「松下政治学」と新しい政治 - 市民起点の「国会内閣制」の現実的可能性 -
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(2) 42. MemoirsofTheFacultyofB.0.S.T.ofKinkiUniversityNo.25(2010). 協 調 的 な 関 係 に あ っ た 共 和 党 の ジ ョ ー ジ ・ブ ッ シ ュ か ら 、 「change」 を 標 榜 す る 民 主 党 の バ ラ ッ ク ・オ バ マ へ 大 統 領 が 交 替 す る と 、 事 態 は 一 変 し た 。 新 自 由 主 義 の よ うな 「小 さ な 政 府 」 に 代 わ り 、 「大 き な 政 府 」 が 先導す る. 「グ リ ー ン ・ニ ュ ー デ ィ ー ル 」 と い う新 た な 産 業 革 命 の 可 能 性 が 拓 か れ る と 、 京 都 議 定 書 か ら 離. 脱 し た ア メ リカ が 一 転 し て 温 暖 化 問 題 の 対 応 に 積 極 的 な 姿 勢 を 示 す よ うに 変 わ っ た 。 さ ら に 、 オ バ マ が 核 兵 器 の 廃 絶 を 提 唱 す る と 、 ノ ー ベ ル 平 和 賞 が 即 座 に 授 与 され る と い う、 国 際 社 会 の レ ス ポ ン ス の よ さ が 見 られ た 。 こ う し て 、 少 な く と も 、 グ ロ ー バ リゼ ー シ ョ ン に 適 応 す る 国 内 レ ジ ー ム は 、 新 自 由 主 義 レ ジ ー ム が 唯 一 の 選 択 肢 と い うわ け で は な く な っ た 。 時 代 は 動 き 、 冷 戦 後 の 新 し い 政 治 は 、 い わ ば ポ ス ト新 自 由 主 義 レ ジ ー ム を 巡 る 第 二 の 局 面 へ と移 行 し つ つ あ る と い え る で あ ろ う(新. 田2009). 。2009年. の 自民 党 か ら民 主 党 へ. の 政 権 交 代 は 、 こ の よ うな 新 し い 政 治 の 第 二 の 局 面 、 す な わ ち ポ ス ト新 自 由 主 義 レ ジ ー ム の 始 ま り と 重 複 し て い る こ と が わ か る。 と ころ で 、新政 権 が 政 治課 題 とす る、松 下 が 言 う とこ ろの 、 「 官 僚 内 閣 制 」 か ら 「国 会 内 閣 制 」 へ の 転 換 は 、 明 治 維 新 に よ り形 成 され 、 戦 後 改 革 に お い て す ら 手 を 付 け る こ と が で き な か っ た 、 わ が 国 の レ ジ ー ム の 根 幹 を 変 え る と い う大 変 大 き な 意 義 を 有 す る。 し た が っ て 、 日本 に お け る新 し い 政 治 の 第 二 局 面 は 、 ポ ス ト新 自 由 主 義 レ ジ ー ム を 政 治 的 ア ジ ェ ン ダ と し て 設 定 し た 上 で 、 環 境 産 業 を 基 軸 に 据 え た 産 業 構 造 の 転 換 と い う産 業 政 策(「 グ リー ン ・ニ ュ ー デ ィ ー ル 」)、さ ら に は 産 業 と雇 用 と 福 祉 と 教 育 と を 連 動 さ せ る 「21 世 紀 型 社 会 民 主 主 義 」 と い う政 治 的 ア イ デ ィ ア に も着 目 しな が ら も 、 明 治 維 新 以 来150年 レジ ー ム の根 幹 を な して き た. 近 く、 わ が 国 の. 「官 僚 内 閣 制 」 を 終 息 させ 、 代 わ っ て 市 民 を 起 点 と す る 「国 会 内 閣 制 」 へ 統. 治 レ ジ ー ム を 転 換 させ る と い う、 そ れ こ そ. 「 政 治 的 大 業 」 を 巡 る政 治 と し て 展 開 さ れ る こ と が 十 分 に 予 期. され る次 第 で あ る 。 ま た 、 そ の 「 政 治 的 大 業 」 は 、 松 下 が 言 う よ う に 、 「自治 ・分 権 政 治 が 不 可 欠 の 都 市 型 社 会 に 移 行 した に も か か わ らず 、 自 治 体 、 国 の 政 策 ・制 度 が 、 い わ ゆ る 国 家(官. 僚 組 織)を. 機 関 車 と して. 近 代 化 を め ざ し て き た 、農 村 型 社 会 の 官 治 ・集 権 構 造 に と ど ま る と い うネ ジ レ を い か に 解 決 す る か と い う、 文 明 史 的 課 題 」(松 下2006:118)に. も連 動 す る の で あ る。. そ こ で 、本 稿 は 、松 下 が 繰 り返 し 唱 導 し続 け て き た 、 「官 僚 内 閣 制 」 か ら 市 民 を 起 点 に 据 え た 「国 会 内 閣 制 」 へ の 転 換 に つ い て 、 「松 下 政 治 学 」 に 内 在 し な が ら 、 か つ ま た 「松 下 政 治 学 」 を 敷 街 し な が ら 、 そ の 意 味 を 問 い 直 し て み る。 尚 、 そ う し た 作 業 は 、 「 松 下 政 治 学 」 が 如 何 な る 有 効 性 を持 ち 得 て い る の か 、 そ の 点 を 再 確 認 す る 作 業 と も重 な る 。 ま た 、 本 稿 は 、 松 下 が 言 う と こ ろ の 市 民 起 点 の. 「国 会 内 閣 制 」 と い う統 治. レ ジ ー ム が 、 「新 しい 政 治 」 とい う文 脈 に お い て 如 何 な る 現 実 的 可 能 性 を 拓 く の か 、そ の 点 に つ い て の 省 察 も併 せ て 試 み た い 。. 3.「 松 下 政 治 学 」の 在 り方 3-1.「 松 下 政 治 学 」の 世 界 松 下 圭 一 は 、半 世 紀 に も 及 ぶ 政 治 学 者 と して の 仕 事 を 総 括 した 、『現 代 政 治*発 版 局 か ら2006年. 想 と回想 』を 法 政 大 学 出. に 上梓 した。 この本 を縮 く と、 「 松 下 政 治 学 」 の 軌 跡 を 、 松 下 自 身 の 言 葉 に よ っ て 振 り返. る こ と が で き る。 松 下 が ど の よ うな 問 題 意 識 か ら 、 政 治 学 者 と し て 仕 事 に 打 ち 込 ん だ の か が 確 認 で き る と と も に 、 松 下 が オ リジ ナ ル な 政 治 理 論 を 構 築 す る に 至 る道 筋 が 理 解 で き る。 松 下 は 、50年. に 渡 る 自 ら の 仕 事 を 、 ほ ぼ 時 系 列 的 に 、i)市. の 大 衆 社 会 論 、iii)都 vi)日. 市 ・自 治 体 理 論 の 創 出 、iv)政. 策 型 思 考 の 問 題 構 成 、V)制. 本 型 思 考 の 構 造 転 換 、 と い う具 合 に 整 理 し て い る(松. 取 り組 ん だ. 「 理 論 領 域 」 を 、i)ジ. 社 会 論 ・都 市 型 社 会 論)、iii)政. ョ ン ・ロ ッ ク研 究+市 治 理 論(市. 民 政 治 理 論 の 形 成 史 、i)現. 下2006:2-126)。. 度 型 思 考 の構 造転 換 、. ま た 、松 下 は 、 自分 自身 が. 民 政 治 理 論 の 思 想 史 研 究 、i)社. 民 政 治 論 ・分 節 政 治 論)、iv)憲. 代 理 論 と して. 法 理 論+行. 会 理 論(大. 政 法 理 論 、V)政. 衆.
