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資本主義の発展と「企業者」の役割 : J. A. シュムペーター『景気循環論』を中心にした一考察

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(1)資本主義の発展と「企業者」の 役割 一一 J. A,. シュ ム ペーターⅠ景気循環論. 柄. 井. を中心にした 一考察一一. 朗. に 対する再評価であ る。. 1. 問題の所在 本稿の課題は , J. A.. 敏. ョ. 戦後ケインズの 影響下. に展開して来た「成長」理論が ,. シ,ムベー タ 一の主著. 『景気循環論」を 素材に,資本主義発展過程に. これと 対遮的. 体系をなす シ,ムベー タ 一の「発展」理論によ. って再考を迫られているのであ る。. おける企業老の 役割を検討することにあ ろ。 こ. もう一つは, 「企業者 史 研究」の隆盛との 関. こでシ ュム ペータ一の労作が 選ばれた理由は ,. 係 であ る。 近年経営 史 研究は,時代の要請もあ. 二つあ る。. って独自の研究分野を 開拓し隆盛期を 迎えつつ. 一つは, 1971 年のドル・ショ ,ク,同73 年のオ. あ. るが, なかでも「企業者 史 研究」は,ずっと. イル・ シ " , ク 以後に強まった 現代資本主義の. 以前から研究の 進んでいた産業史,商業史,あ. 理論的かつ歴史的再検討の 動きと関係する。 い. るいは近年明確な 意図のもとで 方法論を確立し. わゆる「不況の 経済学」. として第二次世界大戦. た 経営組織二管理史と 並んで, 重要な地位を 占. 後の世界経済の 再編成に,理論と政策の両面で 大ぎく貢献したかの J. M. ケインズの『一般. めるようになってぎた。 いわかるアメリカ 経営 史の主流は,. 理論』 (John Mayn 打 d Keynes,. G ㎝ げ㎡. される経営組織二管理史研究とこの「企業者 史. Theoryy o/E 旭タ loy 援 ㎝ f, 刀itcrestanzイ九めれワ ,. 研究」であ るといっても ,恐らく過言ではな. London, 1936.) が, ここに来て決定的にその 有効性を問われるよさになって 来たこと、の関. ところでアメリカから 始まった「企業者 史研. 足, さらには 1974 年から 1975 年にかけて起こっ た世界的同時不況が ,. もはや恐慌はなくなった. とされた戦後の 資本主義に対して ,事実の面か ら 批判を加えたからであ. る。 ここでケインズ と 同時代に生きながら ,経済. 学の面ではその 隆盛の陰にかくれていた シュ ム ペータ一の経済学への 見直しがおこってぎ. た。 なかんずくその『景気循環論』 Schumpeter,. H. B ぬ廉c5. Cy は㏄, A. むfo Ⅰ わ㎡,のれイ S 切れおわ㎡. Ca 戸 加 Ⅰ. Ⅰ. みtEroce35,N. (JosephA. T. ん ㏄Ⅰど. tic㎡,. A れ ㎡ y5 な 0/ 妨 e. .Y. and London,. Ⅰ. 939.). @: @V. Jr. に代表. 一 価 屯 小 ド 8 タ Ⅰ い リ ょま Ⅱ 年 Z E 0 ヱ 撰 榔 以 o タ. 連であ る。 世界的なインフレーシ , ン ,資源不. Ⅱ ムー. The. A. D, チャンドラ ロ.

(2) 160. 横浜経営研究. 第. 1. 巻. 第. 3. 号 (198U. 究 」の源流をたずねてみると ,その理論的基礎. 11. 資本主義の経済発展. が シュム ペータ一の資本主義発展の 理論, とく. にその枢軸を 占める「企業者論」にあ ることを. 知る。 資本主義経済の 発展を担 「企業者」. 人格としての (entrepreneu,), すなわち シュムペ. 一タ一のいう. 「革新」の担当者が ,. いったいど. う. こで研究の主要なテーマとなっていることは. ,. く知られている。 それは経済史学のこれまで. の研究動向. 『景気循環論』. 一. の 理論的枠組み 一一. 5. のような基盤の 上で登場し活躍したか ,そして 結果としてそれが 資本主義の経済発展をどのよ におし進めてきたか ,一一こうした問題がそ よ. 一一- シュム ペータ. 産業・貿易・ 金融を中心に 据え. B a. れド. Ⅰ. れ ㏄ $Cyyc わ@S:. 材及は tisticaf. A. A. T. れば. ん んぞ o Ⅰ. etical, ⅠⅠ ぬ亡 。Ⅰ わ㎡ ,. lys ぬ 0/. 亡ん. e. Ca 戸it㎡ 蕊. ProoCees$,というタイトルから 明らかなように , シ,ムペーター は ,. その. T 景気循環論コで. 資本. 主義の経済発展過程を 複数の景気波動の 総合体 だと把握している。 しかしかれのニ 景気循環. 論コは ,副題にみられるよ に,資本主義経済 う. の発展過程のたんなる 理論的分析ではない。 歴. たそれぞれの 国々の経済的仕組みや 世界経済の. 史的かつ統計的分析と 組み合わされ ,. 構造の分析, あ るいはそれと 不可分の関係に 立. な体系として 整備されている。 この点が初期の 労作『経済発展の 理論』とも,他の近代経済学. つ 経済制度や経済政策などの 研究. と決定的. に興って,実際に経済発展を推し 進めた個々の 企業者の働ぎを 中心に据えて ,資本主義経済の 発展過程を跡づけ よう としたものであ る。 そこで本稿では ,上述した二つの問題,すな わち, 第 1, 「成長」に対して「発展」. とは何. か,第2, この「発展」の 担当者と想定されて いる「企業者」とほ 何か, という問題を 念頭に おいて, シュ ム ペータ一の主著. を 対象に,. F 景気循環論』. 随時,その『経済発展の理論団. を引証して議論を 補足し,整備しながら. れの「資本主義論」と「企業者論」を. か. 検討する. ことにした。. より壮大. 者の労作とも 決定的に違ったところであ るよ. う. に思われる。. 本稿の主題との 関係で問題とされるべき 個所 は,理論的枠組みと歴史的分析の 諸 章 であ る。 「景気循環」を 資本主義発展の 必然的産物だと 捉える彼の理論の 基本的枠組みと ,その下での 「企業者」の 役割がここで 体系的に述べられて いるからであ る。 さて シュム ペータ一の『景気循環論』を 全体 としてみるとき , ここにあ らわになる顕著な 特 徴は , 彼が資本主義発展の 過程を法則的過程と して把握しょうとしていることであ. る。 すなわ. ち, 「資本主義的経済制度は ,景気循環の 過程 を 必然的に伴 廉 E 。o れ omic H;sto ひ ,と改名して発刊を続け. ている。 「経営組織二管理史研究」は , A. D. チャン ドラⅠ J,. の研究によって 体系化され整備さ れ , 今日の隆盛を 見ている。 画期的名著, A. D. Chandler, Jr., Stratcg ノ 晩材 枕 Ⅰ仮初代, C ん坤t。r3 % 亡ん e H 「,z0 り 0/ 妨 e ヵガぬ trioZ. 発展過程であ る」という見方で あ る。 「資本主義」の 発展を法則的に 捉えよう う. としているところで ,彼の「資本主義論」はマ ルクスのそれと 似ているよ. う. に思われる 2)。. ま. た「景気循環」を 必然的に伴 うと 見る点でも て. EnterPrtise,M.I.T. Press, Cambridge Mass., 1962, の与えた影響は 大きい。 今日のわが国経 営 史 研究の多くがこれに 負っていることは ,中 川敬一郎,土屋守章等の 研究をみ よ 。 山下幸夫 欧米』 (経営会計全書 2), 日 編著『経営 史. 本評論社, 1977 年,は,こうした 研究の今日に お げる一つの到達点を 示す。. 2). 例えば Ka,lMarX,. D 億人色 pitaZ, Krizi ゐ der. politischen Oeko れ omie,Zweite Auflage,Hamburg , 1872 ,. S.. 3-8 ,. Vorwort@. zur@. erstern. Auflage. [長谷部文雄訳『資本 ;禽 』, 第 1 部 上, 青木書店,第66 版,1972 年,pp.69-74.] をみ よ 。.

