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雑誌名 九州地区国立大学教育系・文系研究論文集

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(1)

音楽表現力を育むための総合的アプローチに関する 一考察 : 『水』を音楽で表現しよう」の授業分析 を通して

著者 今 由佳里

雑誌名 九州地区国立大学教育系・文系研究論文集

巻 6

号 1

別言語のタイトル A Consideration on Synthetic Approach to Music Learning in Elementary School

URL http://hdl.handle.net/10232/00008159

(2)

1

音楽表現力を育むための総合的アプローチに関する一考察

―「『水』を音楽で表現しよう」の授業分析を通して―

鹿児島大学 今 由佳里

1.はじめに

音楽は本来,ほかの様々な芸術分野と関連し て成立している ことが多かった。演劇や文学,

舞踊,そして絵画の中にまで音楽はモチーフと して出現し,芸術家たちにインスピレーション を与え続けてきた。

従来の日本の学校教育では,伝統的な教科別 学習の形態がとられていたためか,芸術活動か ら音楽的な活動のみを切り離して教えられるこ とが多かった。しかし,音だけで表現を深めて いく活動は,時に子どもたちに音楽を難しく感 じさせる要因となっているのではなかろうか。

欧米の音楽学習方法に目を向けると,音楽表 現に対して多面的で総合的なアプローチをとっ ていることに気づかされる。音楽では歌を歌っ たり,楽器を演奏したりするだけではなく,身 体の動きを取り入れたり,音楽を視覚的に認識 するため音の動きを図形化,音楽のイメージを 絵画で表現する,無音の映像に音や音楽をつけ るなどの方法が導入されている。つまり,芸術 分野を複合した形で,総合的・多角的な視点か ら学習しているのである。

1は,スイス・フランス語圏で用いられる 小学校教師用指導ガイド LA MUSIQUE A L’

ECOLE冒頭に記されている音楽教育理念であ

る。音楽活動と他分野の活動との関連が示され ており,総合的な視点から子どもたちの音楽学 習が行われていることがわかる。

図11:総合的な視点で捉える音楽活動

ヨーロッパの主要都市のひとつであるジュネ ーヴ(スイス)の『習得目標(音楽教育)』2「音 楽によって自己表現する 」の学習内容を見ると,

描写・図画やダンス,振付け,言語表現,ロー ルプレイングに関する記述が多数みられる。総 合的なアプローチ方法をとることによって,子 どもたちの音楽表現力を拡大しようとする試み がなされているのである。この自己の思いや意 図を表現する力を持つことによって「創造性育 成」へと繋げている のである。

近年日本においても,このような諸外国の音 楽教育の成果が影響してか,音楽学習を総合 的・統合的な芸術活動の中に位置づけ て学習す

1 今 由 佳 里 (2009)「 総 合 的 な 視 点 で と ら え る表 現 活 動 」『 子 ど も の 音 楽 表現 』 保 育 出 版 社,p.16.

2ス イ ス の 教 育 シ ス テ ムは , 州 単 位 で 異な っ てい る 。 ス イ ス ・ フ ラ ン ス 語 圏で は , 教 育 の 大枠 や 全体 的 な 性 格 を 表 し た 『 教 育 計 画』 が あ る 。 そ れと は 別に 州 の 教 育 方 針 が 反 映 さ れ て いる 『 習 得 目 標 』が 各 州に あ る 。 習 得 目 標 に は , 就 学 前教 育 か ら 初 等 教育 ま での 教 科 に 関 す る よ り 具 体 的 な 内容 , 学 習 領 域 や教 材 の系 統 的 な 配 列 が 示 さ れ て い る 。

(3)

2 る実践を多く見かけるようになった。

本稿では,スイス・フランス語圏の小学校で 行われている総合的なアプローチによる音楽学 習を基に試行した「『水』を音楽で表現しよう」

の実践授業を基に,音楽科と他教科 との連携が 子どもたちの音楽表現力を深めるために有効か を検討していく 。

2.総合的なアプローチによる「水」に関する 音楽表現学習

「水」という素材は,誰にとっても身近な存 在である。日常生活では,洗顔や入浴,飲み水 として,自然界では,雨や雪,霧,河川,海,

湖などとして私たちの生活のあらゆる場所に見 出だすことができる。そして,私たちの身体も また多くの水で満たされて おり,感情の起伏に 流す涙という水も持っている。

このような身近な素材である「水」は,芸術 作品の表現素材としてこれまで多く用いられて きた。代表的な絵画の例としては,寄せては返 す波の上に立つ女性が印象的なボッティチェリ の『ヴィーナスの誕生』や明け方の凪いだ水面 に太陽のオレンジ色の光線が美しく映えるモネ の『印象・日の出』が挙げられる。一方,音楽 の分野では,チェコのモルダウ川を水源から大 河となるまで描写的に描いたスメタナの 〈モル ダウ〉や水の様々な様態を印象主義的な手法で 華麗に表現したラヴェルの≪水の戯れ≫ などが 挙げられる。

本実践では,芸術家たちをも魅了した,身近 で描写的な「水」を教材として取り上げ,絵画 やオノマトペなど他分野の学習内容を含めて,

総合的な視点から水にアプローチし,子ども た ちの音楽表現力を伸ばす可能性を模索したい。

2.1 仮説

実践では,上述しているように総合的なアプ ローチによる音楽学習が,子どもの音楽表現力 を拡大するうえで有効かを検証していく。筆者

は,拙論『小学校における音楽表現学習の研究

-スイス・フランス語圏の音楽教育を中心に-

(2008)』において,子どもの音楽表現力拡大 に有効な手立てとして①総合的・ 多面的なアプ ローチ,②多様な音楽の供給,③聴取能力の育 成,④音楽的嗜好認識による,音楽アイデンテ ィティーの形成 ,⑤評論の精神の育成,⑥音楽 学習における身体表現の多様,⑦音楽の基礎的 概念が学習教材に,段階的に相互に関係づけら れ,計画されていることについて指摘した。本 実践では,これらの示唆の中から 本論の主題に も掲げている1点目の総合的・多面的なアプロ ーチ,および比較聴取の活動を取り入れ て4点 目の音楽的嗜好認識による ,音楽アイデンティ ティーの形成について特に着目し,以下の仮説 を立てて授業を行う。

1)総合的なアプローチを行うことによって,

表現したいイメージがより 具体化できる。

2)音楽的嗜好を明確に意識することによって,

子どもたちの表現意欲が高まる。

2.2 授業実践の概要

1)対象者:徳島県阿波市立 H小学校 4年 M 23名(男子15名,女子 8名)

2)授業日時:2006 224日(金)3時間 目,3 3 日(金)6時間目,7時間目,3 7日(火)7時間目

3)授業者:沖津陽子,今由佳里 4)題材名:「水」を音楽で表現しよう

5)学習目標:自らのイメージを持ち,それを 表現できる力を身につけよう。

自分の好みの音楽を見つけよう。

6)指導計画( 全4時間)

