平成
26年
度
学位論文
スピーチ不安を抱 えてス ピーチをす るとい うこと
一大学生 を対象 とした実験的お よび質的研究一
兵庫教育大学大学院
学校教育研究科
人間発達教育専攻
臨床心理学 コース
M13073J
吉冨
理絵
目 次 第
1章
研 究 背 景 と本 研 究 の課 題 ‐… … … ‐1 第1節
社 交 不 安 とは 第2節
SADと
対 人 恐 怖 の共 通 点 と相 違 点 につ い て 第3節
社 交 不 安 の 生 起・ 維 持 プ ロセ ス につ い て 第4節
透 明性 錯 覚 につ い て 第5節
ス ピー チ場 面 につ い て 第6節
本 研 究 の意 義 と 目的 第2章
方 法 ‐… … … 8 第1節
調 査 日時 、 場 所 お よび 状 況 第2節
対 象 者 第3節
調 査 方 法 第4節
調 査 材 料 お よび 装 置 第5節
調 査 の 手順 第6節
倫 理 的 配 慮 第3章
実 験 調 査 の結 果 ‐… … … …16 第1節
調 査 対 象 者 の属 性 第2節
各 尺 度 の検 討 第3節
各 尺 度 間 の相 関 第4節
社 交 不 安 高 低2群
にお け る各 尺 度 得 点 第5節
社 交 不 安 高 低2群
にお け る心 拍 数第
5章
イ ン タ ビ ュ ー 調 査 の 結 果 と考 察 … … … …32
第6章
総 合 考 察 ‐… … … …59
引 用 文 献 ‐― ― ― ― … … … …
64
謝 辞
第
1章
研 究 背 景 と本 研 究 の 課 題第
1節
社 交 不 安 と は社 交 不 安
(social anxeity)は
人 前 で の ス ピ ー チ や 会 話 とい つ た 社 会 的 状 況 に 対 す る不 安 を指 す 。 こ の 不 安 が 顕 著 で 持 続 的 に な り,そ
の よ うな 社 会 的 状 況 を 回 避 す る こ と に よ り 日常 生 活 に 支 障 を き た す 状 態 に な る と社 交 不 安 障 害(Social Anxiety Disorder:以
下SADと
す る)と
診 断 さ れ る(American
Psychiatric Association,2013)。 生 涯 有 病 率 は 5∼
15%程
度 と報 告 され て い る(Detweiler,Comer&AlbanO,2010)。
半 年 で8%,2年
で20%,8年
経 つ て も36%の
人 が 自然 に 寛 解 せ ず,自
然 寛 解 後 も4,5年
で 約30%の
人 が 再 発 す る 難 治 性 の 疾 患 で あ る (Keller,2003)。SADは
不 安 障 害 の 中 で も最 も発 症 年 齢 が 低 く,
うつ 病 性 障 害 や 物 質 乱 用 と の 併 発 率 が 高 い(Stein&stein,2008)。
SADは
恐 怖 対 象 が 特 定 の 社 会 的 状 況 に 限 定 され る非 全 般 性 の も の (異 性 恐 怖, ス ピー チ 恐 怖,会
食 恐 怖 な ど)と
,ほ
ぼ す べ て の 社 会 的 状 況 を 恐 怖 対 象 とす る 全 般 性 の も の の2つ
の サ ブ タ イ プ に 分 類 され て い る。 第2節
SADと
対 人 恐 怖 の 共 通 点 と相 違 点 に つ い て 人 前 で 話 を す る,他
者 と交 流 す る な ど の 対 人 場 面 で 生 じ る 不 安 を わ が 国 で は 対 人 恐 怖 と して 研 究 して き た 。 笠 原 (嘉)ら
(1972)は
対 人 恐 怖 を ① 平 均 者 の 青春 期 と言 う発 達段 階 にお い て一 時 的 にみ られ るもの,②
恐怖 症 段 階 に と どま る もの,③
関係 妄想性 をは じめか ら帯び た もの,④
前統合 失調 症 状 ない しは統 合 失 調 症 の 回復 期 の症 状 と して み られ る もの とい う4つ
の段 階 に分 けた。植植 元 。村 上 ら 思 春 期 妄 想 症 笠 原(嘉) 第 4群 前 統 合 失 調 症 状,統合 失 調 症 回 復 期 に み られ る も の 山 下 緊 張 型 対 人 恐 怖 確 信 型 対 人 恐 怖
DSM‐
Ⅳ第
1群‖
第 2群
青春期に一時的‖恐怖症段階に み られ るもの に Uと どま る もの 第 3群 関 係 性 妄 想 症 を お び て い る も の (重 症 対 人 恐 怖 症) Body DysIIlorphicDisorder
Social Phobia
gel:呈:翌Zt普1びIttype
Delusional Disordersomatic type
張 型 は 人 前 で 話 す 時 や 緊 張 感 を伴 う状 況 に 直 面 して,動
悸 。発 汗 ・ ふ る え な ど が 強 くな り,赤
面 して 顔 が あ げ られ ず,あ
る い は 皆 の 視 線 を感 じて 身 動 き で き な く な る こ とが 特 徴 で あ る。「視 線 が き に な る 」「緊 張 して 身 体 が こ わ ば る 」「上 手 く話 せ な い,声
が 震 え る 」「対 人 的 に うち と け な い 」 とい つ た 各 主 題 が 直 接 に 劣 等 感 や 差 恥 心 を ひ き お こ し,自
ら人 前 を 避 け る とい う 自 己 完 結 的 な も の で あ る。 身 体 疾 患 に よ る も の で は な く,彼
ら の 性 格 そ の も の に 由 来 して い る こ とが 自覚 され て い る こ とが 多 い 。 確 信 型 は 相 手 に 不 快 感 を あ た え る 欠 点 が あ る と感 じて お り,自
分 の 欠 点 が 他 者 に 対 して 加 害 性 を 持 ち,そ
の た め 周 囲 か ら忌 避 さ れ る な どの 周 囲 の 他 者 を 巻 き 込 ん だ 症 状 構 造 が 特 徴 で あ る。 そ の 欠 点 は 相 手 か ら直 感 的 に感 じ取 られ,他
人 の 言 動 に よ つ て 裏 付 け られ る と主 張 す る 。DSM‐
Ⅳ(American Psychiatric Association,1994)の
SADと
対 人 恐 怖 症 の 関 係 をFig。1‐
1に
図 示 した (朝 倉(2012)を
筆 者 が 一 部 改 編)。 対 人 恐 怖 とSADに
は重 複 して い る 部 分 とず れ て い る部 分 が あ る。
金 井 ・ 笹 川 。陳・ 嶋 田・ 坂 野
(2007)は
社 交 不 安 障 害 傾 向 と対 人 恐 怖 症 傾 向 者 に お け る他 者 の あ い ま い な 行 動 に 対 す る解 釈 バ イ ア ス に つ い て 研 究 して お り, 社 会 不 安 障 害 傾 向 と対 人 恐 怖 症 傾 向 が と も に 高 い 者 は 低 い 者 に 比 べ て,あ
い ま い な 行 動 を否 定 的 に評 価 して お り,社
交 不 安 障 害 と対 人 恐 怖 症 に 違 い は み られ な か つ た 。 第3節
社 交 不 安 の 生 起 ・ 維 持 プ ロ セ ス に つ い て 社 交 不 安 の 生 起 。維 持 プ ロ セ ス に 関 す る3つ
の モ デ ル を 次 に 示 す1.自
己 呈 示 理 論 モ デ ル(Schlenker&Leary,1982)
社 交 不 安 に 関 す る 理 論 モ デ ル の うち 最 も 古 典 的 な も の と して,自
己 呈 示 理 論 が あ げ られ る。 ① 特 別 な 印 象 を 与 え た い と い う動 機 づ け,②
そ れ が 成 功 す る か ど うか 確 信 が 持 て な い,こ
の2つ
の 条 件 が そ ろ うこ とで 社 交 不 安 が 生 じ る。 2。Clark&Wells(1995)が
提 示 した 認 知 モ デ ル 社 交 不 安 の 高 い 人 は ,身 体 症 状 を 危 険 や 不 安 の 信 号 と判 断 しが ち で あ る(例 え ば,赤
面 して い る と笑 い も の に な る,心
臓 が ドキ ドキ して い る と コ ン トロ ー ル を失 つ て しま う,と
判 断 す る)。 ま た,他
者 か らの 否 定 的 評 価 に と らわ れ や す い 。 身 体 反 応 や 他 者 か らの 否 定 的 評 価 に 頭 が い つ ぱ い に な り,社
会 的 手 が か りに 関 す る処 理 に 偏 りが 生 じ る。 そ の 結 果,否
定 的 な 評 価 を 受 け る リス ク を 下 げ る た め に 回 避 の よ うな 「安 全 な 」行 動 に で る。「安 全 な 」行 動 を と る こ とは,友
好 的,ま
た は 社 交 的 で な い 態 度 を と る こ とに つ な が りや す い 。 そ うす る こ とで 他 者 か ら の 友 好 的 な か か わ りを 妨 げ る 可 能 性 が あ り,ネ
ガ テ ィ3.Rapee&Heimberg(1997)が
提 示 した 認 知 行 動 モ デ ル 社 交 不 安 の 高 い 人 に は,パ
フ ォ ー マ ン ス の 知 覚 の 段 階 に お い て 注 意 を 向 け て い る 情 報 資 源 に偏 りが あ る。 そ の た め,否