(3) 43. 策 ・制 度 理 論+政. 治 再 編 論 ・危 機 管 理 論 、vi)自. 文 化 形 態 論 、 面)日. 本 政 治 論+官. 治 体 理 論+法. 務 ・財 務 論 、vi)市. 僚 内 閣 制 論 ・政 党 類 型 論 な ど と し て い る(松. 民 文 化 論+市. 下2006:189)。. 民活動論 ・ 見 るか らに. 大 変 多 岐 に渡 る 「 理 論 領 域 」 を 、 松 下 が 研 究 テ ー マ と し て き た こ と が わ か る。 但 し 、 松 下 が 取 り組 ん で き た様 々 な 「 理 論 領 域 」 は 、結 局 の と こ ろ 、 「官 僚 内 閣 制 」 か ら市 民 を 起 点 に 据 え た. 「国 会 内 閣 制 」 へ 向 け て. 転 換 す べ き 、 と い う立 論 へ 集 約 され て い く よ うに 思 え る。. 3-2.ジ ョン ・ロック研 究 お よび 市 民 起 点 の 「国 会 内 閣 制 」 「 官 僚 内 閣制 」 か ら市 民 を起 点 に据 え た. 「国 会 内 閣 制 」 へ の 転 換 と い う 「松 下 政 治 学 」 に お け る核 心 的. 立 論 を 理 解 す る に は 、若 干 遠 回 り に な る が 、 「 松 下 政 治 学 」 そ の も の の あ り方 に つ い て 押 さ え て お く必 要 が あ る 。 と い うの も 、 松 下 は 政 治 学 な い し 自 ら の. 「 松 下 政 治 学 」 の あ り方 に 対 し て 強 い こ だ わ り を持 つ と と. もに 、 「 松 下 政 治 学 」 そ の も の の 在 り方 が 、 市 民 を 起 点 に 据 え た 「国 会 内 閣 制 」 と い う立 論 と密 接 に 関 係 す る か ら で あ る 。 「松 下 政 治 学 」 は 、 「 松 下 政 治 学 」が も つ 固 有 の 論 理 的 必 然 性 か ら、市 民 を 起 点 に 据 え た 「国 会 内 閣 制 」 と い う立 論 を 紡 ぎ 出 す べ き 、 い わ ば 宿 命 を 背 負 っ て い た の で あ る 、 と 言 っ て も決 して 過 言 で は な い か ら で あ る。 か っ て 、 松 下 は 、 ノ ー ト形 式 で 著 し た 大 変 ユ ニ ー ク な 政 治 学 の テ キ ス ト、 『現 代 政 治 学 』 に お い て 、 「政 治 学 は 、polisす な わ ち く 政 治 体 〉 の 学 と して 、 基 本 的 な 価 値 観 、 つ い で ま た そ れ に 対 応 す る 体 制 像 と 人 間 像 と を 前 提 と し て は じめ て 成 立 し う る 。 し た が っ て 政 治 学 は た ん な る 実 証 科 学 に と ど ま り え な い 」(松 下 1968:7)と. 記 す こ とに よっ て 、 「 松 下 政 治 学 」 の 基 本 的 な ス タ ン ス を 表 明 し た こ と が あ る。 も ち ろ ん 、 松. 下 に とっ て 、 自 らの. 「 基 本 的 な価 値 観 」 に対 応 す る 「 体 制 像 」 とは. 「国 会 内 閣 制 」 の こ と で あ り、 ま た 同. 様に 「 人 間 像 」 と は 「市 民 」 の こ と を 意 味 す る。 そ し て 、 こ の 両 者 が 合 体 す る と、 市 民 を 起 点 に 据 え た 「国 会 内 閣制 」 とい う 「 松 下 政 治 学 」 の 核 心 的 立 論 が 立 ち 現 れ る。 そ れ に し て も 、何 故 に 、 「 松 下政 治 学 」 にお い て 、 「 体 制 像 」 が 「国 会 内 閣 制 」 で あ り、 同 様 に 「人 間 像 」 が. 「 市 民 」 な の か 。 そ れ は 、 振 り返 れ ば 、 政 治 学 者 松 下 圭 一 の 出 発 点 が ジ ョ ン ・ロ ッ ク研 究 に あ っ た と こ. ろ に 由 来 す る 。 松 下 は 、 弱 冠29歳. の と き 岩 波 書 店 か ら 上 梓 し た 『市 民 政 治 理 論 の 形 成 』 に お い て 、 「特 殊. 具 体 的 な ロ ッ ク 研 究 の な か か ら 、『思 想 』 な らび に そ の ロ ゴ ス 的 形 態 と して の 『理 論 』 の 一 般 理 論 … … の 成 立 へ の 展 望 を き りひ ら こ う と い う課 題 」(松 下1959:v)を ック が. 自 ら に 課 し た と され る。 そ して 、 松 下 は 、 ロ. 「〈 公 共 社 会 〉 と し て の 『市 民 社 会 』 観 念 に つ い て 、 〈 近 代 〉最 初 の 理 論 原 型 を つ く りだ した 」 と. 位 置 付 け る。 松 下 に よれ ば 、 そ の ロ ッ ク に よ っ て 、 「思 想 と し て の 『市 民 社 会 』 は 国 家 に 従 属 あ る い は 吸 収 され る こ と な く 、 む し ろ 国 家 は 市 民 の く信 託 〉 に よ る 『政 府 』」 に 過 ぎ な い 。 そ れ と と も に 、 「市 民 社 会 自 体 が 公 共 な い し社 会 と し て 自 立 」 し た も の と し て 立 ち 現 れ る 。 か く して 、 ロ ッ ク を 通 じて 、 「 政府 をつ く り か え の で き る 市 民 の 道 具 と み な す 、 市 民 政 治 理 論 の 古 典 的 形 成 」 が 成 し 遂 げ られ た の で あ る と 、 松 下 は 理 解 し た(松. 下2006:15-16)。. 松 下 は 、 ロ ック研 究 を踏 ま え なが ら、一 般 理 論 と して の 「 近 代 市 民 政 治 理 論 」 は 、i)自 i)社. 会 と政 府 の 二 元 論 、ii)政. 「 近 代 市 民 政 治 理 論 」 を論 定 す る。 す な わ ち 、. 由 ・平 等 ・独 立 の 理 性 あ る く 個 人 〉す な わ ち 「市 民 型 人 間 型 」(「市 民 」)、 府 の 存 立(政. 治 正 当 論)・ 組 織(政. 治 政 治 機 構 論)・ 改 革(政. 治 変 動 論)、. と い う 「3理 論 領 域 」 か ら な る 。 こ の よ うな に据 え た. 「 近 代 市 民 政 治 理 論 」 を 基 底 に 置 き な が ら 、 松 下 は 、 生 涯 に わ た る 主 張 と して 、 市 民 を 起 点. 「国 会 内 閣 制 」 を 唱 道 して い く こ と に な る。 そ れ に して も 、 松 下 が 言 う と こ ろ の. 「国 会 内 閣 制 」. と は 、 何 で あ ろ うか 。 そ れ は 、 自 由 ・平 等 ・独 立 の 理 性 あ る 市 民 が 、 公 共 性 を 担 う 自 立 した 市 民 社 会 を形 成 しつ つ 、 そ の 市 民 社 会 と政 府 と を 二 元 論 的 に 分 離 し た 上 で 、 選 挙 に よ っ て 市 民 の 信 託 を 得 た 議 員=国. 会. が 内 閣 つ ま り政 府 を 構 成 し 、 ま た 政 府 が 市 民 の 信 託 を 失 っ た 場 合 、 再 び 選 挙 に よ っ て 議 員 を 選 び 直 す こ と.
(4) 44. MemoirsofTheFacultyofB.0.S.T.ofKinkiUniversityNo.25(2010). に よ り新 た に 信 託 を 受 け た 議 員 一 国 会 を 通 じて 内 閣 ・政 府 が 再 構 成 され る 、 と い う理 論 構 成 か ら な る 。 し か し な が ら 、 日本 の 場 合 、 後 進 国 ・中 進 国 型 の. 「上 か ら の 近 代 化 」 を 進 め た が 故 に 、 政 策 形 成 や 行 政 執 行. の要 所 を押 さえ た省 庁 官 僚 が 、 実質 上 、 内 閣 に代 理 機 能 を担 わせ る 「 官 僚 内 閣 制 」 と い う統 治 レ ジ ー ム を 選 択 し 、 本 来 、 「国 会 内 閣 制 」 を と る こ と を 本 旨 と す る 日本 国 憲 法 の 制 定 に も か か わ ら ず 、 「官 僚 内 閣 制 」 は 今 日 ま で 継 続 され て き た 。 無 論 、 「官 僚 内 閣 制 」 と い う統 治 レ ジ ー ム は 、 そ の 起 点 が 市 民 に あ る の で は な く 、 官 僚 の パ タ ー ナ リ ズ ム に 置 か れ て い た と い え よ う。 尚 、 「国 会 内 閣 制 」 は 松 下 の 造 語 で あ る 。 通 常 は 「 議 員 内 閣 制 」 と い う言 葉 が 使 わ れ る が 、 松 下 は こ れ を し りぞ け 、 「国 会 内 閣 制 」 を 用 い る理 由 を 次 の よ うに 述 べ る。 「 議 員 内 閣 制 は 明 治 憲 法段 階 の 用語 で あ るた め 、 日本 国 憲 法 で は 『国 会 内 閣 制 』 と い い な お す べ き な の で あ る 」(松 下2009:212)と. 。. 3-3.政 治 理 論 と政 策 研 究 か らな る 「松 下 政 治 学 」 と こ ろ で 、 松 下 は 、 政 治 学 を 、i)実. 証 分 析 、i)理. 「三 問 題 層 」 か ら構 成 さ れ る と い う。iの science)を. 論 構 成 、iii)政. 策 ・制 度 開 発 の 手 法 研 究 、 と い う. 実証 分 析 は 、 「 政 治 科 学 」(ポ リテ ィ カ ル ・サ イ エ ン ス:political. 目指 し 、政 治 … 現 実 の 実 証 分 析 を め ぐ っ て 、 細 分 化 ・専 門 化 して い く研 究 。iの. 治 理 論 」(ポ リテ ィ カ ル ・セ オ リ ー:politicaltheory;politics)で. 理 論 構 成 は 、 「政. 、 「マ ク ロ の 政 治 構 造 の 座 標 軸 構 築 、 政 治. 公 準 、基 本 概 念 の 定 位 、さ ら に 最 適 政 治 の 構 想 、と く に 政 府 基 本 法 の 立 案 ・運 用 を め ぐ る 基 礎 理 論 の 構 成 」。 iiの 政 策 ・制 度 開 発 の 手 法 研 究 は 、 「 政 策 研 究 」(ポ リシ ー ・ス タデ ィ ー ズ:PolicyStUdies)の. 問 題領 域 で. あ り、 「い か に 『未 来 』 の 政 策 ・制 度 を っ く る か に っ い て 、 実 際 の 開 発 ・設 計 を め ぐ る 方 法 論 を は じ め 、 そ の 実 効 化 と し て の 政 策 法 務 な い し 立 法 論 」 ま で 含 む とす る(松. 下1998:185-186)。. この うち、松 下 の 政 治. 学的関心は、 「 政治理論 」 と 「 政 策 研 究 」 と に あ る。 反 対 に 言 え ば 、 「 細 分 化 ・専 門 化 」 して い く 「政 治 科 学 」へ の 関 心 は低 い。 尚 、松 下 は 、 「 政 策 科 学 」 と い う考 え 方 を し りぞ け る。 松 下 に よ れ ば 、 「 政 策 科 学 とは い わ ば形 容矛 盾 で あ る 」(松 下2004b:104)。. そ もそ も、 政 策 が 政 治 対 立 の 中 にお い て 、 党 派 型 の く政 治 技 術 〉 と して構 想 ・. 選 択 ・決 定 され る が 故 に 、 政 策 を 一 定 の 法 則 や 計 算 か ら 算 出 す る 「 科 学 」 と し て 練 り上 げ る が ご と く 「 政 策 科 学 」 は 、 お よ そ 成 り立 た な い 。 仮 に 、 高 等 数 学 を 駆 使 し た. 「 政 策 科 学 」 な る もの が 寄 与 す る こ とが あ. る とす れ ば 、 そ れ は 政 策 の 構 想 ・選 択 ・決 定 の 前 提 と な る 「情 報 」 を 提 供 す る に 過 ぎ な い 。 こ う して 、 松 下 は 、 「政 策 科 学 」 で は な く 「政 策 研 究 」 を 提 示 す る の で あ る が 、 そ の 「政 策 研 究 」 は 、 先 に 引 用 した よ う に 、 「い か に 『未 来 』 の 政 策 ・制 度 を つ く る か 」 が 大 変 重 要 な 点 で あ り、 そ の た め 「松 下 政 治 学 」 は 、 政 策 の. 「開 発 ・設 計 を め ぐ る 方 法 論 」 と い うべ き 政 策 形 成 の 手 順 に こ だ わ る。 そ れ は 、 個 別 事 務 事 業(プ. ェ ク ト)レ ベ ル の 政 策 の 有 効 性 を. 「 科 学 的 」 に 論 証 す る今 日の. あ る 。 そ して 、 「 松 下政 治 学 」 に よ る 「 政 策 研 究」 の. ロジ. 「 政 策 科 学 」 の 主 流 とは 異 な る立 ち位 置 で. 「 実 効 化 」 は 、 具 体 的 に は 、 松 下 の 代 名 詞 と も い うべ. き 「シ ビ ル ・ミ ニ マ ム 」 に 始 ま り、 「 政 策 法 務 」 の 提 起 へ と 及 ん だ 。 か く し て 、 「松 下 政 治 学 」 は 、 「政 治 理 論 」 と い う一 般 理 論 化 と 、 そ れ に 導 か れ た. 「 政 策 研 究 」 の 二 層 か ら成 り立 つ の で あ る。. 3-4.「 規 範 として の 松 下 政 治 学 」と政 治 的 条 件 の 考 察 先 に 見 た よ うに 、 松 下 が 示 した 「一 般 理 論 」 と し て の 「近 代 市 民 政 治 理 論 」 は 、 「 政 治 理 論 」 の範 疇 に あ た る が 、そ れ と と も に 、松 下 が 「す べ て 社 会 科 学 は 、そ れ が 前 提 とす る 規 範 概 念 と して の 人 間 型 に よ っ て 、 そ の 理 論 構… 成 が 決 定 され る 」(松 下1975:xi)と. 言 い 切 る と き 、 自 由 ・平 等 ・独 立 の 理 性 あ る 「市 民 型. 人 間型 」 は 、 「 一 般 理 論 」 で あ る と同 時 に 、 「 規 範 概 念 」 で も あ る と され る。 畢 竜 す る に 、 「市 民 型 人 間 型 」 の み な らず 、 「 松 下 政 治 学 」 に お け る 「一 般 理 論 」 は 、 松 下 本 人 の. 「基 本. 的 な 価 値 観 」 に 基 づ く規 範 理 論 を 兼 ね る と い っ て も決 して 過 言 で は な い 。 そ れ に し て も 、 松 下 の も つ. 「基.
