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韓国社会科における道徳的態度形成の論理 : 1995年版「社会生活科課程」の場合

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社 会 系 教 科 教 育 学 会 『 社 会 系 教 科 教 育 学 研 究 』 第12 号 2000 (pp.25-32)

韓 国 社 会 科 に お け る 道 徳 的 態 度 形 成 の 論 理

-1955 年版「社会生活科課程」の堝合一

The Logic of Moral Education on Social Studies in Korea:

F ocusing" on the 1955's Course

of Stu心 力Γthe Social Studies

朴  南  洙 ( 広 島 大 学 大 学 院) I  問 題 の 所 在 道 徳 教 育 に 関 し て 社 会 科 教 育 は い か に あ る べ き か 。 こ う し た 社 会 科 の 在 り 方 の 究 明 は ,社 会 科 と対 等 に道 徳 が 一 教 科 と し て 設 け ら れ て い る 韓 国 の場 合 そ の 必 要 性 は特 に 高 い 。 そ れ は ,道 徳 科 設 置 の 過 程 か ら 論 議 が 続 い て お り ,未 だ に 社 会 科 と 道 徳 教 育 と の関 係 が 曖 昧 で あ る か ら で あ る1)。 表 1 は ,第3 次 教 育 課 程 改 訂 期2 )ま で の 社 会 科 と道 徳 教 育 の関 わり の 変 遷 を 示 し た も の で あ る。 1946 年 に 公 布 さ れ た ,『 初 ・ 中 等 学 校 各 科 教 授 要 目 集(4 )国 民 学 校 社 会 生 活 科 』3 )(以 下 ,『1946 年 版 』 と 略 記 ) は ,従 来 の 地 理 ,歴 史 ,公 民 を 一 教 科 の 領 域 で 含 む 形 で 編 成 さ れ ,社 会 認 識 及 び態 度 形 成 を 担 う 教 科 と し て 出 発 し た。 そ し て ,第 工次 改 訂 期 の 工955年 版 『 国 民 学 校 教 科 課 程 』4 )で は , 「 社 会 生 活 科 課 程 」( 以 下 ,『 工955年 版 』 と 略 記 ) に お い て 道 徳 教 育 が 一 層 強 調 さ れ ,学 校 教 育 全 体 に 関 わ る も の と し て 位 置 付 け ら れ た。 社 会 科 は , 各 学 年 に 道 徳 単 元 を 設 け ,特 に そ の 中 核 的 役 割 を 担 っ て い た。 第 2次 改 訂 で は 汀 反 共 ・ 道 徳 生 活 」 ( 特 設 道 徳 ) の 設 置 に よ り 社 会 科 か ら 道 徳 領 域 の 単 元 が 分 離 さ れ る 。 そ の 後 ,第 3 次 改 訂 で 道 徳 が 独 立 の 教 科 と し て 設 置 さ れ る こ と に な っ た。 こ の よ う な 変 遷 に よ り ,導 入 当 時 の 社 会 科 の 性 格 も 大 き く変 容 し て き た。 し か し ,社 会 科 の カ リ キ ュ ラ ム の 分 析 を 通 し て , 道 徳 的 態 度 形 成 の論 理 を 解 明 し よ う と し た研 究 は な さ れ て い な い 。 そ の た め ,社 会 科 にお け る 道 徳 教 育 の 目 標 や 内 容 に 対 す る 批 判 も 曖 昧 で あ り ,不 徹 底 な ま ま に 残 さ れて い る と言 え よ う。 そ こで 本 研 究 は,成 立 期 社 会 科 で 担 っ て き た 道 徳 教 育 の論 理 の究 明 を 通 し て 冒 頭 の課 題 に 応 え て い き た い。 考 察 に あ た っ て は ,ま ず 導 入 時 の 社 会 科 に お け る 道 徳 教 育 の論 理 を 明 ら か に す る。 そ の 後 ,社 会 科 と い う 一 教 科 の枠 の 中 で ,道 徳 教 育 が よ り 強 調 さ れ た 『1955 年 版 』 を 取 り 上 げ ,そ の背 景 と 道 徳 的 態 度 形 成 の論 理 を 解 明 し て い き た い 。

H 社会 科の導 入と民主 主 義的道徳 教育 の試 み

社会科 の導入 は,従 来 の道徳 教育 が抱え た問題

点 の克 服とい う点で も意義 を もつ。 当時 の文教部

次 長 で あ っ た呉 天錫 は,

「 従来 の修身 科 は,い わ

ゆる社会 道徳を 観念的 に子 ど もに注入さ せ るため

に尽力」 して きた と批 判 し,社 会科 を このよ うな

過去 の誤 認を 改 め る教科 と捉 えて い る5)

。 ま た,

編修官 の金相 弼 も 厂

社会生 活 と学 校教育 の遊離 を

表 1  社 会 科 と道 徳 教 育 の 関 わ り の変 遷 カ リ キ ュ ラ ム 期 年 度 社会科と道徳教育 の関連( 教科構 造) 構成上 の特徴 ○過渡 期 解放∼ 1946年 ○地理  ○歴史 ○公民 ・ 修身科の内容 や方 法に対 する批判 により成立 した公民 科を 中心に社会認識と道徳的態 度形成 ○教授要目 期 1946年 ○社会生活科 ・ 社会生活の学習を通した道徳的態 度形 成 0 1次改訂 期 1955年 ○社会生活科 ・道 徳教育 は全教科を 通して年間35時 間取り扱 われるよ うになっているが,社会生活科が道徳教育 の中心的役割 ゆ・ 社会生活科 の各学年 に道徳 単元を 編成 1956年 ・道義教育委員 会設置 − j 二] 。. ・道 徳教育 の当面 目標発表 ・道 徳教育 の要項公布 1957年 ・国民学 校道徳教科書発刊 0 2次改訂 期 1963年 ○社会科  ○反共・道 徳生活(特設 道徳) ・ 特設道徳 の新設 ゆ・ 社会科 から道 徳単元を 分離 0 3次改訂 期 1973年 ○社会科  ○道徳科 ・一 教科として の道徳科 の成立 各 時期別 『教 育課 程』 を基 に筆 者作 成

(2)

避け

『知』

『行』が渾然一致

された

全人教育」6

達成

という側面で社会科の意義を評価

して

いる

では,

当時の社会科の性格は

どういうもので

あっ

たのだろうか

『1946

年版』では,

社会生活科

(Social Studies)