(3) 資本主義の発展と「企業者」の 役割 ルクスと似ているといえる. 助. 。. だが後に詳細に. 見る よう に,両者間の資本主義理解には 決定的. な相違があ る。 ることを認めていたが ,. これを 惹き 起こす原因. を基本的には 貸本主義的生産に ( 生産の社会的性格と. ・・・・ 内在する矛盾. 所有の私的性格との 矛盾 ). に求め,恐慌をその矛盾の爆発であ り,かつ同 時に矛盾の解決であ ると理解した " 。. だが ジ,ムペーターは, 「景気循環」を 資本 う. 必然的産物と 捉えはしたが ,. 「恐慌」に関しては ,. これを極めて 通俗的用語. 法だとして斥けた。 したがってかれは , 「景気. 循環」に関する 理論的・歴史的・ 統計的分析 を ,いわゆる「恐慌の理論と歴史」としては 展 開していない。 もちろんかれは , かれ以前の経 済学者,例えば,. ュピ. 161. 義 」ないしそれと 密接に関連する「企業者論」 に由来するもののように 思われる。. かれの「資本主義論」および「企業者論」に. マルクスは,貸本主義の 発展に産業循環があ. 主義の発展に 伴. (柄井敏朗 ). ノ ガン・,ラノ ウスキー や シ. ホ ブ 等の恐慌に関する 理論的見方を 取り. ついては節を 改めて論じることとしここでは. ,. まず,かれの「資本主義論」を 理解する上で 重 要な ,. 「景気循環」が 何故発生するかについて ,. その理論的枠組みを 考察することにしょう。 『景気循環帯コにおける 彼の理論的枠組みは , 次の二つの次元で 組み立てられている。 この点 は ,初期の労作『経済発展の理論 コ の場合と同 じであ る。 第 1 は , 出発点としての「定常的均衡」状態 のモデルであ る。. ここで「定常的均衡」状態とは ,事業家 ( か れの特別の概念たる「企業者」と 同義ではな く,通俗的用語の「実業家」に 相当 ) が景気の 正常態と考える 状態を理論化したもので ,一定. 入れてはいるつ。 だが, 「恐慌」を中心に 理論を. の規模をもって , 年々それ自体が 再生産される 循環的流れ (stationⅡy fHow) のモデルのこと. 展開してはいないし , またその ょう に歴史を叙. であ る 6)。. 述してもいない。 というのは,かれの『景気循. 比される「循環」モデルで ,. 環論 コ 0 基礎には,後述する「革新」の 理論が. ら血液の循環のように 年々同じ軌道をくりかえ. り,それとの 関係で資本主義の 発展過程が取. しっ っ 巡回するという 考え方に根ざしている。. あ. ト. り上げられ,「景気循環」が 問題にされているか. らであ る。 このことは 偏 えに,かれの「資本主. これは, つ ぎの「発展」モデルと 対 国民経済がさなが. 「定常状態」を 考え, 時間を分析の 中に導. き. 入れている点で , これほ,動学化された 理論的. 田 ﹁貝偏. 4 5. 貸る鈴 り 重 太,. 3. モデルであ るが, 「定常状態」とは ,. マルクス. の単純再生産の 想定と同様に , 当該年に産出さ. れた所得が,全部消費されてしまい ,貯蓄も, したがって蓄積もなく ,年々同じ経済過程が繰 り返えされる 状態であ るから, その「均衡」 は,事実上は, ワルラスの静学的均衡状態と 同 一だと考えてよい。 シュ ム ペーターは,資本主義経済は, こうし. た 「均衡」状態を 出発点にしながらも , 内部的 要因によって 絶えず 撹 乱され発展し 続けるもの. と考えた。 内部的要因については 後述するが, 6). Schumpeter, B れ ess Cy3,cles, I, p. 35. [吉田 昇三監修,金融経済研究所課『景気循環論』, 1, 有 斐閣,初版第4 刷 , 1966 年, p.50 ・以下 巴ムさ Ⅰ. 邦訳と略す ].

(4) 162. 横浜経営研究. 第 1. これが発展の 起動力であ ると捉えられているこ. 巻. 第3 号. (1981). の 設定と考えられているものは ,何か。. とに,われわれはまず注目しておかねばならな. ①新商品の出現. い。 ここでは 撹 乱に対する「安全装置」が 装備. ㈹企業合同のような 新組織形態の 出現 (m噺 市場,新供給源泉の開拓 などであ る。. されており,かりにすぐ後で見る外的要因が 加. なれば,経営組織と生産と流通が ,従来と. っても,それは容易に内部で 調整され,吸収さ. い. れるものと考えられている。 第 2 は, この安定した 経済体系がどうして 内 部から擾乱を 9 げ,発展をするのかを問題にし た, 「発展」Ⅰ「革新」の 理論であ る。 そしてこ. は 全く違ったやり 方で行われる よう になること. う. を意味する " 。. 「革新」. ほ 産業生活や商業生活の. 場面に現われるもので ,消費生活の場面には現 われない " 。. この 新 「結合」が,経済発展をも. のであ る、0)0. の 「発展」 = 「革新」の理論が ,資本主義経済に 関する シュム ペータ一の理論を 全くユニークな. たらすとい. ものにしている。. る「発展」 し 「革新」 ) 概念と「循環」. 5. ここで注意すべきは ,. シュ ム ペータ一におけ. 惹き 起こす要因として シュムペ一 タ一は ,外的. 鮭 「成長」 ) 概 念との関係であ る。 貯蓄および蓄積は ,かれの 場合,「循環」 臣 「成長」と関係する 事柄であ り,. 要因と内在的変化要因. 「均衡」を破壊する「革新」とは 別 要因であ. 経済体系を撹乱させ ,成長なり逆 成長なりを ( 内的要因 ). とを区別し. た。 前者としては 地震,天候,災害,他国の 景 気変動,関税およびその変更などが考えられ , 後者としては. ,消費 ( 嗜好の変化 ), 貯蓄. 産 要素の量的変化. ),. 革新. (生. ( 商品供給方法の. 化 ) が 考えられている。 経済は覚生的要因によって 全く受動的. ャこ. シュ ム ペータ一のば あ い ,. 8) g). 初地. 自ら. あ る。 シュ. ム. ペーターは,. これを生産関数の 形. の変化であ. ると考えた。 生産関数の形の. 変化と. は,端的にいえば,諸生産要素の組み合わせの 変化,つまり 新 「結合」であ. る". 。 「発展」の ば. あ いには先の「循環」のばあ. いとは全く異なっ て諸生産要素の 新しい「結合」が 起こる。 この. 新機軸が,「発展」を 推進してゆくのであ る。 かれは「循環」と「発展」とをこ. 5. 区別す. る。 ここで「革新」を 惹ぎ 起こす新しい 生産関数 7). fbみ id., I, p. 87. [邦訳, I,. p.. 126.]. 1951, p.. 以下邦訳と格・ ] なお,シュム ペータ一の「経済 発展」の原語は , F 経済発展の理論』では く eco.. nomjc development ノ であ るが, F 景気循環論 山 では く economic evolution ノ であ る。 変化があ. 撹. 乱し,経済体系を今までよりも ョリ 大きな規模 に拡大・発展させ ,再度新しい ョリ 高次な「均 衡」状態に落ちつかせる 決定的な要因のことで. Mass.,. 65. [塩野杏 祐 Ⅰ中山伊知郎,東畑精一調『経 済発展の理論』, 上 ,岩波書店, 1977 年,p.180 ,. ,かれは「資本主義」の発展を. ,「定常的均衡」状態を 内部から. 乃 id., I, p. 84. [邦訳, I, p. l21.] Joseph A, Schumpeter, Thレ T 万牡 or ノ oⅠ. Busi れ ess Cyノ cle, Cambridge. 内部要因に, とくに「革新」に 求めた。 ここで 「革新」とは. 「成長」は, 「循環」. Econo 施わ DeoeZo ゆれ㎝ t, 九% 血ヮぴirノ肋 to タro 弟な , Ca が 劫 Z, C 化 荻 f, よ れ ダ est, a 9. 変. の発展軌道を 修正してゆくものと 考えた古典派 経済学に対して. る。. っても内容はかわっていない。. 10). fbぁ id., p. 65. [邦訳,上 , pp. 182-183.]「生産を するということは ,われわれの利用し ぅる いろ いろな物や力を 結合することであ る。 生産物 お ょ び生産方法の 変更とほ, これらの初や 力 の結 合を変更することであ る。 ・…‥新結合が 非連続 的にのみ現われることがで き , また事実その ょ う に現われる限り ,発展に特有な 現象が成立す るのであ る。 ・…‥われわれの 意味する発展の 形 態と内容は新結合の 遂行 (carり ing outofnew. combination;. Durchsetzung. neuer. Kombina.. tionen) という定義によって 与えられる り ここで「成長」と 関連づ けて とかれる貯蓄と 蓄積について ,かれのいうところを 整理してお. こう。 貯蓄とは,家計内の 経常収入の一部が 所 得受領の権 利を獲得するため ,ないしは負債の 返済のために 留保されることであ り, 蓄積と は,企業が財貨・ 用役の販売 純 収入の一部で 同 様のことを 行 5 場合であ る。 (Schumpeter, B ぬ iness C ソicZes,I,p.75. [邦訳, I,p.107.]).

