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高校生を対象とした柔軟な対人情報処理を促すための授業の実践

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Academic year: 2021

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(1)平成八年度学位論文. 高校生を対象とした. 柔軟な対人情報処理を促すための授業の実践. 兵庫教育大学大学院 学校教育研究科 学校教育専攻 教育経営コース. M95055G 菅野恭介.

(2) 目 次. 1. 問題. 1 研究の意義 H 柔軟な対人情報処理を促進させるための授業の方法の概要 lll獲得させるメタ認知的知識の内容 1 印象の形成過程に関係するもの 2 印象の維持・強化の過程に関係するもの 3 自尊心や感情の影響に関するもの IV 授業の基本方針 1 学習に対する動機づけの促進 2 学習した知識の精緻化の促進 3 学習した知識の体制化の促進 方法 1 11 111. 1V. 1. 2 3. 11. 14. 実験計画 被験者. 14. 期日. 14. 実験群に対する授業の内容 1. 授業日程 2. 各日程の授業の内容. 14 14. 3.例証実験 4.授業の基本方針を具体化した内容 V 従属変数. 一一一一一一一一一一一一一一一一一一一. 55. 1.従属変数の全体的構造 2.個々の測定内容 結果 1 11. 川. 74. 非柔軟な対人情報処理をする傾向についての自己認識 非柔軟な対人情報処理をすることについての態度 実際の対人情報処理の柔軟性. 74 75 76 96. 考察. 1.検出された効果についての要約 2.検出されなかった効果についての考察 3.今後の課題 引用文献. 104. 付記. 107.

(3) 問 題 1 研究の意義 人は自分の態度や行動の決定において,さまざまな情報を処理して判断して いるが,このような情報の中で特に重要になるのは,自己を含めた人について の情報,すなわち対人情報であろう。ところが,ギロビッチ(1993)も述べて いるように,人は,普段さまざまな対人情報に接していながら,いつもそれを 柔軟に処理しているわけではない。このことは,根拠のないうわさの無批判な. 受け入れ,少数事例からの過度の一般化,ステレオタイプ的認知による性格の 決めつけ,初期印象に沿った選択的情報処理などの,さまざまな非柔軟な対人 情報処理が一般によく見られることからも明らかであろう。さらに,このよう. な非柔軟な対人情報処理をすることで,他者に対する認知が歪み,それが原因 で対人関係に悩んで社会的不適応に陥ったり,不合理な差別や偏見が生じてそ. れが助長されたり,さらには,情報を的確に判断できないことから,他者の意 図的な情報操作によるマインド・コントロールにかかったり,といった多くの. 問題が生じる可能性が考えられる。そして,以上のような非柔軟な対人情報処. 理をする傾向は高校生にも当然当てはまることであり,ABO式の血液型によ る性格の決めつけ,友達からのうわさの無批判な受け入れ,失敗の原因が教師. や家庭の事情などの自分以外の要因に帰せられると認知する自己防衛的な原因 帰属など,さまざまな柔軟でない対人情報処理を高校生も行っていると考えら れる。. さて,このような非柔軟な対人情報処理をする傾向が,高校生をはじめ,一 般の成人においても多く見られることは,柔軟な対人情報処理をするための能 力が人の自然な成長過程では十分には獲得されにくいものであることを示して いると言えよう。したがって,誰もが柔軟な対人情報処理を行えるようになる ためには,人の成長過程のどこかで,柔軟な対人情報処理能力を高めるための 働きかけをする必要があると考えられる。そこで,そのような働きかけをする. 場が必要になるが,今の社会のシステムでは,そのような場を学校以外に設定 することは非常に困難である。しかし,現状では学校教育の中心は学業に関係. 一1.

(4) した知識の習得であり,柔軟な対人情報処理能力を高めるための働きかけなど. はほとんど行われていない。そして,このような働きかけは本来学校が行うべ き事柄ではないと主張する者もいるかもしれない。しかし,前述のような現実. に生じるさまざまな問題を考えると,学校での学習の中でそのような能力を高 めるための働きかけを行うことは非常に意義深いことであると考える。さらに,. 働きかけは小学校,中学校,高等学校のどの段階でも行う必要があろうが,そ の中でも特に高等学校で行うのが適切であると考えられる。それは,柔軟な対 人情報処理を行うためには,非柔軟な対人魚区処理がどのようなものかを理解 しなければならず,そのためには,ある程度の社会的な経験や理解力,思考力. などが必要であるとともに,高等学校まではほとんどの子どもが進学するがそ の後の進路はさまざまである現状から,多くの子どもに一度に働きかけること. ができるのは高等学校が最後になるからである。以上のようなことから,本研 究では,高等学校で実現可能な授業の実践を通して,高校生の柔軟な対人情報 処理を促進させることを目的とした。. なお,ここで言う“柔軟な対人情報処理”とは,本来は“人についての情報 を合理的・理性的・柔軟に処理すること”などとていねいに記述すべきもので. あるが,常にこのように記述すると煩雑になるので,通常は簡単に“柔軟な対 人情報処理”とのみ記述する。. II 柔軟な対人情報処理を促進させるための授業の方法の概要 柔軟な対人情報処理ができない主な原因は,自己の情報処理が柔軟でないこ. とを認識していない,すなわち,自己の情報処理活動(注意,解釈,判断,記 憶などの認知的活動)についての認知であるメタ認知が適切に働いていないこ とにあると考えられる。さらに,メタ認知が適切に働かないことに対しては,. そのために必要なメタ認知的知識が正しくかっ十分に獲得されていないことに 主要な原因があると考えられる。したがって,人がどのような非柔軟な対人情 報処理をするのかに関するメタ認知的知識を正しくかつ利用可能性(avai1−. ablity)の高い形で獲得させれば,それに基づいて自己の情報処理を適切にモ ニタリングし,それによって,柔軟な対人情報処理を行うことができるように. 一2.

(5) なるのではないかと考えられる。柔軟な対人情報処理がなされるために,この ような適切なメタ認知を働かせる能力が必要であることについては,三宮 (1995)も,柔軟な情報処理の基盤になるものが,「人間の行う情報処理の特. 性,すなわち,人間はどのように情報を処理し,どのような点に限界や弱点を 持つかについての知識であろう」と述べている。また,このような人が普段し てしまう非柔軟な対人情報処理について知ることで柔軟な対人情報処理を促進 させようとした学校現場での取り組みとして,石倉(1995)が,小学校5年生 の児童を対象とした“発話意図の解釈に対する感情の影響”についての実践を. 報告している。ところが,石倉(1995)のような実践は報告されているが,筆 者の知る限りでは,対人情報処理の柔軟性が,上記のようなメタ認知的知識を 獲得させる働きかけをした場合とそうでない場合でどのように異なるかについ て実験的に検討した研究は見当たらない。そこで,本研究では,柔軟な対人情 報処理を行うために必要なメタ認知的知識を獲得させるための授業を行うによ って,それが実際に柔軟な対人情報処理を促進させるか否かについて検討した。. 111 獲得させるメタ認知的知識の内容 図1は授業で扱うメタ認知的知識の概要をまとめたものであり,それらは, “『特定の入物に対する固定したイメージや特定の集団に対するステレオタイ プ』の形成過程に関係するもの”,“その維持・強化の過程に関係するもの”, “自尊心を維持しようとする動機や感情の影響に関するもの”の3つに分類さ. れる(以下,記述が煩雑になるので,『. 』の部分を単に“印象”と記述す. る)。. なお,非柔軟な対人情報処理に関わるあらゆる知識について授業を行うこと. は,実施可能な時間の制約や,実験のための授業を日々の学習に加えて行うた めに生徒にかなりの負担を強いることなどから不可能であると判断し, “高校. 生にとっての学ぶ必要性の高さ”と“高校生にとっての理解しやすさ”を考慮 して内容を精選した。そのため,単純接触効果やフォールス・コンセンサス効 果などは取り上げなかった。. 一3一.

