Dirichlet
の単数定理の
Siegel
による証明
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平成 18 年 12 月 1 日
目 次
1 はじめに 1 2 実行列 2 3 離散的部分群 5 4 共役 (1) 8 5 共役 (2) 11 6 単数定理の証明 (1) 15 7 単数定理の証明 (2) 17 8 単数定理の証明 (3) 191
はじめに
n を正の整数とする. K を n 次代数体とし, OKを K の整数環とする. K の元 α が K の単数であるとは, α ∈ OKであって, ある β ∈ OKが存在して αβ = 1 が成り立 つことである. K の単数の全体 O×Kは K×の部分群になる. そのため, O×Kは K の単数群と呼ば れる. Dirichlet1の単数定理とは, O× Kの構造に関する定理である. K から Q の代数的閉包 Q の中への同型写像のことを K の共役写像という. K の共役写像は n 個ある. σ を K の共役写像とする. σ(K) が R に含まれるとき, σ は実であるといい, そうでないとき, σ は虚であるという. K の共役写像 σ に対して, σ : K −→ Q, α 7−→ σ(α) もまた共役写像である. σ が実のときは σ = σ, 虚のときは σ 6= σ である. 実共役写像の個数を r1, 虚共役写像の個数を 2r2とするとき, n = r1+ 2r2が成り立つ. 1カタカナ表記は「ディリクレ」.共役写像に番号をつけて, σ1, σ2, . . ., σr1 は実共役写像, σr1+1, . . ., σn は虚共役写像であり, σr1+r2+i= σr1+i (i = 1, 2, . . . , r2) であるとする. σ1は K の恒等写像 idKであるとする. 定理 1.1 (Dirichlet の単数定理). K に属する 1 の根の全体を WKとおく. WKは有限巡回群であ る. r = r1+ r2− 1 とおくと, OK× = WK× Zr が成り立つ. WKは有限巡回群なので, その位数を q とすると, WK∼= Z/qZ が成り立つ. したがって, O× K = Z/qZ ⊕ Zr となる. Dirichlet の単数定理を言い換えれば, K の単数 ε1, . . ., εr ∈ OK× が存在して, 任意の K の単数 ε ∈ O×Kは ε = ζεn1 1 · · · εnrr, ζ ∈ WK, n1, . . . , nr∈ Z (1) の形に一意的に表される. なお, このような性質をもつ単数の組 ε1, . . ., εrを K の基本単数系と いう. さて, Dirichlet の単数定理の証明の概略は次の通りである. α ∈ K に対して α(i)= σ i(α) とおく. そして, 群の準同型写像 λ : OK× −→ Rr, ε 7−→ (log |ε(1)|, . . . , log |ε(r)|) を考えると, ker λ = WK かつ λ(O× K) = Zr である. そうすると, K の単数 ε1, . . ., εr∈ O×Kが存在して, 任意の K の単数 ε ∈ OK×は (1) の形 に一意的に表されることがいえる. この文書で紹介する証明は, C. L. Siegel がかつて G¨ottingen で講義したときの方法と伝えられ ているものをもとにしている.
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実行列
命題 2.1. 実数 t ≥ 1, u > 1 に対して tu+ 1 < (t + 1)u が成り立つ. 証明. f (t) = (t + 1)u− (tu+ 1) とおく. u > 1 より, f (1) = 2u− 2 > 0. また, t ≥ 1, u > 1 より, d dtf (t) = u ¡ (t + 1)u−1− tu−1¢> 0. したがって t ≥ 1, u > 1 のとき f (t) > 0 である.定理 2.2. m, n を正の整数とし, m < n であるとする. t を正の整数とする. また, A = (aij) を m × n 型の実行列とし, a = max 1≤i≤m n X j=1 |aij| とおく. このとき, 0 でない Znの元 x = (x1, x2, . . . , xn) が存在して, y1 y2 .. . ym = A x1 x2 .. . xn とおくと max 1≤j≤n|xj| ≤ t, (2) max
1≤i≤m|yi| ≤ 2at
1−n/m (3) が成り立つ. 証明. m < n かつ t ≥ 1 であるから, 命題 2.1 より, tn/m+ 1 < (t + 1)n/m が成り立つ. よって, ある整数 h をとって2 tn/m≤ h < (t + 1)n/m (4) すなわち tn≤ hm< (t + 1)n (5) となるようにできる. 立体3
I = {(y1, . . . , ym) ∈ Rm| |yi| ≤ at, i = 1, 2, . . . , m}
の各辺を h 個の等しい部分に分ける. そうすると, I は各辺の長さが 2at/h の hm個の部分立体に 分けられる. 一方, j = 1, 2, . . ., n に対して, xj= 0, 1, . . . , t をとることにより, Znの中に (t + 1)n 個の点 xk= (xk,1, . . . , xk,n), k = 1, 2, . . . , (t + 1)n が存在する. これらの点 xkに対して, yk,1 yk,2 .. . yk,m = A xk,1 xk,2 .. . xk,n (6) 2例えば, h として tn/m+ 1 を超えない最大の整数をとる. 3m = 2 のとき, I は辺の長さが 2at の正方形である. m = 3 のとき, I は辺の長さが 2at の直方体である.
