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越智諸島椋名における延縄漁業の漁場利用形態 : 水産地理学における生態学的研究の試み

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人 文 地 理 第33巻 第4号 (1981)

越 智 諸 島椋 名 にお け る延 縄 漁業 の

漁 場 利用 形 態

-水

産地理学における生態学的研究の試み-田

I は じ め に 1 調 査 方 法 と研 究対 象 2 椋 名 漁 村 II 椋 名 付 近 の 海 域 の 性 質 とそ の 利用 状況 1 潮 汐 ・潮 流 現 象 (i) 潮 汐 現 象 (ii) 潮 流 現 象 2 海 域 の 利 用 状 況 III 延 縄 漁 師 お よび延 縄 漁撈 活動 1 延 縄 漁船 と延縄 漁師 2 延 縄 の道 具 とエサ 3 漁 撈 活 動 の 実態 4 漁 撈 活動 時 間 IV 延 縄漁 場 利 用 形 態 の分 析 1 延 縄 漁場 (i) 漁 場 とシ オ との 関 係 (ii) 漁 師 に よ る漁 場 の選 択 2 延縄 漁 船 に よ る トロ ミの 利 用 形 態 3 漁 獲 尾 数か らみ た 漁 師 に よ る漁 場 空 間 の認 識 V ま と め 1 結 論 2 今 後 の展 望 I は じ め に 1 調 査方 法 と研 究対 象 水 産 地 理 学 に は2 つ の 研 究 領域 が あ る。 ひ とつ は漁 場 で あ る海 域, つ ま り生産 の場 と して の水 域 そ の もの であ り, も うひ とつ は漁 村 を なす 集 落,つ ま り居 住 の場 と して の陸 上 域1)であ る。 この うち,生 産 の場 と して の水 域 の研 究 で は, 経済 学的視点 に立 った漁場価値 の分析2)や経 済学 的 ・経 済 史 学 的 にみ た 漁 業 制 度,漁 場 用 益形 態 の研 究 な どに力 点 が お か れ て きた 。 そ の た め, 水 域 とい う自然 環 境 に注 目 しな が ら も,漁 撈 活 動 とそ の適 用 水 域 との 自然 生 態 学 的 関 係4)を追 求 す る とい った 分 析 は,ほ とん どな され る こ とが なか った5)。この 理 由 と して は,水 域 が調 査 の機 会 を 阻 み が ち で あ る6)ことの ほ か,水 域 の もつ 性 1) 青 野 寿 郎 『漁 村 水 産 地 理 学 研 究 』 第 一 集,古 今 書 院,1953, 2頁 。 柿 本 典 昭 『漁 村 の 地 域 的 研 究 』,大 明堂,1975, 5-6頁 。

2) 山 口平 四郎 『海 洋 の地 理 』,大 明 堂,1969, 81-95頁 。Coull, J.R., The. Fisheries of Europe, Bell & Hyman, 1972, pp. 31-58.三 宅 達 也 「長 崎 県 佐 世 保 湾 に お け る カ ツ オ餌 場 の研 究 」,鹿 児 島 地 理 学 会 紀 要21-2, 1974, 59-69頁 。 田 林 明 ・上 野 健 一 ・矢 ヶ崎 典 隆 「南 伊 豆 に おけ る漁 業 の変 遷 」,筑 波 大 学人 文 地 理 学 研 究II, 1978, 131-156頁 。 3) 河 野 通 博 『漁 場 用 益 形 態 の研 究 』,未 来 社, 1962。 4) 藪 内芳 彦 編 著 『漁 撈 文 化 人 類 学 の 基 本 的 文 献 資 料 とそ の 補 説 的 研 究 』,風 間書 房,1978, 713頁 。 5) 水 産 学 や 水 産 経 済 学 に お い て も同 様 の こ とが い え る 。 た とえ ば,宇 田道 隆 『海 洋 漁 場 学 』,恒 星 社 厚 生 閣,1960。 近 藤 康 男 編 『日本 漁 業 の 経 済 構 造 』,東 大 出版 会,1953。 岡本 清 造 『水 産 経 済 学 』,恒 星 社 厚 生 閣,1961。 ま た,民 俗 学 に お い て も,た とえ ば,漁 場 の 名 称 に つ い て の 記 載 は 多 い が,そ れ が 漁 撈 活 動 と関 係 づ け て と り扱 わ れ る こ とは ほ とん ど な い 。 進藤 松 司 『安 芸 三 津 漁 民 手記 』,ア チ ッ ク ミュ ー ゼ ア ム,1937。 岩 倉 市 郎 『喜 界 島漁 業 民 俗 』,ア チ ッ ク ミュ ー ゼ ア ム,1941。 6) 藪 内 芳 彦 「漁 村 の 地 理 学 的 研 究 方 法 に 関 す る1提 案 」,地 理 学 評 論30-5, 1957, 13頁 。

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質 が 流 動 的 で あ り,立 体 的 で あ る7)がゆ え に,地 理 学 的 な把 握 が 困 難 で あ った こ とな どが あげ ら れ る。 つ ま り,従 来 の研 究 は,陸 の側 にた って 海 を な が め る とい うか た ち です す め られ て きた とい え る。 これ に 対 して,筆 者 は,調 査 の機 会 を 海 の う え に 求 め る こ とに よ って,生 態 学 的 な研 究 の展 開 を 試 み よ うと した。 そ の た め に は現 地 調 査 に お い て,こ れ まで主 と して用 い て きた き き と り や 既 成 資 料 の 収 集 とい う方 法 に,海 上 で漁 撈 活 動 を 直 接観 察 し,漁 撈 活 動 に 関す る さ ま ざ まな 測 定 を お こな うとい う方 法8)を加 え て調 査 を す る こ とが,適 当 で あ る と考 えた 。 以 上 の方 法 に よ って調 査 を お こな うには,1 人 ひ と りの 漁撈 活動 を観 察 しや す い よ うに,漁 業 者 数 が 多 くな い こ と,漁 業 者 が あ る程 度 限 ら れ た 水 域 を利 用 して い る こ と,漁 業 種 類 ご との 漁 場 利用 を 比 較 で きる よ うに複 数 の漁 業 種 類 が 存 在 す る こ と とい った条 件 を 備 えた 調 査 地 が 必 要 で あ る。 これ らを念 頭 に おい て,筆 者 は,19 79年2月 に,愛 媛 県 の越 智 諸 島(大 三島,大 島, 伯方島)の 漁 村 を予 備 調 査 し,そ の結 果,上 記 の 条 件 を満 足 させ うる漁 村 と して 大 島 の 半 農 半 漁 村,椋 名(愛 媛県越 智郡吉海 町大字椋名)を 調 査 地 に選 定 した。 椋 名 の地 先 は,来 島海 峡 に 近 く,潮 流 の激 し い と ころ と して知 られ てい る。 数 多 くの 島 し ょ に か こま れ た海 面 は,渦 浦 漁 場 と よば れ,古 く か ら釣 漁業 が お こなわ れ て い た 。 漁業 の 中心 は, 現 在 で も一 本 釣 と延 縄 で あ る。 本 稿 で は,漁 撈 活 動 そ の も のが 自然環 境 に支 配 され や す い と考 え られ る延 縄 漁 業 を と りあ げ る 。 そ して,こ の延 縄 漁 業 の時 間 的 ・空 間 的 な 水 域 の 利用 形 態 を分 析 す る。 現 地 調査 は,1979 年7月 か ら1980年9月 にか け て4回,計5週 間 お こな っ た。 2 椋 名漁 村 椋 名 は大 島 の南 西 側,来 島海 峡 を の ぞむ 位 置 に あ る(第1図)。 古 くか ら半 農 半 漁 の ム ラで あ った が,明 治期 か ら昭和 初 期 に か け て は 「碗 ぶね 」 とよば れ る船 を利 用 した 漆 器 販 売業 が盛 ん に お こな わ れ た 。1912年(明 治 45)に は戸 数243戸(津 島,馬 島 の戸数 を含む)の うち,農 家 が55戸,漁 家 が60戸 で あ った の にた い して,漆 器 販 売 を お こな う商 家 は60戸 を数 え た9)ので あ る 。 現 在,世 帯 数 は190,人 口 は616人 で(1980年 5月1日),生 業 は,漁 業 と農 業 が 主 で あ る。 し か し,最 近 で は 今 治 を は じ め と した 四 国 側 へ の

7) Hewes, G.W., ‘The Rubric “Fishing and Fisheries”’, American Anthropologist 50, 1948, pp. 238-246.柿 本 典 昭 「組合 自営 漁村 の性 格 と問 題 点 に つ い て の一 考 察 」,金 沢 大 学 教 養 部 論 集 人 文 科 学 篇1, 1963, 5頁 。

8) これ は,生 態 人 類 学 的 研究 に お け る 基 本 的 な 調査 方 法 で あ る 。 と ころ で,渡 辺 仁 は,人 文 地 理 学 と生 態 人 類 学 と の 関 係 につ い て 以下 の よ うに述 べ る。 「ヒ トの生 活 と環 境 との関 係 は ま た地 理 学 に お い て も取 り扱 わ れ,そ の よ うな分 野 が人 文 地 理 学human geographyあ るい は 人 類 生 態 学human ecologyと よば れ て い る 。 しか し地 理 学 は本 来 人 間 を 地 球 表 面 を変 化 さ せ る諸 要 因 の ひ とつ と して扱 っ て い るか ら,ヒ トの生 活-環 境 関 係 を主 と して環 境 の側(立 場)か ら探 究 す る学 問 で あ る 。 した が っ て生 活 と環 境 との 関係 を生 活 の側(立 場)か ら探 究 す る 生態 人 類 学 とは コイ ン の裏 表 の関 係 に あ る とい え る 。」(渡 辺 仁 「生 態 人 類 学序 論 」,〔渡 辺 仁 責 任 編 集 『生 態 』,雄 山 閣 出版,1977〕, 7頁)。

な お,漁 業 に関 連 した 生 態 人 類 学 的 研 究 と して は,た とえ ば 以 下 の よ うな,漁 撈 の 日周 活 動 や 空 間 利 用 につ い て の研 究 や 漁撈 技 術 に 関 す る 研 究 が あ る 。

Cordell, J., ‘The Lunar-Tide Fishing Cycle in Northeastern Brazil’, Ethnology 13, 1974, pp. 379-392. Forman, S., ‘Cognition and the Catch: The Location of Fishing Spots in a Brazilian Coastal Village’, Ethnology 6, 1976, pp. 417-426.五 十 嵐 忠 孝 「トカ ラ列 島漁 民 の “ヤ マ ア テ ”」,〔渡 辺 仁 責 任 編 集 注)8〕, 139-161頁 。 煎 本 孝 「房 総 漁 民 の生 態-岩 礁 帯 に お け る 漁撈 採 集 活 動 の 時 間 ・空 間 構 造 とそ の 形成 に 関 与 す る 性 ・年 齢 的 役 割 に つ い て-」,〔 渡 辺 仁 責 任 編 集 注)8〕, 251-279頁 。 同 「房 総 海 士,海 女 の 潜 水 採 集 活 動-日 周 活 動 リズム に お け る 空 間利 用 と行 動 的 適 応-」,〔 渡 辺 仁 責 任 編 集 注)8〕, 297-312頁 。White, D.R.M., ‘Environment, Technology and Time-Use Patterns in the Gulf Coast Shrimp Fishery’, In Smith, M.E. (ed.), Those who Live from the Sea: A Study in Maritime Anthropology 1977, pp. 195-214.秋 道 智 弥 「下 北 半 島大 間漁 民 の技 術 的 適 応-マ グ ロ一 本 釣 漁 業 の事 例