(5) 資本主義の発展と「企業者」の 役割 の. 連続,正確には「循環」の ョリ 拡大された 連. 続を意味するにすぎない。. (楠井 敏朗 ). 163. わち,低い価格の新製品の市場への 放出づ革新 工場における「利潤」形成引日工場との. 競争 づ. 作. 競争による l日工場の敗北づ「革新」の 模倣と普. り出された「貯蓄」が「成長」の 源泉な C) であ. 及 づ 「革新」工場の「利潤」消失 っ 新しい高次. 出発点をなす「定常的均衡」状態のもとで. 。 だから「循環」との 断絶のなかではじめて. の 「均衡」の実現,がこれであ る。. 可能な「革新」Ⅰ「発展」は ,かかる貯蓄や蓄積 に負 ものでなく 「信用創造」と 結びつくこと. ここで生じる 新しい「均衡」は ,. 腐化と「自然死」,「革新」の全経済体系への 普. になる。. 及によってもたらされる。 資本主義経済 は, 最. る. う. さて,「革新」に基づく経済発展は ,いかな る メカニズムを 通して進展するのであ ろうか。 シュ ム ペーターはこれを. 次のように考えてい. も 抽象的に考察された. l日企業の陳. 場合,このよ 。こして 発 う. 属 する。 以上が シュム ペータ一によって 構想さ. れた資本主義の 経済発展の理論的モデルであ る。 かくて シュム ペータ一によれば ,. る。. 叩 発展』. 第一に, ここで「革新」とは 新生産関数の 設. とは,経済が自分自身のなかから 生み出す経済. 定であ るから, これは 田旧 生産関数の下での 生. 生活の循環の 変化のこと」であ った " 。 したが. 産 状況の変化, したがって (2収穫逓減法則の 中. ってまたかれの 発展理論は, 「循環黍道の 変動. 断として,窮極的 こは,費用曲線 ( 限界費用曲 線 ) の下方シフトとして 現われる "' 。. の理論であ り, 国民経済があ る与えられた 重心. サ. したがって第二に ,. ところで, 「革新」にともなって 必然的に生. この「革新」によって. 「定常的均衡」状態にあ る経済体系は ,. うな擾乱を蒙る。 すなわち, 「革新」を行な 原料の需要構造の 変化. から他の重心へ 移る転換の理論」であ った "' 。. 次のよ. じる一つの特徴として ,. 「革新」の生起時期の. 集中という現象がみられることに 注目しておぎ う. 新工場の設立づ. ( 原料に対する. 需給のア. たい。 「革新」は終始孤立的現象ではなく ,. 時. 間的に均等に 分布するのでもない。 「革新」は ,. ン,ランス) づ原料価格の 上昇づ原料に 対する. Ⅲあ る時期に族生し ,. 投機。. するということ ,. しかも一団となって 現出. しかも②いかなる 時期にも,. だがこの段階でほ , 撹乱は 起こったが, まだ. 全経済体系に 亘 って不規則に 分布するのではな. 経済体系に内在的変化け 起こっていない。 経済 体系の変化は「革新」の 結果として新工場で 生 産された新製品が 市場に出たときに 起る。 すな. く,一定の部面と ,その周辺に集中化する傾向. 1. 丁. ). にあ るということ , 後に見るように ,. これであ る " 。 これこそ, シュ. ムペ一 タ. 一の抱く資本主. 義 経済の「変動」の 原因であ るといえる。 資本. 乃 id., I, pp.8 Ⅰ 91. [邦訳, I,pp.126-132.] 『資本論」においてマルクス は , 第 1 巻 第 4 篇. 主義経済は「成長」するのではなく. 第 10 章で,「絶対的剰余価値の 生産」と 区 列し. るものであ る, しかもそれは「景気変動」を 伴. て「相対的剰余価値の 生産」を論じている。 こ れは よ く知られているよさに ,生産方法の改善 ( シュ ム ペータ一流にいえば 生産過程と経営 組 織 の革新 ) によって,不変資本部分に 対して可. って「発展」するものであ る, という彼の命題 ほ,. 変資本部分を 相対的に小さくすることで ,剰余. によれば,外的要因に起因する 撹乱 過程ではな. 価値の生産をはかろうとする 方法であ る。 この 問題を論じる 時は, マルクスは シュムペ一 タ -. のように,販売方法の「革新」を 考慮していな いから,同列に 論ずることはできないが , シュ ムベータ一の「革新」の 理論は, マルクスの. 「相対的剰余価値の 生産」理論ときわめてよく 似た構造をとっている。. この「発展」モデルから 導 き 出されてくる. といってよい。 しかもそれは ,. 12). Schumpeter,. 榔訳 , 13) 14). 「発展」す. E,o. れ o 笏 ic. シュ ム ペータ. Development,. p.. 63.. 上 , p.75.]. 乃 id., p.64. [邦訳, 上 , p.79.] Schumpeter, B ぬ fれ ess Cycles, I, p.l ㏄・ [邦 訳, I , p.146.].

(6) 164. 横浜経営研究. 第. ,「体系」内部から 発する自律的「変動」な のであ る。 く. 以上のように 原因を「革新」. 巻. 第 て,. 3. 号 (198U. これとの関係で 自分の作った 抽象的な理論. の具体化を推し 進めようとしている。 かれはこ. ,資本主義経済の発展の窮極の. れを, 第 4 章「経済発展の 輪郭」で展開す. し新. る," 。 『景気循環論』におけるこの 草は,『経済. 「結合」 ). に求めた シ,ム. ペーターは , 次に「革新」を 担う. 「人格」につ. タ 一にとって「企業者」. 発展の理論』第 2 章「経済発展の 根木現象」 第 6 章「景気の変動」よりも ,. いて考察を加えている '肋 。 シュムペ一. 1. (entre-. Unternehmer) とは,かかる「革新」 を担 「人格」,すなわち「革新」の遂行を自 らの機能とし ,その遂行に当って能動的要素と. preneur, う. ほ るかに具体化さ. れた理論として 構築されている。 シュムペ一 タ 一によって ョリ 具体化された 資 本主義の発展過程は. ,それぞれ性格を異にする. 三種の「革新」によって 惹き 起こされる三つの. なる経済主体のことであ る。 「企業者 史 」研究 は シュム ペータ一のこの「企業者」概俳から 出. 景気波動の総合と 捉えられている。 だがかれ. 発し, 「革新」を担い 進める「企業者」の 活動. のではなくて ,以下見るように,. を中心に据えて ,資本主義の発展を跡げる 研究. 論理次元で考察し ,順次論理を積み上げ具体化. 分野として発展しつつあ る, といって差支えな. してゆく方法をとっている。 この論理的手続ほ. いだろう。. かれによって 第一次接近,第二次接近,および. ところで,われわれはここで,経済発展Ⅰ「革 新」と関連 づ げていま一つ 注目しておかねばな らない事柄にぶつかる。 それは, シュ ム ペータ 一. が経済発展 曲 「革新」を「信用創造」と. 結びつ. げて考えていることであ る。 シュ ム ペーターが. 経済発展Ⅰ「革新」と「信用創造」との 関係につ いてどのように 考えていたかについては ,後で 詳細に検討するので ,. ここではその 事実を指摘. するだげに止めておこう。. は,直ちにこの三種の景気波動の 総合を考える これを三つの. 第三次接近と 呼ばれているものであ る。 第一次接近とは , 「革新」によって 惹き 起こ される景気の 二段階波動の 過程であ. (prosperity). って,好況. (「 ecession) からなる最も. と 後退. 抽象的な景気波動であ る。 先に考察した 資本主 義 経済の発展モデルが ,そのままの形で展開さ れたものといってよい。 第二次接近とほ ,. 「革新」によって 惹き 起こ. ム ペータ一の『景気循環論 コは, 続いて第 3. された経済発展が ,投機によって新しい ョリ 高 次の「均衡」点を 超えて展開する 場合を考慮に 入れた,景気波動のより現実に近い分析であ. に,資本主義の現実の発展過程で 生起する景気. る。 ここではじめて ,. 変動を分析するために , より一層具体化された 理論的モデルの 構築に進む。. 恐慌が理論的に 考察されることになる。. さて以上のような 論理で展開されてきた シュ. このことは シュム ペータ一の経済学の 方法と. 恐慌とほ ,. シュ ム. ペータ一によって. 彼に ょ れば, 「革新」に よ る資本. 主義の発展が ,投機によって自律性を失った 結. 関係している。 彼は資本主義の 発展を述べる 場. 果発生する病的現象なのであ. 合には,それを決して抽象的な 理論のままに 放. 一においては ,そういう意味で「恐慌」とは,. 匿 せず,つねに現実の歴史的事象を 想 い 浮かべ. 「革新」によって 惹き 起こされた「経済体系」. 15). この点で,「相対的剰余価値の生産」を個々の 資本家にとっては ,競争によって 外的に強制さ れたものと考えるマルクスの 見解と全く異って いる。 MarX, K4 戸な己 Z, Bd. I, Ab. 4, "Die. の内的 掩乱 ,すなわち好況に向かって進む 一つ の発展が,投機によって過度に促進され , 新. 2. 9 Ⅰ. 30 Ⅰ 工. p p. I. s, アレ. C gs1 s. 9 鵜丁. p B, p. が 1I1. p m u 訳,. S[. 16). れノ 2一86.]. 「均衡」状態を 超えて進んだときに 発生する 投 機の ,いわば「異常な整理」過程と 捉えられた。 ぬ邦. Production@ des@ relativen@ Mehrwerths" , [,H:@ , 部 訳 ,第2 巻,第1 部下,青木書店,1972 年, pp.529 ヨ02.]. る。 シュ ム ペータ.

