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変わりつつある情報教育 : 4.高等学校における教育実践事例

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Academic year: 2021

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(1)特集. 変わりつつある情報教育. 4 高等学校における教育実践事例 佐藤義弘(東京都立府中西高等学校). 高校での情報教育. 調べて.  高校での情報教育の状況を報告する.高校では以前か. 3学期. ら商業高校や工業高校で情報系の科目がいくつか扱われ. まとめて. 発信する. 2学期. てきたが,2003 年度からは普通高校でも本稿で紹介す る普通教科「情報」が開始された.. 1学期.  普通教科「情報」は, 「情報活用の実践力」を中心と する情報 A と, 「情報の科学的理解」 を中心とする情報 B,. 図 -1 スパイラル方式. 「情報社会に参画する態度」を中心とする情報 C が設定 され,生徒はこの中から 1 科目以上履修しなければなら ない.現在は中学校ごとに情報の学習内容が異なるため,. 1 学期:情報検索(インターネット検索・図書検索). 実習を通して全般的な理解とスキルの定着を図れる「情 報 A」だけを必履修科目として開講している学校が多い.. →レポート作成→発表.  情報の授業は,学習指導要領で「他教科での活用も考. 2 学期:アンケート調査→レポート作成→発表 3 学期:インターネット検索→ Web サイト作成. 慮する」よう求められており,1 学年に配置することが.  このような授業展開を実現するために,教科書の内容. のぞましい.実際,1 学年に配置するよう指示した教育. を再構築して工夫している. たとえば, 「問題解決の工夫」. 委員会も多くあったが,指示のなかった地域では,「受. という単元の学習では,仮想の旅行計画や物品購入計画. 験教科でもなく,どのような授業内容であるかがイメー. を立てる課題が提示されていることが多い.しかし本校. ジしにくい」ため,他校の様子を見てから実施できる 2・. では, 「情報機器の発達」 について調べる課題を通して「問. 3 学年に配置した学校も多い.現在では進学校を中心に,. 題解決」を学ぶなど,2 つの単元の内容を 1 つの課題か. 低学年に配置するようカリキュラムを変更している学校. ら学ぶといった工夫を行っている.. も増えてきている..  スキルやモラルについては,必要なときに必要な内容 を学ぶ,コア & オプション方式を取り入れている.レ. 本校の授業. ポートを書く段階では,参考文献の引用の方法や,著作 権への配慮について指導している.また,データを集.  東京都立府中西高等学校は,2003 年より 3 年間「IT. め, 集計する段階で表計算ソフトの利用を指導するなど,. を活用した教育推進校(通称:IT 推進校) 」として東京. 学ぶ必要性を生徒自身が感じられるような工夫をして. 都教育委員会より指定を受け,さまざまな情報機器が導. いる.. 入された.  私は 2003 年に府中西高校に情報科専任教諭として着 任し,IT 推進校の機器導入と運用を担当しながら,新. 情報 A で扱う具体的な内容とねらい. 教科である情報の授業に取り組んできた..  情報 A は「情報活用の実践力」に軸足を置いた科目.  本校では 1 学年の必履修科目として「情報 A」,選択. であるため,情報検索やプレゼンテーションといった内. 科目として 2 学年に「情報 B」 ,3 学年に「情報と表現」. 容を多く取り入れている.本校では表 -1 のように,学. を開講している. 「情報 A」の特徴としては, 「調べて,. 期ごとのテーマに基づいた問題解決を通して,必要なモ. まとめて,発信する」を情報活用のサイクルとして,学. ラルやスキル,知識を身につけ,情報教育の 3 つの柱を. 期ごとに繰り返す形でカリキュラムを組み立てている.. バランスよく学べるような配慮をしている.. 図 -1 のように,繰り返す中でより詳しく深く理解する ようなスパイラル構成である.. 1196. 48 巻 11 号 情報処理 2007 年 11 月.