よ り-」,〔 渡 辺 仁 責 任 編 集 注)8〕, 94-109頁 。 同 「伝 統 的 漁 撈 に おけ る技 能 の研 究-下 北 半 島 ・大 間 の バ バ ガ レ イ漁 」,国 立 民 族 学 博 物 館 研 究 報 告2-4, 1977, 702-764頁 。

9) 渦 浦 村 郷 土誌 編 纂 委 員 会 編 『渦 浦 村 郷 土 誌 』,1912;吉 海 町 公 民 館 蔵 。

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-26-越 智 諸 島 椋 名 に お け る延 縄 漁 業 の 漁 場 利 用 形 態(田 和) 315 第1図 椋名位置 図 通 勤 者 も多 くな って きて い る。 集 落 は,背 後 のか な り急 峻 な 山 と海 岸 線 との 間 に形 成 され た わ ず か な 平坦 面 に立 地 す る(第 2図)。 漁 家 は この集 落 の 中央 部 に 集 中 す る。 こ のあ た りは 家屋 が相 対 的 に密 集 して お り,景 観 的 に もい わ ゆ る漁 村 に特 徴 的 な様 相 を 示 して い る。 漁 業 者 は,一 般 に,自 動 車,オ ー トバ イ, 自転 車 を利 用 して 椋 名 漁 港10)まで通 う。 これ は, 漁港 が 集落 の最 北 端 にあ って 各 家 か ら遠 い うえ, 漁業 者 が それ ぞ れ 漁 獲 物 を 「か よい 箱」 に つ め, そ れ を下 田水 の フ ェ リー乗 り場 ま で運 ば な け れ ば な ら な い か ら で あ る11)。 第2図 集落図 II 椋 名 付 近 の 海域 の性 質 と そ の 利 用状 況 漁 業 に 影 響 を お よぼす 自然 的要 因 と して は, 水 温,塩 分濃 度,水 深,海 底 地 形,風,潮 汐 ・ 潮 流 現 象 な どが あ る12)。本 章 で は,こ の うち で, 椋 名 の漁 師 が 最 も重 要 な 自然 的 要 因 と考 え て い る潮 汐 ・潮 流 現 象 を と りあ げ,こ れを 漁 師 の認 識 とい う側 面 か ら記 述 す る。 つ ぎに,ど の よ う な漁 業 種 類 が,自 然 環 境 の総 体 と もい え る椋 名 付 近 の海 域 に お い て お こ なわ れ て い るのか を 明 らか に した い。 1 潮 汐 ・潮 流現 象 (i) 潮 汐 現 象 毎 日の 潮 汐 は,漁 師,と くに延 縄 漁 師 が 最 も正 確 に認 知 しな け れ ば な らな い現 象 で あ る。 椋 名 に お い て は,潮 汐 現 象 に 関 して 以下 の よ うな名 称 が 使 10) 吉 海 町 が 管 理 す る 第1種 漁 港 で あ る。 11) 各 漁 業 者 は,主 と して 仲 買 人 を 通 じて 個 人 的 に漁 獲 物 を 出荷 して い る。 12) 新 野 弘 「海 底 地 形 と漁 場 」(多 田文 男 ・石 田 龍 次 郎 編 『現 代 地 理 講 座 』5,河 出書 房,1956), 94-117頁 。Coull, J.R.,〔 注)2〕, pp. 39-47.

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第3図 潮汐に関する模 式図 用 さ れ て い る13)(第3図)。 干 潮 は ヒ ヨ リ と よ ぼ れ る。 干 潮 か ら や や 満 ち 始 め た 時 が オ シ ア ゲ,そ れ を 過 ぎ て 半 分 ま で 満 ち た 状 態 が ナ カ ミチ,「8割 が た ま で 満 ち た 」 と さ れ る 状 態 が ハ チ ゴ ウ ミチ で あ る。 満 潮 の1 時 間 ぐ ら い 前 は と くに ミチ ミチ と よ ば れ る こ と も あ る 。 満 潮 は タ タ エ と よ ば れ る。 漁 師 は,シ オ が ひ く場 合 に つ い て も,満 ち る 場 合 と ほ ぼ 対 照 的 な 概 念 で と ら え て い る 。 や や ひ き 始 め た 時 が タ タ エ ノ オ ト シ,以 下,ナ カ ビ,ハ チ ゴ ウ ビ を 経 て ヒ ヨ リ に 達 す る 。 一 潮(干 潮(満 潮)か らつ ぎの 干 潮(満 潮)に 達 す る まで の 時 間)は12時 間 前 後 で あ る 。 延 縄 漁業 にお い て は,シ オ14)の流 れ が 速 い と操 業 に支 障 を きた す15)ので,漁 師 は,干 潮 か ら満 潮 に むか っ て,あ るい は 満 潮 か ら干 潮 に む か って, シオ が 転流 しは じめ る前 後 の,シ オの 流 れ が ゆ るやか な時 間帯 を選 んで,操 業 しな け れ ば な ら な い。 この シオ の流 れ が ゆ るや か な 状 態 を トロ ミとい い,干 潮 時 の トロ ミを と くに ヒ ヨ リ ドロ ミ,満 潮時 のそ れ を タ タ エ ドロ ミと よぶ。 そ し て,干 潮 時 の ヒヨ リ ドロ ミに お こな う漁 を ヒ ヨ リナ ワ,満 潮 時 の タ タ エ ドロ ミに お こな う漁 を タタ エ ナ ワ と よん で区 別 して い る。 か つ て,漁 師 は,潮 汐 現 象 を 自 らの経 験 と漁 師 相 互 間 の情 報 交 換 に よ って 知 った。 しか し, 現 在 で は,漁 協 が1年 間 の 潮 汐 表 を 作 成 して組 合 員 に配 布 して い る ので,漁 師 は,以 前 に比 べ て潮 汐現 象 を 容 易 に知 る こ とが で き る よ うに な って い る。 (ii) 潮 流現 象 潮 流 は,潮 汐 と と もに,漁 撈 活 動 を規 定 す る重 要 な現 象 で あ る。 渦 浦漁 場 か ら来 島海 峡 に か け て の海 域 は 島 し ょが数 多 く点 在 し,し か も島 し ょ間 の 幅 が狭 い こ と もあ っ て,複 雑 な潮 流 が 展 開 す る。 と くに 来 島海 峡 付近(大 島∼武志島間,武 志島∼中渡島 間 の2水 道はあわせて東水道,中 渡島∼馬島間 は中水 道,馬 島 ∼ 小 島間 は西 水 道,小 島 ∼ 来 島 間 は 来島 ノ 瀬戸 とよ ばれ て い る)で は,流 速 が8∼9ノ ッ ト に な る こ とが あ る 。 こ の 海 域 を1日 に4回,シ オ が 移 動 す る 。 ミ チ シ オは,斉 灘か ら燧 灘 にむ か って 北 か ら南 へ 流 れ る こ とか ら,ナ ン リュ ウ と も よば れ る。 こ れ とに逆 は燧 灘 か ら斉 灘へ む か って 流 れ る ヒキ シ オ は,ホ ク リュ ウ と も よばれ る。 第4図 は,漁 師 に き き と りを して 得 た 資 料 か ら作 成 した 潮 流 図 で あ る。 これ に よ る と,北 西 か ら流 れ て くる ミチ シオ は,津 島,小 島,馬 島 な ど に影 響 され て 細か く分 流 す る。 この うち, 津 島 の西 を 通 過 して 中水 道 お よび西 水 道 へ い た る シ オが 本 流 で,こ れ を ホ ン シオあ るい は ナ カ シオ とい う。 津 島 の北 を通 過 した シオは,渦 浦 漁 場 へ 流 入 す る さい に,(1)津 島 と大 突 間 島 との 間 の セ トを 通 過 す る シオ と,(2)大 突 間 島 と大 島 の宮 ノ鼻 との間 の セ トを 通 過す る シオ とに分 流 13) 瀬 戸 内海 の 潮 の語 彙 に つ い て は,室 山 敏 昭 の 研 究 に くわ しい 。 室 山 敏 昭 「漁 業 生 活 と潮 の 語 彙 」,季 刊 人 類 学8-2, 1977, 116-146頁 。 同 「言 語 的 うつ わ と言 語 外 的 事 実-漁 業 生 活 と潮 の語 彙-」,季 刊人 類 学9-3, 1978, 107-157 頁 。 14) シ オ は,潮 汐 現 象 でみ られ る海 水 の 垂 直 的 な変 化 と,潮 流 現 象 でみ られ る海 水 の水 平 的 な変 化 の両 方 を 意 味 す る こ と ば と して 用 い られ て い る 。 15) 縄 が シオ の 流 れ の 影 響 を うけ るた め,漁 師 が 縄 を あ げ に く くな る 。 ま た シ オ の流 れ が速 す ぎ る と魚 のか か りが 悪 い 。

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-28-越 智 諸 島 椋 名 に お け る延 縄 漁 業 の 漁 場 利 用 形態(田 和) 317 第4図 潮 流 図 (ききと りに よ り作成) す る 。 そ の 後,(1)は 津 島 南 岸 を 西 流 した 後,本 流 に 合 流 す る。(2)は宮 ノ鼻 と火 内鼻 に あた っ て そ の一 部 に 反 流 を 生ぜ しめ な が ら南 流 した あ と, (a)ひとつ は 火 内 鼻 ∼ 武 志 島 間 の セ トを通 過 して 本 流 に合 流,(b)も うひ とつ は武 志 島 ∼ 中渡 島 間 の セ トを通 過 して 本 流 に 合 流,(c)そ して3つ め は直 接,本 流 に 合 流 す る シオ に 分 か れ る。 な お, (a)の一 部 は,正 味 鼻 に あ た っ て 下 田 水 の 湾 入 部 に 反 流 を 生 ぜ しめ る 。 ヒキ シ オ は,ミ チ シ オ の ほ ぼ 逆 を た ど る こ と に な る 。 し か し な が ら,ミ チ シ オ の 場 合 に は 宮 ノ 鼻 に あ た っ た シ オ が 反 流 を 生 じた が,ヒ キ シ オ では 宮 ノ鼻 に シオ が あ た る突 出 部が み られ な い ので,反 流 は ほ とん ど生 じな い。 また,浅 瀬 が 発 達 して い る と ころや,シ オが 直 接 島 し ょに あ た る部 分 に お い て は,潮 流 に と も な う複 雑 な湧 昇 流 が み られ る。 漁師 は,こ の 湧 昇 す る状 態 を 「シ オが わ く」 と表現 す る。 湧 昇 流 は,海 底 の 状 態 や シオ の速 さを推 定 す るた め の 目や す と もな る。 2 海 域 の 利 用 状 況 第6次 漁 業 セ ンサ スに よる と,渦 浦 漁 業 協 同 組 合16)地区(主 として椋名 で あるが,津 島,馬 島 なども含 まれ る)の 漁業 種類 別 経 営 体 数 は第1表 の とお りで あ る。 これ らは 16) 1979年7月 現 在 の 組 合 員数 は,正 組合 員130名,準 組 合 員170名,計300名 で あ る。

