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Rac limits TGF-β-induced VEGF synthesis in osteoblasts(骨芽細胞においてRacはTGF-βによるVEGF産生を抑制する)<内容の要旨及び審査結果の要旨>

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Academic year: 2021

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Nagoya City University Academic Repository

学 位 の 種 類 博士 (医学) 報 告 番 号 甲第1528号 学 位 記 番 号 第1099号 氏 名 山本 尚洋 授 与 年 月 日 平成 28 年 3 月 25 日 学位論文の題名

Rac limits TGF-β-induced VEGF synthesis in osteoblasts(骨芽細胞 において Rac は TGF-βによる VEGF 産生を抑制する)

Molecular and Cellular Endocrinology Vol.405 : P.35-41,2015

論文審査担当者 主査: 岡本 尚

(2)

論 文 内 容 の 要 旨 【目的】

骨代謝は、骨形成を担う骨芽細胞と骨吸収を担う破骨細胞により巧緻に制御され、骨強度は維 持されている。骨質や骨量の維持に不可欠である骨リモデリングは、骨吸収とそれに引き続く骨 形成によって絶えず行われている。加えて、骨リモデリングには微小血管による血液の供給が必 須と考えられている。血管内皮細胞の特異的な細胞増殖因子であるvascular endothelial growth factor (VEGF) は、 強力な血管新生作用を示す。 骨芽細胞において、 transforming growth factor- (TGF-) を含む、様々な生理活性物質により産生された VEGF は、微小血管の形成によ り骨形成を促進していると考えられている。 TGF-は、骨芽細胞においてオータコイドとして作用し、骨形成を促進することがよく知られ ている。骨基質中に存在するTGF-は、破骨細胞による骨吸収により放出・活性化され、骨芽細 胞前駆細胞の増殖や骨芽細胞への分化を促進する。TGF-による細胞内シグナルは主として Smad を介した Smad 依存性経路により伝達されることが知られている。一方、TGF-は、 mitogen-activated protein (MAP) kinase など Smad 非依存的経路を介し作用することも報告さ れている。私共の研究室では既に骨芽細胞様MC3T3-E1 細胞において、TGF-刺激による VEGF 産生がp44/p42 MAP kinase、p38 MAP kinase および stress-activated protein kinase/c-Jun

N-terminal kinase (SAPK/JNK) により促進的に制御されていることを報告している。

Rac は Rho ファミリーに属する低分子量 GTP 結合蛋白質の一つである。Rac は、様々な細胞 で発現しており、アクチンによる細胞骨格の再構築などの機能が知られている。骨芽細胞におい て Rac は細胞接着、細胞伸展、細胞増殖などに必須であることが報告されている。しかし、Rac の骨芽細胞に対する作用の詳細は未だ明らかとされていない。 本研究では、 骨芽細胞様 MC3T3-E1 細胞において TGF-刺激による VEGF 産生における Rac の役割を検討した。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

【方法】

新生仔マウス頭蓋冠より分離株化された骨芽細胞様 MC3T3-E1 細胞を 10%牛胎仔血清を含む -MEM 培地で 5 日間培養後、 牛胎仔血清を 0.3%とし、 48 時間後に実験に供した。 Rac-knock down MC3T3-E1 細胞は、 MC3T3-E1 細胞を 10%牛胎仔血清を含む-MEM 培地で 2 日間培養 後、Rac-siRNA を導入、24 時間後に牛胎仔血清を 0.3%とした後、実験に供した。Rac-guanine nucleotide exchange factor (GEF) の選択的阻害剤である NSC23766 あるいは TGF-依存性 Smad3 リン酸化の特異的阻害剤である SIS3 で前処置した MC3T3-E1 細胞あるいは Rac-knock down MC3T3-E1 細胞を TGF-で刺激し、上清中の VEGF 濃度を ELISA 法で、VEGF mRNA の発現をRT-PCR 法にて測定した。 GTP 結合型 Rac の発現および Smad2、 Smad3、 p44/p42 MAP kinase、p38 MAP kinase、SAPK/JNK のリン酸化を Western blot 法にて解析した。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

【結果】

TGF-は GTP 結合型 Rac のレベルを時間依存的に増加させた。NSC23766 は TGF-刺激によ るVEGF の遊離を増強した。また、Rac-knock down MC3T3-E1 細胞においても TGF-刺激に よるVEGF 遊離は増強した。さらに、NSC23766 は TGF-刺激による VEGF mRNA の発現を増 強した。SIS3 は TGF-刺激による VEGF 遊離を抑制した。しかし、TGF-刺激による Smad2 およびSmad3 のリン酸化は NSC23766 によって影響されなかった。一方、NSC23766 は TGF- 刺激によるp44/p42 MAP kinase および SAPK/JNK のリン酸化には何ら影響しなかったが、 p38