(5) 45. 本 的 な 価 値 観 」 と は 、 一 体 、 何 で あ ろ うか 。 そ れ は 、 先 に 引 用 した. 「 す べ て社 会 科 学 は 、 そ れ が 前提 とす. る 規 範 概 念 と し て の 人 間 型 に よ っ て 、 そ の 理 論 構 成 が 決 定 さ れ る 」 と い う よ うに 、 お そ ら く 、 松 下 圭 一 と い う人 間 自身 が 具 備 す る 、 自 由 ・平 等 ・独 立 か つ 理 性 あ る 市 民 に 対 す る信 仰 と も い え る ほ ど の 確 固 た る信 念 、 あ る い は ま た そ の よ うな 市 民 で あ る べ き と い う強 い 期 待 と い え る で あ ろ う。 こ う し て 、 「 松 下政治学」 か ら規 範 性 を 切 り離 し て 理 解 す る こ と は 考 え られ な い の で あ る。 これ と の 関 連 で 、 松 下 は 、 新 カ ン ト学 派 に 立 脚 す る よ うな 政 治 学 的 思 考 を批 判 す る。 松 下 と 同 世 代 お よ び 一 世 代 前 の 日本 の 政 治 学 者 に は 新 カ ン ト学 派 と の 距 離 感 に こ だ わ りが あ る。 例 え ば 、 松 下 よ り一 世 代 前 に あ た る 原 田鋼 は 、 「新 カ ン ト派 の 方 法 論 に 徹 す れ ば 徹 す る ほ ど、 内 在 論 理 的 に は 、ほ と ん ど批 判 の 余 地 の な い ほ ど の 精 緻 な 理 論 構 成 が な され 得 る で あ ろ うが 、 そ れ だ け ま す ま す 、 実 在 対 象 か ら遠 ざ か る と い う事 実 を 認 め な け れ ば な ら な い 」 と い う点 を 指 摘 し 、 新 カ ン ト学 派 の 方 法 論 を 相 対 化 し た(原. 田1972:34)。. そ し て 、 当 の 松 下 は 、 新 カ ン ト学 派 の 立 ち 位 置 が 、 実 在 対 象 か ら遠 ざ か り、 実 在 か ら切 り離 され た 理 論 的 空 間 に お い て 、 理 論 上 の 論 理 的 整 合 性 を 追 求 し 、 そ の 精 緻 化 に 傾 注 す る あ ま り、 政 治 学 か ら 規 範 性 を 駆 逐 し 、 気 が 付 け ば 、 果 た し て 何 の た め の 政 治 学 な の か 、 そ の 目 的 が 怪 し く な る と看 倣 し た の で あ る。 そ うす る と 、 「松 下 政 治 学 」 は 、 い うな れ ば 「規 範 と して の 松 下 政 治 学 」 と い え る で あ ろ う。 そ し て 、 「規 範 と し て の 松 下 政 治 学 」 で あ る が 故 に 、 「松 下 政 治 学 」 は 、 市 民 や 統 治 レ ジ ー ム な ど の く か く あ ら ね ば な ら な い 〉在 り方 を 問 題 と し て 取 り上 げ 、 同 時 に 松 下 自身 の 立 論 を 成 立 させ る べ き 論 拠 と し て の 政 治 的 条 件 を 粘 り強 く考 察 す る と い う性 格 を 帯 び る こ と に な る の で あ る。. 3-5.現 代 市 民 政 治 理 論 に お け る市 民 の 再 定 義 ま た 、松 下 に よ る 大 変 興 味 深 い 指 摘 は 、 「 政 治 科 学 」が 分析 技術 の 開発 と実 証研 究 と して進 歩す る けれ ど も、「 政 治 理 論 」が ビ ジ ョ ン の 構 想 に た ず さ わ る が 故 に 進 歩 しな い と い う点 で あ る。 そ れ で は 、何 故 に 、 「政 治 理 論 」は 進 歩 し え な い の か 。 こ の 件 に つ い て 松 下 は 、 「ロ ッ ク の く 近 代 〉 を め ぐ る 古 典 ビ ジ ョ ン の 再 構 成 に よ っ て し か く 現 代 〉 の 政 治 ビ ジ ョ ン と し て の 政 治 理 論 を 展 開 で き な い 」(松 下1987a:288)か. らで あ る. と 断 言 す る。 つ ま り、 〈 近 代 〉 の 延 長 の 上 に 、 も し く は そ の 拘 束 の 中 で 、 〈 現 代 〉 が あ る た め 、 ロ ッ ク が 示 し た 近 代 政 治 の ビ ジ ョ ン を 構 成 す る基 本 的 な 枠 組 み を 踏 ま え な が ら 、 現 代 政 治 ビ ジ ョ ン と して の 現 代 政 治 理 論 が 導 出 され な け れ ば な ら な い 、 と い う基 本 認 識 に 帰 結 す る わ け で あ る。 そ れ 故 に 、 松 下 は 、 ロ ッ ク を ベ ー ス に 据 え た 近 代 市 民 政 治 理 論 に 、 集 団 と い う 「中 間 項 」 を 挿 入 す る か た ち で 、 現 代 市 民 政 治 理 論 の 「再 構 成 」、 す な わ ち そ の 一 般 理 論 化 を 目指 す 。 「 『近 代 』 の 座 標 軸 た る 『個 人 対 国 家 』 の く 政 治 緊 張 〉 か ら 、 〈 現 代 〉 の 座 標 軸 た る 『個 人 対 集 団 』 の く 政 治 過 程 〉 に 移 行 」(松 下2006: 20)し. た と 松 下 が 述 べ る と き 、 そ れ は 近 代 市 民 政 治 理 論 を 基 本 に 据 え た バ ー ジ ョ ン ・ア ッ プ と し て の 現 代. 市 民政 治 理 論 の構 築 を意 味す る こ とに留 意 して お か ね ば な らな い。 尚 、 こ こ で 問 題 に な る の は 、 現 代 市 民 政 治 理 論 に お け る個 人 は 市 民 な の か 、 そ れ と も 大 衆 な の か 、 と い う論 点 で あ る 。 と言 うの も 、 松 下 の 記 念 碑 的 論 文 で あ る 「大 衆 国 家 の 成 立 と そ の 問 題 性 」(1956年)が. 、. そ の 大 衆 の 非 合 理 性 を 問 題 に し て い る か ら で あ る。 後 年 、 松 下 は こ の 論 文 に つ い て 、 「20世 紀 初 頭 に お け る 欧 米 各 国 の 政 治 理 論 の 構 造 転 換 を い か に 理 論 化 す る に あ っ た 」(松 下1969:281)と. 述 べ てい る が 、論 文. 中に 「 啓 蒙 思 想 を 背 景 と し て 形 成 され た 自 由 ・平 等 ・独 立 の 合 理 的 実 体 と して の く 市 民 〉 は 、A.専 し 、B.集. 団 化 す る と と も に 、a.孤. 立 化 し 、b.情. 門 人化. 緒 化 して い く 」 と い う一 文 か ら読 み 取 れ る よ うに 、 当 時. の 大 衆 社 会 論 を 背 景 に しな が ら 、 む しろ く 市 民 〉 の 崩 壊 を 理 論 的 に 論 じて い た 。 そ れ か ら 、50年 後 、松 下 は 市 民 と大 衆 と の 関 係 を 改 め て 整 理 して み せ た 。 松 下 に よ れ ば 、 現 代 の 都 市 型 社 会 に お け る 市 民 とは 、 「 工 業 化 ・民 主 化 を 基 軸 と した マ ス ・デ モ ク ラ シ ー の な か か ら生 ま れ る 、 人 口 の プ ロ リ タ リア 化 な い し サ ラ リー マ ン化 した 新 しい タ イ プ の 『市 民 』、… … 〈 現 代 〉 と して の 特 殊 性 を も つ く 市.
