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見通し外MF帯放送波の伝搬異常と大規模地震の関連性解析

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Academic year: 2021

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令和2年度 修士論文

見通し外 MF 帯放送波の

伝搬異常と大規模地震の関連性解析

指導教員 本島 邦行 教授

群馬大学大学院理工学府理工学専攻

電子情報・数理教育プログラム

修士 2 年 T191D026

小池 雄大

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目次

1. 序論 ... 1 2. 観測データ ... 2 3. 解析方法 ... 7 3.1. MF 帯放送波と電離層の関係 ... 7 3.2. 観測データに対する処理 ... 9 3.3. 伝搬異常判定方法 ... 10 3.4. 閾値選定方法 ... 12 3.4.1 太陽活動による影響の考慮 ... 12 3.4.2 閾値の決定 ... 14 4. 解析対象地震 ... 16 4.1. 地震規模を考慮しない地震選定範囲 ... 16 4.2. 地震規模を考慮する地震選定範囲 ... 17 5. 評価方法 ... 19 5.1. 異常期間の定義 ... 19 5.2. 警報期間・関連付け期間長𝒕𝒑𝒆𝒓・予知率 ... 20

5.3. Molchan’s Error Diagram ... 21

6. 解析に用いるパラメータの決定 ... 23 6.1 関連付け期間長𝒕𝒑𝒆𝒓の決定 ... 23 6.2 解析対象地震を定める定数𝛂の決定 ... 26 6.3 停波の扱いについて ... 28 7. 解析結果 ... 29 7.1 札幌テレビ放送波の解析結果 ... 29 7.2 NHK 秋田第2放送波の解析結果 ... 34 8.結論 ... 39 9.今後の課題 ... 40 謝辞 ... 41 参考文献 ... 42

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1

1. 序論

日本は複数の海洋及び大陸プレートの境界上に位置することから、これまでに阪神淡路 大震災をはじめとした多くの巨大地震が発生しており、そのたびに甚大なる被害がもたら されてきた。さらに、2011 年に発生した東日本大震災では地震に伴う津波の発生により数 多くの人命が失われ、多くの人々が長い避難生活を余儀なくされた。気象庁では、地震によ る被害を抑えるために緊急地震速報を発表しており、地震の発生をいち早く伝えることで 避難時間を確保する工夫がなされている。しかし、地震発生を受けてから警報を出すシステ ムは震源付近における実用性が低く、地震発生を予測するための研究が進められている。 地震予測に関する先行研究では、様々な事象を対象として地震の前兆現象の有無が探ら れている。群馬大学では GPS 波を用いた電離層総電子数の時間変化量から東日本大震災発 生後に特異な現象を確認した(1)。また、他の先行研究から VLF 帯放送波の変動と地震発生 との関連性について多くの報告がされている(2)(3)(4)。このように、電離層と関係した解析で は、特異な現象と地震の関連性を示唆する報告がなされている。 本稿では、MF 帯放送波の電波伝搬異常と大規模地震との関連性を調査し、地震の発生が 電離層に影響を与えるのか検証する。MF 帯放送波における電波伝搬異常を新たに定義し、 電波伝搬異常の検出を行う。また、MF 帯放送波は電離層に深く関係しているため太陽活動 によりデータに偏りが生じる。そのため太陽活動を考慮し、電波伝搬異常と地震の関連性を 調査する。 電波伝搬異常と地震の関連性を示す評価方法に関して、過去に予知率及び確率利得を用 いた報告(5)、Molchan’s Error Diagram を用いた報告(6)がされている。したがって本稿でも

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2

2. 観測データ

本稿で扱う MF 帯放送波の観測データは、日本各地の電波塔から送信されている様々な 放送波の一部である。現在、群馬大学桐生キャンパスの屋上に設置したループアンテナによ り、MF 帯放送波の受信電力を 24 時間体制で計測している。群馬大学桐生キャンパスで観 測している MF 帯放送波を以下の表 2.1 に示す。 各地に存在する電波塔から送信される様々な MF 帯放送波を、群馬大学桐生キャンパス 屋上にて設置したアンテナにより受信している。そこでスペクトラムアナライザを用いる ことで、受信した電波の受信電力[dBm]を計測している。計測した受信電力データは本研究 室サーバに蓄積される他、研究室のホームページへのアップロードを行っている。 図 2.1 に各送信点及び受信点の位置関係を示す。さらに、図 2.2 に MF 帯放送波の受信電 力を計測している観測システムについて、群馬大学桐生キャンパスの観測システムを例に 概略図を示す。 また、図 2.3 に観測地点ごとの実際の観測波形を示す。NHK 福岡第1放送波の観測波形 を図 2.3(a)、NHK 秋田第2放送波の観測波形を図 2.3(b)、CBC ラジオ放送波の観測波形を 図 2.3(c)、RCC 中国放送波の観測波形を図 2.3(d)、札幌 TV 放送波の観測波形を図 2.3(e) とする。また、観測波形は 2016/3/20 に観測したデータとする。 表 2.1 観測中 MF 放送波一覧 放送局 放送波(Frequency) NHK 東京 NHK東京第1放送(594kHz) NHK 福岡 NHK福岡第1放送(612kHz) NHK 大阪 NHK大阪第1放送(666kHz) NHK 秋田 NHK秋田第2放送(774kHz) CBC 名古屋 CBCラジオ放送(1053kHz) RCC 中国 RCC中国放送(1350kHz) 札幌 TV 札幌TV放送(1440kHz)

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3 図 2.1 の赤くプロットした点が、群馬大学桐生キャンパスを表している。また、緑色の点 でプロットした点が本研究室で観測しているが本稿で解析していない放送波、青色の点で プロットした点が本稿で解析を行った放送波を表している。解析対象放送波を札幌テレビ 放送、NHK 秋田第2放送とした理由は次の章にて記述する。 図 2.1 観測中 MF 放送波及び受信点の位置関係

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4

(a) NHK 福岡第1放送観測波形(612kHz)

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5

(c) CBC ラジオ放送観測波形(1053kHz) (b) NHK 秋田第 2 放送観測波形(774kHz)

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6

(d) RCC 中国放送観測波形(1350Hz)

(e) 札幌 TV 放送観測波形(1440kHz)

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7

3. 解析方法

前章では、本研究室で観測している MF 帯放送波の観測波形を記載した。MF 帯放送波の 一日の波形を確認すると、昼間は受信電力が低く、夜間は受信電力が高くなっている。また、 図 2.2 から夜間の受信電力が高い(他の放送波に比べ、安定して電波を受信することができ ている)放送波は、NHK 秋田第2放送、札幌テレビ放送の 2 つの放送波であった。図 2.2 か ら、この 2 つの放送波は夜間に-90[dBm]程を観測しているが、他の放送波は夜間に-100[dBm]を下回る時間帯が長く、昼間の受信電力と夜間の受信電力の差が小さいことが確 認できる。 そのため、本稿で扱う MF 帯放送波は、札幌テレビ放送(1440kHz)と NHK 秋田第2放送 (774kHz)とした。また、受信点は上記のように両放送波とも群馬大学桐生キャンパスであ る。以下に述べる解析方法から評価まで両放送波に対して同様の処理を行う場合は、札幌テ レビ放送を例として説明する。 3 章では、MF 帯放送波の性質、MF 帯放送波の伝搬異常の定義、MF 帯放送波の伝搬異 常と地震の関連性の検証を行うための解析方法について記述する。

