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面材張り耐力要素のせん断性能評価法に関する研究

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Academic year: 2021

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全文

(1)

生年月日

学位論文審査結果の報告書

安曇良治

本籍(国籍)

学位の種類

学位記番号

学位授与の条件

(博士の学位)

論文題目

φ召秒・平成 63年

北海道

8月

第 208 号

学位規程第5条該当

士(

12日

面材張り耐力要素のせん断性能評価法に関する研究

審査委員

学)

(主査)

(副主査)

(副主査)

(副査)

村上雅英

岸本一蔵

岩田範生

、,. 。,、、',,tヤ、、

教授@',1

教授

(2)

第1章序論 構造用合板などの面材を木造軸組に釘打ちした面材大壁は、木質系構造において重 要な耐力要素である。面材大壁のせん断性状の推定式は、釘の強度が面材や軸材との 材料強度と比ベて相対的に弱いことを前提に、釘のせん断力が直線分布であると仮定 して設計式が構築されているD。近年、木質構造の大型化や設計の自由度を確保するこ とを目的として、壁倍率換算で10倍を超える耐力壁の開発が多く行われているが、そ のような高耐力の面材大壁は、上述の前提条件を満たしているとは言い難く、実験に よる性能確認を伴わないで構造計算のみで高耐力の耐力壁を設計する場合、設計式の 適用範囲を確認する手段がないのが現状である。本研究では、構造計算のみで高耐力 の面材張り耐力要素の設計する場合の適用範囲の確立を目的としている。

文内容の要

第2章柱の変形を考慮した面材大壁のせん断性能の評価式 高耐力の面材大壁では、上述の釘のせん断力の直線分布仮定を成立させるための軸 材の剛性が不足しているため、設計式は過大評価となる。2章では、面材大壁のせん断 剛性及び降伏耐力に対する軸材の変形の影響を解析的に解明し、軸材の変形を考慮し た設計式を、現行の設計式に組み込むことが可能な形で誘導した。

現行の設計式では、面材大壁の回転剛性κ。は式(1)のように表される。

1.1 K =k.1 =k.^-L (1) り 1+1

但し、k:釘のせん断剛性、 41:XとY方向の釘配列2次モーメント

軸材の変形を考慮した設計式の誘導において、現行の設計式と同様に、面材大壁の 抵抗機構は図1に示すようなXEードとYEードに分けられ、それらが直列バネの関 係にあり、柱材の曲げ携みの影饗はXEードにのみ、柱材の軸方向変形の影響はYE-ドにのみに影響するとして、柱材の曲げ撰み曲線式と縦歪み曲線式を仮定した。そし て、最小ポテンシャルエネルギーの原理を用いて、柱材の変形を考慮した各方向の釘

配列2炊モーメントζ,1を誘導し、諸係数を変数として現行の釘配列2次モーメントの

比をプロットすることで、図2に示すような、柱材の変形を考慮する際に乗じる低減 係数の設計図表が得られる。それらを用いて、柱材の変形を考慮した釘配列2次モー メントが式(2)のように表され、それらを式(1)に代入することで柱材の変形を考慮し 旨 論

(3)

C:口の範囲の釘の

卸ぐ';・・'・

可携長さにi・'1.:.

柱の曲げ操"1 みの開始点' D.:柱の飽げみ の閲始点から最初 の釘までの距雌 A:柱に沿って 打たれた釘 (横架材を含む) B:梁に打たれた釘 (柱に沿0て打たれた を除く) θ 釘の,'べり量 柱 ヤング係数E 断面積' 口 身 ヤング係数ι'釘を除く)" α 1.0 0.9 0.8 0.フ 0.6 0.5 0.4 03 02 0.1 0.0 釘 剛性k ι (a)XEード 図I XE-柱 ヤング係数Ξ 断面積' 釘の,'ぺり量 A:柱に沿って 0'j 打たれた釘 (横架1ずを否む) d0「,わし