(6) 情報の内容の信葱性に対する吟味不足. 印象の形成過程に関係するものt 偏った少数の事例からの過度の一般化. 2つの事柄の関係の有無についての非合理的 な判断. 傾向の過度の一般化. 柔軟性に欠ける因果解釈. 印象の維持・強化の過程に関係するもの. 抱いた印象に沿った選択的情報処理. 自尊心を維持しようとする動機の影響に関す. 驍烽フ 自尊心や感情の影響に関するものけ 相手に対する感情やそのときの気分の影響に. ヨするもの. † 印象の形成過程に関係する非柔軟な対人情報処理は,印象の維持・強化の過程にも関係する と考えられる。. †t 自尊心や感情の影響に関する非柔軟な対人情報処理は,印象の形成と印象の維持・強化のい ずれの過程においても関係すると考えられる。. 図1 授業で扱うメタ認知的知識の概要. 授業で獲得させる知識の具体的な内容を,以下に整理して述べる。. 1.印象の形成過程に関係するもの 情報の内容の信愚性に対する吟味不足. 1)情報の伝達過程で生じる歪みについての考慮不足 われわれには,さまざまな情報に接したときに,その情報が伝達過程で歪ん. でいる可能性についてあまり考慮せずに,それを無批判に信じてしまう傾向が 一4 一.

(7) ある。たとえば,池田(1993)は,湾岸戦争当時マスコミが流した情報が,ア メリカにとって都合のよいものばかりであったにもかかわらず,多くの者がそ れを無批判に真実と見なしてしまっていたことを例にあげて,「人は選択され た情報に対して,その選択性を直感的に修正して物事を見るという能力に欠け ている」と述べている。本研究では,実際に生じる歪みとして,情報の送り手 の意図や感情の影響で生じる歪みと,そのような影響がなくても,人間の記憶 の限界などによって生じる歪みについて取り上げた。. 2)情報の内容以外の要因に影響された判断 これは, “誰が言っているか”などの,情報の内容以外の要因によって,そ の情報を信じるかどうかの判断が影響されてしまう傾向である。 “有名な大学. の先生が「…. だ」と言うと,その内容について十分吟味せずに無批判に信. じてしまいやすい”といったことがこれにあたる。このことについては, “社. 会的地位の高い人物からの情報は信じられやすい”ことを明らかにした,. Hovland&We、iss(1951)の研究などが報告されている。. 3)バーナム効果 人の性格特性は“ある”か“ない”かの二者択一的な判断がなされるべきも のではなく,人は,どのような性格特性でも多少は有していると考えられる。 しかし,このようなことについての認識が不足しているために,われわれは, 占いなどで“あなたにはこんな性格があります”と言われると, “それが自分. のみによく当たっている”と思いやすい。これは一般にバーナム効果と呼ばれ ている現象であり,Forer(1949)などによってその存在が実証されている。 偏った少数の事例からの過度の一般化 われわれには,同一人物の行動が状況によって変動することを考慮せずに,. 少数の偏った情報に基づいて,ある人物の性格に関して決めつけた判断をして しまう傾向がある。たとえば,われわれは,初めて会った人に対して,そのと. きに得たわずかな情報から“・・な人だ”と決めつけたり,限られた場所や時 間帯などの偏った状況における情報でしかないにもかかわらず, “どんな状況. でもそうだ”と一般化した判断をしてしまいがちである。これは,Jones& N・i・sbett(1972)の言う“基本的帰属錯誤”にかかわるものであり,ある行為. の観察者がその行為の原因を行為者の内的な要因に帰属しやすいことに起因す 一5一.

(8) るものと考えられる。. また,上述の内容は,1人の人物についての少数の情報から,その人物の全 体(すなわち,一般的傾向である性格)を推測する場合のことであるが,同様 の情報処理過程が集団内の一部の偏った人物に関する情報から,その集団に所 属する人の一般的傾向について推測する場合にも働くものと考えられる。その ため,われわれには,たとえば,ある高校の生徒が数人,駅でタバコを吸って いるのを見たときに, “○○高校の生徒は(みんな)がらが悪い”と思ってし. まうというように,集団内の一部の偏った人物の特性が,その集団に所属する. 人みんなに当てはまると思ってしまいやすい傾向がある。このような現象につ いては,ある極端な特性を持つメンバーが特定の集団に含まれているとき,そ の集団に含まれる,その極端な特性を持つメンバーの割合が過大評価されるこ とを示した, R othbart,Fulero,J ensen,H:oward&Birre11(1978)の実験. などが報告されている。また,このような傾向は内集団よりも外集団に属する. 人に対して判断するときに強くなることが,Park&Rothbart(1982)の “異性については同性ほど個人の多様性を認識しない”といった研究などで報 告されている。. 2つの事柄の関係の有無についての非合理的な判断 1)共変関係についての理解不足 われわれは,2つの事柄(変数)の間に関係があるかどうかについて判断す るときに,十分な情報が得られていないにもかかわらず,両者の問に関係があ. ると判断してしまうことがある。ここで,2つの変数の問になんらかの関係が. あるということは,表1のような2×2のクロス表においては,a:b≠c:d になっていることを意味する(表1では,. Xの値によってYの値に違いがあるか否か. 表1 2×2のクロス表. という意味での,変数Xと変数Yの関係を 問題にしているとする)。したがって,2 つの変数の間に関係があるかどうかを判断. するためには,本来クロス表の4つのセル の度数がすべてわかっていなければならな. い。ところが,われわれは,表1における 一6. Xl w2. Y1. Y2. a†. bd. b. †a,b, c, d,は各セルに 該当する度数(人数など)で ある。.

(9) 変数Xの値がX、である場合の情報(すなわち,心中のaとbの度数について のデータ)しか得ていないのに, X・の場合との比較の必要性を考慮せずに,. “X、にはY、が多い(または,少ない)という特徴がある”といった,Xが. X、であるかX、であるかによってYの値が異なる(すなわち,XとYの間に 関係がある)ことを前提とした判断をしてしまうことがある。また,同時に,. 表1における変数Yの値がY、である場合の情報(すなわち,表面のaと。の 度数についてのデータ)しか得られていないのに, X、である者全体の度数. (a+b)とX2である者全体の度数(c+d)の違いを考慮する必要がある ことをふまえずに, “X・の方がX,よりもYiが多い(または,少ない)傾 向がある”といった判断をしてしまうことがある。たとえば,変数Xが血液型 (X、がA型,X,がB型)で,変数Yが人の性格(Y、が神経質, Y・が楽天的). だとすると, “A型の人の8割が神経質(a:b=4:1)”だという情報のみ に基づいて,B型の人との比較をせずに,“A型には神経質という特徴がある” と判断してしまうことが前者に対応する。また,“神経質な人がA型には40人. いて,B型には20人しかいなかった(a:c=2:1)”という情報のみに基づ いて,A型, B型における調査対象者数が異なっている可能性を考慮せずに,. “A型の方がB型よりも神経質な人が多い”と判断してしまうことが後者に対 応する。. なお,前述の少数事例からの過度の一般化は,表1のa,b, c, dのいず. れか1つについてのわずかな情報しか得られていないのにXとYの間に関係が あると判断してしまうことに対応するものである。. 2)偶然性の高い共変関係に対する過度の意味づけ 村田(1991)が「私たちは両者にほとんど関係がないようなあいまいなデー タからでも,誤って共変関係を読みとりやすい」と述べているように,われわ. れには,偶然でも生じ得る程度のわずかな関係に対して,その偶然性を考慮せ ずに意味があると判断してしまう傾向がある。これには大きく分けて2つの場 合が考えられ,まず1つは,少ない回数の観察から得られた情報に基づいて共 変関係の有無を決めつけてしまう傾向であり,前述の少数事例からの過度の一. 般化と同様の情報処理過程である。具体的には,A君と釣りに行った2回が雨 で,A君と行かなかった1回が晴れなら,それだけでA君を雨男と思ってしま 一7一.

