地域の 情報 を効 果 的に利 用 する
教師支援デ ー タ ベ ー ス の 開発 と授 業 実 践
教科 教育専攻 理科教 育専修 福 山裕 一 提 出日 平 成 2 0 年 2 月 1 3 日
別紙様 式 第3
論 文 目 録
三重 大学大 学院教 育 学 研 究 科
別 紙 様 式 第4
論 文 要
三重 大学 大学 院 教 育 学 研 究 科
,FL 砂威儀 専 攻 穿射教奄 専 修 藤 山 嫁 ‑
う 際の視点と し て あげてい ることの 一 つ であ る。 ′ト学 校に限らず, 地域の自 然, 地 域の社 会を取り 上げ, ロ ー カルな 事 象を切り口と し て, 普 遍 的 な 原理 ・ 理念に迫っ ていくという 視 点は教育の あら ゆる場 面に有 効 な 視 点で あ ろう。 実 際, 環境教育教 材の多くは地 域の自 然 ・ 地 域の社 会を知ること か ら始 まっ ている。
し か し地 域の自 然 や 社 会 を 知り、 そ れを教 材 化 するのは、 そ れ ほ ど容 易 な 作 業で はない。
た と えば、 地域の河 川を教 材 化 する場 合でも、 質の高い教 材 を 作 成 する た め に は、 教 師は, 資 料 調 べだけで はなく、 現 地 調 査 も必要となり、 かなり煩 雑 な 作 業である。
本 研 究で取り 上げる教 師 支 援 デ ー タベ ー ス ( 以 下 戒 川 事 典とする) は こう し た教 師の負 担と そ れ に伴 う 地 域の河 川 を利 用 すること ‑ の抵 抗を軽 減 し、 河 川 を利 用 し た環 境 教育の 実 践 を 普 及 するモデルケ ー ス を構 築 することを目的と し て いる。
本 研 究で と りあ げた河 川は飯 川である。 飯 川は, 豊かな 河 畔 林, 貴 重 種 や, 治 水 遺 産と も 言 える よう な, 江 戸 時 代 以 来の玉 石積護岸 ・ 杭 柵 護 岸 や 斎 宮 跡 など生 態 的にも 文 化 的に も 興 味 深い河 川である。 2 0 0 1 年に は 日本の重 要 湿 地5 0 0 に選 定 され てい る。
藤 川 事 典は飯 川の概 説である 「飯 川 ハン ドブッ ク」 , インタ ー ネッ ト 上 に構 築し た破 川 学 習 専 用の G I S ( 地理情 報シス テム) で あ る 「飯 川 探検マ ッ プ」, 飯 川につ いての用 語解説
である 「飯 川 辞 典」 から なる。
こ の藤 川 事 典を児 童と大 人の方に評 価し てい た だいた。 破 川 探 検マ ップの評 価に関し て は, 明 和町 にある小 学 校 児 童9 6 人, 飯 川‑ ン ド ブ ッ クの評 価に関し て は, 小学 校教諭1
5 人 と藤 川 事 典の作 成に協 力 し ていた だい た地 域の方2 人と京都大 学 大学院理学 研 究 科 研 究 員の北 村 淳 一 さん に, 評 価 し てい ただいた。 戒 川 事 典は破 川 ハ ン ド ブック と戒 川 探 検 マ
ッ プ及び飯 川 辞 典よ り構 成 さ れてい る が, こ のう ち 探検マ ッ プ は パ スワ ー ド等の公開に よ るセキ ュ リ ティ ー 上の問 題が懸 念 されること, ま た辞 典は情報 量が膨 大で, 辞 典 と と もに 評 価 し ていた だ く こと が時 間 的に困難 なこと か ら, 今回 は蔽 川 ‑ ン ドブックの みを評 価 し ていただいた。
評価の結果は, 児 童, 大 人の双方に高 評 価 を得ら れ たo こ の こ と か ら, 飯 川 事 典は, 揺 業を行 う 際に 一 定の価 値が あ るものだ と考えられ る。
目次
Ⅰ 序論 一 研 究 の意義及 び 目的 ‑ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 4
1 地域情 報を 地 理情報シ ス テム上に集積することの教育的意義 ・ ・ ・ 4
2 飯川事典の意義と ね らい ・ ・ ・ I ・ ・ ・ ・ I ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 6
Ⅱ デ ー タ ベ ー ス ( 飯 川事典) の構成と評価 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 9
1 政 川辞典の構成 ・ ・ ・ ・ . ・ ・ ・ ・ ・ I ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ I ・ ・ 9 2 戒 川事典の評価 ・ ・ ・ ・ ・ I ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ I ・ ・ ・ I ・ ・ ・ 1 5
Ⅲ 授業実践 と評価 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 2 1
Ⅳ 考察 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ I ・ ・ ・ ・ I ・ ・ ‑ ‑ ‑ ‑ 3 6
1 デ ー タ ベ ー ス ( 戒川事典) の構成と評価に つ いて ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 3 6 2 授業実践と評価に つ いて ・ I ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 4 0