(7) 資本主義の発展と「企業者」の 役割. この整理が異常なくらいに 激しいので,経済体 系の発展過程は ,. 逆にまた「均衡」以下に 沈. 165. (柄井敏朗 ). 動 が含まれる。 以上が. [ 景気循環論』の. 理論的枠組であ る。. さらに進んで ,歴史上. み,そのことによってはげ しい「不況」が 生じ. が, シュ ム ペーターは,. るというのであ る。. に現われる現実の 景気変動の其体的分析に 役立. かくて,第二次接近では,資本主義経済の発. つよ. う. ,外的要因を考慮した理論的モデルを 考. 慌 一 不況の四局面の 連続過程として 現われる。. える。 すなわち, ㈲季節的変動, (2職時 財政の 影響, (3降生産の影響, (4機物収穫の影響など. ここで彼によって 捉えられた景気変動の 理論的. の理論的モデルへの 組み入れであ る。. 展に必然的に 伴う景気波動は ,. 回復一好況 一 恐. モデル ほ ,第一次接近よりも一層具体化された. I11, 資本主義発展における「企業者」の 役割. 一 シュ. @ ﹁ ノ■ マク. ま三. え種. 踏 ・る を・ す 察・ 考・ 異 の・ を 上・ 格. はが. 一二て. で動 近変 援交 次景. 形で画かれることになる。. ム. ペータ一の「企業者論」一一. 上述したところで 明らかなよ. う. に,. シ,ムペ. 新 」によって 惹ぎ起 こされる三つの 波動の総合. 一タ一によって 理解された資本主義発展の 過程. として考察される。 つまり,景気変動が, 周期. は, まさに「企業者」概俳をキー・ワード. を異にする三つの 波動の,相互に関係しあ. て 展開されている ,. ぅ. 複. といっても過言ではない。. 「企業者」がなす「革新」こそ , 「発展」なぎ 状. 合的な波動として 捉えられるのであ る。 「革新」はこの 論理段階では ,. とし. もはや一種類. 態,すなわち,. 「定常的均衡」状態を 撹乱し,. のものではない。 それは,少なくとも性質を異. 経済体系をより 大規模なものに 発展させつつ ,. にする三つの 種類の「革新」から 構成されてい. 次の高次元の「均衡」状態に 到達させる, いわ. る 17). ば 発展の起動力と. 。 すなわち, それらは,約55 年を周期とす. る長期波動たるコンドラ チ , フの 波動,約9. ∼. 考えられているからであ る。. そこで,われわれは改めて, シュ ムペ一 タ 一の. 10 年を周期とする 中期波動たる ジ ,グラーの波. 「企業者」概俳がどの ょ. 動,約40 箇月を周期とする 短期波動たるキチン. 考察しておかねばならない。 「企業者」とは ,かれによ れば, 「革新」二親 「結合」を遂行する 個人,すなわち「革新」Ⅰ新 結合の遂行を 自らの機能としその 遂行に当っ て能動的要素となるような 経済主体のことであ. の波動を惹. き 起こすそれぞれ. 特有の「革新」で. あ る。 一つの長期波動 こは, 5 一 6 個の中期波 ャ. 動が, また一つの中期波動には , 17). 3 個の短期 波. 資本主義経済の 生産・流通, そして経営組織の. 全機構を根本的に 変革し 尽 すような「革新」, 例えば 18-19 世紀はじめの 産業革命や, 19 世紀 20 世 中葉の鉄道, 19 世紀末の電気,化学工業, 紀初めの自動車工業の 興隆によって 惹き 起こさ れた構造変化などは ,一国レダ , ル , 一 産業部門別の「革新」とは. または,. 資本主義経済の 発. 5. なものかを正面から. る。 そしてこれほ「革新」の 手段たる「信用創. 造 」と結びつげて 考えられている。 シュ ム ペー タ一は まずこれを「理論的枠組み」の 中で一般 ・ 的. れ. こ論じ,さらに「歴史分析」の 中で類型化し ・・・. て論じた。 しかもこの類型化を 通じて,今まで. 展におよばす 影響という点で , まるで性格を 異. 考察された一般的で 抽象的な「資本主義」は ,. にする。 シュ ム ペーター は このことをはっきり. 類型として捉え 直されている。 つまり, この論 理段階ではじめて ,各国の「資本主義」は,個 別的でかつ具体的な 性格をもつものとして 考察 されることになるのであ る。 「企業者」が ,各. 自覚した上で ,「革新」を 長期に影響するもの , 中 ・短期。こ 影響するものに 分げ, これら性格を 異にする「革新」 こしたがって 惹き 起こされる ナ. 景気波動をも 三種類. ケこ. 分けて考察している。 中. 期の「革新」が 設備投資に結びついた 当該国の. 目 でそれぞれ固有の 類型をもてば , それに応じ. 産業構造に影響を 及ぼす「革新」であ り,短期 の「革新」が 在庫投資に関係する 販売方法上の. て各国の「資本主義」の 型も変ってくるという. 「革新」であ ることは,. 発想であ る。. よ. く知られている。.

(8) Ⅰ. 66. 横浜経営研究. ところで シュム ペータ一の「企業者」概俳を. 考える場合,われわれはまず,かれの「企業者」 概念を,かれの「資本家」概俳と区別しておか ねばならない。 シュ. ム ペータ一に よ れば,. 第 3 号 (1981). 第1巻. 「企業者」とは「 革. 新 」を遂行する 経済主体のことであ った。 だが すでにみた よう に「革新」 ほ, つねに起るもの ではなく, したがって「企業者」機能も 恒常的. 段階, つまり当該革新的企業者の 成果 ( 企業者 が 活動 entrepreneurship,Unternehmertum). 経済体系全体で 模倣され,普及した段階で,「貸 本家」への移行を 開始するかも 知れない。 また 逆に,ある「革新」の 時期に「資本家」のなか のあ るものが, 自ら「企業者」となりうる 可能 性もあ る。 かれはこういった 両者の相互移行関. 係を示唆している。 いずれにしても ,. なものではない。 そこで シュム ペーターは ,事. 業の恒常的機能を 果す人格を「企業者」と 区別. は,. して「資本家」. 「企業者」たり. と呼んだのであ る。. シュ ム ペータ一にとって「資本家」. とは,企. 「企業者」であ るかどうか. シュ ム ペータ一によれば ,. 当事者にとって. 56 能力と条件が ・・ ・・. 傭 っているか. どうかにかかっている。 その条件とは「信用創. 業の活動において 危険負担をなす 人 ,すなわち. 造 」の機会を利用できるということであ. 出資者,つまり 資本の所有者なのであ る。 ㌃. 力. で 資本とは, シュ. な 行い うる 能力の持主だということであ. ム. ペータ一の場合,一定種類. の財貨から成り 立つものでもなく ,. また財貨 一. 般から成り立つものでもない。 購買力の基金を 意味した。 それは「循環」 対応する概念では なく, 「発展」にかかわる 概念であ る。 それは, 帝こ. 、ンュム ペータ一によれば ,. とは,彼がそのような「革新」. り, 能. し新 「結合」 ) る。 以. 上を要するに , 「企業者」であ ることは一職業 ではなく, シュ ム ペータ一によれば ,研究者が. 分類上つくった 一つの集団. ( 永続的でなく. 観念. 的なそれ ) であ った , 。'。. いつでも「企業者」. シュ ム ペーター は このことを次のように 叙述. の自由に委ねられている 貨幣およびその 他の支. している。. 「歴史上の事実の 問題としては 企業者はその. 払手段であ った "' 。. シュ ム ペーターはここで ,資本主義発展にお. 出現した時代に 偶然に存在したあ らゆる階級 か. いて企業の役割を 重視しながら ,企業の恒常的. ら. 活動を担 う 人格と,「革新」を 遂行する人格と を区別しているだけではなく , これ こともなっ. まれを示している。 労働者階級,貴族,神学・ 法学・医学関係者,小作人,農場経営者,職人. ていわゆる「所有」と「経営」をも. 階級のすべては 社会学的に一定の 類型ではない. ャ. る。 シ,ムペータ一に. 区別してい. ょ れば「資本家」とは. このうちで企業の 恒常的活動を 担. 5. ,. 人格,出資. 出ている。 かれらの家系は 種々さまざまな 生. ところのもの. ( すなわち「企業者」という. 型 ) に貢献した。 卯 」. ( 括弧内は楠. 「企業者」についての. 者なのであ る、9,。. 類. 井 ) と。. シュム ペータ一のこの. と「企業者」 ) のあ いだに,相互移行的関係を. ような理解が ,歴史分析において ,かれのさまざ まな「企業者」類型を 構想させる決定的要因に. 認めている。. なっていることに ,われわれば 注目しておこう。. だが, ソュム ペーターは ,. 両者. ( 「資本家」. 明らかな よう に , 必ずしも「資本家」であ る必. ペータ一の 「企業者」と「資本家」との 関係が , ヴ,一バ. 要はない。 だが彼は,やがて「革新」が終った. 一の「 ヵ リスマ」と「官僚」との 関係に酷似し. 18). 20). 「企業者」. 1g). ほ ,いままで述べてきたところから. Schumpeter,Eco れ 0 附わ D 吹ノは 9ヵれ e れ t, PP 117, 121-22. [邦訳, 上 , pp.298, 30 ㌻ 304.] Schumpeter, B 俺伽 ess Cy3,cles,I, p. 104 [邦 訳, I , D.l51.]. ところで, われわれは, シュ ム. 21). Schumpeter, Econo 附わ DeU は坤笏伽 t, p. 78. [邦訳, p. 却 8.] Schumpeter, B ぬ inessCyCcles, I, p. 104. [邦 訳, I , p,l51.].