とおくと, i = 1, 2, . . . , m に対して |yk,i| ≤ at が成り立つ. よって (yk,1, yk,2, . . . , yk,m) ∈ I である. したがって (5) より, ある 2 つの点 xk1, xk2が存在して, (6) のようにして yk1, yk2を定めたとき, それらは I の同じ部分立体に入らなければならない. x = (x1, . . . , xn) = xk1− xk2とおき, x に対して (6) のようにして y = (y1, . . . , ym) を定める. すると, j = 1, 2, . . . , n に対して |xj| = |xk1,j− xk2,j| ≤ t となっている. また, y1 y2 .. . ym = A xk1,1− xk2,1 xk1,2− xk2,2 .. . xk1,n− xk2,n = A xk1,1 xk1,2 .. . xk1,n − A xk2,1 xk2,2 .. . xk2,n = yk1,1− yk2,1 yk1,2− yk2,2 .. . yk1,m− yk2,m であるから, i = 1, 2, . . . , m に対して
|yi| = |yk1,i− yk2,i| ≤
2at h が成り立つ. 一方, (4) より, 2at h ≤ 2at 1−n/m である. ゆえに i = 1, 2, . . . , m に対して |yi| ≤ 2at1−n/m が成り立つ. 定理 2.3. A = (aij) は r 次の実正方行列で, 次の条件を満たすとする. aii > 0 (i = 1, . . . , r), (7) aij ≤ 0 (i 6= j), (8) r X j=1 aij > 0 (i = 1, . . . , r). (9) このとき, det A 6= 0 である. 証明. もし仮に det A = 0 とすると, ある 0 でない列ベクトル x = x1 x2 .. . xr が存在して, Ax = 0 でなければならない. x の成分のうち, 絶対値において最大のものを xsとす ると, xs6= 0 であり, r X j=1 asjxj = 0
より ass= |ass| = ¯ ¯ ¯ ¯ X 1≤j≤r j6=s asjxj xs ¯ ¯ ¯ ¯ ≤ X 1≤j≤r j6=s |asj||xj| |xs| ≤ X 1≤j≤r j6=s |asj| = − X 1≤j≤r j6=s asj. よって r X j=1 asj≤ 0 となる. これは (9) に矛盾する.
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離散的部分群
m を正の整数とする. Rmの部分集合 S が離散的であるとは, 任意の正の実数 C に対して # ½ (x1, x2, . . . , xn) ∈ S ¯ ¯ ¯ ¯ max1≤j≤m|xj| ≤ C ¾ < ∞ が成り立つときにいう. 明らかに, S が離散的であるとき, S の任意の部分集合もまた離散的であ る. 特に, S が離散的であるとき, S の有界部分集合は有限集合である. 命題 3.1. R の任意の離散的部分群 Γ は, ある γ ∈ Γ によって Γ = Zγ と書ける. 証明. Γ = {0} のとき, γ = 0 とすればよい. Γ 6= {0} と仮定すると, ある γ1∈ Γ が存在して |γ1| > 0 である. C = |γ1| とおくと, Γ が離散的 であることから, |x| ≤ C であるような x ∈ Γ は有限個しかない. よって, 0 < |x| ≤ C を満たす x ∈ Γ の中で最小のものが存在する. それを γ とおく. Zγ が Γ の部分群であることは明らかである. よって, Γ ⊆ Zγ を示せば, Γ = Zγ がいえて証明 が完了する. 任意の x ∈ Γ に対して, q0= max © q ∈ Z¯¯ q > 0, |x| ≤ q|γ|ª が存在する4. そして, 0 ≤ q0|γ| − |x| < |γ| が成り立つ5. 一方, q0|γ| − |x| ∈ Γ 4アルキメデスの原理と自然数の整列性からこのような q 0の存在が保証される. 5もし |γ| ≤ q0|γ| − |x| なら |x| ≤ (q0− 1)|γ| となって q0の最小性に反する.である6. よって, γ の最小性から, q0|γ| − |x| = 0 でなければならない. ゆえに |x| ∈ Zγ. したがっ て x = ±|x| ∈ Zγ となり, Γ ⊆ Zγ がいえる. 命題 3.2. Γ を Rmの離散的部分群とし, Γ 6= {0} であるとする. このとき, ある γ ∈ Γ が存在して Rγ ∩ Γ = Zγ, γ 6= 0 が成り立つ. 証明. 0 でない元 γ0∈ Γ を 1 つとり, M = {uγ0∈ Rm| 0 < u ≤ 1} とおくと, M は有界集合である. Γ は離散的だから, Γ ∩ M = {uγ0∈ Γ | 0 < u ≤ 1} は有限集合である. また, 少なくとも γ0∈ Γ ∩ M なので, Γ ∩ M は空でない. よって, {u ∈ R | uγ0∈ Γ, 0 < u ≤ 1} もまた空でな有限集合なので, 最小元をもつ. それを u0とおく. また, γ = u0γ0とおく. α ∈ Γ ∩ Rγ とすると, α = uγ, u ∈ R と表される. u を超えない最大の整数を l とすれば, Γ 3 α − lγ = (u − l)γ = (u − l)u0γ0. 一方, 0 ≤ u − l < 1 だから, 0 ≤ (u − l)u0< u0. である. u0 の最小性から, u − l = 0 でなければならない. ゆえに α = lγ ∈ Zγ. したがって Γ ∩ Rγ ⊆ Zγ. 逆の包含関係は明らか. Γ を Rmの離散的部分群とし, γ を 0 でない Γ の元とする. b 2, b3, . . ., bm を, γ, b2, b3, . . ., bmが Rmの R 上の基底となっているような Rmの元とする. このとき, m ≥ 2 に対して, 写像 Lγ: Rm→ Rm−1を Lγ(x1γ + x2b2+ · · · + xmbm) = (x2, x3, . . . , xm) によって定める. Lγは明らかに R 上の線型写像である. 命題 3.3. 0 でない任意の γ ∈ Γ に対して, ker Lγ = Rγ が成り立つ. 証明. α ∈ ker Lγとし, ある x1, x2, . . ., xm∈ R によって α = x1γ + x2b2+ · · · + xmbm と表したとする. このとき (x2, . . . , xn) = Lγ(α) = 0. すなわち, x2= · · · = xr= 0. ゆえに α = x1γ ∈ Rγ. したがって ker Lγ ⊆ Rγ. 逆の包含関係は明らかである. 6x, γ ∈ Γ のとき, −x, −γ ∈ Γ だから, |x|, |γ| ∈ Γ. また, q0|γ| = |γ| + · · · + |γ|(q0個の和).