rで

y0 C:土台に打たれた釘 a ・・・・・・・・・・・・・:・・・.・....、...」 ^^^^^^^^^ , """"'・"'!"'・・・・・・・・'・・・・・・・・ー """゛"""."'...'...^ー. ^^^..^^.^^^.^^^^^^.^^^^^^^^^. 梁 ao.幼L . i=1 司2 =3 ^^^^^.^^^^. ^^^^^. (b)YEード ドとYEードにおける各記号の定義 ^^^^^^ (2a) B:梁に打たれた釘 (柱・問柱に沿0て 打たれた釘を除く) 4四肌 """"" 1"""""'.. .^^^^^.^..^^^^.^^^..^^^^^^^ "',""".'...司... . 6皮' 2α旧'

図2 曲げと軸方向変形による低減係数α,βの分布と近似式

た面材大壁の回転剛性Kが得られる。 0.0 (2b) α=073 2ala)+0.105 亀 ^ , 0町,)R 酋 0.S ,. 都 四0"1,R 0:計算値 β司.5 '0り1}R δR C:土台に打たれた釘 ι 鹿 . 1'0 ゛....ー..鼻゛ー...゛...,. 1 実鞍:近似式 t l"ー"" ...,... ...,...ー... 実線:近似式 B司.5

4 ・(α'ー".阿。>

, (柱・間柱に沿って 打たれた釘を除く) 1となる場合は,P卑1とする ...,... 1.5

い倫嶋゛・(一→・(・)、""'←"

、ーー、ーー^ 柱に沿って打たれた釘の1 横架材の釘の1. 0

但し、q:釘ピツチ、瓢ι:壁の高さと幅、偽β:柱材の曲げ変形と軸方向変形を考慮

する際に乗じる低減係数で添え字のL,R,Cはそれぞれ左右の柱と間柱を意味して

いる。

面材の高さ、柱材の断面、柱材のヤング係数、釘ピッチ、釘配列を変数として静的

弾性解析を行い、設計式の妥当性を検証した。

近似式

-W司'"イ1・り・チ

柱と間住に沿って打たれた釘0)1 横藁牙ミ牙χ^' _(0.28・B゛0.922)ヅ 0.97.B-0.342+ι 釦・五1・q 4-^ _ E・'・g ム=ー'ー'ー 2 え:釘のせん断剛性 E:柱のヤング係数 1:柱の断面2欧 モーメント ι柱の断面積 B:柱脚軸力比 N.ι β=^十1 ,.H N:上階からの軸力 3 4 5 1 1

1

M 1 令 殴 θ

目 瑳 償 算1 :. 四ユ 0 念 6 4 2 0

ーー00000

(4)

第3章面材のせん断座屈とせん断破壊の相関の解明 面材の四周に打たれた釘の本数が増えると、面材大壁の終局は釘の降伏によって決 まらず、面材のせん断座屈やせん断破壊によって決まる場合があることは知られてい るが、面材大壁を対象とした系統だった研究はなく、文献1)の設計法においても釘の 降伏で面材大壁の終局が決まるための適用範囲は示されていない。そこで3章では、構 造用合板を対象として、面材のせん断座屈とせん断破壊の関係を実験的に解明し、 郎Mによる数値角¥析で、間柱一面材間を釘打ちするによる座屈補剛効果の検討を行っ た。それらの知見に基づき面材のせん断座屈やせん断破壊によって決まらず、釘の降 伏で面材張り耐力要素の終局が決まるための検定式を誘導した。 面材の四周の境界条件(ピン支持あるいは固定支持)に応じた面材のせん断座屈が

発生tるときの面材に作用するせん断応力度(臨界せん断座屈応力度)τザτ。ノま式(3)の

ように得られる2)。 (3a) (3b)