(10) うような場合である。また,もう1つは,観察回数は比較的多いが,そこに見 られる差が偶然でも生じ得る程度の(たとえば,統計的検定を行ったときに有. 意にならない程度の)わずかな差でしかないにもかかわらず,それに過大な意. 味づけをしてしまう場合であり,たとえば,A君とB君が将棋で25回対戦して A君の15勝10敗であったときに,そのようなわずかな差からでも,A君の方が B君より将棋が強いと決めつけてしまうような場合である。. 傾向の過度の一般化. 1)傾向が確率的なものであることについての考慮不足 われわれは,全体的に見てなんらかの傾向があることが示されると,その全 体的な傾向が個々の事例についても100%当てはまるとみなした判断をしてし まいがちである。これは,一般にステレオタイプ的認知と呼ばれている情報処 理であり,見いだされた傾向が確率的なものであることに対する考慮不足に起 因しているものと考えられる。. 2)交互作用の存在についての考慮不足 “ある女性の芸能人の男性に対する好みがスタイルで決まるという傾向があ るとき,その傾向が芸能人以外のどのような男性に対しても当てはまると思っ. てしまう”というように,われわれは,ある傾向の存在が示されると,それが 特定の状況下で見いだされたものである可能性を考慮せずに,その傾向がどの ような場合にでも当てはまると見なしてしまいがちである。これは,統計学の 言葉を用いて表現するならば, “交互作用の存在についての考慮不足”と記述 されるものであり,上記の例では, “ある女性の男性に対する好み”という従 属変数に対して, “男性のスタイルの良し悪し”と“男性が芸能人であるか否. か”という2つの要因の問に交互作用がある(言いかえれば, “男性のスタイ. ルの良し悪し”の“ある女性の男性に対する好み”に及ぼす影響が,男性が芸 能人の場合とそうでない場合とで異なる)かもしれないことを考慮せずに,過 度に一般化した推論をしていることになる。一般に交互作用の可能性を考慮す ることが困難であることは,!心理学の研究論文でさえ,得られたデータの限定. 条件を無視して過度に一般化した考察をしているものが散見されることからも 推察される。. 一8一.

(11) 柔軟性に欠ける因果解釈 われわれには,ある現象がなぜ生起したのかについてさまざまな理由が考え られるのに,もっともらしい理由を1っ考えると他の理由をあまり考えようと しない傾向がある。たとえば,統計的データなどによって示された関係につい. て因果解釈を行うときに,われわれは, X→Y (Xが原因でYが結果である. ことを意味する),Y→X,第3の変数の介在による擬似相関,という3種類 の影響過程の存在が考えられるにもかかわらず,そのうちのどれか1つだけに 注目しがちである。また,1つの影響過程の中でも多様なメカニズムが存在す. る可能性を考慮せずに(たとえば,なぜXがYに影響を及ぼすのかに関する理 由は必ずしも1つではないにもかかわらず),1つの理由を考えると他の理由 を考えなくなってしまうことが多い。さらに,あることが生起した原因につい. て推論するというような結果が固定されている場合でも,1つ原因の候補を考 えると他の可能性を考えようとしなくなる傾向が存在し,このことについては, “人は先行事象と後続事象が時間的に隣接していると,因果関係を帰納しやす. い”という,Barsalou(1992)の研究などが報告されている。. 2.印象の維持・強化の過程に関係するもの 印象の維持・強化の過程では,以上のような,印象の形成過程に関係する非 柔軟な対人情報処理に加えて,以下に述べる,抱いた印象に沿った選択的情報 処理が関係すると考えられる。. 1)選択的注意 われわれには,初期印象に沿った情報に注意が向きやすいという傾向があり, その結果,そのような情報は記憶されやすい傾向にある。このことについては,. Zadny&Gerard(1974)が行った,大学生が演じる短い喜劇を見せ,後で その中で起こった事柄を再生させたときに,被験者にあらかじめ知らせておい た学生の専攻に沿った事柄が再生されやすかったことを示した実験や,ある入 物の職業を告げて,その人物の紹介ビデオを見せ,後でそのビデオの内容を再 認させたときに,職業ステレオタイプに沿った情報が正しく再認されやすかっ たことを示した,Cohen(1981)の研究などが報告されている。. 一9一.

(12) 2)選択的解釈 ある行動について,それが何をしているところかを認知したり,なぜそのよ・ うなことがなされたのかについて推論したりする際,われわれは,初期印象に. 沿った(言いかえれば,初期印象を変容させないですむような)選択的解釈を しがちである。このことについては,たとえば,Kulik(1983)が,ある人物 についての初期印象を操作した後にその人物が行った行動を後続情報として提 示したところ,初期印象に沿った行動はその人物の性格などの内的な要因に,. 沿わない行動は状況などの外的な要因に帰属される傾向があることを実験的に 示している。. 3)選択的想起 選択的情報処理は,他者に対してなんらかの印象が形成される以前に得られ た情報について想起する場合にも働くことが指摘されている。たとえば,第三 者からある人物について“あの人は・・な人だ”と言われてなんらかの印象を 抱いたときに, “そういえばあのとき,あの人は・・していた”というように,. 以前に得た情報の中の抱いた印象に沿った事柄が思い出されやすいという傾向 がこれにあたる。. 3.自尊心や感情の影響に関するもの 自尊心を維持しようとする動機の影響に関するもの われわれの対人情報処理には,自分がした失敗や望ましくない行動の原因を 外的な要因に帰属したり,自分に自信があるところを重視して他者のことを判 断するといったセルフ・サーヴィング・バイアスが働くことが指摘されている。 たとえば,失敗の原因を外的な要因に帰属する傾向については,試験:の成績が. よいときはその原因を自分の能力などの内的な要因に帰属しやすいのに対して,. 悪いときは問題が不公平などの外的な要因に帰属する傾向があることを示した. Arkin&M aruyama(1979)の研究など,多数の研究が報告されている。他 にも,自尊心を維持しようとする動機の影響に関するものとして, “自分のこ. とを高めるような情報はよく信じるが,低めるような情報はあまり信じない傾 向”や,“自分のことをほめてくれる人は良い人だと思うが,責める人は悪い 入だと思いやすい傾向”なども存在すると考えられる。 一10一.

