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高等学校における栄養教育プログラムの実施と評価

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Academic year: 2021

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(1)平成19年度 修士論文 高等学校における. 栄養教育プログラムの実施と評価. 平成19年度修了 教科・領域教育専攻 生活・健康系コース. 学籍番号 MO 52901. 大瀬良 知子.

(2) 一目次一 ・・… @. 緒言. 第1章栄養教育と家庭科について 1.栄養教育. ・・…. ・・…. 1. 4. 5. 2.家庭科教育の視点 3.高等学校の学習指導要領に示されている家庭基礎と家庭総合の内容6 4. 「家庭基礎」の教科書にみる食生活関連の内容 ・・… 8. 5.まとめ. ・・… 10. 第2章 学習者のニーズ・問題点を把握するための食生活調査 1.研究方法 1−1.対象及び調査の実施 1−2.評価データと分析方法 2.結果と考察 2−1.調査対象について. 2−2.身体的特性について 2−3.生徒の不定愁訴について 2−4.栄養i素等摂取状況. ・・…. 11. 15. …. ●● 16. ・…. 17. 2−5.食品群別摂取状況 ・… 19 2−6.自己評価・意図・行動に関する結果 ・… 21 2−7.セルフエフィカシーと意図・行動の関連 ・… 26 2−8.知識とセルフエフィカシー・意図・行動の関係 … 29 2−9.セルフエフィカシー・意図・行動と食物摂取状況の関係 32 2−10.調査結果に基づいた栄養教育プログラム. 34. 第3章 栄養教育プログラム2005の実施と評価 ・・… 36 1.本章に至るまでの研究の経緯と栄養教育プログラム2005の 基本構想. 2.研究方法 ・・… 39 2−1.対象及びプログラムの実施 2−2.栄養i教育プログラム2005の概要 2−3.評価データと分析方法 ・・…. 42.

(3) ・・… @. 3.結果と考察 3−1.対象者の体位及び食物摂取状況 3−2.授業の実施方法や内容に関する評価 3−3.適正摂取量の把握状況 3−4.基本的知識・態度・行動の実態とその変化 3−5.食物摂取状況の変化 3−6.自己評価と摂取量の関係. ・・… @. 3−7.振り返りの記述内容からみた学習の効果. ・・…. 4.まとめと課題. 第4章 改訂したプログラムでの試み 2.研究方法 2−1.対象及びプログラムの実施. 48 49. ・・… @. 51. ・・… @. 53. ・・… @. 55. ・・… @. 60. ・・…. ・・…. 47. ・・… @. 62. 1.序. @. 45. @ 62. 63. 2−2.改訂プログラムの概要 2−3.適正摂取量の把握状況に関する評価データと分析方法 3.結果と考察 ・・… 67. 64. 3−1.適正摂取量の把握に関する夏休み課題の実施状況. 3−2.経過状況 4.まとめと課題. ”●●’ 68 ・・… 70. 要 約. ・・… @. 参考文献. …. 謝 辞. ・・… @. 72. 。・ 74. 77.

(4) 1,緒言 近年,国民の平均的な栄養摂取状態は概ね良好になっているが,他方で生活様式の 多様化や食生活を取り巻く社会環境の変化が進行し,栄養バランスの偏り,欠食の増 加,肥満ややせの増加などの問題が生じている。高校生など青少年の食生活について も,朝食の欠食や生活リズムの乱れ,ダイエット志向などの問題が指摘されている(厚. 生労働省2006,赤松2005,神戸2006)。. 学校では,1889年山形県の小学校で貧困救済のため昼食を提供されたことをきっ かけに給食が始まった。1954年には「学校給食法」が制定され,現在では小学校の 97.4%,中学校の84.9%では,「生きた教材」としてバランスの良い食事を提供し続. けている(文部科学省2005)。しかし,多くの高等学校では,昼食を弁当持参として いるため,食事内容には個人差があり,食事バランスは保証されていないであろう。 さらに高校生になると小・中学生と比べて行動範囲が広がり,自分で食べ物を購入す る機会が増えるため,間食も多く訟る(赤松2005)。そして,適切な食晶選択や食事 の準備のために必要な知識や技術の所有状況についても,「まったくない」と自己評. 価している者は,高校生を含む15∼至9歳の男性で3割,女性で2割に及び,他の年 齢層よりも高率であることが示されている(厚生労働省2001)。高校生は社会に出る. 前の重要な時期にあり,これからの生活を創造する主体者となるにもかかわらず,生 活の基盤となる食生活に関しては様々な問題があり,成人期以降の健康障害が危惧さ. れる。これらのことから,高等学校段階で,望ましい食生活を送ることのできる知識 や態度,実践できる力を定着させる必要があると考える。 高等学校での栄養教育において重要な役割を担っている「家庭」については,ゆと 渚 り教育の導入や生きる力の育成などを目的とした教育課程の編成により,r2003年度 から単位数の少ない「家庭基礎」(2単位)の選択も可能になり(文部省2000),授業. 時数が従来よりも減少している。福岡県における履修状況に関する調査では,7割以 上の学校が「家庭基礎」を選択していることが報告されており(村上2004),全国的 に見ても「家庭基礎」が半数を超えていることが予想される。このようなことから,. 栄養教育にあてる時間は十分確保されている状況であるとは言えない。また,学校で の食育を推進するために,栄養教諭制度が施行されたが,学校給食を実施していると ころが小・中学校に比べて少ない高等学校では,栄養教諭の配置はほとんど期待でき ず,従来の教職員組織下での教育運営とならざるを得ないであろう。. 1.

(5) これらのことを踏まえ,われわれの研究グループでは,高校生に生活の場で実践で きる力を確実に身に付けさせることができ,また限られた教職員で授業時間内に実施 可能な栄養教育プログラムが必要であると考え,その開発研究に取り組んできており グループにおける研究の展開を次のように組み立てている(図1)。まず,プログラム. 開発に向けて,兵庫県内のA高等学校の生徒を対象に,食生活状況や食生活の問題 点やニーズに関する調査を行い,プログラムに取り入れる学習内容を検討する。次い で,作成したプログラムを同じ学校で試行,実施し,実践を通して評価する。さらに,. 効果的なプログラムの要因について分析し,他校にも実施・展開可能な栄養教育プロ グラムを作成することを目指した。. 以上のことを踏まえ,本研究では,兵庫県立A高等学校の生徒を対象に食生活調 査を行い,調査結果を踏まえて作成した栄養教育プログラムを実施,評価することを. 目的とした。本修士論文では,第1章を「栄養教育と家庭科教育について」とし,栄 養教育の考え方と家庭科で扱われる食生活に関する内容を,学習指導要領や文献で調. べ,第2章以降の研究に必要な内容を整理した。第2章は,「学習者のニーズ・問題 点を把握するための食生活調査」とした。高校生を対象とした食生活関連調査につい ては,食生活や健康習慣とそれらに関する意識や態度,知識,行動などとの関連から 行われたものは数多く報告されている(藤田・丸谷1995,宮崎他1995,0mori2003, 門田2004)。しかし,食:物摂取量と態度や行動との関係を示したものは見られなかっ. たので,この点にも焦点を当てて分析した。第3章では,第2章で明らかになった学 習者の特性や問題点をもとに作成した「栄養教育プログラム2005の実施と評価」と し,プログラムを実施し,授業の方法や内容に関する評価やワークシートの記述状況 の分析などのプロセス評価及び,事前と事後の食物摂取状況の比較などの結果評価に ついて論述した。第4章は,「改訂プログラムの試み」とし,栄養教育プログラム2005 の成果や課題をもとにして検討した改訂プログラムについて述べるとともに,高等学 校で栄養教育を効果的に行うために必要な要因についても考察を加えた。. 2.

(6) 図1.研究の展開と修士論文の構成 論文の構成. 第1章. プログラム開発に向けての @ 食生活調査(2004). u栄養教育と家庭科について」. 第2章 u学習者の二.一ズ・問題点を把握するための. プログラム2004の試行と評価. @. 第3章. 栄養教育プログラム2005の. @. 食生活調査」. u栄養教育プログラム2005の @ 実施と評価」. 実施と評価. 第4章. 改訂プログラム2007の実施. u改訂プログラムの試み」. 汎用性のある栄養教育プログラムの作成. 3.