(9) 資本主義の発展と「企業者」の 役割. 167. (柄井敏朗 ). ていることにも 注目しておく 必要があ る⑫。 す. ならない「企業者」と「資本家」のもう. なわち, 両者の関係 は ,. い,企業活動における前者の非日常的性格,後. 関風 ま,彼らの所得の 源泉「企業者利潤」 (entrepreneurs,pro 血 s) と「利子」 (interest) との関. 者の日常的性格の 差異であ った "' 。. 係であ る。 資本主義の発展過程にあ らわれる景. シ. スム. ペーターは. ,. シュ ム ペータ一のばあ. この問題を, 「定常的 均. 気変動 は , 利子率の大きな 変動を伴. う. 一つの. 。 この 利. 衡 」の状態, または,たんなる成長的過程にあ. 子 率の変動が「企業者利潤」 とどのように 関係. る事業家または「資本家」の 視野,。 ,と,- 革新」. しているのか ,. を遂行する「企業者」の 視野との決定的な 相違. こで 跡づ げているのであ る。. ここで「企業者利潤」. として論じている。. 前者は日常的業務にその 視野を限り,後者は 非日常的業務にまで 視野を広げる。 この観点か ら シュ. ムベーターは ,一般に競争資本主義の下. では「企業者」は 生まれやすいが ,独占貞木主 義. ( いわゆる寡占体制下の. シュ ム ペーターはこのことをこ. 資本主義 ) のもと,. とくに独占的大企業のもとでは ,権 限その他で 個人は日常業務に 忙殺される面が 大きいので,. 「企業者」は 生まれにくいとし. ぅ. 興味ぶかい結. とは, シュムベーター. にょ れば, 「革新」Ⅰ 新. 「結合」 ). によってもた. らされた費用曲線 ( 限界費用曲線 ) の下方シフ トによって「企業者」が 獲得する特別の 利益の ことであ る。 生産過程の変更,経営組織におけ る多くの革新,商業上の結合におけるあ らゆる 革新が, この特別の利益を「企業者」にもたら すのであ る。 したがって「定常的均衡」状態の もとでは, 「企業者利潤」は 存在しない。. 論を導き出している ,。, 。 ここにわれわれは 資本. この概念は,マルクスのいう ,新技術の導入. 主義の将来に 関する シ,ムペ一タ 一のあ る種の. その他の生産合理化, その結果として 生じる 資 本の有機的構成の 高度化によって ,産業資本家 ( 彼の場合, これを論証する「相対的剰余価値 の生産」の章では ,「資本家」し 出資者 ) と「企業 者」 し 革新的経営者 ) との概念的区別はまだな ,両者をくるめて,産業資本家に一括されて いる が個別的に実現する 特別の剰余価値 ( 第. 不安を見出す 鵜 。. ところで, 「景気変動」を 内包する資本主義. 2. 経済の発展の 問題と関連して 考察しておかねば. く. 3. 巻では, 「利潤」概俳の 成立を踏えて 特別の超. 過利潤として 展開されている. ). とほ. ば 同じ内容. のものといえる。 この観点から シュ ムベーターは ,. この「企業. 者利潤」の形成を「革新」の 最大の経済的効果 と考えるのであ る。 そして,それが他でもなく 「企業者」の 創意に. 力さ. とュ ム。 の者 この 1﹂ ﹂. 視 3 2 4 2勒 2㈲ 2. bfUB4 3,. コ. よ. るという理解から ,当然. 当該「企業者」に 帰属さるべ. き. もの,つまりか. れの「機能的な 報酬」 27)と捉えるのであ る。. ま. た,「企業者」が 同時に所有者の 場合には, これ を「管理の所得」 ", と 理解した。 「景気変動」 の関係で興味深いのは , 27). Schumpeter, B2億iれ ess Cy3,cles,I, p. 06. 書尺、 , I , P. 55.] fbぁ id., I, p, 154. 佛訳 , I , p.154.] Ⅰ. Ⅰ. 屋). と. この「企業者利潤」と [邦.

(10) 168. 横浜経営研究. 「利子」との 関係なのであ る。 、ンュム. 第 3 号 (1981). 第1巻. 論じられている 禍 。 このことは,. ペーターは, 「利子」の経済学的根拠. をこの「企業者利潤」に 求めているのであ る。. ここで「利子」とは ,かれによれば,「革新」を 遂行するために「企業者」に 対して供与される. シ,ムペータ. 一の場合きわめて 重要な意味をもっているもの で,かれの理論的枠組みの出発点が「定常的均 衡」状態におかれていることと 無関係でない。 先にも見たが ,. この「定常的均衡」状態のも. 「信用」に対する 報酬のことであ る。 したがっ. と では,得られた「所得」は,. て「利子」の 大きさは基本的に , 「企業者利潤」. に消費されてしまうことが 前提されている. の枠内に決まる。 その意味で「企業者利潤」と 「利子」との 間には,本質的に対抗関係があ る。. たがって「革新」に 必要な基金は ,. 景気変動過程で 問題になるかの「利子率」. したがって, 「革新」を遂行するためには ,. 潤率 との相関関係を ,. と利. シュ ム ペーターはこの 論. 理関係の中で 捉えているといってよい。 好況期 とは,. シュ ム ペーター によ れば, 「企業者」の. 全て当該期間内 し. 0. この「体系」. の内部からは 生じることはない。 「企業者」は , ぅ. ど. しても体系の 外部からこの 購買力の基金を 獲. 得しなければならない。 だから シュム ペーター は,. この「基金」が 他でもなく「信用創造」に. 群生的出現,. したがってまた「革新」の 群生的 生起によって 生み出された「企業者利潤」の 昂. よってもたらされるものと 考えたのであ る。 「革新」は,その遂行のために 必要とされる. 揚期 であ る。 ここで「企業者」は , 銀行信用を. 基金. 利用して「革新」を 遂行するが,獲得する「企 業者利潤」が 豊かであ るため,借り入れた資本 に対する元利支払 は 容易であ る。 したがって こ. 一一の全てを ,「信用創造」によって 獲得する. こでは ,利潤率は利子率を上回ってはるかに 高. よって考えられている「信用創造」とは ,決し て「消費のため」のものでほない。 それはまさ しく企業者活動と 結合している。 それは, 「企 業者」に譲渡する 目的で行われる 購買力創造な のであ る。 こうして現実の 景気変動を歴史的に. い。 恐慌 期 とほ, 「革新」によって 生み出され. た「企業者利潤」が「革新」の 模倣と普及によ って消滅する 一方,好況期に銀行信用によって 助長された投機が 崩壊し. ( パニ. " ク ,信用体系. 固定資本,運転資本用のそれを 含む. という シュムペ一 タ 一の命題は, まさにこのこ. とを意味する。. したがって, シュ. ム ペータ一に. の 崩壊, 破産の蔓 延 ), 新たな「定常的均衡」. 分析するにさいして ,. への移行が急速に 進行する整理 期. 業者」の類型に 加えて,「信用創造」の 型も考 慮して「資本主義」の 類型化を試みているとい. ないし整理過程. ). ( 異常な吸収. であ る。 ここで利子率は 支払. 手段に対する 需要の増進から 急騰 し 低落する. シュ ム ペーターは,. 「企. 利潤率を圧迫する。 不況期とは, 再編された. って差支えない。 「革新」を遂行する「企業者」 のさまざまな 類型と, 「信用創造」のさまざま. 「定常的均衡」状態. な方法とが現実の 歴史の中ではどのような 組み. ( 無 発展の状態 ) であ. る。. 「企. 業者利潤」が 得られないことから 利潤率も利子. 合わせをつくり 出すか。 シュ ム ペーターはこの. 率も低落する。 こうした状況下で ,. ような観点から. 「企業者」. による新たな「革新」の 芽が生まれ指頭する。 現実の景気変動過程で 見られる「利潤率」と 「利子率」の 対抗関係を,. かれがこうい. う. 形で. 「革新」理論と 結びつげて首尾一貫した 理論体 系の中で論じているのは ,興味ぶかいといえよ. 的 類型が,かれによって,どのように考えられ. ているかを見ておかねばならない。 イ ・上 6 Ⅰ上 ・. p p. I,. 邦訳. Ⅰ・Ⅰ Ⅰ上 ・. ]Ⅰ .. 10 1.1. pp. 「革新」は, 「信用創造」と 結びつけて. に当って,われわれは, 「企業者」自体の 歴史. I. う. うに,「企業者」. シュム ペータ一の「企業者論」をしめくくる. 材・ 笏] 花托. の行. よ. 型論として展開しているのであ る。. 9 2. う。 ここでも示唆されている. ,資本主義経済の発展過程を類.

