7. 解析結果
7.2 NHK 秋田第2放送波の解析結果
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解析放送波 NHK 秋田第2放送(774kHz)
関連付け期間長 9[days]
解析条件 解析条件Ⅰ 解析条件Ⅱ
解析対象地震選定条件
M≥6.0 L≤200[km]
海岸線から 50[km]以内
LM= 100.35𝛼 海岸線から 50[km]以内
地震総数 21 11
警報分率 0.0580 0.0773
予知率 0.190 0.364
確率利得 3.28 4.70
表 7.2 では最も高い確率利得を示した条件を表している。また、札幌テレビ放送の解析 と同様に、警報分率が小さい場合には確率利得が地震と伝搬異常の関連性の有無にかかわ らず高くなってしまうため、警報分率が 5%以上で最も確率利得が高い条件において評価 する。確率利得は解析条件Ⅰで 3.28、解析条件Ⅱで 4.70 であった。NHK 秋田第2放送波 でも、”マグニチュードを考慮した電波伝搬路から震央までの距離𝐿𝑀[km]”を用いて定めた ほうが確率利得が高くなるということが確認できた。
つづいて、2 つの解析条件における Molchan’s Error Diagram を図 7.2.1 に示す。
表 7.2 NHK 秋田第2放送の解析結果
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(a)解析条件 I Molchan’s Error Diagram
(b)解析条件Ⅱ Molchan’s Error Diagram
図 7.2.1 NHK 秋田第2放送の Molchan’s Error Diagram
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図 7.2.1 の(a)に解析条件Ⅰの Molchan’s Error Diagram、(b)に解析条件Ⅱの Molchan’s Error Diagram を示している。図 7.2.1(a)、図 7.2.1(b)から 99%信頼区間を超える警報分 率が存在することが確認できる。さらに、図 7.2.1 から、どちらの解析条件でもほとんど
の警報分率でランダム線を越えており、ランダムな予測よりも精度の高い結果となった。
また、札幌テレビ放送同様、確率利得から解析条件Ⅰより解析条件Ⅱのほうが伝搬異常 と地震のより高い関連性が確認できた。
伝搬異常と関連のあった地震の位置関係を以下に示す。図 7.2.2 に解析条件Ⅰの地震の位 置関係、図 7.2.3 に解析条件Ⅱの地震の位置関係を示す。また、関連ありと判定された地震 は、解析条件Ⅰの Molchan’s Error Diagram から伝搬異常と地震の関連性が高く見られた、
警報分率 40%における地震とする。
図 7.2.2 解析条件Ⅰ:伝搬異常と関連のある地震(警報分率 40%)
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図 7.1.2、図 7.1.3 の赤点の大きさは地震の規模を表している。図 7.1.2 にプロットされ ている最も小さい赤点は、M6.0 を示している。最も大きい赤点は、M7.4 を示している。
図 7.1.3 にプロットされている最も小さい赤点は、M6.2 を示している。最も大きい赤点は M7.4 を示している。
図 7.1.2 で北緯 36 度あたりにプロットされている地震は、図 7.1.3 では除去されてい る。解析条件Ⅰでは、警報分率 40%あたりで 99%信頼区間を超えているが解析条件Ⅱで は超えていない。これは解析対象となる地震が少なすぎることが原因として考えられる。
しかし、警報分率 0~20%にかけて 99%信頼区間を超えており少ない警報で地震との関連 性が見られているため、地震選定条件は適切であると考えた。
図 7.2.3 解析条件Ⅱ:伝搬異常と関連のある地震(警報分率 40%)
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8.結論
本稿では、MF 帯放送波の電波伝搬異常と地震の関連性解析を行った。本稿では MF 帯の 日没時の受信電力の変動が生じる時間帯に着目し、電波伝搬異常を定義した。さらに解析で 使用するデータの季節性の考慮を行うことで、偏った異常の発生を防ぎ、解析を行うことが 可能となった。
本稿では、Molchan’s Error Diagram と確率利得に基づき、統計的に検証を行った。その 結果から、MF 帯放送波の電波伝搬異常と大規模地震発生には何らかの関連性があることが 考えられる。札幌テレビ放送の解析では、Molchan’s Error Diagram から 99.9%信頼区間を 超える警報分率が存在することが確認できた。また、NHK 秋田第2放送の解析では、
