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能美市の国造柚子を活用した生産者と消費者をつなげる商品と仕組みのデザイン

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Academic year: 2021

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能美市の国造柚子を活用した

生産者と消費者をつなげる商品と仕組みのデザイン

Designing products and mechanisms that connect producers and consumers

utilze Kokuzo Yuzu cittrons of Nomi City's

森 進太郎

1

永井由佳里

2

Shintarou MORI

1

, Yukari NAGAI

2

1,2

国立学校法人 北陸先端科学技術大学院大学

〒923-1292 石川県能美市旭台 1-1

1,2

Japan Advanced Institute of Science and Technology

1-1 Asahidai, Nomi, Ishikawa 923-1292 Japan

Abstract: Satoyama resources are attractive products for urban dwellers, but there seems to be few

merchandise derived from satoyama that reflects and designs a good image received from satoyama elements. On the other hand, in recent years, a change in consumer behavior such as "conscious of what leads to social contribution" has been pointed out, and the backbone of the products such as production area, producer efforts, production environment and so on are valued. So its effective appeal is necessary. Therefore, focusing on "Kokuzo Yuzu" in the Kokuzo area which is considered a satoyama in Nomi City, Ishikawa Prefecture where our university is located, we proposed products based on the current state of production and consumer trends. In this case through a case hearing survey with producers and experts who are close to consumers, we aimed to present points for developing the products in the area in the future, proposed a mechanism to connect producers and consumers, and explored the problem extraction, effect and the method of discussion to create the ideas for continuous implementation of mutual exchanges between them. As a result, it has been suggested that the proposed product produced consumer interest in the Kokuzo area. In addition, conducting the "introduction event" before the interview helped developing free, vigorous and innovative discussions and implementing new approaches, therefore, seemed to be effective as a way to value these satoyama resources.

1.研究開発の背景

里山資源は都市生活者にとって魅力のある産物が 多い。都市生活者に とっての里山は林や 木、川、林産物、風景 など複数の要素が絡 み合ってやすらぎや 安心感といったイメ ージを受けていると 考えられ、そうした 背景から里山資源を 活用した商品は多く 開発されている。 しかしながら都市生活者といった消費者は多くの 場合、一般的には里山資源の商品を購入することが 唯一の接点であるが、この複数の里山要素から受け るいいイメージをデザインして反映した里山由来の 商品は少ないように見受けられる。また逆に生産者 としても生産する里山由来の農産物等が、消費者か らどのような評価を受けているか、また共感してく れる方々がいること自体、直接感じることは少ない という。 こうしたなか、地域創生が求められる昨今、都市 生活者にヒアリングすると購買行動に価格的もしく は機能的な価値だけでなく、購買行動が「社会貢献 につながるものを意識して選択する」という回答が ある。内閣府「消費者行政の推進に関する世論調査」

(2)

では社会貢献につながるものを意識的に選択する人 は平成26 年度調査では 59.2%、平成 27 年度調査で は 64.3%と半数を超えしかも徐々に増加の傾向にあ ることからも消費行動の変化をとらえた産地や生産 者の努力、生産環境などバックボーンの効果的なア ピールが必要であると考えた。

2.研究の目的

本学が位置する石川県能美市は同市ホームページ (http://www.city.nomi.ishikawa.jp/somu/nomishi_gaiyou. html)によると、石川県の南部、加賀平野のほぼ中央 に位置し、(中略)北側には標高 2,702mの白山から 流れ出る手取川と梯川に挟まれた扇状地と、日本海 に面した美しい海岸線があり、南側には白山山系に 連なるなだらかな丘陵地である能美丘陵を擁する 海・川・山・平地に恵まれた非常に豊かな地勢であ る、とされている。 この能美市において平成 28 年度に全国の農産物 の食品加工品コーディネータである外部アドバイザ ーを招いて都市生活者にとって魅力と感じる同市の 農産物の抽出を依頼したところ、数ある同市農産物 のなかでも国造地区にて生産される「国造柚子」を 第1 番目にあげ、里山を背景としたブランド化でき る価値が内在する要素をもつと意見した。そこでこ の地区において里山資源である農産物として国造柚 子を定め、その現状そして消費者動向を踏まえた商 品の提案し、マーケット投入、そのフィードバック までのサイクルを一通り行い、今後の同地区の商品 を考える上でのポイントを提示することを目的にす ると同時に、消費者と生産者をつなげる仕組みを提 案し、両者の相互交流が具体的に行われるための課 題や効果、そのアイディアを創出する議論の方法を 模索する。