(6) 46. MemoirsofTheFacultyofB.0.S.T.ofKinkiUniversityNo.25(2010). 民 〉」(松 下2006:25)で. あ り、ま た. 「マ ス ・デ モ ク ラ シ ー が 生 み 出 す 、 現 代 の く 市 民 〉 と は 、 『自 由 ・平. 等 』 と い う生 活 感 覚 、 『自治 ・共 和 』 と い う政 治 文 脈 を も つ く シ テ ィ ズ ン 〉 、 つ ま り規 範 的 人 間 型 」(松 下 2006:53)と. し て 再 定 義 され た 。. 見 られ る よ うに 、 松 下 に よ っ て 、 今 日に お け る 市 民 は そ れ こ そ マ ジ ョ リテ ィ と し て 再 定 義 さ れ て い る。 そ して 、松 下 は 、 「 現 代 」す な わ ち. 「近 代 化 皿 型 段 階 」 に あ る今 日で は 、 「大 衆 政 治 」 を経 て 、 「市 民 政 治 」. の 段 階 へ と 至 っ た と い う こ と で 、 お お よ そ 、 下 記 の よ うに 整 理 す る。(松 下2006:20). 近世. 「 近 代 化1段 階 」. 絶 対 国家. ホ ッブ ス. 近代. 「 近 代 化H段 階 」. 名 望 家(階 級)社 会. ロック. 現代. 「 近 代 化 皿段 階 」. 大衆 政 治. ウォ ー ラス 、 ラ ス キ. ⇒ 市 民政 治. 3-6.「 実 践 理 論 としの 松 下 政 治 学 」お よ び 「政 治 的 ア イデ ィア として の 松 下 政 治 学 」 「 松 下政 治 学 」 は 、 一般 理 論 と して の. 「 政 治理 論 」 とそれ に基 づ く 「 政 策 研 究 」 か ら成 り立 つ 点 は 確 認. し た が 、「官 僚 内 閣 制 」か ら 市 民 起 点 の 「国 会 内 閣 制 」へ の 転 換 と い う 「政 治 理 論 」に あ た る 立 論 に し て も 、 あ く ま で も そ れ は 一 般 理 論 と し て の 範 疇 に あ る。 だ か ら と言 っ て 、 「松 下 政 治 学 」 に お け る 一 般 理 論 は 、抽 象 的 な 形 而 上 学 を 展 開 す る わ け で は な い 。 む し ろ 、 「松 下 政 治 学 」 が 展 開 す る 一 般 理 論 は 、 「 政策研 究」 と い う部 分 と重 複 しな が ら 、実 践 理 論 と い う性 格 を 色 濃 く帯 び て い る と い え る 。 要 す る に 、 「松 下 政 治 学 」 そ れ 自体 が 自 ら の. 「 政 治理 論 」 を 実現 して い くた め の. で あ る。 そ れ 故 に 、 「松 下 政 治 学 」 の. 「実 践 理 論 と し て の 政 治 学 」 と い う性 格 を 併 せ も っ の. 「 政 治 理 論 」 は 、 「国 会 内 閣 制 」 や 市 民 自 治 の 憲 法 理 論 、 シ ビ ル ・ ミ. ニ マ ム に し て も 、 実 践 レベ ル の 現 実 政 治 に 強 い 影 響 を 与 え て き た 。 例 え ば 、 シ ビル ・ミ ニ マ ム と は 、 松 下 に よ る と 、 「市 民 生 活 最 低 基 準 」 の こ と で あ り、 そ の 内 容 は 、i) 社 会 保 障(老. 齢 年 金 ・健 康 保 険 ・雇 用 保 険 ・介 護 ・保 護)、i)社. 住 宅)、 お よ びiii)社 会 保 健(公. 衆 衛 生 ・食 品 衛 生 ・公 害)か. ニ マ ム は 、 「質 整 備 」 の 段 階 に 入 り、 い ま や. 会 資 本(市. 民 設 備 ・都 市 情 報 施 設 ・公 営. ら構 成 さ れ 、 ま た1980年. 代 か ら シ ビ ル ・ミ. 「市 民 生 活 条 件 の 総 合 シ ス テ ム 化 」(松 下2006:58)を. 求め る. 市 民 の 社 会 権 と し て 発 展 し た と い う。 周 知 の 通 り、 こ う し た 松 下 の シ ビル ・ミ ニ マ ム 論 は 自 治 体 の 担 当 者 に 多大 な影 響 を 与 え て き た。 興 味深 い こ とに 、松 下 が. 「 官 僚 内 閣 制 」 か ら 「国 会 内 閣 制 」 へ 統 治 レ ジ ー ム の 転 換 と シ ビ ル ・ ミニ マ ム. を 執 拗 に 取 り上 げ て き た こ と と 、 ミ シ ェ ル ・フ ー コ ー が 近 代 国 家 に お け る権 力 の2つ. の側 面 と して 指 摘 し. た 「統 治 性 」 と 「 生 政 治 」 とい う議 論 とが 重 な る 。 フ ー コ ー は 、 「 生政治」を 「 健 康 、衛 生 、 出 生 率 、寿 命 、 人 種 と い っ た 諸 現 象 に よ っ て 統 治 実 践 に 対 し提 起 され る諸 問 題 を 、18世 紀 以 来 合 理 化 し よ う と試 み て き た や り方 の こ と 」 と 定 義 す る(フ. ー コ ー:2008:391)。. 但 し、 フ ー コー の 問題 関 心 が 近代 国 家 の権 力 の別 挟. で あ っ た の に 対 し て 、松 下 の 場 合 は 権 力 批 判 に と ど ま らず 、 「実 践 理 論 と し て の 政 治 学 」 で あ る が 故 に 、 後 で 見 る よ うに 、 「社 会 工 学 」 へ 展 開 す る。 さて 、松 下政 治 学 の. 「 政 治 理 論 」 を 実 現 し よ う とす る政 治 家 に 菅 直 人(国. 家 戦 略 担 当 大 臣)が. い る。 菅. は 、 「私 が 政 治 家 と な っ て 政 治 、行 政 の 場 で 活 動 す る に あ た り 、常 に 基 本 と して い た の は 、 こ の 本 だ っ た と 思 う。 そ れ は 、(厚 生)大 の が 、 松 下 先 生 の"不. 臣 に な っ た と き も 同 様 だ っ た 。 『松 下 理 論 を 現 実 の 政 治 の 場 で 実 践 す る 』 と い う. 肖 の 弟 子"で. 菅 の バ イ ブ ル と い うべ き. あ る 私 の 基 本 的 ス タ ン ス だ っ た の だ 」(菅1998:i)と. 語 っ て い る。. 「こ の 本 」 と は 、 「国 会 内 閣 制 」 に も触 れ て い る 、 松 下 の 『市 民 自 治 の 憲 法 理 論 』. の こ とで あ る。 思 うに 、 「 松 下 政 治 学 」 は 、 決 して 政 治 的 イ デ オ ロ ギ ー を 主 張 す る 類 の も の で は な い が 、 そ の 実 践 性 と い う性 格 か ら 、 「 政 治 的 ア イ デ ィ ア と し て の 松 下 政 治 学 」 とで も い え る で あ ろ う。 ア イ デ ィ ア(idea)の. 意味.
(7) 47. す る と ころ は 、本 来 的 に 、実 現 へ 向 けて 提 案 され る意 見 で あ り、か つ ま た 目指 す べ き理 想 で あ るが 、「 松下 政治学 」は 「 政 治 理 論 」 とい うか た ち で提 案 され た 、 実 現す べ き理 想 を 明示 す る 「 政 治 的 ア イ デ ィア と し て の松 下政 治 学 」 とい う性 格 を もつ極 め て個 性 的 な政 治 学 な の で あ る。. 本 節 は 「松 下 政 治 学 」 の 在 り方 に つ い て 考 察 した 。 総 括 し て み る と 、 「松 下 政 治 学 」 は 、 ジ ョ ン ・ロ ッ ク と い う近 代 政 治 思 想 研 究 か ら ス タ ー トし つ つ も 、 そ こ か ら 「近 代 市 民 政 治 理 論 」 お よ び く 中 間 項 〉 と い う 集 団 を 介 在 させ る こ と に よ っ て 「 現 代 市 民 政 治 理 論 」を 論 定 しっ っ 、「政 治 理 論 」 と 「政 策 研 究 」 と い う 「 松 下政 治 学」 の領 域 か ら、規 範 性 を も帯 び た と ころ の 、 市 民起 点 の. 「国 会 内 閣 制 」 と い う統 治 レ ジ ー ム を提. 起 し た 。 そ の 提 起 は 、現 実 政 治 に も 強 い 影 響 を 与 え 、 「松 下 政 治 学 」 は 実 践 理 論 も し く は 政 治 的 ア イ デ ィ ア を も兼 ね 備 え た 政 治 学 と し て 今 日に 至 っ て い る。. 4.「 松 下 政 治 学 」の 核 心 一 「官 僚 内 閣 制 」か ら市 民 起 点 の 「国 会 内 閣 制 」へ の 転 換 一 松 下 は 、1997年5.月. 、法 政 大 学 法 学 部 政 治 学 科 コ ロ キ ア ム 報 告 と して 、「官 僚 内 閣 制 か ら 国 会 内 閣 制 へ 」. を 行 い 、 これ ま で の 立 論 を 集 約 す る発 表 を 行 っ た(松. 下1998)。. 改 め て確 認 す るが 、 松 下 が 言 わ ん とす る. と ころ の 「 官 僚 内 閣 制 」 と は 、官 僚 に よ る 国 家 統 治 が 基 本 に あ り、 「明 治 以 来 の 国 家 観 念 を か か げ る 官 治 ・ 集 権 政 治 」、す な わ ち 、官 僚 に よ る 中 央 集 権 的 統 治 が 行 わ れ 、 そ の た め 日本 国 憲 法 が 定 め る 「国 権 の 最 高 機 関 と し て の 国 会 」 と い う表 現 は. 「 政 治 的美 称 」 に過 ぎず 、 ま た 内 閣 を構 成 す る各 大 臣 も、事 実 上 、 各省 庁. 官 僚 の代 理 人 に過 ぎず 、 そ して 市 民 は受 動 的 な 市 民 と して. 「官 治 ・集 権 政 治 」 に よ る政 策 的 恩 恵 を 受 け る. 立 場 に あ る よ うな 、 後 進 国 ・中 進 国 段 階 に お け る 統 治 レ ジ ー ム を 意 味 す る 。 他 方 、 「国 会 内 閣 制 」 と は 、 市 民 に よ る 政 府 信 託 と い う考 え 方 が 基 本 に あ り、 ま ず 市 民 が 選 挙 を 通 じ て 国 会 議 員 を 選 出 し、 そ の 議 員 に よ っ て 国 会 が 構 成 され 、 次 に 国 会 は 国 レベ ル に お け る政 府 の 最 高 機 関 で あ り、 そ れ 故 に 国 会 に よ っ て 内 閣 が 構 成 され 、 か つ ま た 内 閣 は 国 会 に 責 任 を 負 い 、 そ し て 官 僚 組 織 と し て の 行 政 機 構 つ ま り各 省 庁 は 、 国 会 ・ 内 閣 に よ っ て 組 織 ・制 御 され る 立 場 に 置 か れ る と い う、 統 治 レ ジ ー ム を 意 味 す る。 