Molchan’s Error Diagram から 99%信頼区間を超える警報分率が存在することが確認でき た。したがって、2つの放送波(札幌テレビ放送、NHK 秋田第2放送)で、伝搬異常と地 震の関連性を示唆する結果となり、1 つの放送波に限った特異的な現象ではないと言える。
さらに、どちらの放送波でも“マグニチュードを考慮した電波伝搬路から震央までの距離 𝐿𝑀[km]“を用いた解析において高い確率利得を導出しており、確率利得からも伝搬異常と地 震に関連性が見られたと評価することができる。
これらの結果から、地震の発生が電離層に何らかの影響を与えることが MF 帯放送波の 解析からも明らかとなった。
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9.今後の課題
今後の課題として、他放送波で同じような現象が見られるか解析を行うことが挙げられ る。本稿では、札幌テレビ放送・NHK 秋田第2放送を解析対象放送波とした。3章に記述 したように、この2つの放送波は他の観測放送波に比べて、夜間の受信電力と昼間の受信電 力の差が大きいため、本稿で定義した電波伝搬異常が確認しやすい。
図 8 に RCC 中国放送波の観測波形(移動平均)を示す。図 8 から、夜間の受信電力が低 いため、SN 比が小さいことが確認できる。このような現象は、西日本側の放送波すべてで 確認できた。
なお、本解析方法で RCC 中国放送の解析を行った結果、確率利得が最大で 1.426 となっ た。また、Molchan’s Error Diagram から、実測値はランダム線を大きく超えることはなく、
95%信頼区間外となる警報分率は存在しなかった。
このように、SN 比が小さいと異常の発生が正確に判断できないことが考えられる。その ため、SN 比の大きい放送波の観測を進めることが課題として挙げられる。
図 8 RCC 中国放送 2016/03/20 観測波形(移動平均)
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謝辞
本研究を進めるにあたり、3年間ご指導ご鞭撻を頂きました本島邦行教授に心より感謝 致します。また、修士学位論文の主査を引き受けて頂いた弓仲康史准教授、副査を引き受け て頂いた伊藤直史准教授に厚くお礼申し上げます。
本研究室で扱った地震データは、気象庁から拝借していることを付記し、関係者各位に心 より感謝いたします。
最後に、研究室生活でお世話になりました先輩, 同期, 後輩, 全ての方々に感謝の意を表 し、謝辞とさせていただきます。
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参考文献
(1).小林孝央,“GPS 波観測データを用いた地震発生時における電離層電子密度観測”,日本地 震予知学会,第5回,pp.35-38
(2).Yoshida, M., T.Yamauchi, T.Horie, and M.Hayakawa, “On the generation mechanism of terminator times in subionospheric VLF/LF propagation and its possible application to seismogenic effects" Natural Hazards Earth System Sci., vol.8, 129-134, 2008.
(3).吉田麻里,山内健,堀江匠,早川正士 “Wave-hop 法を用いた VLF/LF 帯電波伝搬解析 による Terminator Time の発生機構に関する考察,電子情報通信学会論文誌 B,vol.J91-B, No.1, 70-78, 2008.
(4).Hayakawa. M., O.A.Molchanov,T.Ondoh, and E.Kawai, "The precursory signature effect of the Kobe earthquake on VLF subionospheric signals," Journal of the Communications Research Laboratory, Tokyo, vol.43, no.2, pp.169-180, 1996.
(5)谷川 廣祐, 羽賀望, 本島邦行, “見通し内 VHF 帯放送波の伝搬異常と地震及び地表面平 均風速の統計的関連性,” J. Atmos. Electr., vol. 37, no. 1, pp. 11–24, 2017.
(6) Peng Han, Katsumi Hattori, Jiancang Zhuang, Chieh-Hung Chen, Jann-Yenq Liu and Shuji Yoshida, “Evaluation of ULF seismo-magnetic phenomena in Kakioka, Japan by using Molchan’s error diagram,” Geophys. J. Int., vol. 208, pp. 482–490, 2017.