3. デザイン要件の整理

3-1.国造柚子の生産・加工実態

柚子は一般的に収穫量が表年、裏年とよばれるほ ど大きく変化することで知られる。同地区で国造柚 子の生産を営む国造柚子生産組合にヒアリングをし た結果、国造地区においても表年、裏年が存在し、 表年で約10t、裏年で約 2t の生産量であることがわ かった。また、柚子の多くは収穫した果実そのまま の状態での販売と、果実を絞り果汁にすることで収 益を得ているが、裏年になるとどちらの方法でも収 益高の低下が著しいということであった。したがっ て収穫が少ない年でも十分利益がある付加価値商品 の開発が必要であり、これが可能になると生産農家 の所得が安定し、能美市の柚子の持続可能な生産に つながると考えられる。不安定な収穫高かつ小規模 生産である柚子を食用だけで地域の収入を安定化さ せることは難しいと考え、【デザイン要件1】少量で も高価格帯商品になりやすい分野に展開することと した。 次に品種については、現在同市においては国造地 区で生産されている柚子の品種は「木頭」と「多田 錦」である。木頭は全国的に広く栽培され、流通さ れる柚子のほとんどがこの品種である。一方多田錦 は木頭と比較すると栽培地が少ないことと果実にタ ネがほとんどないことが特徴である。 これらの品種の加工の実態はどちらの品種も主に 食用として加工利用されている。「果汁」を主に使い、 これに関しては順調に販売先を伸ばしつつある。一 方で、果汁を生産する過程ででる「果皮」の部分は あまり有効利用されていないことがヒアリングによ って明らかとなった。そこで本研究では【デザイン 要件2】利用されていない「果皮」部分を利用する こととした。 図1.加工の様子(果汁搾汁と果皮の状態) そのほかの特徴としては、国造柚子は農家の努力 で無農薬、有機肥料を使用することを少なくとも30 年間続けている。また小規模生産であるため完全に トレーサビリティを把握できる。このことは現在の 安心安全を重んじる消費者にとって魅力的な加工品 原料であるといえる。こうした特徴から【デザイン 要件3】無農薬、有機栽培、トレーサビリティを活 かすこととした。

3-2.デザイン要件

以上のことから提案する国造柚子の商品のデザイ ン要件を整理すると以下のとおりである。 【デザイン要件1】 少量でも高価格帯商品になりやすい分野に展開 【デザイン要件2】 利用されていない「果皮」部分を利用 【デザイン要件3】

(3)

無農薬、有機栽培、トレーサビリティを活かす

-3.デザイン要件の落とし込み

以上を踏まえて消費者動向を踏まえた提案した商品 と仕様を図2に示す。 図2.デザイン要件を踏まえた提案した商品 【デザイン要件1】 少量でも高価格帯商品になりやすい分野に展開 →少量でも高価格帯商品になりやすい分野として 「美容雑貨」分野での展開を提案 【デザイン要件2】 利用されていない「果皮」部分を利用 →精油を原料とし、植物由来成分のみで製造でき る技術が開発されている「ハンドクリーム」を 採用 【デザイン要件3】 無農薬、有機栽培、トレーサビリティを活かす →パッケージを栽培地を一目でわかるデザインと し商品のなかに国造柚子生産組合の手紙をつけ ることで栽培方法を消費者に伝わりやすくした。 さらに消費動向を踏まえて精油を抽出するため の果皮の買取に加えて、無農薬であることの付 加価値を得たハンドクリームの売上げの一部を 寄付される仕組みにすることで無農薬栽培の努 力への対価が加工品からも得られる仕組みをメ ーカーの協力を得て構築した。