前 節 に お い て 整 理 し た よ うに 、 「 松 下政 治 学 」 は 、 「 政 治理 論 」 お よび. 「 政 策 研 究 」 か ら成 り立 ち 、 か っ. ま た 規 範 性 と 実 践 性 を も併 せ 持 つ 政 治 学 で は あ る が 、 そ の 基 調 は 、 松 下 自身 の 立 論 を 論 証 す る た め に 政 治 的 条 件 を 掘 り当 て 、そ れ を 執 拗 に 掘 り 下 げ て い く と こ ろ に あ る 。 な る ほ ど確 か に 、 松 下 が 言 う よ う に 、 「官 僚 内 閣 制 」 か ら 「国 会 内 閣 制 」 へ の 転 換 は 、 政 権 交 代 と い う政 治 的 条 件 を 必 要 と し た 。 換 言 す れ ば 、 「官 僚 内 閣 制 」 を 維 持 す る 自 民 党 政 権 を 終 息 させ 、 政 権 交 代 を 起 こ す こ と が. 「国 会 内 閣 制 」 を 可 能 とす る政 治 的. 条 件 で あ っ た。 と こ ろ が 、今 般 、政 権 交 代 が 現 実 の も の と な る と、 「国 会 内 閣 制 」 は 可 能 性 の レベ ル か ら 一 転 し て 現 実 性 の レベ ル へ 、 そ の 位 相 を 変 え て し ま っ た 。 そ れ 故 に 、 現 実 性 と い う位 相 に お い て は 、 改 め て 、 市 民 起 点 の 「国 会 内 閣 制 」 を 確 立 す べ き 現 実 的 な 政 治 的 条 件 を 提 示 す る こ と が 求 め られ て く る 次 第 で あ る。 こ の 現 実 的位 相 に お い て こそ 、 「 松 下 政 治 学 」 の 先 駆 性 が 問 わ れ る の で あ る。 そ こ で 、 本 節 で は 、 「 松 下政 治 学 」 の 核 心 で あ る 、市 民 起 点 の 「国 会 内 閣 制 」に つ い て 、そ れ を 可 能 と させ る 現 実 的 な 政 治 的 条 件 を 探 りな が ら 、 そ の 省 察 を 試 み る 。 尚 、 論 述 の ス タ イ ル と し て 、 松 下 の 立 論 を 踏 ま え つ つ も 、 そ れ を 敷 街 し な が ら議 論 す る こ と と した い。. 4-1.〈 信 託 〉 に お け る政 治 的 リア リズ ム に つ い て の 「政 治 的 習 熟 」 第1に. 、市民起点の. 「国 会 内 閣 制 」 に お け る 現 実 的 な 政 治 的 条 件 と し て 、 〈 信 託 〉 に 連 動 す る 政 治 的 リ. ア リズ ム を 許 容 し え る 市 民 の. 「 政 治 的 習 熟 」 を 指 摘 す る こ と が で き る。. 「国 会 内 閣 制 」 の 起 点 に 市 民 を 置 く 「 松 下 政 治 学 」 の 生 命 線 は 、 市 民 に よ る 国 家 も し く は 政 府 へ の く信.
(8) 48. MemoirsofTheFacultyofB.0.S.T.ofKinkiUniversityNo.25(2010). 託 〉 とい う社 会 契 約 論 的 な発 想 に あ る とい え る。 そ の く信 託 〉の 中 に は 、 実 は 、 ドラス テ ィ ッ クに政 治状 況 を 変 え て しま う厳 然 た る政 治 的 リア リズ ム が潜 在 して い る点 を理 解 しな けれ ば な らな い。松 下 に よれ ば 、 市 民 の く信 託 〉 とは 、選 挙 を通 じた 、現 代 の 「 革命 権 」(「抵 抗 権 」)の 行 使 に 値す る もの な の で あ る。 選 挙 と りわ け マ ニ フ ェ ス ト選 挙 を 通 じ、 市 民 が 多数 党 を選 出す る こ とに よっ て 市 民 の政 治 的意 思 が 基 本 政 策 も し くは重 要 な争 点 の選 択 に反 映 され 、 した が っ て ま た 国会 に よ る政 策 形 成 は 市 民 の政 治 的 意 思 の 実 現 に ほ か な らな い 、 とい う発 想 が く信 託 〉の基 本 を構 成 す る。 しか しな が ら、 実 際 の と こ ろ、 〈信 託 〉は 政 治 的正 当性 の フ ィク シ ョン に過 ぎ な い の は 明 らか で あ る。 それ は 、全 て の 市 民 が 、 多数 党 に よ り提 示 さ れ た マ ニ フ ェ ス トに お け る全 て の諸 策 を支 持 した 上 で 、 〈信 託 〉 した わ け で は もち ろ ん な い。 ま た 、 あ く ま で も支 持 を表 明 した の は選 挙 時 に お け る多数 派 と して の 市 民 で あ り、 か か る支 持 した 市 民 に お い て も、 マ ニ フ ェ ス トに記 載 され て い る全 て の政 策 に対 して 支持 して い るわ け で は な い。 そ れ故 に 、 多数 党 の マ ニ フ ェ ス トに 市 民 の政 治 的意 思 が集 約 され て い る と額 面通 りに 考 え るの は 、虚 構 に過 ぎ な い こ とに な る。 し か しな が ら、 それ で も、 多少 の修 正 が あ るに して も、 マ ニ フェ ス トの 実 現 を進 め て い くの が 、 市 民 か らの く信 託 〉す な わ ち正 当性 に担 保 され た 「 国会 内 閣制 」の 基 本 的 な立 場 で あ る。そ れ が 行 わ れ な けれ ば、 「 国 会 内 閣制 」 も し くは議 会 制 民 主 主義 は成 り立 た な い で あ ろ う。 それ に して も、本 格 的 な政 権 交代 の場 合 、 それ が 前政 権 の 政 治理 念 も し くは政 治 的 ア イ デ ィア 、 お よび 基 本 政 策 等 を破 棄 ・転換 し、場 合 に よ って は レジー ム の転 換 へ と進 む た め、〈信 託 〉の 実行 は権 力 作 用(「権 限 」 の行 使)を 伴 わ ざる を え な い が 、 これ こそ く信 託 〉に 付 着す る政 治 的 リア リズ ム な の で あ る。 政 治 的 リア リズ ム を伴 うと ころ の 市 民 に よ る く信 託 〉 とい う発 想 に 対 して 、松 下 は 市 民 の 「 政 治 的 習熟 」 を求 め る次 第 で あ る。 松 下 が政 治 学 者 と して 江湖 に 問 うこ と半世 紀 余 り、 実 は 、 そ の 間 、細 川 ・羽 田政権 とい う若 干 の例 外 は あ る もの の 、長 期 間 に わ た り一 党優 位 政 党 の 自民 党政 権 が継 続 して い た期 間 と重 な る。 自民 党長 期 政 権 下 で は 、 自民 党 内 の派 閥抗 争 に よ る 「 疑似 政 権 交代 」 は繰 り返 され て き た が 、 自民 党 が 下 野 し、 自民 党 以 外 の政 党 が政 権 を握 る本 来 的 な政 権 交代 は つ い ぞ 起 こ らな か っ た。 自民 党長 期 政 権 は 、 松 下 の 思 惑 とは 異 な り、「 官 僚 内 閣 制 」 とい う統 治 レジー ム をむ しろ強 固 な も の と しつ つ 、官 僚や 自民 党政 治 家 か ら市 民 へ 慈 恵 的 な利 益 が配 分 され る政 治 的パ タ ー ナ リズ ム とい う政 治 文化 を助 長 した。 松 下 の 「 官僚 内 閣 制 」 とい う議 論 を受 け継 い だ飯 尾 潤 は 、「 官 僚 内閣 制 」に 自民 党 長 期 政 権 を結 合 させ る こ とに よ り、い わ ゆ る 自民 党 政 治 の仕 組 み を 明 らか に した。 す な わ ち 、各 省 庁 の 官 僚 が 国 民 の ニ ー ズ を 吸収 しつ つ 国 民 を 代表 して 政策 を立 案す る 「 省 庁 代 表 制 」、各 省 庁 の 官 僚 の代 理 人 と して 内 閣 が構 成 され る 「 官僚 内 閣 制 」、 並 び に 「 省庁代表 制 」・「 官 僚 内 閣制 」 に基 づ く官 僚 優 位 の状 況 か ら 自民 党 の政 治 家(族 議 員)優 位 の 方 向 ヘ ス ライ ドさせ る た め 、 自民 党政 調 の 各部 会 を 実 質 的 な政 策 決 定 の 「 場 」 に設 定 し、 しか もそ の 「 場 」が 「 与 党審 査 」 と称 され るほ ど、官 僚 か ら提 案 され た政 策 案 を厳 し く 「 審査 」す る こ とに よっ て族 議 員 の存 在 感 を 高 め る 「 政 府 一与 党 二 元体 制 」 とい う仕 組 み で あ る(飯 尾2007;飯 そ うす る と、 日本 の政 治 に お い て 、2009年. 尾2008)。. の政 権 交代 とい う政 治 的衝 撃 の 大 き さが推 測 で き る。 今 般 、. 政 権 交代 に合 わせ 「国会 内 閣制 」へ の転 換 が 進 む と、隠 然 た る権 力 を有 して い た 自民 党 族 議 員 、 「 政府 一 与 党 二元 体 制 」 な どの 自民 党政 治 が 終焉 を迎 え る。 ま た 、政 治 主 導 の 「 事 業仕 分 け」や 今 後 予期 され る政 治 任 用 に よ り、官 僚 の権 限 が縮 減 され た 上 で 、官 僚 の役 割 が 再 定義 され るで あ ろ う。 か く も強 固 な経 路 依 存 性 を有 して き た 自民 党政 治 と 「 官僚 内 閣制 」 が 終焉 を迎 え る。 それ こそ 、 こ う した 事態 は 、 〈信 託 〉に潜 在す る 「 革 命 権 」 とい う政 治 的 リア リズ ム の発 露 に ほ か な らな い。 市 民 起 点 の 「 国 会 内 閣制 」 は 、解 党 的 出 直 しが必 要 な 自民 党 、再 編 され るべ き 官僚 制 に対 して も、 これ ま た 「 政 治 的習 熟 」 が 要 求 され る次 第 で あ る。 か く して 、 市 民 の 革命 的 な く信 託 〉は 、変 え る こ とが 事 実 上 不 可能 と さ え思 わ れ て き た 、極 め て 強 い経.