(11) 資本主義の発展と「企業者」の 役割 「企業者」が「革新」と. 結びつげられ , -% 新. 」. 169. (楠井 敏朗 ). 義は当然の定義といえる。. したがってかれは ,. 特徴とし 私的創意によって 統御. を遂行する経済主体と 定義される限り ,それ. 「私有財産を. は,理論的にみても歴史的にみてもいかなる 社. されている社会」であ っても, 「私的に所有さ. 会的出自のものであ ってもよい。 シュムベータタ. れた工場,給与を受ける労働者,実物的な,. ーは,景気変動の現実の歴史過程を 見てゆく 場. たは貨幣を媒介とする 財と 用役との自由交換の. 合は,. この観点から 分析を始めている。 その結 果,一見平板に見える シュ ムベータ一の「景気. 存在」だけでほ ,その社会を資本主義社会と 見. 変動の歴史分析」では ,注意深くみるとき, 沃、. 基礎にし,かつ「革新」によ って絶えず発展し 続ける社会, しかもこの「 革. のような「企業者」の 三類型が, れに照応する「資本主義」の. したがって そ. 三類型が,くっき. ま. ていない ") 。. 私有財産制度を. 新 」が「信用創造」によって 媒介されて遂行さ. ドイツ型の. れる社会, これを シ,ムベーターは 資本主義社. 「企業者」,すなわち 官僚と, それと結びついて. 会と考えたのであ る。 したがって, シュ ム ペー. いた資本主義, イギリス型の「企業者」,. タ一の「資本主義」は ,理論的枠組みの発端に あ る「定常的均衡」状態が 恒常的であ るような ものでなく,体系内部で進行する「革新」によ. りと画き出されてくることになる。. すな. わち小商品生産者層と ,それに結びついていた 資本主義, ァメリヵ 型の「企業者」, すなわち フロンティア 農民と, それに結びついていた 資 本主義の三類型がこれがあ. る。 ここで は 三類型. って「発展」が. 導き出され,非連続的に拡大す. る経済制度であ ることをもって ,その特徴とし. の「企業者」と ,かれらの「革新」を可能なら. ている。 ここで非道統的過程と 述べたのは,. しめる三つの 型の「信用創造」が 結合されて,. れが「革新」にともな 二種の非連続性 [軌道 の 変更と発展担当者の 変更 ] を含んでいるか. 三類型の「資本主義」が 画き出されている。 ム. う. こうした枠組みが 用意されて,はじめて シュ. らであ る㈲。 こ. ペーター 『景気循環論』の 真髄たる「理論」. 一の「資本主義」は ,. と「歴史」と「統計」の , 一つの体系としての 総合化が可能となったとみるのは. 誤りだろう. う. 理解することで シ,ムペータ マルクスのそれともヴェ. ーバ一のそれとも 決定的に興っているといえ る③. か。 この点については ,節を改めて論述する。. シュム ペーターは,. この観点から , 「資本主. 義」の起源を 他でもなく IV. 一一シュ. ム. 資本主義の諸類型. こ. 「信用創造」の 起源に. 結びつげて論じた。. ペータ一の「 資 木主義論」一一. シュ ムベーター は 景気変動の歴史分析に 先立. って, 読者に無用な 混乱を起こさせないよう. マルクスには「資本主義」の 起源を問題する ばあ いに,周知のように「資本の本源的蓄積」 という仮説があ った , 。 , 。. ヴェーバ一には ,. これ. に, 「資本主義」を 次のように定義している。 すなわち「資本主義とは , 革新が, 理論的に必. 然ではないにしても ,一般に,信用創造を 含意 する借入資本によって 繰り返される ,私有財産. 31). 乃村。 1, p.223.. 32). Schumpeter,. 33). [邦訳, 上 , p.184.] マルクス は 生産手段の私的所有, したがってま た社会内分業の 自然成長的展開から 生じる他人. のあ の形態であ る。 30)と。 」. 景気変動を資本主義経済の 木質的特徴と 捉 え,それを基本的に「革新」と結びつげ たシュ ムペ一 タ 一の理論的枠組みからすれば ,. この 定. [邦訳,Ⅱ, p. 332.]. Ernrln. 別 ic. DcvgZopment,. p,. 68. の労働に基づく 商品生産を「資本主義」の 決定 的な指標においているし ,. ヴヱ一 バーは,営利. 活動をもって 最 広義の「資本主義」と 捉えてい 30). 肋材・,I, p.223,. [邦訳,Ⅱ, p. 332.]. るからであ る。. 34) Max, D の Kapital, Bd. I, KapiteI 24..

(12) もまた周知の「資本主義の 精神論」があ そしてヴェーバーは ,. 第1巻. る⑤。. これによって 最 広義の. 「資本主義」概俳と 決定的に区別される ,近代 に独自社生産様式たる「資本主義」 (近代資本 主義 ) をえぐり出してきた。 大塚久雄は, この両者の資本主義起源論を 「小生産者的発展」. と. 「双期的資本の 範鋳約 転. 化」の対抗という シ,一 %を 使って結びつげ ,. 独自の「資本主義成立論」を 展開した,㏄。 だが, シュ ム ペータ一の「資本主義」にとっ. 第 3 号 (198 リ と 認めていた '8)。 かれにとって「信用創造」 こ. そ資本主義に 独自のものだったのであ る。 こ. う. 考えてくれば ,. シヱム ペーターが「貸本. 主義」の起源を「信用創造」の 開始に結びつげ た 理由が明白となる。. 「資本主義の 精神」に ょ. っては,資本主義の物的メカニズムは 直接 ロ ま ・. 横浜経営研究. 170. 造り出されえないし ,産業資本家による賃銀労 働者の搾取 ( 支払労働以上の 労働を含む労働日 の設定 ) の社会的起源を 問題にする「本源的善 積論 」からほ,ただちに「信用創造」の起源は. て決定的に重要な 指標は, 「精神」でもなけれ ば「収奪」でもない。 「信用創造」によって 行. 説明できない。 だからかれ ば この観点からマル. われる「企業者」の「革新」であ. したのであ る。 この点でも, シュ ム ペータ一の. った。 かれは. この観点からマルクス「本源的蓄積論」をも. ,. クス とヴ,一バ一の「資本主義起源論」を 批判 「資本主義論」は ,. ヴヱ一 " 一の「資本主義の 精神論」をも 批判し ている 37)0 それではなぜ シュム ペーターは,賢木主義を. マルクス やヴ, 一バ一のも. のと全く別のものとなっているといってよい。 かれはまたこの 点で, 富 , 「賢木」の源泉を「勤労」. したがって, また. (industry)に求めた. 連続する「成長」の 過程と捉えず , 「革新」を. 古典派経済学の 見解とも 異 っていた 朗 。. ともなって発展する 非連続的な拡大過程だと 捉. と 結びつく貯蓄は ,. え, したがって発展の 起動力たる「革新」をあ れほどにまで 重視しながらも ,「信用創造」の はじまりをもって「資本主義」開始の 決定的メ. は,先に見たよ に,資本主義の「成長」と 関 係する事柄であ って, 「革新」に結びつくもの. シ , ム ペータ一によって. う. ではなかったからであ る。 以上みたよらに ,. ルクマールに 据えたのか。. 「勤労」. シュ ム ペータ一の「資本主. その理由は,他でもない,「革新」,したがっ てまた, この「革新」の 担い手たる「企業者」 の存在を,資本主義社会だけンこ特有な特徴だと. 義 」は,マルクスともヴヱ一 』 一 とも古典派と. 考えなかったからであ る。 かれははっきりと ,. 史分析の部分. 「企業者機能という 言葉が意味するような 経済. に, われわれは, そこに奇妙にもマルクス. と. 指導は , 他の形態においてではあ るが,原始的. も,. る. 種族や社会主義社会でさえも 存在するだろう。. 種の共通点を 見出すのであ る。 それは一体どう してなのであ ろうか。 われわれは以下,資本主 義の発展と「企業者」の 役割との観点からこの 問題を考えてみたいと 届け。. 」. 35). Max Weber, Die protestantische Ethik und der Geist des Kapitalismus, in Gesa. 笏佛 eite. Au がタ洸ze zW Religioれn,ssoziologie, Bd. I, T 廿 bingen l963, S. 17-206. 吠塚 久雄・梶山 力調子プロテスタンティズムの 倫理と資本主義. 36) 37). の精神』,岩波文庫版,上 , 下 . ] 大塚久雄 欧州経済史』,腔文室, 1956 年・ 圧. もちがったまったく 独自の構造を 有している。 しかし,それにも 拘らず,『景気循環帯コ の 歴. 圧. ( 「歴史的概観」 ). あ るいはまた ヴ,一". 一. を読み進む. う. とも共通するあ. ち. 景気循環論 コ における シ,ムペータ一の歴. 史分析は, かれの「理論的」モデルに 基づい て, その論理的展開として 次のような構成をと. 丁大. 塚久雄著作集 ] 第 4 巻,岩波書店,1969 年,] Schumpeter, B ゐ ingss C ノcZeS, I, pp.228 Ⅰ 29, [邦訳, D, pp.339 ヨ 41.]. 38) Zbid., I, p.223. [邦訳, D, p,332.] 39) この点については ,内田義彦戸増補経済学の 生 誕』,未来社,第 1 刷版, 1962 年,を参照。.