3.1. MF 帯放送波と電離層の関係

MF 帯放送波は放送法の第 2 条第 16 号(7)において、「526.5kHz から 1606.5kHz までの周 波数を使用して音声その他の音響を送る放送」と定義されている。電波の伝わり方が安定し ていて遠距離まで届くため、主に AM ラジオ放送用として利用されている。 通常 MF 帯放送波の電波伝搬は、昼間・夜間で異なり、昼間では隣県程の範囲でしか受信 することはできないが、夜間ではその範囲が拡大する。これは昼夜における電離層の変化に 起因している。以下の図 3.1 に MF 帯放送波における昼間と夜間の伝搬の違いを表す例を 示した。 D 層は 60[km]~90[km]にある層で、昼間のみ存在する。MF 帯以上の電波に対して、減 衰層として働く。E 層は 90[km]~130[km]にある層で、昼夜問わず存在する。MF 帯放送波 に対して反射層として働く。そのため、昼間における MF 帯放送波(空間波)は図 3.1 のよ うな伝搬をする。昼間の MF 帯放送波は、D 層によって減衰した後 E 層で反射し、その後 さらに D 層で減衰するため遠距離に伝搬することはない。夜間における MF 帯放送波(空 間波)は図 3.1.1 のような伝搬をする。夜間は D 層が消滅するため、電波が減衰することな く E 層で反射される。したがって、夜間は電波が遠方まで伝搬する。

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8 実際の観測波形を用いて、昼間と夜間ではどのように受信電力が変化するかを説明する。 以下の図 3.1.2 に受信電力波形及び日出/日没時刻を示す(観測波形は 2016/3/20 に観測 したデータとする)。 図 3.1.2 から、D 層の出現と消失が MF 帯放送波に大きな影響を与えていることが確認で きる。MF 帯放送波においては、以上のような受信電力の変動が毎日繰り返されているため、 この性質を用いて伝搬異常の判定を行っていく。また、日出/日没時刻に関しては、太陽の 赤道や近日点などの複数の要素を考慮する必要があり計算が複雑化するため、国立天文台 天文情報センター暦計算室(8)が予め上記の値を考慮し算出した値を用いることとする。なお、 日出/日没時刻の算出に用いる緯度経度は解析放送波の送信局の緯度経度を採用している。 図 3.1.1 MF 帯放送波の伝搬と電離層の関係 昼間の中波伝搬 夜間の中波伝搬 図 3.1.2 札幌 TV 放送観測波形(1440kHz)

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9

3.2. 観測データに対する処理

本研究室で観測したデータには、いままで例として記載している図からも確認できるよ うに、ノイズが含まれている。そのため、そのままのデータで解析を行うと特定の異常を見 落としてしまう可能性が高い。本稿では、解析前に 5 データ毎に移動平均を取り、データを 平滑化した後、解析を行う。以下の図 3.2 にデータを平滑化する前と後の 1 日の観測データ を示す(観測波形は 2016/3/20 に観測したデータである)。 (a) 平滑化前の観測データ (b) 平滑化後の観測データ 図 3.2 データの平滑化(5 データ毎)

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3.3. 伝搬異常判定方法

本稿で扱う MF 帯放送波の観測データから、伝搬異常を判定する方法について記述する。 以下の手順に従い、伝搬異常を判定する。 手順(1). 日没時刻の4時間前(開始時刻とする)の観測データを記録する。 手順(2). 開始時刻後、開始時刻で記録した受信電力よりも大きな受信電力を解析した場合、 その時の受信電力と時刻(この時刻を時刻(a)とする)を記録する。 手順(3). その後、時刻(a)で記録した受信電力よりも大きな受信電力を観測した場合、その 時の受信電力と時刻(この時刻を時刻(b)とする)を記録する。その後、時刻(b)よ りも大きな受信電力を観測した場合には、その時の受信電力と時刻を記録する。 以降、記録した受信電力より大きな受信電力を観測した場合、同様の手順を繰り 返す。 手順(4). 手順(3)で最終的に記録した受信電力と、日没時刻の受信電力を比較し、手順(3)で 記録した受信電力のほうが大きい場合、手順(3)で記録した時刻と日没時刻の“時間 差”を求める。以降、この時間差を時間差データとする。 手順(5). 手順(4)で求めた時間差データが予め定めた閾値を超えた場合、判定当日の日没時 刻から翌日の日没時刻までを“伝搬異常期間”と定義する。 以下に、伝搬異常判定方法の例を示す。図 3.3.1 に伝搬異常が発生していない時(時間差デ ータも存在していない)の例を、図 3.3.2 に伝搬異常が発生した時の例を示す。 図 3.3.1 伝搬異常なし

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11 なお、手順(1)で日没時刻の 4 時間前から観測データを記録している理由は、昼間のノイ ズを受信している時間帯から、MF 帯放送波を受信し受信電力が上昇するという変動を十分 に観測できるからである。 図 3.3.2 伝搬異常発生

∆𝒕 < 𝒕𝒉𝒓𝒆𝒔𝒉𝒐𝒍𝒅 𝒗𝒂𝒍𝒖𝒆

伝搬異常なし

∆𝒕 > 𝒕𝒉𝒓𝒆𝒔𝒉𝒐𝒍𝒅 𝒗𝒂𝒍𝒖𝒆

伝搬異常発生

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12

3.4. 閾値選定方法

3.3 節の手順(4)で述べた閾値は、その値を可変することで伝搬異常を“全く出さない状態” から、“全期間を異常とする状態”まで変化させることができる。このように閾値を変化させ ることで伝搬異常と大規模地震の関連性の評価を行う。この閾値を変化させる際、全期間を 通じて一定の閾値を定めると、異常の出やすい時期と出にくい時期が生じてしまう。これは、 太陽活動による影響により生じる現象であり、この方法では適切な異常判定を行うことが できない。したがって、3.4 節では閾値の選定方法について記述する。

3.4.1 太陽活動による影響の考慮

3.3 節に記述した方法により、時間差データを導出した場合、太陽活動は時間差データに 大きく影響する。2008 年から 2018 年の期間において、1 カ月毎に時間差データの平均を求 めた(平均時間差データとする)。その値をプロットしたグラフを図 3.4.1.1 に示す。 2009 年の時間差データに着目する。図 3.4.1.1 の最も左側にあるピークが 2009 年 1 月の 平均した時間差データである。その値は、約 1800[s]を記録している。同年における最も低 い平均時間差データを確認する(2009 年 9 月)と、約 450[s]を記録している。したがって、 同年の異なる観測月を比較すると約 1300[s]時間差データが異なっていることが確認でき る。 このように、時間差データが大きく異なるのは季節ごとに太陽が電離層に与える影響が 異なることが考えられる。表 3.4.1 に季節ごとの日出時刻、日没時刻を示す。表 3.4.1 から、 冬季の日照時間が最も低いことが確認できる。したがって、冬季は太陽から受けるエネルギ ーが少なく D 層の発生時間も短いことが考えられる。そのため、冬季は昼間も受信電力が 一定とならない日が存在する。昼間も受信電力が一定とならない日の観測データを図 3.4.1.2 に示す。冬季にこのような現象が多く発生している。このような現象による誤った 異常判定を行わないため、季節変動の考慮が必要である。 表 3.4.1 季節ごとの日没時刻

date sunrise time[JST] sunset time[JST]