(7) 第1章 栄養教育と家庭科教育について. 第1章では,栄養教育と家庭科で扱われる食生活に関する内容について,文献並び に学習指導要領等について調べたことを記述する。. 1.栄養教育 わが国の栄養教育に関する用語には,「栄養教育」,「栄養指導」,「食:教育」,「食育」,. 「食に関する指導」などがあり,多様に表現されている。しかし,米国ではそれらの. 定義や目的を明確にしており,1970年,ルネ・デュボスは「栄養教育の目的」を「人 間が一番望む種類の健康は,必ずしも身体的活力と健康観にあふれた状態ではなく,. また長寿を与えるものでもない。実際的には各人が自分のためにつくった目標に到達 するのに一番適した状態である」という健康観に通じるものであるとしている(笠原 2003)。つまり,栄養教育においては,食を通して生きる目的を確認し,自分自身に適. 合した価値観を創り出し,食に関する主体的な行動変容を起こすように自覚させ,動 機付けることが大切であり,人々の生涯にわたる健康を保持・増進し,あるいは疾病 を予防するために,実際の生活に密着した食物の摂取に関連して,その状態や食行動. が望ましい形となるように変容させ,QOL(生活の質,人生の質)の向上につなげる ことを目的としていると考えられる。. QOLの向上とヘルスプロモーションについては,世界保健機関(WHO)のオタワ憲 章(1986年)rの中で次のように述べられており,この視点が栄養教育にもつながる。 ヘルスプロモーションの概念は,「人々が健康に資する諸行動や生活状態に対する教育. 的支援と環境的支援の組み合わせであり,自らの健康をコントロールし,改善できる ようにするためのプロセスである」とされており,ヘルスプロモーションの最終的な 目標はQOLの向上である。 次に健康教育とヘルスプロモーション,健康教育の関連について調べてみた。グリ ーン(1991)は,「健康教育は,個人や集団,地域において,健康のためになる行動に. ついて自発的に取り組み,それを実現し強化するために計画された,あらゆる学習経 験の組み合わせである」としている(笠原2003)。この学習経験には,図1−1に示すよ. うに,栄養指導や栄養教育も含まれることから,栄養教育は健康教育の一環として位 置づけられる。この考え方や方法は,「健康日本21」など,わが国の健康づくり対策に 用いられている。. 4.

(8) したがって,わが国における「栄養教育とは」という定義を,明確にすることはで きないものの,栄養教育の目的については,およそのコンセンサスが得られており, 「人々の生涯における健康を保持増進し,あるいは疾病を予防するために,食物の摂. 取状況や食行動が望ましい形になるように変容し,QOLを向上させること」と考える ことができるであろう。. 図1−1.ヘルスプロモーションと栄養教育の位置づけ. ヘルスプロモーション. 教育的支援. 』環境的支援. 健康教育. 栄養教育. ↑↓. [健康]⇒〔亙⊃. ⇒〔亟⊃. “栄養教育論”,香西みどり,金子佳代子,小松龍史編,東京科学同人(2004)を改変.. 2.家庭科教育の視点 次に,高等学校において栄養教育を実施するにあたり,「家庭科」についてみること とする。家庭科は,現在の学校教育における教科課程の一教科であり,小学校では「家 庭」,中学校では「技術・家庭」,高等学校では「家庭」の教科名を指す。家庭科は,衣. 食住・家族・家庭経営・保育等の家庭生活を営むために必要な内容を系統的・科学的・ 実践的に児童・生徒に体得させ,その学習を通して,家庭・社会の構成員として望まし い資質を培うことにより,人間形成に寄与する教科である。 小学校,中学校,高等学校の家庭科の目標を達成するための内容や指導方法の研究,. 指導計画の立案とその実践,結果の評価,改善など一連の教育活動を行い,家庭科を 通して,児童・生徒を意識的に望ましい方向へ導こうとする学問分野を「家庭科教育」. という。学校教育においては,一般に各教科を中心に教育が行われ,この各教科の教 5.

(9) 育を総合して「教科教育」といい,家庭科教育もこの教科教育の一つである。 家庭科教育のねらいは,小・中・高等学校に共通していることとして,「実践的な態. 度を育てる」ことであり,知識を持っていても実践することが出来なければ,家庭科 を学習したことにならないとも考えられている。そして,発達段階に応じた学びの視 点があり,小学校では,家族の一員としての視点,中学校では,自分の生活を自立を 図るという視点,高等学校では,近い将来,自らの家庭を作るので,家族を含めた生 活を自分なりに作り上げていくという,生活を創造する主体者という視点から学習さ せる(櫻井2005)。また,家庭科で重要なのは,「自分たちの生活をよりょくするため に」という前向きな視点である。今の生活が少しでも快適に,よくなるように,児童・ 生徒が自分なりに学習したことを生かして活用できるようにすることが大切である。. 3.高等学校の学習指導要領に示されている家庭基礎と家庭総合の内容 平成12年改訂(15年度から適用)の高等学校学習指導要領では,普通教科「家庭」 の科目構成は「家庭基礎」「家庭総合」「生活技術」となっている。そして各学校の方 針に従い,「家庭基礎」2単位や「家庭総合」4単位などの選択が可能である。そこで,. 一般的に履修されている「家庭基礎」と「家庭総合」の食生活に関する目標や内容を 調べ,文献(岡2006)の枠組みを使って表1−1にまとめた。 単位数が少ない「家庭基礎」では,「家庭総合」に示されている内容よりも少ないが,. 基礎的な事項として身につけておくべきことに大きな差はなく,依然として学習内容 は多いものとなっている。したがって,限られた時間で充実した学習にするためには, 指導上の何らかの工夫が必要であろう。. 6.

(10) 表1−1 高等学校学習指導要領に示されている「家庭基礎」と「家庭総合」の内容. 教科の目標. 家庭基礎. 家庭総合. 人の一生と家族・福祉,衣食住,消費生活. 人の一生と家族,子どもの発達と保育,高齢. などに関する基礎的・基本的な知識と技術. 者の生活と福祉,衣食住,消費生活などに関. を習得させ,家庭生活の充実向上を図る能. する知識と技術を総合的に習得させ,生活課. 力と実践的な態度を育てる。. 題を主体的に解決するとともに,家庭生活の. 充実向上を図る能力と実践的な態度を育て る。. 食生活につ. 栄養・食品・調理について,基礎的な知識. 栄養・食品・調理などについて,基礎的な事. いr学習す. と技術を,実験・実習を中心とした学習活. 項を科学的に理解させるとともに,食生活の. る視点. 動と通して習得させる. 文化に関心をもたせ,食品の選択や調理など の技術を習得して心豊かで充実した食生活を 営むことができるようにする. 栄養・食品. 家族の一日の献立 健康に配慮した食生活の管理 栄養素の種類と機能 食事摂取規準や食品群別摂取量の目安 栄養価計算盛. 食品の栄養的特質 食品群,日本食品品準成分表歯 調理. 様々な様式,調理法,食材を用いた題材 調理の基礎技術 資源・エネルギーに配慮した調理歯. 調理上の性質を生かした調理法 安全・衛生. 食品の腐敗や変声,食中毒,食品添加物 近年の食品の安全性(食晶添加物・輸入食品禽). 安全に配慮した食生活の管理 食文化. わが国の食生活の変遷索 配膳や食:事マナー. 生活文化の伝承密. 岡陽子による「初等教育資料」(平成18年9月号)に示された表の枠組を使って目標や内容を まとめた。内容については,「家庭基礎」になく「家庭総合」に示されている内容に*を付けた。. 7.

(11) 4.「家庭基礎」の教科書にみる食生活関連の内容. 平成19年度では,「家庭基礎」の教科書は7社から11種類出版されており,各学校 の実態に合わせて教科書を選択して使用している。ここでは,3社の教科書(平成16 年度,平成18年度検定)の内容を目次に示されている項目を使って内容を整理した。 なお,C社は,本研究の対象校で使用されているものである。 指導要領の内容と対応させるため,表1−1の枠組みを使ってまとめることを試みた。. しかし,教科書には「栄養」の前に位置づけられる食生活の現状にかかわる内容があ ったので「食生活」というカテゴリーを付け足した。また,教科書の内容を「栄養・ 食品」というカテゴリーでは整理しにくかったので,「食品・調理」として表1−2にま とめた。どちらの教科書も,「栄養→食品→調理」という一連の流れで記載されていた が,実際にはこの順序で学習されているのかどうかはわからない。. また,教科書には,学習指導要領で定められている内容が,かなりコンパクトに記 載されており,生活経験の乏しい生徒に対して,実践に繋がる系統的な知識の定着の ためには,効果的な教育方法や指導法に何らかの工夫が必要であろう。. 8.