定 的 評 価 に 関 す る 外 的 手 が か り (周 囲 か らの フ ィ ー ドバ ッ ク);内
的 手 が か り (身体 症 状)に
注 目 して しま い 自 己 イ メ ー ジ を 喚 起 す る。 聴 衆 が 期 待 す る 「標 準 」 の パ フ ォ ー マ ン ス と 自 己 イ メ ー ジ と を 照 ら し合 わ せ ,否 定 的 評 価 を 受 け る の で は な い か と考 え る た め, 行 動 ・ 認 知 。身 体 的 な 不 安 症 状 が 生 起 す る。 ま た,こ
れ ら の 症 状 が 外 的 。内 的 手 が か り と して ま た 知 覚 され る こ と に よ り悪 循 環 が 生 じ,社
交 不 安 が 維 持 され る。 上 の3つ
の モ デ ル い ず れ に お い て も,社
交 不 安 の 高 い 人 は 他 者 の 視 点 に 影 響 され て い る こ とが 示 唆 され て い る。 第4節
透 明 性 錯 覚 に つ い て 他 者 か ら ど う見 られ て い る か を 推 測 ・ 判 断 す る と き の 認 知 バ イ ア ス の ひ とつ に 透 明 性 錯 覚 (illusion Of transparency)が あ る。 自 己 の 内 的 状 態 が 他 者 に 実 際 以 上 に 明 ら か に な つ て い る と 過 大 評 価 す る 傾 向 を 透 明 性 錯 覚 と い う(Gilovich,Savitsky&Medvec,1998)。
遠 藤(2007)は
自 己 紹 介 場 面 とい う 社 会 相 互 作 用 場 面 に お け る透 明 性 錯 覚 に つ い て 研 究 して い る。 そ の 結 果,人
前 で 話 す と き に 緊 張 を 強 く感 じ る人 は そ うで な い 人 に 比 べ て,聴
衆 に 対 しそ の 緊 張 が 明 らか な も の と して 伝 わ つ た と信 じ る程 度 が 強 か っ た 。 ま た,対
人 恐 怖 特 性 の 強 い 人 に お い て も 同 様 の こ とが 示 唆 され た 。 工 藤(2007)は
,透
明 性 錯 覚 が 未 知 の 他 者 が 相 手 の 場 合 よ り も,友
人 が 相 手 の 時 に よ り顕 著 に な る こ と を 示 した 。 鎌 田(2007)の
実 験 で は 他 者 が 日 の 前 に い る 場 合 で も い な い 場 合 で も, 透 明 性 の 錯 覚 が 認 め られ た 。透 明 性 錯 覚 が な ぜ 生 起 す る か に つ い て
,こ
れ ま で の と こ ろ,以
下 の よ うに 説 明 され て い る。他 者 が ど の よ うに 自分 を認 知 して い る か を 推 測 し よ う とす る 際, あ る 状 態 を 体 験 して い る 内 的 状 態 (思 考 や 感 情)を
強 く意 識 し,判
断 の 際 に 自 分 の 内 的 状 態 を係 留 点 と し推 測 す る。 例 え ば,ス
ピー チ をす る 時 に 緊 張 を 「90
」 感 じて い る者 が い る と して,相
手 に どれ だ け 自分 の 緊 張 が 伝 わ つ て い る か 推 測 す る 場 合,自
分 の 「90」 を係 留 点 と して,聞
き 手 が “分 か つ て い な い"程
度 は 「10」 だ と推 測 して `下 げ る'調
整 を し,聞
き 手 に は 「80」 伝 わ つ た と推 測 す る。 聞 き 手 が,話
し手 の 緊 張 の 度 合 い を 「60」 だ と評 価 す る と,透
明 錯 覚 量 は 「20」 とい うこ とで あ る (Fig。1‐2参
照)。 つ ま り透 明 性 錯 覚 は係 留 。調 整 ヒ ュ ー リス テ ィ ッ ク ス に よ つ て も た ら され る(Gilovich&Medvec,1998)。
た だ し,こ
の 過 程 が 正 しい とい うこ と を 直 接 実 証 した研 究 は ま だ な い 。一 方,“上 げ る"調
整 も 考 え う る が,こ
れ ま で の 研 究 に お い て “上 げ る"調
整 は 指 摘 され て い な い 。 90 緊 80 張 70 透 明 錯 覚 量丁
︱ ︱ る る げ 整 げ 整 上 調 下 調 60 透 明 錯 覚 量第
5節
ス ピー チ 場 面 に つ い てSADに
お い て 最 も不 安 を 喚 起 す る社 会 的 状 況 と して,ス ピー チ 場 面 が 報 告 さ れ て い る(Stein,Walker&Forde,1996)。
ス ピー チ 場 面 はSADに
お け る研 究 で 数 多 く用 い られ て お り(Cornwell,Heller,Biggs,Pine&Grillon, 2011;
Stevens,Gerlach,Cludius,Silkens,Craske&Hermann,2011;Rapee&Liln,
1992),ま
た 臨 床 場 面 で の エ ク ス ポ ー ジ ャ ー(Feske&Chambless,1995)や
ビ デ オ フ ィー ドバ ッ ク(Rodebaught,2004)に
用 い られ る 場 面 で あ る 。ま た,SAD
患 者 と疾 患 レベ ル で 無 い 高 社 交 不 安 者 の 心 理 的 反 応 や 生 理 的 反 応 に 類 似 性 が 認 め らオして お り(Turner,Beidel&Larkin, 1986;Turner,Beidel&Townsley,
1990),社
交 不 安 に お け る ア ナ ロ グ 研 究 の 妥 当 性 が 支 持 され て い る とい え る。 大 衆 の 面 前 で の ス ピー チ は 自覚 あ りな し に か 関 係 な く精 神 的 ス トレス が 大 き い こ とが 知 られ て い る。 例 え ば,米
村 と生 和(1990)は
60名
の 聴 収 に 対 し30
分 間 外 国 論 文 を 発 表 す る とい うス ピー チ 場 面 に お け る 大 学 生 の 心 拍 数 の 変 化 に つ い て 研 究 して い る。ス ピー チ 中 のHRが
最 も 高 く,平 均122.9bpm(SD=27.0)
で あ っ た 。Puigcerver,Martinez‐
Selva,Garcia‐Sinchez&G6mez‐Amor(1989)
の 研 究 で は
,社
交 不 安 の 高 い 大 学 生 と低 い 大 学 生 が ス ピー チ を 行 い,
リ ラ ク セ ー シ ョ ン 時,ス
ピー チ 予 期 時,ス
ピー チ 後 の 生 理 的 反 応 の 変 化 の 大 き さ (心拍 数,SCL,指
突 容 積 脈 波)と
不 安 の 主 観 的 側 面 を 比 較 した 。 そ の 結 果 す べ て の 生 理 的 反 応 に お い て 群 に よ る違 い は み られ な か っ た が,不
安 の 主 観 的 側 面 に 関 して は,社
交 不 安 高 群 の ほ うが 低 群 よ り も 強 い 不 安 を感 じて い た 。 ま た,官
前(2000)の
研 究 に お い て は ス ピー チ 不 安 の 高 い 大 学 生 と低 い 大 学 生 で ス ピー チ 中 の 心 拍 数 を 比 較 した と こ ろ,差
は み られ な か つ た 。第
6節
本 研 究 の 意 義 と 目的 非 臨 床 群 で あ つ て も,ス
ピー チ に 高 い 不 安 を 持 つ 者 が い る。 そ うい つ た 者 が ス ピー チ 不 安 を抱 え な が ら も ス ピー チ で き て い る際 に どの よ うな 心 理 過 程 が 起 こ つ て い る か を検 討 す る こ とで,「 な ぜ で き な い の か 」とは 違 う視 点 か らス ピー チ 不 安 を提 え た い 。 よ っ て,本
研 究 で は 大 学 生 を対 象 に 実 際 に ス ピー チ した 際 の 心 理 過 程 や,ス
ピー チ を どの よ うに捉 え て い る か を聴 収 す る。 協 力 者 を社 交 不 安 高 群 と社 交 不 安 低 群 に群 分 け しイ ン タ ビ ュ ー 内 容 を 比 較 す る。 そ れ に よ つ て 不 安 を持 ち つ つ も ス ピー チ を行 う とい う こ と を考 察 す る。 そ の 際,先
行 研 究 で 示 唆 され て い る 「高 不 安 者 は他 者 の 視 点 に影 響 され る」 こ と に 注 目 して,透
明 性 錯 覚 に つ い て も調 査 す る。 ま た,回
想 法 に よ る評 定 で は な く,ス
ピー チ 課 題 を 用 い た 実 験 場 面 を つ く り,ス
ト レス を感 じ る社 会 相 互 場 面 に お け る 心 理 過 程 を 引 き 出 す 。 ま た,生
理 的 指 標 と して 心 拍 を 測 定 し,実
験 場 面 が 実 際 に 緊 張 を す る 場 面 で あ つ た か ど うか 確 認 す る。第
2章
方 法 第1節
調 査 日時,場
所 お よ び 状 況 本 調 査 は2014年
8月
上 旬 ∼10月
下 旬 に か け て 実 施 した 。 第2節
対 象 者A教
育 大 学 に 通 う大 学 生 お よ び 大 学 院 生26名
(男性6名
,女
性20名
)で