(9) 49. 路 依 存 性 に担 保 され て き た 自民 党政 治 と 「 官 僚 内 閣制 」 を 終 息 させ る こ とす ら可 能 と させ た。 本格 的 な政 権 交代 は 、政 策 や レジ ー ム を転 換 す る と と もに 、政 治 的利 益 の 再配 分へ 連 動 す るの は 当 然 で あ る。 眼 前 に 現 出 して い る の は 「 劇 場 政 治 」 で は な く、政 治 的 リア リズ ム な の で あ る。 そ の政 治 的 リア リズ ム を許 容 す る正 当性 を賦 与 した の は 市 民 自身 の く信 託 〉で あ るが故 に 、 市 民 に は これ を受 け入 れ る 「 政 治的習熟」が 必 要 な の で あ る。 〈信 託 〉に ま つ わ る政 治 的 リア リズ ム を恐 れ るな らば 、 か つ て の 官僚 主 導 に よ る政 治 的 パ タ ー ナ リズ ム の 時代 へ 逆 戻 りす る しか な い の で あ る。. 4-2.市 第2に. 民 社 会 に お け る市 民 自 治 お よび 地 方 分 権 、 現 実 的 な 政 治 的 条 件 と し て 、 市 民 社 会 に お け る 市 民 自治 の 充 実 が 上 げ ら れ る。. こ こで 、 改 め て確 認 しな けれ ば な らな い の は 、何 も、 〈信 託 〉を 通 じて 、 市 民 が政 府 へ. 「全 面 委 任 」 す. る わ け で も な く 、 あ る い は ま た 市 民 が 市 民 社 会 に お け る 市 民 自 治 を も放 棄 し 「 行 政 国 家 」 た る政 府 に 全 面 的 に 依 存 す る わ け で も な い 、 と い う こ と で あ る。 そ の 意 味 で は 、 〈信 託 〉 は あ く ま で も 限 定 的 な 権 限 委 譲 で あ る こ とに注 意 しな けれ ば な らな い。 した が っ て 、 市 民 起 点 の. 「国 会 内 閣 制 」 は 、 選 挙 に よ る く信 託 〉 だ け に 着 目す れ ば よ い と い うわ け で は. な く 、選 挙 後 に お け る 日常 の 市 民 社 会 に お け る 市 民 自治 の 充 実 に 連 動 す る 必 要 が あ る 。 「 官 僚 内 閣制 」か ら 市 民 起 点 の 「国 会 内 閣 制 」 へ の 転 換 と併 せ て 、 「官 治 ・集 権 」 か ら 「自 治 ・共 和 」 へ の 転 換 を説 く 松 下 と し て は 、 市 民 に よ る 政 府 へ の く 信 託 〉 が 、 「官 治 ・集 権 」 を 強 固 に す る 方 向 で は な く 、 「自 治 ・共 和 」 を 強 化 す る 方 向 、 と りわ け 地 方 分 権 と 市 民 社 会 に お け る 市 民 自 治 を 助 長 ・促 進 す る 方 向 と連 動 しな け れ ば な ら な い と捉 え る わ け で あ る。 特 に 、 市 民 社 会 が 具 現 化 す る場 で あ る 地 域 、 と りわ け 基 礎 自 治 体 レベ ル に お い て 、 自 治 基 本 条 例 を 制 定 し 、 市 民 自治 お よ び 参 加 と協 働 を 保 障 しっ っ 、 市 民 と 自 治 体 、 っ ま り首 長 や 議 会 ・議 員 お よ び 行 政 と の 関 係 性 を 改 め て 確 定 す る必 要 が あ る。 自治 基 本 条 例 は 、 自 治 体 に お け る憲 法 に 相 当 す る も の と い わ れ る が 、 現 代 版 の 社 会 契 約 と い う性 格 を も つ も の と い え る。 そ れ 故 に 、 自治 基 本 条 例 は 、 市 民 と 自治 体 と の 問 に お い て 、 市 民 自治 を 促 進 し 、 か っ ま た そ の 制 度 化 を 推 進 し て い く た め 交 わ され た 基 本 的 な 社 会 契 約 な の で あ る。 こ こ で 思 い 出 す の は 、松 下 が 行 政 主 導 の 社 会 教 育 に 終 焉 を 宣 告 した こ とで あ る 。松 下 は 、 「社 会 教 育 行 政 を 廃 止 し 、そ れ に か わ っ て 、市 民 参 加 を 土 台 に 、 『自 治 体 政 策 づ く り』 の た め の 研 究 所 を 各 自 治 体 が 首 長 部 局 に 設 置 す る こ と を 提 案 」 した が 、そ の こ と の 意 味 が 改 め て 理 解 で き る 。 「 行 政 が 市 民 を く教 育 〉す るの で は な く 、市 民 が 行 政 の 制 度 ・政 策 を く 革 新 〉 す る 」 の で あ り(松 下2003:189)、. し た が っ て 、〈 信 託 〉 は 、. 行 政 主 導 の 社 会 教 育 に よ っ て 市 民 を く 教 化 〉す る の で は な い の は も ち ろ ん の こ と 、く 、反 対 に 、「主 権 主 体 、 政 策 主 体 、研 究 主 体 」 と して の 市 民 が 、社 会 教 育 に 代 わ る 「自 治 体 政 策 研 究 所 」 に お い て 、 「 政 策 開 発」 に 努 め る よ うに 、 市 民 自治 を 実 質 的 に 保 障 す る 点 に 連 動 し な け れ ば な ら な い の で あ る。 そ れ は 、 行 政 が 市 民 社 会 を 管 理 す る の で は な く 、 市 民 社 会 を く 強 化 〉す る 具 体 的 な ア ク シ ョ ン と い え よ う。. 4-3.「 分 節 政 治 」も しくは 「自 律 補 完 性 の 原 理 」 第3に. 、現 実 的 な 政 治 的 条 件 と し て 、 「国 会 内 閣 制 」 は 、 国 家 の 相 対 化 、 し た が っ て ま た 地 方 分 権 へ と連. 動す る 「 分 節 政 治 」 の 実 現 に 向 け た 統 治 レ ジ ー ム の 再 編 成 を 指 摘 す る こ と が で き る。 松 下 が 多 用 ・力 説 す る 「 分 節 政 治 」 と は 、大 方 、EU統 ofsubsidiarity)」 並 び に. 合 の 過 程 で 示 され た 「自 律 補 完 性 の 原 理(principle. 「 接 近 性 の 原 理(principleofproximity)」. を 基 底 に 据 え つ つ 、 「地 方 政 府 」(自 治 体)が 位 の 「中 央 政 府 」(政 府)が. の 意 想 と オ バ ー ラ ッ プ す る。 自 治 ・分 権. 行 うに は 事 業 規 模 や 政 策 課 題 が 大 き 過 ぎ る場 合 、 そ れ ら を 上. 担 当 す る と い うの が 「分 節 政 治 」 の 基 本 的 な 発 想 で あ る。 こ の. 「 分節政治」 を.