命題 3.4. 0 でない任意の γ ∈ Γ に対して, Γ0= Lγ(Γ) は Rm−1の離散的部分群である. 証明. Lγは線型写像なので, 特に Rmから Rm−1への群の準同型写像である. よって, Γ0は Rm−1 の部分群である. C を正の実数とする. また, (x2, x3, . . . , xm) ∈ Γ0とし, max 2≤j≤m|xj| ≤ C (10) であるとする. Γ0= L(Γ) だから, ある x1∈ R が存在して x1γ + x2b2+ · · · + xmbm∈ Γ. x1を超えない最大の整数を l1とすると, γ ∈ Γ なので, l1γ ∈ Γ. よって (x1− l1)γ + x2b2+ · · · + xmbm = (x1γ + x2b2+ · · · + xmbm) − l1γ ∈ Γ. しかも, 0 ≤ x1− l1< 1 であり, (x1− l1)γ + x2b2+ · · · + xmbmの Lγによる像は (x2, . . . , xm) で ある. したがって, (10) を満たす (x2, . . . , xm) ∈ Γ0の個数は, x1γ + x2b2+ · · · + xmbm, 0 ≤ x1< 1 (11) なる形の Γ の元の個数以下である. 一方, γ, b2, b3, . . ., bmの各成分の絶対値の最大値を C0とすれば, (11) の形の元を (y1, y2, . . . , ym) で表すとき, max 1≤j≤m|yj| ≤ C 0+ (m − 1)CC0 である. 右辺の C0+ (m − 1)CC0は (x2, . . . , xm) ∈ Γ0には依存しない定数であり, Γ は離散的だか ら, (11) の形の元は有限個しかない. ゆえに (10) を満たす (x2, . . . , xm) ∈ Γ0の個数は有限である. したがって Γ0は離散的である. 定理 3.5. Rmの任意の離散的部分群 Γ に対して, ある γ1, γ2, . . ., γr∈ Γ が存在して Γ = Zγ1⊕ · · · ⊕ Zγr, r ≤ m が成り立つ. 証明. Γ = {0} のときは明らかなので, Γ 6= {0} であると仮定する. m に関する数学的帰納法により証明する. m = 1 のときは, まさに命題 3.1 である. m ≥ 2 とし, Rm−1の任意の離散的部分群に対して定理が成り立つと仮定する. 命題 3.2 より, Rγ1∩ Γ = Zγ1, γ16= 0 を満たす γ1∈ Γ が存在する. L = Lγ1, Γ 0= L(Γ) とおく. 命題 3.4 より, Γ0は Rm−1の離散的部分群である. よって帰納法の 仮定により, ある γ02, . . ., γr0 ∈ Γ0が存在して Γ0= Zγ0 2⊕ · · · ⊕ Zγr0, r ≤ m
が成り立つ. また, Γ0 = L(Γ) なので, ある γ2, . . ., γr∈ Γ が存在して L(γj) = r0 j (j = 2, . . . , r) となる. n1, n2, . . ., nr∈ Z とし, n1γ1+ · · · + nrγr= 0 と仮定する. このとき, n2γ20 + · · · + nrγr0 = L(n1γ1+ · · · + nrγr) = 0. γ0 2, . . ., γ0rは Γ0の Z 上の基底だから, n2= · · · = nr= 0. さらに, γ16= 0 だから n1= 0 でなけれ ばならない. したがって γ1, γ2, . . ., γrは Z 上 1 次独立である. α ∈ Γ とすると, L(α) ∈ Γ0より, ある n 2, . . ., nr∈ Z が存在して L(α) = n2γ20 + · · · + nrγr0 = L(n2γ2+ · · · + nrγr) となる. よって L¡α − (n2γ2+ · · · + nrγr) ¢ = 0. ゆえに α − (n2γ2+ · · · + nrγr) ∈ ker L ∩ Γ. 一方, 命題 3.3 より ker L = Rγ1だから, ker L ∩ Γ = Rγ1∩ Γ = Zγ1. よって, ある n1∈ Z が存在して α − (n2γ2+ · · · + nrγr) = n1γ1. ゆえに α = n1γ1+ n2γ2+ · · · + nrγr. したがって Γ のすべての元は γ1, γ2, . . ., γrによって Z 上生成される. 以上より, Rmの任意の離散的部分群に対しても定理が成り立つとが示された.