あ つ た 。 年 齢 は23.23歳
±2.58(平
均 ±標 準 偏 差)で
あ つ た 。 第3節
調 査 方 法 本 調 査 で は 実 験 調 査 (質 問 紙,実
験 場 面)と
イ ン タ ビ ュ ー 調 査 (半 構 造 化 面 接)を
行 つ た 。 調 査 の 流 れ を Fig。2‐1に
示 す 。 ′ 実 験 の 説 明,心
拍 測 定 開 始,質
問 紙 回 答5分
間 ス ピー チ の 準 備 質 問 紙 回 答 実 験 調 査 約40分
ス ピ ー チ1分
質 問 紙 回 答5分
間 安 静 後,心
拍 測 定 終 了 イ ン タ ビ ュ ー イ ン タ ビュー 調 査 約50分
リラ ッ ク ス,リ
ー フ レ ッ トと謝 礼 Fig。2‐1調
査 の 流 れ第
4節
調 査 材 料 お よ び 装 置(1)調
査 に 使 用 した 質 問 紙 ― i。 フ ェ イ ス シ ー ト 個 人 の 背 景 と して,性
別,年
齢,住
ま い (実家 も し く は 下 宿),同
胞 の 有 無 を 尋 ね た 。 ス ピー チ ヘ の 慣 れ に影 響 す る と考 え られ る,学
年,教
員 免 許 の 所 得 状 況 (所 得 予 定 も含 む),調
査 の 直 近1週
間 の ス ピ ー チ の 回 数 (授 業 中 や ゼ ミで の 発 言 や 教 育 実 習 を 含 む)に
つ い て 問 うた 。 五。 特 性 不 安,状
態 不 安State‐
Trait Anxiety lnventory (Spielberger,Gorsuch&Lushene, 1970)
を 肥 田 野・福 原 。岩 脇 。曽 我
(2000)が
翻 訳 した「状 態 ― 特 性 不 安 尺 度(State‐TraitAnxiety lnventory‐
Form JYZ:以
下 STAI)」 を 用 い た 。個 人 の 情 緒 状 態 と して の 不 安 と個 人 の パ ー ソナ リテ イ 特 性 と して の 不 安 を状 態 不 安 と特 性 不 安 と定 義 し,作
成 され た も の で あ る。 状 態 不 安 尺 度 (STAIY‐1)は
,「 今 ま さ に ど の よ うに 感 じて い る か 」 を 評 価 させ る も の で,特
性 不 安 尺 度 (STAIY‐2)は
,「 普 段 一 般 に どの よ うに感 じて い る か 」 を評 価 させ る も の で あ る。 状 態 不 安 と特 性 不 安 そ れ ぞ れ20項
目,計
40項
目か ら な り,4件
法 で 回 答 を 求 め る検 査 で あ る。 状 態 不 安 は ス ピー チ の 準 備 が 終 わ つ て か ら,ス
ピー チ の 直 前 に 回 答 させ た 。iii.
抑 うつ「 自 己評 価 式 抑 うつ 性 尺 度 (Self‐
rating Depression Scale:以
下 SDS)」 を用 い た 。
Zung(1965)に
よ つ て 作 成 され た 抑 うつ 症 状 を は か る 尺 度 で あ る。 福 田 。小 林(1973)が
翻 訳 して お り,20項
目か ら な る。4件
法 で 回 答 を 求 め陳 ・ 鈴 木・ 嶋 田・ 坂 野
(2004)が
翻 訳 した 「Social Phobia Scale日 本 語 版 (以 下 SPS)」 を 用 い た 。 こ の 尺 度 は 他 者 か ら観 察 され る社 会 的 状 況,主
と して 人 前 で の パ フ ォ ー マ ン ス 状 況 に 対 す る 恐 怖 を 測 定 す る。 非 全 般 性 の 社 会 不 安 に 対 応 す るFNEと
は 中程 度 の 正 の 相 関 が あ つ た (金 井 ら,2004)。20項
目か ら な り5件
法 で 回 答 を 求 め る。 v。 他 者 か らの 否 定 評 価 に 対 す る 恐 れWatson&Friend(1969)が
作 成 したFear of Negative Evaluationを
石 川 。 佐 々 木 。福 井(1992)が
翻 訳 し 日本 語 版Fear of Negative Evaluationを
作 成した 。 日本 語 版
FNEを
参 考 に 笹 川 ・ 金 井 。村 中・ 鈴 木 。嶋 田 。坂 野(2004)
が 作 成 した「短 縮 版
Fear of Negative Evaluation Scale日
本 語 版 (以下FNE)」
を 用 い た 。 こ の 尺 度 は 社 会 不 安 を維 持 させ て い る要 因 の ひ とつ と考 え られ る他者 か らの 否 定 的 評 価 を どの 程 度 恐 れ て い る か を 測 定 す る も の で あ る。
12項
目か らな り5件
法 で 回 答 を 求 め る。宙
.
ス ピー チ 不 安大 渕
(1991)が
Slivken&Buss(1984)を
翻 訳 し作 成 した「Speech Anxiety
Scale日
本 語 版 (以 下 SAS)」 を 用 い た 。 特 に ス ピー チ 不 安 に 焦 点 を あ て た 尺 度 で あ る。 ス ピー チ 不 安 の様 々 な 側 面,す
な わ ち,回
避,事
前 の 不 安,自
意 識, 緊 張,ス
ピー チ 中 の 混 乱 な どが こ の 質 問 紙 に よ つ て 測 定 され る。5項
目か ら な り5件
法 で 回 答 を 求 め る。vii.
ス ピー チ の 自 己 。他 者 評 価 城 月・笹 川 。野 村(2010)が
Rapee&Lim(1992)を
翻 訳 し作 成 した「Speech
Perception QuestiOnnaire日
本 語 版 (以 下 SPQ)」 を用 い た 。 こ の尺 度 は,ス
ピー チ 場 面 で の 自己評 価 と他 者 評 価 の 両 方 を測 定 す る こ とに よ つ て,
自己評 価 の歪 み につ い て評 価 を行 うこ とが で き る。17項
目か らな り5件
法 で 回 答 を求 め る検 査 で あ る。 本 実 験 で は 自己評 価 と,ビ
デ オ を見 た観 察 者 の評 価 とを比 較 した 。
(2)実
験 に 使 用 した 装 置i.
心 拍 測 定 機 器心 拍 の 測 定 は
,Thought Technology社
製 バ イ タ ル モ ニ タ ー(ProComp
lnfiniti,CA2563)を
用 い た 。 協 力 者 の 胸 部 に 専 用 電 極 を 装 着 し測 定 した 。 デ ー タ は そ の 場 で 専 用 イ ン タ ー フ ェ イ ス に て パ ー ソ ナ ル コ ン ピ ュ ー タ ー 内 のBioGraph lnfiniti(Thought Technology,Canada)に
取 り込 ん だ 。R‐R間
隔 の 周 波 数 解 析 を 行 い,心 拍 数 (HR)。 高 周 波 成 分(High frequency component;0。
15∼
0.4Hz,以
下 HF)。 低 周 波 成 分(Low frequency component:0.04∼
0。15Hz,以
下
LF)を
求 め た 。 ま たLFを
HFで
除 したLF/HFを
算 出 した 。 本 調 査 で は,HFを
副 交 感 神 経 の 指 標,LF/HFを
交 感 神 経 の 指 標 と して 用 い た 五.
ス ピー チ 中 の 使 用 機 器 ス ピー チ の 準 備 中 に は,ス
トップ ウォ ッチ を貸 与 した 。 ス ピー チ 中 は ビデ オ カ メ ラ に 向 か つ て ス ピー チ させ た 。 ビデ オ カ メ ラ ま で の 距 離 は 協 力 者 の つ ま 先 か ら ビデ オ カ メ ラ の 三 脚 の 先 ま で 72 cIIlで あ つ た 。 ビデ オ カ メ ラ の 高 さ は 95 clll で あ つ た 。(3)イ
ン タ ビ ュ ー 項 目 半 構 造 化 イ ン タ ビ ュ ー の 項 目 を Table 2‐1(12頁
参 照)に
示 した 。 イ ン タ ビ ュ ー 項 目の 作 成 に あ た り,ま
ず 筆 者 が 作 成 した13項
目 (付 録1参
照)の
妥 当 性 を 検 討 す る た め に2名
に 対 し予 備 的 に調 査 を行 つ た 。 こ の 結 果 を ふ ま え,臨
錯 覚 の 質 問項 目 と して⑤ と⑥ を用 意 し
,質
問項 目⑤ で 得 られ た数 値 を<緊
張 度>と
し,質
問項 目⑥ で得 られ た数 値 を<印
象 推 測>と
した。 Table2‐2.イ
ン タ ビ ュ ー 項 目 ① ス ピー チ の 直 前 の思 考 や 感 情,身
体 の感 覚 は ど うだ っ た で し ょ うか。い くつ か 教 えて くだ さい 。 ② ス ピー チ を始 め た ば か りの 思 考 や 感 情 や,身
体 の感 覚 は ど うだ っ た で し ょ う か 。③ ス ピーチの途 中
,真
ん 中あた りの思考や感情
,身
体 の感覚は ど うだったで しょ
っ か 。 ④ ス ピー チ 直 後 の 思 考 や 感 情,身
体 の感 覚 は ど うだ っ た で し ょ うか。 ⑤ ス ピー チ の 間 どれ く らい 緊 張 しま した か?ま
っ た く緊 張 して い な い が1,非
常 に緊 張 して い るが6だ
とす る と,い
く ら く らい です か?