(13) 相手に対する感情やそのときの気分の影響に関するもの 感情が対人情報処理に及ぼす影響に関しては, “好きな人の良い面,嫌いな. 人の悪い面が目につきやすい”とか“好きな人に関することは何でも良いよう に解釈しやすく,嫌いな人に関することは何でも悪いように解釈しやすい”と いうような,ハロー効果の存在が知られている。 また, “気分が良いときは他者が良い人に見えやすく,気分が悪いときは他. 者が悪い人に見えやすい”というような,気分に沿った対人情報処理の存在も 指摘されており,このことについては,ある人物に対する好悪感情が,そのと. きの情緒状態が快か不快かによって決められることを示したByrne&Clore (1967)の研究などが報告されている。さらに,失敗したり不幸なことがあっ. て気分が落ち込んでいるときは他者からの情報を信じやすくなるために,宗教 の勧誘を容易に受け入れたり,マインド・コントロールにかかったりしゃすい ことも指摘されており,このことについては,精神的・肉体的に疲労している. ときは暗示にかかりやすいことを示したPetty&Cacioppo(1986)の研究 などが報告されている。. IV 授業の基本方針 授業にあたっては,学習心理学,認知心理学,社会心理学などの知見を参考 にして,次の3つの観点から基本方針を作成した。. 1.学習に対する動機づけの促進 「動機iづけとは行動に方向と強さを与えるものである」というガニエ(1989). の言葉にもあるように,学習に対する動機づけを高めることは,今回のような 新たな知識についての学習場面では特に重要であると考えられる。そこで,本 研究では,そのために,次の3点を考慮して授業の計画を立てた。 学習に対する意義づけ 自ら学ぶ力を育成するために必要な動機づけとして,「なぜ,このことを勉 強することに意味があるのかという価値づけ,理由づけが必要である」と速水 (1996)が述べているように,学習することに意義があると感じさせることは,. 11.

(14) 学習に対する動機づけを高めるために非常に重要だと考えられる。そこで,本 研究では,非柔軟な対人情報処理によって生じる問題点の説明や,柔軟な対人 情報処理を行うにはわれわれがしてしまいやすい非柔軟な対人情報処理の具体 的な内容についてのメタ認知的知識が必要であるにもかかわらず,それが十分 には獲得されていない現状についての説明などを積極的に行った。. 学習に対する興味づけ 学習に対する動機づけの中核が,学習に対して興味や好奇心を持つことであ ることは,学習心理学や説得的コミュニケーションに関する多くの研究で指摘 されている。そして,そのための働きかけとして,Berlyne(1960)は, “学. 習の中で概念的葛藤を生じさせるような授業を行うこと”が有効であると述べ ている。さらに,一般には, “自己の体験を通して学習をさせること”, “学. 習内容をわかりやすく伝えること”,“学習内容が自分と関わりが深いと認識 させること”なども有効であると言われており,これらをもとに,本研究にお ける授業では, “概念的葛藤を生じさせるような実験:結果や例の提示”, “学. 習させようとする事柄が自分にも当てはまることを実感させるための生徒を被 験者にした例証実験の実施”, “学習内容をわかりやすく,面白くするための. 4コマ漫画の提示”, “学習内容と自分との関わりを認識させるための,身近 な例や具体的な研究例の提示”などを行った。. 授業者が受容・共感的な人物であるという認知の促進 今回の授業では,それぞれの生徒が,授業者によって,自分自身の対人情報 処理の非柔軟性を指摘されて改善を迫られるという説得的な面があり,そのこ とから,授業に対して心理的抵抗が生じる可能性が高い。そして,このような. 心理的抵抗を低減させることに関しては,授業者が受容・共感的な人物である と認知させることが有効であることが,吉田・深田・浜名・武川(1993)の研 究などで報告されている。そこで,本研究においても,授業者が受容・共感的 な人物であると生徒が認知するように,吉田他(1993)の説得方法を参考にし て,授業で指摘する非柔軟な対人情報処理を行う傾向は授業者を含め誰にでも あることであり,それは入間が社会に適応していく上で必要なことでもあるこ とを述べるとともに,特定の思考や態度を強制するような働きかけをしないよ うに配慮した。 12.

(15) 2.学習した知識の精緻化の促進 精緻化とは 「学習された情報に何かを付け加える過程である」 とかニエ (1989)が定義しているように,学んだ知識にさまざまな情報を付け加えて,. 知識に付随した情報のネットワークを増やすことである。知識の学習における 精緻化の効果については,精緻化を行うことによって学習した知識の検索が促. 進されることを示したAnderson(1976)の研究や,もとの情報が想起されな くても付け加えた情報から解答を構i成できることを示したReder(1982)の研. 究などからその存在が明らかにされており,本研究での授業が知識の獲得とそ の利用可能性を高めることを目指したものであることを考えると,学習させた 知識の精緻化を促進させることは非常に重要であると考えられる。そこで,精 緻化を促進させるために,本研究では,“自己の個人的な経験に関する知識と の関連づけによる精緻化が有効である”ことを示した林(1987)の研究などを 参考に,日常生活のさまざまな場面で柔軟性に欠ける対人情報処理がなされて いることについて多くの例を挙げて説明するとともに,学習した内容と関連す る自分自身の過去の経験をできるだけ多く思い出させるような働きかけを行う ことにしたQ. 3.学習した知識の体制化の促進 体制化とは「一連の情報を下位部分に分割し,それら下位部分間の関係を表 示することである」とかニエ(1989)が定義しているように,学習した事柄が 全体としてどのようなつながりを持つのかについて整理することである。体制 化が学習を促進させることは,B・ousfield(1953)の名詞の記憶についての研. 究や,Frase(1973)の説明文の記億についての研究などから明らかにされて おり,本研究でも,生徒に学習させる知識の幅広さや複雑さから考えて,体制 化を促進させる働きかけを行う必要があると判断した。そこで,知識を体制化 させる具体的な方法として,「体制化を進める1つの方法は概要を与えること である」とい・うガニエ(1989)の主張を参考にして,各授業時にその日の学習. 内容の要点をまとめたプリントを配布するとともに,最後の授業時にそれまで に学習した内容を整理して再提示した。. 13.

(16) 方 法 1 実験計画 柔軟な対人情報処理の必要性を説明し,非柔軟な対人情報処理についての知 識を獲得させるための授業を行う実験群と,柔軟な対人情報処理の必要性を説 明するだけの統制群を設定した。. 従属変数の測定は基本的にはプリ・ポスト・デザインに基づいて実施したが, 一部ポスト・オンリーで実施した。. ll 被験者 兵庫県の県立小野高等学校普通科の1,2年生2クラスずつの生徒を被験者 とした。学校は筆者の勤務高で,神戸市の郊外にあり,普通科は国公立大学へ. の進学率が6割を越える。群分けについて 表2 被験者の人数. は,各学年1学級ずつを実験群と統制群に 無作為に割り当てた。また,2年生には理. 男. 女. 計. 1年生. 18. Q年生. R2. 22 @8. 40 S0. 1年生. 18. Q年生. Q8. 22 P5. 40 S3. 系と文系の学級があり,実験の対象とした 実験群. のは2学級とも理系であった。被験者の人 数は表2の通りである。なお,いずれの学 統制群. 年の生徒も筆者が大学院に派遣された後の 入学生であり,筆者との面識はなかった。. 川 期日 1996年6月下旬∼7月中旬,および,9月中旬. IV 実験群に対する授業の内容 1.授業日程 まず,授業を開始する3日前に20分程度の時間で,実験者の自己紹介と,授 業の概要についての説明,および,自分たちの非柔軟な対人情報処理について 授業の中で体験的に理解させるための例証実験のデータ収集を行った。その後,. 14.