(7)放送法 - 総務省 電波利用ホームページ
https://www.tele.soumu.go.jp/horei/reiki_honbun/a724900001.html (8)国立天文台天文情報センター暦計算室-こよみの計算
https://eco.mtk.nao.ac.jp/cgi-bin/koyomi/koyomix.cgi
(9) “THE NEXT SUNSPOT CYCLE” THE ASTRONOMY CAFÉ http://sten.astronomycafe.net/sunspot-cycle/
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研究業績
本研究において筆者が作成した学会用発表原稿を末尾に記載する。
・
学会発表
小池雄大,本島邦行,”見通し外 MF 帯放送波の伝搬異常と大規模地震の関連性解析”,日本地 震予知学会,第7回学術講演会,2020/12/24
日本地震予知学会 2020 学術講演会
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見通し外 MF 帯放送波の伝搬異常と大規模地震の関連性解析 小池雄大†,本島邦行†
†群馬大学大学院 理工学府 あらまし
日本は世界有数の地震大国であり、東日本大震災をはじめとする大規模地震が全国各地で甚大な被害をもたらしてい る。こうした被害を未然に防ぐため、地震予知の実現は渇望されている。群馬大学では、地震予測の実現のため様々な電 波を用いて伝搬異常と地震の関連性を解析している。本稿では、群馬大学で観測している見通し外 MF(Middle Frequency)
帯放送波の異常を定義し、電波伝搬異常と大規模地震の関連性を Molchan’s error Diagram に基づき統計的評価を行う。
1.はじめに
群馬大学では、見通し内 VHF 帯放送波、見通し外 MF 帯放送波を観測し受信電力を測定することで、伝搬異常と地震 の関連性を統計的に解析している(1)(2)(3)。加えて国土地理院が提供する GPS 波観測データから電離層総電子数の解析を 行い、東日本大震災において電離層に異常が発生していることを確認した(4)。MF 帯放送波の伝搬は電離層に深く関係し ていることが知られている。そこで本稿では、日没時の受信電力を基準として、この時刻前における受信電力の変動を解 析することで伝搬異常を検出し、伝搬異常と地震の関連性について評価を行う。評価方法として、Molchan’s Error Diagram(5)を導入し、両者の関連性について統計的に評価する。
2.観測データ
本稿で解析対象としたデータは、群馬大学桐生キャンパスで観測を行っている MF 帯放送波の札幌テレビ放送(周波 数:1350kHz、所在地:北海道札幌市)と NHK 秋田第2放送(周波数:774kHz、所在地:秋田県南秋田郡)の 2 つであ る。解析期間を、2008 年 6 月 1 日から 2018 年 5 月 31 日までの 10 年間とした。解析期間中の 2011 年 3 月 11 日より 1 カ月間は、東日本大震災による観測機器停止のため解析対象外とした。NHK 秋田第2放送波(秋田県,774kHz)では、
AM1:00 から AM5:00 において放送を休止する時間帯(停波)が存在するが、異常判定には日没時の観測データを使 用するため、このような停波が存在する日も解析対象とする。両放送波とも、異常判定に影響を及ぼす時間帯で停波が存 在した場合にはその日を解析対象外とした。
3.伝搬異常判定方法
本稿で用いた中波の伝搬異常の概要を述べる。以下の手順に従い伝搬異常の判定を行う。
手順(1). 日没時刻の 4 時間前(開始時刻とする)の観測データを記録する。
手順(2). 開始時刻後、開始時刻で記録した受信電力よりも大きな受信電力を観測した場合、その時の受信電力と時刻(こ の時刻を時刻(a)とする)を記録する。
手順(3). その後、時刻(a)で記録した受信電力よりも大きな受信電力を観測した場合、その時の受信電力と時刻(時刻(b) とする)を記録する。その後、時刻(b)よりも大きな受信電力を観測した場合には、その時の受信電力と時刻を 記録する。以降、記録した受信電力より大きな受信電力を観測した場合、同様の手順を繰り返す。
手順(4). 手順(3)で最終的に記録した受信電力と、日没時刻の受信電力を比較し、手順(3)で記録した受信電力のほ うが大きい場合、手順(3)で記録した時刻と日没時刻の“時間差“を求める。
手順(5). 手順(4)で求めた時間差データがあらかじめ定めた閾値を超えた場合、判定当日の日没時刻から翌日の日没 時刻までを“伝搬異常期間”と定義する。