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大震災と保険

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Academic year: 2021

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大震災と保険

平成18年度大会共通論題

質 疑 応 答

司会:たくさんのご質問をいただき大変ありがとうございます。様々なご関 心から,また有益なご提言等もいただいておりますので,なるべく頂戴いた しました時間のなかで有益な議論ができればと考えております。

進め方につきましては,いただきました質問票をもとに,回答者の方にご 質問内容をまとめさせていただき,それに対して各自お答えさせていただく という方式をとらせていただきたいと思います。

まず最初に,田中先生のご質問はすべての先生方にいただいておりますの で,ご自身の報告に関係するところについてのご回答をいただければと考え ております。

質問1(日本大学 田中 周二)

地震について,各国が合意できる地震被害リスクの評価は可能か。

纐纈:先進国で地震国といわれるのは,日本とアメリカ西海岸,イタリア程 度であり,この3カ国,特に日米間でそのような各国共通の地震リスクの評 価ということは十分可能であるし,研究者の間ではそのような話し合いが行 われている。

質問2(日本大学 田中 周二)

カタストロフ・リスクに対応するには,特に資本や人口の集積する先進各 国の間で,国際的な再保険プールを作り,相互にリスク分散を図ることも考 えられるが,このような対応策の可能性はあるか。

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高尾:損害保険の領域で考えると,再保険の限度枠等に縛られるよりも,資 本市場に頼った方が便利である。これには,2つの理由がある。第1は,資 本市場に厚みがあることである。具体的には,日吉氏,土方氏の著書によれ ば,資本市場のキャパシティは,保険市場のそれの約100倍である。第2は,

プロパティ・クレイム・サービシズ社の実証によれば,S&P500の変動率とカ タストフな損害の変動率との相関係数はほぼ0であり,巨大リスクに再保険 がうまく対処できないばあい,資本市場に任せた方が無難である。

山本:再保険会社に利益が出るようなリスク分散の仕組みを作れば可能と思 う。

質問3(日本大学 田中 周二)

地震デリバティブに対する投資家の評価は利用可能か。

竹井:地震デリバティブや災害証券といったリスクヘッジ手法は一部行われ ているものの,投資家の評価は慎重で,一般化するには至っていない。

司会:どうもありがとうございました。このあとは各先生方に1問1答とい う形になっておりますので,順次お答えをいただきたいと思います。

質問4(日本生命 村田 敏一)

わが国の国家戦略として,金融・保険センター機能の東京首都圏への過度 な集中リスクと,そのほか地域への分散移転の可能性を議論されることがあ る。本日は首都圏を中心に大震災の発生可能性の話があったが,ここ20〜30 年の間の首都圏,近畿圏,中京圏の3大都市圏における大震災発生可能性の 総合的比較につき教えていただきたい。

纐纈:首都圏にとって危険性のある海溝型地震は,現在は関東地震ではなく,

もう少し西側の東海地震,東南海地震と南海地震である。中京圏にとって東 南海地震というのは,首都圏にとっての関東地震とほぼ同等であるので,海 溝型地震に関しては中京圏は首都圏より安全ということは決していえない。

近畿圏にとっても東南海地震,南海地震が同様の地位を占めているが,たと

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えば大阪は距離的にこれら地震の震源域からやや離れているので,近畿圏は やや有利な面がある。ただ,阪神・淡路大震災でわかるように,活断層の分 布という面では近畿圏は非常に不利な状態にあるので,残念ながら近畿圏,

中京圏が,首都圏より有利ということは現段階ではいえない。

質問5(京都大学 坪川 博彰)

プレート境界型の地震が発生し,いったん応力が解放された場合,次の発 生までの間,ハザードが相当程度低下すると考えられるが,その場合,保険 料率をすみやかに引き下げることは考えているか。

纐纈:地震保険の料率は現在,地震調査研究推進本部が発行する地震動予測 地図を基に算定されている。この地図は2005年に最初のものが出て,その後 2年程度ごとに改訂が行われることになっており,最初の改訂版が2007年に 出る予定という事実関係はある。

質問6(日本生命 久保 英也)

キャット・ボンドから一般社債へ,コンティンジェント・デットからコミ ットメント・ラインへと発行費用が低下しているが,同時に地震対応力も低 下してきている。間接被害の大きさを勘案すると,不足感が強いと考える。

経営サイドとして,株主や格付会社への対応も重要だと思うがいかがか。

高尾:全く同感である。ところが,オリエンタルランド社は,2005年に経済 産業省が主催したリスクファイナンス研究会の報告書での要約で以下のよう に述べている。 地震リスク対応は,業種・業態・場所・財務状況等により異 なるものであり,必要なことはその会社のステークホルダーに対して説明可 能な,かつ受け入れ可能なリスク対応を実行することである。 私もインタ ビューによる調査でこの真意を正したが,明確な回答は得られなかった。善 意に解すれば,このようなリスク対応の変更を敢行した理由は,ロイズのよ うに リスクの分散 はできないが,新設のディズニー・シーと既設のディ ズニー・ランドとの間で リスクの分割 を試みたということかも知れない。

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質問7(日本生命 久保 英也)