(12) 表1−2 「家庭基礎」の教科書にみる食生活関連の内容. A社 食生活. 栄養. 「食べる」とは. B社 私たちの食:生活と栄養. C社 .人間と食べ物. 高校生の食生活. 豊かな食:生活のために. 食べるということ. 食:生活のポイント. 現代の食生活とその. 現代の食:生活. 食事を設計する力. 課題. 食品と栄養. 栄養と食:事. 栄養と栄養素. 健康の維持増進 栄養素の種類と機能. 栄養素の働き. 栄養所要量と食品摂取. 栄養所要量と摂取量の. のめやす. めやす. 食品と栄養の関係. 家族の食事計画 食品・調理. 食品と調理. 食品の選択. 食品の成分と特性. 食品の栄養と特性. 食品の選択と購入. 食品の選択と保存. 食品の管理 調理の目的と調理操作. 献立と調理. 食事をつくる. 調理の実際. 献立の作成. 食事プラン. 食事のしかた. 調理の基本. ライフステージと 食生活. 献立・調理 安全・衛生. 調理の実際. 食生活の安全と衛生. 食品の管理と安全. 食品の衛生と安全性. 食品の管理. 食生活の環境. 食品の安全性. 食生活を見直す. 食生活と環境 食生活と環境保全 食料資料. 食文化. これからの食生活. 四季の彩りと行事食. 索A・B社は平成玉6年度検定,C社は平成18年度検定済みの教科書より目次の項目を分類し て示した。太字は,単元名を示す。. 9.

(13) 5.まとめ. 栄養教育は健康教育における重要な位置にあり,その目的は,幅広い視点からの 取り組みを通してQOLを向上させることにある。家庭科では,生活者としての視点,. 特に高等学校では,生活を創造する主体としての視点を重視しており,家庭科の目 標と栄養教育の目的には共通している点が多いと考えられる。また,家庭科の学習 内容は,食生活を営む上で必要な基礎・基本が示されていることも教科書の内容か ら確認できたが,授業時問の不足が指摘されている中で,学習内容を定着させるた めの方策も検討しなければならない。したがって,効果的な栄養教育プログラムは 必須であり,それを家庭科に取り入れる可能性を考える方向で次章からの研究を進 めた。. 10.

(14) 第2章 学習者のニーズ・問題点を把握するための食生活調査. 栄養教育プログラムを実施・評価するにあたって,まず,学習者の食生活状況,. また食生活上のニーズや問題点の把握を行った。先行研究では明らかになっていな い,食物摂取量と態度や行動との関係にも焦点を当てて分析した。. 1.研究方法 1−1.対象及び調査の実施. 2005年9.月,家庭科の授業時間に実施した。調査対象者は,兵庫県立A高等学. 校の2年生233名(男子103名,女子130名)で,回収率は100%,有効回答率は 97%であった。対象校は農村部に位置し,生徒の約90%が自転車通学をしており, また約45%が部活動として運動部に所属していた。. 1−2.評価データと分析方法 (1)食物摂取状況調査 食物摂取状況調査には,「エクセル栄養君 食物摂取頻度調査FFQg」(建吊社:)の質 問票を使用した。食物摂取頻度調査法(FFQ, Food Frequency Questionnaire)は,. 比較的長期間の食生活状況を把握することを目的に実施されているものであり,食 品リストによく喫食されている食品があげられており,それらの食晶に対して設定 された重量とその頻度を回答する方法で,時間やコストがかからないという利点が ある。FFQgは, FFQをもとに,質問する食品群と食晶群ごとのポーションサイズ(標. 準摂取量)および調理法を見直し,さらに食品イラストも利用して,日常の1∼2ヶ ,月程度の期間の栄養素および食品群別摂取量を推定するための市販ソフトである (高橋2003)。本調査では,管理栄養士の説明のあと,生徒6名に対して1名の食:物. 栄養専攻の大学生が,記入状況を見ながら説明を加える形で自己記入させた。回収 後,回答に不備があるものについては,再度返却して記入させた。. 身体活動レベルについては,部活状況と通学手段・時間より判断して分類した。. ll.

(15) (2)食生活に関する質問調査の内容と得点化. 食に関する知識・態度・行動のほか,食生活状況については,健康観や食事観, 不定愁訴,コンビニエンスストアの利用状況等についても質問した。. 食に関する知識・態度・行動については,食事を「食べる」行動,食事を「作る」. 行動,食を営む力や「伝承する」行動を含めた食行動全般を視野に入れて評価する 尺度(松下・足立2000)を参考にして調べた。調査の内容を表2−1に示した。 表2−1に示すように,基本的知識については,料理・食:材料・栄養素・献立の4つ のレベルで主食・主菜・副菜に関する知識を問う問題を作成した。料理レベルでは,. 9種類の料理を主食・主菜・副菜に分類するものを,食材料レベルでは,9種類の三 二が主にどの料理形態(主食・主菜・副菜)に分類されるのかを問うものとした。 献立レベルの質問では,バランスのとれた献立にするために補う1品を記入させた。. 正解には,1問につき1点を与え,各レベルの問題数にかかわらず,各レベル100点 満点とした。. 態度については,自己評価と意図で構成し,「食べる」という行為に加えて「調理」. 「表示利用」という行為に対しても,質問を作成した。なお,本調査では行為がで きるかどうかの判断を「自己評価」とした。「食べる」という行為に関する具体的な 質問項目の内容は,料理の「組み合わせ」(1項目)と「適正摂取量」(4項目)に関 わるものであり,自己評価,意図,行動に同様の内容を設定した。また,「適正摂取 量」の自己評価は,「組み合わせ」「調理」「表示利用」と異なり,説明できるかどう. かを自己評価するものとした。具体的な質問は表2−1に示している。. 自己評価,意図と行動に対する回答の得点化の方法を表2−2に示した。いずれに対. しても表2−2に示すような4つの選択肢を設け,その中から1っを回答させ,得点化 した。2群で分析を行うときは,3点と2点を「Positive群」,1点と0点を「Negative 群」とした。また,自己評価・意図・行動の関係を見る際,「組み合わせ」(1項目). と「適正摂取量」(4項目)の5つの質問を合わせ,15点満点として集計した。点数 の平均値と分布から,o∼7点を「Low群」,8∼15点を「High群」とした。. 12.

(16) 表2−1.質問調査票の内容. 大項目 中項目. 小項目. 内容または質問. 基本的 料理. 9種類の料理を主食・主菜・副菜に分類. 知識. 主食・主菜・副菜を構成する食材料(9種類)の分類. 食材料. 主食・主菜・副菜に含まれる主な栄養的役割の分類. 栄養素. (3問). 献立. 栄養バランスがとれた献立の作成(3問). 自己. 組み合わせ. 料理を組み合わせて食べることができますか. 評価. 適正摂取量. 意図. 野菜. 自分の身体にあった野菜の量を説明できますか. ご飯. 自分の身体にあったこ飯の量を説明できますか. ご飯とおかず. ご飯とおかずの適当な量の割合を説明できますか. 調理. 料理を作ることができますか. 表示利用. 食品を買うときに,栄養成分表示を利用することができますか. 組み合わせ. 料理を組み合わせて食べようと思いますか. 適正摂取量. 行動. 自分の身体にあった肉の量を説明できますか. 肉. 肉. 自分の身体にあった量の肉を食べようと思いますか. 野菜. 自分の身体にあった量の野菜を食べようと思いますか. ご飯. 自分にあった量のご飯を食べようと思いますか. ご飯とおかず. ご飯とおかずを適当な割合で食べようと思いますか. 調理. 料理を作ろうと思いますか. 表示利用. 食品を買うときに,栄養成分表示を利用しようと思いますか. 組み合わせ. 料理を組み合わせて食べていますか. 適正摂取量. 肉. 自分の身体にあった量の肉を食べていますか. 野菜. 自分の身体にあった量の野菜を食べていますか. ご飯. 自分の身体にあった量のご飯を食べていますか. ご飯とおかず. ご飯とおかずを適当な量の割合で食べていますか. 調理. 料理を作っていますか. 表示利用. 食品を買うときに,栄養成分表示を利用していますか. 13.

(17) 表2−2.得点化の方法. 3点 自己評価 意図. 行動. できる とても思う している. 2点. 1点. 0点. 少しできる. あまりできない. できない. あまり思わない. 思わない. あまりしていない. していない. 思う. 時々している. (3)解析方法. 男女の群問,Positive群とNegative群の関連の検定にはκ2検定またはFisherの直. 接確率計算法を用いた。2群問の平均値の検定にはT検定,3群問には多重比較の一 元配置分散分析を用いた。なお,データの集計及び解析には,米国SPSS社の統計処 理ソフトSPSS(Ver.12.0)を使用した。. 14.