第1時 ①自分の身近にある「水」の音を意 識する。

②身近な水の音を模倣する。

③音楽作品の中に現れる「水」の表 現手法を探る。

(4)

3 2 ①「水」の印象を絵に表す。

② 「水」の表現にふさわしい音をさ がす。

3 ①絵の中に表れた「水」の音を考え る。

②描いた「水」の音について一人ひ とりが発表する。

4時 ①グループで「水」の表現を工夫す る。

②芸術作品に表れた「水」の表現に ついて気づく。

2.3 授業の記録と仮説の視点からの分析 授業の記録に基づいて,仮説の視点から分析 を試みる。また,授業中に行ったワークシート の分析も加えて,音楽表現について考察したい。

授業の記録は以下の通りである。

【表 1:第 1 時の授業記録】

本 時 の 目 標 ① 自 分の 身 近 に あ る 「水 」 の 音を 意 識 す る 。 身 近な 水 の 音 を 模 倣す る 。

音 楽作 品 の 中 に 現 れる 「 水 」に つ い て イ メ ー ジ を 持つ 。

学 習 活 動 教 師 の 支 援 子 ど も た ち の 様 子

自 分 の 身 の 周 り に あ る

「 水 」 を 挙 げ , オ ノ マ ト ペ で 表 し て み る 。

身 の 周 り に あ る 「 水 」 を 意 識 す る よ う 促 す 。 オ ノ マ ト ペ で 様 々 な 水 の 様 態 を 表 す 。

・「 雨 」「 海 」「湖 」「 氷 」「 水 溜 り 」「噴 水 」「 水蒸 気 」「 地 下 水 」「 嵐 」「 雪 」「 台 風 」「 お 風 呂 」な ど の他 に,地 域 に 見 ら れ る「 用 水 」と い う 発 言 も み られ「 水 」を身 近 に 感 じ て い る 。そ の 後 の活 動 で は,ワ ー ク シ ー トに自 分 の 好 き な 「 水 」 の 音 を オ ノ マト ペ で 沢 山 書 き出 し てい る 。 2 ・「 水 」に 関 す る 音 を4 種

聴 く 。 ① 蛇 口 か ら 洗 面 器 に 落 ち る 水 滴 の 音 , ② シ ャ ワ ー の 音 , ③ 雨 の 音 ,

④ 波 の 音 。

・ 水 音 ( 蛇 口 から 洗 面 器 に 落 ち る 音 ) を, 一 人 ひ と り が 木 琴 や 鉄 琴 等 で 模 倣 し て み る 。

・テ ー プ を 3回 流 す 。1 回 目 は 全 体 像 を 把 握,

2 回 目 は 絵 の 選 択 に 集 中 ,3回 目 は オ ノ マ ト ペ を 考 え る 。

・ ・ ど の 絵 と 音 が 対 応す る か を 発 表 す る 。

・ 水 音 を 表 現 し て み る 。

・子 ど も た ち は 音 を よ く 聴 き,絵 を 選 択 する活 動 に 集 中 し て い る 。 そ の 後 の 発 表 で は , ほ と ん ど の 子 ど も た ち が

「 水 」 の4種 類 の 音 を 正 確 に 聴 き 分 け 発 言 して い る 。

・木 琴 を 一 音 一 音 ゆ っ く り と 鳴ら し た り ,グリ ッ サ ン ド を し た り し て , 自 分 が イメ ー ジ す る 水 音を 模 索し て い る 。

オ ノ マ ト ペ が 多 く 用 い ら れ て い る マ リ ー ・ シ ェ ー フ ァ ー の 〈 ミ ニ ワ ン カ 〉 を 鑑 賞 す る 。

・〈 ミ ニ ワ ン カ 〉 の オ ノ マ ト ペ に つ い て 説 明 す る 。

・〈 ミ ニ ワ ン カ 〉 が 始 ま っ た 瞬 間 , 子 ど も たち は 驚 い た 表 情 を し て い る 。 初 め て聞 く オ ノ マ ト ペの 合 唱に 「 何 か , 頭 が パ ニ ッ ク や 」と い い なが ら 皆 ニ コ ニ コ楽し く 鑑 賞 し て い る 。歌 詞 と し て聞 こ え る オ ノ マト ペ「 シ ュッ 」や「 テ ケ テ ケ テ ケ 」 を , 鑑 賞し な が ら 呟 く 子も い る。

水 に 関 す る 様 々 な 様 態

( 池 , 川 , 噴 水 , 湖 , プ ー ル , 雨 , 雷 雨 , 嵐 , 水 源 , 水 族 館 ) の 映 像 を 視 聴 す る 。

5 の 学 習 活 動 で 鑑 賞 す る 作 品 の テ ー マ に な っ て い る「 水 」の 様 態 に 関 心 を も た せ る 。

・・全 員 ,映 像 に 興 味 を 持っ て 視 聴 し て いる。ジ ュ ネ ー ヴ の 大 噴 水 の 映 像 が 出 る と,「 初 め て 見 る, 大 き い噴 水 だ な あ 」 な ど , 伸 び 上 が って 映 像 に 見 入 る子 も いる 。

5 「 水 」に 関 す る 作 品 を 鑑 賞 す る 。1曲 目:サ ン = サ ー ン ス《 動 物 の 謝 肉 祭 》よ り

〈 水 族 館 〉2 曲 目:ベ ー ト ー ヴ ェ ン《 田 園 》よ り〈 嵐 〉 3曲 目:ス メ タ ナ《 我 が 祖 国 》 よ り 〈 モ ル ダ ウ 〉

各 作 品 の 抜 粋( 約1

~ 2 分 程 度 )を 3 回 流 す 。

・ 映 像 で 視 聴 し た 「 水」 に 関 す る 楽 曲の 鑑 賞を す る 。

・一 曲 目 の〈 水 族 館 〉は ,近 代 的 な 音 の 響きに 子 ど も た ち は「 あ れ ? い つ もと 違 う 」と いう 表 情 を し てい る 。2 目〈 嵐 〉の表 現 の 激 し さ にび く っ と 驚 い ている 子 も い る が ,「 迫 力 あ る な あ 」と い う 感 想 も 聞か れ る 。3曲 目 の

〈 モ ル ダ ウ 〉を 鑑賞 中 ,手を 音 楽 に 合 わ せて動 か す 子 ど も の 姿 が 見 ら れ た。音 楽 の 美 し さを 感 じ て,思 わ ず 身 体 が 水 の 動 き に つ ら れ て自 然 に 動 き 出 した と いう よ う な 様 子 が 見 ら れ る 。

