と

い うことである。 以上の先行研究を通 して,学習指導場面におけるメタ認知の有効性がわかる。次節では, 本研究の目的である 「読みの交流 と読みの変容」に焦点化 し

,メ

タ認知 と読みの変容の関 係性について述べていく。 第

2節

メタ認知 と読みの変容の関係性 前節で先述 したことか ら

,学

習指導場面において教師が児童のメタ思考を促す有効性が わかる。稿者はメタ認知の教育的価値の中でも

,対

話 との関係性に着 目した。三官は,メ タ認知 と対話の関係性について

,学

習者がメタ認知的信念を抱いているのなら

,そ

れを変 更することで

,学

習者の学習活動 自体が一気に変わる可能性は十分考えられるだろ う

,対

話から高次のメタ認知は導かれるのだろ う, と述べている6し っま り

,メ

タ認知は対話に よって変容 し

,学

習活動の高ま りに繋がるのではないか

,と

い う指摘である。 国語科におけるメタ認知 と対話 (読みの交流

)の

関係性については

,松

本修が研究を進 めている。松本は

,多

様な学習指導場面の中で,「文学の読み」「読みの交流」の二点に焦 点化 し

,読

みの変容におけるメタ認知の重要性について述べている。 そもそも,読 みの交流 とはどういつたものなのか明確にする必要がある。松本(2006)は, 文学を読むこと

,読

みの解釈を交流することは次のような過程を踏む としている7ゝ →三宅なほみ「学習プロセスそのものの学習:メ タ認知研究から学習科学へ」東京大学 大 学発教育支援 コンソーシアム推進機構

,2015年

,pp.4-5。

httD://COretu―tokvo.ac.ip/nmivake/1ist/mate五 a1/pdf/051203JCSS WinSympo papc■ pdf

(アクセ ス :2015年 10月 31日)

"勝

見健史『「活用」の授業で鍛える国語学力∼単元 。本時デザインの具体的方法∼』文

漢堂

,2014年

,pp.45-48。

0前

掲書1),pp.94-96。

(23)

松本 は

,読

者 が文学 を読んでい く場合,テクス トの文脈だけでな く

,状

況の文脈 (経験 。 知識・認知的特性な どの様々な要素を含む),読者 によって異なる読みの方略な どの影響を 受 けなが ら角牢釈が うまれ ると指摘 してい る。 更に松本 は

,読

者 によって異なる解釈は

,社

会的相互行為 。相互作用である交流 によつ て交換 され ること

,読

みの交流 は読みの変容 をもた らす こと

,そ

の変容 には

,解

釈 の変化 としての認知的変容 と

,読

みの方略 としてのメタ認知的変容があることを指摘 している。 なお ここのメタ認知 とは, 自らの読み方 を意識す るとい う意味で

,方

略 に関わ る。 そ して松本 は

,読

みの変容でよ り重要なのはメタ認知的変容であ り

,メ

タ認知的変容 を 伴わない認知的変容

,読

みの乗 り換 えは合理的 にあ り得ないことを指摘 している。 なお, 読みの乗 り換 えとは

,他

者 の読み を簡単に取 り入れ

,自

分の読み を放棄す るよ うな読みの 転換のことである。認知的変容 を一見伴わないメタ認知的変容は読みの再確認 のよ うな形 であ り得 る。 以上の読みの交流 の過程 を

,モ

デル図に表 したものが

,以

下に示す読みの交流の理論的 モデル図である。 読者

A'メ

タ認知的変容

(+認

知的変容) ↑ 読者A‐

l←

状況の文脈

A(⊃

読みの方略

A)

解釈A・… 相互作用 ↑↓

テクス トの文脈 交換 ↓↑ ↑一状況の文脈

B(⊃

読みの方略

B)

解釈B・… 読者

B

口 典 │ 読者

B'メ

タ認知的変容

(+認

知的変容) 図

2

読みの交流の理論的モデル (松本,2006) 松本が述べ る読みの過程

,読

みの交流 の理論的モデルで重要な点は

,読

みの交流 を通 し て読みが変容す るとい うことは

,必

然的 にメタ認知的変容 も伴 う, とい うことである。つ ま り

,読

みの変容 を促す指導や評価す るための指標 として

,メ

タ認知的変容が一つの視点 とな り得 るとい うことである。 ジグソー学習は,「専門家 グループ」「ジグ ソー グループ」「全体交流」とい う三つの活動 が意図的に組み込まれ

,対

話 を段階的 に重ねてい くことに特徴がある。加 えて,「専門家 グ ループ」 と 「ジグソー グループ」では

,対

話内容 も対話相手 も異な り

,対

話せず には課題 を解決す ることができない とい う性質か らも

,読

みの解釈 を交換す ることに責任が生 じる ことになる。つま り三つの活動 を通 して

,必

然的に多様 な読みの解釈の交換 を繰 り返す と い う構成上

,メ

タ認知的変容を引き起 こす機会がよ り多 く設定 され ると考え られ る。以下

(24)