但し、 C。,q/図3 より得る、ι:面材の厚さ、 E.,五.:図3で定義する面材の各方

向のヤング係数、α,6:図3で定義する面材の寸法、 b099として良い

実験結果から得られる臨界せん断座屈応力度τ"が、四周ピン支持あるいは四周固定

支持のどちらに近いかを表す指標、即ち、τ。とτに対するτぴの比率η献を式(4)のよう

t2C J

i如*ーー子(五緬J

, tc l

,.可・・Y(五.勗y

.' C呼 φ 0

仏)四周ピン支持(C。・β。関係)

01 4' C' β' 4' E1 ω '0 α= '

(Ξ.・E.)1

G:面材のせん断弾性係数 44

(b)四周固定支持(C4・β。関係)

図3 C.β。関係

0ι G 4' 尻 0'

,。・・〔÷)

a, ι0 E2 ; 1 ^ 女加財 卸"副"M即郎 0 1 ''艇即4" 4ι 0

(5)

...'..."ー... '.'.. ....ー....,...岡.. ,

、...A、..、..、.卓.

:..塗 0 .02 、0.4 ...ι...゛晦...゛..゛ミ..゛... ...".".. ...,..ー..ー... 0 ηCd助イUI= 0,29ηN ・0.07 に定義し、同様に、四周に打たれた釘による面材端部の回転拘束の程度を表す指標、即

ち、τ如とτ'ノこ対する釘で決まるときの終局せん断応力度易の比率ηNを式(5)のように定

義した。

0"・←,・・如)/←"・・,)

""*(・"ー・,y←可・',)

但し、TN =(Z,・△R,yH・ι・t

鼠ι:面材大壁の高さと幅、ムP,:釘1本の終局耐力、 Z :試験体の釘の全塑性

配列係数

各試験結果よりηけ一ηN関係は図4のように表され、面材の四周の固定度に応じて臨界せ

ん断座屈応力度τが増加していくことが同図から読み取れる。また、ηq一ηN関係は同図

に示tような近似式で表現され、τの予測式が実験的に求められた。 面材がせん断破壊した試験体の試験結果より得られる最大せん断応力度t と要素試

験より得られる面材のせん断強度.御の比(エ,,y.邸Pと.。と.御の比(.ノち,。)の関係を図5

に示t。面材のせん断座屈が生じると面材に作用するせん断応力度が不均等となるた

め、τはせん断座屈後の面外曲げ変形の影響を受けて、τ。より低くなることが文献3)

と4)で報告されており、同図からもその傾向は読み取れる。実験結果より得られたτ/

τ御.τノτ肋関係を同図中に示t近似式で表現することで、面材のせん断座屈を伴う面材

のせん断強度の予測式が実験的に求められた。

実務設計においてはJ舮τ。及びτ加が式(刀のような関係を満たすように設計するこ

とで、釘のせん断降伏で面材大壁の終局破壊が決まるようにすることができる。 図4 2 3 リN

η甜一η"関係と近似式

十033 1.2 . △ 3回繰り 4 02 0 し ・・・・・・・・・ト・・・・・・・・・ト・・・・・・・・・1・・・・・・・・・△ 0.2 03 0,4 0.5 0,6 TC11τιSO

図5 τ。/モ'。・エ,yち'。の関係

t . τ = 1.04τ/τ . 0. 8 0 1 伽 06 令一N、ミ n 04 叱 谷冨冒蒔

(6)