春分 2009/3/20 5:38 17:47

夏至 2009/6/21 3:55 19:18

秋分 2009/9/23 5:22 17:31

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13

図 3.4.1.1 平均時間差の変動

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14 さらに図 3.4.1.1 から、ピークの値が年ごとに異なることが確認できる。この年ごとの変 化も太陽活動に起因していることが考えられる。太陽活動の変動として、太陽の黒点数の増 減を表したグラフを図 3.4.1.3(9)に示す。図 3.4.1.3 は 1996 年から 2018 年の太陽の黒点数 の増減を示している。図 3.4.1.1 と図 3.4.1.3 を比較すると、黒点数が多い年には時間差デー タが低く、黒点数が少ない年には時間差データが高いことが確認できる。 したがって、年単位でも太陽活動に関係し時間差データが異なるため、太陽活動の考慮が 必要である。

3.4.2 閾値の決定

3.4.1 節より、太陽活動を考慮した閾値を設定する必要がある。本稿では正規分布の3σ 区間に基づく「3σによる閾値」と筆者が任意で決定する一定閾値である「可変型閾値」の 2 つの和を用いて閾値判定を行う。以下の図 3.4.2.1 に3σによる閾値の決定方法を示す。 図 3.4.1.3 黒点数の変動

(17)

15 図 3.4.2.1 のように前後 1 ヶ月のデータでから求めたσ値に基づく3σ区間を閾値として 判定を行う。この方法により、季節や太陽活動からの影響を考慮し、解析を行うことができ る。この方法によって求めた「3σによる閾値」と「可変型閾値」を設定することによって、伝 搬異常と地震の関連性を評価する際には伝搬異常の出現する頻度を変化させることができ る。以下の図 3.4.2.2 に前後 1 ヶ月の時間差データから求めた「3σによる閾値」と「可変型 閾値」を表した例を示す。 図 3.4.2.1 太陽活動による変動を考慮した閾値の選定方法 図 3.4.2.2 解析に用いた閾値

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4. 解析対象地震

伝搬異常と地震発生の関連性を評価する前に、どのような条件の地震が伝搬異常を引き 起こすかを検討する必要がある。そこで見通し外 MF 帯放送波に影響を与える地震は、電 波伝搬路近辺で発生したもので、かつ規模が大きいものであるという仮定のもと解析対象 とする地震の判定方法について述べる。なお、本稿では伝搬路から震央までの距離について 地震規模を考慮しない震央エリアと、考慮した震央エリアの 2 つの条件で定義を行う。 また、今回の解析対象とする地震はすべて大規模地震である。本稿では、大規模地震を “マグニチュード 6.0 以上”と定義する。 以下、解析対象地震選定範囲について記述する。

4.1. 地震規模を考慮しない地震選定範囲

地震データに対して「マグニチュードM」、「電波伝搬路から震央までの距離L[km]」の 条件を設け、解析対象とする地震の選定を行う。 「電波伝搬路から震央までの距離 L[km]」に対する伝搬路及び解析対象とする地震の震 源域を図 4.1 に示す。 図 4.1 地震規模を考慮しない地震選定範囲

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17

4.2. 地震規模を考慮する地震選定範囲

続いて、地震規模を考慮した地震選定範囲について記述する。地震の規模によって「電波 伝搬路から震央までの距離 L[km]」が変動する「マグニチュードを考慮した電波伝搬路か ら震央までの距離𝐿𝑀[km]」とする。「マグニチュードを考慮した電波伝搬路から震央までの 距離𝐿𝑀[km]」を定める式を次に示す(式(4.2))。 𝐿𝑀= 10𝛼𝑀[km] (4.2) 「マグニチュードを考慮した電波伝搬路から震央までの距離𝐿𝑀[km]」に対する伝搬路及 び解析対象とする地震の震源域を図 4.2 に示す。 図 4.2 では式(4.2)を導入した際の解析対象とする地震の震源域を表している。定数αの 値は例として 0.35 を用いた。実際の解析では”関連あり地震”と”関連なし地震”の位置関係 を確認しながら放送波ごとに設定する。定数αを 0.35 とした場合、図 4.2 で示した 3 つの 範囲の𝐿MはそれぞれM=6.0 で𝐿M=126[km]、M=6.5 で𝐿M=188[km]、M=7.0 で𝐿M=282[km] となった。このようにマグニチュードが大きい場合には解析対象とする地震の震源域が広 がり、マグニチュードが小さい場合には解析対象とする地震の震源域が狭まる。 α:定数 , M:マグニチュード 図 4.2 地震規模を考慮した地震選定範囲

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18 本稿では、解析対象とする地震を海岸線から 50[km]以内としている。これは、日本列島 の近くで発生した地震のほうが電波伝搬異常と関連していることが多かったことが理由で ある。また、海岸線から“50[km]”とした理由は海岸線からの距離 100[km]までを 10[km]ず つ変化させ全地震に対する関連あり地震の割合を調査した結果、50[km]までを解析対象と した場合が最も全地震に対する関連あり地震の割合が高かったからである。 本稿では、海岸線から 50[km]以内を陸域地震と定義し、海岸線から 50[km]以上を海洋 性地震と定義する。

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19

5. 評価方法

本稿では伝搬異常と地震の関連性を統計的に評価するための評価値として、予知率 (Prediction rate)、警報期間(Alarm period)、警報分率(Alarm rate)、確率利得(Gain of probability)を用いる。

5.1. 異常期間の定義

伝搬異常と地震を関連付ける期間を定義する。異常判定の定義を以下の図 5.1 に示す。 図 5.1 のように異常が発生した際、その日の日の出時刻から翌日の日の入り時刻までを異常 期間と定義する。 続いて、警報期間・関連付け期間長𝑡𝑝𝑒𝑟[days]・予知率について記載する。 図 5.1 異常期間の定義

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5.2. 警報期間・関連付け期間長𝒕

𝒑𝒆𝒓

・予知率

警報期間(Alarm period)とは、5.1 節で説明した伝搬異常の開始時刻から異常期間の終了 時刻に「関連付け期間長𝑡pe𝑟[days]」を加えた時刻までの時間長のことである。以下の図 5.2 に警報時間の例を示す。 ここで”+𝑡per”とは、伝搬異常の終了時刻後に加算する関連付け期間長のことであり、地 震発生前𝑡per[days]以内に発生した伝搬異常が”関連あり”と判定するために定義された時間 長である。例として𝑡per = 1[days]とした場合、伝搬異常発生時刻から伝搬異常の終了より 1 日後までに発生した地震を”関連あり”とみなす。𝑡perの日数の決定は 6 章にて定義する。 また、警報分率とは“全解析時間に対する解析期間中の総警報時間”の割合であり、式 (5.2.1)で示される。 警報分率=解析期間中の総警報時間 全解析時間 (5.2.1) 予知率とは、“解析対象となる地震総数に対する伝搬異常を伴った地震数”の割合で、式 (5.2.2)で示される。 図 5.2 警報期間・𝑡pe𝑟の定義

(23)