⑥ 見 て い る人 は あ な た が どの程 度 緊 張 して い る と思 つ た で し ょ うか。ま っ た く緊 張 して い ない が1,非
常 に緊 張 して い る が6だ
とす る と,い
く ら く らい です か?
⑦ この 実 験 に参 加 して くだ さつ た理 由 は あ ります か ? ③ 今 日の ビデ オ 前 で の 発 表 は 人 が 実 際 に 見 て い る場 面 と ど うい う風 に違 い ま し た か?
⑨ 最 近 ス ピー チ しま した か?ど
の よ うな ス ピー チ だ っ た の で し ょ うか。(自 分 以 外 の 誰 か が 見 て い る場 面 で,何
か を話 す とい う場 面 だ つ た らな ん で も い い で す 。授 業 で の発 表 で もか ま い ませ ん)そ
の 時 の思 考 や 感 情,身
体 の感 覚 は ど う だ っ た で し ょ うか。 ⑩ 過 去 に ス ピー チ の成 功 経 験,失
敗 経 験 は あ ります か?
(成功 経 験 が 出 な か つ た ら)い
つ もの ス ピー チ は どの よ うな感 じです か?失
敗 した と感 じな か つ た ス ピー チ は あ りま した か。 ① さき ほ どの体 験 か ら,ス
ピー チ をす る時 には工 夫 して い る点 は あ ります か?さ
き ほ どの 体 験 と関係 な く,工
夫 して い る点 も教 え て くだ さい 。(それ は い つ か ら)メ
モ の活 用 は どの よ うに して い ます か?
⑫ ス ピー チ に抵 抗 感 は あ ります か?
⑬ 普 段 ス ピー チ を避 け て しま う場 面 は あ ります か?そ
の 時 の 気 持 ち を教 え て く だ さい。ス ピー チ を避 け な い場 面 は あ ります か?そ
の 時 の気 持 ち を教 えて くだ さい。 ⑭ 自分 か ら進 ん で 人 前 で話 す とき は あ ります か?
⑮ ス ピー チ をす る時 は不 安 は あ ります か'
<な
い 場 合>
不 安 で は な い の は なぜ で し ょ うか。<あ
る場 合>
不 安 に な るの は なぜ だ と思 い ます か。 不 安 を改 善 した い と思 い ます か?
改 善 した い場 合 は,
ど うす れ ば 改 善 され るで し ょ うか。 ⑬ 不 安 を感 じるス ピー チ,不
安 を感 じな い ス ピー チ は あ ります か?
⑭ ス ピー チ に 関 して,こ
れ か ら 自分 に ど うい うこ とを期 待 します か?
⑬ さき ほ どの ス ピー チ で は① が どれ ほ ど達 成 で きて い ま した か?
(4)他
者 評 価 用 の 質 問紙 自己評 価 用SPQと
質 問 項 目は 同 じで あ り,知 り合 い か ど うか を ○ か ×で評 価 す る こ と,話
し手 の緊 張 度 を 1∼6で
評 価 す る項 目を付 け加 え た。 第5節
調 査 の 手 順(1)実
験 の 説 明 と 同 意 書 の 記 入 調 査 協 力 者 募 集 用 紙 (付 録2参
照)を
大 学 構 内 で 配 布 し,協
力 許 可 が得 ら れ た者 とメー ル に て連 絡 を と り,後
日調 査 を行 つ た。① 研 究 目的 。研 究 の流 れ, ② 面 接 の 内容 を録 音 す る こ と,③
研 究 へ の参 加 は協 力 者 の 自由意 思 で あ り,研
究 へ の参 加 は い つ で も拒 否・ 撤 回 で き る こ と。 ま た これ に よ つ て 協 力 者 が 不 利 益 を受 けな い こ と,④
記 録 は個 人 を特 定 で き な い よ う処 理 す る こ と,⑤
協 力 者 の プ ライ バ シー は遵 守 され る こ と,を
事 前 に説 明 し,同
意 書 (付 録3参
照)に
署 名 を求 め た。 研 究 の説 明 の 際 に ビデ オ カ メ ラ で あ な た が どれ ほ ど緊 張 して い た か な ど と評 定 され る と教 示 した。(2)心
拍 の測 定 心 拍 測 定機 器 の装 着 の仕 方 を教 示 した の ち (付 録4参
照),協
力 者 に 自分 で 装 着 させ た。 そ の 間調 査 者 は 室 外 で待 機 して い た。(3)質
問紙 の記 入 フ ェイ ス シー ト,STAIの
特 性 不 安 尺 度,SDS,短
縮 版FNE,SPS,SASの
順 に 回 答 させ た。 (付 録5参
照)(4)ス
ピー チ の 準 備 紙 面 上 (付 録6参
照)に
て ス ピー チ の テ ー マ 「1分
間 で あ な た の こ とにつ いる つ も りで ス ピー チ を 行 つ て くだ さ い 」 と再 度 教 示 した 。
5分
間 協 力 者 に ス ピ ー チ の 準 備 を させ た 。 そ の 間 調 査 者 は 別 室 に 待 機 して い た 。(5)ス
ピー チ の 直 前 に 質 問 紙 記 入 協 力 者 にSTAIの
状 態 不 安 尺 度 を 回 答 させ た 。 (付 録5参
照)(6)ス
ピー チ,質
問 紙 記 入 立 っ た 状 態 で1分
間 の ス ピ ー チ を さ せ た 。 調 査 者 と 協 力 者 の 位 置 関 係 を Fig。2‐2に
示 した 。 ス ピー チ 後 にSPQを
回 答 させ た (付録5参
照)。(7)安
静 状 態5分
間 安 静 に した 状 態 で5分
間 心 拍 の 測 定 を した 。 調 査 者 は そ の 間 別 室 に て 待 機 し て い た 。 そ の 後,調
査 者 は 室 外 に待 機 し協 力 者 自身 に 心 拍 の機 器 を 外 させ,心
拍 の 測 定 を 終 了 した 。(8)イ
ン タ ビ ュ ー 録 音 しな が ら,イ
ン タ ビ ュ ー 項 目 (Table2‐1,12頁
参 照)に
した が い イ ン タ ビ ュ ー を行 つ た 。 く:)協
力 者 ビデ オ カ メ ラo調
査 者 Fig。2‐2ス
ピー チ 中 の 調 査 者 と協 力 者 の位 置 関係(9)他
者 評 定 臨床 心 理 学 を学 ぶ 大 学 院 博 士課 程 に所 属 す る3人
(評価 者)が質 問紙(SPQ,
付 録7参
照)に
て録 画 した ス ピー チ を見 て評 定 した。 ま た透 明性 錯 覚 の 指 標 と して,話
し手 の 緊 張度 を1か
ら6で
評 定 させ た。 い ず れ の話 し手 (協 力 者)と
評 価 者 の 間 に は面識 は な か っ た。SPQと
緊 張度 は評 価 者3名
の 平 均 値 を求 め, 他 者 評 価 の値 と した。 第6節
倫 理 的 配 慮 イ ン タ ビ ュ ー 後 に 不 安 が 高 い よ うで あ れ ば 文 部 科 学 省 文 部 省 教 育 助 成 局(1995)を
参 考 に した 呼 吸 法,ま
た は 冨 永(2011)を
参 考 に した 肩 の リ ラ ッ ク ス 法 を 実 施 で き る よ うに 準 備 し,ス
ピー チ 不 安 に 関 す る リー フ レ ッ ト (付 録 8 参 照)を
渡 した 。 実 際 に リ ラ ク セ ー シ ョ ン を 実 施 した 者 は12名
で あ り,そ
の 後 に 協 力 者 よ り心 身 の 不 調 は 報 告 され て い な い 。第
3章
結 果 第1節
調 査 対 象 者 の 属 性 協 力 者 男 女 別 属 性 等 を Table3‐ 1∼ 3‐5に
示 す 。 居 住 形 態 に つ い て は,一
人 暮 ら しの 者 が 多 か っ た 。 同胞 に つ い て は,同
胞 な しの 者 が1人
で あ つ た 。 ま た, 教 員 免 許 を 持 つ も の (取 得 予 定 を 含 む)と
,教
員 志 望 者 が 多 か っ た の は,調
査 対 象 者 が 教 育 大 学 の 学 部 生,修
士 課 程 に 所 属 す る も の で あ る こ と に よ る。 調 査 の 直 近1週
間 の ス ピー チ 回 数 は 0。81±0。90回
(平 均 ±標 準 偏 差)で
あ つ た 。 Table3‐1協
力者 の居 住 形 態全体
男性
(Il-0
女性(n=20
実 家 一 人暮 ら し 5 15 1 5 6 2。 Table3‐2
協 力者 の 同胞 有 無 全 体男性
(n=0
女性(n=20
同胞 な し 同胞 あ り 0 2。 1 5 1 25 Table3‐3
協 力者 の 教 員免 許 有 無 教 員 免 許 取 得 あ り (取 得 予 定) 教 員 免 許 取 得 な し 全 体男性
(Il―③
女性(n=20
16 10 5 1 ■ 9 Table3‐4
協 力者 の 教 員 志 望 の 有 無全体
男性
(n=0
女性(n=20
教 員 志 望 そ の他10 4
16 2
6
14 Table3‐5
協 力者 の ス ピー チ 回数 (調査 直 近 の 1週 間)全体
男性
(n=0
女性(n=20
1回 以 上 0回14 3
12 3
119
第
2節