(17) 表3に示すような日程で1日15分程度の授業を9日間行ったが,時間的な制約 の関係で,印象の形成過程に関係するメタ認知的知識についての授業を6日間 行い,それ以外のメタ認知的知識については1日にまとめて授業を行った。こ のように,印象の形成過程に関係するメタ認知的知識を「中心に授業を行ったの. は,それが印象の維持・強化の過程にも関係している重要なものであり,まず 最優先して獲得させるべきだと判断したからである。また,授業の内容が高校 生にとって全く新しいものであることから,学習に対する動機づけと学習させ た知識の体制化を促進させる必要があると考え,9日間のうちの最初と最後の 授業は,そのような目的の時間とした。. 表3 授業日程 授業の内容†. 1日目. 授業の内容の概要ついての説明と学習に対する動機づけを促進するための教示. 2日目. 情報の内容に対する吟味不足(1). 3日目. 情報の内容に対する吟味不足(2). 4日目. 少数事例からの決めつけ. 5日目. 傾向の有無に対する非合理的な判断. 6日目. 傾向の過度の一般化. 7日目. 2つの事柄の関係についての柔軟性に欠ける因果解釈. 8日目. 抱いている印象に沿った見方 vライドを維持しようとする動機の影響 且閧ノ対する感情やそのときの気分の影響. 9日目. 全学習のまとめ. † 2日目から8日目に記述してあることは,それぞれの日に授業をしたメタ認知的知識の 内容である。ただし,生徒に提示した表現を用いているため,問題で述べた表現とは若 干異なっている。. 15.

(18) 2.各日程の授業の内容 以下に,各日程の授業の内容について述べるが,その際,まず各授業を行う. 上で留意した点などについて述べ,続いてその日の授業の概要を図で示すとい う形式で記述する。. 1日目 授業の内容の概要ついての説明と学習に対する動機づけを促進する ための教示 まず,最初の授業であるので,図2のようなクイズを用いて,できるだけ明 るく,楽しい雰囲気で授業ができるように配慮した。. ①マラソンで前を行く3位の入を追い越したら何位? ②世界でいちばん多くの人が日常話している言葉は?. ③AさんとBさんの関係は? Aさんは学生時代、柔道の選手でした。. Aさんは息子のBさんに厳しく柔道を教えました。 だけど、AさんはBさんの父親ではありません。. AさんとBさんの関係は?. 図2 1日目の授業の導入に用いたクイズ. それぞれの問題において生じやすいと想定した非柔軟な情報処理もしくは非 合理的な思考に基づく解答は,①に関しては, “急いで答えようとするあまり. 合理的な思考ができず,正解は3位であるが,2位と答えてしまう”,②に関 しては, “正解は中国語であるが,英語が国際共通語であることから,国によ る人口の違いを考慮せずに英語と答えてしまう”,③に関しては, “『柔道』. 『厳しい』という言葉からステレオタイプ的に男であると思い込んでしまうと いちばん妥当な『母親』という答えに気づきにくい”といったものである。い. ずれも,自分が日常的に判断していることが必ずしも柔軟で合理的な情報処理 ではないことを認識させることによって,これから行う授業が自分にとって意 義があるものだと感じさせるとともに,非柔軟な情報処理について興味を抱か. 一16一.

(19) る目的で出題した。. また,今回の授業の中心的な話題であるステレオタイプについて,それがど のようなもので,ステレオタイプ的認知をすることによってどのような問題が 生じるのかということについての概要を理解させるために,生徒にとって比較 的身近だと考えられる血液型ステレオタイプを例に取り上げて話題を作った。. さらに,今後の授業の概要については,“2日目の授業から非柔軟な対人情報 処理にどのようなものがあるのかを具体的に勉強する”といった程度の簡単な 説明にとどめた。. 1日目の授業の概要を図3に示す。. 1.非柔軟な情報処理をする傾向が自分にも当てはまることに気づかせるためのクイズの. 実施 2.血液型による性格判断を用いた話題作りとステレオタイプについての説明 ○血液型による性格判断を信じるかどうかについて生徒に質問する。 ○血液型による性格判断には心理学的な根拠がないことについて解説する。 ○血液型による性格判断の例をもとに,ステレオタイプの意味について説明する。 ○ステレオタイプ的認知を行うことによって生じる問題点について説明する。. 3.誰でも非柔軟な対人情報処理をしてしまっていることについての説明 ○非柔軟な対人情報処理をする傾向が実験者自身にも当てはまることを説明する。. 4.柔軟な対人情報処理をするためには非柔軟な対人情報処理の具体的内容について知る ことが必要であることの説明 ○柔軟な対人情報処理をするためには適切なメタ認知を働かせることが有効であるこ とと,そのためのメタ認知的知識として,非柔軟な対人情報処理には具体的にどの ようなものがあるのかを知ることが重要であることを説明する。. 5.特定の見方や考え方を強制しているわけではないことの説明. 6.以後の授業の概要についての説明. 図3 1日目の授業の概要. 17.

(20) 2日目 情報の内容に対する吟味不足(1) 情報が伝達される過程でどのような歪み方をするのか,また,その原因は何 かについて,後述する例証実験の結果(図23)などを提示しながら説明を行っ. た。ここで提示した例証実験の結果は,ある人物についての情報が,情報の送 り手がその人物に対して抱いている感情によって歪みやすいことを示したもの である(実験結果の詳細については後述の例証実験についての説明を参照)。 また,本来ここで獲得させようとしたメタ認知的知識は, “伝達過程で生じ る歪みをあまり考慮しない傾向がある”ことであるが, “考慮しないこと”が 自分にも当てはまることを実感させるためには, “伝達過程で生じる歪みがど. のようなものか”を体験的に理解させるのが効果的であると判断し,情報の伝 達過程で生じる歪みを,情報の送り手の意図や感情によって生じる歪みと,そ のような影響がなくても人間の記憶の限界などによって生じる歪みに分けて,. それらの歪みがどのようなもので,なぜ生じるのかといったことについて説明 を行った。. なお,授業の中で,新聞記事を例に,情報が送り手の意図によって歪む傾向 があることを学習させたので,さらにそのことをより強く実感させるために, 新聞や雑誌の記事の中に見られる送り手の意図を指摘させる課題を与えた。. 2日目の授業の概要を図4に示す。なお,2日目から8日目までの授業の概 要を示す図中のi⊥1[liで囲んだ内容は,生徒に獲得させようとしたメタ認矢・. 的知識の核心部分であるが,実際に授業で用いた表現に沿って記述しているの で,前述の問題や本文の中で用いている表現とは若干異なる部分もある。. 一18一.

(21) 1.他者からの情報が歪んでいる可能性をあまり考慮しない傾向についての説明 i情報は伝達される過程で歪んでいる可能性がある。にもかかわらず,人にはそのこ} iとをあまり考慮しない傾向がある。 i. (1)情報の送り手の意図や感情によって生じる歪みについての説明 ○情報の送り手の感情によって伝えられる情報が歪むことを,例証実験の結果を提示 して説明する。 ○情報の送り手の意図によって伝えられる情報が歪むことを,意図的に作成されてい ると考えられる新聞記事を提示し,記事を書いた人物の意図がどのようなところに 表れているかを考えさせながら説明する。 ○情報の送り手の意図によって生じる歪みとして,送り手に都合のいい誇張や省略お よび証言の提示などがあることを説明する。 ○場合によっては,相手が意図的にうそをつくこともあることにも言及する。 (2)情報の送り手の意図・感情の影響がなくても生じる歪みについての説明 ○情報が歪む原因は送り手の意図や感情だけではなく,記憶の限界などによっても歪 むことを,伝言ゲームの例などをもとに説明する。 ○歪みの内容として,内容が単純になりやすいこと,送り手の関心の高い事柄や印象 に残った事柄が強調されやすいこと,あいまいなことや矛盾することをこじつけて まとめようとすること,などがあることを説明する。 ○このような歪みが生じている可能性の高い“うわさ”について,次のような恐ろし い面があることを説明する。 ・誰もが納得できる内容になりやすい。 ・うわさを伝える本人は真実だと思って伝えている。 ・いったんうわさなどで印象が作られると,もとの情報が否定されても印象だけが. 残りやすい。. 2.学習内容の整理. 3.課題の提示(課題1) ○新聞や雑誌の中から,情報の送り手の意図によって都合のよい誇張や強調,省略,証 言の提示などが行われていると思う部分を見つけてくるように指示する。. 図4 2日目の授業の概要. 一19一.