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MAP kinase のリン酸化を増強した。また、Rac-knock down MC3T3-E1 細胞においても TGF- 刺激によるp38 MAP kinase のリン酸化は増強された。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 【考察】 骨芽細胞様MC3T3-E1 細胞において TGF-は Rac を活性化することが示された。活性化され た Rac は TGF-による VEGF 産生を抑制的に制御していることが示唆された。TGF-による VEGF 産生において Smad 依存性経路の関与が示されたが、この経路には Rac は関与していない ことが示唆された。既に本細胞において p44/p42 MAP kinase、p38 MAP kinase および SAPK/JNK が TGF-による VEGF の産生において促進的に作用していることが報告されている。 NSC23766 が p44/p42 MAP kinase および SAPK/JNK のリン酸化に影響を及ぼさなかったが、 p38 MAP kinase のリン酸化を有意に増強したことから、 Rac は p38 MAP kinase の上流で TGF-による VEGF 産生に対し抑制的に作用していることが示唆された。以上のことから、骨芽 細胞において、 Rac が TGF-による VEGF 産生の調節因子として機能し、 骨リモデリングを制 御していることが明らかとなった。骨芽細胞におけるRac の活性の制御が、骨粗鬆症などの代謝 性骨疾患の新しい治療戦略となる可能性が示唆された。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 【結論】

骨芽細胞においてRac は p38 MAP kinase 活性を制御し、TGF-による VEGF の産生を抑制 することが示唆された。

(4)

論文審査の結果の要旨

【目的】transforming growth factor- (TGF-)は、骨芽細胞においてオータコイドとして作用し、 骨形成を促進することがよく知られている。また、血管内皮細胞の特異的な細胞増殖因子である vascular endothelial growth factor (VEGF)は、骨芽細胞により産生され、微小血管形成により骨形 成を促進していると考えられている。著者らの研究室では既に骨芽細胞様 MC3T3-E1 細胞におい て、TGF-刺激による VEGF 産生が p44/p42 mitogen-activated protein (MAP) kinase、p38 MAP kinase および stress-activated protein kinase/c-Jun N-terminal kinase (SAPK/JNK)により促進的 に制御されていることを報告している。低分子量GTP 結合蛋白質の 1 つである Rac は、骨芽細胞に おいては細胞接着、細胞伸展、細胞増殖などに必須であることが報告されているが、骨芽細胞に対す る作用の詳細は不明である。本論文は骨芽細胞における TGF-刺激による VEGF 産生に対する Rac の役割について検討したものである。

【方法】骨芽細胞様 MC3T3-E1 細胞および MC3T3-E1 細胞に Rac-siRNA を導入した Rac-knock down 細胞を用いた。Rac 活性化の阻害剤である NSC23766 あるいは TGF-依存性 Smad3 リン酸化 の阻害剤である SIS3 で前処置した MC3T3-E1 細胞および Rac-knock down 細胞を、TGF-で刺激 し、VEGF の遊離を ELISA 法にて、VEGF mRNA 発現レベルを RT-PCR 法にて、蛋白の発現およ びリン酸化をWestern blot 法にて測定および解析した。

【結果】TGF-は GTP 結合型 Rac のレベルを増加させた。NSC23766(Rac 活性化の阻害剤)は TGF-刺激による VEGF の遊離を増強した。また、Rac-knock down 細胞においても TGF-刺激によ る VEGF 遊離は増強した。さらに、NSC23766 は TGF-刺激による VEGF mRNA の発現を増強し た。SIS3 は TGF-刺激による VEGF 遊離を抑制した。しかし、TGF-刺激による Smad2 および Smad3 のリン酸化は NSC23766 によって影響されなかった。一方、NSC23766 は TGF-刺激による p44/p42 MAP kinase および SAPK/JNK のリン酸化には何ら影響しなかったが、 p38 MAP kinase の リン酸化を増強した。また、Rac-knock down 細胞においても TGF-刺激による p38 MAP kinase の リン酸化は増強した。

【考察】以上の結果より、骨芽細胞において Rac は p38 MAP kinase 活性を制御し、TGF-による VEGF の産生を抑制することが示唆された。骨芽細胞における Rac の活性の制御が、骨粗鬆症など の代謝性骨疾患の新しい治療戦略となる可能性が示唆された。

【審査の内容】主査の岡本教授より、それぞれの実験結果の解釈について、NSC23766 や Rac-siRNA の詳細について、骨代謝における MAP kinase の役割について等 12 項目、第 1 副査の和田教 授より、骨粗鬆症の病態に対するTGF-や VEGF の関与について、骨芽細胞様 MC3T3-E1 細胞の特 徴の詳細について等6 項目、第 2 副査の大塚教授より、サルコペニアおよびロコモティブシンドロー ムと骨粗鬆症との関連および治療について等4 項目の質問があった。これらの質問に対して、申請者 から適切な回答が得られ、学位論文の内容を充分に把握しており、また大学院修了者としての学力を 備えていると判断した。本研究は低分子量GTP 結合蛋白質の 1 つである Rac の骨代謝における役割 の一端を明らかとする重要な研究であり高く評価される。よって、本論文著者は、博士(医学)の学 位を授与するのに値するものと判定した。 論文審査担当者 主査 岡本尚 副査 和田郁雄 大塚隆信

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