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第1表 漁業種類別経営体数 (第6次 漁業 センサ ス 〔1978年11月実施〕に よる) い ず れ も 個 人 経 営 体 で,企 業 経 営 体 は な い 。 底 び き 網 は,小 エ ビ類 を 漁 獲 対 象 とす る い わ ゆ る エ ビ こ ぎ 網 で あ る。 エ ビ こ ぎ 網 の 漁 場 は, 大 島 の 東 方 の シ サ カ ノ メ グ ラ(四 阪 島 周 辺)や 西 部 の キ ク マ マ エ(菊 間 町 の沖 合)な ど で あ る 。 し た が っ て,渦 浦 漁 場 とそ の 周 辺 に お い て は 操 業 は な さ れ な い 。 刺 網 に は,磯 建 網,ギ ザ ミ建 網 な どが 含 まれ る。 漁 場 は 大 島 沿岸 の岩 礁 帯 で,こ れ は周 年操 業 が 可 能 で あ る。 一 本釣 は,椋 名 で最 も多 い漁 業 種 類 で あ る。 漁 師 は い ず れ も3ト ン未 満 の小 型 船 を 使用 して い る。一 本 釣 漁 場 は,渦 浦 漁 場 とそ の 周 辺 に数 多 く存在 して お り,そ の主 要 な漁 獲 対 象 に は, タイ,ス ズ キ,ア コ ウ,タ チ ウ オ,サ ワラ,タ コな どが あ る(第2表)。 漁 期 はほ ぼ 周 年 で あ る。 しか し11月 頃 か ら翌 年 の3月 頃 まで は 漁 獲量 が 少 な く,こ の 期 間 に は多 くの漁 師 が 休 漁 す る。 一 本釣 の 漁業 暦 は,ほ ぼつ ぎ の とお りで あ る。 2∼3月 は,水 温 が1年 中 で 最 も低 くな る時 期 で,こ の時 期を 漁 師 は と くに カ ンザ メ と よび, ボ ンノ ハ ザ カ イ(後 述)と ともに,好 ま しい漁 期 と され な い。 冬 の こ の頃 に は,タ イは ほ とん ど 第2表 漁 獲 対 象 物

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-30-越智諸島椋名におけ る延縄漁業 の漁場利用形態(田 和) 319 漁 獲 され ず,ホ ゴや メバ ル が 漁獲 対 象 とな る。 4∼5月 に な る と,イ カ,タ コ釣 の最 盛 期 を む か える。5月 に は産 卵 期 の タ イが あ らわ れ は じ め る。 タ イ釣 は8月 頃 まで つづ け られ る。6∼ 8月 に か け て の時 期 は,タ イ釣 の ほか ス ズキ, ア コ ウ,タ チ ウオ釣 な ど も盛 漁 期 とな る。8月 末 か ら9月 に か け て は ボ ンノハ ザ カイ とよぶ 時 期 で,水 温 が1年 中 で最 も高 くな り,一 般 に 魚 の くい が悪 くな る。 そ こで,補 足 的 に ギザ ミ釣 や アジ釣 が お こなわ れ る。10∼11月 に は 再 び タ イ釣 が お こなわ れ る。 一 本 釣 の海 上 で の 漁撈 活 動 時刻 は 日出後 か ら 日没 前 ま で の間 で,活 動 時 間 は ふ つ うは5∼6時 間 で あ る。 しか し,な か に は1日 に12∼13時 間 も操業 す る漁 師 が あ る。 延 縄 漁 業 経 営 体 数 は,一 本 釣経 営 体数 に つ い で多 い。 漁 獲 対 象 と して は,椋 名 で イ ソ と よぶ 浅 海 部 の海 底 の岩 礁 問 に棲 息 す る魚 種 が 中心 で あ る(第2表)。 なか で も,ホ ゴ,タ モ リ,ア ナ ゴの3魚 種 が 多 い。 これ らは い ず れ も周年 に わ た っ て漁 獲 され るが,11月 頃 か ら翌 年 の4月 頃 に か け て は ホ ゴが,5月 頃 か ら10月 頃 に か け て は タ モ リ とア ナ ゴが 多 く漁 獲 され る。 この2つ の漁 期 の うちで,ホ ゴが 多 くとれ る時 期 の漁 を, 延 縄 漁 師 は,ホ ゴナ ワと よび,タ モ リ ・ア ナ ゴ が 多 く とれ る時期 の漁 を タモ リナ ワ と よん で そ れ ぞ れ 明確 に 区 別 して い る。 ホ ゴナ ワ とタ モ リ ナ ワの2つ 以 外 に も,ア ナ ゴナ ワが あ る。 これ は ドベヂ とよば れ る海 底 が砂 泥 質 か らな る漁 場 に 特 有 の アナ ゴ漁 を さす 。 漁 場 の性 格 が 他 とは や や こ とな る この アナ ゴナ ワは,周 年 操 業 され るが,好 漁期 は11月 頃 で あ る。 後 述 す る よ うに, ドベ ヂ の 延 縄 漁場 は,渦 浦 漁 場 周 辺 に は1ヵ 所 しか 存 在 せ ず,現 在 そ の海 域 で は2名 ほ どの 漁 師 が,操 業 す るにす ぎ な い。 した が って,主 要 な 年 間 の 延縄 漁撈 活 動 は,秋 か ら春 に か け て の ホ ゴナ ワと,春 か ら秋 にか け て の タモ リナ ワの 2つ に 大 別 され る。 な お,ホ ゴは 昼 行 性,タ モ リ ・アナ ゴは夜 行 性 で あ る。 そ の た め,魚 の 習 性 に と もな って,ホ ゴナ ワの操 業 時 間 帯 は 早朝 か ら昼 間 に ほ ぼ か ぎ られ,タ モ リナ ワは 早 朝 か 夜 間 に,ア ナ ゴナ ワは早 朝 か 日没 頃(バ ンノマ ジ メとよばれ る)に お こなわ れ る(第3表)。 しか も, 前 述 した よ うに,延 縄 は トロ ミの 時 間 帯 を選 ん で操 業 され な けれ ば な らな い 。 した が って,延 縄 漁 業 で は厳 密 な シオ の選 択 が 要 求 され,魚 の 習 性 もあ い ま っ て,操 業 時 刻 が 他 の 漁 業 に 比べ てか な り制 限 され るの で あ る。 こ うした事 情 が, 漁 師 に潮 汐 現 象 の微 妙 な 変 化 に も関 心 をむ け さ せ る こ とに な り,潮 汐 現 象 に 関 して も きわ め て 多 様 な名 称 を もた ら して い るの で あ る 。 第3表 延 縄 の 種 類 以 上 の 漁 業 種 類 の ほか,椋 名 で は,潜 水 漁 業 ・イ カ ス漁 業 もわ ず か な が ら認 め られ る。 潜 水 漁 業 で は,セ トガ イ が お もな採 取 対 象 と され る。 そ の操 業期 間 は11月 頃 か ら翌 年 の3月 頃 まで で あ る。1978年 度(1978年11月 ∼1979年3 月)に は,地 元 船1隻(刺 網経営体が併営)と 宮 窪 町 の 漁 船2集 が操 業 した が,1979年 度 に は 全 く操 業 され な か った。 潜 水 漁 業 に使 用 され る漁 場 は,馬 島 や 武 志 島付 近 の潮 流 の速 い 場 所 に ほ ぼ 限 られ,水 深 は40mに も お よぶ 。 操業 は 朝7 時 頃 か ら夕方4時 頃 ま でで あ る。 潜 水 夫 は,モ グ リと よば れ るが,小 潮 の時 に は3∼4時 間, 大 潮 の 時 で も1∼1.5時 間 連 続 して 海 底 で 作業 す る。 イ カス は,ニ レの木 の枝 を い れ た 多 数 の カ ゴ を連 結 して海 底 に沈 め,産 卵 のた め に カ ゴに入 った イ カ を とる漁 法 で あ る。 主 と して コ ウイ カ が 漁獲 され る。 椋 名 で は 漁 協 の 正 組合 員 だ けが この漁 業 を お こな う権 利 を 有 す る。 漁期 は4月

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-31-か ら6月 まで に 限 られ る。 した が って,イ カス 漁 業 を 専 業 とす る経 営 体 は な く,延 縄,一 本釣 漁 業 者 が 併 営 す る場 合 が 多 い。 漁 場 は,津 島 の 北 側 に あ る セ キ ゼ ン とよぶ,水 深25∼30mの 砂 泥 地 だ け に 限 られ る。 これ ら6つ の 漁業 種 類 の ほか,椋 名 で は近 年 まで イ ワ シ地 び き網 漁 が存 在 して い た 。 これ は 産 卵 の た め に 砂地 の藻 場 に よる カ タ クチ イ ワシ を 漁 獲 す る もの で あ る。 地 び き網 の操 業 は,4 月 か ら5月 に か け て の夜 間 で,そ の漁 場 とな っ た の は 大 島 沿岸 の 砂浜 の発 達 した 場 所 で あ った 。 しか し,こ れ は カ タ クチ イ ワシ の漁 獲 量 の 著 し い 減 少 に よ って,現 在 で は ま った くお こな わ れ て い な い 。 III 延 縄 漁 師 お よび 延 縄 漁 撈 活 動 1 延 縄 漁 船 と 延縄 漁 師 椋 名 の延 縄 漁 船 は, 13隻 を 数 える(第4表)。 これ らの漁 船 は,の り くむ 漁 師 の 数 に よ って,MN-1か らMN-4ま で のオ オ ナ ワと,MN-5以 下 の コナ ワに 大 別 され る。 この 区 別 は,延 縄 漁 船 が 無 動 力 で あ っ た 時 代 か らの もの ら しい。 当時,多 くの漁 獲 量 を 得 るた め に は,船 頭 で あ るカ ジ トリ と縄 を ひ き あげ る者1名,縄 か ら魚 を はず す 者1名 の 計 3名 の漁 師 が1隻 の 漁 船 に必 要 とされ た 。 こ の 漁 船 が,オ オ ナ ワ と よばれ,1隻 に1∼2名 が の り くんで 操 業 す る コナ ワと区別 され た ので あ る。 現 在 で は,MN-4の よ うに2名 で 操 業 す る オ オ ナ ワ もあ る ので,オ オ ナ ワは3人 乗 りの延 縄 漁 船 を必 ず しも意 味 して い るわ け で は な い。 現 在 オ オ ナ ワ と よば れ て い る延縄 漁船 は,1回 の操 業 に お い て多 くのナ ワバ チ17)を使 用 す る漁 船, す なわ ち使 用 す る縄 の長 さが 長 く,1回 の操 業 で の漁 獲 量 が 多 い 漁 船 を 意 味す る。 したが っ て, 漁 獲 量 の相 対 的 な多 寡 とい うこ とで は,無 動 力 船 が 中心 で あ った 当時 の 漁 師 の 分類 と矛 盾 しな い。 この点 につ い て,コ ナ ワの 漁 師 が,オ オ ナ ワを 「魚を よ く とる船 」 と説 明 す る こ と と一 致 す る。 オ オ ナ ワが1回 の操 業 で さば くナ ワバ チ の数 は,MN-4の 場合 に は24∼25と や や少 な い が,こ れ 以 外 の オ オ ナ ワで は35∼36ハ チ で あ る。 これ は コナ ワが 使 用 す るナ ワバ チ数 の2倍 以上 に お よぶ。 また,オ オ ナ ワは,ナ ワバ チ を 数 多 く使 用 す る 関係 上,コ ナ ワよ りも大 型 の漁 第4表 延 縄 漁 船 一 覧 表 * 経 験 年 数 は 最 年 長 者 の年 数 (1980年9月10日 調査) 17) 縄 を お さ め る 容器 の こ と。