Ⅴ 飯 川 ハ ン ドブ ッ ク ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 4 1
1 古ま じ め に ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ I ・ ・ ・ 42 2 飯 川の生物 多様性 の現状 ・ ‑ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 43
Ⅰ 飯 川の現在
( 1) 小学校の水生 生物調査から ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ I 43
( 2) 上流 ・ 中流域の生態に つ いて ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 47
( 3) 湧 水の 出 る き れいな場所の生態に つ いて ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 54
( 4) 下流の汽 水域 ( 淡水 と海水が 混ざっ た 区域) の生態に つ いて ・ 5 8
Ⅱ飯 川 の過 去
( 1) 飯川 と櫛田 川 ・ ・ ・ ・ ・ I ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ I ・ ・ ・ ・ ・ ・ 61
( 2) 鹿川 とい う名 前 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 61
( 3) 今より も ‑ 層豊 富だ っ た魚類 ・ ・ ・ ( 4) 豊富だっ た 水 量 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ( 5) 魚を育んだ 河畔林 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ( 6) 田 畑や水 路 も魚を育て ていた ・ ・ I ( 7) 堤防は洪 水 を前提に作ら れていた ・ ( 8) 飯川 と 人の 関係 ・ ・ ・ I ・ ・ ・ ・ ・
Ⅲ 未来 ‑ の課 題
( 1) 魚の棲み や すい環境作り を ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ( 2) 子 ど も た ちに蕨 川 との触 れ合いを ・ ・ ・ ・
・ 6 1
・ I ・ ・ ・ ・ ・ ・ 6 3
・ ・ ・ ・ ・ I ・ ・ 6 4
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 6 5
・ ・ ・ I ・ ・ ・ ・
66
・ I ・ ・ ・ ・ ・ ・
6 8
Ⅵ 藤 川 秤典 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 7 3
Ⅶ 参考 ・ 引 用 文献 ・ 謝 辞 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 110
Ⅰ 序 論 一 研 究 の意義及び 目的 ‑
1 地域 情報を 地 理情報 シ ス テム上に集積することの教育的意義
「地域の実態から 取 り 組 む」, これは環境教 育指導 資料小 学校 編 (20 0 7) が 環境 教育を 行 う際の視点 と し て あげて い ることの 一 つ で ある。 小学校に 限 らず, 地域の 自然, 地域の社会を 取り上 げ, ロ ー カル な事象を 切 り 口と し て, 普遍的な 原 理 ・ 理念に迫っ て いく という視点は教 育の あ ら ゆ る 場 面 に有効な視点であ ろ う。 実際, 環境 教育教材 の多くは地域の自然 ・ 地域の 社会を 知 る ことから 始 ま っ て い る。 し か し地域を教育の題材とし て扱うこ
とは, 実はそ れほ ど容易なことで はない。
一 般 的 ・ 普遍的な 事, た と え ば 地 球 温暖化 や熱帯 林保護の問 題 な どに つ い ての情報の入 手はあ ま り難しい
こ とではない し, 教材 化 さ れている 例 も多い。 し か し身近 な 地域にお いて,
い つ どこ に何が見 ら れ るの かを調 べ, そ れ を ど う 授業に取り 込 ん でいくの か見 通 しを 立てる のは非常に煩雑な 作業である。 学校に資料が あ る とは限 ら ず, 自分で現 地 を 調 べ な け れ ば な ら ない場合も多い。 ま た 下 調 べ をし よ うにも, 何を 調 べ てよい の か見 当 がつ かない こと す ら あ る。
ま た 地域の情報 はその ま ま 授業に使 えるもので はない。 料理で言 え ば素 材であ る。 教 師はその素材 を使 っ て, 自 分の授業に合うように料 理 しな け れ ば な ら ない。 し か し, 時 間 をは じ め, 使え る資源は限 ら れてい る し, 敬 師自身の知 見 も 限 定 さ れて いる。 無論, 料理 の腕を 上 げ る べ く, 教師が勉 強 す ること も 大 事であるが, 料理に下 ごしら えがあ る よ うに, 情報に手 を 加 え, 料理 人である教 師を支援することに よ っ て, 教師の負担 を減ら す こ
と も考えて よい と 思 わ れ る。
で は どの よう な 下 ごしら え をほ どこす と, 教師にと っ て有用 な情報 と な るの だ ろ うか。 以 下で はそ れ を考え る と 同時に, 地 理情報 シ ス テム (以 下