(18) 2.結果と考察 24.’. イ査対象について. 家族構成は,3∼5人で住んでいる者が70%を占めていた。また,学習塾に通って いない生徒は,全体の83.6%であり,ほとんどの生徒が学習塾に通っていない。. 朝食を欠食している者の割合は,全体で2.8%であった。平成16年度,国民栄養 調査の結果では,15∼19歳の朝食欠食:率は全体で12.4%,男子では14.2%,女子で は10.2%であった(厚生労働省2006)。対象校の朝食欠食:率は,全国平均より低い値 であった。. 共食状況を調べると,朝食を,一人で食べる男子が60.6%,女子は46.1%であっ. た。夕食については,家族全員で食べる生徒が54コ%であった。男女とも同じ傾向 で,朝食は一人で食べるが,夕食は家で家族そろって食べるという傾向が見られた。. 2−2.身体的特性について. 結果は,表2−3に示すとおりである。BMIの分布は,日本肥満学会の判定基準に従 い,18.5∼25を普通とし,それ以上を肥満,それ未満をやせとした。BMIの分布を 見るとやせの者の割合は男子で12.6%,女子で17.7%である。肥満の者は男子で6.8%,. 女子で7.7%であった。やせと肥満の割合をみるとやせの方が多いことがわかる。平 成15年度国民・健康栄養調査の結果では,女子のやせの割合は16.3%であり,対象校. のほうが少し多いもののほぼ同程度であった。「健康日本21」でも,20歳代女性の やせの者を減少させることが挙げられており,その目標値は15%以下である。全国 的な傾向と同様で,女子の痩身傾向が強いことがわかった(厚生省2000,厚生労働 省2005)。. 表2−3 身体的特徴 男(n=103). 身長(cm). 1705 ±. 体重(kg). 61.6. ±. BMI. 2L董. ±. 6 10.2. 2.9. 女頓=130) 157.1 ±. 5.2. 50.9 ±. 6.8. 20.1 ±. 4.0. I&5未満の者の割合. 12.6%. 17.7%. 25.0以上の者の割合. 6.8%. 7.7%. 数値は,平均±標準偏差である。. 15.

(19) 2−3.生徒の不定愁訴について. 「だるい・疲れやすい」と「横になって休みたい」の項目では平均点が2点以下 と,全項目の平均より低い値であり,日々の疲れを感じていることが分かった。 男女間で有意差が見られた項目は,「立ちくらみ」,「便秘」,「肩こり」であり,女. 子の方が得点が低く,健康状態に異常を感じている者が多いということがわかる。 その他の項目ではほぼ同じ得点であり,男女でそれほどの違いはないといえる。. 不定愁訴の状況. 表 2−4. 全体(214人). 女(115人). 男(99人). 有意差. 立ちくらみ. 2.1. ±. i.l. 2.4. ±. L2. 1.9. ±. 1.0. 頭痛,腹痛. 2.8. ±. l.2. 2.7. ±. L2. 2.8. ±. 1.2. 食欲がない. 2.8. ±. LO. 2.9. ±. 1.O. 2.7. ±. 1.1. だるい・疲れやすい. 2.0. ±. 1.O. 2.0. ±. L1. 2.0. ±. 0.9. 便秘. 2.8. ±. l」. 3.0. ±. 1.1. 2.6. ±. 1.1. *. 首・肩こり. 2.4. ±. 1.2. 2.7. ±. 1.2. 2護. ±. 1.2. *. イライラする. 2.6. ±. 1.l. 2.6. ±. 1.l. 25. ± LI. 横になって休みたい. 1.7. ±. l.0. 1.7. ±. L1. 1.7. ±. 全項目の平均. 2.4. 2.5. *. 0.9. 2.3. “しばしば感じている”を1点,“ときどき感じている”を2点,“たまに感じている”を3 点,“感じていない”を4点として得点化した。表中の値は平均±標準偏差として表した。 *p<0.05(男vs.女, T検定). 16.

(20) 2−4.栄養素等摂取状況. 栄養i素等摂取状況の評価として,日本人の食事摂取基準2005の推定平均必要量 (EAR)を基準に不足者の割合を調べた。またEAR.がないものについては,目標量 (DG)を基準とし, DGに達していないか;示された範囲外にある者の割合を調べ. た。集団を対象とするエネルギー摂取量については,BMIが適正な範囲(185以上 25.0未満)にある者の割合を指標とすることになっているが,ここでは,前項の身. 体的特性の結果よりやせの者の割合が多かったことに着目して,推定エネルギー必 要量を満たさない者の割合を調べた。これらの結果は,表2−5に示すとおりである。. 男子ではエネルギー,ビタミンC,カルシウム,食物繊維において60%以上の者が それぞれの栄養素等を満たせていなかった。男子で脂肪エネルギー比率が30%を超 える者の割合は,36。9%であった。女子では,エネルギー,ビタミンB1,ビタミンC,. カルシウム,鉄,食物繊維において60%以上の者がそれぞれの栄養素を満たせてい なかった。さらに,女子では脂肪エネルギー比率30%を超えている者が,55,4%で あった。. 脂質の過剰摂取は,生活習慣病のリスクを上げることから,「健康日本21」でも脂. 肪エネルギー比率の減少が掲げられている。今回の調査でも,女子においては,脂 肪エネルギー比率の適正範囲を半数以上の者が超えているのは問題であろう。. 17.

(21) 栄養素等摂取状況. 表2−5 男. 女(n=130). (n==103). 平均. 標準偏差 食事摂取基準 EARまたはDG 平均 D. 標準偏差 食事摂取基準 EARまたはDGを満. を満たさない者. 1). の割合(%). エネルギー 脂肪エネルギー比率. (kcal). 2527. 585. 2200. 81.5. 4.3. 65. 8.7. 62.0. 口. 19.1. 50. 6。9. 401. 850. 68.0. 556. ±. 223. 650. 685. 3.3. 10,5. 49.5. 7.7. ±. 2.7. 11. 75,4. 364. 700. 18.4. 753. ±. 263. 600. 5.4. たんぱく質. 82.1. 25。9. カルシウム. (mg). 748. 鉄. (mg). 842. ± 間. 4.9. ビタミンA. 1898 30.3. 27.8. (9). 9.6. (%) 63.1 3.9, 36.92). (%). (μRE). 2750. 757. たさない者の割合. 20∼30%. 20∼30%. 1.5, 55.42). ビタミンB1. (mg). 1。2. 0.4. 1.5. 52.4. 0.9. ±. 0.3. 1.2. 70.8. ビタミンB2. (mg). 1.4. 0.6. 1.7. 52.4. 1.1. 丁. 0.3. 1.3. 56.2. ビタミンC. (mg). 75. 40. 100. 63.1. 74. 丁. 33. 100. 69.2. 食物繊維総量. (9). 11. 4. 97.1. 11. ±. 4. 17. 93.1. 食塩換算摂取量. (9). 8.7. 3.0. 20 10. 27.03). 7.6. ±. 25. 8. 46.03). 1) 食事摂取基準のEARまたはDGの値を示した。 エネルギーは,推定エネルギー必要量(EER)である。. EARを示した栄養素は,たんぱく質,鉄,ビタミンA,ビタミンB1,ビタミンB2,ビタミンCである。 DGを示した栄養素等は,脂肪エネルギー比率,カルシウム,食物繊維総量,食塩換算摂取量である。. 2) 脂肪エネルギー比率では,DGを満たさない者・超える者の人数割合を併記した。 3) 食塩換算摂取量では,DGを超える者の人数割合を示した。. 18.

(22) 2−5.食品群別摂取状況. 玉6群の食:品群でみた摂取状況の結果は,表2−6に示すとおりである。男子の菓子 類は,食:品群別摂取基準量(32g)に対する割合が,300%に近い値であった。一方,. 種実類,いも類,果実類,緑黄色野菜,その他野菜類,海草類の食晶群別基準量に 対する割合は,50%以下であった。女子の菓子類でも,食品群別基準量(30g)に対 する割合が,300%を,嗜好飲料(52g)でも200%を超えていた。一方,種実類,い. も類,果実類,緑黄色野菜,その他野菜類,海草類では50%以下であった。男女と も同様の傾向にあることがわかる。. 野菜の摂取量は,上述のように男女とも基準量の50%以下であった。「健康目本. 21」では,1日350g以上摂取することが望ましいとされている(厚生省2000)。全 国的な傾向と同様に大幅に下回っているという結果であった。. 栄養素等摂取量状況のところで,平均値でみた脂肪エネルギー比が高いことを指 摘したが,それは菓子類の過剰摂取が大きな要因であると推察している。また,野 菜・いも類の不足は食物繊維の不足と関連があると考えられる。. 菓子類では食品群基準量に対する割合が200%を超えていた。また,種実類,海草. 類の基準量に対する割合は50%以下であった。この点に関して,本研究の解析に用 いたFFQgでは,菓子類は記録法と比べて199.8%,種実類と海藻類は,それぞれ50.2%,. 405%になることが報告されている(高橋2003)。したがって,これらの摂取量につ いては,調査方法に起因する問題であるかもしれない。. 19.