人間と自然環境および社会

環境等の関係をは

っき

り認識

させ

社会生活に誠

有能な国民になるようにさせることを目的と

する

」7

と記述

されている。これは,

社会科の本

質は

社会認識

を通

して資質

(態度)を形成する

教科であることを示

している。

また

総論の匚

社会生活科教授要目の運用法

には

従来の修身教育の問題点と新

しい道徳教育

方法に

ついて次の

ように示されている

冂。

人倫

道徳

を知

らず

らずの

うちに

実践体

させ

こと

。従

来の

身教

科書の

うに

人倫

道徳

を直

的に

して

いな

いが,

人倫

道徳

を看

した

もの

と誤

しては

らな

。社

生活

科の

目標

社会

生活の

理解

・体

なの

で,

らゆ

授活

を通

して

人倫

道徳

に適

した

を実践

させ

なけれ

らな

これ

を通

して児

達に

らず

らずの

うち

生活の

ある人倫

を体

・実

でき

人格

を陶

させ

るべ

ある

」8

要す

道徳は

目それ

自体

を意

的に教

るこ

とに

って成

り立つ

もの

では

生活

識の

過程

で形

され

とい

論理

を表

して

いる

。導

当時の

社会

科は

主主義

を実現

して理

され

たの

しか

的カ

リキ

ュラム

成は

手本

ロラ

ド廾│

案の

を参考

しなが

らも

・伝統

的事

及び,

道徳

的内

容の補

を通

した

き方の

習得

重視

され

いる

これ

放直

後の

民形

成の

要性

と伝

な儒

的道

徳観

とい

う韓

的現

を考慮

した

と考

られ

して

この

うな編

成が

りやす

い伝

的道徳

育の

論理は

習内

容の

問式提

と教育

方法

一方,

を通

導入

して

当時の

克服

会科の

試み

られ

格や

民主

る9)

主義的

徳教

育の

ため

試み

な理

を背景

した

道徳重視の動きによ

り,第

1次改訂版である

『1955

年版』では大きく変容され

る。

Ⅲ『1955

年版』の編成と社会科の道徳化

1.道徳教育重視の背景

1954

∼55

年の教科課程の改訂では

道徳教育

強化の

主張が大きな影響

を及ぼ

した

。その背景は

次の

3点にまとめ

られ

る。

1は

従来の社会科に対する限界点の指摘で

ある

。前述

した

ように

『1946

年版』は,

韓国的現

実の考慮という点て主体的編成が試み

られたが

限界点も指摘された

。それの一つが道徳教育の問

題である。

『1955

年版』の作成担当者であった崔秉七は

単元が殆ど系統的,

分科的傾向であったので,

道徳的領域の単元を設ける機会が少なかった

」10

と述べ

社会科における道徳教育の問題

点を指摘

している

道徳科を社会生活科のなかに含めて

。また,

文教部の編修局長の崔鉱培も,

しまい,道

徳教育を軽視

している

」11

と述べ,

社会

生活科で

道徳教育

を行

うように

した解放後の

道徳教

育のお

り方を批判

している。

2は

朝鮮戦争後の社会的現実であろう。戦

争後の教育の課題は

教育制度や教育施設の整備,

教育課程の

改編であった

。戦争後匚

人格の修養と

学術の錬磨に努めなければならない学生達が

と安逸をむさぼるだけでなく

りと使命を忘

望ま

しが

らぬ行動

をするものが次第に増

ていった

」12

という見解にも見られるように,

後の学生生活指導の問題が

至急の解決課題

として

現れたのである。

第3は

当時の社会的現実

を反映させた教育政

策である

。当時の文教部

長官の

教育施策

を見ると,

1952

年10

月か

ら1954

年4月まで在職

した金法麟は

道徳教育

を強調

しなが

ら汀戦時文教

」匚

建国文教

独立文教

」をバ954

年4月から1956

年6月まで

在職

した李宣根は

「反共民主教育の推進」

「 ̄

教育

の質的向上

」匚

生活文化の簡素化」を教育の基本

方針

として採択

している13

。共通的な施策として

徳教育の強調が

あげられ

る。

このような背景により

,工954

年に公布された

教育課程時間配

当基準令

」では汀道義教育は,

全教科及びその他教育活動の全般で行い,

各学年

−26

(3)