各 尺 度 の検 討 他 者 評 価 の尺 度 で あ る 「他 者 SPQ」 と 「聞 き手 印象 」 にお け る評 定 者 間 の一 致 度 を級 内相 関係 数(ICC)と
して算 出 した。他 者SPQに
お い て,評
価 者 間 に 中程 度 の信 頼 性(ICC(1,1)=.54),評
価 者 平 均 値 は 高 い 信 頼 性 が認 め られ た(ICC(1,3)=.78)。
緊 張 度 に お い て,評
価 者 間 に 中程 度 の信 頼 性 が 認 め られ(ICC(1,1)=。
406),評
価 者 平 均 値 の信 頼 性 は ほ ぼ 高 い と言 え る(ICC(1,3)
=。673)。 各 尺 度 に つ い て,男
女 差 を 検 討 す る た め に 男 女 別 の 平 均 値 を 算 出 し,Mann‐
Whitneyの
U検
定 を 行 つ た 。 (Table3‐6)そ
の 結 果,STAIの
特 性 不 安 得 点 に お い て 男 女 差 が 有 意 で あ つ た(y=21.50,出
牲24,p<.05)。
Table3‐6
男 女別 の尺 度得 点 男性(n=0
女性(n=20
平均標準偏差 平 均 標 準 偏 差 ρ ※ 緊 張 度 合 印 象 推 測 聞 き手 印 象
STAI特
性 不 安 STAI状態 不 安SDS
FNE
SPS
SAS
SPQ(自
己評定)SPQ(他
者評定) 3.50 3.67 3.33 53.00 46.67 43.17 36。83 26.50 15。33 34。17 24.17 1.23 1.63 .82 4.98 12.75 2.98 10。23 20.33 4.41 12.48 7.68 3.50 3.50 2.80 44.05 48.90 39.80 39.60 24.00 15。20 32.75 22.45 。95 1.28 .77 7.64 9。25 7.07 10.57 8。97 3.98 7.31 4.75 。929 .929 。196 .016* 。700 .176 .421 .929 .929 。929 .929 tρ <,05,**′ く・01,**lρ <.001 ※Mann‐Whitneyに よるU検
定ま た
,教
員 免 許 を 持 つ 者 と持 た な い 者 の 差,教
員 志 望 で あ る者 と志 望 で な い 者 の 差 を 検 討 す る た め に 各 尺 度 の 平 均 値 を 算 出 し,Mann‐
Whitneyの
U検
定 を 行 つ た(Table3‐7,3‐8)。 そ の 結 果 有 意 な 差 は な か つ た,つ
ま り人 の 前 で 話 す 機 会 が 多 い と考 え られ る職 業 特 性 と,社
交 不 安 ・ ス ピー チ 不 安 と の 間 に 関 係 は な か つ た 。 Table3‐7教
員免 許 の有 無別 の尺 度 得 点 教 員免 許 あ リ ロ取 得 予 定(n=lo
教 員免 許 な し(n=10
平 均標 準 偏 差 平 均
標 準 偏 差
ρ※ 緊 張 度 合 印 象 推 測 聞 き手 印 象
STAI特
性 不 安 STAI状態 不 安SDS
FNE
SPS
SAS
SPQ(自
己評定)SPQ(他
者評定) 3.56 3.50 3.06 45.94 46.44 39。38 36.88 24.19 13。94 33。25 23.13 1.03 1.27 .85 7.81 10。68 4。90 11.18 13.24 3.70 9。52 6.39 3.40 3.60 2.70 46.40 51.50 42.50 42.30 25.20 17.30 32.80 22.40 。97 1.51 .68 8.73 8.11 8.33 8.33 10。48 3.71 7.02 3.69 .698 .816 。220 .698 。220 。262 .220 。938 .053 .938 .737 lρ <,05,'lρ <.01,**tρ く。001 ※Malln‐Whitlleyに よるU検
定Table3‐
8教
員志望の有無別の尺度得点 教員志望(■=10
教 員 以外(n=10
平 均 標 準 偏 差 平 均標 準 偏 差
ρ※ 緊 張 度 合 印 象 推 測 聞 き 手 印 象
STAI特
性 不 安STAI状
態 不 安SDS
FNE
SPS
SAS
SPQ(自
己評定)SPQ(他
者評定) 3.80 3.40 3.20 46.30 48。20 39.00 40.00 27.90 15.20 34.50 23.60 1.14 1.27 1.03 8.49 11.16 4.99 11.13 14.46 3.46 11。22 8.07 3.31 3.63 2.75 46.00 48。50 41.56 38.31 22.50 15。25 32。19 22.38 .87 1.41 .58 7.98 9。45 7.21 10。16 10.20 4.41 6.52 3.07 。220 。623 .121 .938 .856 .363 .776 .232 .988 。737 .776 tρ <,05,**′ <・01,ヤ*lρ く.001調 査 の 直 近
1週
間 で ス ピー チ を した 者 と しな か っ た 者 の 差 を 検 討 す る た め に 各 尺 度 の 平 均 値 を 算 出 し,Manh‐ Whitneyの
U検
定 を 行 つ た(Table3‐9)。 そ の結 果 有 意 な 差 は な か っ た
,調
査 の 直 近1週
間 の うち に ス ピー チ を した か ど うか に つ い て は 社 交 不 安 ・ ス ピー チ 不 安 に影 響 を 与 え る も の で は な か っ た 。 Table3‐9 ス ピー チ (直 近 1週 間) の 有 無 別 の 尺 度 得 点 ― チ 回 数1回以 上(■=1 ス ピーチ回数0(F10
平 均標 準 偏 差 平 均
標 準 偏 差 ρ ※ 緊 張 度 合 印 象 推 測 聞 き手 印 象
STAI特
性 不 安 STAI状態 不 安SDS
FNE
SPS
SAS
SPQ(自
己評定)SPQ(他
者 評 定) 3.29 3.36 2.98 47.00 46.07 41.14 42.36 26。43 16.07 31.14 23.14 .91 1.39 .83 9.86 8.43 8.01 7.86 12.42 3.60 8.24 3.48 3.75 3.75 2.92 45.08 51.08 39.92 35.00 22.42 14。25 35。33 22.50 1.06 1.29 .79 5。35 11.17 4。27 11.79 11.73 4。35 8.57 7.24 .252 .494 .899 .560 .145 .781 。160 .899 。274 .176 .560 tρ <,05,黎*ρ <・01,・彙黎′く。001第
3節
各 尺 度 間 の 相 関 各 変 数 に お け る 記 述 統 計 量 お よ び 相 関 係 数(Spearman)を
Table3‐10に
示 した 。<緊
張度>と
<SPQ(自
己評価)>,<STAI特
性 不安>と
<SDS>の
間 に 高 い相 関が認 め られ た。<緊
張度>と
<聞
き手 印象>,<STAI状
態 不安>,
<SAS>と
の間 に 中程 度 の,そ
れ ぞれ 有意 な相 関が認 め られ た。<印
象 推測>
と<SPS>,<聞
き手 印象>と
<SPQ(自
己評価)>,<聞
き手 印象>と
<SPQ
(他者 評価)>,<STAI状
態 不安>と
<SAS>,<STAI状
態 不 安>と
<SPQ
(自 己評価)>,<SAS>と
<SPQ(自
己評価)>,<SPQ(自
己評 価)>と
<SPQ(他
者 評価)>間
に 中程 度 のそれ ぞれ 有意 な相 関が認 め られ た。 Table3-10 各変数における記述統計量および相関係数CSpearmaD 平 均値 標 準 偏 差mm‐max 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 1.爵モ引昆層電 3.50 0.99 2‐ 5 .35 .50'= .06 .50'= .05 .05 .19 .48' .70*オ .39 4.STAI特性 不 安 46.12 8.01 32‐ 62 5.STAItた 現巌フトヨそ 48.38 9.92 29‐ 66 2.印象推測 3.聞き手印象 6.SDS 7.FM 8.SPS 9.SAS 3.54 1.33 1‐6 2.92 0.80 1‐4 40.58 6.46 30‐54 38.96 10.36 20-56 24.58 12.04 2-58 15.23 3.99 6‐ 23 10.SPQ(自己評価)33.08 8.49 22‐53 11.SPQ (lL星 争ヨ平綱田) 22.85 5.43 9‐36 24 .12 .24 .18 .22 .47= .06 .24 ‐.13 .29 .13 .19 -.01 .06 .26 .53'オ .68■■ .14 .76** .26 .35 .31 .30 .09 .35 -.10 .27 .47■ .51'オ .12 .11 .28 .18 .34 .04 .28 .18 .34 .04 .39 .12 ‐.18 .42オ .31 .56=` tρ く,05,*=ρ く・01,=*lρ く.001第