6 一 番 好 き な 曲 の イ メ ー ジ を 絵 に 表 す 。

・ ・ 曲 か ら イ メ ー ジ され る 風 景 を 描 く よ う 宿 題 の 指 示 を す る 。

3 曲 聴 い た う ち ,「 自 分が 一 番 好 き だ と思っ た 音 楽 を 絵 に 表 し て 見 ま し ょ う 」と い うと ,「 エ ー ,で きる か な あ 」 と 発 言 す る 子 が 多 い 。し か し 「 僕 , 噴水 描 こう か な あ 」 や 「 魚 や ! 」 と い う 積極 的 な 取 り 組 みの 声 も聞 こ え る 。 評 価 の 観 点 ① 自 分 の身 近 に あ る 「 水」 の 音を 意 識 で き た か 。

② 身 近 な水 の 音 を 模 倣 でき た か。

③ 音 楽 作品 の 中 に 現 れ る「 水 」に つ い て イ メ ー ジ を 持つ こ と が で き たか 。

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4

【表2:第2時の授業記録】

本 時 の 目 標 ① 「 水」 の 印 象 を 絵 に表 す 。

「 水」 の 表 現 に ふ さわ し い 音を さ が す 。

学 習 活 動 教 師 の 支 援 子 ど も た ち の 様 子

1 7 ワ ー ク シ ー ト に 描 い て き た 絵 は ,ど ん な 状 況 を表 し て い る の か ? 絵 か ら 想 像 さ れ る 音 は ど の よ う な 音 か ? を 発 表 し ,表 現 した い こ と を 明 確 に 意 識 す る。

・ 絵 を 音 楽 化 す る た め に , 表 し た い 水 の 様 子 を 言 葉 で 問 い か け る 。

・子 ど も た ち が 描 い て き た 絵 を プ ロ ジ ェ ク タ ー で 大 き く 映 し 出 す 。

・数 人 が ,自 ら が 描 い て き た 絵 を 提示 し ,その 絵 か ら ど ん な 音 が 聞 こ え る か を 発表 し て い る 。

・友 だ ち が 描 く 絵 に 驚 い た り,聞 こ え て くる音 に 納 得 し た り ,和 や か な 雰 囲気 の 中 鑑 賞 し てい る 。B君の 発 表 の 時 は ,絵 が う ま い な あ と 子 ども た ち は 友 だ ちのよ い 点 を 認 め あ っ て い た 。

教 8 教 師 が 様 々 な 楽器 で ,水 の 音 の 多 様 性 を あ ら わ す。

・ ・ 子 ど も た ち に , これ か ら の 活 動 を 促 す た め 例 示 と し て ,教師 が

「 水 」の 様 態 を ,様 々 な 音 色 や 奏 法 を 工 夫 し て 音 で 表 し て み る。

教 師 が 表 現 す る 川 の 音 に 関 心 を 持 っ て 聴い て い る 。 小 さ い 川 の 流 れ は ,ピ ア ノ の高 音 部 分 を 単 音で鳴 ら し て み た り ,大 き い 川 の 流 れ は ,同 じ く 高音 部 分 であ る が ,重 音 で 厚 み の あ る 重 い 音で 表 現 す る と ,子 どもた ち は そ の 表 現 の 違 い に 驚 い た 様子 で 口 々 に わ ーと 声 を出 し た り , 伸 び 上 が っ て ピ ア ノ の 鍵 盤 を 確 認 し た り し て い る 。 ま た ,川 に 光 が あ た っ て キ ラキ ラ 反 射 し て いる様 子 を ツ リ ー チ ャ イ ム で 表 す と ,子 ども た ち は 楽 器 に非常 に 大 き な 興 味 を 示 し ,ど う い う 風 にな ら す の か 伸 び上が っ て み て い る 。

・ カ リ ン バ の 音 を 紹 介 す る 時 は ,「 僕 が や りた い 」 と 男 の 子 が 音 を 鳴 ら し て み たが う ま く 音 を 出せ ず ,み ん な の 笑 い を 誘 っ た 。そ の 後 教 師が 音 を 出 す と ,みんな 静 か に き き 「 不 思 議 な 音 」 と 呟い て い る 子 ど もも い る。

イ 9 イ メ ー ジ す る 音 を 発 す る も の を 探 る 。 一 人 ひ と り が , 自 分 の 絵 の 中 に 現 れ た 水 の 音 を , 音 色 や 強 弱 , 速 度 を 考 慮 し つ つ 探 る 。

・・描 か れ た 水 の 音 に つ い て ,子 ど も た ち の イ メ ー ジ を 促 す 。

子 ど も た ち は 自 分 が イ メ ー ジ し た 情 景 に 合 う 音 を 探 す た め ,色 々 な 楽 器を 鳴 ら し て 確 認し て い る 。友だ ち と 風 の 音 を 探 し て い る 時 に ,小 太 鼓の 皮 の 部 分 を 爪でか き 鳴 ら す と 風 の 音 ら し く な る と いう 発 見 を し ,集 中 して音 探 し を 行 っ て い る 。教 卓 の 上 に あ っ た空 の カ セ ッ ト ケース を ス テ ィ ッ ク で 叩 く と 雨 音 に よ り 近 い 音 に な る と い う こ と を 発 見 す る 子 ど も も い る 。

評 価 の 観 点 ① 描 いた 「 水 」 の 印 象を 絵 の 中に ど の よ う に 表 し た か。

② 「 水 」の 表 現 に ふ さ わし い 音を さ が せ た か 。

【表3:第3時の授業記録】

本 時 の 目 標 ① 絵 の 中に 表 れ た 「 水 」の 音 を考 え る 。

描 いた 「 水 」 の 音 につ い て 一人 ひ と り が 発 表 す る 。

学 習 活 動 教 師 の 支 援 子 ど も た ち の 様 子

10 発 表 前 の 練 習 各 自 が 集 中 し て 音 の 出し 方 を 工 夫 し てい る 。 211 一 人 ひ と り が , 自 分 が 描 い

て き た 絵 を 提 示 し ,そこ に 描 か れ た 音 を 発 表 す る。

・ ど の よ う な 表 現 の 工 夫 を 行 っ た か に つ い て 発 表 さ せ る 。

自 分 の 絵 を 確 認 し な がら ,そ の 絵 の 中 に 聞こえ る 音 を 表 現 し て い る 。楽 器 で の 発 表 が 多い が ,T 子 は ,ツ リ ー チ ャ イ ム を 演 奏 し な が ら 歌 を歌 っ て い る 。天 使 がハー プ を 鳴 ら し な が ら 歌 っ て い る 様 子を 絵 に 描 い て いる が ,み ん な そ の 様 子 を 静 か に 聞 き 入 り,演 奏 が 終わ っ た 後 ,ひと き わ 大 き な 拍 手 を も ら っ て い る。子 ど も たち は ,友 だちの 演 奏 に 感 心 し た り ,「 今 の は 雨 の 音 だ ろ 」 と 表 現 さ れ たも の を 想 像 し て 感 想 を 口 々 に も ら しつ つ , 集 中 し て聴 い てい る 。 12本 時 ,自 分 が 探 求 し た 音 を