21

予知率=伝搬異常により予知された地震数

解析対象となる地震総数 (5.2.2)

5.3. Molchan’s Error Diagram

本 解 析 の 評 価 に お い て 重 要 と な る Molchan’s Error Diagram に つ い て 記 述 す る 。 Molchan’s Error Diagram を図 5.3 に示す。

Molchan’s Error Diagram は、図 5.3 のように「警報分率(Alarm rate)τ に対する予知 率(Prediction rate)ν」として表される。一般的に予知率は警報分率と共に増加し、ランダ ムな予測に対しては図 5.3 のように対角線で図示される。ランダムな予測による予知率と伝 搬異常に基づく予知率の比を確率利得 Gp(Gain of probability)と定義する。ここで各評価値 に基づいた Molchan’s Error Diagram における各線の導出方法について記述する。

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22 (1)ランダム推測(対角線) 図 5.3 における対角線のことであり、ランダムな予測に対して描かれる線である。この線 よりも上側に存在する予測は、予想される地震の割合が警報割合よりも大きいことを示し ており、ランダムな予測より関連性が有ることを意味する。 (2)伝搬異常による予測(赤線) 図 5.3 における赤線のことであり、伝搬異常に基づいた予測に対して描かれる線である。 また、筆者が任意で決定する一定閾値である「可変型閾値」を変化させることで伝搬異常発 生と判定される頻度を変え、その閾値での警報分率に対する予知率をプロットしたもので ある。 (3)信頼区間(青線・緑線・紫線) 図 5.3 における青線・緑線・紫線のことであり、信頼区間を表す線である。𝑥%信頼区間 とは𝑥%の信頼度という基準である区間を推定した場合、同様の条件で標本抽出を繰り返し た際、全真値の𝑥%が含まれる区間を表している。本稿では、伝搬異常と地震が無関係とい う仮定のもと、𝑥%の信頼度という基準で推定した際の残り(100 − 𝑥)%の区間外に含まれる 標本は確率統計において偶然には起こりえないと判断する。図 5.3 の青線が 95%信頼区間 線、緑線が 99%信頼区間線、紫線が 99.9%信頼区間線である。このことより図 5.3 の青線 で示した 95%信頼区間を伝搬異常に基づいた予測線(図 5.3 の赤線)が超えているものは伝 搬異常と地震の関連性が極めて高い予測であると評価できる。95%信頼区間線のみでも伝 搬異常と地震の関連性が極めて高いといえるが、さらに高い関連性を示唆するため 99%、 99.9%信頼区間も用いて評価を行う。 次に𝑥%信頼区間を導出する方法について述べる。解析期間中に地震がNeq回発生したと 仮定すると、警報時間中に発生する地震数は二項分布に従う。ゆえに解析期間中に地震が Neq回発生した場合の警報分率を τ とすると、警報時間中に n 回地震が発生する確率は式

(5.3)となる。Molchan’s Error Diagram では各警報分率に対して、Bin(n,τ)の二項分布にお ける確率式(5.3)を算出し、𝑥%信頼区間を図示する。

P(n) = (𝑁𝑒𝑞

𝑛 ) 𝜏

(25)

23

6. 解析に用いるパラメータの決定

続いて、本解析で使用する 5 章で述べた関連付け期間長𝑡𝑝𝑒𝑟、4 章で述べた解析対象地震 を定める定数𝛼を定める。

6.1 関連付け期間長𝒕

𝒑𝒆𝒓

の決定

𝑡perはすべての放送波に対して同様の日数とする。最も高い地震と伝搬異常の関連性を得

ることができる𝑡perの値を確かめる必要がある。本稿では、Molchan’s Error Diagram の結

果と各𝑡perにおける最も高い確率利得から𝑡perを定める。札幌テレビ放送の解析にて

𝑡per=1~30[days]で解析を行い、最も伝搬異常と地震の関連性が高いと評価できる𝑡perを採

用する。以下に解析条件、図 6.1.1 に各𝑡perにおける最大確率利得、図 6.1.2 に各𝑡perにおけ

る Molchan’s Error Diagram の結果を示す。

解析放送波:札幌テレビ放送(1440kHz) 解析期間:2008/06/01 ~ 2018/05/31 マグニチュード:6.0 以上 伝搬経路から震央までの距離:200km 以内 関連付け期間長tper: 1~30days 図 6.1.1 𝑡per= 1~30[days]における最大確率利得

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24

(d) 𝑡𝑝𝑒𝑟= 1~5[days] (e) 𝑡𝑝𝑒𝑟= 6~10[days]

(c) 𝑡𝑝𝑒𝑟= 11~15[days] (a) 𝑡𝑝𝑒𝑟= 16~20[days]

(b) 𝑡𝑝𝑒𝑟= 21~25[days] (f) 𝑡𝑝𝑒𝑟= 26~30[days] 図 6.1.2 𝑡per= 1~30[days] Molchan’s Error Diagram

(27)

25

図 6.1.1 から、𝑡per= 1~30[days]で解析を行った場合、各𝑡perにおける最大確率利得がほ

とんどの𝑡perで 2.0 以上となっていることが確認できる。その中でも確率利得が 3.0 付近を

記録した関連付け期間長が存在していた。その期間長、最大確率利得、最大確率利得を導出 した時の警報分率を以下の表 6.1.1 に示す。

表 6.1.1 から、5 つの𝑡perで高い確率利得が導出されたことを確認できる。

図 6.1.2 は𝑡per= 1~30[days]における 5 日ごとの Molchan’s Error Diagram である。図

6.1.2 の Molchan’s Error Diagram 、表 6.1.1 の最大確率利得から、本解析で扱う関連付け 期間長は、 𝑡per= 9[days] と設定する。 警報分率 確率利得 4 0.062 3.09 7 0.062 3.10 9 0.077 2.98 12 0.050 3.06 30 0.051 2.99 𝑡𝑝𝑒𝑟[days] 表 6.1.1 高い確率利得を導出した関連付け期間長

(28)

26

6.2 解析対象地震を定める定数𝛂の決定

解析対象地震を定める際のパラメータとして用いる“マグニチュードを考慮した電波伝搬 路から震央までの距離𝐿𝑀[km]”は定数𝛼により値が変化する。定数𝛼は“関連あり地震”と“関 連なし地震”の位置と地震規模の関係を確認し、最も高い関連性を得られる定数を設定する。 以下の図 6.2.1 に札幌テレビ放送での解析条件と地震の位置と地震規模の関係を表した図を 示す。 解析放送波:札幌テレビ放送(1440kHz) 解析期間:2008/06/01~2018/05/31 関連付け期間長tper:9[days] 警報分率:50% 4章の末尾に記述したように、図 6.2.1 では海岸線より 50km 以内の地震を陸域地震、 海岸線から 50km より遠い地震を海洋地震としている。図 6.2.1 から“関連あり地震”は 𝛼:0.35とした場合に、全地震に対する割合が最も高くなる。 したがって、札幌テレビ放送の解析ではα=0.35 と設定する。 図 6.2.1 電波伝搬路から震央までの距離と地震規模の関係(SapporoTV:1440kHz)

(29)