(23) 食品群別摂取状況. 表2−6. 女. 男 (n=103). 平均. 標準偏差. 平均. 203 ± llg. 317 士 123. 種実類. 2 土 4. l ± 3. いも類. 28 ± 25. 31 土 28. 砂糖類. 5 土 4. 6 ± 4. 菓子類. 94 ± 69. 98 ± 48. 油脂類. 12 ± 6. 12 圭 6. 豆類. 44 ± 36. 39 ± 40. 果実類. 65 ± 67. 74 土 58. 緑黄色野菜. 55 土 34. 54 ± 28. その他野菜. 80 土 62. 87 ± 54. 海草類. 4 土 2. 4 ± 3. 嗜好飲料. 標準偏差. (9). (9). 穀類. (n=130). 182 ± 162. 111 ± 88. 魚介類. 52 圭 40. 43 土 29. 肉類. 99 ± 54. 69 土 38. 卵類. 46 土 27. 40 ± 28. 乳類. 307 圭 288. 174 ± 152. 20.

(24) 2−6.自己評価・意図・行動に関する結果 自己評価・意図・行動のレベルを選択肢の回答割合から調べた。図2−1には,回答状. 況を質問内容ごとに合わせ,自己評価・意図・行動問の比較がしゃすいようにした 結果を,表2−7には,図2−1の結果をもとに4選択肢を2択(Positive・Negative)と したときの回答者割合を示した。. 男女間で結果を比較すると,表2−7に示すように,自己評価に関しては,男女間で. の有意差はいずれの質問内容でも見られなかった。意図に関しては,全ての項目に おいて,女子の方がPositive群の割合が多く,有意差が認められた。「適正摂取量」. に対する行動では,女子の方がPositive群の割合が多く,中でも肉と野菜の適正量摂 取に対して有意差が認められた。男子に比べて女子の方が意図のPositive群の割合が. 多いことから,行動に移そうと思っており,また,自分なりに行動していると答え た者は女子の方が多いようである。. 「適正量摂取」の「肉」と「野菜」では,意図と行動で男女間に有意差があり, 女子の方が肉を摂り過ぎないように,また野菜をたくさん食べようと思っており,. それを行動に移しているということがいえる。意図のレベルは女子の方が高いこと について,平成12年度国民栄養調査結果でも,健康や食生活に対する関心が女子に 比べ男子のほうが低いことが報告されており,同様の傾向である(厚生労働省2002)。 自己評価・意図・行動に対する回答の違いをみると,「組み合わせ」「適正量摂取」. の質問では,意図の程度の高い者(3点と2点,すなわちPositive)の割合が,自己 評価・意図・行動の中で最も多く,次いで行動,自己評価という順であった(図2−1)。. それに対して,「料理」と「表示利用」では,3者の中で自己評価が最も高く,でき. ると思っているけれども行動しようと思わず,また行動していないようである。食 べることに関わる「適正量摂取」については,説明できるか否かという自己評価と したためにPositive群の割合が少なくなったと考えられるが,食べることでは,意図 が最も高いということが「料理」「表示利用」とは明らかに異なるところである。. 図2−2は図2−1や表2−7と類似のものであるが,回答を得点化し,対象者全体の平 均点として図示し,自己評価・意図・行動の3者間の有意差を調べた結果を記した。. このグラフからも「組み合わせ」と「適正摂取量」の質問では,意図が高く,次い で行動,自己評価という順であることが確認できた。. 以上のように,男女間の違いがあることも認められたので,プログラムの実施に あたって,男女間の違いがあることも考慮しなければならない。また,食べること 21.

(25) に関わる「組み合わせ」と「適正摂取量」に対しては,説明できないと自己評価さ れているので,この点を改善するプログラムが必要であるが,自己評価と意図,行 動の3者の関連をさらに調べた結果を踏まえて再考する。. 22.

(26) 図2−1. 自己評価・意図・行動に対するの回答状況 組み合わせ. 自己評価. ・3. 52. 意図 ロ1. 00. 行動. 適正摂取量一肉. ・3. 自己評価. 92. 意図. 口1. ロO. 行動 偽. 2〔隅. 6〔陽. 40瓢. 80瓢. 100瓢. 適正摂取量一ご飯とおかず. 適正摂取量一野菜. 自己評価. 自己評価. ●3. 齢3. ■2. 瘤2. 意図. 意図. 01. 口1. 00. ㎝. 2〔罵. 4〔}覧. 6〔嬬. 脇. 00. 行動. 行動 1〔〕(臨. ㎝. 20覧. 40瓢. 6(購. 繊. 100覧. 表示利用. 町. 自己評価. 92. 意図 01. 行動 ロ0. ㎝. 23. 20瓢. 鱗. 6Q覧. 鱗. 1〔x潟.

(27) 表2−7 自己評価・意図・行動に対するPosltive群の割合 全体 自己 組み合わせ. 評価 適正量摂取. 45.3. 肉. 41.6. 男. 女. 42.4. 47.8. 42.4. 40.9. 野菜. 52.8. 53.5. 52.2. ご飯. 24.8. 24.2. 25.2. 15.2. 11.3. ご飯とおかず 13.1. 有意差. 調理. 60.7. 57.6. 635. 表示利用. 50.0. 49.5. 50,4. 75.2. 67.7. 81.7. *. 62.6. 515. 72.2. *. 野菜. 81.3. 67.5. 94.8. *. ご飯. 65.0. 55.6. 73.0. *. 56.5. 43.4. 67,8. *. 調理. 50.0. 40.4. 58.3. *. 表示利用. 30.4. 21.2. 38.3. *. 行動 組み合わせ. 523. 535. 51.3. 適正量摂取 肉. 49.5. 39.4. 58.3. *. 野菜. 74.8. 63,6. 84.3. *. ご飯. 57.5. 52.5. 61.7. 42.1. 41.4. 42.6. 調理. 43.0. 41.4. 443. 表示利用. 22,4. 20.2. 24.3. 意図 組み合わせ 適正量摂取 肉. ご飯とおかず. ご飯とおかず. 4つの選択肢の中からその程度が高い状態を3点,以下2点,1点,0点 とした(表2−2を参照)。そして, 3点と2点をPositive群,1点と0点 をNegative群とし,表にはPositive群の人数割合(%)として結果を示し た。. *p<0.05(男vs.女, Fisherの直接確率計算法). 24.

(28) 図2−2.自己評価・意図・行動の得点の比較. 組み合わせ. 肉. 野菜. 0自己評価. ご飯の量 ■意図. ご飯とおかず. 藺行動. 耀 表示利用 0. 0.5. 1. 1.5. 2. 2.5. 3. a,b, cの異なる文字間で有意差があることを示す(pくα05). 25.

(29) 2−7.自己評価と意図・行動の関連. 自己評価と意図・行動の関連を調べるために,同じ質問内容の自己評価と意図及 び自己評価と行動の「Positive・Negative」問で2×2のクロス集計をした。表2−8には 自己評価のPositive・Negative群別に意図のPositive群及び行動のPositive群の人数割. 合(%)を示した。そうすると自己評価のPositive群の方がNegative群よりも意図及び. 行動のPositive群の割合が多く,自己評価が高い群では意図や行動も高いという結果 が得られた。全体では,野菜の適正摂取量における行動以外でPositive群と:Negative. 群の問に有意差が見られた。男女別に見ても,男子で自己評価が高い群では意図や 行動も高く,「肉(適正摂取量)」の行動と「表示利用」の意図以外で有意差も見ら. れた。女子でもほぼ同様に自己評価が高いと意図や行動も高いという結果であった が,「適正摂取量」については傾向が異なっていた。女子では野菜の「適正摂取量」 に対する意図と行動のPositive群の割合がそれぞれ94.8%と84.3%(表2−7)と高か ったため,自己評価のPositive・:Negative群に分けても意図と行動のPositive群の者 の割合が高くなったためと思われる。. 同様にして意図のPositive群とNegative群別に同じ内容の行動のPositive群と Negative群の2×2のクロス集計を行った。表2−9には,意図のPositive群・Negative 群別に行動のPositive群の人数割合(%)を示した。意図と行動の関係では,全体・ 男女共にすべての質問でPositive群とNegative群の間に有意差が見られ,意図が高い ものは行動の程度も高いことがわかった。. 以上のように,自己評価と意図,行動とは関連しており,自己評価が高いと意図・. 行動も高く,意図が高いと行動も高いという結果であった。3者の関連については多 くの研究があり(宮崎1995,松下・足立 2000,0mori2003),これらの報告と同様. のことが今回の対象者でも確認された。したがって,食に関する望ましい態度を高 めることで,食行動がよくなっていくと予想される。. 26.