の年 間 総 授 業 時 間 数 の範 囲 で/ 年 間35 時 間 以 上 を 実 施 す る」14)( 国 民 学 校, 第10 条 ) と 規 定 さ れ た。 こ れ は ,学 校 教 育 に お け る 道 徳 教 育 は ,道 徳 科 を 特 設 せ ず に ,学 校 の 教 育 活 動 の 全 面 で 行 い ,各 教 科 は 独 自 の 領 域 を 遂 行 す る こ と に よ って ,道 徳 的 態 度 を 形 成 す る と い う 方 針 で あ る 。 あ ら ゆ る 教 科 や 教 科 外 の 活 動 を 通 し て 道 徳 教 育 を 行 う と い う方 針 は ,過 去 の 権 威 主 義 的 な 徳 目 教 育 の 止 揚 を 意 味 す る。 ま た ,経 験 を 通 し た 生 活 教 育 を 志 向 す る 新 教 育 思 潮 と ,新 し い 教 科 で あ る 社 会 科 の 基 本 原 理 を 維 持 し な が ら ,道 徳 教 育 の 強 調 と い う 課 題 に 応 じ よ う と し た 試 みと 考 え ら れ る 。 一 方 ,「 ̄社 会 生 活 科 は 道 義 教 育 に 関 し て 他 教 科 と は 異 な る特 別 な 使 命 と不 可 分 の 関 連 を も っ て い る 」15)と い う 見 解 か お る 。 社 会 科 と 道 徳 教 育 と の 深 い 関 わり が あ る と 言 え よ う 。 で は,『1955年 版 』 は,ど のよ う な 内容 の編 成 と 展 開を 通 し て道 徳教 育 の 目的 を 担 って い るの だろ う か。 2。 道 徳 的 態 度 形 成 の た め の 内 容 編 成 ( 1 )カ リ キ ュ ラ ム の 全 体 計 画 表 2 は ,『1955 年 版 』 の 全 体 計 画 を 示 し た も の で ,同 課 程 は ,各 学 年 別 主 題 とn ∼12 個 の単 元 で 編 成 さ れ て い る 。 厂学 年 の 主 題 」 で 見 ら れ る よ う に , 第 工学 年 の 匚家 ・ 学 校 」 か ら , 第 6 学 年 の 匚我 が 国 」 に至 る 同 心 円 的 配 列 は, こ れ ま で の 原 理 を 継 承 し て い る。 し か し ,内 容 選 定 の 面 で は以 前 と は異 な って い る。 こ れ ま で の社 会 認 識 を 中 心 と す る単 元 編 成 に 付 け 加 え ,各 学 年 別 1 ∼ 4 個 の 徳 目 中 心 の 単 元 が 編成 さ れて い る の で あ る。 各 々 を 「 社 会 認 識 中 心 」 型 単 元 ,匚徳 目 中 心 」 型 単 元 と 呼 ぶ こ と に し よ う 。 で は ,な ぜ 「 徳 目 中 心 」 型 単 元 を 編 成 し た の だ ろ う か。 編 纂 趣 旨 に つ い て 編 纂 者 は次 の よ う に 述 べ て い る 。 「 各 学 年 ご と に 2∼ 3単 元 ず つ 道 徳 的 教 材 が 挿 入 さ れ て い る 。 こ れ は ,主 と し て 礼 法 に 関 す る 教 材 で あ る。 各 学 年 の レ ベ ル に 合 わ せ て 選 定 さ れ た こ の 礼 法 を 綜 合 す れ ば ,国 民 学 生 に必 要 な 礼 法 の 一 般 が 網 羅 さ れ て い る。 し か し ,こ の よ う な 礼 法 は ,日常 生 活 で も 充 分 に指 導 で き る も ので あ る。 こ れ を 特 に 編 成 し た 理 由 は ,時 代 的 要 請 の た め で あ る 。 従 っ て ,こ の 方 面 に 注 意 を 喚 起 さ せ よ う と す る 意 図 が あ る と い え よ う」16) 要 す る に ,小 学 生 に必 要 な 道 徳 的 徳 目 を 綜 合 し , 社 会 生 活 科 に 編 成 し た の は ,戦 後 の 社 会 的 紊 乱 の 改 善 と い う 時 代 的 要 請 に応 じ た 結 果 で あ り ,社 会 科 教 育 を 通 し て 道 徳 的 側 面 に 注 意 を 喚 起 さ せ よ う と し た 意 図 が あ っ た と 推 測 さ れ る。 社 会 生 活 科 は 道 義 教 育 に 対 し て 他 教 科 と は 異 な る 特 別 な 使 命 と 関 連 を も っ て い る と い う 考 え 方 が 反 映 さ れ た 結 果 と言 え る だ ろ う。 全 体 構 成 原 理 に 関 す る 詳 細 な 分 析 は 別 稿 で 行 っ て い る の で17), こ こ で は 匚徳 目 中 心 」 型 単 元 の 編 成 原 理 を 考 察 して い き た い 。 ① 個 人 ・ 社 会 道 徳 に 関 す る 徳 目 中 心 の 構 成 各 学 年 の 内 容 か ら 厂徳 目 中 心」 型 単 元 を 抽 出 し , 表 2 各 学 年 の 主 題 と 単 元 編成 学 年 学 年 の主 題 単    元    構    成 第 1 学年 我 が 家 , 私 達 の 学 校 L 私 達 の 学 校 @ 挨 拶 3. 遠 足 4. 物 資 を 節 約 し よ う 5. 安 全 @ よ い 習 慣 を 身 に付 け よ う 7. 丈夫 な 体 8. 友 達 9. 私 達 の 家 10. 楽 し い 日 11.私 達 の学 校 と私 達 の家 第 2 学年 近 所 の生 活 0 善 い 2学 年 2. 私 達 の 村 を 守 っ て く れ る人 々 3. 人 と 物 の輸 送 4. も の を 供 給 し て く れ る人 々 @ お 使 い 6. 手 紙 を 伝 え る 人 々  @ 正 直 な子 ど も  8 淦 融 組 合 と銀 行 9. 面 ・ 邑 事 務 所 と市 役 所 @ 時 間 を 守 ろ う n. 私 達 の 健 康 を 守 って く れ る人 々 12.私 達 の生 活 を 楽 し く し て く れ る 場 所 や 施 設 第 3学 年 郷 土 の生 活 0 立 派 な 子 ど も 2. 私 達 の 村 の 自 然 環 境  3 私 達 の食 料 e 責 任 と 公 益 5. 私 達 の 服  L 私 達 の 家 7. 都 市 と 田 舎 の生 活 8. 我 が 国 の 北 部 地 方 の生 活 9. 我 が 国 の南 部 地 方 の生 活 10. 我 が 国 の 山 間 地 方 の生 活 11.我 が 国 の平 野 地 方 の 生 活 12.我 が 国 の 海 岸 地 方 の生 活 第 4学 年 私 達 の生 活 の 来 歴 0 私 達 の 礼 法 2. わ が 村 の 発 展 @ 自 由 と 協 同 4. 愛 林 5. 我 が 国 の 自 然 環 境 6. 我 が 国 の名 勝 古 跡 @ 美 し い 風 俗  8 私 達 の 住 ん で い る 地 球 9. 集団 生 活 10 濃 事 の始 ま り 11.道 具 の発 達 第 5学 年 産 業 の 発 達 0ネL 法 を 守 ろ う 2. 勤 労 3. 健 康 と娯 楽  4 瀧 源 の利 用 5. 機 械 の 発 達 と 産 業 6. 交 通 と 運 送 7. 商業 と貿 易 8. 銀 行 と組 合 9. 我 が 国 の 人 口 と 都 市 10. 世 界 の い ろ い ろ な 国 n. 国 産 品 の愛 用 第 6学 年 我 が 国 の 発 達 と 世 界 0 美 しい 習 慣 2. 我 が国 の 来 歴 3. 私 達 の歴 史 を 輝 か せ た人 々 や 物 4. 我 が 国 の政 治 5. 民 主 主 義 6. 国 際 連 合 7. 統 一 と 復 興 8. 美 し い 物  9淙 教 10. 国 民 の 本 分 @ 我 々 の将 来 文 教部 『国 民学 校教 科課程 』1955, pp.48 ∼49より 筆者 作成 (白 抜 き数字 の単元 は,「 徳目 中心」 型 単元を 表 す。)

(4)