(22) 3日目 情報の内容に対する吟味不足(2) まず,導入として,日常場面で人が情報を信じるかどうかの判断をするとき に,いかに内容以外の要因の影響を強く受けているかを, “雑誌に,ある店の. 料理がおいしいと載っていると,そうでなくても本当においしいと信じてしま いやすい”といった身近な例をいくつか提示し,このような傾向が一般的なも ので,自分にも当てはまるものであることを認識させた。. また,情報の送り手が誰かによって信じられ方が異なることについては,例 として,後述の図28に示す新聞記事を提示し, “記事の中で大学の教官によっ. てコメントされている内容は,筆者のような高校の教員でもある程度は述べら れる内容であるが,大学の教官の権威を利用することで説得力を高めようとし ている可能性がある”といったことを説明した。. さらに,バーナム効果については,占いがどのような内容でも信じられやす いことを実証した後述の例証実験の結果を提示しながら説明を行った(実験結 果の詳細は図25を参照)。ここでは,どちらの性格判断についても,占いの本 の通りの内容と,本の内容を入れ替えたでたらめな内容とで,全体として当た っていると思う程度に差がないことと,全体の80%以上の生徒の回答が“もの すごく当たっている”から“すこし当たっている”までの問にあることから, 占いによる性格判断が,どのような内容でも,ある程度当たっていると思われ やすいことを強調した。ただし,説明にあたって,バーナム効果という用語は 用いなかった。また,真内容については, “ものすごく当たっている”と回答 した人の中に,占いをよく知っていると答えた人が半分以上いたことにも触れ,. 当たっていると思うことで,日頃から自分の性格を占いの内容に沿って認知し てしまっている可能性があることにも言及した。. なお,占いなどと関連する“俗信”の中にも非合理的なものが数多くあり,. それを無批判に信じることによってさまざまな問題が生じることについても簡 単に解説した。. 3日目の授業の概要を図5に示す。. 一20一.

(23) 1。情報の内容以外の要因に影響されて信愚性を判断する傾向についての説明 }情報の内容以外のことが,情報を信じるかどうかの判断に大きな影響を与えてし{. iまいやすい。. 1. (1)日常的な判断の中に見られる例の提示 ○日常,“新聞に書いてあったから”,“雑誌に載っていたから”といった,情報の 内容以外の要因で信悪性の判断をすることが多いことを説明する。 (2)誰が言ったかによって信じられ方が異なることについての説明 ○送り手の社会的地位や送り手と受け手の人間関係などが情報を信じるかどうかの判 断に影響することを,社会的地位の高い人物からの情報が信じられやすいことを実 証した過去の研究を提示して説明する。 ○新聞でも,記事の説得力を増すために,その内容を支持するような大学の教官など のコメントが載せられていることを説明する。 ○情報の内容以外のことに影響されて信悪性の判断をすることが,そのまま非柔軟な 情報処理だというのではなく,自分で考えようとせずに無批判に受け入れてしまう ことに問題があることを強調する。 (3)情報に接したときの気分によって信じられ方が異なることについての説明† ○気分が落ち込んでいるときは他者の話を無批判に受け入れてしまいやすいことを, 失恋したり身内に不幸があったりしたときに宗教の勧誘を受け入れてしまいやすい ことなどを例に挙げて説明するe. 2.バーナム効果についての説明 i言葉で表現される人の特性は本来誰でも少しは有しているものであって, “どの程i i度有しているか”について判断すべきものである。ところが,われわれは,それをi i“ある”, “なし”で判断しようとしがちなために,どのような特性が自分や他のi i人に当てはまると言われても,当たっていると思ってしまいやすい。そのため,占i. iいによる性格判断は信じられやすい。. i. (1)占いによる性格判断は当たっていると思いやすいようになっていることについての. 説明 ○例証実験の結果から,占いによる性格判断が,本の通りの内容でも,でたらめな内 容でも同じように当たっていると思いやすいことを説明する。 ○なぜ当たっていると思いやすいのかについて,上述のメタ認知的知識で述べた内容 を解説する。. ○占いによる性格判断を信じてしまうことによって,自分の性格を占いの内容に沿っ て認知してしまったり,特定の人や集団に対する根拠のない印象を作り出すといっ た問題が生じることを説明する。 (2)俗信を無批判に信じることによって生じる問題点についての解説 ○占いだけでなく.,一般に俗信と呼ばれるものの中にも非合理的なものが多く存在し, それらを過度に信じることによって,さまざまな問題が生じることを説明する。. 3.学習内容の整理 † この内容は,8日目の内容の中の“相手に対する感情やそのときの気分の影響”に も該当するものである。. 図5 3日目の授業の概要. 一21一.

(24) 4日目 少数事例からの決めつけ まず,導入として, “他者の行動については自分の行動ほど状況による変動 を考慮しない”ことを実感させるために,あいさつを例にとって, “自分がい つも同じようにあいさつをしているか”, “気分が悪くてあいさつをしなかっ たことがないか”などについて考えさせた後に, “初めて会った人がぶすっと. していてあいさつをしなかった”というような場面について考えさせた。そし. て,他者の行動の原因はその人物の内的な要因に帰属しやすく,ある人物につ いての少数の偏った事例から推測される特性を,その個人の一般的な特性(性 格や能力)として決めつけてしまいやすいことを説明した。. 次に,ある個人の“少数から全体(内的特性)”への一般化と,ある集団の ‘‘. ュ数(の成員)から全体”への一般化の場合を分けて,少数の事例を過度に. 一般化する傾向についての説明を行った。また,少数の事例(一部の情報)と いう言葉.は,観察した事例が少ない場合と,事例は多くてもそれらがなんらか. の点で偏っている場合の2つの意味があることを説明した。 外集団に対して,その成員の等質性を強く認知しやすい傾向についての学習 にあたっては,外集団,内集団という用語は用いず,自分が所属する集団と自 分が所属しない集団という表現を用いた。また,理解を促進させるために, “内集団一外集団”の関係を, “自分の学校一他校”, “日本一外国”, “自. 分の世代一自分の世代以外”などの身近な例を提示して考えさせた。. さらに,授業後に,学習した知識の精緻化を促進させるために,少数の偏っ た事例から人の性格を決めつけて判断していた経験を思い出させる課題を与え た。. 4日目の授業の概要を図6に示す。. 22.