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共役
(1)
n を正の整数とする. K を n 次代数体とし, OKを K の整数環とする. K から Q の代数的閉包 Q の中への同型写像のことを K の共役写像という. K の共役写像は n 個ある. σ を K の共役写像とする. σ(K) が R に含まれるとき, σ は実であるといい, そうでないとき, σ は虚であるという. K の共役写像 σ に対して, σ : K −→ Q, α 7−→ σ(α) もまた共役写像である. σ が実のときは σ = σ, 虚のときは σ 6= σ である. 実共役写像の個数を r1, 虚共役写像の個数を 2r2とするとき, n = r1+ 2r2が成り立つ. 共役写像に番号をつけて, σ1, σ2, . . ., σr1 は実共役写像, σr1+1, . . ., σn は虚共役写像であり, σr1+r2+i= σr1+i (i = 1, 2, . . . , r2) であるとする. σ1は K の恒等写像 idKであるとする. α ∈ K に対して α(i)= σ i(α) とおく. σ1= idKとしたので, α(1)= α である. K/Q のノルムを N で表すことにすると, 任意の α ∈ K に対して N (α) = α(1)α(2)· · · α(n)が成 り立つ.命題 4.1. OK の 0 でない任意の元 α に対して, N (α)/α ∈ OK. 証明. N (α) = α(1)α(2)· · · α(n)であり, α の各共役元はすべて代数的整数だから7, N (α) α = α (2)· · · α(n) もまた代数的整数である. さらに, N (α) ∈ Z だから, N (α)/α ∈ K である. OKは代数的整数の全 体 Z と K との共通部分であるから, N (α)/α ∈ OK. 定理 4.2. u ∈ OKが K の単数であるための必要十分条件は, |N (u)| = 1 となることである. 証明. u を K の単数とすれば, ある v ∈ OK が存在して uv = 1 となる. よって N (u)N (v) = N (uv) = N (1) = 1. u, v ∈ OKだから, N (u), N (v) ∈ Z. したがって N (u) = ±1. 逆に, u ∈ OKかつ |N (u)| = 1 ならば, u 6= 0 であり8, uN (u) u = N (u) = ±1. u は 0 でない OKの元なので, 命題 4.1 より, N (u)/u もまた OKの元である. したがって u は K の単数である. 命題 4.3. 任意の正の整数 a (∈ Z) に対して, |OK/aOK| ≤ an. 証明. ω1, . . ., ωnを OKの整数基とする: OK = Zω1⊕ · · · ⊕ Zωn. また, A = {r1ω1+ · · · + rnωn | 0 ≤ rj < a, 1 ≤ j ≤ n} とおく. このとき, |A| = anである. 一方, 任意の α ∈ OKに対して, ある β ∈ A が存在して α ≡ β (mod a) となる. したがって a を 法とする同値類は高々an個である. OK の 2 つの元 α, β が同伴であるとは, ある単数 ε ∈ O×Kが存在して, α = εβ と書けるときに いう. 同伴であるという関係が OKにおける同値関係であることはすぐにわかる. 命題 4.4. OK の 0 でない 2 つの元 α, β が同伴であるための必要十分条件は, αβ−1と βα−1がと もに OKに属することである. 証明. α, β が同伴ならば, ある単数 ε ∈ OK×が存在して, α = εβ と書ける. よって αβ−1= ε ∈ OK, βα−1= ε−1∈ OK. 逆に, αβ−1と βα−1がともに OKに属するとき, ある γ, δ ∈ OKが存在して αβ−1= γ, βα−1= δ となる. このとき α = γβ = γδα. よって α(1 − γδ) = 0. α 6= 0 だから, γδ = 1. よって γ, δ は K の単数である. したがって α, β は同伴である. 7α は代数的整数だから, ある Z 係数の単多項式 f (x) の根である: f (α) = 0. このとき, 各共役元 α(i)= σ(α) に対し て f (σ(α)) = σ(f (α)) = 0 が成り立つ. したがって α(i)もまた代数的整数である. 8もし仮に u = 0 ならば N (u) = 0.
定理 4.5. 任意の正の整数 a ∈ Z に対して, |N (α)| = a となるような OK の元 α は同伴を除いて 有限個しかない. 証明. 命題 4.3 より, a を法とする同値類は有限個しかない. したがって, 同じ同値類に属する任意 の α, β ∈ OKに対して, N (α) = N (β) = a ならば α と β が同伴であることを示せば十分である. a > 0 なので, α, β はともに 0 ではない. また, ある γ ∈ OK が存在して α − β = aγ が成り立つ. 命題 4.1 より, αβ−1= 1 ± N (β) β γ ∈ OK, βα−1= 1 ±N (α) α γ ∈ OK. 命題 4.4 より α と β とは同伴である. 定理 4.6. 任意の実数 c > 0 に対して, α ∈ OKで |α(i)| ≤ c, i = 1, 2, . . . , n を満たすものは有限個しかない. 証明. ω1, . . ., ωnを OKの整数基とする: OK = Zω1⊕ · · · ⊕ Zωn. OKの任意の元 α は, ある x1, . . ., xn∈ Z によって α = x1ω1+ · · · + xnωn と表される. このとき, 共役写像の準同型性によって, α(1)= x1ω1(1)+ · · · + xnω(1)n α(2)= x 1ω1(2)+ · · · + xnω(2)n · · · · α(n)= x 1ω(n)1 + · · · + xnω(n)n となる. P = ω(1)1 ω(1)2 · · · ω(1)n ω(2)1 ω(2)2 · · · ω(2)n .. . ... . .. ... ω(n)1 ω2(n) · · · ωn(n) , α = α(1) α(2) .. . α(n) , x = x1 x2 .. . xn とおくと, α = P x となる. P は正則行列なので, 逆行列 P−1が存在して, x = P−1α
となる. P−1= (pij) とおき, c1= max 1≤i≤n 1≤j≤n |pij| とおく. このとき, i = 1, 2, . . . , n に対して
|xi| = |pi1α(1)+ · · · + pinα(n)|
= |pi1||α(1)| + · · · + |pin||α(n)| ≤ nc1c となる. nc1c は K にのみ依存する定数である. よって α は有限個しかない.