(13) 資本主義の発展と「企業者」の. 171. の 歴史分析を,一刀でマルクスのそれに 近づ. っている。. を. 役割 (楠井 敏朗 ). すなわち,長期波動( コンドラ チ,フの波動 ). け , 他方でヴェーバ 一のそれに近づけるのは ,. 基準にして,資本主義の発展を世界的に. 捉え. まさに, この景気変動 史 のなかで, イギリス,. ,グラ一の波動) お. ドイツ, アメリ ヵ の三国が選ばれているという. る枠組みと, 中期波動. (ジ. よび短期波動 ( キチソ の波動 ) を通じて各国の 景気変動の特殊なバターンを 究明する枠組みと の二つがこれであ る。 この場合シュムベー タ一は ,歴史分析の対象 として, イギリス・ドイッ・アメリカの 三国の. 動向に注目している。 だがしかし,. これは, こ. こと, しかもその選ばれ 方が一般理論によって 形式的にわりきられているのでなく. ,. 「企業者」. の社会的出自 (誰が企業者機能を 遂行している か ) や「信用創造」の 具体的機能にまで 配慮さ れているからであ る。. 資本主義を国別に 類型化して捉えないで ,世. れらの国々が 資本主義の世界史的発展におい. 界史的に一般法則化して 捉える傾向は ,. て, きわめて重要な 地位を占めていたという 理. スの経済学の 方法でかなり 鮮明であ る。 T 資本. 由で選ばれたものではない。 それは, これら三. 論 コ でもそうであ ったし初期マルクスにおい. 国の経済史研究が 相当に進み,大体1780@ 頃 か. ては一層顕著であ った。" 。 他方,資本主義の発. らの史実については ,かなり刻明 な分析がなさ. 展を国別に類型化して 捉える方法は ,. れているという 研究の実情に 負っている 即 。 こ. 一社会学のぎねだった 特徴であ る。. マルク. ヴ ,一". れら三国が分析の 対象に選ばれたことが ,かれ. ところで「景気循環」に 関する シ , ム ペータ. にとってかなり 恐竜的であ ったことは,かれの. 一の歴史分析は ,比較のこの観点から見ると. 次の弁明からも 明らかであ ろう。. ぎ,. 先に見た よう こ, Ⅰ. シュ ム ペーターはⅠ資本主. マルクスおよび ヴ ,一バ一の両方の方法を. 併 せ もっているよ. う. に思われる。. 義」の重要な 指標として「信用創造」に 基づく 「革新」を考えた。 「信用創造」の 起源を「資本 主義」の起源に 据えるならば ,かれは当然のこ. 世界史的に捉えようとするとき ,かれの分析は. ととして, イタリア や オランダにおける 銀行業. マルクスに近づく。. の発達史から , 「景気変動の 歴史分析」を 行わ. 資本主義の発展過程を 意識的にか無意識的に か, とにかく, コンドラ チ,フの波動によって. だが他方, ジュグラ一の 波動およびキチンの. ほ げればならなかったであ ろう。 だがかれは,. 波動 pこ よって各国別に 検討しょうとするとき ,. 当時の経済史研究の 進展から見て , 「オランダ,. かれの分析 は, ヴ,一バ一に近づく。 マルクス. イタリア, フランスの材料を 提供すること」が. およびヴェーバ 一の分析方法が ,. 絶望的であ ったことを注記している。, )n. 融合されているような 外観を呈する。. これはかれの 弁明に他ならない。 このために 経済史研究の 進展したイギリス ,. ドイツ, アメ. ヵ が対象に選ばれたのであ る。 ところが結果. リ. ここで 鮮 かに. 長期的に影響をもっ「革新」 ほ, 例えば, M ∼ 19 世紀の産業革命がそうであ. る. 2. 5. に,世界. 史的なものであ る。 これに対して 中 ・短期に影. 的にほ, この三国が選ばれたことは ,逆に, 「景気変動」を 伴う資本主義の 発展を考える 観. 踏まえて生み 出されたローカルなものであ る。. 点からいって ,. シュ ム ペーターは両者をこのような 観点から区. きわめて適切であ ったように思. 響する「革新」は ,. もともと各国の 国内事情を. 別して論じている。. われる。 資本主義の発展過程における. シュム ペーター. 42) 40). Schumpeter,. B ぴ %e 3 C ソん㏄, I, p. 223.. 41). 訳, Ⅱ, p.331.] fbid., I, p.223. [邦訳, I , p,331.]. タ. タ. [邦. この点については ,例えば山之内情 T マルクス ・エンゲルスの 世界史 像 』,未来社,1968 年, 欄井敏朗「 19 世紀中葉の世界市場」, F ェ コ ソ ; ア 』, N0. 62, 1978 年 1 月,などを参照。.

(14) 172. 横浜経営研究. さて以上がシ スム ペーター 『景気循環論』に. おける歴史分析の 基本的枠組みであ るが, これ ャこ. 第 3 号 (1981). 第1巻. 基づいて シ,ムペーターは具体的に 景気変動. たからであ る。 規則正しい景気交替が 見られ. っ. なかった理由は ,. 一. タ一は ,. はじめて, いままで 示. 唆しておいた「資本主義」の. 類型論,「企業者」. ま. さにここにあ った。. の歴史分析を 試みている。 歴史分析を進めるな かでシュムペ. シュ ム ペータ一によれば ,. さて シュム ペーターはこの 観点から, この. 「先主 300 年」の時期の 資木主義の発達につい て, その景気変動の 規則正しい繰り 返しを妨げ. の類型論を展開するのであ る。 とくにここで 重要であ り,かれの「資本主義 論」を知る えで興味ぶかいのは ,かれの「第. たきわめて重要な 三つの外的要因について 詳細. 一コンドラチェフの 波動以双」の 考察であ る。. ほ, これまでにも 議論の多かったⅢ貴金属増加. な考察を加えているのであ る。. かれが考察の 対象にした重要な 外的要因に. ぅ. シュムペ一 タ. 一の考える「資本主義」は ,前. 述したよらに ,私有財産制度を基礎にしかつ 「信用創造」と 結合した「革新」Ⅰ「発展」によっ て非連続的に 拡大する経済制度であ る。 だから かれは第一コンドラ チ,フの波動以双にも 当然. 「景気変動」の 可能性を認めていたり。 こうした理論的想定からかれは ,. まず,第一. の 影響, (2通商主義の影響, (3松 的な支出の影 響の三 つ があ るのは注目されてよい。 第 Ⅰに,貴金属の 影響については ,. E. J.. 、 ルトンが従来の 通説を総合化しながら ,. ハ. これ. に対して理論的定式化を 試み,資本主義成立の 「アメリカ的解釈」を 行ったことで 著名であ る が,. シュ ムペ一 タ一. ほこの考え方を ,. 自分の. コンドラ チ,フの波動に先立つ 300 年を対象と. 「革新」理論に 基づいて批判している。 かれの. して, この時期における「景気変動」の 特徴を 見ている。 「信用創造」 と結合した「革新」Ⅰ 新. 論拠 は ,貴金属増加が「革新」に対して悪影響. 「結合」が存在しながら. にょ れば,貴金属の増加は「革新」 = 「企業者活. ,なぜこの時期には,. をおよばした 点にあ る。 シュ ム ペータ一の理解. 規則正しい景気変動が 現われなかったのかとい. 動」をかえって 押し流してしまうか ,歪めてし. う問題を究明するためであ る。. まう決定的原因であ った 何 。. 第 2 に,重商主義の影響については ,かれ. もちろんこの 時代には規則正しい 景気交替は. によりなが. 見られない。 シュ ム ペーターはこれを「信用創. は,. 造」の発達の 不十分さに加えて ,外的要因の作 用が異常に強かった 点に求めている。 外的要因 によって経済体系が 著しく 撹 乱されてしまった からであ る。 いうなればこの 時代の「資本主. ら, 固有の重商主義だけでなく ,絶対主義期の. ヘクシャ一の 重商主義概俳。。'. 重商主義をも 取り上げ論じている 如 。. かれは絶対主義下の 重商主義の,資本主義の 発展にお ょぽ した影響を決して 否定していな. 義 」は, シュ ム ペータ一に ょ れば, まだ確固た る基礎固めをしておらず ,. したがって,. 「革新」. の作用する領域が 著しく狭められているか , 「革新」がなされても , これが外的要因によっ て容易に押し 潰されてしまうようなものであ. っ. た 。 い う なれば,経済体系がここでは まだ先に 検討しておいた「安全装置」を 確立していなか. 43). この考え方は ,「景気循環」または「産業循環」 に関する従来の 見解と シュム ペータ一の見解と の著しい違いであ る。 シュ ム ペーター以覚の 論. 者は「景気循環」の 可能性さえ否定している。. 44). 45). Schumpeter, B ぬ肪 gJs C ノ,Zes, I, pp.23%233. [邦訳,Ⅱ, pp,343 ヨ47.]. E. F. Heckscher,. 皿石. ercantiZi5%, transI. by. MendeI. Shapi,o, 1935, revised ed. by E. F. S6derIund, 2 vols., London & N. Y., 1955.. 46) 絶対主義期の 重商主義と固有の 重商主義との 根 本的 ちがいについては ,大塚久雄のつぎの 労作. を見よ。 大塚久雄「重商主義の 社会的基盤」, 「重商主義におけるく Trade ノの 意味について」, 「国民経済」, [ い づれも『大塚久雄著作集』,第 6 巻,岩波書店,第 1 刷版, 1969 年,所収. ]ヘ クシャ一の重商主義概俳ではこの 両者が区別さ れていた い 。.