ワ ー ク シ ー ト へ 記 入 する 。

ワ ー ク シ ー ト へ 記 入 する 。

評 価 の 観 点 ① 絵 の中 に 現 れ た 「 水」 の 音 を考 え る こ と が で き た か。

描 いた 「 水 」 の 音 につ い て 一人 ひ と り が 発 表 で き たか 。

(6)

5

【表4:第4時の授業記録】

本 時 の 目 標 ① グ ル ープ で 「 水 」 の 表現 を 工夫 す る 。

② 芸 術 作品 に 表 れ た 「 水」 の 表現 に つ い て 気 づ く 。

学 習 活 動 教 師 の 支 援 子 ど も た ち の 様 子

13 「 嵐 」「 川 ・ 湧 き 水 」「 湖 」

「 噴 水 」「 水 族 館 」 の グ ル ー プ に 別 れ , 音 楽 を 考 え る 。

子 ど も た ち が 描 い て き た 絵 を も と に グ ル ー プ 分 け を す る 。

グ ル ー プ ご と に 分 か れて 音 づ く り を はじ め る。

214イ メ ー ジ す る 音 を 発 す る も の を 探 る 。 グ ル ー プ ご と に 色 々 な 楽 器 や 声 を 組 み 合 わ せ て , テ ー マ に ふ さ わ し い 音 楽 づ く り を 模 索 す る 。

そ れ ぞ れ の グ ル ー プ に 声 掛 け を し な が ら , 音 楽 表 現 の 工 夫 を 模 索 さ せ る 。

友 だ ち 同 士 ,相談 し な が ら,色 々 な 音 色 を組み 合 わ せ て 音 づ く り を 試 み て い る 。強 弱 や速 度 ,リ ズ ム を工 夫 し て ,よ り イ メ ー ジ に 近 い 音 楽表 現 を 考 え て いる 。

15グ ル ー プ 発 表 を す る 。 グ ル ー プ ご と の 発 表 を 指 示 す る 。

・噴 水 グ ル ー プ:一 人 は マ ラ カ ス で ,水 が噴出 す る 様 子 を 身 体 で 自 然 に 表 し な がら 表 現 し て い る 。男の子 は カ バ サ で ,も う 一 人 の 男 の 子 は 鉄琴 で 水 が 湧 き 出る様 子 を 表 し て い る 。

・嵐 の グ ル ー プ:太 鼓 を メ イ ン に 用い て い る。マ ラ カ ス と ボ ン ゴ で 雨 の 降 る 音 を ,宮太 鼓 の 皮 の 部 分を爪 で 引 っ か き , 風 の 音 を 表 現 し てい る 。

・ 川 ・ 湧 き 水 グ ル ー プ: タ ン バ リ ン2つ を 床 に お い て , そ の 皮 を 手 で さ す っ て地 下 か ら 水 が 湧き 出 てい る 音 を 表 し て い る 。 そ の 他 ,シ ェ ー カ ー で 波が さ ざめ く 様 子 , ア ゴ ゴ ー ,鈴 を 用 い 川 辺 で子 ど も た ち が 泳ぐ楽 し い 様 子 を 表 し て い る 。

・湖 の グ ル ー プ:女 の 子 が 一 人 ,天 国 の 湖の ほ と り に い る 天 使 の 役 に な っ て 歌 を歌 う 。 そ の ほ かの 子 ども た ち は , ツ リ ー チ ャ イ ム や 鈴 など ,高 音 で 澄 ん だ 音色の も の を 選 び , さ ら さ ら と 響 く 音で 湖 の さ ざ め きを 表 して い る 。

・水 族 館 グ ル ー プ:木 琴 を グ リ ッ サン ド し てい る が ,ひ じ で 押 さ え て わ ざ と 響 きを 消 し て い る。こ れ は,水 の 中 で 魚 が あ わ を 吐 い て い る様 子 だ と い う こと で ,子 ど も た ち は そ の 発 想 に う ん う んと 頷 い て 聞 い てい る 。

416ワ ー ク シ ー ト 3 の 1 を 記 入 す る 。

ワ ー ク シ ー ト の 記 入 を 指 示 す る 。

ワ ー ク シ ー ト を 記 入 する 。

517 1 時 間 目 に 聴 取 し た 音 楽 を 再 度 鑑 賞 し , 作 曲 家が 描 写 し た 「 水 」 の 音 楽に つ い て 理 解 す る 。 1曲 目 : 水 族 館 2曲 目 : 嵐 3曲 目 : 川

ワ ー ク シ ー ト 3の 2 を 記 入 す る 。

・C D を 流 す( 最 初 の 出 だ し の み )

・芸 術 家 に よ る 表 現 の 多 様 性 に 気 づ き ,自 分 た ち の 表 現 活 動 の 一 助 と す る よ う 助 言 す る 。

・1時 間 目 の 解 答 を 知 り ,〈 嵐 〉は ,「 あ あ ,や っ ぱ り な あ 」 と い う 声 が 聞 こ え た 。〈 水 族 館 〉 と 〈モ ル ダ ウ〉 の 正 解 者 は 多 く な か っ た が ,子 ども た ち の 発 言 の中に「 最 初(1 時 間 目 の 時 )は 迷っ た け ど,自 分 で 水 族 館の様 子 を 表 現 し た ら ,最 初 に 聞 い た 演 奏は や っ ぱ り 水 族館っ ぽ い 曲 だ と わ か っ た 。今 だっ た ら 正 解 で きそ う 」という 発 言 を す る 子 ど も も み ら れ ,作 曲 家の 表 現 に 共 感 してい る 様 子 が う か が え た 。

・ ワ ー ク シ ー ト に 記 入す る 18 ワ ー ク シ ー ト 3 の 3 に こ

れ ま で の 学 習 を 振 り 返 っ て 感 想 を 記 す 。

ワ ー ク シ ー ト に 感 想 を記 入 す る 。

評 価 の 観 点 ① グ ル ープ で 「 水 」 の 表現 を 工夫 で き た か 。

芸 術作 品 に 表 れ た 「水 」 の 表現 に つ い て 気 づ く こ とが で き た か 。

2.4 仮説の視点からの授業記録及びワーク シートの分析

総合的アプローチによる「水」を素材とした 学習の有効性について,冒頭2.1に記した仮

説に則って授業の分析を行う。なお文中で用い られる学習活動場面は,「表1」「表2」「表3」

「表4」の授業記録に記されているものに対応 している。

(7)