(10) MemoirsofTheFacultyofB.0.S.T.ofKinkiUniversityNo.25(2010). 50. 推 し進 め る と 、 そ れ は 下 位 の 「地 方 政 府 」 の 権 限 ・財 源 の 強 化 に 帰 結 す る と と も に 、 「中 央 政 府 」 を 構 成 す る 「官 僚 内 閣 制 」 の 解 体 に も 連 動 す る が 、松 下 が 「分 節 政 治 」 の 延 長 線 上 に 見 据 え る の は 「国 家 の 相 対 化 」 で あ る。 し か し 、 こ の 点 は 姐 上 に 上 げ る こ と は 差 し 当 た り措 く と し て 、 政 権 交 代 に よ り新 た な 多 数 党 が 政 府 の 基 本 方 針 を 変 更 し政 策 転 換 を 行 う と 、 そ の 影 響 は 少 な か らず 自 治 体 や 地 域 に も 波 及 す る こ と に 着 目 して み た い 。 と い うの も 、 仮 に 新 政 権 が. 「分 節 政 治 」 を レ ジ ー ム の 基 本 とす る に し て も 、 そ の 新 政 権 は 自 治 体 や 地. 域 を い わ ば 改 革 の 対 象 外 に 置 く わ け で は な い 。 場 合 に よ っ て は 、 政 権 交 代 に 伴 う政 策 転 換 は 、 強 制 的 か つ 権 力 的 な 作 用 を 自治 体 や 地 域 に 対 し て 及 ぼ す こ と も 十 分 に あ りえ る。 こ こ に 、 国 政 レベ ル の マ ニ フ ェ ス ト 選 挙 の洗 礼 を受 け た あ る 。 こ の 歯購 吾は. 「国 会 内 閣 制 」 と 、 自治 ・分 権 に 立 脚 す る 「 分 節 政 治 」 との齪 甑 が 立 ち 現れ る次 第 で. 「国 会 内 閣 制 」 に お け る い わ ば ア キ レ ス 腱 と も い え る で あ ろ う。. 「土 建 国 家(constructionstate)」. を ビ ル トイ ン す る. 「日本 型 福 祉 国 家 レ ジ ー ム 」 を 確 立 し た 自 民 党 は 、. と りわ け 農 村 地 域 や 中 山 間 地 域 に 高 速 道 路 や ダ ム な ど の 公 共 事 業 を 誘 致 す る 見 返 り と し て 自 民 党 へ の 投 票 を バ ー タ ー とす る 政 治 的 ク ラ イ エ ン タ リズ ム(恩 顧 庇 護 主 義)を. 浸 透 させ て き た た め 、 公 共 事 業 に 依 存 す. る地 域 をつ くっ た。 と ころ が 、 小泉 政 権 に続 き 民 主 党政 権 に お い て も、 公 共 事 業 を縮 減 す る方 向 へ進 み 、 計 画 され た 公 共 事 業 を 中 止 や 見 直 し 、 も し く は 規 模 縮 小 に 追 い や られ た 地 域 が 頑 な な. 「 拒 否 権 プ レイ ヤ ー. (vetoplayers)」 に 転 化 す る 現 実 的 可 能 性 が 十 分 に 予 想 さ れ る 。 内 発 的 発 展 の 道 を 閉 ざ し、公 共 事 業 に 依 存 し続 け て き た 地 域 は 、 経 済 の グ ロ ー バ ル 化 に 翻 弄 さ れ な が ら 、 結 局 の と こ ろ 、 衰 退 の 一 途 を 辿 る。 こ う し た 地 域 に お い て は 、 自 治 ・分 権 が 問 題 と な る こ と も な く 、 「分 節 政 治 」 と い う発 想 そ の も の が 破 綻 す る。 そ れ は ま た 、 松 下 が い うと ころ の. 「 居 眠 り 自治 体 」 の 末 路 と も い え る で あ ろ う。 そ れ 故 に 、 松 下 は 自 治 体 に. よ る 新 た な 産 業 ・雇 用 創 出 政 策 を 望 む 。 松 下 と し て は 、 「自治 体 再 構 築 」 を 提 起 し、2000年. の 地 方 分 権 改 革 に お け る機 関 委 任 事 務 の 廃 止 と い う. 歴 史 的 画 期 が 、 自治 体 に 対 し て 独 自 の 自 治 立 法 を 促 し 、 自治 体 職 員 に 政 策 法 務 や 政 策 財 務 を 精 通 す る よ う に 求 め る 。思 うに 、「国 会 内 閣 制 」へ の 転 換 と い う課 題 は 、政 府 レ ベ ル の 統 治 レ ジ ー ム の 再 構 築 の み な ら ず 、 併 せ て 市 民社 会 の 強化 と と もに 、 「 分 節 政 治 」 に 基 づ き 基 礎 自 治 体 一 中 間 自治 体(都 道 府 県 も し く は 道 州) 一 政 府 に お け る権 限 分 担 を 再 確 定 し つ っ 、 「自 治 体 再 構 築 」 を 進 め る こ と が 求 め られ る 次 第 で あ る 。 そ の 意 味 で は 、 「国 会 内 閣 制 」へ の 転 換 は 、権 限 分 担 を め ぐ りタ フ な 政 治 的 対 立 が 展 開 す る 覚 悟 が 必 要 で あ る と と も に 、 新 政 権 に は 、 「分 節 政 治 」 を 機 能 させ る た め に も 、 「自 治 体 再 構 築 」 を助 長 ・促 進 す る 政 策 的 ・制 度 的 措 置 を 講 ず る こ と が 求 め られ る。. 4-4.「 国 会 内 閣 制 」に 基 づ く政 治 的 リー ダ ー シ ップ 第4に. 、現 実 的 な 政 治 的 条 件 と し て 、 「国 会 内 閣 制 」 に 基 づ く 政 治 的 リー ダ ー シ ッ プ 、 と りわ け 首 相 の 政. 治 的 リ ー ダ ー シ ッ プ が 求 め られ る。 松 下が. 「内 外 で 突 発 す る危 機 へ の 対 応 、 ま た 時 代 の 課 題 変 化 が は や い た め 、 省 庁 間 の ス キ マ ・共 管 事 項. の 拡 大 、 つ い で 今 日急 務 の 政 治 ・行 政 改 革 を め ぐ っ て 、 総 合 調 整 な い し指 揮 に は 首 相 ・内 閣 と い う政 治 主 導 軸 の 形 成 が 不 可 欠 」 で あ る と指 摘 す る(松. 下1998:82)。. 実 際 、 小 泉 政権 下 で は 、 これ ま で の 自民 党 政. 治 と は 異 な り、 小 泉 構 造 改 革 の 司 令 塔 と 目 され た 経 済 財 政 諮 問 会 議 を 拠 点 と す る 首 相 の 政 治 的 リー ダ ー シ ップ 、す な わ ち. 「 官 邸 主 導 」 が 顕 揚 され た 経 緯 が あ る。 こ の 政 治 的 な 流 れ に 乗 りな が ら 、 鳩 山 政 権 は. 「官. 僚 主導 」 を廃 し 「 政 治 主 導 」 を 主 張 す る。 そ れ に し て も 、 「国 会 内 閣 制 」 と 、首 相 や 政 権 与 党 の 政 治 的 リー ダ ー シ ッ プ と が ど う関 係 す る の で あ ろ う か 。 そ も そ も 、 「国 会 内 閣 制 」 は 、 市 民 を 起 点 に 議 員 が 選 出 され 、 そ の 市 民 よ り く信 託 〉 を 受 け た 議 員 が 国 会 を 構 成 し 、 ま た 首 相 を 選 出 し た 上 で(市. 民 → 議 員 → 国 会 → 首 相)、 首 相 が 内 閣 を 組 閣 し 、か っ 首 相 と 内 閣.
(11) 51. が 官 僚 を 統 制 す る と い う よ うに(首. 相 ⇒ 内 閣 ⇒ 官 僚)、 首 相 を い わ ば 権 力 ・権 限 の 頂 点 に 位 置 付 け る仕 組 み. で あ る。 尚 、 鳩 山 政 権 の 場 合 、 「 官 僚 内 閣 制 」 に 対 す る 「国 会 内 閣 制 」 と 、 「官 僚 主 導 」 に 対 す る 「政 治 主 導 」 と が ち ょ う どパ ラ フ レー ズ に な っ て い る こ と に 気 付 く。 そ うす る と、 官 僚 を 統 制 す る 点 に お い て 、 「国 会 内 閣制 」 と 「 政 治 主 導 」 と は 同 義 語 で あ る と い え る。 注意 を払 わ な けれ ば な らな い の は 、松 下 の. 「国 会 内 閣 制 」 が 、 あ く ま で も 市 民 を 起 点 に 据 え て い る 点 で. あ る 。 こ の こ と の 意 味 は 重 大 で あ る。 か つ て の 自 民 党 政 権 に お け る 首 相 は 、 基 本 的 に 、 派 閥 力 学 か ら 選 出 され た. 「 調 整 型 首 相 」 で あ り、 首 相 の 政 治 的 リー ダ ー シ ッ プ は 期 待 され な か っ た 。 も と も と 、 党 内 に お け. る 権 力 の 源 泉 は 派 閥 に あ り、 ま た 政 策 に お け る権 力 は 族 議 員 に 帰 属 し て い た 。 ま た 、 比 較 的 短 命 で 首 相 が 交 代 し た た め 、 首 相 の 政 治 的 リー ダ ー シ ッ プ は 発 揮 し に く か っ た 事 情 も あ る。 しか し、 市 民起 点 の. 「国 会 内 閣 制 」 に お け る 首 相 は 、 基 本 的 に 、 選 挙 を 通 じて 選 ば れ た 多 数 党 の 党 首 が. 市 民 か ら く 信 託 〉 を 受 け た か た ち で 就 任 す る 。 「国 会 内 閣 制 」 の 首 相 は 、大 統 領 制 に お け る行 政 府 の 長 た る 大統 領 とは 異 な る もの の 、 立法 府 お よび行 政 府 の頂 点 に 君 臨 す る大統 領 以 上 の 強 大 な権 限 を 有す る、 い わ ば 「大 統 領 的 首 相 」 とい え る 。 そ れ 故 に 、 「国 会 内 閣 制 」 に お け る 首 相 は 、 当 初 よ り 、 強 い 政 治 的 リー ダ ー シ ッ プ を 市 民 よ り授 権 され た と 考 え られ る。 そ うす る と 、 「国 会 内 閣 制 」 の 首 相 に は 、政 策 ・レ ジ ー ム 転 換 を 断行 しえ る 強 大 な権 限 を適 切 に行 使 す る こ とが期 待 され る と と もに 、 同 時 に決 して権 力 の濫 用 とな らな い よ うに 、 そ れ こ そ 諸 刃 の 剣 を 取 り扱 うか の ご と く 、 高 度 な. 「 政 治 的 習 熟 」 が 求 め られ る の で あ る。. い ず れ に して も 、 問 題 と な る の は 、 期 待 され る 首 相 の 強 い 政 治 的 リー ダ ー シ ッ プ が 、 所 期 の 目的 で あ る マ ニ フ ェ ス トを 実 現 し つ つ 、 官 僚 に 対 す る適 切 な 統 制 、 市 民 社 会 の 強 化 、 分 節 政 治 と 自 治 体 戦 略 の 再 構 築 に 寄 与 し 、 併 せ て 首 相 自身 の 権 力 の 濫 用 を い か に 防 ぐ か 、 と い う政 治 的 経 験 に 余 りに も 乏 し い と こ ろ で あ る。. 4-5.「 市 民 自 治 の 憲 法 理 論 」 第5に. 、 現 実 的 な 政 治 的 条 件 と し て 、 「市 民 自治 の 憲 法 理 論 」 が 上 げ ら れ る。. 市 民起 点 の. 「国 会 内 閣 制 」 と い う立 論 は 、 か っ て 松 下 が 主 張 し た. 蘇 らせ た 。 松 下 は 、 日本 の 政 治 学 が な い 」(松 下1975:142)と. 「市 民 自 治 の 憲 法 理 論 」 と い う立 論 を. 「 政 治制 度 の骨 格 構 成 た る憲法 構 造 を め ぐ る憲 法理 論 を構 築 しえて い. 看 倣 し、 憲法 を. 定 め る基 本 で は な い 」(松 下1975:150)と の 発 想 の 完 全 な 欠 如 」(松 下1975:4)の. 「市 民 自治 の 基 本 準 則 」 と捉 え 返 し つ つ 、 「国 家 の 統 治 体 制 を 切 り返 す 。 こ こ か ら 、 松 下 は 、 戦 後 の 憲 法 学 が. 上 に 、 「実 質 的 に は 国 ・中 央 政 府 の 統 治 権 か ら 出 発 す る 戦 前 以 来. の 官 治 的 既 成 政 治 体 質 と 同 型 性 を も っ て い る よ うに 思 わ れ る 」(松 下1975:117)と 憲 法 に よっ て 定 め られ た 国 民 主権 が. 「『市 民 自 治 』. 指 摘 し な が ら 、 日本 国. 「国 家 主 権 」 へ 転 化 し て い る憲 法 学 の 現 状 を徹 底 的 に 批 判 し た 。 そ し. て 、松 下 は 、 「市 民 自治 こ そ が 、 憲 法 の 組 織 原 理 た る 国 民 主 権 の 中 核 と し て の デ モ ス の 支 配 の 内 実 で な け れ ば な ら な い 。 こ の 市 民 自 治 は 国 家 統 治 と 対 決 す る政 治 の 構 成 原 理 な の で あ る 」(松 下1975:93)と. 喝破 し、. 市 民 自治 と 日本 国 憲 法 と を 結 合 させ た 。 憲法前文 の. 「そ も そ も 国 政 は 、 国 民 の 厳 粛 な 信 託 に よ る も の で あ っ て 、 そ の 権 威 は 国 民 に 由 来 し、 そ の. 権 力 は 国 民 の 代 表 者 が これ を 行 使 し 、 そ の 福 利 は 国 民 が こ れ を 享 受 す る 」 と 、 第41条 最 高 機 関 で あ っ て 、 国 の 唯 一 の 立 法 機 関 で あ る 」、 お よ び 第67条 国 会 の 議 決 で 、 これ を 指 名 す る 」、 並 び に 第68条. の. の 「国 会 は 、 国 権 の. 「内 閣 総 理 大 臣 は 、 国 会 議 員 の 中 か ら. の 「内 閣 総 理 大 臣 は 、 国 務 大 臣 を 任 命 す る 」 と第72条. の. 「内 閣 総 理 大 臣 は 、… … 行 政 各 部 を 指 揮 監 督 す る 」を 、そ の ま ま 忠 実 に 読 め ば 、市 民 起 点 の 「国 会 内 閣 制 」 が 正 し い 憲 法 解 釈 と い え る。 した が っ て 、 「官 僚 内 閣 制 」 が イ ン フ ォ ー マ ル な 統 治 レ ジ ー ム と し て 確 立 し て い る こ と 自 体 、違 憲 状 態 な の で あ る。 松 下 は 、 「整 憲 」 と い う立 場 か ら 、 日本 国 憲 法 を 市 民 起 点 の 「国 会 内 閣 制 」 に 基 づ く 憲 法 で あ る と 改 め て 示 した(松. 下1975)。.