4.調査

調査はヒアリングによる調査を試みた。これは特 に農産地域の生産者では質問紙や統計的な手法をと るより、会話による意見抽出の方が発展的で貴重な 話(本音)がでることが経験的にあったためである。 またヒアリングに参加する消費者に近い立場の専門 家は、ビジネスとして結果が残る議論がなければ継 続的な調査協力を得るのが難しいため直接会話して の自由なヒアリングと意見交換を行うこととした。 また形式的な意見交換にならないようにコミュニケ ーションの研究事例[1]を参考に工夫した。具体的 には意見交換の前にあえて加工作業場の横で特設の ティースポットを設け団欒を促したり、柚子のアロ マづくりワークショップを行ったりすることでその 後の議論に親しみが持たれやすい内容の簡単な「導 入イベント」を行い、両者間のコミュニケーション がしやすい状況を作り出してから行った。 図3.導入イベントの様子 ヒアリング調査は平成29 年 10 月 26 日と同年 11 月14 日の2回実施した。具体的には国造柚子の川上 (生産)から川下(加工/普及)までの連携を通して さらには流通・消費者への普及までを繋いだ連携を 模索するために消費者に近い立場の様々な専門家と 生産者を交えたヒアリング調査と意見交換会を行い、 提案した商品をきっかけとして消費者と生産者の両 者の相互交流が具体的に行われるための課題やアイ ディアを創出するの今後の可能性を探った。 ヒアリングをとりまとめると、生産者は果実の傷 を懸念されている一方で、消費者に近い立場の専門 家からはむしろ自然の証と受け取られ説得材料にな り得るとともに国造柚子は農薬を使わず育てきたと いう点を本提案の商品によって知ることができるた め、加工品と果実を同時に販売することで首都圏で も価値高く受け入れられるといった意見が複数あっ た。 またヒアリングでは単なる商品の販売(モノの販 売)に関する意見とは別に、国造地区で行われてい る生産行為そのものへの価値の可能性についての意 見もあった。具体的には首都圏の特に定年後のアク ティブシニア世代にとって、「国造柚子の生産と暮ら

(4)

しが結びついた豊かな営み全体がとても魅力的」、 「都市の生活者がゆずの収穫の手伝い等を通じて生 産活動に貢献でき、かつ生産者と食事等を通じて交 流する体験プログラムを構築できたら、生きがいを 求めるアクティブシニア世代にとっては意義深い」 といった意見や、柚子の色をこの地域のテーマカラ ーにしてゆず色が目に入るようにしたり、街路や各 家庭などに柚子を植えたりして特色ある地域として の色をだしてはどうか」など国造柚子の魅力が果実 や加工商品そのものだけでなく、畑や生産者の方の 暮らしぶり、さらには能美市国造地区のシンボルと しての可能性まで示唆された。 これらの意見を踏まえて平成29 年 12 月 2,3 日の 2日間、首都圏にて付加価値をどの程度評価される のか加工品と果実を同時に販売するテスト販売を行 なった。 図5.テスト販売の様子 その結果、果実に関しては能美市国造地区での直 売イベントでの小売価格と比較して2.8 倍の価格で 販売し、購入者に価格をどう感じたかヒアリング結 果、その多くが無農薬栽培であるのであれば安く感 じるという意見が寄せられた。その反面、柚子の収 穫時期が限られるため日常的に使うことがなく、価 格の値ごろ感より時期的限定感が購買に至った理由 という意見もあった。

5.まとめ

ヒアリング結果から提案したプロダクトが国造地区 への興味関心を消費者に生み出すことと推察された が、商品というハードだけではなく、現地訪問や生 産体験、生産者との交流といったソフト面での収益 化の可能性があるという意見がありこれも価値とし て捉え、改善すべきところも見出されている。今後、 これらの改善を試みながら、より地域創生のモデル となるよう指摘点を踏まえた展開を実現していく。 また生産者が消費者に近い立場の専門家に形式的な 会議ではなく、ヒアリングの前に実施した導入イベ ントを行うことは自由闊達でイノベーティブな議論 に発展したという点において想定以上の効果があっ た。こうしたイノベーティブな議論を行うための手 法の研究は多く報告されていることから、今後様々 な議論を闊達にした事例研究を調べ、本論文で行な った導入イベントと組み合わせたヒアリング調査を ひとつの例としながらこの効果を高め、別の分野の 消費者に近い立場の専門家や、他の里山由来の農産 物、他地域に応用できると考え、その手法を確立し ていきたい。

謝辞

本研究は「能美市国造地区ゆたかなくらし協議会」 (事務局・能美市農政課)による支援を受けて実施し ております。

参考文献

[1] 谷口俊平, 永井由佳里, ジュナイディデニーウィリ ー:クロスコミュニケーションに着目した子どものデ ザイン 教育日本デザイン学会研究発表大会概要集, C4-01, Vol. 61 (2014). [2] 永井由佳里:シーズのデザイン:非常識を創ることか ら始めよう(第 2 部:メタデザインへの挑戦,<特集>デ ザイン学:メタデザインへの挑戦) ,デザイン学研究. 特集号 18(1) 34-37 (2011) [3] 増田央, 森進太郎: 地方における地域コミュニティ 型ビジネスモデルの特性探索:能美市国造ゆずの実態 調査から, サービス学会 第 6 回国内大会 , (2018)

参照

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