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-32-越智諸 島椋名 におけ る延縄漁業 の漁場利用形態(田 和) 321 船 と な っ て い る 。 し か し,こ の よ う な オ オ ナ ワ と コ ナ ワ の 区 別 は,必 ず し も固 定 した も の で は な い 。 た と え ば, MN-5の コ ナ ワ は オ オ ナ ワ に 劣 ら な い 大 型 の 新 造 船(2.5ト ン)で あ り,1回 の 操 業 で さ ば く ナ ワ バ チ の 数 を ふ や し て 漁 獲 量 を 多 くで き れ ば, こ の 漁 船 は オ オ ナ ワ と し て 扱 わ れ る と い う こ と で あ る 。 13の 延 縄 漁 船 は い ず れ も個 人 で 経 営 さ れ て い る 。 乗 組 員 が1名 で あ る漁 船(MN-6, MN-7, MN-8, MN-11, MN-13)を 除 い た 他 の 漁 船 の 乗 組 員 の 構 成 を み る と,父 子 が2例(MN-5, MN-12),父 子 お よび 父 の 弟 が2例(MN-1, MN-2),夫 婦 が2例(MN-9, MN-10),夫 婦 お よ び そ の 息 子 が1例(MN-3),兄 弟 が1例 (MN-4)と な っ て い る 。 こ の よ うに い ず れ もが, 家 族 内 成 員 と近 親 者 に よ っ て 構 成 さ れ て い る 。 縄 を 整 理 す る さ い に 手 伝 う者 も 同 様 に 家 族 内 成 員 で,MN-1に 参 加 す る1名(漁 船 に の り くんで い る兄 弟 の母)を 除 く と,い ず れ も 乗 組 員 の 配 偶 者 で あ る。 お の お の の 延 縄 漁 船 の 操 業 期 間 に は,周 年 に お よ ぶ も の と,休 漁 期 を も つ も の とが あ る 。 周 年 操 業 す る 漁 船 は,オ オ ナ ワ4隻 と コ ナ ワ6隻 (MN-7∼MN-12)で あ る。 し か し,き き と りに よれ ば,こ の うち のMN-7とMN-11の 年 間 操 業 日数 は,他 の 漁 船 の そ れ と比 較 す る と,か な り少 な い 。 残 りの3隻(MN-5, MN-6, MN-13) は い ず れ も コ ナ ワで,こ れ ら の 操 業 期 間 は4月 か ら11月 ま で で あ る 。 こ の 間 に は タ モ リナ ワ の 盛 漁 期 が 含 ま れ る 。 休 漁 期 の4ヵ 月 間 は,ホ ゴ ナ ワ の 盛 ん な 時 期 に あ た る 。 こ の 期 間 中,乗 組 員 の 中 に は,四 国 方 面 へ 酒 造 業 の 出 稼 ぎ に で る も の(MN-5の 父,MN-6),大 島 に あ る 造 船 所 で 一 時 的 に 勤 務 す る も の(MN-5の 息 子),み か ん 栽 培 を 主 と す る農 業 に 従 事 す る も の が い る。 と こ ろ で,コ ナ ワ の う ち の7経 営 体 が,4月 か ら6月 に か け て イ カ ス 漁 業 を 併 営 す る 。 2 延 縄 の 道 具 と エ サ 椋 名 で 操 業 さ れ る 延 縄 は,い わ ゆ る 「底 延 縄 」 で あ る 。 漁 具 の 構 成 に つ い て は,ホ ゴ ナ ワ,タ モ リナ ワ,ア ナ ゴ ナ ワ と も ほ とん ど か わ ら な い 。 縄 は ナ ワバ チ の 中 に 巻 く よ うに して 準 備 さ れ る。 幹 縄 は 木 綿 製 で, ホ ゴ ナ ワ,タ モ リナ ワに は よ り糸 数200∼240の も の が 使 用 さ れ る 。 た だ し,海 底 が 起 伏 に とむ 漁 場18)では,漁 師 が 縄 を ひ き あ げ る さ い に 縄 が 岩 礁 に ひ っ か か っ て 磨 滅 しや す い た め,普 通 よ り 太 い め の よ り糸 数280の 縄 が 用 い られ る 。 こ れ に 対 し て ア ナ ゴ ナ ワ で は,よ り糸 数120前 後 の 細 い 縄 が 使 用 さ れ る 。 これ は,ア ナ ゴ ナ ワが ド ベ ヂ,つ ま り砂 泥 質 の 海 底 に お い て 操 業 さ れ る た め,ホ ゴ ナ ワや タ モ リナ ワ の 場 合 の よ うに, 縄 が 岩 礁 に ひ っ か か っ て 損 傷 す る こ とが な い か らで あ る 。 1ハ チ に お さ め ら れ る 縄 の 長 さ は100ヒ ロ (150m)前 後 で あ る 。 こ れ に,長 さ1∼2ヒ ロ (1.5∼3m)の 枝 縄19)(ヒエ ダ とよ ばれ る)が30か ら 50ぐ ら い 結 ば れ る 。 枝 縄 は よ り糸 数16∼18の 木 綿 糸 で あ る 。 こ の 枝 縄 の 端 に10号 前 後 の ナ イ ロ ン糸(長 さ40∼50cm)が 結 ば れ,さ ら に そ の 先 に12号 か13号 の 「ユ ゲ バ リ」 が つ け ら れ る 。 沈 子 に は 重 さ800∼1200gの 自然 石 が 使 用 さ れ,枝 縄6∼7本 ご と に1個 の 割 合 で 結 ば れ る 。 し た が っ て,1ハ チ に6∼7個 の 沈 子 が つ け ら れ る こ と に な る。 沈 子 に 使 用 さ れ る こ の 自然 石 は,大 島 南 西 部 の 南 浦 や 津 島 の 海 岸 に お い て 採 取 さ れ る 。 エ サ は,塩 サ バ の 切 身,小 エ ビ類,イ カ ナ ゴ で あ る。 こ れ ら の 使 用 は 漁 獲 対 象 に よ っ て 当 然 こ と な り,塩 サ バ は ア ナ ゴを,小 エ ビ類 は お も 18) 漁 師 は,こ の よ うな 漁 場 を,「 底 が あ らい と ころ 」 と表 現 す る 。 19) 枝 縄 の 長 さは,目 的 魚 の棲 息深 度,潮 流,取 扱 作 業 の 内 容 な ど を考 慮 して,決 定 され るべ きで あ る,と され る(九 州 ・山 口 ブ ロ ッ ク水 試 漁 業 分 科 会 編 『西 日本 海 域 に お け る延 縄 漁 業 』,恒 星 社 厚 生 閣,1973, 194頁)。