(25) 1.少数の偏った事例から個人の性格を決めつけて判断しやすい傾向についての説明 iその人の一部の情報しか知らないのに,それだけから性格を決めつけてしまうことがi iある。 i. (1>他者の行動の原因はその人の性格や能力に帰属されやすいことの説明 ○まず, “自分の行動がどんな状況でもいつも同じかどうか”,“他者の行動について, 自分のときほど状況による違いを考慮しているか”などについて考えさせ,他者の行 動については自分のときほど状況による違いを考慮しないことを実感させる。 そして,それによ.って,他者の行動の原因がその人物の性格や能力に帰属されやすい ことを説明する。 (2) “一部の情報”の意味についての説明. ○“一部の情報”という言葉には,観察の回数が少ない場合と,観察の回数が多くても 見ている場面が偏っている場合の2つの意味があることを説明する。. 2.集団内の少数の偏った人物の特性をその集団全体に当てはめてしまいやすい傾向につい ての説明. i集団内の一部の人の特性が,その集団のみんなに当てはまると思ってしまいやすい。. (1)個人について判断するときと同様の傾向が,集団について判断する場合にも存在する. ことの説明 ○個人について少数の事例を過度に一般化して性格を決めつけて判断しやすい傾向が, 集団について判断するときにも当てはまり,集団の一部の人の特性が,集団のすべて の成員に当てはまると思ってしまいやすいことを説明する。 ○“一部の人”とは,観察した人数が少ない場合と,人数が多くても偏ったメンバーで ある場合とがあることを説明する。 (2)ステレオタイプとの関連についての説明 ○以上のことがステレオタイプを作り出す原因の1つになっていることを説明し,さら に,このような見方をするのは多くの情報を円滑に処理して自己にかかる負荷を減ら そうとする人間の自然な傾向であることについても説明する.。. (3)外集団に属する人について判断をするときに以上のような傾向が強く働くことについ ての説明. 3.学習内容の整理. 4.課題の提示(課題2> ○少数の偏った事例から“あの人は… だ”,“あの人たちは… だ”などと思い 込んでいる(いた)可能性のある事柄を1つ書いてくるように指示する。. 図6 4日目の授業の概要. 一23一.

(26) 5日目 傾向の有無に対する非合理的な判断 ここで獲得させようとしたメタ認知的知識は非常に論理的な内容なので,授 業の最初に,図7のような,学習させるメタ認知的知識に関連する非合理的な 対人情報処理の例を示し,それらがなぜ非合理的であるのかを考えさせてから, 例に沿ってどこが非合理的かを説明することで理解の促進を図った。さらに,. 授業中の説明だけでは理解が不十分であると予測されたので,一部の度数が空. 白になっている2×2のクロス表について,2つ変数の間に関係がない状態に なるように空白の部分の度数を記入させる問題や,図7と同じようなタイプの 問題を課題として与えた。. 5日目の授業の概要を図8に示す。. どこがおかしいか,考えてみてください。. 次のような判断は,日常よく行われていると思います。でも,どれも,ここに書かれて いることだけでは,そんなことは言えないものばかりです。さて,どこがおかしいのか, 考えてみてください。. ①血液型がA型の人に,堅実な傾向が強いかどうかを判定する心理検査をしたら,「堅 実」と判定された人が8割もいた。よって,A型には「堅実」という特徴がある。. ②堅実な傾向が強いかどうかを判定する心理検査をしたら,「堅実」と判定された人が,. A型は32人いたのに,B型は16人しかいなかった。 A型はB型に比べて,堅実な人 が多い。. ③最近,釣りに行くとよく雨が降る。しかも,雨が降った3回はすべてA君が一緒で,A 君がいなかった前回は降らなかった。A君は雨男に違いない。. ④いままでの英語の実力テストの偏差値を平均すると,僕は64.2で,A君は62.5月中た。 だから,A君より僕の方が英語は得意だ。. 図7 5日目の授業の最初に提示した非合理的な対人情報処理の例. 一24一.

(27) 1.2つの事柄の関係についての非合理的な判断の例の提示 02つの事柄について非合理的な判断を行っていると考えられる例を提示し,どこがお かしいかを考えさせる(図7参照)。 2.共変関係についての理解不足に関する説明 i・特徴がある・,・違いがある・とは言えない・とからでも,あると思。てしまうこi. iがある・. i. 1−−一一■一一一一一一一+一,曽H,曽”r國曹圏.r9■..曽曽,−冒,冒一一一一一r一國一國噛.國一・圏曽−一一冒一冒一一一一一一一一一一一.一一一一一一一一■.一一一一冒冒冒一,一一一圏一一一一一一,一一一一.冒■■一−冒一冒一一冒−−−”,闇一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一1. (1)2つの事柄の間に関係がないとは,どの ような状態を示すのかについての説明 ○右の表のような度数(人数)の分布表を 提示し,このような場合には,“Xであ るか否か”ということと, “Yであるか 否か”ということの間に関係がないこと を説明する。. Yである Yでない Xである. r一一’一一一一一’「”一’一’一’冒−’”冒冒冒” P 32 1. l. Xでない. 8 ir冒冒『『一一一一雫一r『一’幽一’’’’’”一一’’’”. l. k−1旦一一一i. 4. (2>他との比較をしないで特徴があると判断する傾向についての説明. ○図7の①の例については,上の表のi328iのところだけを見て判断しているこ とを示し,“Xでない場合”との比較をしなければ,“XにYである人が多いとい う特徴がある”とは言えないことを説明する。 (3)分母を考えないで,度数(人数)の差だけから違いがあると判断する傾向について. の説明 ○図7の②の例については,上の表のi32iのところだけを見て判断していることを i..!一6一一i. 示し,“Xである”人数が全部で40人で,“Xでない”人数が全部で20人であるこ. とを考慮して,“XであってYである人”と“XでなくてYである人”のそれぞれ の比率を比較しなければ,“XにYである人が多いという特徴がある”とは言えな いことを説明する。 3.偶然に生じている可能性の高い共変関係についての過度の意味づけについての説明 r−−−r一冒−冒一一冒匿一曹匿闇圃■■■r’ny■辱一,一F−F一齢’一齢一一一一P■■,響胃F9■’P一雫一一一一一’一●’F曽r曽■■,r■■■■曹H曹匿’曽−’一冒’■一一−’曽馴曽國■■●層R”辱腰’一’一一一’’’”一’P,’劉一一r一一辱.一一一一一一一一一一一一一一1. i偶然でも生じるようなわずかな違いに過大な意味づけをしてしまうことがある。 i (1)観察の回数が少ない場合でもそれに意味があると思ってしまうことについての説明 ○図7の③の例に示したような少ない回数の観察に基づく共変関係は,偶然でもよく 生じることであるのに,そこになんらかの意味があると思ってしまいやすいことを 説明する。 (2)比較的多くの観察から差が生じていたとしても,それが偶然でも生じ得る程度のも のである可能性をあまり考慮しないで過度に意味づけをしてしまいやすいことにっ. いての説明 ○図7の④の例に示したような差は,2人の英語の実力が全く同じであっても偶然に 生じ得る程度のわずかな差であることを示し,そのようなわずかな差についても過 度に意味づけをしてしまいやすいことを説明する。 (3)以上のような対人情報処理をする傾向が常に“望ましくない”ことではないことの. 説明 ○少数事例から結論を下す必要がないときでも,少数の偏った事例から決めつけてし まうことが問題であることを説明する。. 4.学習内容の整理 5.課題の提示(課題3). 02つの事柄の間に関係がない状態の2×2のクロス表を完成させる課題と,授業で 用いた例(図7)と同じようなタイプの問題を提示する。. 図8 5日目の授業の概要. 一25一.