そ の内 容 構 成 を 関 連 徳 目 及 び 配 列 とい う 観 点 で 分 析, 整 理 し た も の が 表 3で あ る 。 内 容 編 成 の 第 I の原 理 は ,社 会 生 活 に 必 要 な 伝 統 的 道 徳 的 態 度 の 形 成 を 民 主 的 社 会 生 活 の 重 要 な 要 素 と し て 捉 え 冂 固人 ・ 社 会 道 徳 に関 す る 徳 目 を 中 心 に内 容 を 編 成 す る ,とい う も の で あ る。 表 3 の 単 元 は,殆 ど が 個 人 ・ 社 会 道 徳 に 関 す る 徳 目 関 連 の 単 元 で ,こ の よ う な 単 元 の 特 性 は ,伝 統 的 な 徳 目 を 重 視 し な が ら も ,『1946 年 版 』 に お け る そ れ と は 異 な っ て い る 。 例 え ば ,『1946 年 版 』 の場 合 ,直 接 的 な 匚徳 目 中 心 」 型 単 元 は 設 け ら れ て い な い が ,第 2学 年 の 単 元 7 口 年 中 の楽 し い 日」 で は,伝 統 的 祝 祭 日 や 国 家 の 記 念 日 ,単 元 8 「 ̄我 が 国 の 旗 と 他 国 の 旗 」 で は ,国 旗 の 意 味 ,国 旗 に 対 す る 礼 儀, 第 6学 年 の 単 元10 匚我 々 の民 族 性 」 で は 民 族 性 の 意 味 ,民 族 性 の 昂 揚 な ど ,殆 ど が 国 家 関 連 の道 徳 を 重 視 し て い る18)。反 面 ,『 工955 年 版 』 の 場 合 は ,第1 学 年 の 単 元 2 「 挨 拶 」,第 2 学 年 の 単 元 1 厂善 い 2 学 年 」,第 3学 年 の 単 元 4 匚責 任 と 公 益 」 等 の よ う に ,多 様 な 生 活 場 面 に お け る 囗 固人 ・ 社 会 的 徳 目 が 中 心 と な っ て い る。 こ れ は ,解 放 直 後 と朝 鮮 戦 争 後 と い う 異 な る 時 代 的 背 景 に 起 因 す る と 考 え ら れ る 。 つ ま り ,『1955 年 版 』 の 場 合, 新 国 民 形 成 の 側 面 よ り 戦 後 の 生 活 改 善 と適 応 の 問 題 が重 視 さ れ た の で あ る。 ② 個 人 的 道 徳 的 習 慣 形 成 か ら 社 会 共 同 生 活 の 精 神 ・ 態 度 形 成 へ 内 容 編 成 の 第 2 の 原 理 は,体 系 的 道 徳 的 態 度 形 成 の た め に ,子 ど も の 発 達 段 階 を 考 慮 し て ,個 人 的 道 徳 的 習 慣 形 成 か ら社 会 共 同 生 活 の 精 神 ・ 態 度 形 成 へ 順 次 的 に配 列 す る ,と い う も の で あ る。 表 3 の 各 単 元 は ,関 連 徳 目 の 性 格 が 学 年 に よ っ て 異 な っ て い る。 例 え ば ,第 工学 年 の 単 元 2 厂挨 拶 」 で は両 親 ,先 生 ,友 達 に 対 す る 挨 拶 法 が ,単 元 6 匚よ い 習 慣 を 身 に 付 け よ う」 で は,自 分 の 習 慣 の 反 省 ,よ い 習 慣 と 悪 い 習 慣 の 修 正 ,正 し い 言 い 方 等 の 態 度 を 形 成 さ せ よ う と し て い る 。 こ れ は 第 2学 年 の各 単 元 の 内 容 構 成 に も同 様 に見 ら れ る 。 一 方 ,第 5学 年 の 単 元 工 匚礼 法 を 守 ろ う」 で は , 正 し い 批 判 力 を 持 つ 方 法, 公 共 施 設 利 用 の 礼 法 が , 第 6学 年 の 単 元 1 「 ̄美 し い 習 慣 」 で は ,多 様 な 儀 式 に対 す る 理 解 と 態 度 ,共 同 生 活 に お け る 指 導 性 の 伸 張 ,社 会 に対 す る 奉 仕 な ど の 態 度 を 形 成 さ せ よ う と し て い る 。 つ ま り ,低 学 年 の 場 合 は,個人 の道 徳 的 習 慣 の 形 成 の 側面 が ,高 学 年 へ進 む こ と に よ っ て ,社 会 共 同 生 活 の た めの一 定 の 行動 基 準 に適 合 し た 精神 と態 度 養成 の側 面 が 中心 と な って い る 。 発達 段 階を 考 慮 し て徳 目 を 精 選 し,体 系 的 に 徳 目や 道 徳 的 な 価値 判 断 , 道 徳 的 心 情 を 培 う とい う意 図 が 読 み取 れ る。 一 方 ,道 徳 的 態 度 形 成 は 厂徳 目 中 心 」 型 単 元 に 表 3 道 徳 領 域 の単 元 構 成 と 配 列 学年 単 元 名 学  習  内  容 ( 道 徳 的 態 度) 関 連 徳 目 配 列 1 2. 挨 拶 ・両 親 , 先 生 , 友 達 に対 す る 挨 拶 法 ・ 挨 拶 の理 由 , 挨 拶 時 の言 い方 と 態 度 ・ 礼 儀 道 徳 的 習 慣 形 成 ] 社 会 共 同 生 活 の 精 神 , 態 度 形 成 6. よ い 習 慣 を 身 に付 けよ う ・我 々 の習 慣 の反 省 ・ 正 し い 言 い 方 ・ 良 い 習 慣 の継 承 と悪 い習 慣 の修 正 ・ 良 い 習 慣 2 L 善 い2学 年 ・正 し い 言 葉 使 い ・ 挨 拶 ・ 食 事 す る 時 の礼 法 ・ 隣 の人 と の礼 法 ・ 礼 儀 , 親 切 5.ぉ 使い ・私 た ちが で き るお 使 い ・ お 使 い 時 の 注 意 点 ・ 協 力 7. 正 直 な子 ど も ・正 直 な 子 ど も の意 味 ・ 約 束 を 守 る こ と の 必 要 ・ 嘘 の良 く ない 点 ・ 正 直 , 約 束 10.時 間 を守 ろ う ・家 や 学 校で の 時 間生 活 ・ 社 会 に お け る 時 間 生 活 ・ 時 間 約 束 の必 要 性 と 注意 ・ 約 束 , 規 則 3 1. 立 派 な子 ど も ・自 分 の意 思 の正 確 な 表 現 ・ 体 と 服, 周 り の も のを 清潔 ・ 外 に 出 た と き の 注 意 ・公 園 と遊 び場 で の 注 意 ・ 交 通 機 関 を 利 用 す る 時 の注 意 ・ お 金 , 物 , 時 間 の 使 い方 ・ 自主, 清潔 公衆道徳 , 節約 4. 責 任 と公 益 ・責 任 を 完 遂 す る方 法 ・ 他人 の た め に 働 く 方 法 ・ 自 分 の責 任 の完 遂 と 他人 と の 関 係 ・ 責 任 , 公 益 4 1. 私 達 の礼 法 ・日 常 生 活 にお け る礼 法 ・ 弱 い 人 に対 す る 礼 法 ・ 自 分 の本 分 を 守 る方 法 ・公 共 場 所 で の注 意 ・ 手 紙 の 書 き方 ・ 礼 儀 公 衆 道 徳 3. 自 由 と協 同 ・自 由 の意 味 ・ 自由 と恣 意 の 区 別 ・ 協 同 の 意 味 ・ 自 由 と協 同 の関 係 ・ 自 由 , 協 力 7. 美 しい 風 俗 ・家 族 の和 睦 ・ 家 族 と 親 戚 の 助 け 合 い ・ 郷 土 の風 俗 ・ 我 が 国 の美 し い風 俗 ・私 た ちが 生 か して い く べ き よ い 風 俗 ・ 和 睦, 郷 土愛 , 美 の 愛 護 5 1.ネL 法を 守 ろ う ・正 し い 批 判 力 を 持 つ 方 法 ・ 家 庭 で の 礼 法 , 訪 問 と接 待 礼 法 ・ 公 共 施 設 利 用 の 礼 法 ・ 批 判 力 , 公 衆 道 徳 , 礼 節 6 1. 美 しい 習 慣 ・計 画 的 な 生 活 ・ 儀式 の 理 解 ・ 指 導 性 を 伸 長 ・ 社 会 に対 す る奉 仕 活 動 ・ 誠 実 , 礼 儀 , 指 導 力 , 奉 仕 n. 我 々 の将 来 ・卒業 と国 家 , 先 生, 親 の恩 の 感謝 ・ 卒業 後 に母 校 に対 す る感 謝 ・自分 の将来 の決 定 ・ 感 謝 , 自 主 1)文 教 部 前 掲 書1955, pp.50 ∼98 に よ り 筆 者 作 成 。 2)関 連 徳 目 は , 文 教 部 「 国 民 学 校道 徳 教 育 課 程 ( 案 )」『 新 教室 』1957, pp.22 ∼23 を 参 考 に し た 。 −28 −

