実行委員会形式の学校行事が中学生の学校生活に関す る
ス キルに及ぼす影響
一過程及び効果に関す る実証的研究一
山 形 弥壽子
(兵庫教育大学) 本研究の目的は, 中学生によ る実行委員会形式の学校行事運営 を通 し て, 中学生の学校生活, コ ミ ュ ニケ ー シ ョ ン等に関 す る スキルが どのよ う に変化す るか を明 ら かにす る こ と で あ る。 調査では, 中学 2 年生291人 を対象 と し て, 学校行事 (班 別校外学習) の前後に, 「学校生活スキル尺度」 のう ちの 「自己学習 スキル」 「集団活動 スキル」 「同輩と の コ ミ ュ ニケ ーシ ョ ンス キル」 の 3 つの下位尺度 と , 中学生用社会的 スキル尺度, 行事参加後の意見 な どについ て質問紙調査 を行い, 実行委員 の経験 と の関連性 を分析 し た。 そ の結果, 自己学習 スキルで は, 時期 の主効果が見 ら れ, 事後が高い値に な っ た。 ま た集団 活動 スキルでは, 群の主効果が見 ら れ, 実行委員の方が高い値にな っ た。 実行委員 と非実行委員 と も に自己学習 スキルが事 後に高い値にな っ た こ と から , 学校行事の準備や経験が生徒全般に好 ま し い影響 を与え た と 考え ら れた。 キ ーワ ー ド : 中学生 学校行事 生 き る力 実行委員 会 山形弥壽子 : 兵庫教育大学大学院 ・ 学校心理 ・ 発達健康教育 コ ース院生, 〒673-1494 兵庫県加東市下久米942-1 , E-mail : m i [email protected]The Effects of School Events on School Li fe Skill in Junior High
School Students: An Empirical Study on the Process and Result
Yasuko Yamagata
( yogo m ve sz of 「eac er d caflon)
The present study was designed to investigate to clarify the relation between the experience group leader and his/her li fe skills. Two hundreds ninety-one students at j unior high school students took part in the study. Students were assigned to two groups: the leader group (27 students) and follower group (264 students) . Li fe skill was measured by the inventory of L i fe skill and questionnaire for social skil l. The investi gation was repeated two times; before and after the school event. Those data was ana- lyzed by two way ANOVAs. M ain findings were as follows;
1) As the results of two way ANOVAs on each dependent variables, no significant interaction was found.
2) As to school li fe ski l l scores and, signi ficant main effect of research were found. Those findings indicated that students' ski lls were developed by their participation in the school events.
Those findings were discussed from practical viewpoints of school education.
Key Words: junior high school students, school events, li fe skill, social skill, planning committee