27 続いて、NHK 秋田第 2 放送での解析条件と地震の位置と地震規模の関係を表した図を示 す(図 6.2.2)。 解析放送波:NHK 秋田第2放送(774kHz) 解析期間:2008/06/01~2018/05/31 関連付け期間長tper:9[days] 警報分率:50% 図 6.2.2 から、NHK 秋田第2放送でも、𝛼=0.35とした場合に陸域地震の全地震に対す る“関連あり地震”の割合が最も高くなった。したがって、NHK 秋田第 2 放送の解析でも 𝛼=0.35と設定する。 図 6.2.2 電波伝搬路から震央までの距離と地震規模の関係(NHKakita2nd:774kHz)

(30)

28

6.3 停波の扱いについて

解析を行う前に、3 章の解析方法・5 章の評価方法記載の内容に加えて、停波の扱いに ついて以下記述する。 NHK 秋田第2放送波には、図 6.3 のように停波が存在する。 図 6.3 から確認できるように NHK 秋田第 2 放送では、午前 1 時頃~6 時頃において放 送を休止する時間帯が存在する。これを停波という。この停波は、NHK 秋田第 2 放送で は毎日存在するが、異常判定には日没時の観測データを使用するため、このような停波が 存在する日も解析対象とする。 5 章の評価方法に記載したように、本解析において解析対象となる時間帯は日没時刻の 4時間前から日没時刻までである。両放送波とも、異常判定に及ぼす時間帯で停波が存在 した場合にはその日を解析対象外とした。 図 6.3 2016/03/20 NHKAkita2nd 観測データ(移動平均)

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29

7. 解析結果

本稿で解析対象とする MF 帯放送波に対して、伝搬異常と地震の関連性解析を行った。 可変型閾値を設定することで伝搬異常の割合を 0~100[%]まで変化させることが可能とな る。また、地震選定範囲は 4 章で記載した2つの条件により解析対象地震を定める。 Molchan’s Error Diagram から 95%、99%、99.9%信頼区間を用いて伝搬異常と地震の 関連性を統計的に評価する。 解析対象地震を選定する条件の内、「マグニチュードM」、「電波伝搬路から震央までの 距離L[km]」を用いて定めた条件を解析条件Ⅰとする。「マグニチュードを考慮した電波伝 搬路から震央までの距離𝐿M[km]」を用いて定めた条件を解析条件Ⅱとする。

7.1 札幌テレビ放送波の解析結果

札幌テレビ放送波の解析結果を記載する。本稿では地震の選定方法を 2 つに分け、「マグ ニチュードM」、「電波伝搬路から震央までの距離L[km]」を用いる場合の解析と「マグニチ ュードを考慮した電波伝搬路から震央までの距離𝐿M[km]」を用いた場合の解析を行う。札幌 テレビ放送解析時に用いた解析条件を以下に記述する。 ●解析期間 ・2008/06/01 ~ 2018/05/31 ●解析放送波 ・札幌テレビ放送(1440kHz) ●送受信点 ・送信点:北海道札幌市(北緯 43 度 05 分 21 秒 , 東経 141 度 35 分 27 秒) ・受信点:群馬大学桐生キャンパス(北緯 36 度 25 分 26 秒 , 東経 139 度 20 分 57 秒) ●地震選択パラメータ ・マグニチュード:𝑀 ≥ 6.0 ・電波伝搬路から震央までの距離:𝐿 ≤ 200[km] または ・マグニチュードを考慮した電波伝搬路から震央までの距離:𝐿M= 100.35M

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30 上記の解析条件で解析を行った結果を以下の表 7.1 にまとめる。 解析放送波 札幌テレビ放送(1440kHz) 関連付け期間長 9[days] 解析条件 解析条件Ⅰ 解析条件Ⅱ 解析対象地震選定条件 M≥6.0 L≤200[km] 海岸線から 50[km]以内 LM= 100.35𝛼 海岸線から 50[km]以内 地震総数 26 13 警報分率 0.0773 0.0773 予知率 0.231 0.462 確率利得 2.98 5.97 表 7.1 では最も高い確率利得を示した条件を表している。また、警報分率が小さい場合 には確率利得が地震と伝搬異常の関連性の有無にかかわらず高くなってしまうため、警報 分率が 5%以上で最も確率利得が高い条件において評価する。確率利得は解析条件Ⅰで 2.98、解析条件Ⅱで 5.97 であった。すなわち、”マグニチュードを考慮した電波伝搬路か ら震央までの距離𝐿𝑀[km]”を用いて定めたほうが確率利得が高くなるということが確認で きた。

つづいて、2 つの解析条件における Molchan’s Error Diagram を図 7.1.1 に示す。 表 7.1 札幌テレビ放送の解析結果

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31

(a)解析条件 I Molchan’s Error Diagram

(b)解析条件Ⅱ Molchan’s Error Diagram

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32

図 7.1.1 の(a)に解析条件Ⅰの Molchan’s Error Diagram、(b)に解析条件Ⅱの Molchan’s Error Diagram を示している。図 7.1.1(a)から、解析条件Ⅰでは警報分率 0~20%にかけて 95%信頼区間を超えていることが確認できる。解析条件Ⅱでは 99%信頼区間をも大きく超 えており、99.9%信頼区間も超える警報分率が存在していることが確認できた。99.9%信 頼区間を超える警報分率の存在は、伝搬異常と地震の関連性を強く示唆するものであると いえる。また、確率利得と Molchan’s Error Diagram のどちらの評価からも解析条件Ⅰよ り解析条件Ⅱのほうが伝搬異常と地震のより高い関連性が確認できた。したがって、地震 の規模を考慮した地震選定範囲により定めた地震のほうが、より伝搬異常と高い関連性が あるといえる。

伝搬異常と関連のあった地震の位置関係を以下に示す。図 7.1.2 に解析条件Ⅰの地震の 位置関係、図 7.1.3 に解析条件Ⅱの地震の位置関係を示す。また、関連ありと判定された 地震は、Molchan’s Error Diagram から伝搬異常と地震の関連性が高く見られた、警報分率 10%における地震とする。

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33 図 7.1.2、図 7.1.3 の赤点の大きさは地震の規模を表している。図 7.1.2 にプロットされ ている最も小さい赤点は、M6.0 を示している。最も大きい赤点は、M7.4 を示している。 図 7.1.3 にプロットされている最も小さい赤点は、M6.2 を示している。最も大きい赤点は M7.4 を示している。 図 7.1.2 で北緯 35~36 度あたりでプロットされている規模の小さい地震は、図 7.1.3 で は除去されている。同様の処理が伝搬異常と関連のない地震にも適用されたため、マグニ チュードを考慮した地震選定条件のほうが良い結果が得られたと考えられる。 図 7.1.3 解析条件Ⅱ:伝搬異常と関連のある地震(警報分率 10%)

