変わりつつある情報教育 : 4.高等学校における教育実践事例
5
0
0
全文
(2) 4 ねらい. 内容. 学期. 高等学校における教育実践事例. 備考. ガイダンス 電子メールの利用 コンピュータ利用のために インターネット(WWW)の利用 電子メールのマナー 情報検索 (カテゴリ検索・キーワード検索・蔵書検索) 情報機器の発達 情報の収集と正しい利用 情報機器の発展を知ろう レポートの作成 プレゼンテーションとは 発表準備・グループ内発表・相互評価 代表者発表・相互評価. 個人課題. 情報の統合的な処理 (数値データの集計・図示・グラフ) アンケート調査とは アンケートの検討・作成・実施・集計 レポートの作成 発表準備・発表・相互評価. アンケート調査. グループ課題. 情報のディジタル化 講義と実習 (文字・画像・音声・動画) 情報化社会とは 情報化社会について考える 情報検索・リンク集の作成 情報の信ぴょう性と発信者の責任 著作権 Web ページの作成・相互評価. 【 情報検索 】. 個人課題. 表 -1 府中西高等学校 情報A 授業計画. 人かの生徒が使い始めると,クラスの中で広まり,各自. 情報検索といえば「ググってコピペして」といった,. 使うようになってくる.生徒にとっては「操作が面白. インターネットを利用した「見つけ学習」になってしま. い」ソフトウェアであるようだが,さまざまな機能をふ. うことが多く,「調べ学習」とするためには授業内容に. んだんに使う生徒は発表内容が希薄になる傾向にある.. 工夫が必要となる.インターネットを利用した情報検索 では,カテゴリー検索を取り入れるとともに,図書館を. 【 レポートの作成 】. 利用した「蔵書検索」も並行して学ぶことで,整理分類. 調べたことはレポートにまとめるというのが,基本的. された情報から必要な情報を検索し,多角的に情報を得. なパターンとなっている.1 学期はインターネットで検. ることができるよう指導している.. 索した情報などを元にレポートを作成する.そのため,. キーワード検索においても,単純にキーワードで検索. 参考になる文章を元に,ある程度のレポートが作成でき. するだけでなく,レポート作成の課題と連携させること. るようになる.. で,複数の情報源にあたることや,数多くの情報から必. 2 学期はクラス内でアンケート調査を行い,その結果. 要なものに絞り込むことなどを学ばせることで,情報の. を元にレポートをまとめるため, 参考となる文献がない.. 信憑性について意識するように指導している.. アンケート実施前にどのような結果が得られ,結論が導. 1 学期は AND 検索を使い,2 学期以降は OR 検索・. けるかという「仮説」をグループで作ることが重要であ. NOT 検索なども利用するなど,生徒の学習・成長に合. るが,最近の生徒は自分たちで考え,無から生み出すこ. わせ,情報検索の精度を高めることができるのもスパイ. とが得意ではないために苦労することも多い.. ラル方式のメリットである. 【 電子メール 】 【 プレゼンテーション 】. 校内にメールサーバをたて,情報の授業の最初に「授. 1 学期は個人で,2 学期はグループでプレゼンテーショ. 業内容メール」を送信している.授業内容や評価のポイ. ンの課題をもうけている.プレゼンテーションソフトの. ントを確実に生徒に伝える目的もあるが,パソコンの電. 使い方についてはほとんど授業では説明していない.伝. 源を入れたら最初にメールを見るという,現代の社会人. えたい内容を精選し,文字で表現することで十分目的は. が行っていることを擬似体験させるという目的もある.. 達成できると考えているからである.背景の変更やイラ. 情報 A の内容には,電子メールの送受信やメールの. ストなどの貼り付け,アニメーション効果については何. マナーなども含まれているが,講義としてこれらのこと IPSJ Magazine Vol.48 No.11 Nov. 2007. 1197.