ビル毎の昼間人口の具体的把握方法があるか。

山本:保険業界のみでは無理なので,政府や東京都の権限を使っていただく しかないであろう。

質問8(滋賀大学 小川 功)

生保が外債投資を開始したころには大義名分として, 大地震などの発生 時の円安・株安リスクに対応した分散投資の一環である。 との説明があっ たように記憶するが,現時点でも有効か。

山本:運用成績からすると多少あるであろうし,流動性リスクの意味では効 果があると思う。

質問9(東京経済大学 柳瀬 典由)

死亡リスクの証券化が海外では行なわれているが,わが国でも可能か。

山本:従来の生保における年齢別などの詳細な価格設定は無理であるが,損 保的発想での価格設定なら可能であろう。

質問10(早稲田大学 李 洪茂)

生保でも地震等による免責は必要だが,保障が不十分になる。死亡保険で 損失が出る時は,年金保険で利益が出るので,それにより保障できないか。

山本:部分的にはリスク相殺になるが,年金保険の現状は確定年金が多く,

実現は難しい。

質問11(早稲田大学 大谷 孝一)

地震保険の総保険金支払限度5兆円を大幅に引き上げられるのではないか と言われたが,もう少し詳しく述べて欲しい。

山本:国が再保険として受けているのであれば,日本のGDPは500兆円程 度であるので,消費税1%でも5兆円になるので可能ではないか。

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質問12(早稲田大学 李 洪茂)

地震による人的被害を担保する事例はあるか。

竹井:傷害保険では,通常,地震は免責で,別途,天災危険担保特約を付帯 する必要がある。現実に,どの程度この特約が付帯されているかは分からな いが,一般的には,団体契約では付帯している契約がそこそこあるのではな いか。

また,医療保険では各保険会社によって異なるが,基本的には担保してい ると思う。

質問13(早稲田大学 李 洪茂)

地震保険は約500年で収支が均衡するよう作られているが,これでは逆選 択の生じる余地がある。せめて1世代(30年くらい)で料率を算出すること はできないのか。

竹井:答えにはならないかも知れないが,現在の地震保険は過去500年の,

それもある程度被害状況が把握できる地震を対象にして料率を算出している。

これを先ほど報告したような手法に変更し,来年には実施する。料率の信頼 性という点では向上していくと思う。

質問14(早稲田大学 大谷 孝一)

来年から地震保険の料率引き下げが行われるが,一方,地震再保険特別会 計の見直し論議があり,仮に民間側の負担が増大していくと,逆に料率引き 上げという事態も考えられるのではないか。

竹井:今後検討されていく課題であると思う。

質問15(早稲田大学 大谷 孝一)

地震保険が生活支援を目的とした保険であることは承知しているが,利用 者の保護,利便の向上という観点では,損害てん補(保険金額を火災保険の 保険金額の50%以下に制限している問題),保険金の支払い方法(支払い区

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分が大雑把で,例えば損害額が時価の20%未満の場合は保険金額の5%しか 払われない問題)などで改善が必要ではないか。業界では検討しているのか。

竹井:常に検討課題になっているが,キャパシティの問題,料率水準の問題,

保険金支払いの迅速化の問題などで,実現できていない。

質問16(元 戸大学 刀禰 俊雄)

地震保険を火災保険に自動付帯することによって料率の引き下げ,担保内 容の改善が図れるのではないか。

竹井:地震保険が強制加入でない以上,自動付帯は難しいと思う。また,強 制加入とする場合は,当然法律上の手当てが必要になるが,保険会社にとっ ては悩ましいと思う。

(再掲)質問5(京都大学 坪川 博彰)

プレート境界型の地震が発生し,いったん応力が解放された場合,次の発 生までの間,ハザードが相当程度低下すると考えられるが,その場合,保険 料率をすみやかに引き下げることは考えているか。

竹井:地震発生の確率論からはいろいろ考え方はあると思うが,料率を速や かに変えていくことは現実的ではないと考える。

質問17(京都大学 坪川 博彰)

保険制度の充実は防災力向上のインセンティブを低下させるという指摘が あり,これを回避するために耐震補強などを施した住宅については保険金に プレミアムを与えるということが考えられないか。

竹井:建物耐震化に係る割引制度の導入が図られている程度で,これまで,

そうした検討はされていない。さきほどの報告のとおり防災力の向上という 観点では地震保険の役割は小さいと考えている。

(7)

質問18(明治学院大学 松島 惠)

地震保険の強制加入方式は個人の財産権の侵害にあたると考えるか。

竹井:過去,財産権の侵害にあたるという見解が一般的であったと思う。個 人的には,現在,これを覆す国民的なコンセンサスがあるとは思えない。仮 に強制加入制度とするなら,商品性はミニマムレベルとする見直しを余儀な くされると考える。

質問19(明治学院大学 松島 惠)

地震保険での補償が不足する分を,公助や共助で補うことは可能か。

竹井:結論としては難しいと思う。地震防災の完成形は地震に強い町作りで あるが,これは相当時間を要する課題であり,一定の個人の負担は避けられ ない。

【まとめ】(省略)

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