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に タモ リとホ ゴをね ら うエサ であ る。 イ カナ ゴ は 延 縄 の エ サ と して有 用 で,こ れ に よれ ば,タ モ リ以外 の 魚種 を捕 獲 す る こ とが 可 能 で あ る。 した が って,椋 名 で は,オ オ ナ ワ4隻 が ひ き網 に よ るイ カナ ゴ漁 を お こな い,延 縄 の エ サ の 自 給 を は か って い る。 イ カ ナ ゴは12月 頃 か ら7月 頃 まで使 用 され て い る。 ち なみ に,そ の 漁 場 は, 大 三 島 の 南 の ヨ コス,今 治 市 桜 井 の唐 子 浜 沖 合 の 砂地 な どで あ る。 これ に 対 して 塩 サ バ(2枚 に お ろ され た もの)は 今 治 の問 屋 か ら購 入 され, 小 エ ビ類 は地 元 の エ ビこ ぎ網 の 従 事 者 か ら供 給 され る。 塩 サバ は長 さ3∼4cm,幅0.8∼1cm に切 られ て ハ リにつ け られ る。1枚 の 片 身 か ら 用 意 され る エ サ の数 は24∼25で あ る。 また,小 エ ビ類 の場 合,エ サ に用 い られ る もの は,主 と して シ ロエ ビ(ヨ シエ ビ),ガ ラハ チ エ ビ(ア カ エ ビ,ト ラエ ビ)な どの クル マ エ ビ族 で あ る。 こ れ らの エ ビは1尾 ず つ ハ リに つ け られ た あ と, 頭 部 だ け が取 り除か れ る。 た だ し,ガ ラハ チ エ ビは 殻 が か た く,魚 の くい が 悪 い とい う理 由 か ら,ム キ身 に され る の で あ る。 3 漁 撈 活 動 の実 態 本 節 で は,ヒ ヨ リナ ワ を直 接 観 察 して得 た 資 料 を も とに して,出 漁 準 備 か ら海 上 で の操 業 を 終 えて 帰港 す る まで の 延 縄 漁撈 活 動 を,時 間経 過 に した が って 記 述 す る。 資 料 は1979年7月10日 に 得 た 。 筆 者 が 乗 船 ・ 観 察 した の は,コ ナ ワ に属 す るMN-6の 漁 船 で あ る。 乗 組員 は1名 で あ る。 漁 は,津 島 と大 突 間 島 の 南 に あ る通 称 ナ ガ イ ソに お い て お こな わ れ た 。 この 漁 で使 用 した ナ ワバ チ は11を 数 え た 。 この 目の最 初 の干 潮 時 刻 は,午 前4時45分 (概値)で あ る。 午 前2時,椋 名漁 港 に繋 留 され て い る漁 船 上 に お い て エ サ づ け を開 始 。 縄 は,前 回 の 出 漁 後 に整 理 され,今 回 の 漁 の た め にす で に準 備 され て い る。 エサ に は 塩 サ バ と小 エ ビが使 用 され た 。 3時32分,エ サ づ け が 完 了。 エ サ づ け に は, 約90分 を 要 した 。 つ い で,ナ ワバ チ の縄 を 結 び あわ せ なが ら,ナ ワバ チ を 船 尾 側 に つ ぎ つ ぎ積 み あ げ て ゆ く。 最 初 と最 後 の ナ ワバ チ の縄 を浮 標 縄(ウ ケノとよばれ る)に 結 び つ け る。 この作 業 を終 え る と,干 潮 時刻 を 考 慮 して,港 内で 待 機 す る。 出港 直 前 に な る と,縄 を しめ らせ て海 中 に いれ や す くす るた め,す べ て の ナ ワバ チに ヒ シャ クで 海 水 を か け て ゆ く。 4時10分,出 港 。 4時15分,ナ ガイ ソ漁 場 へ 到着 。 漁 師 は,漁 船 の エ ンジ ンを ニ ュー トラル に した の ち,付 近 の 島や 山 のか た ち,灯 台 の 光 な どを指 標 と して ヤ マ タ テを お こな い,縄 を い れ る漁場 を確 認 す る。 こ の ときに は,漁 師 は,シ オ の流 れ る速 さ につ い て も知 る必 要 が あ る。 そ れ に は,い った ん漁 船 を シ オ の流 れ に まか せ,流 れ の方 向 に平 行 な遠 近2つ の島 や 山 の 動 き具合 を み る こ とに よっ て,流 速 を 判 断 す る。 つ ま り,漁 師 に とっ て は,手 前 に あ る島 や 山 は 漁船 が流 され る方 向 と反 対 の方 向に 進 む よ うに み え,そ の背 後 に あ る 島や 山 は漁 船 と同 じ方 向 に進 む よ うにみ え る の で あ る。 そ こで,漁 師 は,2つ の 島や 山 が 離 れ てゆ く速 さ の程 度 か ら,漁 船 の速 さ,す なわ ちそ の時 の シオ の 流 れ る速 さを判 断 で き るわ け で あ る。 また,漁 師 は これ 以外 に,湧 昇 流 に よ っ て もた らされ る海 面 が わ きあ が る よ うな 状 態 か らも,シ オの 流 れ ぐあ い を推 定 す る。 4時23分,最 初 の 浮標 を海 中 に投 げ い れ,つ づ い て縄 を い れ 始 め る。 浮標 は発 泡 ス チ ロール 製 で,真 中 に は 夜 間 で も識 別 され うる よ うに, 電 灯 が つ け られ て い る。縄 は,必 ず シオ の流 れ 20) この現 象は,「 運動視差」 とよばれ る。運動視差 とは,観 察者 の位置 の変化に伴 う静止対象の動 きの方向の変 化をい う。ある一 点を凝視 しなが ら,観 察者が位置 の移動 を行 な うとす ると,そ のときの視野 内に あるいろいろな物体 は,そ の凝視 している一点 との相対的関係 におい て位置 の移動を行 ない,凝 視点 よ りも遠方にあ るものは,観 察者の移動の方 向 と同方 向に移動 し,凝 視 してい るところよ りも前方に あるものは,観 察者の移動方向 とは逆の方向に移動を起 す(和 田陽平 ・大山 正 ・今井省吾編 『感覚+知 覚心理 学ハン ドブ ック』,誠信書房,1969, 439頁)。

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-34-越 智諸島椋名における延 縄漁業 の漁場利用形態(田 和) 323 の 上 手(シ オ ノボ リ)か ら 下 手(シ オサ ゲ)に 向 か って いれ られ る。 漁 師 は,こ れ まで の経 験 に よっ て海 底 の地 形 の状 態 や シ オの 流 れ 具合 を熟 知 して い るので,そ の判 断 に した が って,漁 船 の 向 きを か えた り,あ るい は ニ ュ ー トラル に し て お い た エ ンジ ンを き りか え た りしな が ら,縄 を いれ て ゆ く。 4時38分,MN-6の 南 側 で 操 業 し て い た延 縄 漁 船 がMN-6に 接近 して きた た め,MN-6 の 漁 師 は縄 を い れ よ うと して い た 場所 を変 更 。 4時43分,縄 を い れ 終 え,最 後 の 浮標 を投 げ る。 4時45分,最 初 に い れ た 浮標 に 向 か っ て移 動 を 開 始 。 4時50分,最 初 の 浮標 の と ころへ 到 着 。 浮 標 を 船 上 に あげ た 後,た だ ち に縄 あげ を 開 始 す る。 魚 が あ が って くる と,漁 師 は,そ れ を1尾 ず つ バ リか らは ず す か,ナ イ フで ナ イ ロ ン糸 の一 部 と と も に切 り落 と して し ま う。 魚 は イ ケ ス の中 に ほ う りこ まれ る。 5時52分,縄 あ げ を終 了。 簡 単 に船 上 の 掃 除 を した 後,漁 港 へ 向 か う。 6時03分,帰 港 。 この 日のMN-6は,出 漁 準 備 か ら漁 を お え て 帰 港 す る まで,海 上 で 実 質 約120分 の作 業 を お こな って い た こ とに な る。 4 漁撈 活動 時 間 延縄 漁 撈 活 動 は,仕 事 の 内 容 か らみ て以 下 の3つ に大 別 され る。 (1) 出漁 準備 漁 港 に お いて お こなわ れ る。 活 動 時 間 のほ とん どが,エ サづ け作 業 に 費 や さ れ る。 (2) 海 上 で の活 動 コナ ワMN-6の 観 察 例 で くわ し く述 べ た よ うな,漁 港 と漁 場 間 の移 動,漁 場 に お け る 延縄 の操 業 な どが 含 まれ る。 (3) 漁 具 の整 理 次 の 出漁 のた め の 漁 具 の 整 理 で,帰 港 後,主 と して 港 内 でお こな わ れ る。 これ は,海 上 で使 用 した 縄 を ナ ワバ チ に も ど し な が ら,切 れ た ナ イ ロ ン糸 や,い た ん だ ハ リな どを つ け か え る作 業 で あ る。 な お,帰 港 直 後, 短 時 間 の うち に な され る漁 獲 物 の水 揚 げ お よび 漁 船 の清 掃活 動 も,便 宜 上,こ の活 動 の うち に 含 め て あ る。 3つ に 大別 され る延 縄 漁 撈 の 活 動 に 要 す る時 間 を それ ぞれ につ い て 図 示 した の が 第5図 で あ る。 これ は,1979年11月13日 と16目 の2日 間, 筆 者 が漁 港 に いて,オ オナ ワ3例 と コナ ワ2例 の 延縄 漁 船 につ い て,そ れ ぞ れ の(i)港内 に お け る出 漁準 備 開 始 時 刻,(ii)出港 時 刻,(iii)帰港 時 刻, (iv)港内 に お け る漁 具 整 理 作業 の 終 了時 刻,を 観 察 し記 録 す る ことに よ って 得 られ た もの で あ る。 それ ぞれ の活 動 は,普 通,連 続 して お こなわ れ る。 た だ し,漁 具 の 整 理 活 動 は,漁 師 が 一 旦 帰 宅 して休 養 した 後,再 び 漁 港 に 戻 って か らお こなわ れ る場 合 が あ る。 これ ら5例 のお のお の が,(1)の 出漁 準 備 と(2) の海 上 で の活 動 に 要 した 人 員 は,MN-1, MN-2 で は と もに 男子3名,MN-3で は 男子2名 と 女 子1名 の計3名,MN-9で は 男女1名 ず つ 第5図 漁 撈 活 動 時 間(1979年11月)

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-35-計2名,MN-12で は 男 子2名 で あ っ た 。 ま た, (3)の漁 具 の 整 理 に は,MN-1で 男 子1名 と女 子2名 の 計3名 が,MN-2で は 女 子3名 が, MN-12に は 女 子1名 が さ ら に 加 わ っ た 。 し た が っ て,漁 具 の 整 理 に 要 した 人 員 は,オ オ ナ ワ に 属 す るMN-1とMN-2で は6名,コ ナ ワ の MN-12で は3名 で あ っ た 。 こ れ は,ナ ワ バ チ の 数 を そ の ま ま 反 映 した も の で あ る。 そ こ で, 海 上 で 使 用 さ れ た ナ ワバ チ の 数 を み る と,MN -1, MN-2が い ず れ も36ハ チ,MN-3が34ハ チ,MN-9が15ハ チ,MN-12が16ハ チ で あ っ た 。 3つ の 活 動 時 間 の うち,出 漁 準 備 活 動 時 間 に は,120分 か ら180分 が 費 や さ れ て い る 。 た だ し, 16日 のMN-3は,漁 港 に 出 て く る の が 遅 れ た の で,82分 間 で エ サ づ け を 完 了 して い る 。 ま た, 海 上 で の 活 動 時 間 は,オ オ ナ ワで230分 前 後, コ ナ ワ で150分 前 後 で あ る 。 さ らに3番 目 の 漁 具 の 整 理 活 動 に は,出 漁 準 備 活 動 時 間,海 上 で の 活 動 時 間 以 上 に,長 い 時 間 が 必 要 と さ れ る 。 こ れ に は,オ オ ナ ワ の 場 合 で300分 以 上,コ ナ ワで は200分 か ら250分 が 費 や さ れ る 。 と くに, 13日 のMN-3(オ オ ナ ワ)は485分 を 費 や して い る 。 そ れ ぞ れ の 活 動 に 要 す る 総 時 間,す な わ ち, 1回 の 操 業 に 要 す る 時 間 の 合 計 は,オ オ ナ ワで 700分 以 上,コ ナ ワ で500分 か ら600分 と な る 。 こ の ほ か に,オ オ ナ ワ は,12月 か ら翌 年 の7月 頃 ま で,7∼10日 に1度 の 割 合 で 夜 間 に イ カ ナ ゴひ き に 出 漁 す る 。 こ れ に は,出 漁 準 備 か ら帰 港 後 の 作 業 ま で を ふ くめ て,約200分 が 必 要 と さ れ る 。 した が っ て,イ カ ナ ゴ ひ き に 出 漁 し, か つ 延 縄 に 出 漁 す る 場 合 に は,オ オ ナ ワ は じつ に1000分 近 い 漁 撈 活 動 に 従 事 す る こ と に な る の で あ る 。 IV 延 縄 漁 場 利 用 形 態 の 分 析 1 延 縄 漁 場 第6図 は 延 縄 漁 師 へ の き き と りか ら得 た資 料 に よっ て作 成 した 延 縄 漁 場 分 布 図 で あ る。 第5表 に は各 漁 場 の 自然 的 条件(底 質,水 深な ど)を 示 した。 延 縄 漁 場 は 渦浦 漁 場 とそ の周 辺 部 に21ヵ 所 存 在 す る。 これ らの 漁場 の うち で,椋 名 の集 落 よ り北 に 位 置 す る漁 場 は シモ セ,南 に 位 置 す る漁 場 は カ ミセ と 総 称 され る。 シ モ セ に は図 中 の No.1∼8の 漁 場 が,カ ミセ に はNo.14∼21の 漁 場 が ふ くまれ る。 た だ し,こ うした 漁 場 の位 置 に よる分 類 は 相 対的 な もの で あ り,シ モセ, カ ミセ の 中 間 に あ るNo.9∼13の 漁 場 は,そ の どち らに も属 さな い し,漁 師 が この4漁 場 を と くに総 称 す る こ と もな い。 底 質 に つ い て み る と,津 島 の北 に位 置 す るセ キ ゼ ンだ け が砂 泥 質 の ドベ ヂ で,そ の他 の 漁 場 は い ず れ も岩 石 質 の イ ソか らな る。 水 深 は,浅 い 漁 場 で10∼40m,深 い漁 場 で は100m以 上 に も達 す る。 そ れ ぞ れ の イ ソは,漁 師 に よる と, 「か な り傾 斜 が あ り,起 伏 に とんで い る とこ ろ」 で あ る。 各 漁 場 に お い て 漁 獲 され る 魚種 は,ホ ゴ,タ モ リ,ア ナ ゴな どで あ る。 ただ し,セ キ ゼ ンで は ア ナ ゴだ け に 限 られ る。 いず れ の 漁 場 も周 年 に わ た って利 用 され る可 能 性 を 有 す る。 (i) 漁 場 と シオ との 関 係 漁 師 は,各 漁 場 に お い て1日 に3な い し4回 生 じる トロ ミのす べ てを 利 用 で き るわ け で は な い。 漁 師 に よる と, 各 漁 場 には 適,不 適 の シオ 加 減 が あ る とい う。 つ ま り,漁 師 は,各 漁場 に お い て は どの シ オの トロ ミを 利 用 で き るの か とい うこ とを把 握 して お り,そ の知 識 に も とづ い て 出漁 漁 場 を決 定 す るわ け で あ る。 21の 漁場 を,利 用 で き る トロ ミとの 関 係 に よ って分 類 す る と,以 下 の よ うに な る(第6図, 第5表)。 (1) 干 潮 時 の トロ ミを 利 用 で きる 漁場(ヒ ヨ リナ ワがお こなわれ る8漁 場)