6 仮説1)総合的なアプローチを行うことによっ て,表現したいイメージがより具体化できる。

学習活動1では,自分の身近にある水につい て考え,その水 の様態から発せられる音を言葉 として表した。 子どもたちはまず,水から発せ られる音をオノマトペで模倣する活動を行って いる。普段の授業では,音楽はピアノを習った ことがないから苦手と授業に消極的な子どもも , この活動には積極的に参加している。 子どもた ちは最初「海」「雨」「川」「嵐」など自然に関す る「水」を多くあげ,“ ザーザー”“ポツポツ”

“ポチャ”“ドボッ”などオノマトペで楽しそう に表現していた 。次第に自分たち が住む地域に 多く見られる「用水」や理科で学んだ「水蒸気」

「氷」など他の様態にも気づき発言している。

教師が「人間の身体も 75%は水分でできている んだよ」というと,びっくりした様子で「僕た ちって,沢山水を持ってるんだ」と,改め て「水」

の存在を意識化した。オノマトペの活動を取り 入れることによって子どもたちは,水の様態を 想像しつつその様子に見合う音を見つけるため 積極的に授業に参加 している。次の活動2では,

音だけを頼りに 4つの選択肢(①水道の蛇口か ら水が洗面器に落ちる音,②シャワーから水が 勢いよくでる音 ,③傘に雨が打ちつけられてい る音,④穏やかな波の音)から,その状況に対 応した絵を探し出す活動を行った。児童は,様々 な様態の音をオノマトペで発表する時,同じ音 を聴いていても,人それぞれ言葉で表現する

「水」の音は異なる ことに気づき,音の表現の 多様性に興味を持ち始めている。この活動 2 は,蛇口から洗面器に滴り落ちる水音を,子ど もたち一人ひとりが 木琴を用いて 表現の模索を 行う時間もとっている。ある一人の児童は,「さ っきの言葉(ポツポツ)を表したら,こんな風 になると思うんだけど」と,授業 者にマレット の先を少しだけ鍵盤に当てるような仕草をしな がら音を探る様子を見せている。 この児童は,

蛇口から落ちる水の様態を視覚的に認識 した後,

それをオノマトペでポツポツという言葉で表現 , さらに木琴でこの水の様態を微かな音量で,し かしはっきりとした音質で 一音一音少し間隔を あけて表現していた 。子どもたち は,自分が聴 き取った水音を表現するために,木琴という一 つの楽器から様々な音の出し方を 工夫し,表現 の模索を行っている のである。音楽づくりをす る場合,実際の音を模倣するという活動は重要 である。自分が認知した音を模倣する過程にお いて,いかにその音に近づけるか工夫を凝らす 。 そこには必ずイメージと表現の模索・工夫が介 在してくることとなる。音楽づくりは,このよ うな模倣の経験を積んだ発展上にある。 音を模 倣する活動後に ,自由な音楽づくりへとステッ プを進めれば,子どもたちは自分がイメージす る音楽づくりの学習へと戸惑いが少なく 取り組 むことができるようになる のである。今回の授 業は授業時間数の関係で, 音づくりで終止して しまっている子どもも見られた。しかし,自分 がイメージした 音づくりができたという意見が 子どもたちの大半を占め,音を模倣することは 子どもたちの表現力拡大の一助になることが 認 められた。またこの 時間のワークシート 感想か ら,多くの子どもがこの活動に音楽の楽しさを 見出し,満足していたこと もわかる。さらに活 3において,マリー・シェーファーの《ミニ ワンカ》の音楽を鑑賞すると,子どもたちは一 様に驚いた表情 をし,「さっきのことば(オノマ トペ)で,歌になるんだ」や「何か,頭がパニ ックや」とこれまで持っていた歌唱表現 のイメ ージをくつがえす作品に驚きを見せている。活 動4では「池」「川」「噴水」「湖」「プール」「雨」

「雷雨」「嵐」の映像を鑑賞する活動を取り入れ た。子どもたちは,今まで学習した「水」の音 に関する映像を見ることによって,イメージが より具体的になっているようであった。

2時では,宿題として出されていた「水」

の絵から音・音楽づくりを行う活動を行った。

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7 活動7,プロジェクターで子どもたちの絵を提 示し,この絵か ら何をイメージするか,どんな 音・音楽が聞こえるかを発表した。O君は,「み んなが川で泳いでいます。この絵から人が川の 中で歩く“じゃぼじゃぼ”や“ばしゃばしゃ ”,

川の中に飛び込む“パシャーン”,水中で息を吸 う“ぶくぶく”という音が聞こえます。楽しい 雰囲気が感じられます」と発表している。普段 の授業ではふざけることが 多いE子さんは,担 当教師が驚くほどこの授業に積極的に参加して いる。彼女は,噴水の絵(絵1参照)を描いて きて「この絵は噴水の絵です。この絵から “さ らさらさら”や風の“ヒューヒュー”という音 が聞こえてきます」 と発表している。彼女は 4 時間目のグルー プ発表の中で,マラカスを用い ながら噴水の水が湧き出す様子を身体の動きも 加えて表現している。「こういう風にしたほうが,

噴水っぽい音になる から」と,表現の工夫が見 られた。

【絵1:E子の噴水の絵 】

第3時は,絵から音・音楽を創り出す活動で あった。声や楽器,カセットケースなど音楽室 の中にあるものは全て使って音をだしてよいと いう指示をだすと,子どもたちは楽器庫の中か ら太鼓を持ち出したり,トーンチャイムを鳴ら したりして主体的に 音さがしを始めている。活 11 の個人による発表でH男は ,雨の絵(絵 2参照)を提示した。

【絵2:H男の雨の絵】

左手に鈴を何連にも巻いてザーザーと振る雨 音の重なりを表し,時折カウベルを鳴らすこと によって雨どいから 滴りおちる水滴の音を表現 している。音を探る時間,色々な 素材の音を試 していた彼は,この発表を終えると 非常に満足 そうな笑顔を見せていた。

またS子は,波がうねる様子を,シェーカー を傾ける速度を早くしたり遅くしたりして表現 している。さらにB男は,水族館の絵(絵3参 照)を描いてきている。

【絵3:B 男の水族館で泳ぐ魚の絵】

彼はこれまで,音楽の時間に話を聞いていな いことが多く,注意を要する児童とされていた。

しかし絵を描くことは好み,この絵を描く活動

(9)

8 があることで今回の音楽の授業に積極的に参加 している。担当教師には,彼にこんな一面があ ったとは驚かされたという感想をもらさせてい る。B男は,シェーカーを用いながら木琴を鳴 らしている。マレットで木琴の鍵盤を3,4音 転がして音を出しているが,鍵盤はシェーカー を動かしている左ひじでわざと押さえて響きを 消している。これは魚が水の中で口から泡を ぷ くぷくと出している様子を表現し たかったから と発表していた。絵画に興味を持つ B男は,音 楽を聴いて魚の絵を描いた。その絵は,音がこ ぼれでるような動きのある絵である。音楽に刺 激されて絵を描き,その絵からはたらき返され て音を創りだすという相乗効果が見られる。 自 らが描いてきた絵であったため,そこから聞え てくる音のイメージを彼が 既に有していたとい うことも,積極的に 音楽活動に取り組むことが できた理由のひとつであろう。