(30) 自己評価と意図・行動の関連. 表2−8. 自己評価 全体 「組み合わせ」. 「適正量摂取」. 肉 野菜. ご飯. ご飯とおかず. 「調理」. (42). Posi重三ve. Nega重ive. (57). (55). (60). 8&1. 52。6 *. 94.5. 70.0. *. * 92.9. 24.6 *. 81.8. 23.3. *. (57). (47). (68). * 71.4. 36.8 *. 80.9. 66.2. * 50.0. 31。6. 76.6. 45.6. (53). (46). (60). (55). 77.4. 52.2 *. 95.0. 945. 69.3. 77.4. 47.8 *. 81.7. 87.3. (53). (161). (24). (75). (29). (86). 意図. 90.6. 56,5. *. 91.7. 44.0 *. 89.7. 67.4. *. 行動. 84.9. 48.4. *. 87.5. 4L3. 82.8. 54,7. *. (n). (28). (186). (玉5). (84). (13). (102). 意図. 85.7. 52.2. *. 80.0. 36.9 *. 92.3. 64.7. 行動. *. 92。3. 363. (n). (97). (l17). 意図. 91.8. 6L5. *. 行動. 86.6. 23.9. (n). (89). (125). 意図. 76,4. 52.8. 行動. 64.0. 39.2. (l13). (101). 意図. 86.7. 75.2. 行動. 79.6. (n). (n). (n). 意図. 行動 「表示利用」. Positive Negative. Positive Negative. 質問の内容. 女. 男. (n). 89.3. 34.9. (130). (84). 59.2. 35.7. 63.1. 11.9. (107). (107). (42). *. *. 86.7. 33.3 *. (57). (42). *. 49.1. 28.6. *. 59.6. 16.7. 意図. 40.2. 20.6. *. 行動. 41,1. 3,7. *. (73). * *. *. *. *. (42). 67.1. 42.9. *. 65.8. 7.1. *. (49). (50). (58). (57). 28.6. 14.0. 50.0. 263. *. 36.7. 4.0. 44.8. 35. *. *. 4つの選択肢の中からその程度が高い状態を3点,以下2点,1点,0点とした。さらに,3点と 2点をPositive群,1点と0点をNegative群とした。同じ質問内容の自己評価と意図及び自己評価 と行動の「Positive・Negative」間で2×2のクロス集計を行い,結果については自己評価のPositive・ Negative二二に,意図及び行動のPositive群の割合(%)として表した。具体的には,「組み合わせ」. については,対象者全体において「組み合わせ」の自己評価がPositive群では「組み合わせ」の意 図がPositive群の割合が91.8%,「組み合わせ」の自己評価がNegative群では,「組み合わせ」の意 図がPositive群の者の割合が61.5%であることを示す。 *p<0.05(Positive vs. Negative, Fisherの直接確率計算法). 27.

(31) 表2−9. 意図と行動の関連. 全体. 質問の内容. Positive. 「組み合わせ」. (n). 「適正量摂取」. (n). 肉 (n). 野菜 (n). ご飯 ご飯と. (n). おかず 「調理」. 「表示利用」. (n). (n). 女. 男. Negative. (161). (53). 64,6. 15.1. (134). (80). 73.1. 10.0. (174). (40). 87.4. 20.0. (139). (75). 74.8. 25.3. (121). (93). 62.0. 16.1. (107). (107). 69.2. 16.8. (65). (149). 55.4. 8.1. Positive. *. *. *. *. *. *. *. Positive. Negative. (67). (32). 68.7. 21.9. (51). (48). 70.6. 6.3. (65). (34). 86.2. 20.6. (55>. (44). 76.4. 22.7. (43>. (56). 74.4. 16.1. (40). (59). 72.5. 20.3. (21). (78). 61.9. 9.0. *. *. *. *. *. *. *. Negative. (94). (21). 6L7. 4.8. (83). (32). 74.7. 15.6. (109). (6). 88.1. 16.7. (84). (31). 73.8. 29,0. (78). (37). 55.1. 16.2、. (67). (48). 67.2. 125. (44). (71). 52.3. 7.0. 4つの選択肢の中からその程度が高い状態を3点,以下2点,1点,0点とした。さらに,3点と2点をPos孟tive群, 1点と0点をNegative群とした。表2−8と同様にしてクロス集計を行い,結果については,意図のPosit茎ve・Negative 群別に,行動のPositive群の割合(%)として表した。 *p<0.05(Positive vs. Negative, Fisherの直接確率計算法). 28. *. *. *. *. *. *. *.

(32) 2−8。基本的知識と自己評価・意図・行動の関係. 主食・主菜・副菜に関する知識を問い,各内容レベル及び各内容レベルを合わせ. た全体の正解率を表240に示した。料理・食材・栄養素に関するレベルは同じぐら いであり,正解率はすべて80%以上であった。しかし,献立レベルでは,対象者全 体の正解率が54.6%と他の内容レベルと比べて低く,また男女間で有意差があり,女 子のほうが正解率が高かった。. 表240 基本的知識に関する質問の正解率 知識の内容. 全体(n=233). 男(n=103). 女(n=130). 料理レベル(9問). 87.2 ±. 19.0. 85.8. ±. 19.4. 78.3. ±. 18。8. 食材料レベル(9問). 80.0 ±. 17.0. 8&4. ±. 董8.6. 8L4. ±. 15.1. 栄養素レベル(3問). 87。7 ±. 27.0. 89.9. ±. 24.5. 85.8. ±. 29.0. 献立レベル(3問). 54.6 ±. 23.O. 50.0. ±. 22.6. 58.5. ±. 22.7. 合計(24問)1). 79.4 ±. 13.7. 77.9. ±. 13,9. 80.8. ±. 13.4. 1)合計は,料理・食材料・栄養素・献立レベルを合わせた24問のことである。 数値は,平均±標準偏差を示す。 *p<0.05(男vs.女, T検定). 29. 有意差. *.

(33) 続いて基本的知識と自己評価・意図・行動の関係を調べた。そのために,自己評 価・意図・行動の各項目が細分化されていたので,まず,「組み合わせ」と「適正摂 取量」(「肉」「野菜」「ご飯」「ご飯とおかず」の4項目)の5つの項目を合わせて15. 点満点とし,各生徒の自己評価・意図・行動レベルを点数化し,点数によって自己 評価・意図・行動の程度を“High”群と“Low”群に分けた。そして, High群とLow. 群問で基本的知識の正解率を比較した。表2−11には,自己評価・意図・行動のHigh. 群とLow群別に,知識の正解率の平均値を示した。自己評価が高いHigh群で,基本 的知識の各内容レベルの正解率が高い傾向があるものの,有意な差が認められたの. は,栄養素レベルの内容のみであった。また,意図と行動については,High・Low 三間で有意差が認められた内容はなかった。したがって,今回の対象者においては,. 自己評価が高い群の方が栄養素レベルの知識の正解率は高いが,その他の内容の知 識,また,意図・行動の程度と基本的知識とは関係がないことがわかった。. 一般に,知識と意図や行動とは関連があり,知識を高めることによって行動変容 を促すことができると考えられているが,今回の結果は異なっていた。この違いは,. 本調査では適正摂取量に関する自己評価や意図,行動と直接関係する知識ではなく, よりベーシックな「基本的知識」としたことが大きく影響していると考えられる。 表2−10に示すように,料理・食材料・栄養素レベルの平均正解率が80%以上と高く,. 知識を問う問題の大部分が平易であったことにより,二間で差がつきにくかったこ とにもよるだろう。今後,知識を問う問題の内容を検討する必要があるだろう。. 栄養バランスがとれた献立を考えるという「献立レベル」の正解率が低かったこ とにより,栄養素や食材料に関する基礎的な知識はあるが,日常の食生活に活用で きる知識は断片的であることがわかったので,系統立てて知識を習得させる必要が あるだろう。. 30.