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-36-越 智 諸 島 椋 名 に お け る延 縄 漁 業 の 漁 場 利 用 形態(田 和) 325 第6図 延縄漁場分布図 シ タ ノ ウ ズ(図 中 のNo.3;以 下()内 は 漁 場 の 番 号 を 表 わ す),ツ シ マ ベ ラ(No.5),オ キ ノ イ シ(No.6),ナ ガ イ ソ(No.7),ト リ ゴ ヤ ノ ハ ナ(No.17),ウ マ シ マ 東 南(No.18), タ テ ヤ マ(No.19),カ ン ネ ノ イ ソ(No.20) (2) 満 潮 時 の ト ロ ミ を 利 用 で き る 漁 場(タ タ エ ナ ワ が お こ な わ れ る8漁 場) ヨ コ ジ(No.2),モ タ エ(No.4),ト ワ イ (No.10),ジ ョ ウ ト(No.12),コ ウ ノ セ (No.13),ヒ ナ イ バ ナ(No.14),タ カ ジ(No. 16),イ マ バ リ ノ オ キ(No.21) (3) 干 ・満 潮 時 両 方 の ト ロ ミ を 利 用 で き る 漁 場(ヒ ヨ リナ ワ,タ タ エ ナ ワ の 両 方 が お こ な わ れ る4漁 場) セ ト(No.8),オ オ ズ ミ ノ ハ ナ(No.9),イ エ ノ マ エ(No .11),ミ ズ バ ノ オ キ(No.15) (4) シ オ に 関 係 し な い 漁 場(1漁 場) セ キ ゼ ン(No.1) (4)の セ キ ゼ ン は ア ナ ゴ ナ ワ の 漁 場 で あ る。 こ こ で は,シ オ の 干 満 に 関 係 な く,ア ナ ゴ の 索 餌 時 間 に 合 わ せ て 操 業 が な さ れ る 。 漁 場 に よ っ て 利 用 で き る ト ロ ミが 異 な る こ と に つ い て,漁 師 は,「 干 潮 の 時 に シ オ が と ろ ん だ り,そ うで な か った り,満 潮 の 時 に シ オ が と ろ ん だ り,そ うで な か っ た りす る か ら 」 と説 明 す る 。 つ ま り,漁 場 に よ っ て,転 流 時 前 後 に シ オ の 流 れ が ゆ る や か に な る 場 合 と,そ の よ うに は な らな い 場 合 と が あ るわ け で あ る 。 筆 者 は,こ の 現 象 が 渦 浦 漁 場 とそ の 周 辺 の 複 雑 な 潮 流 に 関 係 し て い る の で は な い か と考 え て

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-37-第5表 各 漁 場 の 性 質 い る。 第6図 を み る と,同 じ性 質 を もつ 漁 場 が 数 ヵ所 に 集 中 して い る こ とがわ か る。 干 潮 の ト ロ ミを 利用 で き る8漁 場 は,津 島 の南 側 と馬 島 の 南 側 に 集 中 す る。 これ らの漁 場 に おい て は, 転 流 後 に 南 へ 流 れ始 め る ミチ シ オが 直 接 あた ら な い こ とが,干 潮 時 の トロ ミの利 用 を 可 能 に し て い る もの と思 わ れ る。 これ に対 して,満 潮 の トロ ミを利 用 で きる8漁 場 は,小 島,馬 島 の 北 側 に み られ,干 潮 時 の それ とは 対 照 的 な位 置 を 占 め る。 これ は転 流 後 に北 へ 流 れ始 め る ヒキ シ オ が直 接 あ た らない こ とに よ るの で あ ろ う。 ま た,干,満 潮 両 方 の トロ ミを 利用 で きる漁 場 は, 大 島 の沿 岸 部 に多 い 。 これ らの 漁場 は,ホ ン シ オが 直 接 影 響 を お よぼ さな い と ころ で あ る。 (ii) 漁 師 に よ る漁 場 の選 択 漁 師 は,原 則 的 に は前 述 した21の 漁 場 の い ず れ に 出漁 して も良 い。 第6表 は,各 漁 船 が よ く利 用 す る漁 場 を き き と りに よ り 明 らか に した もの で あ る。MN-13 は常 に ア ナ ゴナ ワを お こな って い るの で,セ キ ゼ ンの み を利 用 してい る。 トロ ミを 意 識 して 出 漁 す る残 り12隻 は,そ れ ぞ れ2∼5漁 場 を 利用 して い る こ とが わ か る。 漁 師 は,「 ひ とつ の漁 場 に続 け て行 きだ した ら,そ こに 自分 の ナ ワバ リみ た い な も のが で き る」 とい う。 お の お の の 漁 師 はす べ て の 漁 場 の 性 質 に つ い て精 通 してい るわ け で は な い。 した が って,操 業 す る漁 場 は, 各 自が 利 用 しや す い数 ヵ所 に 限 られ て しま うこ とに な る わ け で あ る21)。 ま た,MN-1とMN-2, MN-5とMN-9, MN-6とMN-7, MN-11とMN-12は ほ ぼ 同 じ 漁 場 を 利 用 し て い る 。 ひ とつ の 漁 場 に お い て 操 業 で き る 漁 船 数 は,必 ず し も1隻 と は 限 られ な い 。 広 い 漁 場 で は2∼3隻 が 同 時 に 操 業 で き る と い う こ と で あ る 。 と くに,MN-1, MN-2 は 意 識 的 に 同 じ時 刻 に 同 じ漁 場 に お い て 操 業 し 21) 漁 場 の性 質 に 関 す る さ ま ざ まな 知 識 は,出 漁 した さい に,父 が 子 に 教 え た り,自 ら縄 を 何 度 も操 作 す る こ とな どに よ って 体 得 され る。

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-38-越智諸島椋名におけ る延縄漁業の漁場利用形態(田 和) 327 第6表 各延 縄漁船が よ く利用す る漁場 (漁師へ のききと り結果 よ り作成) て い る。 と こ ろ で,第6表 か ら,21漁 場 の うち の6漁 場(ヨ コ ジ,シ タ ノ ウズ,ヒ ナ イバ ナ,ト リゴヤ ノ ハ ナ,ウ マ シマ東 南 ,カ ンネノイソ)は ほ とん ど利 用 さ れ て い な い こ と が わ か る 。 干,満 潮 両 方 の ト ロ ミを 利 用 で き る 漁 場 の 中 で も,セ ト,イ エ ノ マ エ の よ うに,ヒ ヨ リ ナ ワ と タ タ エ ナ ワの 両 方 が お こ な わ れ る 漁 場 と,オ オ ズ ミノ ハ ナ の よ うに ヒ ヨ リナ ワ の さ い に しか も ち い られ な い 漁 場 とが 存 在 し て い る 。 2 延 縄 漁 船 に よ る トロ ミ の 利 用 形 態 す で に 詳 し く述 べ た よ うに,延 縄 の 漁 撈 活 動 に は, 500∼700分 が 必 要 で あ る 。 した が っ て,現 在 の 操 業 形 態 で は1日 に2回 の 操 業 は ほ と ん ど不 可 能 に ち か い 。 つ ま り,い ず れ の 延 縄 漁 船 も1日 に3な い し4回 生 じ る ト ロ ミ の うち,ひ と つ の トロ ミだ け し か 利 用 で き な い の が 現 実 で あ る 。 そ こ で,つ ぎ に は,漁 師 が 実 際 に は ど の ト ロ ミを 利 用 して 操 業 す る の か と い う こ とが,明 ら か に さ れ ね ば な ら な い 。 こ の 点 を 明 ら か に す る た め,筆 者 は,1980年 5月16日 か ら20日 ま で の5日 間 に 操 業 され た タ モ リ ナ ワ の,ト ロ ミ と漁 場 の 利 用 状 況 に つ い て 調 べ た 。 第7表 は,そ の 結 果 を 整 理 し て 示 した も の で あ る。 調 査 は,筆 者 が 漁 港 に い て,各 延 縄 漁 船 の 出 漁 時 刻 を 記 録 す る とい う方 法 に よ っ て お こ な わ れ た 。 各 漁 船 が 利 用 した 漁 場 に つ い て は,筆 者 が,海 上 で の 活 動 を 終 え て 帰 港 し た 漁 船 の 漁 師 に,直 接 き き と りを す る こ と に よ っ て 確 認 し た 。 な お,附 表 は,5月16日 か ら20日 ま で の 椋 名 の 干,満 潮 時 刻 を 示 し て い る 。 〔事 例1〕 オ オ ナ ワMN-1, MN-2の 漁 場 の 利 用 オ オ ナ ワ に 属 す るMN-1とMN-2 は,16日 に は12時16分 の 満 潮 の ト ロ ミに あ わ せ て,両 者 と も 同 じ漁 場,ト ワ イ へ 出 漁 した 。1 週 間 ぐ ら い 前 か ら,両 者 は と も に 朝 の タ タ エ を 利 用 し て,ト ワ イ で 操 業 して い た と い う。 しか し,翌17日 に は,同 じ満 潮 の トロ ミが13時 前 後 に な り,こ れ に と も な っ て 操 業 時 刻 が 昼 間 に な っ て き た の で,こ の 日に は,朝 の ヒ ヨ リ ド ロ ミ の 利 用 に き りか えて い る 。 こ れ に よ っ て,操 業 す る 漁 場 も ト ワ イ か ら オ オ ズ ミ ノ ハ ナ に か わ っ て い る 。 つ ま り,タ タ エ ナ ワか ら ヒ ヨ リナ ワへ の き りか え が お こ な わ れ て い る 。 そ し て,18, 19, 20日 に は,17日 と 同 様 に 朝 の ヒ ヨ リ ドロ ミ を 利 用 し て,オ オ ズ ミノ ハ ナ で 操 業 が つ づ け ら れ た 。 し た が っ て,MN-1とMN-2は,意 識 的 に 同 じ よ うな 操 業 形 態 を と っ て い る こ と が 明 らか で あ る 。 〔事 例2〕 オ オ ナ ワMN-3の 漁 場 の 利 用 MN-3は,16日 に は,MN-1, MN-2と 同 じ よ うに,昼 間 の タ タ エ ドロ ミを 利 用 し て, ト ワ イ で 操 業 した 。17, 18日 に も,16日 と 同 じ 満 潮 を 利 用 し て,同 じ漁 場 で 操 業 を つ づ け た 。 19日 に は 朝 の ヒ ヨ リ ド ロ ミの 利 用 に き りか え, 漁 場 を ト ワ イ か ら オ キ ノ イ シ に か えて 操 業 し て い る。 〔事 例3〕 コ ナ ワMN-5の 漁 場 の 利 用 MN-5は,16日 に は 休 漁 した 。17日,18日 に は 朝 の ヒ ヨ リ ド ロ ミを 利 用 し て,タ テ ヤ マ で 操 業