G I S と する) 上に地域情報 を集積すること が有用であ るこ と を 見て いき たい。
( 1) どこ で何が見 ら れ るの か が簡単な 文字情報 お よび 写真と 共に地 図 上 で分か る。
地域の こ と を教える場合に は, 場所の情報はき わめ て重要であ る。 特に 地震の よ う な 地学現象, 植物 の分 布 の よう な 生 物 現象の場合は, 現象と そ れ が起こ っ た 場 所の特 性 は密接に関 連 し てお り, な ぜ その場 所でその現象
が起こ っ たの かを 知 る こと が, そのま ま 地域の自然や 社会の特 性 を 知 るこ
とにな る。 地域を教材化 しよ う と 思 え ば, 場所があいまいだ と, 教材の 臨 場 感 を著しく減殺 す るし, 児 童 ・ 生徒を 見学に連れて行 く こ と もでき ない。
現象の起こ っ た位置が地 図 上に記 さ れて いる必 要が あ る。
ま た 授業での使 用 を考える場合に は, 地 図 と 文字情報 ・ 写真が同 時に提 示でき る ことが望 ましい。 地 図 上に場 所A を 示 し, 次に, そ の場 所で起こ
っ たこ との説 明 を印刷教材やスラ イ ドで示 す とい う よ うに経時的 な情報提 示 を すると, 地 図, プ リン ト, ス ラ イ ド と授業の流 れが媒体を変え ること
によ っ て ブツ ブツ に切 られて しま う。 地 図 上で場 所 及 び その場 所の 写真や 説 明 ( 簡 単な もの でよい。 説 明 が多すぎる と 注意が分 散す る) が同 時に提 示できることが望 ましい。
G I S はベ ー ス と な る 地 図情 報の上に レイヤ ー の形 で各種情報 を 重 ねて
い く 形 式にな っ て いる。
ベ ー スが地 図で あ るから, 場所が明 示でき るの は 当然で あ る し, 地 図 上で, 特 定の場 所につ いての情報 を, テ キス トの形で も, 画像の形でも 示 すこと が 出 来る。
( 2) 教 師が情報を追加することが でき る形 式にな っ ている
教 師が 使 いや す い地域 情報で あ る ため に は, 提 供 さ れる情報 に対 し て, あ ら た な情報 を教 師や児童 生徒が追加 し て いく ことが でき る 形 にな っ て い る ことが望 ま しい。
た と え ば, 提供さ れ た情報に地域の自然の過 去の 状 況 が 記載さ れて いる 場合, クラ ブ や 授業, あ るいは教師自身の調 査 な どによ り得ら れ た デ ー タ を 提供さ れた情報に追加 し, デ ー タを蓄積す る ことによ っ て, 地域の自然
の変化 を追跡でき る。 ま た 提供さ れ た情報に他地域の自然の情報 が含ま れ て い る場合に は, 自 分 た ちの地域の情報を追加 し て 比較す ること もできる。
G I S はこ のよ う な情報の追加 ・ 蓄積に適 し ており, コ ン ピ ュ ー タ ー の容 量 が 許 す 限 り, 地 図 上にデ ー タを追加 ・ 蓄積 し て いくこ とが可 能である。
ま た 調 査日時ご とに レイヤ ー を作成すれ ば, 変化 の過程を簡単に追跡す る
こ と ができ る。 デ ー タさ え あ れ ば, 校庭や校内 の池 とい っ た 小 さい ス ケ ー
ル でも 可能であ る し, 都道府 県 や市町村とい っ た 大 き なス ケ ー ル でも 可 能 であ る。
(3) 他 の学校 ・ 地域と比較でき る
地域の特 性は, 他 の地域と比較す るこ とによ っ て, 明 らか にな るこ とが
多い。 教材 と し てよ く 取 り 上 げ ら れ るセイ ヨウタ ンポ ポ と在 来の タンポ ポ
の分布 比較も, 校区 内で調 べ る だ けでな く, 都 市部 の学校と農山村部の学 校で比較す れ ば, 都 市化 の進ん でいる 地域ほどセイ ヨ ウタンポ ポの進 出 が 著しい こ とが よく わかる (た だ しこ の教材は, 在来 種 とセイ ヨウタンポ ポ
の雑種が 発 見 さ れ たこと に よ り, そ れほど 手軽に行 え る もの で はな く な っ てきてい る) 。 他の学校 ・ 地域との比較は, イ ン タ ー ネッ ト 上で入 力 が 出 来 るG I S を 用意 し てお け ば, その手 間 を著 しく減ら す こと ができ る。 イ ン タ ー ネッ ト上での入 力が でき ない場合でも, デ ー タのや り と りは電 子媒 体
を 通 じ て行 うことが でき, 数校程度の交流な ら ば そ れほ ど大 き な負担 とは な ら ない。
2 敢 川事典の意義と ね らい
蔵)II は三重県中部の櫛田川右岸から分派 す る 全 長 1 4.O k m の小 河 川であ る (Egl l) a
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図1 軌l[の全 長 地 図
1 9 6 9 年に, 櫛田川から 分 派 す る箇所 に 可 動 堰 が 設 け ら れ, 洪水 の際の流 量 調節は こ の堰で行 わ れ るように な っ た. こ のた め, 以後, 治水の ための 河 川改修がほとん ど行 わ れ な く なり, 結果的に豊かな 河畔林 (写真1 ) , ア ブ ラ ボテ, シ ロ ヒ レタ ビ ラな ど多く の貴重 種 の生 息 する水域が残 さ れる こ とにな っ た。