(5)

隕 ら れ て 求 め ら れ て い る の で は な い 。「 ̄社 会 認 識 中 心 」 型 単 元 で も 独 自 の 原 理 で 道 徳 教 育 の役 割 を 担 っ て い る の で あ る。 で は,各 類 型 の 単 元 は ,ど の よ う な 内 容 構 成 と 原 理 を 通 し て 道 徳 的 態 度 を 形 成 さ せ よ う と し て い る の だ ろ う か 。 (2)2 つ の パ タ ー ン の 単 元 構 成 原 理 ① 「 社 会 認 識 中 心 」 型 単 元 の 場 合 一 社 会 事 象 の 理 解 と 道 徳 的 態 度 の 統 一 的 形 成 過 程 − 単 元 構 成 の 第 1 の パ タ ー ン は,子 ど も に 社 会 事 象 に 対 す る 知 的 理 解 と 道 徳 的 態 度 形 成 を 統一 的 に 図 る た め に ,客 観 的 社 会 事 象 の 認 識 と 道 徳 的 態 度 形 成 過 程 を 順 次 的 に構 成 す る ,と い う も の で あ る 。 「 社 会 認 識 中 心 」 型 単 元 が こ れ に当 た る。 事 例 と し て 第 3学 年 の 単 元 5 「 私 達 の 服 」 を 取 り 上 げ ,内 容 構 成 を 分 析 ,構 造 化 し た も の が 表 4 で あ る 。「 中 心 問 題 」 に は カ リ キ ュ ラ ム の学 習 問 題 を ,「 事 例 単 元 」「 認 識 内 容 」 に は そ れ に 対 応 す る 教 科 書 の 小 単 元 と 内 容 を ,「 内 容 構 成 の 視 点 」 に は筆 者 の 分 析 を 示 し た 。 こ の 単 元 は,衣 服 の 生 産 と 消 費 と い う 社 会 機 能 を 中 心 に11 個 の 学 習 問 題 で 編 成 さ れ ,4 つ の教 科 書 の 小 単 元 を 通 し て学 習 で き る よ う に 構 成 さ れ て い る。 単 元 は大 き く ,客 観 的 社 会 事 象 の 認 識 過 程 ( 小 単 元 1 ∼ 3)と ,道 徳 的 態 度 形 成 過 程 ( 小 単 元 4)の 2 つ の 過 程 が 順 次 的 に 構 成 さ れ て い る。 表4 第 3学年 単元 5 小 単 元 工で は,衣 服 の 由 来 と 発 達 の 歴 史 ,各 要 素 ( 気 候, 季 節, 習 慣 な ど ) と 衣 服 と の 関 係 な ど , 衣 服 と人 間 生 活 と の 関 わ り につ い て 認 識 さ せ よ う と し て い る。 小 単 元 2で は ,多 様 な 衣 服 の 原 料 , 使 用 目 的 ,季 節 な ど に よ る 原 料 の 違 い ,原 料 の 生 産 ,発 達 の 歴 史 な ど 衣 服 の 原 料 に関 す る 諸 事 実 を 認 識 さ せ よ う と し て い る。 小 単 元 3で は ,生 産 活 動 と 関 わ っ て 製 糸 工 場 の 立 地 条 件, 労 働 者 の苦 労 と私 達 の 生 活 と の 関 連 な ど ,衣 服 の 生 産 活 動 に 関 わ っ て い る諸 事 実 を 捉 え さ せ よ う と し て い る。 こ の よ う に,小 単 元 1 ∼ 3 は 社 会 事 象 の知 的 理 解 か 中 心 と な っ て い る 。 客 観 的 事 象 の 認 識 は , 「 新 し い 道 徳 教 育 と は ,・ ・ ( 中 略 ) ・ ・ 道 徳 的 判 断 の 基 礎 に な る人 間 生 活, 社 会 生 活 に 関 す る 正 し い 知 識 を 習 得 さ せ る 面 が あ る べ き で あ る 」19)と 作 成 者 が 述 べ て い る よ う に,道 徳 的 態 度 形 成 の た め の 基 礎 と し て の 意 味 も持 っ て い る。 勿 論 , こ こ で 社 会 事 象 と 関 わ っ て い る 人 間 の 働 き の 理 解 を 通 し て も,態 度 形 成 が 図 ら れ て い る。 例 え ば ,「 衣 服 の 由 来 」 の学 習 で は, 昔 の 人 々 の 生 活 改 善 の た め の 苦 労 と 努 力 を ,冂。 製 糸 工 場 」 の 学 習 で は,働 い て い る 人 々 の 行 為 を 共 感 的 に理 解 さ せ る こ と を 通 し て ,協 力 ,感 謝 ,衣 服 を 大 事 に し よ う と す る 態 度 を 形 成 さ せ よ う と し て い る。 一 方 ,小 単 元 4 で は ,直 接 的 な 道 徳 的 態 度 形 成 が 図 ら れ て い る。「 中 心 問 題 」 を 見 る と ,「9. 贅 「 私達 の服」 の内 容構成 中  心  問  題 事 例 単 元 認  識  内  容 内 容 構 成 の視 点 1 .私 達 はな ぜ 服 が 必 要 か。 2. 私 達 は季 節 によ っ て ど ん な服 を 着 る か。 3.学 校 の通 学 の 時 や 運 動 の時 は ど の よ う な 衣 服 が 適 当 か。 4. 他 国 の人 々 はど の よ う な衣 服 を 着 る か。 1. 服 の 物 語 ○ 衣 服 の 由 来 , 生 産 技 術 の 発達 に よ る 衣 服 の 変 化 ○ 気 候 地 域 と 衣 服 の原 料 と の 関係 ○ 季 節 , 国 家 , 地 域 の気 候 と 習 慣 な ど の 諸 要 因 と 衣 服 と の関 係 * 衣 服 と 人 間 生 活 と の 関 係 ○ 客 観 的 社 会 事 象 の 認 識 過 程 社 会 事 象 の 理 解 と 態 度 の 統 一 的 形 成 5. 衣 類 の原 料 に はど の よ う な物 が あ る か。 6.私 達 の 郷土 で は ど の よ う な 衣 類 の 原 料 が 生 産 さ れ る か。