Yasuko Yamagata : Graduate Student of School Psychology, Developmental Science and Health Education Hyogo University of Teacher Education, 942-1 Shimokume, Kate-city, Hyogo 673-1494 Japan E-mail : m i [email protected] jp
問題 と 目的 中央教育審議会答申 (2013) には, 「青少年の 『生き る力 』 を育 む た め には, 意識的 に, 目標 を持 っ て体験活 動等 に チ ャ レ ン ジす る機会 を創出す る必要があ る。」 と あ る o 「生き る力」 の捉え方には様々あるが, 門脇 (2002) は 「生 き る力 の中核は社会力 で あ る と 理解せよ」 と 提案 し てい る。 そ し て, 特に 「 ( 3 ) 自分以外の人のこ と に 関心 を持 ち, だ れと で も 親 し く 交わる こ と がで き , 他の 人の立場や心情 を理解す る こ と がで き , その人に共感す る こ と が容易 に理解で き る能力」 が最 も重要で あ る と 述 べ てい る。 しかし, 中央教育審議会答申 (2013) には, 「都市化 ・ 過疎化 や核家族化 が進み, 価値観やラ イ フ ス タ イ ルが多 様化 し , 社会と のつながり が希薄化す る中で, 親戚や異 年齢の子 ども た ち , 地域の人たち等 と の 「 ナナ メ の関係」 が希薄 と な り , 子 ども たち の人間関係能力 が低下 し てい る」 と あ る。 実際に, 一緒 に遊ぶ と 言い な が ら , 同 じ 空 間 にい て も , そ れぞれが各自のゲ ーム機に向かい黙々 と ゲ ー ムを し てい た り , ま た, 対 戦ゲームを し てい た と し て も , ゲーム機上のつ ながり で , 生の対話はそ こ には存 在 し ない と い う 風景 を見 かけ る こ と があ る。 ま た, こ れ は子 ど も だけ で な く , 大人 の社会 で も 同 じ で , 川 上 (1999) は 「大人 た ち の住むそ れぞれの地域社会の共同 性がな く な っ た」 と 述べ てい る。 中学校学習指導要領解説 特別活動編 (2008) で も 「近年, 都市化, 少子高齢化, 地域社会におけ る人間関 係の希薄化 な どが進む中で , 家庭や地域社会におい て社 会性 を身 につけ る機会が減少 し てい る。 ま た, 情報化の 進展によ り , 間接体験や疑似体験が膨ら む一方, 望ま し い人間関係 を築 く 力 な どの社会性が身 につけ に く く な っ てい る。 た く ま し く 生き る力 を育成す る ためには, 学校 におけ る生徒の望ま しい集団活動や体験的活動 を一層充 実す る こ と が重要で あ る」 と 述べ ら れてい る。 体験の重要性は従来か ら強調 さ れてい る。 例え ば, 守 屋 (2000) は, 「体験 をす る中で, 自分のも のと し て, 身 に付 き , 自分の課題を見つけ るこ と がで き るよ う にな る」 と し てい る。 ま た, Schulz (2012) も 「各家庭が社 会的 な変化 の プロ セ ス に強 く さ ら さ れ, 家庭におい て ま す ます成 し遂げ ら れな く な っ てい る部分 を, 教師が担 う こ と が求 め ら れる よ う に な っ てい る」 と 述べ てい る。 こ の集団活動や体験活動の機会 と し て, 種々の学校行 事が挙げ ら れる。 学校行事は, 望ま し い人間関係 を形成 し, 集団への所属感や連帯感を深め, 公共の精神 を養い, 協力 し てよ り よい学校生活 を築こ う と す る自主的, 実践 的な態度 を育 て るこ と を目標 と し てい る (中学校学習指 導要領 特別活動編 2008) 。 学校行事には, 普段の学校生活では実施で き ない活動 が多 く , 計画的に準備 し て, 生徒が前向き に取り 組むよ う にす る と , リ ーダー養成, 集団のルール作 り , 生徒相 互の人間関係作 り な どに効果 を あげ る よ い機会 と な る。 そ し て, こ の活動 を通 し て, 意志決定, 集団活動, コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン な どの ス キル を身 に つけ る こ と は, 毎日 の 生活におけ る人間関係作 り に好影響 を及ぼす と 考え ら れ る。 