4節
社 交 不 安 高 低2群
に お け る 各 尺 度 得 点 本 調 査 で はSPSの
値 に よ つ て 協 力 者 の 群 分 け を 行 っ た 。SASを
用 い た 研 究 は 少 な く,信
頼 性 。妥 当 性 は 明 らか に され て い な い 。 対 して,SPSは
人 前 で の パ フ ォ ー マ ン ス 状 況 に 対 す る恐 怖 を 測 定 す る尺 度 と して 信 頼 性 ・ 妥 当性 が 認 め られ て い る。 よ つ て 本 調 査 で はSPSに
よ つ て 群 分 け を行 つ た 。SPSの
値 が 平 均 値 以 上 の 者 を社 交 不 安 高 群 (男性3名
,女
性8名
),平
均 値 以 下 の 者 を 社 交 不 安 低 群 (男性3名 ,女
性12名
)と し協 力 者 を2群
に 分 け た 。 各 尺 度 に つ い て,2群
の 差 を 検 討 す る た め に 高 群,低
群 別 に 平 均 値 を 算 出 しMann‐
Whitneyの
U検
定 を 行 っ た(Table3‐ 11)。 そ の 結 果,印
象 推 測 に 有 意 な 差 が あ つ た(y=31.50,出
牲 24,′<.01)。 つ ま り,社
交 不 安 高 群 の 方 が 印 象 推 測 が 高 か つ た 。 Table3‐11
社 交 不 安 高 低 群 別 の尺 度 得 点 社交不安高群(n=10
社交不安低群(n=lo
平均標準偏差 平 均 標 準 偏 差 ρ ※ 緊 張 度 合 印 象 推 測 聞 き 手 印 象
STAI特
性 不 安 STAI状態 不 安SDS
FNE
SPS
SAS
SPQ(自
己評定)SPQ(他
者評定) 3.64 4。36 2.91 47.91 51.91 41.64 39.00 34.91 16。18 33。18 21.00 1.03 1.12 .94 7.80 8。94 5.33 9.78 9。62 5。12 8。66 6.03 44.80 45。80 39.80 38。93 17.00 14.53 33.00 24.20 .99 1。16 。70 8.16 10。09 7.26 11.10 6.88 2.92 8.68 4.69 .540 .006* 。919 .330 。180 .413 .838 .000* .259 。919 .134 0 3 3 4 9 9 3 2 2 'p<,05,**′ <・01,'**′ <.001 ※Malln‐WhitlleyによるU検
定第
5節
社 交 不 安 高 低2群
にお け る心拍 心 拍 を測 定 し始 め て① 最 初 の5分
間,②
ス ピー チ の テ ー マ を発 表 しス ピー チ の 準備 期 間 ま で の6分
間,③
ス ピー チ 中 の1分
間,④
安 静 状 態 の5分
間 のHR
の 平 均 値 を算 出 した。1名
の協 力 者(#3)に
つ い て はデ ー タ に欠 損 が あ るた め 分 析 か ら除 外 した。 社 交 不 安 高 群 と低 群 で 群 分 け し,平
均 した もの を Fig。3‐1 に示 した。 ス ピー チ 中 のHRが
最 も高 く,次
い で テ ー マ 発 表 か ら準備 期 間 の 6 分 間 のHRが
高 い こ とが 分 か る。2(群
:社
交 不 安 高群 。社 交 不 安 低 群)×
4(時
期:①
・ ②o③
・ ④)の
2要
因分 散 分 析 を行 つ た。 時 期 の 主 効 果 が み られ(F(3,69)=18.28,′
=.000),群
の 主 効 果 は み られ な か つ た(F(1,23)=.88,′
=。983)。 時 期 と群 の 交 互 作 用 は み られ な か つ た(F(3,69)=.79,ρ
=.572)。 時期 につ い て 多 重 比 較 を行 うと有 意 な差 が あ つ た の は,時
期 ① と時 期 ② (′ =。000),時
期 ① と時期 ③ (′ =.000),時期② と時期③し =.004),時 期③ と時期④
("=.000)で
あつた。時期① と時
期④には有意な差がなかった
(′=1.000)。
つまり
,①
から②
,②
から③へ と
HRは
上昇 し
,④
では① と同じ程度まで下降 した。
HR(1自ノ分) ― 社交不安高群 ―o―社交不安低群 110 120 70 ヽ ︱ ︱ ︱ ノ の で ま 間 期 備④
畔
チ 一 間 ピ 分 R ス 5 H 一 ④ 不②
肴
分
間
,
輩
岬
¨
校
の , 1陸
F
i
g
・
3
¨
HFを
社 交 不 安 高 群 と低 群 で そ れ ぞ れ 平 均 し た も の を Fig。3‐2に
示 し た 。Fig3‐
2を
み る と,は
じ め のHFが
高 く な っ て い る。2(群
:社
交 不 安 高群 。社 交 不 安 低 群)×
4(時
期:①
o② o③ o④
)の
2要
因分 散 分 析 を行 つ た。時期 の 主 効 果 が み られ(F(1.84,42.36)〓
5.01,P=.013),
群 の 主 効 果 は み られ な か っ た(F(1,23)=.87,ノ
=.869)。 時期 と群 の 交 互 作 用 は み られ な か つ た(F(1.84,42.36)=.88,′
=.983)。 時 期 に つ い て 多 重 比 較 を行 うと時 期 ① と時 期 ② (′=.035)に
有 意 な 差 が認 め られ た。 時期 ① と時 期 ③ (′ =。099),時
期① と時期④
(′=1.000),時
期② と時期③し
=1.00),時
期③ と時
期④
(′=1.00)に
は有意な差がなかった。つまり
,①
か ら②にかけて
HFは
有意に下降 し
,そ
の後③ と④まで維持された。
HF 12000 10000 8000 6000 4000 2000 ヽ ︱ ︱ ︱ ノ の で ま 間 期 備 準 ④ の チ 一 間︶
餃
薇
ス 中 一局 ② チ 安①
5分間,
③スピ
時
.
の ―●―社交不安高群 ―o―社交不安低群LFノ
HFを
社 交 不 安 高 群 と低 群 で そ れ ぞれ 平 均 した もの を Fig。3‐3に
示 した。 Fig。3‐3を
見 る と,③
のLF/HFが
両群 とも に高 く,社
交 不 安 高 群 で は④ で急 激 にLF/HFが
下 が つ て い る。2(群
:社
交 不 安 高群 。社 交 不 安 低 群)×
4(時
期:① o②
・ ③o④
)の
2要
因分 散 分 析 を行 つ た。 時 期 の 主 効 果(F(1.32,30.31)=1.36,′
=.263),群
の 主 効 果(F(1,23)=.03,′
=.864),時
期 と群 の 交 互 作 用 (F(1.32,30。 31)=。15,P
=.929)は
み られ な か っ た。 ― 社交不安高群 ―o―社交不安低群 ヽ ︱ ︱ ︱ ノ の で ま 間 期 備 準 の チ テ , 不①いい
時
初
間
3
撃
・4 F︲
・, ︲
﹁ ︲
町
嵐
﹁
﹁
■
2 ︲
0
︲
f ①
い
遷
観 ・4 ・2 ・0 ① 6 ・ g.︰ F第
6節
緊 張 の 透 明 性 錯 覚 協 力 者 全 体 に お い て 話 し手 自身 に お け る 緊 張 の 印 象 推 測 (平 均3.54,標
準 偏 差1.33)と
聞 き 手 印 象 (平 均2.92,標
準 偏 差.80)を
比 較 した と こ ろ,前
者 は 後 者 よ り有 意 に 高 か つ た(`=2.31,′
=.029)。 つ ま り 自 己紹 介 場 面 で の 緊 張 の 透 明 性 錯 覚 が 確 認 され,話
し手 は 他 者 が 知 覚 す る以 上 に 自分 の 緊 張 が 他 者 に伝 わ っ た とそ の 程 度 を過 大 に評 価 した 。 しか し,緊
張 度 と印 象 推 測 に 有 意 な 相 関 が 認 め られ て い な い 。 先 行 研 究 で は,印
象 推 測 は 体 験 の 強 さ を係 留 点 と して そ れ を `下 げ る'形
で 調 整 した も の で あ る と示 唆 され て い る が,本
調 査 で は 体 験 した 緊 張 度 に 関 わ らず,透
明 性 錯 覚 が 確 認 され た 。 次 に 内 的 体 験 の 強 度 に よ つ て 透 明 性 錯 覚 の 大 き さ が 異 な る か を 検 討 した 。 緊 張 度 (1∼6)が
1∼3の
者 を 緊 張 低 群(n=12,平
均=2.58,標
準 偏 差 =。49), 4∼5の
者 を 緊 張 高 群(n=14,平
均=4.29,標
準 偏 差 =。45)と
した 。 緊 張 度 が6の
者 は い な か つ た 。 緊 張 高 群 の 方 が 緊 張 が 高 い こ と を確 認 す る た め に,4
を 基 準 値 と した1サ
ン プ ル のt検
定 を 行 つ た と こ ろ,有
意 な 違 い が 認 め られ た (`=‐ 2.58,′ =.016)。緊 張 高 群 と低 群 ご と に 印 象 推 測 と 聞 き 手 印 象 の 平 均 値 を 求 め (Table3‐12, Fig3‐
4),2(緊
張 度:緊
張 度 高 群 ・ 緊 張 低 群)×
2(視