万万

1 )木 綿 と綿 布 ○ 用 度 及 び 季 節 と服 の原 料 と の 関 係 ○ 綿 花 の伝 来 の歴 史 ( いっ , 何 処 か ら) ○ 世 界 一 番 の綿 花 の生 産地 ( ア メ リ カ ) * 衣 服 の 原 料 に 関 す る 諸 事 実 2)羊 毛 と絹 ○ 洋 服 の原 料 は羊 毛 , 羊 の 飼育 の 歴 史, 適 地 と 条 件 ○ 服 の 原 料 と して の絹 ○ 養 蚕 の適 地 と して の我 が 国, 生 産 と 流 通 3)新 し い 生 地 ○ 技 術 の発 達 と新 し い 原料 の 発 見 7. 衣 類 の生 産 と 制 作 の た め に人 々 は ど の よ う に協 力 し て い る か。 3.製糸 工 場 ○ 製 糸 工 場 の見 学 ( 生 産光 景 の 見 学 と 説 明 を 聞 O O 工 場 で 働い て い る人 々 と我 々 の 生 活 と の関 係 ○ 製 糸 工 場 の立 地 条 件 ( 水 を 使 う か ら 川 端 に 建 設 ) * 生 産 活 動 と 関 わ っ た 諸 事 実 8.衣 類 は な ぜ 値 段 の 差 が あ る か 。 9.贅 沢 な 服 は な ぜ良 く な い か 。 10. 衣 服 は ど う 保管 し 管 理 す べ きか 。 n。 私 達 は 衣 類 の 生 産 や 衣 類 の管 理 に ど の よ う に 協力 す べ き か。 4. 良 い 服 ○ 良 い 服 と良 く な い 服 の 理 解 ○ 高 い 生 地 の 輸 入 の 問 題 点 ( 高 い 着 物 で 贅 沢 す る の は良 く ない ) ○ 我 々 が 服 を 着 る まで は多 く の 人 々 の 苦 労 の お 陰 げ ゆ・ 感 謝 す る気 持 ち と生 産 に 協 力 す る 態 度 ○ 道 徳 的 態 度 形 成 過 程 文 教部  前掲 書(1955)pp.66∼67及 び, 文教 部 『社会 生活3-1』1959, pp.74 ∼94によ り筆 者作 成

(6)

沢 な 服 は な ぜ 良 く な い か」「10.∼ 管 理 す べ き か 」 匚n. ∼ ど の よ う に 協 力 す べ き か 」 の よ う に ,価 値 的 要 素 が 含 ま れ て い る。 こ こ で は,良 い 服 の 条 件 , 贅 沢 な 服 の 問 題 点 ,衣 服 を 作 る 人 々 の苦 労 な ど の 認 識 を 通 し て ,感 謝 の 態 度 ,協 力 態 度 な ど の 道 徳 的 態 度 形 成 が 直 接 的 に 目 指 さ れ て い る。 つ ま り , 道 徳 的 態 度 形 成 を ね ら い と し て ,内 容 構 成 と 認 識 が 方 向 づ け ら れて い る の で あ る。 こ の よ う に,単 元 5 匚私 達 の 衣 服 」 の 学 習 を 通 し て は, 3年 生 が 理 解 す べ き 基 本 的 社 会 機 能 と し て 衣 服 の 生 産 と 消 費 に関 す る知 的 理 解 と 道 徳 的 態 度 形 成 が 一 つ の単 元 の な か で 繰 り 返 し て 形 成 で き る よ う に 構 成 さ れ て い る。 こ の よ う な 構 成 は , 厂徳 目 中 心 」 型 単 元 を 除 い た殆 ど の 単 元 で 同 じ よ う に 採 用 さ れ て い る。 つ ま り ,こ れ ら の 単 元 で も 社 会 事 象 の 共 感 的 理 解 と ,社 会 認 識 と 関 わ っ て い る 直 接 的 な 道 徳 的 態 度 の 形 成 と い う ,2 つ の 過 程 と 構 造 を 通 し て ,社 会 生 活 の 理 解 と 生 き 方 の 習 得 が 図 ら れて い る の で あ る。 ② 「 徳 目 中 心 」 型 単 元 の 場 合 一道 徳 的 事 例 の 感 化 に よ る 道 徳 的 態 度 の 形 成 過 程 一 単 元 構 成 の 第 2の パ タ ー ンは ,道 徳 的 事 例 の 感 化 に よ る道 徳 的 態 度 形 成 の 過 程 と し て 構 成 す る ,と い う もの で あ る。 匚徳 目 中 心」 型 単元 が こ れ に当 た る O 第 3 学 年 に は ,単 元 1 匚立 派 な 子 ど も 」,単 元 4「 ̄責 任 と公 益 」 の 二 つ の 「 徳 目 中 心 」 型 単 元 が 設 け ら れ て い る 。 事 例 と し て ,単 元 4 「 責 任 と 公 益 」 を 取 り 上 げ ,表 4 と 同 じ 手 順 で 示 し た の が 表 5で あ る。 こ の 単 元 は ,責 任 と 公 益 と い う徳 目 に 関 し て 3 個 の 中 心 問 題 と 下 位 問 題 で 編 成 さ れ ,三 つ の小 単 元 を 通 し て 学 習 で き る よ う に 構 成 さ れ て い る 。 小 単 元 は ,「 責 任 」「 ̄公 益 」「 責 任 と 公 益 の 関 連 」 につ い て 子 ど も の生 活 を 中 心 と し た道 徳 的 事 例 で 構 成 さ れて い る 。 小 単 元 1で は,学 級 で の 役 割 分 担 活 動 を 中 心 に , 誠 実 な 役 割 の 遂 行 と そ れ に 対 す る 先 生 の 称 賛 な ど 望 ま し い 結 果 の 提 示 を 通 し て ,責 任 と い う道 徳 的 態 度 を 形 成 さ せ よ う と し て い る 。 小 単 元 2 で は, 町 の人 々 の た め に 鐘 を 鳴 ら し て く れ る お じ い さ ん の 例 話 を 中 心 に ,他 人 の た め の 行 動 と そ の 結 果 を 通 し て ,公 益 と い う 道 徳 的 態 度 を 形 成 さ せ よ う と す る 。 小 単 元 3で は ,踏 み切 り 番 の お じ さ ん の 例 話 を 中 心 に ,責 任 完 遂 と そ の 結 果 が 公 益 に な る こ と を 通 し て 態 度 を 形 成 さ せ よ う と し て い る。 こ の よ う に ,「 徳 目 中 心 」 型 単 元 の 場 合 は ,責 任 の 完 遂 に よ って 生 じ る望 ま し い 結 果 を 連 続 的 に 提 示 す る こ と を 通 し て ,ま た は道 徳 的 事 例 を 感 動 を 持 っ て 共 感 的 に 理 解 さ せ る こ と を 通 し て ,道 徳 的 態 度 を 形 成 さ せ る 構 造 と な っ て い る 。 子 ど も が 例 話 の 中 に 入 り ,生 き方 を 内 か ら共 感 的 に理 解 し て い く 時 ,感 動 が 生 ま れ望 ま し い 態 度 が 形 成 さ れ 表 5 第 3 学 年  単 元 4 「 責 任 と公 益 」 の内 容 構 成 中  心  問  題 事 例 単 元 内  容  構  成 内容構成 の視点 1.私 達 が 責 任 を 完 遂 す る た め に は ど う す べ き か。 1) 私 の 学 級 で はど の よ う に 仕 事 を 分 担 し て や っ て い る か。 2) 自分 が 担当 し て い る 仕 事 を ど う す べ き か。 3) 先 生 や友 達 と の 約 束 はど う 守 る べ きか 。 4) 学 級 で 決議 し た こ と はど う 守 る べ きか 。 5) 分 担 し て 仕 事 を す る 時 は ど う す べ きか 。 6) 私 達 の 郷土 の人 々 は ど の よ う にお 互 い 責 任 を 完 遂 し て い る か。 1. 私 の す べ き こ と @ 学 級 で の 役 割 分 担 と誠 実 な遂 行 に 関 す る 例 話 ○ ョ ンチ ョ リ の ク ラ スで は 仕事 を 分 担 し て 誠 実 に 遂 行 ○ 清 潔 部 員 の活 動 方 法 と誠 実 な 活 動 唏・・先 生 の 称 賛 ○ 他 グ ル ープ へ の誘 い と他 グ ル ー プ の 誠 実 な 活 動 ○ 友 達 と先 生 か ら の肯 定 的 な反 応 と 清 潔 な 教 室 ○ 学 級 図 書 コ ー ナ の問 題 に 関 し て 図 書 部 の 必 要 性 の認 識 図 書 部 員 の決 定 と誠 実 な 活動 と 図 書 コ ーチ の 整 理 整 頓 ゆ・ 各 部 の部 員 の責 任 完 遂 と 協力 に対 す る 先 生 の喜 び ○ 責 任 完 遂 と 望 ま し い 結果 道 徳 的 事 例 の 感 化 に よ る 態 度 形 成 過 程 2.私達 は ど のよ つ に色 々 な 人 のた め に 働 く べ き か。 1) 郷 土 の人 々 は ど う お 互 い に協 力 し て い る か。 2) 私 達 が 自 分 の利 益 の みを 考え る の は な ぜ 望 ま し く な い か。 3) 他人 の た め に や る の はな ぜ 良 い こ とか 。 4) 学 校 の 物 や共 同 の 物 はな ぜ 大 事 に す べ き か。 5) 私 達 は 色 々 な 人 の 利 益 の た め にど の よ う な こ と がで き る か 2. 鐘 を 鳴 ら す お じ い さ ん ● 町 の人 の た め に 鍠を 鳴 ら して く れ る お じ い さ ん の例 話 ○ 季 節 や 天 気 の変 化 に も 関 わ ら ず , い つ も正 確 な 時 間 に 鐘 を 鳴 ら すお じ い さ ん に 関 す る 話 一枷・感 謝 の気 持 ち ○ お じ い さ ん に会 って いろ い ろ な 話 を 聞 く ○ お じ い さ ん に責 任 や使 命 感 な ど に つ い て 感 謝 ○ 作 文 で 感 謝 の気 持 ちを 書 く ゆ・ 先 生 の称 賛 と友 達 全員 が 感 謝 の 気 持 を 感 じ る。 ○ 公 益 の た め の 行 動 と そ の 結 果 3.自 分 の責 任 を 果 た す こ と は な ぜ 他 人 の た め の も の に な る の か。 3. 踏 み 切 り 番 の お じ い さ ん ● 登 校 時 安 全 を 守 って く れ る 踏 み 切 り 番 お じ さ ん の例 話 ○ お じ さ ん のお 陰 で30 年 間 の無 事 故 ○ ヨ ンチ ョ リ はお じ い さ ん に 感 謝 の 気 持 ち で い つ も挨 拶 ○ 町 の た め に努 力 す る人 々 に 感 謝 の手 紙 を 書 く ○ 責 任 完 遂 と 結 果 と し て の 公益 文教 部  前掲 書(1955) pp.65 ∼66及 び, 文教 部  前掲 書(1959) pp.57 ∼73 により 筆者作 成 −30 −