筆者は, かつて, 立候補 し た生徒が実行委員会を組織 し , 生徒が主体 と な り , 行事の企画 ・ 運営 を行 っ た経験 を持 つ。 そ こ では, 実行委員 によ る提案 を学級会で話 し あ う 中で, 学年集団への帰属意識が高ま り , お互いに注 意 し合え る集団へ と 変容 し たよ う に見受け ら れた。 学級での話 し合いは, 文部科学省が推奨す る 「中学生 熟議」 に も あ る よ う に , 他者 と 協同 し て 「熟考」 し , 「話合い」 をすすめ, 「考えの発展 ・ 統合, 合意形成」 と い っ た過程 を経 る言語活動 を含 むこ と か ら , 子 ど も た ち の思考力, 判断力, 表現力等の育成に資す るこ と が期待 さ れ, 生き る力 を育むこ と にも つながる。 行事 を通 し て, 各自が自分 で考え る こ と に よ り , 学級の中で, ま た学年 の中で何 をすべ き か を考え て行動 で き る生徒が増え て く る。 学年 が進むに つ れて, さ ら に生徒が主体 と な っ て活 動す る場面が増え , ま た, お互い に声 を掛け合い, 集団 を よ く し よ う と す る雰囲気が生ま れ, 学校全体が落ち着 い た集 団 へ と 育 っ て い く 様 子 が う かが え た。 軸 丸 ら (2006) も 「 意識的かつ積極的 に種々の体験 を さ せ る こ と によ り 他者に出会い, 自己 を見出 し , 世界に日 を向け て成長 し てい く ので あ る」 と 述べ てい る。 し か し ながら , 学校現場でのこ のよ う な取 り 組みは, 系 統立 っ た組織的 な も のには な ら ず, 指導す る教師の力 量に左右 さ れがち で あ る。 ま た, 取 り 組みの評価や分析 も 不十分 な ため, 一過性のも のと な っ て し ま う こ と が多 い。 同 じ学校で も , 学年が異な ればその取 り 組みを共有 で き ない こ と や, 知見が蓄積 さ れない こ と も少な く ない。 さ ら に, 教師の転任等の移動で教師集団の組織が変われ ば, 取 り 組みの継続性が失 われる こ と も あ る。 そこ で, 実行委員 を募 つて取り 組む学校行事のあり 方 を検討す る基礎的情報を得 るため, 実行委員会形式の学 校行事 の準備 や経験が, 学校生活や コ ミ ュ ニケ ー シ ョ ン に関す る スキルに与え る影響 につい て, 質的心理学的 な 観点に基づ く 分析 を踏まえ, 質問紙調査 を実施 し, 検証 し た。
方法
1 . グル ー プ イ ン タ ビ ュ ー ( 1 ) 実行委員 への グル ープ イ ン タ ビ ュ ー 1 ) 目的 学校行事におけ る実行委員会の経験が与え る具体的影 響 を さ ぐ る ため, 実行委員会形式で行事に取り 組んだ卒業 生 に フ オー カ ス グル ー プイ ン タ ビ ユー (以 下 FGI) を 行い, その経験 を通 し て感 じ た こ と , 考え たこ と な ど を 聴き取り , 行事の在り 方, 実行委員会の持ち方について 調査 し た。 2 ) 対象およ び調査方法 2012年 3 月にA 市立 B 中学校を卒業 し た生徒 5 人 (男 子 2 人, 女子 3 人, 調査時は高校 1 年生) を対象と し て, 2012年 9 月に60分程度の面接 を行っ た。 対象者は, 実行 委員長 を し た生徒, 複数回実行委員 を し た生徒, 一度だ け実行委員 を し た生徒な ど, 様々な立場であ っ た。 対象 者 には, イ ン タ ビ ュ ーの目的, 内容, お よ び主旨 を説明 し たのち に実施 し た。 イ ン タ ビュ ーは筆者が担当 し , 匿 名性が守 ら れる こ と , ま た答え た く ない質問 には答え な く て も よ い こ と を説明 し , 開始前にイ ン タ ビュ ーの承諾, 録音 ・ 録画の同意書の提出 を求 めた。 会場には, 周囲の 雑音が入 り に く い B 中学校パ ソ コ ンルームを使用 し た。 イ ン タ ビ ュ ーの活性化 を図 る ため, 生徒が作成 し た当時 の し お り や写真 な どを用意 し て提示 し た。 最初に 「実行委員会に立候補 し た時期」 「活動や役割」 「立候補の動機」 「行事 を通 し て思 っ た こ と」 な どについ て, 質問紙で簡単 に記述 を求めた。 