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大学・高専用教科書におけるMOSFETの動作原理の記述について

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Academic year: 2021

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1 はじめに

半 導 体 産 業 に お い て MOSFET( metal-oxide-semiconductor field effect transistor)を用いた CMOS 集積回路は主要な製品となっている。そのため、半導体 産業に携わる技術者にとって MOSFET の動作の理解は 必須であるといえる。MOSFET はゲート下のチャネル 中に誘起される電荷量の変化によりドレイン電流を制御 する素子である。しかし、一部の大学・高専用教科書で は“反転層の厚さによりドレイン電流が制御される”と いうふうに“表面電位が大きくなると、反転層の厚さは 大きくなる”という誤った理解により MOSFET の動作 を記述しているものがある。 また、MOS 構造の表面電位の増加により反転層の厚さ が小さくなり、電子のド・ブロイ波長程度になると、電 子が MOS 構造表面に局在する表面量子化が発生する1) この現象は“表面電位が大きくなると、反転層の厚さは大 きくなる”という誤った説明にもとづくと理解できない。 本稿ではこの MOSFET の動作原理が誤っている根拠 を示し、さらに誤っている記述の具体例を報告する。 2 MOSFET の動作原理 MOSFETのドレイン電流 ID はゲート幅を W、伝導キ ャリアの移動度を n、基板表面に沿った電界を E、チャ ネル中の伝導キャリアの総電荷量を QIとすると、以下 の式で表わされる2) (1) つまり、QI がドレイン電流を制御することになる。 QIを単位面積当たりの電荷量に換算したものを Qsとす ると、Qs は MOS 構造表面の電界 Esと半導体の誘電率 fsより (2) とかける3)。p 形基板を用いた MOS 構造の表面電界 Es は以下の式で与えられる。 (3) (4) kT q _ b sgn , E qL kT F p n 2 s s p p s D 0 0 = ^}h db} n Qs= - fsEs ID=WQInE (5) ここで、q は単位電荷、k はボルツマン定数、T は絶 対温度、LDはデバイ長、pp0は p 形半導体中の正孔密度 (平衡状態)、np0 は p 形半導体中の電子密度(平衡状 態)、}s は表面電位、sgn は符号関数である。また、 は、以下の式で定義される関数である。 (6) 以下では、半導体表面における式(6)の値を Fsとする。 つまり、 (7) である。これより、単位面積当たりの反転層の電荷量 Qsは (8) となる。 MOS 構造において反転層が形成される範囲は、p 形 基板のフェルミ準位を }B とすると、電位 }が (9) となる範囲である。}B はアクセプタ密度 NAと真性キャ リア密度 niを用いると、以下の式で表わされる。 (10) MOSFET の動作時、すなわちチャネルが形成されて いる時は、半導体表面は強反転状態になっている。そこ で、半導体表面付近の電位}は、表面付近では三角近似 を用いて (11) と表わされる。ここで、x は表面からの距離である。こ のとき、半導体表面の電子密度 nsと半導体内部での電 子密度 n は、 qE x s s = -} } ln q kT n N i A B= } > 2 B } } sgn Q qL kT F 2 s s D s s = - ^ h} f , Fs F s npp p0 0 = db} n exp 1 pn exp 1 0 / p p 0 0 1 2 $ -b}+b}- + b}-b} -^ _ h i _ ^ h i < F , F np p p 0 0 _ b} d n , F np p p 0 0 b} d n L p q kT qp p p D s s 0 2 0 = f = b f

大学・高専用教科書における MOSFET の

動作原理の記述について

大豆生田 利章

* (2007年11月30日受理) *電子情報工学科

(2)