5
共役
(2)
n を正の整数, K を n 次代数体, r1を K の実共役写像の個数, 2r2を虚共役写像の個数とする. r1≥ 0, r2≥ 0, r1+ 2r2= n > 0 なので, r1≥ 1 または r2≥ 1 である. よって r1+ r2≥ 1 である. E = {1, 2, . . . , r1+ r2} とし, k ∈ E に対して ek を次のように定義する : e k = k, 1 ≤ k ≤ r1のとき, k + r2, r1< k ≤ r1+ r2のとき. E の部分集合 S に対して, e S = {ek | k ∈ S} とおく. 以下, この節では r1+ r2 ≥ 2 と仮定する. つまり, E は 2 つ以上の元をもつとする. X, Y を E の部分集合とし, E = X ∪ Y, X ∩ Y = ∅, X 6= ∅, Y 6= ∅ であるとする. このとき, {1, 2, . . . , n} = (X ∪ eX) ∪ (Y ∪ eY ), (X ∪ eX) ∩ (Y ∪ eY ) = ∅ (12) が成り立つ. X ∪ eX の元の個数を m とする. X 6= ∅ なので, m ≥ 1 である. n = r1+ 2r2より, X ∪ eX ⊆ {1, 2, . . . , n}. また, Y 6= ∅ より, X ∪ eX 6= {1, 2, . . . , n}. したがって m < n である. 定理 5.1. K のみに依存する正の実数 c が存在して, 任意の整数 t > 1 に対して, OKの 0 でない 元 α が存在して, c1−nt1−n/m ≤ |α(k)| ≤ c t1−n/m (k ∈ X), c1−nt ≤ |α(l)| ≤ c t (l ∈ Y ), が成り立つ.証明. k1, . . ., kuを X の元で eki = kiとなるもの, l1, . . ., lvを X の元で eli= liとなるものとする. このとき, m = u + 2v である. ω1, ω2, . . ., ωnを OKの整数基とする. m × n 型の行列 A = (aij) を, j = 1, 2, . . . , n に対して aij = ω(ki) j (i = 1, 2, . . . , u), au+i,j = Re ω(li) j (i = 1, 2, . . . , v), au+v+i,j = Im ω(li) j (i = 1, 2, . . . , v) で定義する. m < n なので, 定理 2.2 より, x = (x1, x2, . . . , xn) ∈ Zn, y = (y1, y2, . . . , ym) ∈ Rm が存在して, x 6= 0 であり, y1 y2 .. . ym = A x1 x2 .. . xn および max 1≤j≤n|xj| ≤ t, max
1≤i≤m|yi| ≤ 2at 1−n/m が成り立つ. α = n X j=1 xjωj とおくと, α は 0 でない OK の元である. このとき, i = 1, 2, . . . , u に対して |α(ki)| = ¯ ¯ ¯ ¯ ¯ n X j=1 xjω(ki) j ¯ ¯ ¯ ¯ ¯= ¯ ¯ ¯ ¯ ¯ n X j=1 aijxj ¯ ¯ ¯ ¯ ¯= |yi| ≤ 2at 1−n/m および, i = 1, 2, . . . , v に対して |α(li)| ≤ ¯ ¯ ¯ ¯ ¯ n X j=1 xjRe ω(li) j ¯ ¯ ¯ ¯ ¯+ ¯ ¯ ¯ ¯ ¯ n X j=1 xjIm ω(li) j ¯ ¯ ¯ ¯ ¯ = ¯ ¯ ¯ ¯ ¯ n X j=1 au+i,jxj ¯ ¯ ¯ ¯ ¯+ ¯ ¯ ¯ ¯ ¯ n X j=1 au+v+i,jxj ¯ ¯ ¯ ¯ ¯ = |yu+i| + |yu+v+i| ≤ 4at1−n/m が成り立つ. さらに, α(eli)は α(li)の複素共役なので, |α(li)| = |α(eli)| である. ゆえに, 任意の k ∈ X ∪ eX に対して |α(k)| ≤ 4at1−n/m が成り立つ.
次に, c1= max 1≤i≤n n X j=1 |ω(i)j | とおくと, j = 1, 2, . . . , n に対して |xj| ≤ t だから, 任意の l ∈ Y ∪ eY に対して, |α(l)| = ¯ ¯ ¯ ¯ ¯ n X j=1 xjωj(l) ¯ ¯ ¯ ¯ ¯≤ c1t となる. c = max{4a, c1} とおくと, |α(k)| ≤ c t1−n/m (k ∈ X ∪ eX), (13) |α(l)| ≤ c t (l ∈ Y ∪ eY ) (14) が得られる. α は 0 でない代数的整数なので, |N (α)| ≥ 1 である9. 任意の k ∈ X に対して, (12), (13), (14) より 1 ≤ |N (α)| = Y i∈X∪ eX |α(i)| Y j∈Y ∪ eY |α(j)| ≤ |α(k)|¡c1−n/m¢m−1(ct)n−m = |α(k)|cn−1tn/m−1 が成り立つ. よって c1−nt1−n/m≤ |α(k)| が得られる. また, 任意の l ∈ Y に対して, (12), (13), (14) より 1 ≤ |N (α)| = Y i∈X∪ eX |α(i)| Y j∈Y ∪ eY |α(j)| ≤¡ct1−n/m¢m|α(l)|(ct)n−m−1 = |α(l)|cn−1t−1 が成り立つ. よって c1−nt ≤ |α(l)| が得られる. 定理 5.2. K のみに依存する正の実数 c が存在して, 次が成り立つような 0 でない OK の元の列 (αν) が存在する : |α(k)ν | > |α(k)ν+1| (k ∈ X), |α(l)ν | < |α(l)ν+1| (l ∈ Y ) かつ |N (αν)| ≤ cn. 9α が 0 でなければ N(α) 6= 0 である. また, α が代数的整数ならば N(α) ∈ Z である. ゆえに |N(α)| ≥ 1 である.