(2) 4 ねらい. 内容. 学期. 高等学校における教育実践事例. 備考. ガイダンス 電子メールの利用 コンピュータ利用のために インターネット(WWW)の利用 電子メールのマナー 情報検索 (カテゴリ検索・キーワード検索・蔵書検索) 情報機器の発達 情報の収集と正しい利用 情報機器の発展を知ろう レポートの作成 プレゼンテーションとは 発表準備・グループ内発表・相互評価 代表者発表・相互評価. 個人課題. 情報の統合的な処理 (数値データの集計・図示・グラフ) アンケート調査とは アンケートの検討・作成・実施・集計 レポートの作成 発表準備・発表・相互評価. アンケート調査. グループ課題. 情報のディジタル化 講義と実習 (文字・画像・音声・動画) 情報化社会とは 情報化社会について考える 情報検索・リンク集の作成 情報の信ぴょう性と発信者の責任 著作権 Web ページの作成・相互評価. 【 情報検索 】. 個人課題. 表 -1 府中西高等学校 情報A 授業計画. 人かの生徒が使い始めると,クラスの中で広まり,各自.  情報検索といえば「ググってコピペして」といった,. 使うようになってくる.生徒にとっては「操作が面白. インターネットを利用した「見つけ学習」になってしま. い」ソフトウェアであるようだが,さまざまな機能をふ. うことが多く,「調べ学習」とするためには授業内容に. んだんに使う生徒は発表内容が希薄になる傾向にある.. 工夫が必要となる.インターネットを利用した情報検索 では,カテゴリー検索を取り入れるとともに,図書館を. 【 レポートの作成 】. 利用した「蔵書検索」も並行して学ぶことで,整理分類.  調べたことはレポートにまとめるというのが,基本的. された情報から必要な情報を検索し,多角的に情報を得. なパターンとなっている.1 学期はインターネットで検. ることができるよう指導している.. 索した情報などを元にレポートを作成する.そのため,.  キーワード検索においても,単純にキーワードで検索. 参考になる文章を元に,ある程度のレポートが作成でき. するだけでなく,レポート作成の課題と連携させること. るようになる.. で,複数の情報源にあたることや,数多くの情報から必.  2 学期はクラス内でアンケート調査を行い,その結果. 要なものに絞り込むことなどを学ばせることで,情報の. を元にレポートをまとめるため, 参考となる文献がない.. 信憑性について意識するように指導している.. アンケート実施前にどのような結果が得られ,結論が導.  1 学期は AND 検索を使い,2 学期以降は OR 検索・. けるかという「仮説」をグループで作ることが重要であ. NOT 検索なども利用するなど,生徒の学習・成長に合. るが,最近の生徒は自分たちで考え,無から生み出すこ. わせ,情報検索の精度を高めることができるのもスパイ. とが得意ではないために苦労することも多い.. ラル方式のメリットである. 【 電子メール 】 【 プレゼンテーション 】.  校内にメールサーバをたて,情報の授業の最初に「授.  1 学期は個人で,2 学期はグループでプレゼンテーショ. 業内容メール」を送信している.授業内容や評価のポイ. ンの課題をもうけている.プレゼンテーションソフトの. ントを確実に生徒に伝える目的もあるが,パソコンの電. 使い方についてはほとんど授業では説明していない.伝. 源を入れたら最初にメールを見るという,現代の社会人. えたい内容を精選し,文字で表現することで十分目的は. が行っていることを擬似体験させるという目的もある.. 達成できると考えているからである.背景の変更やイラ.  情報 A の内容には,電子メールの送受信やメールの. ストなどの貼り付け,アニメーション効果については何. マナーなども含まれているが,講義としてこれらのこと IPSJ Magazine Vol.48 No.11 Nov. 2007. 1197.