(7)

う論

ある

しか

態度

成の

めの厂

目中心」

型単

図的

な態度

成過程

では

的態

度の

基礎

とも

える社

識側

と価

を通

した

度形

成過

程は

され

いる

。従

って

され

る態

度は

責任

と公

どの

うな

目に

いての

判の

要素

され

一方

的な

道徳

度の

しつ

けに

なる

おそれ

ある

。結

的に

元の

成は

児童の

生活

中心に

してい

るに

かかわ

らず

して抽

象的

目の

を通

して

面化

図っ

いる

える

3。道徳的態度形成の論理

一道徳的態度の重複的形成

と社会科の道徳化−

これまで考察

してきた

単元構造と道徳的態度

形成の関係

を示す

と図

1の

よう

である

。図で見ら

るように

『1955

年版』

では道徳的態度

を重複

に形成させる構造となっている

。すなわ

ち,①

は社会事象の理解過程

を通

して

,②

では社会事象

と関わ

った道徳的態度の直接的な追求

を通

して,

では道徳的事例に対する感化を通

して態度形成

が図られて

いる

。例

えば,

本研究で考察

した単元

の場合

,①

で厂

製糸工場」の認識過程における,

責任を完遂するために苦労

した

努力

している

労働者の行為の共感的理解

を通

して

服を大事に

する態度

」や,

「責任

完遂

と公益の態度

」が

形成で

きる

。この

ような態度は,②は③の過程を通

して

り返

して形成が図

られている

。 

しか

し,

社会科

の性格

とも言える

社会

認識

を通

して資質

(態度

を育成するという論理から見ると

①の社会認識

過程

を通

して

知的な側面と道徳的な側面は一元

的に形成

される

。しか

し,

『工955

年版』の場合は

内容構成原理は異なるものの

,②

と③の過程

を意

図的に付

け加えて,

主と

して道徳

と言われ

る態度

「社会認識

中心

」型単元 IIr

目中心」型単元

①社会認識

(理l

解過程に

お叫

る態度形成)

隠 ミ ] 一一一一一一一一一一一一一一

道徳的態

形成

(道徳的

事例の

感化を

した態度形

成)