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-39-第7表 各 延 縄 漁 船 の トロ ミの利 用 形 態 に 関 す る事例 〔附 表 〕 注) 附表 は調査 日時 の干 ・満潮時刻 を表 わす。 (1980年5月 調査) した 。19日 に は 夜 間 の タ タ エ ド ロ ミを 利 用 し て, モ タ エ で 操 業 した 。 つ ま り,ヒ ヨ リナ ワか ら タ タ エ ナ ワへ の き りか え が お こ な わ れ た 。 〔事 例4〕 コナ ワMN-6の 漁 場 の 利 用 MN-6は,16, 17, 18目 の3日 間,朝 の ヒ ヨ リ ド ロ ミを 利 用 して,ナ ガ イ ソ で 操 業 した 。19 日 に は 夜 間 の タ タ エ ドロ ミの 利 用 に き りか え, セ トへ 出 漁 して い る。20日 に は 休 漁 した が,21 日以 降 は ひ き つ づ き19日 と 同 じ タ タ エ ド ロ ミを 利 用 し て,セ トで 操 業 す る 予 定 で あ る 。 〔事 例5〕 コ ナ ワMN-8の 漁 場 の 利 用 MN-8は,16日 に は 朝 の ヒ ヨ リ ドロ ミ を 利 用 して,ツ シ マ ベ ラ へ 出 漁 した 。17日 に は 夜 間 の タ タ エ ドロ ミの 利 用 に き りか え,漁 場 を モ タ エ に か えて 操 業 し て い る 。18日 に は 再 び 朝 の ヒ ヨ リに も ど っ て,オ キ ノ イ シ へ 出 漁 した 。19, 20 日に は17日 と 同 じ夜 間 の タ タ エ の 時 に 出 漁 し, モ タ エ に も ど っ て 操 業 し て い る 。

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-40-越 智 諸 島 椋 名 に お け る延 縄 漁業 の 漁場 利 用 形 態(田 和) 329 〔事 例6〕 オ オ ナ ワMN-4と コ ナ ワMN-9 の 漁 場 の 利 用 MN-4, MN-9は,い ず れ も 朝 の ヒ ヨ リ ドロ ミ を 利 用 し て,MN-4は オ キ ノ イ シ で(た だ し16日 に は休 漁),MN-9は16, 19, 20日 に は タ テ ヤ マ で,17日 に は ナ ガ イ ソ で (18日 に は 休 漁)操 業 し た 。 こ の 両 者 は,筆 者 の 調 査 の 期 間 中,他 と こ と な っ て,利 用 す る シ オ の トロ ミを ま っ た く か え な か っ た の で あ る 。 こ れ ら6つ の 事 例 か ら,延 縄 漁 船 の ト ロ ミの 利 用 形 態 に は,つ ぎ の よ うな 特 徴 の あ る こ とが 明 らか と な っ た 。 (1) ま ず,潮 汐 現 象 と の 関 連 で み る と,延 縄 漁 船 は,1日 に3な い し4回 あ る 干,満 潮 の い ず れ か を 選 択 し,そ の ト ロ ミの 毎 日 の 変 化 に あ わ せ て,数 日 間 操 業 を つ づ け る 。 こ の ト ロ ミの 利 用 が 時 間 的 に 困 難 に な る と,利 用 しや す い シ オ を あ ら た め て 選 び 出 し,そ の ト ロ ミの 動 き に 応 じて,ま た 数 日 間 操 業 す る の が 一 般 的 で あ る 。 MN-8の よ うに,短 期 間 に ヒ ヨ リナ ワ→ タ タ エ ナ ワ→ ヒ ヨ リナ ワ→ タ タ エ ナ ワ と き りか え る 操 業 形 態 は,筆 者 の 観 察 に よ る か ぎ り,非 常 に ま れ な 例 と い える 。 (2) オ オ ナ ワ と コ ナ ワ とで は,操 業 時 間 の 選 択 に 多 少 の 違 い が 認 め られ る 。 す な わ ち,タ モ リナ ワ の 漁 期 に は,コ ナ ワは,利 用 し て い る シ オ の ト ロ ミが 生 じ る 時 刻 が 午 前9時 か ら10時 頃 に な る と,そ の シ オ を お うの を や め る 。 そ し て, そ れ よ り早 い 時 刻 に 生 じ る トロ ミの 利 用 に き り か える 。 これ に 対 して,オ オ ナ ワは,正 午 過 ぎ に 生 じ る ト ロ ミさ え も 利 用 す る 。 こ の よ うな 操 業 時 刻 に 関 す る 両 者 の 差 異 は,オ オ ナ ワ と コ ナ ワが 操 業 す る 漁 場 の 水 深 の 差 異 に 起 因 す る も の と考 え られ る 。 つ ま り,オ オ ナ ワが 利 用 し て い る 漁 場 の 水 深 は,コ ナ ワが 利 用 し て い る 漁 場 の そ れ に 比 べ,全 体 的 に 深 い 。 こ の よ う な 漁 場 で は 昼 間 に お い て も,海 底 付 近 は 暗 く,魚 の 行 動 が 活 発 で あ る 。 した が っ て,オ オ ナ ワ は 昼 間 に 生 じ る ト ロ ミを 利 用 し て も,夜 行 性 の タ モ リを 漁 獲 で き るの で あ る。 (3) 各 延縄 漁 船 の 出漁 時 刻 に つ い て み る と, MN-11が19日 の夜 間 に操 業 した こ とを 除 け ば, い ず れ も早朝 か ら昼 間 にか け て で あ る。 タ モ リ ナ ワで す ら,朝 ・昼 間 を 利 用 す る場合 が多 い。 この理 由 と して,以 下 の2点 を あげ る こ とが で きる。 そ の ひ とつ は,漁 師 は 朝 ・昼 間 に水 揚 げす れ ば,そ の 日の うち に漁 獲 物 を 出荷 で き る,と い うこ とで あ る。 夜 間 に操 業 す る と,漁 師 は,魚 を 一 晩 漁 船 の 中 に あ る イ ケ スに 生 か せ て お い て, 翌 朝 そ れ を 出荷 す る こ とに な る。 この 場合,朝 ・昼 間 の操 業 に比 べ て,死 魚が 数 多 くな った り, 鮮 度 が お ち て 魚価 が下 が っ て しま う場 合 が あ る。 つ ま り,漁 師 に とっ て は,夜 間 の操 業 よ り朝 ・ 昼 間 の操 業 の方 が,魚 価 低 下 の 危 険 性 を少 な く で き るの で あ る。 これ と と もに,漁 師 が あ げ る も うひ とつ の理 由 は,夜 間 の操 業 が,朝 ・昼 間 の操 業 以上 に疲 労 度 を 大 き くす る こ とで あ る。 そ の た め,現 在, 椋 名 で は,漁 師 の ほ とん どが 夜 間 の操 業 を敬 遠 す る 傾 向 に あ る。 3 漁獲 尾数 か らみ た 漁 師 に よ る漁 場 空 間 の認 識 1979年7月10, 12, 13日 の3日 間,筆 者 は コナ ワMN-6が ナ ガ イ ソ 漁 場 へ 出 漁 した の に 同乗 し,魚 種 ご と の漁 獲 尾 数 の 集計 を試 み た。 この資 料 を詳 細 に検 討 す る こ とに よ って,筆 者 は,漁 師 が 漁 場 空 間 を どの よ うに認 識 して い る か の 実態 を,あ る程 度 まで 明 らか に で きた 。 まず,MN-6の3日 間 の 海 上 に お け る活 動 時 間 を示 した も のが,第7図 で あ る。 これ は, (1)漁港 ∼ 漁 場 間 移 動,(2)縄 を い れ る作 業,(3)漁 場 内移 動,(4)縄 あ げ 作 業,の4活 動 に 区分 して 示 して あ る。 また,MN-6が 使 用 した ナ ワバ チ それ ぞれ につ い て,漁 獲 尾 数 の 変 化 を示 した ものが 第8 図 で あ る。10日 と13日 に は11ハ チ,12日 に は10 ハ チ が 使 用 され た 。 漁 獲 魚 種 と して は,図 中の