最後にT子は,湖のほとりで天使が踊ったり,

ハープを鳴らしながら歌っている様子を描いて いる(絵4参照)。

【絵4:T子の湖のほとりで天使が歌う絵】

T子は前時,この絵の説明として「この絵か らハープの“ぽろんぽろん”という音や歌声“ア ーアー”湖の“シューシュー”という音が聞こ えます」と発表している。本時は,その様子を ツリーチャイムとシェーカー,そして天使の歌 声を自ら歌い表現している。そこで発表された 音楽は静かで,ツリーチャイムのキラキラとし た響きが湖面の輝きに感じられる美しいもので あった。T子がイメージした天使の歌声は,自 らが静かに透明感のある声で歌って表現してい る。彼女の発表では,みんなその表現に 惹きつ けられ,ひときわ大きな拍手をもらっている。

以下表5に,ワークシートに記入した本時の 学習の感想を記す。

【表5:本時の学習の感想】

今 日 の学 習 の 感 想 を 書き ま し ょ う 。

1 ぼ く はシ ェ イ カ ー で れん し ゅ う し て よか っ た で す 。 湖 のサ ー サ ー と い うお と が , く ろ うし ま し た 。 2 木 の 葉の サ ラ サ ラ の 音を す ず で あ ら わす 。 す ず を な ら すと い い お と だ った 。

3 マ ラ カス で 人 が 泳 ぐ 音 , と り の 声 の する ふ え で 鳥 の 声 , 川 の な み の 音 をす ず で あ ら わ した 。

む ず か し かっ た の は , 三 つ の 楽 きを ( 一 人 で ) し た こ と と ,川 の 音 な ど を ひ ょ う げん す る と こ ろ 。 い き が つ かれ た 。 で も , 思い ど お り に で きて よ か っ た 。

4 音 を 表す の は , 大 変 でさ が す の に 苦 労 し た 。

5 コ ン ガ( ゴ ロ ゴ ロ): コ ン ガ をみ つ け る の は かん た ん だ った 。 マ ラ カス ( ザ ー ザ ー): マ ラ カス は , み つ け るの が か ん たん だ っ た 。 鉄 琴 (ポ チ ャ ): て っ き ん は ,ま だ ( ? ) わ から な い 。

6 雨 の おと

7 さ わ った こ と の な い がっ き が い ろ い ろあ っ て , よ か っ た。

8 湖 の 魚が 泳 い で る 様 子を 音 楽 で 考 え られ た 。

9 水 ぞ く か んの 音 と , ふ ん 水 の 音 と, 川 の 音 が で き ま し た 。 ふだ ん つ か え な い が っ きが 使 え て よ か っ た で す 。 ふん 水 の 音 と 川 の 音 は, 二 人 と , 三 人 で え んそ う で き た の で す ご く よ かっ た で す 。 ま た い つ か, こ ん な 楽 し い じ ゅ ぎ ょ うが し た い で す 。

(10)

9

10 キ ー カー , ブ ラ ン コ の遊 ん で い る 音 。サ ー ふ ん す い の音

ふ ん すい の 音 が シ ェ ーカ ー の 音 と に てい る こ と が わ か って よ か っ た 。

11 な み のお と や あ わ の おと が , ち ゃ ん と? で き た 。 き ょ うの じ ゅ ぎ ょ う はた の し か っ た です 。

12 ス ズ やシ ェ ー カ ー を つか っ て な み の 音が あ ら わ せ ん だ なあ 。 楽 器 で い ろん な 音 が さ が せる ん だ な あ と 思 いま し た 。 13 い ろ い ろ なが っ き で , ぼ く は は ずか し か っ た け ど み ん な が やっ て み て い る か ら ぼ くも が ん ば っ た 。 さ い ご に つか っ た お

と は ,さ か な が と ん でい る お と だ っ た。 て つ や く ん は でき な か っ た け ど, ぼ く は お も うよ う に で き て よ かっ た 。 14 す ず はや ね の う え に 水が お ち る 音 で ,カ ウ ベ ル は や ね の上 か ら 水 が お ちる 音 で す 。

15 今 日 は雨 の 音 ( マ ラ カス ) や 波 の 音 (シ ェ ー カ ー ) を やっ た 。

16 ふ ん 水の サ ラ サ ラ を シェ ー カ ー , ツ リー チ ャ イ ム で き れい な お と を あ らわ し た 。 17 湖 の きれ い な 音 。 ピ アノ で 湖 の 流 れ る音 を あ ら わ し た 。

18 嵐 の 音の 表 現 が な か なか み つ か ら な かっ た け ど , 友 達 がて つ だ っ て く れて で き ま し た 。カ ミ ナ リ の 音

19 私 は ,シ ャ ー と ゆ う 音を し ま し た 。 自分 が 思 っ た よ り よく で き た の で うれ し か っ た で す。 ま た 発 表 を し たい で す 。 20 て ん しの う た 。 ツ リ ーチ ャ イ ム ( ハ ープ の 音 ), シ ェ ー カー ( み ず う み), た の しか っ た 。

21 魚 が 泳ぐ 「 ス イ ス イ 」や 「 シ ャ ー 」 とい う 音 が で き た 。

22 風 の 音や 木 の ゆ れ る 音な ど , 発 ぴ ょ う は で き な か っ た けど , 音 は さ が せた 。 き れ い な 音で し た 。 23 私 は 水族 館 の 水 中 の 中の シ ャ ー と い う音 を 鈴 で あ ら わ しま し た 。

第4時には,グループで音楽表現を工夫した。

1時間だったたため,グループで十分に音を探 ったり工夫したりすることはできなかった。し かし,前時に個人で表現を考える活動を行って いたため,短時間にもかかわらず完成度が高い 発表も見られた。子どもたちは同じテーマでも,

イメージする音や表現は人それぞれ違うという 表現の多様性に今回の学習でも気づくことがで きた。

総合的なアプローチを試みたこの授業で,子 どもたちの想像力は拡大できたのではなかろう か。様々な活動を通してイメージを確立 してい くことによって,自分が表現したいことを明確 に意識し,そのことが表現を深めるきっかけと なっていた。これまで音楽が苦手で授業には消 極的であった子どもたちも,自分の得意な絵や オノマトペを考え出すことで音楽に興味を持ち , 主体的に参加していたこともこの授業の成果と して付け加えられるだろう。

仮説2)音楽的嗜好を明確に意識することによ って,子どもたちの表現意欲が高まる。

第1時の授業中,ワークシート 1にそれぞれ 楽曲の印象を記入し,3 曲の中で一番好みの曲 は何番かを選ばせるという音楽の嗜好を表明さ せる活動を取り入れた。これは聴取した音楽に