(3) 特集. 変わりつつある情報教育. 図 -2 ピクトグラムの図. 図 -3 IP 表示 BBS の図. を説明しても,理解や定着は期待できず,単に暗記すべ. る実習や,ディジタル化された情報の仕組みの講義に. き内容となってしまう.マナーについても,実際に利用. よって,理解が深まり,活用場面を広げることができる. する中で理由が理解できることがあるため,体験を通し. ようである.. て理解させるように配慮している. 【 情報社会に参画する態度 】 【 情報伝達のための情報発信 】.  3 学期は Web サイト作成をもって,情報発信として位.  文化祭の時期には文化祭のポスターを作成すること. 置づけている.この課題では自分の調べた事柄をまと. や,情報伝達の工夫を学ぶために,図 -2 のようなピク. め,他者にとって役立つ情報となるように再構成するこ. トグラム作成などを行うことがある.このような授業内. とが求められている.情報社会における情報の担い手と. 容のときには,クラスの作品を一覧表示し「相互評価」. して,情報発信の必要性を意識することができるだけで. することが多い.これは,全体の中の自分を意識させ,. なく,発信者の立場から著作権などを考えることが期待. 「他者を意識する・目を向ける」 「自分に目を向ける・理. できる.ブログやプロフ,または個人サイトで情報発信. 解する」ことを狙っている.. をする生徒も多いが,この課題を通して情報発信を見つ.  これは,単純にポスター作成実習という形にすると,. め直す生徒も多い.. アプリケーション操作の 「コンピュータ利用教育」 になっ てしまうからである.このような授業ではコンピュータ と対話することが目的であり,独りよがりな作品となる. 他教科との連携. ことも多い.情報の受け手を意識した作品づくりを通し.  情報 A を 1 学年に配置することや,スパイラル型の. て,受け手がいてはじめて情報伝達ができることに気づ. カリキュラムは,他教科との連携を可能にした.新入生. いてほしいと考えている.. が入学し,1 学期が終了するころには,いわゆる「コン ピュータが使える」生徒となっているため,他教科の先. 【 科学的な理解について 】. 生方は効果的な「利用場面」を考えれば情報機器を活用.  情報活用の実践力の育成だけでは情報教育の目標は達. した授業が実現できるようになる.生徒に対する「コン. 成できないため,仕組みなどの科学的理解についても学. ピュータの使い方」の指導が必要ないため,教科の特性. 習する.ネットワークの仕組みや情報のディジタル化に. を活かしたさまざまな活用が期待できる.. ついて,講義と実習を組み合わせて理解・定着を図るよ.  本校でも「IT 推進校」と指定されていた期間は,す. う工夫している.. べての教科で活用事例があり,さまざまな試みも見られ.  ネットワークの仕組みは 1 学期冒頭に説明し,記事を. た.中でも,生徒の意見のフィードバックに情報機器を. 投稿したコンピュータの IP アドレスが表示される図 -3. 活用する利用法が生徒・教員ともに評価が高かった.掲. のような掲示板を用いて,匿名であっても発信元が特定. 示板のようなシステムを利用し,その場で意見を回収し. できる仕組みを説明する.これによって,いわゆる「裏. 授業で活用する方法である.. サイト」への書き込みが激減するなど,慎重な利用を促.  情報 A のカリキュラムは特に「総合的な学習の時間」. す効果がある.. との連携を強く意識した..  中学校や家庭では,画像ファイルや音声ファイルの素.   「総合的な学習の時間」では,生徒の自主性を重んじ. 材をそのまま使うことはあるようだが,編集して利用す. るため,従来型の講義形式による授業ではなく,問題解. 1198. 48 巻 11 号 情報処理 2007 年 11 月.