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-41-第7図 MN-6の 海上におけ る活動時間 タ モ リ,ア ナ ゴの他 に,ホ ゴ,グ チが み られ た 。 しか し,ホ ゴ,グ チ の 漁 獲尾 数 はわ ず か で あ っ た 。 これ は7月 が タモ リナ ワの漁 期 に あた って い るか らで あ る。 第7図 に よ る と,MN-6は,こ の3日 間連 続 して朝 の ヒ ヨ リを 利 用 した の で,干 潮 時 刻 が 毎 日40∼50分 ず つ 遅 れ る こ とに応 じて操 業 して い る こ とが わ か る。 縄 を いれ る の に最 も適 して い る時 刻 は,ト ロ ミの時 間帯 であ る。 魚 が ハ リ にか か るか 否 か は,エ サが 海 底 に達 す る まで の わ ず か な 時 間 内 で決 定 され る。 漁 師 は,「 シオ が は や い時 に縄 を いれ る と魚 の くい が悪 い」 と い う。 漁 師 に よれ ば,縄 を い れ るの に最 も適 し た時 刻 が選 ば れ た 日は,10日 で あ った。12, 13 日に は,縄 をい れ 始 め る時 刻 が 早す ぎ た。 と く に13日 に は,漁 師 は 海 上 で,「 シオ の速 い時 に しか けた 」 こ とを 後 悔 した。 シオが はや い時 に 縄 を い れ る と,一 本 の縄 に,魚 が 多 くか か った り,ほ とん どか か らな か っ た りす る部 分 が 生 じ, 結 果 的 に は 漁 獲尾 数 が少 な くな る こ とが あ る。 12, 13日 に み られ る各 ナ ワバ チ ご との漁 獲 尾 数 の ば らつ き,ハ リにか か る率 の低 下 は,こ の 現 象 を 示 す もの と考 え られ る。 と ころ で,漁 師 は,自 分 が 利 用 す る漁 場 の 海 底 地 形 を 正確 に知 っ て いな け れ ば な らな い。 漁 獲 対 象 魚 は海 底 の ど こに で も棲 息 して い るわ け で は な い の で,こ の認 識 が 正確 で あ るか 否か は, 直 接,漁 獲 量 の 多 少 に 結 び つ く こ とに な る。 MN-6は,10日 に は1ハ チ めか ら 順調 に縄 を 第8図 各 ナ ワバ チ ご との漁 獲 尾 数 の変 化 注) ホゴ,グ チ の漁獲尾数につい ては省略 した A:総 漁獲尾数 B:ハ リにかか る率(総 漁観 数/総 ハ リ数) い れ て い た 。 しか し,8ハ チ め が い れ ら れ た と こ ろ で,MN-6の 南 側 で 操 業 し て い た 他 の 延 縄 漁 船 がMN-6に 接 近 し て き た た め,MN-6 は,自 ら の 縄 が 他 の 漁 船 の 縄 とか ら ま る こ とを 恐 れ,そ の 漁 船 を さ け る よ うに し て 進 ん だ 。 そ の た め,MN-6の 漁 師 は,最 初 に 縄 を い れ よ う と考 え て い た 漁 場 以 外 の 場 所 で,9ハ チ め 以 降 の 縄 を い れ な け れ ば な ら な か っ た 。 漁 師 は こ の 時,筆 者 に,「9ハ チ め 以 降 で は 魚 の か か り

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-42-越智諸島椋名におけ る延縄漁業の漁場利用形態(田 和) 331 が 悪 くな る」 とい うこ とを つ げ た。 事 実,縄 を ひ き あげ て み る と,9ハ チ め の 漁 獲尾 数 が3尾, 10, 11ハ チ め の そ れ が そ れ ぞ れ5尾 とな っ て お り,8ハ チ め まで の 漁 獲 尾 数 に比 べ る と極 端 な 減 少 が み られ た 。 この こ とは,漁 師 に よる漁 場 空 間 の 熟 知 を示 す もの と して と ら えられ よ う。 V ま と め 1 結 論 延 縄 漁 業 にお け る漁 場 利用 形 態 は, 漁 獲 対 象 魚種 の習 性 や シ オの 状 態 と深 く関連 し て い る。 延 縄 漁 業 は,漁 獲 され る魚 種 の季 節 性 に応 じ て,ホ ゴを と るホ ゴナ ワ(11∼4月)と タ モ リ, アナ ゴを と る タモ リナ ワに大 別 され る。 ホ ゴ, タモ リ,ア ナ ゴは主 と して浅 海 部 の岩 礁 域 に 棲 息 して い るの で,こ の よ うな 岩 石 質 の海 底,す な わ ち イ ソが延 縄 漁 場 とな る。 延 縄 漁 場 は,渦 浦 漁場 とそ の周 辺 に21存 在 す る。 各 漁 場 に お い て は,季 節 に よっ て漁 獲 され る魚 種 が 変化 す る か あ るい は周 年 に わ た って 同 一 魚種 が 漁獲 され るの で,全 て の漁 場 が 周 年 利 用 され うる。 ただ し,漁 獲 対 象 魚 が昼 行 性(ホ ゴ),と 夜 行 性(タ モ リ,ア ナ ゴ)と に 区別 され るた め,漁 師 は 魚 の 活 動 時 間 に あわ せ て漁 場 を 使 用 す る。 しか も延 縄 は,シ オ の流 れ の ゆ るい 時 間 帯 に操 業 され な けれ ば な らない ので,漁 師 が 漁場 を利 用 す る時 間 は,干,満 潮 時 の 前 後 に 生 じる トロ ミの時 間 帯 に 限 定 され る。 しか し,各 漁 場 に は,適,不 適 の シオ の状 態 が あ る。 つ ま り,漁 場 ご とに, 利 用 で き る トロ ミが異 な る の で あ る。 以 上 の こ とを,時 間的 ・空 間 的 に と らえ た 延 縄 漁業 の 漁 場 決 定 に い た る過 程 と して ま とめ る と,第9図 の よ うに な る。 す なわ ち,漁 獲 対 象 魚 種 が季 節 に応 じて決 定 され る。 漁 師 は,そ の 魚 種 の 行 動 性 に応 じて,操 業 す る時 間 帯 を 決 定 す る。 つ ぎ に,そ の 時 間 帯 に 利 用 で き る シオ が 選 択 され る。 そ して,漁 師 は,そ の シオ の トロ ミを利 用 で きる漁 場 へ 出漁 す るわ け で あ る。 と ころ で,1隻 の延 縄 漁 船 は,1日 に1回 だ け しか 漁 場 を 利 用 して い な い 。 この こ とは,1 第9図 時 間的 ・空 間 的 に と らえた 延 縄 の 漁場 決 定 に いた る過 程

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-43-回 の延 縄 の操 業 に 必 要 と され る時 間 を考 えれ ば 明 らか で あ る。 漁 師 は,漁 場 と トロ ミとの 関 係 を認 識 して い なけ れ ば な らな い 。 また,海 上 に お い て,漁 場 の正 確 な位 置 を ヤマ タテ に よっ て知 り,し か も 海 底 の地 形 や 潮 流 の状 況 な どにつ い て も熟 知 し て い な け れ ば な らな い。 そ うで な けれ ば,好 漁 は み こ まれ な い の で あ る。 しか し,全 て の 漁 師 が 全 て の漁 場 の位 置,性 質 な どにつ い て 正 確 に 認 識 して い るわ け で は な い。 この こ とは,各 縄 船 が 利 用 す る漁場 に ば らつ きが あ る こ とか ら察 せ られ る。 2 今後 の 展望 本 稿 で は,延 縄 漁 業 の 漁 場 利 用形 態 を時 間 的 ・空 間 的 な側 面 か ら分 析 した。 研 究 を進 め るに あた っ て は,こ れ まで の水 産 地 理 学 で は あ ま り扱 わ れ る こ とが な か った 生 態 学 的 ア プ ロー チ を重 視 した 。 具 体 的 に は,現 地 調 査 に お い て,漁 撈 活 動 を 直 接観 察 す る とい う方 法 を用 いた 。 この方 法 を用 い る こ とに よ って, 筆 者 は,漁 師 に よる漁 場 の認 識,シ オ の選 び方, 漁 撈 活 動 時 間 な どに 関 す る さ まざ まな資 料 を 得 る こ とが で きた 。 この よ うな調 査 方 法 が もつ 意 義,観 察 の方 法 な どに つ い て は,今 後 さ らに検 討 を 加 えた い 。 延 縄 漁 師 は,基 本的 に は21あ る延 縄 漁 場 の い ず れ に 出 漁 して も よい。 しか し,各 延 縄 漁 船 が 利 用 す る漁場 に はか た よ りが あ った 。 また 複数 の 漁 船 が ひ とつ の漁 場 で 同時 に 操 業 した さい, 人 為 的 に 漁場 の変 更 が な され る こ と も観 察 さ れ た 。 この よ うな状 況 に は,何 らか の経 済 的 ・社 会 的要 因 が 作用 して い る も の と考 えられ る。 し た が って,各 漁 場 に お け る漁 獲 量 の 差異,あ る い は漁 師 間 の経 済 的 ・社 会 的 関 係 な どに つ い て も,漁 場 利 用 形 態 に関 連 す る問 題 と して調 査 さ れ な けれ ば な らない 。 本 稿 で は延 縄 漁 業 だ け を と りあ げ た が,筆 者 は,椋 名 に おけ る他 の 漁 業 の漁 場利 用 形 態 につ い て も本 研 究 と同 じ視 点 に た って研 究 をす す め る必 要 が あ る と考 えて い る。 す なわ ち こ の よ う な研 究 に よって,複 数 の 種 類 の 漁業 が お こなわ れ て い る水 域 に お け る漁 場 利 用形 態 を 明 らか に で き る と思 うの で あ る。 〈付記〉 本稿の一部については,昭 和55年度人文地理学 会大会において 口頭発表 した。 本稿作成にあた って御指導 いただ きました関西 学院大学の大島襄二先生,関 西大学 の河野通博先 生,国 立民族学博物館の杉本尚次先生,秋 道智彌 先生,な らびに現地 調査でお世話 になった椋名 の 方 々に厚 くお礼申 し上げ ます。 (関西学院大学 ・院)

The Pattern

of Fishing Ground Use of Longline Fishing

(Haenawa)

at Mukuna in the Oehi Islands:

An Ecological Approach

in Geography

of Fisheries

Masataka TAWA

The aim of this report is to describe the pattern of fishing ground use of longline

fishing at Mukuna in Oshima Island, Ehime Prefecture.

To study some aspects of

longline fishing the author made a field survey in the ecological point of view. The

the author's method has been wanting in the field research of geography of fisheries

so far.

The data of this report, therefore, was obtaind by a diarect observation

(21)

-44-越智諸島椋名におけ る延 縄漁業 の漁場利用形態(田 和) 333

method in addition to hearing and collecting documents in the field. The results of the research can be summarized as follows.

1) Longline fishing is operated throughout one year. The fishing season is divided into two categories by seasonality of catch; in November to April hogonawa catching mainly hogo (Sebastiscus marmoratus) is operated, while in May to October tamorinawa catching tamori (Hapalogenys mucronatus) and anago (Astroconger myriaster) is operated.

2) Feeding habit of fish limits the time of the longline fishing operation. The hogo is diurnal, while the tamori and the anago are nocturnal. Hogonawa, therefore, is operated in the daytime, while tamorinawa is carried out early in the morning and the nighttime.

3) The longline fishing must be operated in time-zone, called toromi, in which tidal movement changes from ebbing to flowing and from flowing to ebbing.

4) There are 21 fishing grounds of longline fishing around Mukuna. They are divided into four categories by toromi.

a. fishing grounds usable at toromi of ebb tide b. fishing grounds usable at toromi of flow tide

c. fishing grounds usable at both toromi of ebb and flow tide d. fishing ground not having relation to toromi

5) Each fisherman in general uses only 1 to 5 fishing grounds where he is very familiar with conditions of tide, sea bottom, and so on.

6) The activity of longline fishing is divided into three categories: (a) preparing for going out fishing at the port, (b) operating at the sea, and (c) landing catch and taking care of fishing gears at the port. The total time necessary for activity of (a), (b), and (c) is about 600 to 700 minutes. Therefore it is impossible for the fisherman to operate more than two times a day.

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