点 :印象 推 測 ・ 聞 き 手 印 象)の
2要
因 分 散 分 析 を 行 つ た 。結 果,群
の 主 効 果(F(1,24)=7.20,′
=.013) と視 点 の 主 効 果(F(1,24)=4.99,P=.035)が
有 意 で あ つ た 。 群 と視 点 の 交 互 作 用 は 見 られ な か つ た(F(1,24)=1.65′
′ ‐2″
)。 Table3…12
印象 推 測 と聞 き手 印象 の 平 均 値 印象 推 測聞 き手 印象 緊 張 高 群 緊 張 低 群
( )は
標 準 偏 差 ― 難 高群 ― 緊 張 麟 E「象推澤1 聞き手E「象 Fig。3‐4
緊 張 高 群 ・ 低 群 に お け る 印 象 推 測,聞
き 手 印 象 の 平 均 値 4.07(1.2つ 2.92(1。1つ 3.14(。80
2.67(。6D
社 交 不 安 高 群
(n=15)と
低 群 (■=H)で
は,緊
張 度 と 聞 き 手 印 象 に 有 意 な 差 が 認 め られ な か つ た が,印
象 推 測 に は 有 意 な 差 が 認 め られ た (Table3‐9,19
頁 参 照)。 社 交 不 安 の 高 低 に よ つ て 透 明 性 錯 覚 の 大 き さ が 異 な る か 検 討 した 。 社 交 不 安 高 群 と低 群 ご と に 印 象 推 測 と聞 き 手 印 象 の 平 均 値 を 求 め (Table3‐ 13,Fig。3‐5),2(社
交 不 安:社
交 不 安 高 群 。社 交 不 安 低 群)×
2(視
点:印
象 推 測 。聞 き 手 印 象 )の2要
因 分 散 分 析 を 行 つ た と こ ろ ,群 の 主 効 果(F(1,24)=4.86,′
=.037), 視 点 の 主 効 果(F(1,24)=9.85,′
=.004),交
互 作 用(F(1,24)=9.85,P=.004)
が 共 に 有 意 で あ つ た 。 そ こ で,社
交 不 安 高 群 と社 交 不 安 低 群 別 に そ れ ぞ れ 視 点 の 単 純 主 効 果 を検 討 した と こ ろ,社
交 不 安 高 群 で は 有 意 で あ つ た が(F(1,24)
=17.07,′
=.000),社
交 不 安 低 群 で は 有 意 で は な か っ た(F(1,24)=.00,′
=
ゴ.θθθ)。 つ ま り,社
交 不 安 高 群 で は 聞 き 手 の 印 象 以 上 に 緊 張 が 相 手 に 伝 わ っ た と推 測 して い た 。 Table3‐13
印 象 推 測 と聞 き 手 印 象 の 平 均 値 印象 推 測 聞 き手 印 象 社 交 不 安 高 群 社 交 不 安 低 群 436。(1.19 2.93(1.0つ 2.94(.60 2。93(。91)( )は
標 準 偏 差 ―●―社交不 安高群 一o―社交不 安低群社 交 不 安 高 群 と 低 群 ご と に 緊 張 度 と 印 象 推 測 平 均 値 を 求 め (Table3‐ 14, Fig.3‐
6),2(社
交 不 安:社
交 不 安 高 群0社
交 不 安 低 群)×
2(視
点:緊
張 度 。 印 象 推 測)の 2要
因 分 散 分 析 を 行 つ た と こ ろ,群
の 主 効 果(F(1,24)=5.62,
′=.026),交
互 作 用(F(1,24)=6.05,′
=.022)が
有 意 で あ つ た 。 視 点 の 主 効 果(F(1,24)=。
29,′=.596)は
有 意 で な か つ た 。 社 交 不 安 高 群 と社 交 不 安 低 群 別 に そ れ ぞ れ 視 点 の 単 純 主 効 果 を 検 討 した と こ ろ,社
交 不 安 高 群 で は 有 意 傾 向 が 認 め られ た が(F(1,24)=3.89,′
=。060),社
交 不 安 低 群 で は 有 意 で は な か つ た(F(1,24)=2.18,′
=.153)。 つ ま り,社
交 不 安 高 群 は 自分 が 自覚 し て い る 緊 張 度 よ り も高 く,他
者 か ら緊 張 して い る と評 定 され る と推 測 す る傾 向 に あ つ た 。 Table3…14
緊 張 度 と印象 推 測 の 平 均値 緊 張 度 印象 推 測社交不安高群
3.64(1.00 4.36(1.10
社交不安低群
3.40(1.0つ2。
93(1。10
( )は
標準偏差
― 社 交 不 安 講 交不安低群 緊 張 緊張度 Fig。3‐6社
交 不 安 高 群 E口象推灌J 。低 群 に お け る緊 張 度 と印 象 推 測 の 平 均 値第
4章
実 験 調 査 の 考 察1.各
尺 度 の 検 討 男 女 差 が 有 意 で あ つ た の はSTAI特
性 不 安 に お い て の み で あ つ た 。 本 調 査 で は 男 女 を分 けず に,デ
ー タ を分 析 す る こ とに した 。 本 調 査 は 教 育 大 学 に て 行 つ た の で,教
員 免 許 取 得 予 定 の 者,取
得 した 者 が 多 か っ た 。 教 員 を 目指 す 者 の ス ピー チ 不 安 は 低 い と予 想 され た が,教
員 免 許 を 持 つ 者 と持 た な い 者 に お い て, ま た 教 員 志 望 で あ る者 と志 望 で な い 者 に お い て ,各 尺 度 に 有 意 な 差 は な か っ た 。 よ つ て 本 調 査 で は 教 員 免 許 の 有 無 は 各 尺 度 に影 響 を 与 え な い とみ な した 。2.各
尺 度 間 の 相 関SDSと
有 意 な 相 関 が あ つ た の はSTAIの
特 性 不 安 の み で あ り,他
の 尺 度 にSDSの
影 響 は な か っ た 。SASと
緊 張 度,STAI状
態 不 安,SPQ(自
己 評 価)に
中 程 度 の 有 意 な 相 関 が み られ た 。 つ ま り,ス
ピー チ 不 安 が 高 い 者 で は 本 調 査 の ス ピー チ 場 面 で 状 態 不 安,緊
張 度 が 高 ま り,ス
ピー チ の 自 己評 価 が 低 か っ た 。 緊 張 度 と聞 き 手 印 象 に 中 程 度 の 相 関 が あ つ た こ とか ら,話
し手 が 緊 張 して い る ほ ど,聞
き 手 は 話 し手 が 緊 張 して い る と評 価 して い た 。印 象 推 測 とSPSに
中 程 度 の 有 意 な 相 関 が あ り,社
交 不 安 が 高 い 者 ほ ど 聞 き 手 か ら緊 張 して い る と評 価 され た 。 た だ し,緊
張 度 とSPSに
有 意 な 相 関 は な か つ た 。 つ ま り,社
交 不 安 の 高 い 者 で は,緊
張 した か ど うか に か か わ らず,他
人 か らは 緊 張 して い る と評 価 され る傾 向 が あ つ た 。つ ま り
,社
交 不 安 が 高 い 者 は 低 い 者 に 比 べ て 聞 き 手 か ら よ り緊 張 して い る と評 価 され る と推 測 した 。 緊 張 度,STAI状
態 不 安,SPQに
差 が な い の は,本
調 査 の 実 験 場 面 が ビデ オ を相 手 と して い る こ とで 緊 張 度 や 不 安 が 低 く,普
段 の ス ピ ー チ よ りも安 心 して 取 り組 め る と協 力 者 が 感 じた か らで は な い か と考 え られ る。 心 拍 数 に つ い て2群
の 間 に 有 意 な 差 は み られ な か つ た 。 両 群 に 共 通 して 心 拍 の 計 測 始 め か らス ピー チ の 準 備 中,準
備 中 か ら ス ピー チ 中 に か け て 有 意 に 心 拍 は 上 昇 し,ス
ピー チ 後 の 安 静 時 間 に 心 拍 の 計 測 始 め と同 じ程 度 に 心 拍 は 下 降 し た 。 こ の こ とか ら,本
調 査 の ス ピー チ 場 面 は あ る程 度 緊 張 を誘 因 す る も の と し て 適 切 で あ つ た と考 え られ る。 これ はPuigcerver et al.(1989),官
前(2000)
と同 様 の 結 果 で あ つ た 。 つ ま り,本
調 査 で は 普 段 の ス ピー チ 場 面 に お け る 緊 張 よ りは 低 か つ た が,緊
張 の 誘 発 に成 功 した 。4.透
明 性 錯 覚 協 力 者 全 体 に お い て 緊 張 の 印 象 推 測 は 聞 き 手 印 象 よ り有 意 に 高 か っ た 。 つ ま り 自 己 紹 介 場 面 で の 透 明 性 錯 覚 が 確 認 され,話
し手 は 他 者 が 知 覚 す る 以 上 に 自 分 の 緊 張 が 他 者 に 伝 わ っ た とそ の 程 度 を 過 大 に 評 価 した 。 しか し,緊
張 度 と印 象 推 測 に 有 意 な 相 関 が 認 め られ ず,本
調 査 で は 体 験 した 緊 張 度 に 関 わ らず,透
明 性 錯 覚 が 確 認 され た 。 緊 張 の 強 度 に よ つ て 透 明 性 錯 覚 の 大 き さが 異 な る か 検 討 した と こ ろ,群