証明. c を定理 5.1 における, K のみに依存する正の実数とする. M > cnかつ Mn/m−1 > cnを満たす正の整数 M をとる10. t 1 > 1 なる整数 t1を任意に 1 つと る. また, 帰納的に tν+1= M tνと定義する. M ≥ 1 より各 ν について tν > 1 である. よって, 各 ν に対して, OK の 0 でない元 αν が存在 して, c1−nt1−n/mν ≤ |α(k)ν | ≤ c t1−n/mν (k ∈ X), c1−ntν ≤ |αν(l)| ≤ c tν (l ∈ Y ), が成り立つ. このとき, |α(k)ν+1| ≤ c t1−n/mν+1 = c (M tν)1−n/m < c1−nt1−n/m ν ≤ |α(k)ν | かつ |α(l)ν+1| ≥ c tν+1= c1−nM tν > ctν ≥ |α(l) ν |. 最後に, |N (αν)| = Y i∈X∪ eX |α(i)| Y j∈Y ∪ eY |α(j)| ≤¡c t1−n/m ν ¢m (c tν)n−m= cn. 定理 5.3. K の単数 ε が存在して, |ε(k)| < 1 (k ∈ X), |ε(l)| > 1 (l ∈ Y ) が成り立つ. 証明. 定理 5.2 より, 0 でない OKの元の列 (αν) が存在して |α(k)ν | > |α(k)ν+1| (k ∈ X), |α(l) ν | < |α(l)ν+1| (l ∈ Y ) かつ |N (αν)| ≤ cn. 一方, 定理 4.5 より, |N (α)| ≤ cnであるような α ∈ OKは同伴を除いて有限個しかない. したがっ て, K の単数 ε と番号 µ, ν が存在して αµ = εαν, µ > ν となる. よって, j ∈ X のとき |ε(j)| = |α (j) µ | |α(j)ν | < 1 であり, j ∈ Y のとき |ε(j)| = |α (j) µ | |α(j)ν | > 1 である. 10言い換えれば, M として, cn, cmn/(n−m)のどちらよりも大きな整数をとる.
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単数定理の証明
(1)
n を正の整数, K を n 次代数体, r1を K の実共役写像の個数, 2r2を K の虚共役写像の個数とす る. このとき n = r1+ 2r2が成り立つ. r = r1+ r2− 1 とおく. r ≥ 0 である11. r ≥ 1 のとき, 写像 λ : OK× → Rrを λ(ε) = (log |ε(1)|, . . . , log |ε(r)|) によって定義する. log の性質から, λ が群の準同型写像であることは明らかである. K に属する 1 の根の全体を WKとおく. WK は乗法に関して群をなす. ζ ∈ WK⇐⇒ ζ ∈ K かつ, ある正の整数 t が存在して ζt= 1 ⇐⇒ ζ ∈ OK×かつ, ある正の整数 t が存在して ζt= 1 ⇐⇒ ζ は OK× の有限位数の元 であるから, WKは O×Kの有限位数の元の全体と一致する. 定理 6.1. WKは有限巡回群である. 証明. ζ ∈ WK とすると, ある正の整数 t が存在して ζt= 1 が成り立つ. よって, |ζ(i)|t= 1 (i = 1, 2, . . . , n). |ζ(i)| は正の実数だから, |ζ(i)| = 1 (i = 1, 2, . . . , n) でなければならない. 定理 4.6 より, |α(i)| ≤ 1 を満たす α ∈ OKは有限個しかない. ゆえに, WK は有限群である. 一般に, 体 F の乗法群 F×の有限部分群は巡回群である. WKは K×の有限部分 群なので, 巡回群である. 定理 6.2. r ≥ 1 のとき, ker λ = WK. 証明. r ≥ 1 のとき, r1≥ 1 または r2≥ 1 である. ε ∈ ker λ とする. i = 1, 2, . . . , r に対して, log |ε(i)| = 0, すなわち |ε(i)| = 1 が成り立つ. r2> 0 のとき, j = 1, 2, . . . , r2に対して |ε(r1+r2+j)| = |ε(r1+j)| である12. よって, i = r1+ r2, n を除いて13は |ε(i)| = 1 であることがいえる. ところが, このこと と定理 4.2 より 1 = |N (ε)| = n Y i=1 |ε(i)| = |ε(r1+r2)||ε(n)| = |ε(r1+r2)|2= |ε(n)|2 11もし仮に r < 0 ならば, r 1≥ 0, r2≥ 0 より r1= r2= 0 でなければならない. ところが, これは r1+ 2r2= n > 0 に反する. 12σ r1+r2+j= σr1+jとなるように, あらかじめ K の共役写像に番号づけをしたのであった. ここで, σ は σ の像の複 素共役によって定まる写像を表している. 13n = r1+ 2r 2であることに注意せよ.であるから, |ε(r1+r2)| = |ε(n)| = 1 が成り立つ. したがって, すべての i = 1, 2, . . . , n に対して |ε(i)| = 1 が成り立つ. r2= 0 のとき, r = r1− 1 = n − 1 であるから, i = 1, 2, . . . , n − 1 に対して |ε(i)| = 1 が成り立 つ. ところが, このことと定理 4.2 より 1 = |N (ε)| = n Y i=1 |ε(i)| = |ε(n)|. したがって, すべての i = 1, 2, . . . , n に対して |ε(i)| = 1 が成り立つ. 定理 4.6 より, |α(i)| ≤ 1 を満たす α ∈ OK は有限個しかない. ゆえに, ker λ は有限群である. したがって, ker λ の元はすべて有限位数である. WK は O×K の有限位数の元の全体であるから, ker λ ⊆ WK. 