さ ら に, 半構造化形式 のイ ン タ ビ ュ ーを行い, 立候補 の動機, 行事 を通 し て感 じ たこ と , 現在の高校生活な ど につい て尋ねた。 イ ン タ ビュ ーの結果は, 安梅 (2003) が示す内容分析法を参考に, 全体の体系的な整理を行い, 重要 カ テ ゴリ ー を抽出 し た。 聴 き取 っ た内容は, 質問紙 の フ ェ イ ス シー ト の作成及 び質問紙の尺度の検討 に活用 し た。 ( 2 ) 教諭へのイ ン タ ビ ュ ー 該当学年の教論にイ ン タ ビュ ーを行い, 学校行事に関 わる生徒の意識や行動の変化 , 立候補 を募 つて実行委員 会 を組織す る こ と の有用性 につい て質問 し た。 ま た, そ の当時の生徒 に対 し て どんな言葉かけ や働 き かけ を し た かな ど を聴 き取 っ た。 イ ン タ ビ ュ ーの内容は, 指導内容 を反映す る も のと と ら え , 質問紙によ る調査結果の分析 の際に活用 し た。
( 3 ) 結果
安梅 (2003) の内容分析法に従い, 全体の体系的な整 理 を行 っ て, 重要 カ テ ゴ リ ー を抽出 し た と こ ろ , 「立候 補の理由」 「活動 を通 し て起き た自分の変化」 「物事に対 す る自分の姿勢」 「活動 を通 し て変化 し た他の実行委員」 「実行委員 以外 の生徒の変化」 と い う 5 つの コ ア カ テ ゴ リ が抽出 さ れた。 立候補の動機は, 最初は 「 目立 ち たか っ た」 「友達に 誘 われて何 と な く 」 な どが多 か っ たが, 実行委員経験 を 重ねるう ち に, 「行事で失敗 を経験 し , 次こ そ成功 さ せ て や る と 思 っ た」 「 や っ てい る う ち に今 ま で の自分 じ や ない自分 に気づい た」 「前の実行委員 がか っ こ よ か っ た か ら , 自分 も や っ て みた く な っ た」 な ど, 取 り 組みと と も に自分の考え が変わっ てい つた と い う 意見が出 た。 ま た, 最初は協力的 で な か っ た ク ラ ス メ イ ト も , 回 を重 ね る う ち に, 気 を遺 っ て く れる よ う にな っ た と の意見 も あ っ た。 ま た, 話 し合いの中で , 「 と にか く 自分の頭で考え ろ」 と 言 われたので , 「自分 た ち で と こ と ん意見 を出 し て, ぶつかり 合い なが ら も 行事 を進めてい っ たのが良い 経験 と な っ た」 と いう 意見があ っ た。 教諭へのイ ンタ ビュ ー で も , 「自分 たち で考え , 自分 た ち で動 く 」 と い う こ と を徹底 させ, 話し合いの時間を重視し, 生徒が主体になっ て動 く よ う に指導す る よ う 心がけ た と い う 話があ っ た。 ま た, 「普段は教師の指導に なかなか従え ない生徒 も , 生徒同士の関係性の中で協力 し よ う と す る姿勢が見 ら れ た」 と い う 意見があ り , 実行委員 も , そ れ以外の生徒 も 学年集団 と し て, と も に成長 し てい つた過程がう かがえ た。 2 . 生徒に対 す る質問紙調査( 1 ) 目的
中学生が行事 を体験す る こ と に よ っ て, その行事の前 後で, 学校生活や, 学年集団, 学級集団に対す る意識や 行動が どう 変化す るかを明 ら かにす る こ と を目的 と し た。 ( 2 ) 手続き 質問紙調査の実施については, 学級担任の教諭に教示 文 を 「調査の手引 き」 と し て提示 し , ク ラ ス ごと に実施 す る よ う 依頼 し た。 ( 3 ) 対象およ び調査方法 班別校外学習の前後で生徒の意識や行動が どのよ う に 変化 し たかを調査す るために, 校外学習前の2012年12月 に, A 市立 B 中学校 2 年生 8 ク ラ ス (男子156人, 女子 135人, 計291人) を対象に, 質問紙調査 を行っ た。 さ ら に, 同行事後の2013年 2 月に第 2 回質問紙調査を 行っ た。 (図 1 参照) 以上の調査 につい ては, 無記名であ る も のの, 各生徒 に個別の ID を割り 当 てた。 従 っ て, 各自の各調査結果 を対応 さ せ る こ と が可能 で, 個々の変化 を分析で き る。 