対して自分の意見を持たせ ,さらに言語によっ て表明させることによって ,自分の音楽的好み を明確に意識 させることを意図して計画したも のである。欧米では,幼少期から 自分の意見や 感想を述べることが重視された教育が行われて いることは周知のことであろう。それは音楽科 においても同様で, 子どもたちが自身の意見・

嗜好を形成,認識することで,意識して自己を 主張したり表現したりすることが容易とな って くると考えられている。そしてそれらを積み重 ねていくことにより ,自己の音楽アイデンティ ティーを確立し、意欲的な音楽活動へと向かわ せていくのである。 第 1 時の活動5において,

「水」に関する 楽曲を 3曲比較聴取した。1 目はサン・サーンス作曲《動物の謝肉祭》より

〈水族館〉,2曲目はベートーヴェン作曲《田園》

より〈嵐〉,3曲目はスメタナ作曲《我が祖国》

より〈モルダウ〉である。ここでは,「水」とい うテーマは同一であるがタイプの異なった3つ の楽曲を比較聴取し,それぞれの作品に対して 自らの意見を 持たせる活動を行った。次に,自 分の好みの順に番号をつけ ,その選択の理由を 口頭で説明する活動 を行っている 。日本の学校 教育の中では ,全ての音楽がそれぞれに価値を 有しているという理由から ,好き嫌いをはっき りと表明するような学習はあまり 行われていな

(11)

10 いのではなかろうか 。しかしながら,個々人の 音楽的価値観・趣味を育成することによって , それぞれが嗜好する音楽を基準にして,音楽に 対する意見を表明しやすくなる。そのことが子 どもたちを音楽活動へ主体的に向かわせるよう になり,個性的な音楽表現を発見 ,創造する意 欲を生むきっかけと もなる。本実践で行ったよ うな意識して自己を主張する活動を取り入れる ことによって ,次第に嗜好形成を促し,また各 自がそのことを認識することで自己の考えを構 築・表現することが容易となっていくのである。

このような活動を通して自己の音楽アイデンテ

ィティーを獲得していくことが,子どもたちの 表現力を育成 し,生涯音楽を愛好する姿勢を培 うことにも繋がっている。

比較聴取の学習中,ワークシート 1にそれぞ れ楽曲の印象を記入し,3 曲の中で一番好みの 曲は何番かを選ばせ る活動を行った。そして,

その楽曲からうける印象,或いは想像できる風 景を絵に表すという宿題を提示した。以下表6 は,子どもたちが描いてきた絵とその様子,そ こから聞こえるオノマトペを一覧にしたもので ある。

【表6:「一番好きな曲を絵に表してみましょう」 】

1:一番好きな曲を絵に表してみましょう。

描いた絵 様子 聞こえてくる音とオノマトペ

1 外 国 の湖 波 の 音,風 に 水 が 揺 られ て

い る (サ ー サ ー )

魚 が 泳い で い る( バ チ ャ バ チ ャ )

湖 の イメ ー ジ ( ポ ッ チ)

2 湧 き 水 山 奥 水 ( パチ ャ パ チ ャ ) 鳥 の 声 木 の 葉( サ ラ サ ラ )

3 川 の 中 で 人 が

泳 い で遊 ぶ

川 の 流れ る 音 ( サ ー サー ) 人 が 泳ぐ 様 子( バ シ ャ バ シ ャ )

人 が 水 中 で 息 を す る 様 子

( ゴ ボゴ ボ ) 人 が 川の 中 で 歩 く 様 子( ジ

ャ ボ ジャ ボ )

人 が 川 の 中 へ 飛 び 込 む 様 子 ( ザパ ー ン )

4 川 の 水 が 流 れ

て い る

記 入 なし

5 マ ン シ ョ ン か

ら 見 える 様 子

雨 の 音( ザ ー ザ ー ) 雷 ( ゴロ ゴ ロ ) 雨 の 音( ビ チ ャ )

6 嵐 で 雷 が 木 に

落 ち た

雨 ( ザー ザ ー ) 風 ( ビュ ー ビ ュ ー ) 雷 ( ゴロ ゴ ロ )

7 バ ク ダン 爆 発 爆 発

8 湖 で 魚 が 泳 い で いる

魚 が 泳ぐ 魚 が 泳 い で い る ( ス イ ス イ )

湖 の 波の 音 ( ジ ャ バ ーン ) 風 の 音( シ ュ ー シ ュ ー)

9 水 族 館 魚 が き れ い に 泳 い でい る

泡 ( ブク ブ ク ) 波 ( ザァ ー ザ ァ ー ) 魚 ( ボチ ャ )

10 噴 水 公 園 の噴 水 噴 水 小 鳥

11 泳 い で い る よ

う な

泡 ( プク プ ク ) 流 れ る ( サ ー サ ー ) 波 ( ザー ザ ー )

12 水 族 館 魚 が 泳 い で い

魚 の 泳い で い る 音( スイ ス イ )

波 ( ザー ) 息 ( ブク ブ ク )

13 湖 川 湖 川 で 魚 が 泳 い で いる

川 が 流れ る ( ザ ー ザ ー) 木 の 葉の 揺 れ る 音( ガ サ ガ サ )

14 木 の 葉 が 飛 ん

で い ると こ ろ

木 の 葉( ヒ ュ ー ) 雷 ( ゴロ ゴ ロ ) 雨 が 屋 根 に 当 た っ て い る

( ザ ー)

15 嵐 の と き に 雷

が な って い る

雨 ( ザー ザ ー ) 雷 ( ゴロ ゴ ロ ) 波 ( バシ ャ バ シ ャ )

16 噴 水 夜 ,外 国 のビ デ オ の 噴水 の 絵

水 ( サー サ ー ) 風 ( ヒュ ー ヒ ュ ー )

17 湖 の き れ い な

泡 ( ブク ブ ク ) 波 の 音( サ ー サ ー ) 波 の 音( チャ プ ン チ ャ プ ン)

(12)

11

18 木 が 吹 き 飛 ば

さ れ そ う に な っ て いる 嵐

雨 の 音( ザ ー ザ ー ) 風 の 音( ヒ ュ ー ヒ ュ ー) 風 の 音( ピ ュ ー ピ ュ ー)

19 川 に 鳥 が 気 持

ち よ さ そ う に 飛 ん でい る

川 が 流 れ て い る 音 ( シ ャ ー )

羽 を 動 か す 鳥 が 飛 ん で い る,川 の 音 と 混じ っ て( サ ラ サ ラ)

20 湖 で 天 使 が 踊

っ て いる

ハ ー プ( ポ ロ ン ポ ロ ン) 歌 声 (ア ー ア ー ) 湖 ( シュ ー シ ュ ー )