(4) 4. 高等学校における教育実践事例. 各教科に対して「情報活用の実践力」の育成を図ること が求められているが,現在は残念ながら情報教育が学校 現場に根付いたとは言い難い状況にある.  これは教科「情報」や情報教育について,他教科の教 員の理解が進まないことが原因の 1 つである. 『教科「情 報」はコンピュータの操作実習が目的である』,『コン ピュータを利用することが情報教育である』といった誤 解に加え,一般の教科に取り込んだときの情報教育の姿 を具体的にイメージできないことがその要因にある.  情報教育の必要性は少しずつではあるが理解されつつ ある.今後,効果的な活用事例の共有や,学習内容と利 図 -4 PC 教室と生徒の写真. 用方法の整合性などが検討され,教科ごとに活用するた めのスタイルが確立すると,活用が一気に進む可能性も ある.しかしまだ時間は必要そうである.. 決や探求活動が求められている.そのため,情報機器を 活用する場面が多数あると考えたからである.. 【 情報科教員の問題 】.   「総合的な学習の時間」のカリキュラムは 1 学期は研.  情報科の教員自体が,情報教育や教科「情報」の目標. 究分野の決定,2 学期は研究活動と中間報告,3 学期に. を理解していないケースも見受けられる.. 発表会とされ,平成 13 年度から「先行試行校」として.  日経コンピュータ 2005 年 4 月 4 日号には「町のパソ. 2 年前倒しで導入された.  平成 15 年度には情報 A の開講と, 「IT 推進校」とし て生徒用のノート PC が 160 台導入されたため,ごく自. コン教室以下」. 然な形で総合的な学習の時間に情報機器が活用されるこ. 分)は,あっという間に過ぎる』という情報の授業の様. とになった.. 子が紹介されている.このような,アプリケーション操.  図 -4 に PC 教室と生徒の様子を示す.情報 A は週 2. 作実習しか行わない「情報の授業」の話も聞くことは多. 時間であるが,この総合的な学習の時間を教科「情報」. い.ほかにも,インターネットで Web を見せるだけの. の実践の場ととらえ,情報 A で学んだスキルやモラル. 授業や, ワープロ操作しかやらないという授業のような,. などが活用できるように工夫した. 「総合的な学習の時. 極端に偏った授業を行っている事例もあるようである.. 間」は各教科の先生方が担当するが,生徒は特に指示や.  指導要領や教科書にある程度沿った授業をすべきであ. 指導をしなくても,ツールとしてコンピュータを使うこ. るが,自分で教えられる領域を教えようとする教員の習. とができた.. 性もあり, 得意としない領域をほとんど扱わないか,まっ.   「学習活動におけるコンピュータの利用」のイメージ. たく扱わないケースも見られる.. 1). と題した記事が掲載された.『ワープ. ロや検索エンジンの使い方を説明するだけ.生徒にはパ ソコンを使った“実習”をやらせていれば, 週 2 コマ(100. をつかむことができた先生も多く, 「総合的な学習の時 間」による積極的な利用が,他教科によるコンピュータ の利用を促進したことも事実である.. 【 分からないことが分からない 】  情報を担当する教員は全員情報の授業を受けた経験が ない.実際に授業を受けたイメージは教える上では大切. 教科情報の問題点. で,自分自身が教えられた経験があれば理解のプロセス が分かる.生徒に説明するときに自分自身の経験と照ら.  教科「情報」が誕生して 5 年が経過した.いわゆる「未. して,説明方法や教材の提示方法などを工夫・改善する. 履修問題」で発覚したように, 新しい教科である「情報」. ことが容易である.. は学校現場に適切に受け入れられているとはいえない状.  教えられた経験のなさから, 「どのような説明で理解. 況にある.. できたか」 「なにをきっかけにできるようになるか」「コ , ンピュータを使うようになってどれぐらいの期間ででき. 【 学校現場の問題 】. るようになったか」ということが曖昧である.つまり,.  e-Japan 計画以降,徐々に学校にも情報機器やネット. 分からないことが分からない状況が見られる. そのため,. ワーク回線の整備が進み,十分とは言えないながらも情. 普通教科として全員の生徒がある程度理解できる授業を. 報教育に必要な環境は整いつつある. 学習指導要領では,. 手探りで組み立てていかなければならない. IPSJ Magazine Vol.48 No.11 Nov. 2007. 1199.

(5) 特集. 変わりつつある情報教育. 【 ○○担当 】. て理解されない..  情報科の教員には,Web サイト担当,システム・ネッ.  情報科の教員は教員向けの講習会や他校への授業見. トワーク担当,入試・成績などのデータ処理担当,情報. 学, 研究会への参加などで研鑽を積むことは必須である.. セキュリティ担当,情報教育推進担当など,さまざまな. 大学や企業に学びの場所を求める必要もあるだろう.. 「担当」が付いてくることが多い.これだけの校務をこ.  それでも領域によっては生徒の方が得意であるケース. なした上で,部活動の指導をすれば,教材研究に費やせ. もある.すべてを「教える」従来型の教員像ではなく,. る時間はごくわずかとなってしまう.手探りの授業をし. 生徒とともに学ぶ「共学」を目指した新しい教員像が求. ながら,これだけの校務をこなすのは至難の業である.. められているのではないだろうか..  校内の組織として位置づけられていればよいのだが, ほとんどの場合,情報やコンピュータ,Web サイトとい う言葉が用いられている校務については,校務分掌上担. 参考文献 1)日経コンピュータ 2005 年 4 月 4 日号,http://itpro.nikkeibp.co.jp/free/NC/. TOKU2/20050329/1/. 当でなくても,情報科に丸投げされるケースが多い.. (平成 19 年 9 月 24 日受付). これからの教科「情報」のありかた  教科「情報」で扱う学習内容は多岐にわたり,自分の 得意な領域だけですべてを教えることは不可能である. 他教科との連携も求められているため,幅広い見識が必 要である.  また,教科として一般的に理解してもらうためには, スタンダードな授業スタイルの確立が必要となってい る.学校によって,授業者によってあまりにかけ離れた 授業を行っているようでは,いつまでたっても教科とし. 1200. 48 巻 11 号 情報処理 2007 年 11 月. 佐藤義弘 [email protected]. 1987 年東京学芸大学卒業.1988 年都立多摩工業高等学校数学 科教諭.2000 年現職講習会により情報科教諭免許取得.2003 年より都立府中西高等学校情報科教諭..

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