(34) 表2−ll 自己評価・意図・行動のレベル別にみた基本的知識の正解率. 知識の内容. 自己評価. 意図. H量gh Low 有意差. High Low. 60. 142 72. 154. 行動. 有意差. High Low 121. 93. 料理レベル. 89. 87. 88. 86. 89. 85. 食材料レベル. 83. 79. 80. 80. 80. 80. 栄養素レベル. 93. 86. 90. 82. 90. 85. 献立レベル. 58. 53. 56. 52. 56. 53. *. 有意差. 自己評価・意図・行動の得点化については,「組み合わせ」「適正量摂取」(「肉」「野菜」「ご. 飯」「ご飯とおかず」)の5つの項目を合わせ,15点満点として集計した。0∼7点をLow群, 8∼15点をHigh群として基本的知識の正解率を比較した。 値は,正解率(%)の平均値を示す。*p〈0.05(”Low”vs”High”, T検定). 31.

(35) 2−9.自己評価・意図・行動と食物摂取状況の関係. 食物摂取状況と自己評価・意図・行動との関係をみるために,前項と同様に,自. 己評価・意図・行動の程度でにLow群とHigh群の2群に分け,2群間の食晶群別摂 取量を比較した(表2−12)。. 魚介類の摂取量は男女共にHigh群とLow群の問で有意差が見られた。男子の意図・. 行動では緑黄色野菜・その他の野菜・魚介類で差がみられ,行動では男女ともに緑 黄色野菜・その他の野菜・魚介類で有意差がみられた。自己評価・意図・行動のな かで摂取量と一番よく対応するものは行動であることがわかる。. 緑黄色野菜・その他の野菜・魚の摂取量に関しては,自己評価,意図,行動が高 い者はそれぞれの摂取量も高い傾向にあった。しかし,野菜の摂取量はいずれのHigh 群でも基準量を満たせていなかった。. 以上より,自己評価や意図の程度が高いと魚介類や野菜の摂取量が好ましい傾向 にあり,自分で食べていると回答している者(行動)は食物摂取状況も対応してい た。したがって,自己評価や意図の程度を高めることが重要であると考えられる。. しかし,程度の高い群でも野菜の摂取量が少なく,肉の摂取量が多い傾向にあるの でこれらの摂取量については適切に教える必要があると考えられる。. 32.

(36) 表242. 自己評価・意図・行動のレベル別にみた食品群別摂取量. 自己評価. 意図. 男. 女. Low High. Low. (70). (29). (84). 行動. 女. 男 Low. High. (48). (31). High. Low (24). (51). 女. 男. Low. High (91). (51). Low. High. (42). (48). High (73). 307. 334. 209. 200. 294. 334. 177. 215. 302. 328. 214. 203. 菓子類. 94. 100. 93. 97. 84. 106. 100. 93. 84. 108. 87. 98. 緑黄色野菜. 51. 61. 50. 62. 45. 63. *. 53. 54. 45. 64. *. 44. 59. *. その他野菜. 76. 89. 77. 107. *. 65. 94. *. 70. 89. 65. 96. *. 70. 94. *. 魚介類. 43. 73. 38・. 51. *. 38. 65. *. 28. 45. 38. 67. *. 30. 48. *. 肉類. 95. 111. 68. 70. 93. 105. 61. 70. 99. 99. 70. 67. 卵類. 45. 47. 37. 47. 44. 48. 35. 40. 50. 42. 36. 41. 乳類. 336. 250. 161. 227. 277. 342. 178. 179. 306. 316. 187. 175. 穀類. *. *. 自己評価・意図・行動の得点化については「組み合わせ」「適正量摂取」(「肉」「野菜」「ご飯」「ご飯とおかず」)の5項目を合わせ,15点満. 点とした。0∼7点をLow群,8∼15点をH量gh群として食品群別摂取量を比較した。値は,平均値(g)を示す。 *P<0.05(”Low”vs”High”, T検定). 33.

(37) 2−10.調査結果に基づく栄養教育プログラムの構想. 今回の調査により,以下のことが明らかになった。. 1.栄養素等摂取状況より,カルシウム,食物繊維,ビタミンCが不足している者が 多く,女子ではさらに鉄の摂取量も不足している可能性が高い者が多く存在して いた。また,脂肪エネルギー比率が適正範囲の30%を超えている者の割合は,男. 子で37%,女子で55%であった。脂肪エネルギー比率が高いのは,菓子類の摂i 取過剰によるのではないかと考えられる。 2.食品群別摂取状況より,男女ともに野菜の摂取不足が顕著であり,また,いも類. や菓子類なども少ないことが,さらに女子では,穀類の摂取量が少ない一方,菓 子類が多いことがわかった。 3.料理・食材料・栄養素レベルの基本的知識の正解率は比較的高いが,献立レベル の正解率は低かった。 4. 「自分の身体に合った食事量を説明できる」という自己評価の程度が高い回答は. すくなかったが,自己評価と「適正量を摂取しようと思う(意図)」,また実際に 「適正量を摂取している(行動)」とは関連していた。さらに,意図と行動との 関連も認められた。 5. 「適正量を摂取している(行動)」と回答した行動の程度が高い群では,魚介類. と野菜類の摂取量が多い。. 食物摂取状況結果より,菓子に含まれる脂肪の量や脂肪の過剰摂取と生活習慣病 との関連についての情報を与えると良いのではないかと思われる。さらに,野菜の 摂取量の不足を考え,1日にどれだけの量を食べればよいのかなども把握させる必要 があるだろう。. 健康や身体に対する意識は中学生よりも高校生の方が高く,男子よりも女子の方 が体重や身体の調子に敏感であること(三谷・二宮2005),また,平成12年度国民 栄養i調査では,15∼19歳の男子の健康や食生活に対する関心は,女子に比べて低い ことが報告されている(厚生労働省2002)。本調査の肉の適正摂取量に関する質問で. は,意図と行動で男女間に有意差が見られた。女子の方が肉を摂り過ぎないように と思い,行動に移しているという結果であった。さらに,野菜に関する質問でも, 意図と行動で男女間に差がみられ,女子の方が野菜をたくさん摂取しようと思い, 34.

(38) 行動に移しているという回答結果が得られた。男女の意図の違いは,男女での意識 や関心の程度の違いとも関係があるかも知れない。しかし,野菜では,実際の摂取 量は基準量を大幅に下回っており,全国的な課題が今回の対象者にもあてはまるの で,適正量へ近づくための行動変容の支援が必要である。. 意図と行動には関連が見られ,意図が高いものは行動にも移しているということ が言えよう。自己評価と意図・行動の関連では,自己評価が高い群では意図や行動 も高いという結果が得られた。したがって,自己評価を高める内容をプログラムに 取り入れる必要がある。. 基本的知識については,献立レベルの正解率は低かった。現在の学校教育では,「家. 庭科」「保健体育」の授業の中で食生活に関する教育が行われており,それらは知識 重視の教育となっている場合が多い。知識を与えることは重要であるが,「望ましい. 食習慣」を身につけさせるためには,系統立てた知識を提供して理解を深めさせな ければならないだろう。. 食物摂取状況と態度や行動の捉え方との関係を調べたところ,魚介類と野菜類の 摂取量と意図や行動とに関連が見られた。このことから,野菜と魚介類の摂取に着 目した内容のプログラムが行動変容に有効である可能性が考えられる。さらに,摂 取状況等も考慮すると,自分の身体に合った野菜類,菓子類,魚介類,肉類,ご飯 の摂取量を把握させるような教育が,適正摂取量を説明できるという自己評価力や,. 適正量を摂取しようとする意図を高め,行動に移せるのではないかと考えられる。 以上のことを踏まえ,研究グループでは,野菜類と高校生に身近な菓子類,肉類,. さらに主食であるご飯の摂取量に着目したプログラム2004を計画し,試行した。. 35.