を重複

的に形成させようと

しているの

である

この

ような論理は

社会認識を通

して態度

を形成

するという導入

当時の社会科の性格か

ら後退

して

いる

。また,

生活で直面する問題や厂

客観的題材

を追求することを通

して

」20

また,厂

対立する価

値の

比較や選択が自主的に行われる

」21

過程を通

して

理解,態度,

能力の統

一的育成

を目指す社

会科に

おいての

道徳教育の論理

とも異なっている

結果的に

『1955

年版』における道徳的態度形

成の論理は

人間

と自然環境及び社会環境との

係の認識を通

して形成され

るはずの科学的な観察

合理的な思考や判断などと結びついた道徳的

態度の

形成を妨げ

従来の

道徳教育の特性を多く

帯びる

ことになった

IV 

おわ

りに

道徳と知の結合

を基底に

してこそ社会科はそ

の使命を実現

しうるのだ

」22

と上田薫は述べ

てい

『1955

年版』は,社会科という一教科を通

て道徳

的態度形成

を図っている

。しか

し,

内容構

を分析

した結果

『1955

年版』における厂

徳目

中心

」型単元の意図的編成や,

社会認識中心」

型単元における道徳的内容の追加などで読み

取れ

る道徳的態度の重複

的形成の論理は

完全な知と

道徳の結合

を基盤と

しているとは言

えない

しか

しなが

作成者

らが導入

当時の社会科の

性格か

ら完全に変質

した

とも言い難い

。なぜなら

民主的態度形成の方法と

して,

どもの

生活

を取

り上げた事例

中心の構成

学習内容の

問題式

提示方法の採用

子ども中心への学習方法の転換

など23

『1946

年版』と同様に伝統的な道徳教育

論理の克服が試み

られ

た跡が見

られ

るか

らで

ある

結局

『1955

年版』は,

導入当時の性格か

ら変

質は見

られるものの

当時の道徳重視の主張

を反

させなが

社会科の

性格も尊重

しようとした

編成であ

『1963

年版』における道徳教育の重

点が社会科か

新設の厂

反共

・道徳生活」へ分

離され

ていく過渡期的編成と考

えられ

。結果的

に道徳的態度形成の重複的構造は

特設道徳の設

置に

よる厂

目中心

」型単元

(図

1の③

)の分離

にも関わらず

然と

して道徳教育が重視

,①,②の構造を通

される基盤を残

して,社会科で

した

図1 

『1955

版』

構造

(8)

[註および引用文献

1)例

えば,

1992

年の第6次教育課程改訂の時の

道徳科廃止論があげられる

Oその理由としては

道徳科が

「権威主義時代の政策的目的科

目な

で今日の

民主主義時代には要らない

」匚

では設置

され

ていない場合が

多いため

韓国で

も設ける必要がない

」厂

あま

り効果がないだけ

ではなく

逆機能まで引き起

こしている」など

が提示された

(鄭世九匚

第6次教育課程に

って初

・中等学校道徳科

・倫

理科に

関す

る誤っ

た観

点と

しい見解」韓国道徳科倫理科教

育学

『初

・中学校道徳科はなぜ

必修教科

として存

しなけれ

ばならないか』1991,

pp

よ4

2)

「 ̄

学習指導要領

」の同様の概念と

して使われ

ている

。 1946

年版では匚

教授要

目」,

1955

年版

では厂

教科課程」

,その後は匚

教育課程」

となっている。

3)軍政庁文教部

『初

・中等学校各科教授要

目集

(4),

国民学校社会生活科』朝鮮教学図書株式

会社,

1947

。なお,

導入か

ら2次改訂前までの

社会科の名称は

「 ̄

社会

生活科

」であった

。ただ

翻訳上の相違と言われ

ているの

本小論では

引用の

を除

くは

「 ̄

社会

と呼ぶ

ことに

する

4)文教部

『文教部令第44

国民学校教科課程』

教育週報社,

19550

5)李相鮮

『社会生活科の理論と実際』金龍図書

出版株

式会社1946,

p.

3

6)同上書p.

4

o

7)文教部

『初

・中

・高等学校教育課程(1946

1981)

社会科

・国史科』1986,

p.2

8)同上書p.3

9)拙稿

「韓国における成立期社会科カリギ

ュラ

ムの再評価

主体

的カリキュラム編成の試み

その

論理−」全国社会科教育学会

『社会科研究』

第51

号1999,

を参照

10)崔秉七

「 ̄

社会生活科編纂趣

」大韓教育連合

『新教育』1956

年6

月号,

p.80

工1

)崔鉉培匚

道徳科目設置に際

して」

『文教月報』

1953

年12

爪p.9

12)文教部

『文教概観』1958,

p.225

13)韓

国教

育十年史刊行会

『韓国教育10

年史』豊

文社1960,

p.50o

)文教部匚

文教部令第35

号国民学校

・中学校

高等学校

・師範学校教育課程時間配当基準令

(1954.4.20)J

p.4

工5

)文教部

『道徳一教師用

−』1962,

p.260

また

「教育課程時間配

当基準令」の中学校第

14条では言 ̄

社会生活科に配当された時間の

ち最低35

時間を道義教育のための

時間に充当す

(文教部,

前掲書14,

p.2)

と規定され

直接

的に社会科で道徳

教育を行

うことを示

している

16)崔秉七匚

社会生活科指導の革新」

『新教室』

1957

1月,p.3

17)拙稿厂

韓国に

おける生き方中心社会科

カリキ

ラムの成立

」中国四国教育学会

『教育学研究紀

要』第45

巻第2

部2000,

pp.215-220,

を参照

18)拙稿 

前掲書9

)p.76

19)崔秉七匚

社会生活科の革新

」大韓教育連合会

『新教

育』1957

年1

月号,

p.330

20

)上

田薫『社

とその

出発

同学

社1947,

p.12

21

)勝

田守

一厂

公教育における道徳教育の問題

教育科学研究会

『教育』第95

号1958,

p.250

22)上田薫

社会科50

年と今後の使命」日本社会

科教育学会

『社会科教育研究』

第74

号1996,

p.30

23)これは

①系統的教科学習を止めて生活中

心の単元学習で展開

②小単元制か

ら大単元制

へ改めて学習効果の伸張と生活化を企

③注

入式方法から生活経験に

よる理解

態度,

機能

の育成への転換

④興味中心の作

業単元を多く

入れた経験の深化拡充の企図

」という教科書編

纂方針にもよく見られる

(中央大学校付設韓

国教育問題研究所

『文教史-1945

∼1973

一』

央大学出版部1974,

一方,

日本の初期社会科の場合もこの

p.233)

ような

克服論理が見

られる

。木村博一は,

日本の

『学

習指導要領社会科編

(試案)

』の分析

を通

儒教道徳的な生活指導と,

民主主義社会

の建設という相矛盾する

二つの原理を,

『要領

I』の作成担

当者が

民主主義に

一元化

した論理

を教育方法の転換という側面で論証

している

(『学習指導要領社会科編

(試案)

』の戦後日

本的特

一社会科に

おける民主主義と道徳教育

をめ

究』第40

ぐって

号pp.133-142)

」全国社会科教育学会

『社会科研

−32

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