(15) 資本主義の発展と「企業者」の 役割 い。. ドイッのばあ いには典型的に ,. ばあ い にも限定的に ,. イギリスの. これが一つの 促進的効果. 73. Ⅰ. て 有効であ るが, 「革新」に結びつかない. 場合. には有害であ った。 この観点から , 「信用創造」 を抑制する 18 世紀イギリスの「泡沫会社禁止条. を持っていたことを 認めている。 このことはドイッにあ っては, シュレージェエ ンの鉱山菜の 場合にみられるように「官僚」が 「革新」の担い 手とされ, エリザベス朝では , 「地主」. (楠井 敏朗 ). (gentry) が革新的企業者であ ったと考. 例」. (1720 年 ) がかえって評価されているのは. 注目されてよい。" 。. しかしこの時期. ( イギリス産業革命に. 先立つ. 時期 ) の典型的な企業者活動だと シュム ペータ. えられていることから 窺える。の。 「資本主義」. ーが注目したのは , むしろ次に見るイギリスの. の類型化の試みと 指摘しておいた 一つの実例. それであ る。. を ,われわれはここに見出すだろう。 シュ ム ペ ータ一においては ,. こういう型の 経済発展もま. た「資本主義」の 発展なのであ る。 ヴ,一バ一. 第. 3. に,公的な支出の資本主義発展への 影響. ついては,. シュ. あ い,かれはこれを三つの実例について 行 第. 1. う. 。. は, イギリス農業上の「革新」について. であ る。 かれはこれを「 囲 込み」について 語. 二大塚との相違を 見よ。 ほ. この時期のイギリスの「革新」を 考察するば. ムペ一 タ一は. とっている。 その論拠 は ,. 否定的な立場を. これら公的支出が ,. 公債の発行などを 通じて「信用創造」. と結びつ. くことはあ っても, この「信用創造」は ,決し. て「革新」のためのものでなく ,すぐれて王侯 貴族の消費と 関連するものであ. ったからであ. る。 当時は農業は 主要な生産部門であ り,商業 以外の企業者活動の 最も重要な領域であ った。 この農業における 主要な企業者活動, これは 囲 込みであ ったと, シュ ム ペーターはい. う. のであ. る。 囲 込みがもたらした 直接の革新的成果は , 「経営組織」の「革新」にほかならなかったが ,. これによって 土地保有の制. る 。 シェムペータ 一によれば,かかる公的支出. シュ ム ペーターは,. は,. 度的変化,人口の増加と集中, ( 実質 ) 購買力 の増加,輸送手段の改善などのような 副次的な 「革新」が 惹き 起こされたことを 指摘してい. ム. 「革新」に対して 阻害的に作用した。 シュ. ペーターが「南洋の 泡沫」や「 ジ,ン. 恐慌」に言及しているのも ,. ・. p 一. この観点からであ. る。 ここでは「信用創造」が 投機と結びつき ,. る何. 健全な企業者活動を 押し流したからであ る。. 産 ,すなわち,クローバⅠ無蓋,亜麻,馬鈴 かぶ. この場合, シュ ム ペータ一にとって 重要であ. ったのは, 「信用創造」が 一体どういう 性格の. ものであ ったのかという. 問題であ る。 それが. 薯, ホ " プ ,果実, 野菜の植え込みが 行われた というのであ る 50)n 第 2 に, シュ ムペ一 タ一は 毛織物工業こそ が ,農業以外の企業者活動の. こうした シュム ペータ一の考えに 対して,わが. 国では,賛否両論があ る。 「革新」をそれ 自体 として考察しないで ,それが遂行される 社会機 構との関連で 捉え直すべきだとする 考えと,無. とを読み比べられた. い。. c 邦 9 4 0 5. 条件に認める 立場の二つであ る。 大塚久雄の影. 響下に育った 比較経済史学の 人々はもちろん 前 者に属するが ,経済史研究者の 中には後者の 立 場 に立っ人々が 多い。 例えば肥前栄一『ドイツ 経済政策 史 序説』,未来社,1973 年と,『日本経 営 史 講座』, 日本経済新聞社, 1977年,第1 巻,. 典型であ ると見て. 意 し折 上 。 井㏄ お柄 ㎎ ぬ用 信 と とし 致㏄. 47). 「資本主義」にとっ. ゼ. 8 4. 「革新」 と結び付くかぎり ,. 。 さら ここれを基盤に ,新耕作作物の生.

(16) 横浜経営研究. 174. 第 3 号 (1981). 第1巻. いる 肋 。 しかもこの場合,かれが都市ギルドの. されることになる。 そしてこの検討を 通じてい. 外 ,すなわち農村地域で行われる毛織物工業を. ままでみてきた 第一コンドラ チヱフ の波動に先. 企業者活動の 典型的場とみていることに 注目さ. 立つ 3 ㏄年の歴史過程では ,. れたい。. と定式化されえなかったイギリス ,. 農村地域は , ギルドの抵抗が 少なかったし ,. 安い労働力が 多かったから ,企業者活動を進め この時期のイギリスにおけ. る「資本主義」の 成立を考える 場合に,促進的 要因としてわが 国の経済史学会でも 承認されて きた事柄であ るが,次の事例もまた「革新」の 事例として挙げられているのは ,先に見たかれ の「企業者」概俳からの 論理的帰結なのかも 知. って画き出されてくる。 イギリスのばあ いには, 「革新」を遂行する. 企業者として ,富の形成と増進を自らの 勤労に 求める小生産者が 想い起こされていること , そ. して,かれらの「革新」をたすばる「信用創造」 の方法も,銀行のそれではなくて,為替手形を 軸にする商業信用であ ったことが注目されてい る 64)。. ドイッのばあ いには,統一後もユ ンカー出身. れない。 すなわちかれは ,大塚久雄によって初. 期 産業革命. ( 基本的には封建的社会構成体であ. ドイッ, ア. メリカの資本主義の 型の相違が, 明確な姿をも. るのに好都合であ ったからであ る。 以上二つの例は ,. なかなかはっきり. の 官僚が革新を 遂行する企業者となって 発展を. る絶対王制下の 産業革命 ) と類別された , エリ. 担ったとされ ,. ザベス時代の 新産業たる銅山菜 や真鏑 製造業. か ゆる ドイツ型の銀行発達と 結びついたと 理解. や, 製砲場 , 明磐 工場,陶器,精糖, ガラス,. されている。. 石鹸,火薬工場などの勃興も「革新」企業の 実 何 として挙げているのであ る 舩 。 これは発明と「革新」とを 理論的に区別し ,. 同時にその「信用創造」が ,い. さらに ァメリヵ の場合には, 独立自営の生産. 者 ( とくに農民 ) が「革新」の 担い手たる企業者 であ ると理解されているけれども , かれらの浴. 現実の経済界では ,企業的に成功させたものを 「革新」と考えるかれの「革新」理解と 関係し. する「信用創造」は ,. ている よう に思われる。 この時期の海上貿易業. いしそれから 発達してくる 銀行信用ではなく ,. 者が企業者のなかに 加えられているのも 同じ理. むしろ,むこ みずな発券銀行, いわかる m 猫 銀行 (wiIdcat,s bank) によって媒介されたと 理解されている。. 由からであ る。" 。. 以上われわれは シュム ペータ一の主著『景気. イギリスとのちがって 小. 生産者相互間の 信用を起点とする 商業信用, な. う. 循環論』を通して ,資本主義の発展と「企業者」 の役割に関するかれの 理論の基本的枠組みを 考. 主義」の型の. 察して来た。 だがこの問題は ,. ば,小生産者一商業信用( 銀行信用 ), 官僚 一. シュ ムペ一 タ一. 以上を要するに ,. の ばあ い ,第一・ 第二コンドラチェフの 波動の. イ. 考察のさいに , いっそ う突 込んで具体的に 検討. いう. 5 ) Ⅰ. 52). 53). Schumpeter, Bus 肋 ess Cy3,cZ。s, I, pp.240-241. [邦訳,Ⅱ, pp,357-358.] 乃 id., pp.241-243. [邦訳,Ⅱ, pp. 358-361.] 関連して J. U. Nef, ル イtistr ノ an み Gav ㏄か れ 額 甘雨 Frra mCe れ dL れイ E れg ぬれd, 757 ひ丑 6 づ 0 , Ithaca, N.Y. Great Seal, 1957. [紀藤 ・隅田 同 6.7 訳 世紀の産業と 政治 フランスとイギ リス』,未来社,1958 年.] を参照されたい。 Schumpeter, B ぬ肋 gssCycles, I, pp.245-%6. [邦訳,Ⅱ, pp.364-366.]. これら三国における「資本. 相違は ,. シ,ムペ一タ 一に よ れ ド. ソ型 銀行,独立自営の小生産者一山猫銀行と. 「企業者」と「信用創造」の 組合せによっ. て決定されたと 理解されているのであ る。 この. ような形での 各国資本主義の 構造把握の仕方 は,きわめて興味ぶかいものがあ るといえ よう 。 54). 乃 nd., I,pp.. 関連して. 270-2 ㏄・ [邦訳, D,pp.403-417.] 関口尚志「イギリス 初期地方銀行の. 存在形態とその 基盤 名誉革命双後のインバ ランドにおける 市場および信用の 構造とロンド ンの地位」,『金融経済』, No. 55, 1959 年,を. 参照。.

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