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34

7.2 NHK 秋田第2放送波の解析結果

NHK 秋田第2放送波の解析結果を記載する。札幌テレビ放送の解析と同様に地震の選定 方法を 2 つに分け、「マグニチュードM」、「電波伝搬路から震央までの距離L[km]」を用い る場合の解析と「マグニチュードを考慮した電波伝搬路から震央までの距離𝐿M[km]」を用い た場合の解析を行う。NHK 秋田第2放送解析時に用いた解析条件を以下に記述する。 ●解析期間 ・2008/06/01 ~ 2018/05/31 ●解析放送波 ・NHK 秋田第2放送(774kHz) ●送受信点 ・送信点:秋田県南秋田郡市(北緯 39 度 57 分 00 秒 , 東経 139 度 56 分 09 秒) ・受信点:群馬大学桐生キャンパス(北緯 36 度 25 分 26 秒 , 東経 139 度 20 分 57 秒) ●地震選択パラメータ ・マグニチュード:𝑀 ≥ 6.0 ・電波伝搬路から震央までの距離:𝐿 ≤ 200[km] または ・マグニチュードを考慮した電波伝搬路から震央までの距離:𝐿M= 100.35M 上記の解析条件で解析を行った結果を以下の表 7.2 にまとめる。

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35 解析放送波 NHK 秋田第2放送(774kHz) 関連付け期間長 9[days] 解析条件 解析条件Ⅰ 解析条件Ⅱ 解析対象地震選定条件 M≥6.0 L≤200[km] 海岸線から 50[km]以内 LM= 100.35𝛼 海岸線から 50[km]以内 地震総数 21 11 警報分率 0.0580 0.0773 予知率 0.190 0.364 確率利得 3.28 4.70 表 7.2 では最も高い確率利得を示した条件を表している。また、札幌テレビ放送の解析 と同様に、警報分率が小さい場合には確率利得が地震と伝搬異常の関連性の有無にかかわ らず高くなってしまうため、警報分率が 5%以上で最も確率利得が高い条件において評価 する。確率利得は解析条件Ⅰで 3.28、解析条件Ⅱで 4.70 であった。NHK 秋田第2放送波 でも、”マグニチュードを考慮した電波伝搬路から震央までの距離𝐿𝑀[km]”を用いて定めた ほうが確率利得が高くなるということが確認できた。

つづいて、2 つの解析条件における Molchan’s Error Diagram を図 7.2.1 に示す。 表 7.2 NHK 秋田第2放送の解析結果

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36

(a)解析条件 I Molchan’s Error Diagram

(b)解析条件Ⅱ Molchan’s Error Diagram

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37

図 7.2.1 の(a)に解析条件Ⅰの Molchan’s Error Diagram、(b)に解析条件Ⅱの Molchan’s Error Diagram を示している。図 7.2.1(a)、図 7.2.1(b)から 99%信頼区間を超える警報分 率が存在することが確認できる。さらに、図 7.2.1 から、どちらの解析条件でもほとんど の警報分率でランダム線を越えており、ランダムな予測よりも精度の高い結果となった。 また、札幌テレビ放送同様、確率利得から解析条件Ⅰより解析条件Ⅱのほうが伝搬異常 と地震のより高い関連性が確認できた。 伝搬異常と関連のあった地震の位置関係を以下に示す。図 7.2.2 に解析条件Ⅰの地震の位 置関係、図 7.2.3 に解析条件Ⅱの地震の位置関係を示す。また、関連ありと判定された地震 は、解析条件Ⅰの Molchan’s Error Diagram から伝搬異常と地震の関連性が高く見られた、 警報分率 40%における地震とする。

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38 図 7.1.2、図 7.1.3 の赤点の大きさは地震の規模を表している。図 7.1.2 にプロットされ ている最も小さい赤点は、M6.0 を示している。最も大きい赤点は、M7.4 を示している。 図 7.1.3 にプロットされている最も小さい赤点は、M6.2 を示している。最も大きい赤点は M7.4 を示している。 図 7.1.2 で北緯 36 度あたりにプロットされている地震は、図 7.1.3 では除去されてい る。解析条件Ⅰでは、警報分率 40%あたりで 99%信頼区間を超えているが解析条件Ⅱで は超えていない。これは解析対象となる地震が少なすぎることが原因として考えられる。 しかし、警報分率 0~20%にかけて 99%信頼区間を超えており少ない警報で地震との関連 性が見られているため、地震選定条件は適切であると考えた。 図 7.2.3 解析条件Ⅱ:伝搬異常と関連のある地震(警報分率 40%)

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39

8.結論

本稿では、MF 帯放送波の電波伝搬異常と地震の関連性解析を行った。本稿では MF 帯の 日没時の受信電力の変動が生じる時間帯に着目し、電波伝搬異常を定義した。さらに解析で 使用するデータの季節性の考慮を行うことで、偏った異常の発生を防ぎ、解析を行うことが 可能となった。

本稿では、Molchan’s Error Diagram と確率利得に基づき、統計的に検証を行った。その 結果から、MF 帯放送波の電波伝搬異常と大規模地震発生には何らかの関連性があることが 考えられる。札幌テレビ放送の解析では、Molchan’s Error Diagram から 99.9%信頼区間を 超える警報分率が存在することが確認できた。また、NHK 秋田第2放送の解析では、 Molchan’s Error Diagram から 99%信頼区間を超える警報分率が存在することが確認でき た。したがって、2つの放送波(札幌テレビ放送、NHK 秋田第2放送)で、伝搬異常と地 震の関連性を示唆する結果となり、1 つの放送波に限った特異的な現象ではないと言える。 さらに、どちらの放送波でも“マグニチュードを考慮した電波伝搬路から震央までの距離 𝐿𝑀[km]“を用いた解析において高い確率利得を導出しており、確率利得からも伝搬異常と地 震に関連性が見られたと評価することができる。 これらの結果から、地震の発生が電離層に何らかの影響を与えることが MF 帯放送波の 解析からも明らかとなった。

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9.今後の課題

今後の課題として、他放送波で同じような現象が見られるか解析を行うことが挙げられ る。本稿では、札幌テレビ放送・NHK 秋田第2放送を解析対象放送波とした。3章に記述 したように、この2つの放送波は他の観測放送波に比べて、夜間の受信電力と昼間の受信電 力の差が大きいため、本稿で定義した電波伝搬異常が確認しやすい。 図 8 に RCC 中国放送波の観測波形(移動平均)を示す。図 8 から、夜間の受信電力が低 いため、SN 比が小さいことが確認できる。このような現象は、西日本側の放送波すべてで 確認できた。 なお、本解析方法で RCC 中国放送の解析を行った結果、確率利得が最大で 1.426 となっ た。また、Molchan’s Error Diagram から、実測値はランダム線を大きく超えることはなく、 95%信頼区間外となる警報分率は存在しなかった。

このように、SN 比が小さいと異常の発生が正確に判断できないことが考えられる。その ため、SN 比の大きい放送波の観測を進めることが課題として挙げられる。

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謝辞

本研究を進めるにあたり、3年間ご指導ご鞭撻を頂きました本島邦行教授に心より感謝 致します。また、修士学位論文の主査を引き受けて頂いた弓仲康史准教授、副査を引き受け て頂いた伊藤直史准教授に厚くお礼申し上げます。 本研究室で扱った地震データは、気象庁から拝借していることを付記し、関係者各位に心 より感謝いたします。 最後に、研究室生活でお世話になりました先輩, 同期, 後輩, 全ての方々に感謝の意を表 し、謝辞とさせていただきます。

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参考文献

(1).小林孝央,“GPS 波観測データを用いた地震発生時における電離層電子密度観測”,日本地 震予知学会,第5回,pp.35-38

(2).Yoshida, M., T.Yamauchi, T.Horie, and M.Hayakawa, “On the generation mechanism of terminator times in subionospheric VLF/LF propagation and its possible application to seismogenic effects" Natural Hazards Earth System Sci., vol.8, 129-134, 2008.