に具体的な学習の流れ とメタ認知の関係性 を記載す る。 「専門家グループ」では

,一

つの視点か らテクス トを解釈 し

,更

に同 じ視点の児童同士 で解釈 を交換す る。解釈の交換によつて

,同

じ視点同士でも解釈 に微妙な違いが生まれて い ることに気づ くことで, 自己の解釈 をメタ認知す ることになる。 次に 「ジグ ソー グループ」で異なる視点の児童 と解釈 を交換 し

,比

較す ることで グルー プ間の共通性や相違性 に気づ く。解釈 を比較す るためには

,自

分 自身や 自分の グループの 解釈 を把握 していなけれ ばな らない。 「専門家 グループ」か ら「ジグソー グループ」に移 行す る際には

,グ

ループ内で対話内容 を確認す る機会を設けることが必要 となる。すなわ ち

,自

分 自身や 自分のグループの解釈 をメタ認知す ることになる。 最後 に 「全体交流」に よつて

,小

グループでは気づかなかつた解釈の違いを

,学

級全体 とい うより大きな集団で横断的に交換す る。そ して

,最

終的な考 えを成果物 と して書 くた めには

,対

話 を繰 り返す ことによつて 自己の解釈が変容 していったことを

,児

童がメタ認 知す ることが必要である。 したがって

,ジ

グソー学習 とメタ認知は切 り離す ことができない関係性 にあ り

,む

しろ 積極的にメタ認知 を促す よ うな指導 を していかなけれ ばな らない, とい うことである。稿 者 は

,ジ

グソー学習実践の中で

,児

童のメタ認知を促す よ うな指導を取 り入れ ることで, 読みの変容 を図 ることができる,と い う仮説の根拠になるのではないか,と考 えた。なお, 実践の仮説及び具体的な手立てについては次章で述べ ることとす る。 以上の先行研 究 を通 して

,読

みの変容 にはメタ認知的変容 が重要である とい うことを, 理論的に明確 にす ることができた。 ジグソー学習において読みの変容 を図る場合で も,メ タ認知的変容に着 日して実践及び分析す る必要がある。 これ ら先行研究の理論 を基 に

,次

章では

,実

践の概要

,特

徴的な手立て

,実

践の成果 について述べてい く。

表 1  ジグソー学習実践分類表 (高 木,2016) (注 ) (文 )は 文学的文章教材 ,(説 )は 説 明的文章教材 ,(話 )は 話す こと 。聞 くこ と領域 , (書 )は 書 くこと領域 ,(伝 )は 伝統的な言語文化 と国語の特質 に関す る事項の教材である ことを示す。 小学校 中学校 高等学校読解型「だれがたべたので しょう」(説)「みぶ りでつたえる」(説)「どうぶつの赤ちゃん」(説)「お手紙」(文)(2件)「海をかつとばせ」(文)「ちいちゃんのかげお くり」(文)「夏のわすれ もの
図 8  宮沢賢治年表 を共有す る様子 113Tで は ,前 時に宮沢賢治年表を配布 し ,児 童が着 日していた 「妹の死」へ と方向付け を した。す ると「畑のヘ リ J「 め くらぶ どうと虹」グループの児童は,自 分たちが詳 しく知 らない 「妹 の死 とや まな しとの関係性」に意識が向いた。 中には図 5に 示す よ うに ,身 体 を前のめ りに して宮沢賢治年表 を確認 し ,話 し合 うグループもあつた。 これ は ,追 加資料 とい う道具が ,児 童の学ぶ意欲 を活性化 させた こ

参照

関連したドキュメント

(( .  entrenchment のであって、それ自体は質的な手段( )ではない。 カナダ憲法では憲法上の人権を といい、

手話の世界 手話のイメージ、必要性などを始めに学生に質問した。

「欲求とはけっしてある特定のモノへの欲求で はなくて、差異への欲求(社会的な意味への 欲望)であることを認めるなら、完全な満足な どというものは存在しない

ぎり︑第三文の効力について疑問を唱えるものは見当たらないのは︑実質的には右のような理由によるものと思われ

c マルチ レスポンス(多項目選択質問)集計 勤労者本人が自分の定年退職にそなえて行うべきも

 講義後の時点において、性感染症に対する知識をもっと早く習得しておきたかったと思うか、その場

のニーズを伝え、そんなにたぶんこうしてほしいねんみたいな話しを具体的にしてるわけではない し、まぁそのあとは

 今年は、目標を昨年の参加率を上回る 45%以上と設定し実施 いたしました。2 年続けての勝利ということにはなりませんでし