に よ る 差 は 有 意 で な か っ た 。 これ は 遠 藤(2007)と
は 異 な る結 果 で あ つ た 。 本 調 査 で は 緊 張 度 を 最 大 の6と
答 え た 者 は お らず,緊
張 度 が 全 体 的 に 低 か つ た こ とが 影 響 して い る と考 え られ る。 社 交 不 安 の 高 低 に よ つ て 透 明 性 錯 覚 の 大 き さ が 異 な る か 検 討 した 。そ の 結 果, 群 に 有 意 な 差 が あ つ た 。 つ ま り社 交 不 安 高 群 で は 聞 き 手 の 印 象 以 上 に 緊 張 が 相 手 に 伝 わ っ た と推 測 して い た 。本 調 査 で は 緊 張 の 強 度 に よ る透 明 性 錯 覚 に 有 意 な 差 は 認 め られ な か っ た 。 緊 張 度 と印 象 推 測 を 比 較 す る と
,社
交 不 安 高 群 で は,自
分 の 体 験 した 緊 張 よ り も 印 象 推 測 が 高 く な る傾 向 に あ つ た 。 高 群 に お い て 緊 張 度 よ り印 象 推 測 が 高 か つ た 者 か ら,透
明 性 錯 覚 に つ い て 数 人 か ら次 の よ うな 報 告 を 得 た 。「緊 張 して い な い よ うな感 じで 明 る く揚 々 と話 さな か つ た か ら,見
て い る 人 に は そ う感 じ られ る か も しれ な い 。」「自分 で は 冷 静 っ て 分 か つ て る け ど,考
え て る 時 に そ れ が 顔 の 表 情 とか 目線 とか に あ らわ れ て て 。 緊 張 して る つ て 捉 え られ る か も。」「 自分 に も分 か る レベ ル な の で,相
手 に は も つ と伝 わ つ て た と思 う。」 こ の こ とか ら, 社 交 不 安 が 高 い 者 は 緊 張 度 に 関 わ らず,自
分 の 行 動 に よ つ て 相 手 に 緊 張 して い る と捉 え られ る と感 じ る こ とが 本 調 査 の 結 果 か ら示 唆 され た 。 遠 藤(2007)の
研 究 で は 高 不 安 群 に 透 明 性 錯 覚 が 有 意 傾 向 と して み い だ され た 。 遠 藤(2007)は
不 安 の 測 定 に 対 人 恐 怖 の 尺 度 を 用 い て お り,本
研 究 で は 社 交 不 安 の 尺 度 を 用 い た こ とが 関 係 して い る 可 能 性 が あ る。 透 明 性 錯 覚 は 社 交 不 安 が 高 い 者 で よ り顕 著 に 現 れ る こ とが 示 唆 され た 。 本 調 査 の ス ピー チ 場 面 は,先
行 研 究 に お け る 緊 張 と同 程 度 に 緊 張 を 上 げ る 場 面 で は な か つ た 。 主 観 的 な 緊 張 が 高 くな い 場 合 に,社
交 不 安 高 群 で は 主 観 的 緊 張 以 上 の 緊 張 が 相 手 に 伝 わ つ て い る と感 じた こ とが 本 調 査 で は 示 唆 され た 。 こ れ は 緊 張 が あ る程 度 あ る も の の,そ
こ ま で 高 くな い 場 面 を 設 定 した ゆ え に 出 た 結 果 で あ つ た 。 こ の 透 明 性 錯 覚 は健 常 な 人 で も生 じ る も の で あ り,社
交 不 安 が 高 い 者 の 「相 手 に 緊 張 して い る と思 わ れ る 」 とい う認 知 は社 交 不 安 が 低 い 者 の 透 明 性 錯 覚 と は 違 う調 整 が な され て い る 可 能 性 が あ る。 緊 張 度 が 高 い 場 面 と,あ
る程 度 緊 張第
5章
イ ン タ ビ ュ ー 内 容 の 結 果 と考 察 本 調 査 で は,イ
ン タ ビ ュ ー 内 容 の 分 析 にKH Coderを
用 い た 。計 量 テ キ ス ト 分 析 の ツ ー ル で あ るKH Coderは
,川
端 亮 。樋 由耕 一 に よ つ て 開 発 され た プ ロ グ ラ ム で あ る 。 フ リ ー ソ フ ト と し て 公 開 さ れ て い る (http:/ノkhcosourceforge.netノ )。 新 聞 記 事,質問 紙 調 査 に お け る 自 由 記 述 回 答, イ ン タ ビ ュ ー 記 録 な ど社 会 調 査 に よ つ て 得 られ る様 々 な 日本 語 テ キ ス ト型 デ ー タ を 計 量 的 に 分 析 す る た め に使 用 され て い る (樋 口,2014)。 本 調 査 で はKHcoderを
用 い て 項 目 ご と に 社 交 不 安 高 群 ,低 群 そ れ ぞ れ に 特 徴 的 な 語 を 上 位10語
ず つ 上 げ,そ
れ ぞ れ の 語 と 高 低 群 と の 関 連 を あ ら わ す 」accardの
類 似 性 測 度 を 算 出 した 。Jaccardの
類 似 性 測 度 は0か
ら1ま
で の 値 を と り,関
連 が 強 い ほ ど1に
近 づ く とい う も の で あ る。 た と え ば,2つ
の 集 合Cl = {バ
ナ ナ,み
か ん,ぶ
ど う,い
ち じ く}C2 = {バ
ナ ナ,い
ち ご,ぶ
ど う,メ
ロ ン) の 類 似 性 を 考 え る。Jaccrd係
数 は 集 合 間 類 似 度 の 代 表 例 で あ り,式
(1)に よ り 定 義 され る。釧
Qの
=器
(1) 上 記 の 例 のJaccrad係
数 は,sim(Cl.C2)
で あ る。 群 ご と に 特 徴 的 な 語 が イ ン タ ビ ュ ー 内 で ど の よ う に 語 ら れ て い た かKH
Coderを
用 い て 検 索 し,社
交 不 安 高 群 と低 群 で イ ン タ ビ ュ ー 内 容 に ど の よ うな 違 い が み られ る か 検 討 した 。 そ こ か らス ピー チ 不 安 を 抱 え て ス ピー チ を す る こ と に つ い て 考 察 した 。 1 一 3 〓項 目
1.ス
ピー チ の 直 前 の 思 考 や 感 情,身
体 の 感 覚 は ど うだ っ た で し ょ う か 。 い くつ か 教 え て くだ さい 。 項 目2.ス
ピー チ を始 め た ば か りの 思 考 や 感 情 や,身
体 の 感 覚 は ど うだ つ た で し ょ っか 。 項 目3.ス
ピー チ の 途 中,真
ん 中 あ た りの 思 考 や 感 情,身
体 の 感 覚 は ど う だ っ た で し ょ うか 。 項 目4.ス
ピー チ 直 後 の 思 考 や 感 情,身
体 の 感 覚 は ど うだ つ た で し ょ うか 。 項 目① か ら④ に お け る社 交 不 安 高 群,低
群 そ れ ぞ れ に 特 徴 的 な 語 を 上 位 10 語 ず つ Table4‐ 1,4‐2,4‐ 3,4‐4(34頁
参 照)に
示 した 。 表 内 の 数 値 は そ れ ぞ れ の 語 と高 群 ,低 群 との 関連 を あ らわ すJaccardの
類 似 性 測 度 で あ る。Table4‐1 か ら4‐4ま
で み る と,項 目1の
高 群 ,項 目2の
低 群 に お い て 動 詞 が 少 な か っ た 。 高 群 に お い て 「緊 張 」 が 項 目1か
ら4に
か け て 挙 が つ て お り,項
目3で
は 中位 ほ ど に 挙 が つ た が,他
の 項 目で は1位
に 挙 が つ た 。「不 安 」 とい う単 語 は 項 目 1 と2の
高 群 に み られ る。 緊 張 に 関 係 す る と考 え られ る 単 語 と して 「 ドキ ドキ 」 「震 え る」「必 死 」が 高 群 に 多 くみ られ て お り,高
群 で は 緊 張 に つ い て 多 く語 ら れ た と考 え られ る 。 ま た,低
群 で 項 目 を 通 して 共 通 す る の は,「思 う」「考 え る 」 「時 間 」「練 習 」 が 挙 げ られ る。 項 目 ご と に み る と,項
目1の
高 群 で は 「 ドキ ドキ 」「不 安 」,今
回 の 課 題 内 容 に 関 係 す る 「 自 己 紹 介 」「ビデ オ 」 が 挙 が つ た 。 低 群 で は 「練 習 」「時 間 」 が 挙 が つ た 。 項 目2の
高 群 で は 動 詞 が 多 い 中,名
詞 で は 「緊 張 」「次 」「不 安 」「言 葉 」 が 挙 が つ た,ま
た ,「 決 め る 」 とい う単 語 が 項 目2に
特 徴 的 で あ つ た 。 低 群 で は 「声 」「意 識 」 が 上 位 の 名 詞 と して 挙 が つ た 。項 目3の
高 群 で は 高 群 で は じ め て 「考 え る 」が 挙 が つ て お り,低
群 で は 「特 に 」「書 く」 とい う単 語 が こ こ で の み み られ た 。 項 目4の
高 群 で は ス ピー チ を 終 え た 後 の 単 語 と して 関 係 の あ り,項
目4に
特 徴 的 だ と考 え られ る「振 り返 る 」Table 4‐