21 水 族 館 魚 が 泳 い で い

魚 が 泳い で い る( ス イス イ シ ョ ー×2 )

水 中 で 魚 が 泳 ぐ と き の 音

( ザ ボー ン , ズ ボ ー ン)

22 森 に 囲 ま れ て

い る 自然 の 湖

風 ( サー ) 木 の 揺れ る ( ザ ワ ザ ワ)

23 水 族 館 魚 が 泳 い で い

水 中 の音 ( シ ャ ー ) 魚 が 泳 い で い る ( ス イ ス イ )

魚 が (チ ャ ポ ー ン )

タイプの異なる楽曲を鑑賞したことで,子 どもたちは様々な反応を示している。近代的 な響きを持つ〈水族館〉は,子どもたちに不 思議な音楽という印象を与え,最初は受け入 られていなかった。しかし,最後の授業で再 びこれらの鑑賞を行った際,ある男の子が「最 初(1時間目)は迷ったけど,自分で水族館 の様子を表現したら,最初に聞いた 演奏はや っぱり水族館っぽい曲だとわかった。今なら 正解できそう」という発言が見られ, 自らが 音楽表現を探ることによって,作曲者の表現 の意図に迫れることもわかった。それに対し

〈モルダウ〉は,出だしのフルートの音色の 美しさからか子どもたちに 当初から一番好ま れていた楽曲であり,この作品のイメージを 絵に表してきた子どもも数多く見られた。そ の描かれた絵の中には,穏やかな川の流れや 湖畔など美しい風景画が多く見られ、その後 の音楽づくりにおいてもキラキラとした水の 反射を表す音色探しや波の動きの変化を模索 する活動など、子どもたち が意欲的に素材に はたらきかけ,表現活動に取り組んでいた。

感想としては「きれいだ」「癒される」「落ち 着く」という理由が見られ ,子どもたちの音 楽的嗜好をうかがう資料となっている。

2.5 授業実践のまとめ

本実践では,音楽の分野だけにとどまらず 他分野の芸術活動を取り入れた総合的なアプ

ローチの音楽教育実践を試みた。具体的には,

オノマトペを用いた 活動,自分たちの身近な 生活に関わりのある「水」の様態について考 える活動,音楽からの印象を絵に表わす活動 , 映像や写真の鑑賞も学習活動として取り入れ た。さらには授業中,子どもたちが水の動き について 身体を用いて表現する姿も自然に見 られた。 このように 様々な視点から総合的に アプローチを行うことによって, 子どもたち は自らのイメージを次第に 具体化していき,

音楽表現に役立 たせていることがわかった。

また,「水」という身近で描写的な素材を用い たことによって,一人ひとりが対象に関する 具体的なイメージを有しやすかったことも音 楽表現の拡大に役立った。

本節において音楽表現学習は, 音楽だけに 限らない総合的アプローチが有効であること , また子どもたちが,自己の音楽的アイデンテ ィティーを形成しつつ,明確に自らの好みを 表明・表現する経験を積んでいくこと が音楽 表現力を育成する上で重要である という二つ の仮説を,授業実践を通して明らかにした。

3.他教科と関連した授業についての考察 本実践は,総合的な学習の時間ではなく,

音楽科の授業の中で他教科と関連した授業を 試みたものである。その理由は,本論冒頭に も記したように,音楽とは本来他領域の芸術 活動と関連して成り立っている場合が多く,

(13)

12 他教科と関連することによって,音楽表現を

より自然に深めていけるのではなかろうか と いう思いからである。4年生では,理科で「水 の性質」について学ぶ単元がある。今回の学 習はちょうどこの学習の後に行われており , 他教科の学びの延長線上に あったことも,子 どもたちを積極的に表現活動に向き合わせた 一つの要因となっていた。

本授業では,国語科の擬音・擬態語,図画 工作科の絵画と関連した授業を行った。授業 では,音・音楽から受けるイメージをオノマ トペや絵で表現 ,次にその絵から聞こえてく る音を再度オノマトペで表現し,さらにその 絵からイメージする音や音楽を表現する学習 を行った。

子どもたちは,オノマトペで音を表現する ことで,言葉のリズムのおもしろさと音楽性 との関連を感じていた。このことによって,

音を自ら表現するきっかけを掴め,音を つく ることへの意欲を育むことができた。 また自 らの音楽的嗜好を明確に表明する活動を行う ことで,子ども一人ひとりの音楽アイデンテ ィティーを育み ,好みの音楽に沿って表現を 考える意欲を持つことに繋げられた。 次に,

鑑賞した音楽からイメージするもの を絵に表 現すること,さらにその絵から聞こえてくる 音や音楽を再表現する学習を行った。ここで は,自分が描いた絵ということから,イメー ジが具体的になり,どのような音が聞こえて くるか,またイメージする音楽はどのよう な ものかというこ とが子どもたちの中から言葉 としてすんなりと出てきていた。そして絵の イメージを音や音楽に表現する活動において は,子どもたちの中に既に具体的イメージが 築かれているせいか,素材探しの活動へ速や かに移行していった姿が印象的である。より 自分のイメージにあった音を発する素材を探 し,音のだし方の工夫や構成を考えている子 どもたちの姿は,音楽づくりを楽しみながら,

自己を積極的に外へ表現しようとしているよ うに見えた。自分の個性を発揮しながら主体 的に表現活動を行うことによって,子どもの 心は解放され,表現することの喜びを味わう ことであろう。 また,自分が満足する表現を 完成させた時には,それが自信へと繋がって いく。このような経験は生涯音楽を愛好する 人材を育てていくことに繋がっているのであ る。

音楽科と国語科,図画工作科が関連するこ とによって,子どもたちの表現に深まりが見 られた。表現活動に多角的にアプローチする ことによって,表現したい自分の思いが具体 的になり,音楽表現の深まりへと繋がってい ったのである。

4.おわりに

他分野の芸術活動を加え,総合的な視点で 音楽学習を行うことは,子どもたちの表現力 を拡大できる。音楽表現をさまざまな領域か ら自由に探索することによって,子どもたち のイマジネーションは膨らみ,対象に関する より具体的なイメージを有することができる ようになるのである。総合的な表現活動によ って,目に見えてわかりやすい表現技術だけ を高めるだけではなく,真の表現力を育成す ることが可能となることが今回の授業実践を 通して,明らかとなった。

* 本 研 究 は , 科 学 研 究 費 補 助 金 若 手 研 究 (B) 課 題 番 号 23730839( 研 究 代 表 者 : 今 由 佳 里 ) の 助 成 を 受 け て 行 わ れ て いる も の で あ る .

【参考文献】

奥 忍(2009)「 芸 術科教 科統合 に関する アジ アの動向について」『関西楽理研究』ⅩⅩⅥ,

pp.53-59.

参照

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