(3) 特集. 変わりつつある情報教育. 図 -2 ピクトグラムの図. 図 -3 IP 表示 BBS の図. を説明しても,理解や定着は期待できず,単に暗記すべ. る実習や,ディジタル化された情報の仕組みの講義に. き内容となってしまう.マナーについても,実際に利用. よって,理解が深まり,活用場面を広げることができる. する中で理由が理解できることがあるため,体験を通し. ようである.. て理解させるように配慮している. 【 情報社会に参画する態度 】 【 情報伝達のための情報発信 】. 3 学期は Web サイト作成をもって,情報発信として位. 文化祭の時期には文化祭のポスターを作成すること. 置づけている.この課題では自分の調べた事柄をまと. や,情報伝達の工夫を学ぶために,図 -2 のようなピク. め,他者にとって役立つ情報となるように再構成するこ. トグラム作成などを行うことがある.このような授業内. とが求められている.情報社会における情報の担い手と. 容のときには,クラスの作品を一覧表示し「相互評価」. して,情報発信の必要性を意識することができるだけで. することが多い.これは,全体の中の自分を意識させ,. なく,発信者の立場から著作権などを考えることが期待. 「他者を意識する・目を向ける」 「自分に目を向ける・理. できる.ブログやプロフ,または個人サイトで情報発信. 解する」ことを狙っている.. をする生徒も多いが,この課題を通して情報発信を見つ. これは,単純にポスター作成実習という形にすると,. め直す生徒も多い.. アプリケーション操作の 「コンピュータ利用教育」 になっ てしまうからである.このような授業ではコンピュータ と対話することが目的であり,独りよがりな作品となる. 他教科との連携. ことも多い.情報の受け手を意識した作品づくりを通し. 情報 A を 1 学年に配置することや,スパイラル型の. て,受け手がいてはじめて情報伝達ができることに気づ. カリキュラムは,他教科との連携を可能にした.新入生. いてほしいと考えている.. が入学し,1 学期が終了するころには,いわゆる「コン ピュータが使える」生徒となっているため,他教科の先. 【 科学的な理解について 】. 生方は効果的な「利用場面」を考えれば情報機器を活用. 情報活用の実践力の育成だけでは情報教育の目標は達. した授業が実現できるようになる.生徒に対する「コン. 成できないため,仕組みなどの科学的理解についても学. ピュータの使い方」の指導が必要ないため,教科の特性. 習する.ネットワークの仕組みや情報のディジタル化に. を活かしたさまざまな活用が期待できる.. ついて,講義と実習を組み合わせて理解・定着を図るよ. 本校でも「IT 推進校」と指定されていた期間は,す. う工夫している.. べての教科で活用事例があり,さまざまな試みも見られ. ネットワークの仕組みは 1 学期冒頭に説明し,記事を. た.中でも,生徒の意見のフィードバックに情報機器を. 投稿したコンピュータの IP アドレスが表示される図 -3. 活用する利用法が生徒・教員ともに評価が高かった.掲. のような掲示板を用いて,匿名であっても発信元が特定. 示板のようなシステムを利用し,その場で意見を回収し. できる仕組みを説明する.これによって,いわゆる「裏. 授業で活用する方法である.. サイト」への書き込みが激減するなど,慎重な利用を促. 情報 A のカリキュラムは特に「総合的な学習の時間」. す効果がある.. との連携を強く意識した.. 中学校や家庭では,画像ファイルや音声ファイルの素. 「総合的な学習の時間」では,生徒の自主性を重んじ. 材をそのまま使うことはあるようだが,編集して利用す. るため,従来型の講義形式による授業ではなく,問題解. 1198. 48 巻 11 号 情報処理 2007 年 11 月.
(4) 4. 高等学校における教育実践事例. 各教科に対して「情報活用の実践力」の育成を図ること が求められているが,現在は残念ながら情報教育が学校 現場に根付いたとは言い難い状況にある. これは教科「情報」や情報教育について,他教科の教 員の理解が進まないことが原因の 1 つである. 『教科「情 報」はコンピュータの操作実習が目的である』,『コン ピュータを利用することが情報教育である』といった誤 解に加え,一般の教科に取り込んだときの情報教育の姿 を具体的にイメージできないことがその要因にある. 情報教育の必要性は少しずつではあるが理解されつつ ある.今後,効果的な活用事例の共有や,学習内容と利 図 -4 PC 教室と生徒の写真. 用方法の整合性などが検討され,教科ごとに活用するた めのスタイルが確立すると,活用が一気に進む可能性も ある.しかしまだ時間は必要そうである.. 決や探求活動が求められている.そのため,情報機器を 活用する場面が多数あると考えたからである.. 【 情報科教員の問題 】. 「総合的な学習の時間」のカリキュラムは 1 学期は研. 情報科の教員自体が,情報教育や教科「情報」の目標. 究分野の決定,2 学期は研究活動と中間報告,3 学期に. を理解していないケースも見受けられる.. 発表会とされ,平成 13 年度から「先行試行校」として. 日経コンピュータ 2005 年 4 月 4 日号には「町のパソ. 2 年前倒しで導入された. 平成 15 年度には情報 A の開講と, 「IT 推進校」とし て生徒用のノート PC が 160 台導入されたため,ごく自. コン教室以下」. 然な形で総合的な学習の時間に情報機器が活用されるこ. 分)は,あっという間に過ぎる』という情報の授業の様. とになった.. 子が紹介されている.このような,アプリケーション操. 図 -4 に PC 教室と生徒の様子を示す.