(12) MemoirsofTheFacultyofB.0.S.T.ofKinkiUniversityNo.25(2010). 52. 尚 、 戦 後 憲 法 学 の 現 状 を 容 赦 な く批 判 し た 松 下 の 『市 民 自 治 の 憲 法 理 論 』(1975年)を 隔 世 の 感 す ら あ る 。 例 え ば 、 憲 法 学 者 の 辻 村 み よ子 に よ る 一 定 の 外 国 人 を 含 め た 主 権 を 解 釈 す べ し と い う主 張(辻. 村2002;辻. 村2008)は. 改 め て 読 む と、. 「市 民 主 権 」 に よ り国 民. 、松 下 の 市 民 概 念 の 拡 張 と も い え る 。 ま た 、 同 じ. く 高 橋 和 之 に よ る 議 院 内 閣 制 の 直 接 民 主 政 的 運 用 を 目指 す. 「国 民 内 閣 制 」 の 提 案(高. 橋2006)は. 、松 下 の. 立 論 に 近 い も の が あ る。 し か も 、 「日本 国 憲 法 の 定 め る議 院 内 閣 制 は 、 『国 民 内 閣 制 』 的 に 運 用 さ れ な け れ ば な ら な い 」(高 橋2006:63)と. い う高 橋 が 、 「日本 国 憲 法 は 、 内 閣 が 行 政 権 の 担 い 手 と して 、 行 政 機 構 の. ト ッ プ に 立 ち 、 官 僚 を 統 制 す る シ ス テ ム を 想 定 し て い る は ず で あ る 」(高 橋2006:89)と し、 高 見勝 利 は て 、む しろ. 指 摘 す るの に 対. 「 積 年 の 官 僚 政 治 を 克 服 す る 方 策 と し て 、 い さ さ か 素 朴 に 過 ぎ る 」(高 見2008:73)と. 「 政 権 か ら疎 外 され た 野 党 こ そ が 官 僚. し. 『統 制 』 の 主 体 と な り う る も の で あ り、 し か も 、 そ の 究. 極 の 基 礎 は 、 高 橋 の 考 え る よ うな 、 『国 民 多 数 派 の 意 思 』 で は な く 、 そ の 『少 数 派 の 意 思 』、 と き の 政 府 に 対 し て 批 判 的 な 国 民 意 思 に こ そ 求 め られ る べ き で あ ろ う」(高 見2008:78)と 者 に よる. 対 置す る と ころ は 、 憲 法 学. 「 政 治 制 度 の 骨 格 構 成 た る 憲 法 構 造 を め ぐ る憲 法 理 論 」 の 論 争 と し て 大 変 興 味 深 い も の が あ る。. 但 し 、 高 見 が 野 党 に 官 僚 統 制 を 求 め る の は 、 現 実 の 政 治 過 程 か ら遊 離 し た 議 論 で あ り、 か っ ま た. 「素 朴 」. な 純 粋 理 論 上 の 展 開 で あ る。. 4-6.市 第6に. 民 文 化 お よび 日 本 文 化 、 現 実 的 な 政 治 的 条 件 と して 、 市 民 文 化 お よ び 日本 文 化 の 成 熟 が 上 げ ら れ る。. 市 民 自治 の 充 実 は 、 市 民 文 化 の 成 熟 に 裏 付 け られ る が 、 日本 文 化 と の 関 係 性 が 問 題 と な る。 こ の 点 、 松 下 は 、 「日本 文 化 と別 に 市 民 文 化 が 存 在 す る の で は な い 」 と い う(松. 下1985:30)。. 「市 民 文 化 と い う文 化. 自体 は 存 在 し え な い 。 今 日の 日本 に お い て 存 在 す る の は 、 た え ず 変 わ りつ つ あ る 現 代 日本 文 化 が あ る だ け で あ る。 こ の 現 代 日本 政 治 文 化 の 担 い 手 で あ る個 々 の 人 々 の 政 治 イ メ ー ジ の あ り方 と して の 市 民 文 化 が 問 わ れ 、 さ ら に 市 民 型 へ の 日本 文 化 の 変 容 が め ざ され て い る の で あ る 」(松 下1985:31)。 民 文 化 は 日本 文 化 の 市 民 文 化 化 と し て 成 熟 し う る の み で あ る 」(松 下1985:303)、. し た が っ て 、 「市. と い うわ け で あ る 。 そ. こ で 、 次 の 松 下 の 指 摘 を み て み よ う。. 緑 が 少 な く 、 電 柱 が 乱 立 し 、 広 告 に あ ふ れ る 日本 の 都 市 景 観 を 、 あ ら た め て 想 起 し て く だ さ い 。 い わ ば 文 化 水 準 の 中 進 国 型 貧 し さ が 、 そ こ に あ りま す 。 日本 の 省 庁 が つ く る 法 制 の 低 水 準 に み あ っ て 、 こ の 地 域 景 観 に は 市 民 文 化 の 未 熟 と い う私 文 化 構 造 を み る べ き で し ょ う。文 化 の カ タ チ は 、地 域 つ ま り都 市 ・ 農 村 の カ タ チ と して. 「見 え る 」 わ け で す 。 市 民 文 化 の 成 熟 は そ れ ゆ え 、 市 民 型 の 政 策 ・制 度 に よ っ て 美. し い 景 観 を 造 型 し ま す(松. 下2006:70)。. 都 市 の 景 観 は 芸 術 作 品 で あ る。 中 世 ヨ ー ロ ッ パ の 街 並 み を 継 承 す る ヨ ー ロ ッ パ の 都 市 、 例 え ば 、 ドイ ツ の フ ラ イ ブ ル グ 、 オ ー ス ト リア の ウ ィ ー ン 、 チ ェ コ の プ ラハ や 、 ハ ン ガ リー の ブ タ ペ ス ト、 ス ペ イ ン の ト レ ド、 イ タ リア の フ ィ レ ン ツ ェ 、 ポ ー ラ ン ドの ク ラ ク フ 等 々 、 例 を あ げ れ ば 枚 挙 に い と ま が な い ほ ど で あ る が 、 都 市 景 観 は さ な が ら 芸 術 作 品 と い うべ き 美 し さ と気 品 を 備 え て い る。 これ に 対 し て 、 日本 の 都 市 景 観 は カ オ ス で あ る 。 ヨ ー ロ ッパ に お い て 、 都 市 景 観 は 、 あ く ま で も公 共 空 間 で あ り、 そ こ で は 私 的 建 築 物 の 外 観 や 営 利 活 動 、 ク ル マ の 利 便 性 に 至 る ま で 規 制 ・制 約 さ れ て 当 然 で あ る と い う市 民 文 化 が 厳 然 と 存 在 して い る。 松 下 が い う よ うに 、市 民 文 化 の 成 熟 は 、 「市 民 型 の 政 策 ・制 度 に よ っ て 美 しい 景 観 を 造 型 」 す る こ と に よ っ て 確 証 で き る が 、 そ れ は 日本 文 化 の 変 容 に も連 動 す る こ と で あ る。 翻 れ ば 、 都 市 景 観 の 在 り方 は 、 市 民 起 点の. 「国 会 内 閣 制 」 の 状 況 を は か るベ ン チ ・マ ー キ ン グ と も い え る で あ ろ う。 今 後 、 日本 の 都 市 景 観 が.
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