図 1 全体の研究デザイ ン 使用 し た尺度は, 学校生活 ス キル尺度 (飯田 ・ 石隈2002) のう ち , 個人で行 う 学習のために用い ら れる スキ ルである 「自己学習スキル (14項目)」, 集団活動の際必 要と さ れるスキルであ る 「集団活動 スキル (12項目)」 , 同年代 の友人 や異性 と の コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ンに関す る ス キルで あ る 「同輩 と の コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ンス キル ( 7 項 目) 」 の 3 つの下位尺度, 計33項目 と , 中学生用社会的 スキル尺度 (戸 ケ崎, 1997) 21項目」 と し た。 さ ら に, FGI で得 ら れた意見 を参考に し , 事後調査に 班別学習の印象, 影響等 を調べ る ため, 「班別学習に参 加 し て楽 し かっ た」 「班別学習で, 自分の役割 をき ち ん と 果たせた」 「班別学習の中で, 自分が成長 し た と 思う と こ ろがあ る」 「班別学習の後, 家での手伝い を さ ら に す るよ う にな っ た」 「班別学習で新 し い友だちが出来た」 「班別学習 で, 友 だちの新 し い良い面 を発見で き た」 の 6 項目 を 追加 し た。 選択肢 に つい ては, 「 ま っ た く あ て はま ら ない ( 1 点)」 「ややあてはま ら ない ( 2 点)」 「や やあ てはま る ( 3 点)」 「 と て も よ く あてはま る ( 4 点)」 ま での 4 件法 を用い た。 ま た, 上記の尺度の結果に関連 す る要因 と し て, 実行委員 の経験等 を調べた。 (表 1 参 照) 行事に関わる活動につい ては, 実行委員は, 行事の目 標の決定, 各係の役割分担や注意事項の確認, 学年集会 の運営な ど全体のために活動 を行 っ た。 一方, 非実行委 員 は, 班の係の分担, 班別行動 の コ ース計画な ど を行 っ た。 (表 2 参照) 表 1 調査項目 スキル等 自己学習スキル (14) 集団活動スキル (12) 同輩 と の コ ミ ュ ニ ケ ーシ ョ ン スキル ( 7 ) 社会的スキル (21 ) FGl によ る追加項目 ( 6 ) 関連要因 実行委員経験 生徒会役員 学級委員長 部長 ・ 副部長 部活参加 表 2 班別校外学習の内容 実行委員 n = 27 班別学習の全体目標決め ・ 各係の役割分担及び注 意事項の確認 見学 コ ース設定の資料作成 ・ し お り の作成 学年集会での行事説明等 非実行委員 n = 264 班 を編制 し各係の役割 を分担 見学 コ ースの経路計画 公共交通機関等の利用方法 ・ 運賃 ・ 時刻の確認 新聞や紀行文の作成 ま た, 学校生活スキル尺度及び社会的 スキル尺度の調 査対象 に対 す る使用可能性 を確認す る ために, 両 スキル に つい て, 主因子法 ・ バ リ マ ツク ス回転 によ る因子分析 を実施 し た。 さ ら に, 実行委員 (n=27) と非実行委員 (n=264) の 行事前後の変化につい ては, 2 要因混合分散分析 を行 っ た。 有意水準は 5 % と し た。 結果およ び考察 学校生活 スキル尺度につい ては, 各項目は, ほぼ飯田 ・ 石隈 と同様に分類 さ れたので, 飯田 ・ 石隈 (2002) の下 位尺度 を使用 し た。 社会的 ス キル尺度 に つい て も , ほぼ 戸 ケ崎の分類 と同様であ っ たので, 戸 ケ崎 (1997) の尺 度を使用 し た。 各下位尺度の回答者数 (n) , 得点の平均 値 (M) , 標準偏差 (SD) を表 3 に示す。 各下位尺度の 信頼性 を検討 し た と こ ろ , 社会的 ス キ ル を 除 き , α= .816~ .875 と な り , 信頼性が確認 さ れた。 社会的 ス キル につい ては, α=.642 と な り , 信頼性は高 く はなか っ た。 < 表 3 参照> 表 3 学校生活 スキル及び社会的 スキルの平均値 と 標準偏差 スキル n M SD a 自己学習 集団活動 コ ミ ュ ニ ケ ーシ ョ ン 社会的 5 9 1 7 8 8 9 8 2 2 2 2 38.51 37.64 20.57 66.43 9 9 0 9 8 3 4 7 7 5 4 7 875 816 838 642 分散分析の結果, 行事前後の自己学習スキルにおいて は, 交互作用は認め ら れな か っ たが, 時期の主効果が認 めら れ, 事後が高い値 と な っ た。 (F(1, 273) = 6.37, p <.05) (図 2 ) 。 コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ンス キル も 交互作用は 認めら れず, 実行委員 ・ 非実行委員 と も に向上す る傾向 があ っ たが (p = .062) , 時期の主効果は認め ら れな かっ た。 集団活動 スキルは, 交互作用及び時期の主効果は認 め ら れなか っ たが, 群の主効果が見 ら れ, 実行委員 の方 が高い値と なっ た (F(1, 276) = 4.44, p<.05) ) (図 3 ) 。 社会的 ス キルについ ては, 交互作用 も 主効果 も 認め ら れ な か っ た。 群 と 時期の交互作用 が認め ら れず, 「実行委 員 の方がよ り 向上す る」 こ と は確認で き なか っ た。 p<.05 図 2 行事前後の自己学習 スキル合計点の変化
p<. 05 図 3 行事前後の集団活動 スキル合計点の変化 実行委員 と非実行委員 を比べた場合, 学校行事への関 わり の強 さ か ら , 実行委員 の方がス キルの向上がよ り 大 き い と予想 し てい たが, いずれの尺度の変化につい て も , 両者の間 に有意 な差は見 ら れなか っ た。 その中 で自己学 習 スキルは, 実行委員, 非実行委員 にかかわら ず得点が 向上 し た。 こ れについ ては, 非実行委員の学校行事への 関わり が小 さ く なか っ たこ と が考え ら れる。 具体的には, 非実行委員 も, 行事の前には役割分担の話 し合い を持ち, 見学 コ ースの経路計画 を練 っ たり , 見学施設について事 前に調べ たり , ま た行事の後には行事 を テ ーマ と し た新 聞や紀行文 を作成 し た (表 2 参照) 。 し たが っ て, こ れ ら の活動が非実行委員 の自己学習 スキル向上につながっ たのではないかと 考え ら れる。 一方, 実行委員は, 全体 計画の策定, 役割分担や活動の計画, 学年集会での説明 等, 自主性が求めら れる活動に, 長期にわたり 従事 し て おり , 自己学習スキルの向上は当然のこ と と 考え ら れる。 体験や集団活動が学習に寄与す る可能性があるこ と は, 複数の調査で示 さ れてい る。 例えば, 中央教育審議会答 申 (2013) には, 「全国学力 ・ 学習状況調査においては, 自然の中で遊 んだこ と や自然観察 を し たこ と があ る児童 生徒の方が, 理科の平均正答率が高 く , 自然の中での集 団宿泊活動 を長い日数行 っ た小学校の方が, 国語 ・ 算数 の主に 「活用」 に関す る問題の平均正答率が高い傾向 に あ っ た。 PISA 調査 (OEc D 生徒の学習到達度調査) に おい て も ク ラ ブ活動 な どの様 々 な学校 の活動 が行 わ れて い るほ ど読解力 の得点 が高い と い う 結果 と な っ てい る。」 と あ るよ う に, 集団活動 を行う こ と が学力向上につなが る可能性があ る と 考え ら れる。 一方 ス キルについ ては, 一般的 に, 学年 が上が る につ れて低下す る傾向があ る (飯田他, 2008) と さ れてい る。 し か し , 本研究では自己学習スキルの得点におい て時期 の主効果が見 ら れ, 行事後に上昇 し ており , コ ミ ュ ニケ ー シ ョ ン ス キ ル も 上昇 の傾向 が見 ら れた。 し たが っ て , 学 校行事が生徒のス キル向上に好 ま し い影響 を及ぼ し てい るこ と が示唆 さ れる。 飯田ら (2008) は, 介入を し ない 限り ス キル実行 に対す る自己評価は低下す るので, ス キ ル低下 を予防す る ために, 積極的 な予防 ・ 開発教育が必 要で あ る と し てお り , 学校行事 を活用す る こ と はスキル 低下予防に効果 を上げ ら れるのではないかと 考え ら れる。 学校行事 につい ては, 授業時間確保のために, ま た, 保護者の経済的負担 を減 ら す ために, と も す れば縮小傾 向にある。 し か し , 生徒に好影響 を及ぼすこ と を考え る と , 今日の日本社会において, 学校行事の果たす役割は 大き い と 考え ら れる。 今後は, 実行委員会形式によ る行事の有効性の継続的 調査 を通 し て, 実行委員会形式の効果をよ り 詳細に検証 す る予定であ る。