(28) 6日目 傾向の過度の一般化 まず,授業の最初に,前回までは,ある傾向が存在するとは必ずしも言えな いのに存在すると判断してしまうことに関係する非柔軟な対人情報処理につい. ての授業であったのに対して,今回は,なんらかの傾向が存在することを前提 にして,その上でしてしまう非柔軟な対人情報処理について学習することを説 明した。さらに,学習させようすることの概要を把握させるために, “外国人. に道を聞かれたら思わず英語で答えようとする”といった例を挙げ,確かに “外国人は日本語がわからない人が多い”という傾向はあるが,全員がそうで はないのにそのことを考慮しない傾向があることを説明した。 また, “傾向がある”ということが確率的なものであることの説明では,例 として, “電話を利用する時間は一般に女性の方が男性よりも多い”という傾. 向を提示し,それが女性の方が電話を多く利用している者の確率が高いことを 示しているだけで,各性における個人差も大きいことを説明した。. さらに,交互作用については,後述する授業の基本方針を具体化した内容の ところで示す図30のような例を提示して説明した。なお,説明においては,交 互作用という用語は用いなかった。. 6日目の授業の概要を図9に示す。. 一 26.

(29) 1.前回までの学習との違いについての説明 ○今日からは,“傾向がある”ことが示されたときに行ってしまう非柔軟な対人情報処 理について学習することを説明する。. 2.“傾向がある”ということを確率的なものであると考えない傾向についての説明. i・傾向がある・という。とは・確率的睨てそのよう胴能性が融・と、、う。と iにすぎないのに,そのことを考慮しないで, 正00%そうだと思ってしまいやすい。. (1)“傾向がある”ことを確率的なものでしかないと考えないことによって生じる滑稽 な対人行動の例の提示 ○“外国人に道を聞かれたときに思わず英語で答えようとする”という例を4コマ漫 画を用いて提示して説明する。 (2) “傾向がある”ということの意味とそれを過度に一般化できないことについての説. 明 ○女性の方が男性より電話を利用する時間が多いという傾向を例に, “傾向がある” ということが確率的なものでしかないことや,その傾向がすべての個人に当てはま るわけではないことなどを説明する。. ○性差に関わる傾向を個人に100%当てはめられられないのは,性以外のさまざまな 要因も当該の事象に影響しているからであることを説明する。. 3.ある傾向が存在しても,それが生じる状況などに関する限定条件を考えないことにつ いての説明(交互作用の存在についての考慮不足) i示された傾向が,ある限られた状況だけで生じている可能性を考えずに,どのようi. iな状況においても当てはまると思・て・まいやすい・. i. (1)交互作用がどのようなものであるのかを理解をさせるための説明 ○交互作用の存在を考慮しない情報処理の例として,学校生活に関連した話題を提示 し,状況によって傾向が異なる可能性を考慮することが必要であることを説明する。 ○理解を促進させるために,“ある女性の男性に対する好みに関する傾向が,相手が どのような範疇に属する男性かによって異なる”という例を提示して説明する。 (2)交互作用の存在を考慮するとはどういうことであるのかについての説明 ○交互作用の存在を考慮するということが,それが生じた状況などに関する限定条件 を考慮することであることを説明する。. 4.学習内容の整理. 図9 6日目の授業の概要. 一 27.

(30) 7日目 2つの事柄の関係についての柔軟性に欠ける因果解釈 因果解釈の非柔軟性を指摘するためには,柔軟な対人情報処理をした場合に どれだけ多様な因果解釈ができるかを説明する必要があると判断し,まず,変. 数Xと変数Yの間になんらかの関係があり,そのことについて因果解釈をする 場合の例として図10の①を提示し,さらに,あることが起こった原因をどう考 えるかという原因推論を行う場合の例として図loの②を提示した。そして,そ. れぞれについて,どのような因果解釈が可能であるかについて説明をした。な. お,①については,原因と結果の関係について,(X→Y),(Y→X), (第3の変数の介在による擬似相関)の3つの枠組みが考えられ,1つの枠組 みの中でもさまざまな理由が考えられる例であるが,これについては,授業中 に因果解釈をさせる時間がとれなかったので,プリテストで因果解釈をさせた ものと同じ質問にし,各自のプリテストでの回答を思い出させながら解説を行 った。. さらに,説明を聞いただけでは実際の事例に応用することが困難であろうと 判断し,授業で提示した例と同じ2つのタイプの現象を提示して,それぞれに ついて因果解釈をさせる課題を与えた(後述の図31参照)。. ①いろいろな理由を考えてみましょう. 下の事柄について,理由が1つ述べられています。あなたは,これ以外にどんな理由が あると思いますか?. 小学校5年生を対象にした調査で, r一週間に学習塾に通う時間の多い子どもほど,担任の先生から見て反抗的な傾向が強 い』という結果が報告されています。 (理由). 塾に通う時間が多いと,学校でやる内容を塾でやってしまっていることが多くなり, そのために,学校の授業が退屈になって,担任の先生に反抗的になる。. ②こんな場合,あなたはどう考えますか? 去年は数学がよくわかったのに,今年はわからない。 (理由). 今年の先生の教え方が自分に合っていない。. 図10 7日目の授業の説明に用いた因果解釈の例. 一28一.

(31) 1.柔軟性に欠ける因果解釈をしてしまいやすい傾向についての説明. iある現象がなぜ起こったのかという原因について,もっともらしい原因を1つ考えi iると,他の原因を考えようとしないことが多い。. i. (1) “何が原因で,何が結果か”を決めつけてしまいやすいことについての説明. ○図10の①の例について,変数Xと変数Yの間に関係があるとき,考えられる因果解 釈の枠組として, (X→Y), (Y→X), (第3の変数の介在による擬似相関). の3つが考えられることを説明する。 (2)1つの枠組の中でもさまざまな理由が考えられるのに,それを考えないようとしな いことについての説明 ○図10の①の例について,(X→Y)の枠組みに限ってもさまざまな理由が考えられ ることを説明する。 (3)あることが起こったときに,その原因を多面的に考えようとしない傾向についての. 説明 ○図10の②の例について,あることがなぜ起こったかについての原因推論において,. 原因と思えるものを1つ考えると,それと同時に変化している別の原因の候補があ る可能性を考えないことを説明する。. 2.学習内容の整理. 3.課題の提示(課題4) 授業で提示した例と同じタイプの2種類の現象について因果解釈をさせる。. 図11 7日目の授業の概要. 一29一.

(32) 8日目 抱いている印象に沿った見方,プライドを維持しようとする動機の 影響,相手に対する感情やそのときの気分の影響 ここで学習させる内容は,詳しく授業をしょうとするとかなりの時間を必要 とするものであるが,日程の関係で1日にまとめて行った。そのため,この日 に獲得させようとしたメタ認知的知識は非常に多くなったので,ここでは,後 述する例証実験の結果(図24)を用いた初期印象に沿った原因推論をする傾向 についての解説を中心にし,他のメタ認知的知識については,そのような傾向 があることを例を提示しながら簡単に述べるだけにとどめた。提示した例証実 験:の結果は,ある人物の行動についての原因推論が,その人物に対して抱いた. 初期印象によって大きく異なり,初期印象を変えなくてもすむような原因が考 えられやすいことを本人たちを被験者にして実証したものである(結果の詳細 については例証実験のところを参照)。. また,自尊心を維持しようとする動機の影響と相手に対する感情やそのとき の気分の影響は,印象の形成過程と維持・強化の過程のいずれにおいても関わ ることについても説明した。. 8日目の授業の概要を図12に示す。. 一 30.

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