かつ ちり,くτιrp τくτ

ここで、9n血厚の構造用合板のように、τに対してτが極めて小さい場合では、30X

90mm以上断面を有する問柱に対して、外周部の釘ピッチの2倍程度の釘ピッチで釘打

ちして座屈補剛を行うことで、モ,が2倍程度に増加すると見なしてよいことがFEM固

有値育靴斤及ぴ実験より確認された。

第4章接合具の一面せん断性能評価試験の提案

面材大壁の設計を行う際に、釘1本のせん断性能が必要となるが、釘1本の一面せん

断性能評価試験法として、壁試験法.)と一面せん断試験法6)の2種類が一般的である。

壁試験法は、軸組の変形に対する安全側の判断として、釘のせん断剛性には軸組のホ

形や面材のせん断変形の変形成分が含まれる評価方法で行っているため、一面せん断

試験法より得られるせん断性能評価結果に対して剛性が低く評価される。そこで、4章

では、2章で得られた軸材の変形を考慮した設計式を応用して、図6に示す、2つの試

験法による釘のせん断剛性評価結果の補正図表の誘導を行い、3章で行った面材のせん

断変形の測定方法を用いて壁試験を行った。壁試験法より得られた釘1本のせん断剛

性k壁に、図6より得られるα氏.の逆数(να剖)を乗じることで、一面せん断試験法

より得られる釘1本のせん断剛性k_と概ね一致することを実験で確認した。

設計式では、柱頭.柱脚接合部が釘に対して先行破壊しないことを前提として、軸

組の仕口をピン接合と仮定しているが、高耐力の面材大壁では軸組の柱頭.柱脚接△

部に過大な軸力が生じるため、ピン接合、即ち、柱頭・榔まg接合部の変形が無視でき

るほどに小さいとは言い難い。柱頭・柱脚接合部の変形が釘のせん断すべりに与える

aB興1 0.9 0.8 0.フ 2.66.41-65.87.'.+950 '1 1000 0.6 0.5 0 ',1壁倍率2.5倍の 仕様を基墫とした ときの当該面材大 壁の別qxHの比 2 4 6 8 10 稔q:釘ビツチ(mm) '"

図6 αa、1-,関係

元.a 4一 8640 14 k釘のせん断剛性 偶1血) H:壁の高さ(mm)

'.'・・'妾雫罫ここ

.匂...,...、... ...゛. . 'ー""""...宇... ..ー...ー...串一...一制... 短ほぞ仕様(3休) 0.00 . ....寺... . . 図7 0.04 R(rad) 仕口の違いがP,R関係 に与える影響 0.02 ビン治具仕 0.06 2086420 11

旦、

...

...

':.ー;:,,ー:''゛ 1ι. 一一 一;ー'﹂::ー'. .. ,,.'ー,.'::::'.

...

...

.ー.'.﹃1::::.''.ι:'ー゛.ー

...

1一:ー'':,ー.'.''ー'

(7)

影響を調ベるため、軸組を鉄製の治具による完全ピン接合で構成した試験体と一般的

な短ほぞ+ゆ金物で構成した試験体(以下、短ほぞ仕様と呼ぶ)で実験及ぴ数値解析

を行った。実験結果より得られる荷重P.せん断変形角R曲線を図7に示す。なお、短

ほぞ仕様の,,R曲線は軸組の負担耐力を差し引いている。柱頭・柱觸1接合部の変形が

生じる短ほぞ+ゆ金物で構成した試験体の方が耐力及び変形性能が優れていることが

同図より分かる。これは、柱頭・柱脚接合部の変形により柱に打たれた釘の利きが悪

くなり、せん断抵抗の発現が遅れることと釘のせん断抵抗による軸組の抵抗モーメン

トの向上によって、耐力及び変形性能が向上した、言い換えると、接合部の破壊が生

じない、あるいは木材の割裂などを誘発しない範囲であれば、柱頭・柱脚接合部の変

形は必ずしも面材大壁のせん断性能に不利な影響を与えないことが詳細な解析結果よ

り明らかとなった。 第5章面材大壁理論を応用した面材張り張り耐力要素 中大規模の木質系構造物で用いることを想定した高耐力の面材張り耐力要素におい て、面内せん断剛性を確保するために、複数の面材を一体化する工法として、面材の 目地をせん断キーで補強し、面材間のせん断ずれを抑制する工夫が用いられてる。5章 では、高耐力の面材張り耐力要素の実例として、面材の目地をせん断キーで補強した 面材張り耐力要素の面内せん断性状を推定する理論式を面材大壁理論を応用して誘導 ヒノキ集成材(105×1D5:臼卜F27の ヒノキ累成 【105×1伽 引き寄せ金物 27の スギ集成材 ピス 御ξネル{厚N 仕口:大λ 3 1101お 1751了 ビス 1ユ00τ ユ0om 255) 図8 試験体図