THE GUNMA-KOHSEN REVIEW, No. 26, 2007 18 群馬高専レビュー・№26(2007) (12) (13) と表わされる。 反転層の厚さ lIは}が }s から }Bとなるまでの距離で あるので、 (14) となる。アクセプタ密度を 1022/m3と仮定して、表面電 位 }s と反転層の厚さ lI の関係を式(14)にもとづき計 算した結果が図1である。 強反転状態では Fs は、 (15) と近似できるので、 (16) となり指数関数的に減少することがわかる。 以上で述べたことをまとめると、表面電位 }s がチャ ネルを形成するぐらい十分に大きくなると (17) (18) となり、反転層の厚さ lI は指数関数的に減少し、反転層 表面の電子密度 ns は指数関数的に増加する。表面電位 }s に対する反転層の厚さ lI と表面電子密度 ns の関係は 図2のようになる。ただし、グラフの縦軸は }s=0.7eV の値で正規化している。つまり、直感的な理解に反して 表面電位が大きくなると、反転層の厚さは小さくなる。 そして、誘起電荷量の表面電位の変化に対する影響は、 反転層の厚さの影響よりも、電子密度の変化の影響が大 きいことがわかる。これは、MOSFET のドレイン電流 の変化が“反転層の厚さ(チャネル幅)で決まる”とい う説明は正しくないことを意味している。反転層の誘起 電荷量QI は以下の式ように表面電位 }sとともに、指数 関数的に増加するが、これは以上に述べたように表面に exp ns3 ^b}sh / exp lI3 ^- b}s 2h exp l L q kT np 2 2 2 D I s B p p s 0 0 $ $ = ^} - } h c-b} m exp F np 2 p p s s 0 0 ] cb} m l q qE2 L q kT F 2 2 1 I s s B s B s D $ $ = ^} - } h= ^}- } h exp n=ns ^- bE xs h exp ns=np0 ^b}sh 誘導される電子の量の急増によるものである。 (19) 式(1)にしたがい、QI の変化がドレイン電流 IDの変化 になる。つまり、“MOSFETのドレイン電流 IDは反転層 に誘導される電荷量で決まる”という説明がMOSFET の正しい動作原理の説明になる。 3 MOSFET の動作原理の記述例 以下に、MOSFET の動作原理を誤って記述している 例を示す。正しい動作原理を記述してある書籍もあるが、 それらに関しては省略する。なお、これらは著者の手元 にある書籍より引用したものであり、網羅的に文献を調 べたものではない。 ¡ゲート電圧を上げれば反転層は厚くなるので、チャネ ルが太くなってドレイン電流が増し、ゲート電圧を下 げれば反転層が薄くなるのでドレイン電流は減り、あ るゲート電圧でドレイン電流は遮断される。4) ¡チャネルの厚さはゲートに印可される電圧 VGSによっ て制御され、ID-VGS特性は図(b)のようになる。5) ¡ゲート電圧が大きいほど、このチャネル幅は広くなり、 ID も大きくなる。 6) ¡ゲート電圧 EG を大きくしていくと、電圧が上昇した 分だけチャネルには自由電子が多く引き寄せられて、 チャネルの幅が広がる。7) ¡チャンネルはチャンネルとゲートの電位差に比例した 厚さをもつ。8) ¡チャネルが形成されると、VGS に比例してチャネル幅 も広がり ID も増加する。 9) ¡この電流通路(反転層)の幅は、ゲート電圧によって / exp QI3 ^b}s 2h 図1 表面電位 }sと反転層の厚さ lI の関係 図2 反転層の厚さ ls と表面電子密度 ns の表面電位 }sによる変化

(3)

大学・高専用教科書における MOSFET の動作原理の記述について 19 制御できることになる。10) ¡正のゲート電圧VGS が増加するに伴ってチャネル幅が 増加し、ソースからドレーンへの電子の流れは増加す るようになる。11) 4 まとめ 本稿では、MOSFET における電流制御の原理は反転 層に誘起される電荷量の変化によるものであり、チャネ ル幅の変化によるものではないことを導出した。これは、 一部の大学・高専用教科書に見られる MOSFET の動作 原理が誤っていることを示すものであり、そのような誤 った記述が書かれている具体例を挙げた。 接合型 FET(JFET)においてはチャネル幅の変化に よりドレイン電流が変化する。ここで示したような MOSFET に関する誤った記述は、MOSFET の動作原理 とJFETの動作原理を混同したものであるか、誤った記 述を検討せずに無批判に孫引きしたものであると考えら れる。 参考文献 1)佐々木昭夫、“量子効果半導体”、コロナ社、2000、 第2章. 2)古川静二郎、“半導体デバイス”、コロナ社、1982、 p.154.

3)S. M. Sze, “Physics of Semiconductor Devices 2nd Ed.”, John Wiley & Sons, 1981, Chap.7.

4)霜田光一、桜井捷海、“エレクトロニクスの基礎 (新版)”、裳華房、1983、p.148. 5)藤井信生、“アナログ電子回路”、昭晃堂、1984、 p.42. 6)石橋幸男、“アナログ電子回路”、培風館、1990、 p.61. 7)玉井輝雄、“図解による半導体デバイスの基礎”、コ ロナ社、1995、p.190. 8)安藤繁、“電子回路基礎からシステムまで”、培風館、 1995、p.66. 9)大類重範、“アナログ電子回路”、日本理工出版会、 1999、p.107. 10)中澤達夫、藤原勝幸、“電子工学基礎”、コロナ社、 1999、p.110. 11)高橋晴雄、阪部俊也、“機械系の電子回路”、コロナ 社、2001、p.92.

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THE GUNMA-KOHSEN REVIEW, No. 26, 2007 20

群馬高専レビュー・№26(2007)

Explanation of the MOSFET’

s Operation Shown

in Textbooks for Universities and Colleges.

Toshiaki OHMAMEUDA

The drain current of the metal-oxide-semiconductor field effect transistors(MOSFETs)are controlled by the gate voltage. In some textbooks for universities and colleges the reason of the above characteristics is explained due to the change of the inversion layer thickness as “the current increases with the increase of the inversion layer thickness.” However this explanation is wrong. The right explanation why the drain currents are controlled by the gate voltage is that the total charge density induced in the inversion layer exponentially increase with the surface potential. In this paper why the explanation using the inversion layer thickness is wrong, and the right explanation is induced. In addition some examples of those wrong explanation are shown.

参照

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