逆に, u ∈ WK とすると, ある正の整数 t が存在して ut = 1 が成り立つ. よって, すべての i = 1, 2, . . . , n に対して |u(i)|t= 1. |u(i)| は正の実数だから, |u(i)| = 1 でなければならない. よって, i = 1, 2, . . . , r に対して log |u(i)| = 0. ゆえに u ∈ ker λ となる. したがって WK ⊆ ker λ. 定理 6.3. r ≥ 1 のとき, λ(OK×) は Rrの離散的部分群である. 証明. r ≥ 1 のとき, r1≥ 1 または r2≥ 1 である. λ(O×K) が Rrの加法群としての部分群であることは明らかなので, 離散的であることを示す. 正の実数 c が与えられたとする. ε ∈ O×Kを, max 1≤j≤r ¯ ¯log |ε(j)|¯¯ ≤ c を満たすものとする. この条件は, i = 1, 2, . . . , r に対して ¯ ¯log |ε(i)|¯¯ ≤ c すなわち e−c≤ |ε(i)| ≤ ec が成り立つことと同値である. r2> 0 のとき, j = 1, 2, . . . , r2に対して |ε(r1+r2+j)| = |ε(r1+j)| なので, i 6= r1+ r2, n なるすべての i に対して e−c≤ |ε(i)| ≤ ec. 一方, 定理 4.2 より 1 = |N (ε)| = n Y i=1 |ε(i)|
だから, |ε(r1+r2)||ε(n)| = Y 1≤i≤n i6=r1+r2,n |ε(i)|−1 < e(n−2)c. また, |ε(r1+r2)| = |ε(n)| だから, |ε(r1+r2)|2= |ε(n)|2< e(n−2)c. ゆえに |ε(r1+r2)| = |ε(n)| < e(n−2)c/2. したがって, r2> 0 のとき, すべての i = 1, 2, . . . , n に対して |ε(i)| < ecが成り立つ. r2= 0 のとき, r = r1− 1 = n − 1 であるから, i = 1, 2, . . . , n − 1 に対して e−c≤ |ε(i)| ≤ ec. が成り立つ. 一方, 定理 4.2 より 1 = |N (ε)| = n Y i=1 |ε(i)| だから, |ε(n)| = n−1Y i=1 |ε(i)|−1< e(n−1)c. したがって, r2= 0 のとき, すべての i = 1, 2, . . . , n に対して |ε(i)| < ecが成り立つ. 定理 4.6 より, すべての i = 1, 2, . . . , n に対して |α(i)| < ecを満たす O Kの元 α は有限個しかな い. ゆえに λ(OK×) は離散的である.
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単数定理の証明
(2)
K の 0 でない元 α に対して, l(i)(α) = log |α(i)|, 1 ≤ i ≤ r 1のとき, 2 log |α(i)|, r 1< i ≤ r2のとき とおく. 命題 7.1. 任意の ε ∈ OK× に対して rX1+r2 i=1 l(i)(ε) = 0 が成り立つ. 証明. α ∈ OKとすると, log |N (α)| = log n Y i=1 |α(i)| = n X i=1 log |α(i)|. 一方, j = 1, . . . , r2に対して |α(r1+r2+j)| = |α(r1+j)|であるから, n X i=1 log |α(i)| = n X i=1 l(i)(α). ゆえに log |N (α)| = n X i=1 l(i)(α). 特に, 任意の ε ∈ OKに対して, 定理 4.2 より |N (ε)| = 1 なので, r1X+r2 i=1 l(i)(ε) = log |N (ε)| = 0 である. 命題 7.2. r = r1+ r2− 1 とする. r ≥ 1 のとき, ある ε1, . . ., εr ∈ O×Kが存在して, λ(ε1), . . ., λ(εr) は Rrの中で R 上 1 次独立である. 証明. E = {1, 2, . . . , r1+ r2} とする. 各 i = 1, 2, . . . , r1+ r2に対して, Y = {i}, X = E \ Y とお く. 明らかに E = X ∪ Y , X ∩ Y = ∅, Y 6= ∅ である. r ≥ 1 すなわち r1+ r2≥ 2 なので, E は 2 つ 以上の元をもつ. よって X 6= ∅ である. 定理 5.3 より, ある εi∈ O×Kが存在して, |ε(i)i | > 1, (15) |ε(j)i | < 1 (j 6= i) (16) が成り立つ. A = (aij) = (l(j)(ε i) | 1 ≤ i ≤ r, 1 ≤ j ≤ r) とおく. (15) より aii > 0 であり, (16) より aij < 0 (i 6= j) である. さらに, 命題 7.1 と (16) より, i = 1, 2, . . . , r に対して r X i=1 aij = r X j=1 l(j)(ε i) = −l(r1+r2)(εi) > 0 が成り立つ. ゆえに定理 2.3 より, det A 6= 0 である. 一方, det λ(ε1) λ(ε2) .. . λ(εr) = det(log |ε (j) i |) = 2−(r2−1)det A r2≥ 1 のとき, det A r2= 0 のとき が成り立つことはすぐにわかる. よって, λ(ε1), . . ., λ(εr) は Rrの中で R 上 1 次独立である. 定理 7.3. r = r1+ r2− 1 とする. r ≥ 1 のとき, λ(O×K) = Zr が成り立つ. 証明. 定理 6.3 より, λ(OK×) は Rrの離散的部分群である. 定理 3.5 より, λ(O× K) = Zs, s ≤ r が成り立つ. 一方, 命題 7.2 より, λ(O×K) は r 個の R 上 1 次独立な元をもつ. Z ⊆ R なので, それら r 個の元は Z 上 1 次独立である. ゆえに s = r でなければならない.