し、実験による検証を行い、式の妥当陛と確認した。また、

式の適用範囲の検討も行った。 あり螢け

雇い実(合板)AF

5 7 175175 70 17 1751751700 750 (P, A 蛯戯.・般 2δ 3030 m ビスA 雇い実(合板) お 尾いざね怯餐110翼0の "(P,の 面材 ゛1 30 n 258 150 図9

',

雇い実による面材の目地の補 強とモデル化 数イ直解析を用いて、理論 面材

ヤδ

面材

せん断キー 罵呂N宮N 員昌甥一山血一宮Ng .1 一 司一 0 伽m

(8)

阪神・淡路大震災で在来木造住宅が数多く倒壊した後に、木造軸組工法の各部耐力要素の荷重、 変形性状を明らかにするための一連の研究の中で、極めて重要な耐力要素である面材張り耐力要素 に関しては、力学的挙動について様々な研究が精力的に行われてきた。しかしながら、それらの多 くは住宅で用いられる耐力壁(短期許容せん断耐力が13.7城加、壁倍率換算で7倍以下)を対象として 研究が行われてきた。 近年の木質構造の大型化や設計の自由度を確保することを目的とした短期許容せん断耐力が 19.6虹、1'/m以上(壁倍率換算で10倍超)の高耐力の耐力壁の開発が盛んに行われている現状において、 以下に示すような現行の面材張り耐力要素の設計法の問題が生じている。 ①高耐力の面材張り耐力要素では、釘のせん断力の直線分布仮定を成立させるための軸材の剛性が 不足しているため、現行の設計式は過大評価となる。 ②柱頭・柱脚接合部が先行破壊しないことを前提に、軸材の仕口をピン接合と仮定しているが、 頭・柱脚接合部の剛性について特に規定はない。柱頭・柱脚接合部の変形が生じる場合、現行の設 計式が仮定している釘のせん断すべりの挙動の違いが面材張り耐力要素のせん断性能に与える影響 は解明されていない。 ③釘1本の一面せん断性能評価試験法として、壁試験法と一面せん断試験法の2種類が一般的である が、試験法によって、釘のせん断性能評価結果が大きく異なる。 ④面材張り耐力要素の釘の本数が増えると、面材張り耐力要素の終局は釘の降伏によって決まら ず、面材のせん断座屈やせん断破壊によって決まる場合があることは知られているが、釘の降伏で 面材張り耐力要素壁の終局が決まるための適用範囲は示されていない。 ⑤厚物合板等用いた高耐力の面材張り耐力要素では、面材のせん断座屈やせん断破壊で決まらず、 軸材の曲げ破壊や割裂破壊で決まる場合があることは知られているが、面材張り耐力要素における 軸材の破壊が生じる応力度の予測式は確立されていない。 本研究では、上述の① ④の問題点を解消し、構造計算のみで高耐力の面材張り耐力要素の設計 する場合の適用範囲の確立を目的として、以下の項目について検討を行った。 号△