情報 A は週 2. 作実習しか行わない「情報の授業」の話も聞くことは多. 時間であるが,この総合的な学習の時間を教科「情報」. い.ほかにも,インターネットで Web を見せるだけの. の実践の場ととらえ,情報 A で学んだスキルやモラル. 授業や, ワープロ操作しかやらないという授業のような,. などが活用できるように工夫した. 「総合的な学習の時. 極端に偏った授業を行っている事例もあるようである.. 間」は各教科の先生方が担当するが,生徒は特に指示や. 指導要領や教科書にある程度沿った授業をすべきであ. 指導をしなくても,ツールとしてコンピュータを使うこ. るが,自分で教えられる領域を教えようとする教員の習. とができた.. 性もあり, 得意としない領域をほとんど扱わないか,まっ. 「学習活動におけるコンピュータの利用」のイメージ. たく扱わないケースも見られる.. 1). と題した記事が掲載された.『ワープ. ロや検索エンジンの使い方を説明するだけ.生徒にはパ ソコンを使った“実習”をやらせていれば, 週 2 コマ(100. をつかむことができた先生も多く, 「総合的な学習の時 間」による積極的な利用が,他教科によるコンピュータ の利用を促進したことも事実である.. 【 分からないことが分からない 】 情報を担当する教員は全員情報の授業を受けた経験が ない.実際に授業を受けたイメージは教える上では大切. 教科情報の問題点. で,自分自身が教えられた経験があれば理解のプロセス が分かる.生徒に説明するときに自分自身の経験と照ら. 教科「情報」が誕生して 5 年が経過した.いわゆる「未. して,説明方法や教材の提示方法などを工夫・改善する. 履修問題」で発覚したように, 新しい教科である「情報」. ことが容易である.. は学校現場に適切に受け入れられているとはいえない状. 教えられた経験のなさから, 「どのような説明で理解. 況にある.. できたか」 「なにをきっかけにできるようになるか」「コ , ンピュータを使うようになってどれぐらいの期間ででき. 【 学校現場の問題 】. るようになったか」ということが曖昧である.つまり,. e-Japan 計画以降,徐々に学校にも情報機器やネット. 分からないことが分からない状況が見られる. そのため,. ワーク回線の整備が進み,十分とは言えないながらも情. 普通教科として全員の生徒がある程度理解できる授業を. 報教育に必要な環境は整いつつある. 学習指導要領では,. 手探りで組み立てていかなければならない. IPSJ Magazine Vol.48 No.11 Nov. 2007. 1199.
(5) 特集. 変わりつつある情報教育. 【 ○○担当 】. て理解されない.. 情報科の教員には,Web サイト担当,システム・ネッ. 情報科の教員は教員向けの講習会や他校への授業見. トワーク担当,入試・成績などのデータ処理担当,情報. 学, 研究会への参加などで研鑽を積むことは必須である.. セキュリティ担当,情報教育推進担当など,さまざまな. 大学や企業に学びの場所を求める必要もあるだろう.. 「担当」が付いてくることが多い.これだけの校務をこ. それでも領域によっては生徒の方が得意であるケース. なした上で,部活動の指導をすれば,教材研究に費やせ. もある.すべてを「教える」従来型の教員像ではなく,. る時間はごくわずかとなってしまう.手探りの授業をし. 生徒とともに学ぶ「共学」を目指した新しい教員像が求. ながら,これだけの校務をこなすのは至難の業である.. められているのではないだろうか.. 校内の組織として位置づけられていればよいのだが, ほとんどの場合,情報やコンピュータ,Web サイトとい う言葉が用いられている校務については,校務分掌上担. 参考文献 1)日経コンピュータ 2005 年 4 月 4 日号,http://itpro.nikkeibp.co.jp/free/NC/. TOKU2/20050329/1/. 当でなくても,情報科に丸投げされるケースが多い.. (平成 19 年 9 月 24 日受付). これからの教科「情報」のありかた 教科「情報」で扱う学習内容は多岐にわたり,自分の 得意な領域だけですべてを教えることは不可能である. 他教科との連携も求められているため,幅広い見識が必 要である. また,教科として一般的に理解してもらうためには, スタンダードな授業スタイルの確立が必要となってい る.学校によって,授業者によってあまりにかけ離れた 授業を行っているようでは,いつまでたっても教科とし. 1200. 48 巻 11 号 情報処理 2007 年 11 月. 佐藤義弘 [email protected]. 1987 年東京学芸大学卒業.1988 年都立多摩工業高等学校数学 科教諭.2000 年現職講習会により情報科教諭免許取得.2003 年より都立府中西高等学校情報科教諭..
(6)
関連したドキュメント
残念ながら日本の教育現場には,改革の推進を
ても情報活用の実践力を育てていくことが求められているのである︒
大学は職能人の育成と知の創成を責務とし ている。即ち,教育と研究が大学の両輪であ
工学部の川西琢也助教授が「米 国におけるファカルティディベ ロップメントと遠隔地 学習の実 態」について,また医学系研究科
教育・保育における合理的配慮
長野県飯田OIDE長 長野県 公立 長野県教育委員会 姫高等学校 岐阜県 公立 岐阜県教育委員会.. 岡山県 公立
オーディエンスの生徒も勝敗を考えながらディベートを観戦し、ディベートが終わると 挙手で Government が勝ったか
まず、本校のコンピュータの設置状況からお話します。本校は生徒がクラスにつき20人ほど ですが、クラス全員が