(39) 第3章 栄養教育プログラム2005の実施と評価. 1.本章に至るまでの研究の経緯と栄養教育プログラム2005の基本構想. 第2章で述べたようにプログラム開発に向けてのニーズアセスメントとして,高 校生を対象に食生活に関する調査を行ったところ,栄養や食品に関する基礎的な知 識はあること,行動変容の意図が高い者は,食物摂取状況が良好であることが明ら かとなった。しかし,食事量や献立改善などに関する知識は断片的であり実生活に 活用できる知識が十分あるとは言えないということや,野菜の摂取量が目標値に対 して大幅に下回っている一方で,菓子類の摂取量が多い,ということなどが明らか になった。この調査結果を踏まえ,学習者に自分の食生活の問題に気づかせ,自分 に必要な食事量を把握させることを通して,「望ましい食事を主体的に選択できる食 習慣の形成」を目標とする体験型学習を含むプログラム2004を計画,試行した。. プログラムは,全4回であり,家庭科の時間に実施した。内容と活動の概要を表 3−1に示した。第1回目は,「自分の食生活上の問題点に気付くための学習」とし, 事前調査結果を基に作成した媒体(すごろく)を使用した現状の振り返りを行った。. 第2回目は,「自分に必要な食事量を理解するための試食体験」とし,高校生に必要 な1食分の食事を試食体験した。第3回目は,「行動変容のための計画づくり」とし,. 「自分を大切にする食事∼人生を乗り切るための身体作り∼」の講話を聞くなどし. た。第4回目は,「自己評価と栄養教育プログラムのまとめ」とし,第3回までの活 動内容を振り返ったり,市販のお菓子に含まれる油の量について学習した。. プログラムの効果について実践を通して評価したところ,①体験型学習が参加意 欲を高めること,②知識に関しては,自分の身体に合った適正な主食量を「説明で きる」と回答した者は実施前よりも増加していた,ことなどが成果としてあげられ た。しかし女子には,主食の適正量が自分には多すぎると受け止められる傾向にあ り,結果的に,行動変容の意図が高まらないこともわかった(竹浦他2005)。したが. って,系統立てた知識提供によって理解を深め,その結果,食べることを肯定的に 捉える態度を育て,行動変容を望ましい方向に促すことができるような行動目標の 設定方策を講じることが課題となった。. そこでわれわれは,学習活動によって得た知識や体験などを自分の生活と照らし 合わせ,自分の食生活を振り返ることが改善に向かうための目標設定に重要である と考え,「振り返り」という行為に着目した。健康教育における振り返りに関しては,. 36.

(40) 自己評価を通して自己成長を確かめ,さらなる学習や生活の改善につなげることの できる力を「ふり返るカ」と考えられている。そして児童では,振り返ることによ って,自己評価と自己改善という行為がなされていることが確認されている(高田 他2005)。そこで栄養教育においても「ふり返る力」の概念が適用できると考え,学. 習したことをまとめて振り返る活動を取り入れたプログラム2005を実施し,授業の 実施方法や内容に関する評価やワークシートの記述状況などのプロセス評価及び事 前・事後の食物摂取状況の比較などの結果評価を行った。. なお,プログラム2005の学習者は第2章の2004年度の食生活調査の対象者とは 異なるが,プログラム実施前に2004年度と同様の調査を事前に行い,学習者の特性 を調べたところ大きな違いはないことを確認しているので同様の課題があてはまる と考えた。. 37.

(41) 表3−1栄養教育プログラム2004の概要 回数. 内容. 所要時間. 第1回 50分 自分の食生活上の問題点に気づくための学習 ○事前調査結果を元に作成した媒体(すごろく)を使用した現状の振 り返り ①ゲーム(すごろく) ②食生活上の問題点や気になるところを見つける ○グループワーク「食生活上の問題点について」 自分に必要な食事量を理解するための試食体験 第2回 100分 ○高校生に必要な1食分の食事を試食体験 ①主食量の体験(自分の茶碗で,必要量を量り食べる。間食までの 時間を予測し,実際に間食を食べた時間も記録する。). ② 主菜・副菜の体験(1食分の主菜・副菜を手のひらにのせて手 ばかりを体験する). 第3回 50分. 第4回 50分. ③ 野菜量の体験(生と加熱時のカサの変化の体験) ○講話「自分に必要な栄養量と食品量を知ろう」 行動変容のための計画づくり ○講話「自分を大切にする食事 ∼人生を乗り切るための身体作り∼」 0説明「栄養摂取状況成績表の見方について」 0グループワーク「食生活を見直してみましょう」 問題点の抽出,重要度と達成度の順位付け,問題解決のアイデア 抽出,自信度の評点付け,行動目標の作成。 ○セルフモニタリングシートの作成 社会的支援の形成「励ましの葉書を書こう」 自己評価と栄養教育プログラムのまとめ. 01・2・3回目までの実施内容を振り返る。 ・今の社高校生の食生活の実態と不定愁訴について ・手ばかりによる食事量の振り返り ・効果的な行動目標の立て方について ○「社高校生のための食生活改善ヒント」について ○市販のお菓子に含まれる油の量について. 38.

(42) 2.研究方法 2−1.対象及びプログラムの実施. 2006年1,月から2月に兵庫県内公立高等学校2学年の2学級の生徒75人(男子 45人,女子30人)を対象とした。対象校は農村部に位置し,生徒の約90%が自転車 通学をしており,また45%が運動部で活動している。プログラムを家庭科の授業時 間内に4回(各回50分)実施し,授業は,同校家庭科担当教諭によって行われた。. 2−2.栄養教育プログラムの2005概要 プログラムのテーマ及び学習内容と活動の概要を表3−1に示した。対象者の食生活. 状況等を踏まえ,本プログラムでは,望ましい食習慣の形成,具体的には,食生活 指針(2000年)の推奨内容をもとに,「自分にあった食事量を理解し,主食・主菜・ 副菜のそろった食事を主体的に選択できるような食習慣の形成」を学習目標にあげ,. 中でも副菜の適正摂取に焦点を当て,これに沿った授業を計画した。食生活の振り 返りには,「食事バランスガイド」(厚生労働省・農林水産省)と「弁当箱ダイエッ ト法」(足立・針谷2004,針谷2003)という既存のツールを活用した。また,授業ご. との最後の10分間程度の学習の振り返りの時間に加え,最終回には,一定の学習を まとめて振り返る時間を設けた。. 第1回では,「気づく,知る」をテーマにし,「食事の量とバランスの問題点に気 づく」という内容で行った。まず,3日分の食事について料理と食材を記録したもの を各自持参させた。これを料理選択型の枠組みになっている「食事バランスガイド」. のコマにあてはめていく活動を行わせて,自分の食事の量とバランスを評価させ, 問題点に気づかせようとした。その後,本対象者だけでなく,一般的に若年者には,. 脂肪エネルギー比率が適正範囲を超える傾向にあること,また野菜の摂取量が不足 しているという問題があることから,脂肪と野菜に関する講話を行った。脂肪につ いては,脂肪の摂取量と糖尿病の罹患率の年次推移が対応していることなどを取り 上げ,脂肪の過剰摂取と健康障害との関連を,また,肉料理などの主菜や菓子類に は脂肪が比較的多く含まれ,見える油だけでなく,見えない油に対しても摂取上の 注意が必要であることなどを説明した。野菜については,成分特性と体内での役割, 特に食物繊維に関連する内容を中心に説明した。. 最後に,食生活の振り返りと改善のための行動目標をワークシートに記入させた。 39.

(43) ワークシートには,「あなたが今,自分の食生活を振り返って思うことは何ですか?」. 「目標は?」「そのためにあなたができることは何?」などが記入されており,設問. に従って順次記述させた。ワークシートは,第1回の授業終了時に回収した。 第2−3回では,「体験・把握する」をテーマに,「調理を通して野菜の適正摂取量. を把握する」内容とした。第2回では,第3回の調理実習の説明を行い,授業のね らいや学習内容を確認させた。第3回の実習献立は,家庭科教科書に取り上げられ ている回鍋肉を一部アレンジしたものとわかめスープ,ご飯とした。1食分の野菜や 肉について,調理前の材料と調理後の料理の状態で量やボリュームを観察,比較,. 確認させて,適正摂取量が把握できるようになることをねらいとした。そして調理 前後の野菜と肉を観察したことをもとに,「自分に必要な量を把握する方法をまとめ. てみよう!」と書かれたワークシートに,野菜と肉,ごはんの適量把握法を記入さ せ,第4回の授業に持参させた。. 第4回は,「知る,まとめる」をテーマに,「食事の量とバランスを確認し,改善. 方法を考える」という内容で行った。初めに,第3回のワークシートの記入内容を 確認し,量とバランスの把握方法についての学習に関心を向けさせた。そして普段 の自分の弁当をスケッチさせた後「弁当箱ダイエット法」の説明を行い,各自の弁 当の量や内容について再評価させた。最後に4回の授業で学習したことをもとに,「こ. れから自分が1番気をつけなければならないことは何?」と書かれたワークシート を記入させて,自分の食生活の振り返りとした。. 40.

参照

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