イ の ^ 2 力のつり合いを無視して、柱材の曲げ燒み曲線と縦歪み曲線を概略で表現しても比較的精度の良 い解が得られるエネルギー法の特性を利用して、柱の曲げ変形と軸方向変形を考慮した面材張り耐 力要素のせん断剛性及び降伏耐力の算定式の誘導を行った。算定式の妥当性は静的弾性解析を用い て検証を行い、一般的な高耐力壁で用いられる面材の4周を釘打ちした場合では、解析結果より得 られるせん断剛性及び降伏耐力に対して、設計式は比較的十分な精度で推定できることが確認され た。 実務設計においても計算可能とするために、軸材の断面性能に応じた低減係数の近似式の誘導を 行い、それらを現行の設計式に乗じることで軸材の変形の影響を表現できる簡易式の提案も行って いる。言い換えると、それらの設計図表を用いることで、軸材の変形が無視できると見なすために 必要な軸材断面の算定も可能となる。 の ノを した 面材のせん断座屈とせん断破壊の関係を実験的に解明し、間柱による面材のせん断座屈補剛が無 い状態の面材外周部の回転の固定度(釘のせん断性能と釘ピッチ)に応じた面材のせん断座屈荷重 の予測式と面材のせん断座屈を伴う面材のせん断強度の予測式の誘導を行った。間柱による面材の せん断座屈補剛効果については、面材のせん断強度に対して面材のせん断座屈荷重は十分に小さ く、間柱の釘ピッチは外周部の釘ピッチの2倍以下となる場合に限り、面材の4周がピン支持のとき の面材のせん断座屈荷重に対して2倍以上増加することをFEMによる数値解析及び実験より明らか にした。それらの知見に基づき、面材のせん断座屈やせん断破壊によって面材張り耐力要素の降伏 が決まらず、釘の降伏で面材張り耐力要素の終局が決まる仕様となることを確認する検定式の誘導 を行った。 壁のせん のせん ム皀の魯 式 とせん の の 日

(9)

4 2章の理論式や3章で得られた知見に基づき、壁試験法と一面せん断試験法の2種類の試験方法で 行われた釘1本のせん断性能評価試験結果に対するせん断剛性の補正方法と試験方法の提案を行 い、実験によりその妥当性を確認した。また、柱頭・柱脚接合部の金物による引張剛性と横架材. 柱材間の圧縮めり込み剛性を考慮した極めて精緻な解析モデルを用いて、柱頭・柱脚接合部の挙動 が釘のせん断すべりの挙動に与える影響を詳細に調ベた。その結果、柱頭・柱脚接合部の変形によ る軸材の割裂を誘発しない程度の変形量であれば、柱頭・柱脚接合部の変形によって柱材に打たれ た釘のせん断抵抗の発現が遅れるため、面材張り耐力要素の靱性が向上することを明らかにした。 以上の知見をもとに、壁試験法による釘1本当たりのせん断性能評価に適した、即ち、一面せん 断試験法による試験結果との相違が少ない壁試験体の仕様の提案を行った。 ^ の一 せん 昔量 5 面材として小幅板を用いる伝統工法では、水平構面の面内せん断剛性の確保のために、小幅板間 の継手にだぼなどのせん断キーを設けて小幅板間のせん断ずれを抑制する工夫がしばしば用いられ ている。中大規模の木質系構造物で用いることを想定した高耐力の面材張り耐力要素においても、 面材の目地をせん断キーで補強するといった、伝統工法と同様の力学モデルで表現できる工法が見 られる。5章では、高耐力の面材張り耐力要素の実例として、面材の目地をせん断キーで補強した 面材張り耐力要素のせん断性能の推定式の誘導を、面材大壁理論を応用して行い、実験により推定 式の妥当性を検証した。また、数値解析を用いて、推定式の適用範囲も示している。 の 壁理暑△を 以上、本論文は、中大規模木質系構造物に用いられる高耐力の面材張り耐力要素の設計を行う 際、現行の設計式の主な問題点を整理し、それらの問題点を解消するための理論式の誘導や検定式 の示し、それらの妥当性を実験及ぴ数値解析で検証を行った。本論文の木質系構造分野における学 術的価値は非常に高く、木質構造設計ヘの活用が期待されることから、本論文は博士(工学)の学位 を授与するに値するものと認めた した り

参照

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