(3).吉田麻里,山内健,堀江匠,早川正士 “Wave-hop 法を用いた VLF/LF 帯電波伝搬解析 による Terminator Time の発生機構に関する考察,電子情報通信学会論文誌 B,vol.J91-B, No.1, 70-78, 2008.

(4).Hayakawa. M., O.A.Molchanov,T.Ondoh, and E.Kawai, "The precursory signature effect of the Kobe earthquake on VLF subionospheric signals," Journal of the Communications Research Laboratory, Tokyo, vol.43, no.2, pp.169-180, 1996.

(5)谷川 廣祐, 羽賀望, 本島邦行, “見通し内 VHF 帯放送波の伝搬異常と地震及び地表面平 均風速の統計的関連性,” J. Atmos. Electr., vol. 37, no. 1, pp. 11–24, 2017.

(6) Peng Han, Katsumi Hattori, Jiancang Zhuang, Chieh-Hung Chen, Jann-Yenq Liu and Shuji Yoshida, “Evaluation of ULF seismo-magnetic phenomena in Kakioka, Japan by using Molchan’s error diagram,” Geophys. J. Int., vol. 208, pp. 482–490, 2017.

(7)放送法 - 総務省 電波利用ホームページ

https://www.tele.soumu.go.jp/horei/reiki_honbun/a724900001.html

(8)国立天文台天文情報センター暦計算室-こよみの計算 https://eco.mtk.nao.ac.jp/cgi-bin/koyomi/koyomix.cgi

(9) “THE NEXT SUNSPOT CYCLE” THE ASTRONOMY CAFÉ http://sten.astronomycafe.net/sunspot-cycle/

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研究業績

本研究において筆者が作成した学会用発表原稿を末尾に記載する。 ・

学会発表

小池雄大,本島邦行,”見通し外 MF 帯放送波の伝搬異常と大規模地震の関連性解析”,日本地 震予知学会,第7回学術講演会,2020/12/24

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日本地震予知学会 2020 学術講演会 20-11 見通し外 MF 帯放送波の伝搬異常と大規模地震の関連性解析 小池雄大†,本島邦行† †群馬大学大学院 理工学府 あらまし 日本は世界有数の地震大国であり、東日本大震災をはじめとする大規模地震が全国各地で甚大な被害をもたらしてい る。こうした被害を未然に防ぐため、地震予知の実現は渇望されている。群馬大学では、地震予測の実現のため様々な電 波を用いて伝搬異常と地震の関連性を解析している。本稿では、群馬大学で観測している見通し外 MF(Middle Frequency) 帯放送波の異常を定義し、電波伝搬異常と大規模地震の関連性を Molchan’s error Diagram に基づき統計的評価を行う。

1.はじめに 群馬大学では、見通し内 VHF 帯放送波、見通し外 MF 帯放送波を観測し受信電力を測定することで、伝搬異常と地震 の関連性を統計的に解析している(1)(2)(3)。加えて国土地理院が提供する GPS 波観測データから電離層総電子数の解析を 行い、東日本大震災において電離層に異常が発生していることを確認した(4)。MF 帯放送波の伝搬は電離層に深く関係し ていることが知られている。そこで本稿では、日没時の受信電力を基準として、この時刻前における受信電力の変動を解 析することで伝搬異常を検出し、伝搬異常と地震の関連性について評価を行う。評価方法として、Molchan’s Error Diagram(5)を導入し、両者の関連性について統計的に評価する。 2.観測データ 本稿で解析対象としたデータは、群馬大学桐生キャンパスで観測を行っている MF 帯放送波の札幌テレビ放送(周波 数:1350kHz、所在地:北海道札幌市)と NHK 秋田第2放送(周波数:774kHz、所在地:秋田県南秋田郡)の 2 つであ る。解析期間を、2008 年 6 月 1 日から 2018 年 5 月 31 日までの 10 年間とした。解析期間中の 2011 年 3 月 11 日より 1 カ月間は、東日本大震災による観測機器停止のため解析対象外とした。NHK 秋田第2放送波(秋田県,774kHz)では、 AM1:00 から AM5:00 において放送を休止する時間帯(停波)が存在するが、異常判定には日没時の観測データを使 用するため、このような停波が存在する日も解析対象とする。両放送波とも、異常判定に影響を及ぼす時間帯で停波が存 在した場合にはその日を解析対象外とした。 3.伝搬異常判定方法 本稿で用いた中波の伝搬異常の概要を述べる。以下の手順に従い伝搬異常の判定を行う。 手順(1). 日没時刻の 4 時間前(開始時刻とする)の観測データを記録する。 手順(2). 開始時刻後、開始時刻で記録した受信電力よりも大きな受信電力を観測した場合、その時の受信電力と時刻(こ の時刻を時刻(a)とする)を記録する。 手順(3). その後、時刻(a)で記録した受信電力よりも大きな受信電力を観測した場合、その時の受信電力と時刻(時刻(b) とする)を記録する。その後、時刻(b)よりも大きな受信電力を観測した場合には、その時の受信電力と時刻を 記録する。以降、記録した受信電力より大きな受信電力を観測した場合、同様の手順を繰り返す。 手順(4). 手順(3)で最終的に記録した受信電力と、日没時刻の受信電力を比較し、手順(3)で記録した受信電力のほ うが大きい場合、手順(3)で記録した時刻と日没時刻の“時間差“を求める。 手順(5). 手順(4)で求めた時間差データがあらかじめ定めた閾値を超えた場合、判定当日の日没時刻から翌日の日没 時刻までを“伝搬異常期間”と定義する。

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日本地震予知学会 2020 学術講演会 20-11 𝛼:定数 , M:マグニチュード 𝐿𝑀= 10𝛼𝑀[km] (1) 4.太陽活動による季節性の考慮 本稿では MF 帯放送波を用いているため、電離層の影響を受けることを 1 章で述べた。電離層には、観測する日や月、 年ごとに異なる変動をするという季節性が存在する。3章の手順(5)で述べたように異常判定には、予め定めた閾値を 用いている。年ごとの異常の多寡は年ごとの太陽活動に影響し、月ごとの異常の多寡は季節ごとの太陽活動に影響するた め、電離層の季節性を考慮せずに観測期間内で一定の閾値を定めると、異常の多い月、異常の多い年が存在することにな る。 そこで、これらの影響を排除し全期間に同条件で伝搬異常を判定するべく、次に述べる閾値の決定方法を用いた。その 方法として、解析対象期間の全時間差データに対して、異常判定対象データの前後1カ月間の時間差データから平均値及 び標準偏差を算出し、その値をもとに閾値を決定する。このような閾値決定方法により、伝搬異常の検出において季節変 動を除いた判定が可能となる。 5.解析対象地震 伝搬異常と地震の関連性を評価する前に、どのよう な条件の地震が伝搬異常を引き起こすかを検討する必 要がある。そこで見通し外 MF 帯放送波に影響を与え る地震は、電波伝搬路近辺で発生したもので、かつ地震 の規模が大きいものであるという仮定のもと解析対象 とする地震の選定基準について述べる。地震データに 対して「マグニチュード M」、「電波伝搬路から震央ま での距離 L[km]」、「マグニチュードを考慮した電波伝 搬路から震央までの距離LM[km]」の条件を設け、解析 対象とする地震の選定を行う。 本稿で解析対象とするのは規模の大きい地震である ため震源の深さは考慮しない。また、海洋を震央とする 地震は MF 帯放送波に影響を与えにくいと仮定し、解 析対象地震は陸域および海岸線から 50km 以内の海域 で発生した地震とした。 「マグニチュードを考慮した電波伝搬路から震央までの距離LM[km]」を定める式を次に示す(式 1)。 式(1)を用いて地震の規模に応じて解析対象範囲を可変させ、解析対象地震を選定する。 Fig.1.normality determination