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単数定理の証明
(3)
命題 8.1. 虚 2 次体の単数は, 次の通りである: (i) Q(√−1) の単数は ±1, ±√−1 のみである. (ii) Q(√−3) の単数は ±1, ±(1 −√−3)/2, ±(1 +√−3)/2 のみである. (iii) それ以外の虚 2 次体の単数は ±1 のみである. 証明. 一般に, 虚 2 次体は, ある square-free な正の整数 d によって Q(√−d) と表される. ε を Q(√−d) の単数とするとき, ε = a + b√−d なる a, b ∈ Q が存在する. このとき, N (ε) = (a + b√−d)(a − b√−d) = a2+ b2d > 0 が成り立つ. 一方, 定理 4.2 より |N (ε)| = 1 である. したがって N (ε) = 1 である. b = 0 のとき, 1 = N (ε) = a2= ε2 だから, ε = ±1 である. b 6= 0 のとき, ε は X2+ tX + 1, t ∈ Z なる形の多項式の根である. ε 6∈ R だから, 上の多項式の判別式を考えると (t − 2)(t + 2) = t2− 4 < 0. よって −2 < t < 2. t は整数だから, t = 0, ±1 である. ゆえに, 虚 2 次体の単数となりうる C の元は ±1, ±√−1, ±(1 −√−3)/2, ±(1 +√−3)/2 のみである. そのうち, Q(√−1) は ±1, ±√−1 のみを含む. Q(√−3) は ±1, ±(1 − √−3)/2, ±(1 +√−3)/2 のみを含む. それ以外の虚 2 次体は ±1 のみを含む. 定理 8.2 (Dirichlet の単数定理). WKは有限巡回群である. r = r1+ r2− 1 とおくと, OK× = WK× Zr が成り立つ. 証明. WKが有限巡回群であることは定理 6.1 で示した. r ≥ 1 のとき, 定理 6.2, 定理 7.3 より, ker λ = WK, λ(O× K) = Zr. λ(O× K) = Zrより, ある ε1, . . ., εr∈ OK× が存在して, λ(ε1), . . ., λ(εr) は λ(O×K) の Z 上の基底で ある.ε ∈ O× K を任意にとると, ある n1, . . ., nr∈ Z が存在して λ(ε) = n1λ(ε1) + · · · + nrλ(εr) と表される. よって λ Ã ε εn1 1 · · · εnrr ! = 0. ker λ = WKなので, ε εn1 1 · · · εnrr ∈ WK. したがって, ある ζ ∈ WKが存在して ε = ζεn1 1 · · · εnrr (17) と表される. さらに, もし ε = ζεn1 1 · · · εnrr = ζ0ε n0 1 1 · · · ε n0 r r , ζ, ζ0 ∈ WK, n1, . . . , nr, n01, . . . , n0r∈ Z ならば, λ(ζεn1 1 · · · εnrr) = λ(ζ0ε n0 1 1 · · · ε n0 r r ). λ(ζ) = λ(ζ0) = 0 なので, (n1− n01)λ(ε1) + · · · + (nr− n0r)λ(εr) = 0. λ(ε1), . . ., λ(εr) は Z 上 1 次独立だから, n1= n01, . . . , nr= n0r となる. よって ζ = ζ0もいえる. これより ε は (17) の形に一意的に表される. したがって O× K = WK× Zr が得られる. r = 0 のとき, OK× = WKがいえれば証明は完了する. r = 0 であるのは, r1 = 1 かつ r2= 0 の ときか, または r1= 0 かつ r2= 1 のときである. 前者は K = Q のときであり, 後者は K が虚 2 次 体のときである. K = Q のとき, OK = Z だから OK× = {±1} である. K が虚 2 次体の場合, 命題 8.1 より, 次のことがわかる: (i) K = Q(√−1) のとき O×Kは√−1 によって生成される. (ii) K = Q(√−3) のとき O× Kは 1 の原始 6 乗根 (1 + √ −3)/2 によって生成される. (iii) それ以外の虚 2 次体のときは O×K = {±1} である. K = Q の場合や K が虚 2 次体の場合には, O× Kの有限位数の元の全体と O×K自身とが一致する. 一方, WKは OK× の有限位数の元の全体と一致する. ゆえに, O×K = WK がいえる. したがって, r = 0 のときも定理は正しい.