Fig.3. MF wave propagation path

and epicenter region of target Eq

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日本地震予知学会 2020 学術講演会

20-11 6.評価方法

本稿では伝搬異常と地震の関連性を統計的に評価するため、予知率(Prediction rate)と警報分率(Alarm rate)、及び Molchan’s Error Diagram を用いる。Molchan’s Error Diagram において、ランダムな予測による予知率と伝搬異常に基 づく予知率の比を確率利得 𝐺𝑝(Gain of probability)と定義する。本稿では Molchan’s Error Diagram に加え確率利得を

もとに伝搬異常と地震の関連性を評価する。 予知率とは、“解析対象となる地震総数に対する伝搬異常を伴った地震数”の割合で、式(2)で示される。 予知率=伝搬異常を伴った地震数 解析対象となる地震総数 (2) 警報分率とは、“全解析時間に対する総警報時間”の割合で、式(3)で示される。 警報分率=総警報時間 全解析時間 (3)

ここで警報時間(Alarm time) とは、3 章で定義した伝搬異常の開始時刻から終了時刻に“関連付け期間長𝑡𝑝𝑒𝑟[days]”

を加算した時刻までの時間長のことである。この警報時間内に地震が発生した場合、伝搬異常と地震に関連性があるとみ なす。また、“関連付け期間長𝑡𝑝𝑒𝑟[days]”とは伝搬異常と地震を時間的に関連付けるためのパラメータである。本稿では、 𝑡𝑝𝑒𝑟= 9[days]と定め解析を行った。 7.解析結果 本稿では札幌と秋田にある放送局の中波をもとに解析を行った。以下に本稿の解析で用いた主な条件を示す。 解析期間: 2008 年 6 月 1 日~2018 年 5 月 31 日(10 年間) 解析放送波: 札幌テレビ放送 周波数:1440kHz 送信点:北海道札幌市 NHK 秋田第2放送 周波数:774kHz 送信点:秋田県南秋田郡 解析対象地震: マグニチュード M≧6.0, 海岸線から震央までの距離 50[km]以内 条件 I.電波伝搬路から震央までの距離 L≦200[km] 条件Ⅱ.電波伝搬路から震央までの距離 𝐿𝑀= 10𝛼𝑀[km]

上記の条件(解析対象地震選定条件:条件 I)における Molchan’s Error Diagram を Fig.4.(a),(b)に示す。Fig.4.(a)に は札幌テレビ放送(北海道,1440kHz)を、Fig.4.(b)には NHK 秋田第2放送(秋田県,774kHz)の解析結果を示す。加えて、 それぞれの Molchan’s Error Diagram の中で最も高い確率利得を示した条件を Table.1 に示す。

また、解析対象地震選定条件;条件Ⅱにおける Molchan’s Error Diagram を Fig.5.(a),(b)に示す。Fig.4.と同様に、 Fig.5.(a)には札幌テレビ放送(北海道,1440kHz)を、Fig.5.(b)には NHK 秋田第2放送(秋田県,774kHz)の解析結果を、そ れぞれの Molchan’s Error Diagram の中で最も高い確率利得を示した条件を Table.2 に示す。

Fig.4. Molchan’s Error Diagram of conditionⅠ

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日本地震予知学会 2020 学術講演会

20-11

(a)Sapporo TV(1440kHz,Hokkaido) (b)NHK Akita 2nd(774kHz,Akita) Fig.5. Molchan’s Error Diagram of conditionⅡ

Table.1 Result of conditionⅠ Table.2 Result of conditionⅡ

2.98 札幌テレビ放送 NHK秋田第2放送 26 0.0773 0.231 Number of earthquakes Alarm rate Prediction rate Gain of probability 21 0.0580 0.190 3.28 Fig.4.から両放送波において、95%信頼区間を超える警報分率が存在することが確認できる。さらに、NHK 秋田第2 放送では 99%信頼区間をも超える条件が存在していた。また、Fig.5.の解析対象地震選定条件Ⅱにおける解析では、両放 送波ともランダム線を終えた実測値となり、99%信頼区間を超える警報分率が存在している。札幌テレビ放送では、条件 Ⅰより広い範囲で 95%,99%信頼区間を超える警報分率が確認でき、より高い関連性が存在することを統計的に評価する ことができた。 8.むすび 本稿では MF 帯放送波を用いて、独自の手法により伝搬異常を定義し、検出した伝搬異常と地震の関連性について Molchan’s Error Diagram により統計的に評価を行った。第7章より、中波の電波伝搬異常と大規模地震との関連性を示 唆する結果を得ることができた。二つの放送波を解析した結果、どちらも 99%信頼区間を超えており、偶然発生した現 象とは言い難い結果である。日没時のみを対象とした本稿の解析手法により、明け方に放送を休止している放送波におい ても関連性解析をすることが可能となった。今後は、より多くの放送波で解析を進めるとともに、複数の放送波で同時に 発生する伝搬異常の有無を追求することが課題として挙げられる。 9.謝辞 本研究で扱っている地震は気象庁から拝借していることを付記し、関係各位に心より感謝いたします。 10.参考文献 (1). 本 島 邦 行 , “ 見 通 し 内 VHF 帯 伝 搬 異 常 と 地 震 発 生 と の 統 計 的 関 連 性 ” ,Journal of Atmospheric Electricity,vol.31,no.1,pp.37-49,2011

(2).K.Motojima and N.Haga “Stochastic relation between anomalous propagation in the line-of-sight VHF radio band and occurrences of earthquakes,” Nat. Hazards Earth Syst. Sci., 14, 2119-2124, 2014

(3).新城アンドレ,”MF 帯放送波の日出/日没時伝搬異常と地震発生との関連性解析”,日本地震予知学会,第 6 回,pp19-27 (4).小林孝央,”GPS 波観測データを用いた地震発生時における電離層電子密度観測”,日本地震予知学会,第 5 回,pp.35-38 (5).Peng Han et al., “Evaluation of ULF seismo-magnetic phenomena in Kakioka, Japan by using Molchan’s error diagram”

Geophys.J.Int, vol.208, pp. 482-490, 2017 Prediction rate 0.462 0.364 Gain of probability 5.97 4.70 Number of earthquakes 13 11 Alarm rate 0.0773 0.0773 札幌テレビ放送 NHK秋田第2放送 parameter α 0.35

図 2.2  群馬大学桐生キャンパスにおける観測システムの概略図
図 2.2  2016/3/20 における放送波毎の観測波形
図 3.4.1.1  平均時間差の変動
図 5.3    Molchan’s Error Diagram
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参照

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