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論文の内容の要旨

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Academic year: 2021

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論文の内容の要旨

氏名:森 俊 幸

専攻分野の名称: 博士(歯学)

論文題名: コンポジットレジンの色彩学的研究

-背景色と厚さの違いで得られた TP 値標準曲線の情報-

最近では、保存修復治療において、患者の審美的要求の高まりと歯質接着性の向上により、コンポジッ トレジンが主として用いられるようになってきた。コンポジットレジン修復の際には、周囲歯質の色とマ ッチングするコンポジットレジンの色の選択が重要な術式の一つと考えられ、正常色覚者であればシェー ドガイドを利用することで、ほとんどの症例においてシェード選択が容易にできる。しかし、コンポジッ トレジンはエナメル質に近似した質感が得られるように半透明性を有しており、着色象牙質等が窩底部に 残存している場合は、その背景色が透過して見えるために、術者の選択した色とは異なった表色となって しまうことがある。最近では、患者の高齢化にともない、歯頸部象牙質の治療や補綴物歯頸部辺縁の補修 修復の症例が増加しており、MI の概念から着色象牙質を残して治療されることが多くなってきた。その様 な症例では、周囲歯質あるいは補綴物にマッチした色の選択はできても、透明性を予測することは困難で、

一般的には術者の経験と感覚にもとづいてレイヤリングの要・不要あるいはオペークレジンの色が選択さ れている。

今日の歯科色彩学では、歯の色についてL*a*b*表色系をもとにした表現がなされるようになり、透明性 あるいは遮蔽性に関しては TP 値を指標として報告されている。TP 値は白色背景と黒色背景とした際のコン ポジットレジンの測色で得られたL*a*b*値の違いを、色差と同様の式で表している。そのために、この TP 値をもとにして得られたオペークレジンの背景色遮蔽効果は、実際よりも大きい TP 値を設定して検討され ていることから、背景色遮蔽に必要なオペークレジンに求められる TP 値が、色彩学的に低い値となってい たことが推測された。したがって、白色・黒色背景で得られた TP 値は、厚さ等を同一条件として作製した 試料の透明性あるいは遮蔽性の比較、または知覚色差を含めた表色を比較するためだけの指標でしかなか った。

それに対して、関根は背景色を変化させて、基準背景色をもとにした背景色の色差とオペークレジンの TP 値の関係について調べ、TP 値標準曲線が得られれば、3 点計測法により任意のエナメル質色と着色象牙 質に対する TP 値が求められることを報告している。3 点計測法で得られた TP 値は従来の TP 値の概念とは 異なり、実際の臨床に応用できる透明性あるいは背景色遮蔽効果の検討に適している。しかし、コンポジ ットレジン修復の臨床では、窩洞の深さに関する検討も必要と考えられ、背景色の色差とコンポジットレ ジン試料の厚さの違いによる TP 値の変化に関する報告はみられない。

そこで、著者は、これらの背景色とコンポジットレジンの厚さの違いによる TP 値標準曲線が得られれば、

色彩学的な論理性を有した治療方針の決定に役立つものと考えた。すなわち、TP 値標準曲線から得られる 情報は、治療前にオペークレジンの必要性やコンポジットレジンのシェードあるいは製品の選択に役立つ だけでなく、術者の色覚能力の補助としても利用できるものと考えられた。

本実験では、市販コンポジットレジンの BE と SO のシェード A3 を使用して、厚さ 0.5、1.5 と 2.5 mm の

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試料を異なった背景色の上に設置して測色し、基準背景色と背景色の色差ならびに各々の TP 値標準曲線を 求めた。TP 値標準曲線の指数近似式から厚さ 6.0 mm のコンポジットレジン自体の色とその TP 値±1.5 と した知覚色差および背景色知覚色差領域を算出し、仮定した窩洞周囲エナメル質色と着色象牙質の E-D 背 景色範囲との関係について調べた。さらに、得られた知覚色差領域と E-D 背景色範囲について実証実験を 行い、TP 値標準曲線の情報についての検証を行った。

その結果、以下の結論を得た。

1. コンポジットレジン試料が厚くなるに従って、TP 値は減少した。

2. おのおののコンポジットレジン試料の TP 値標準曲線から指数近似式が得ら れ、コンポジットレジンと基準白色背景とのΔE*ab の関係を得ることができた。

3. 同じシェードを有する市販コンポジットレジンであっても、背景色知覚色差 領域の異なることが示された。

4. TP 値標準曲線の指数近似式が得られれば、コンポジットレジン修復の術前に オペークレジンの必要性に関する情報が得られることの可能性が示された。

以上のことから、背景色知覚色差領域が E-D 背景色範囲よりも大きい場合には、着色象牙質の色を遮蔽 してエナメル質と着色象牙質の識別が困難な程度にエナメル質に近似した色が得られるものと考えられた。

本実験で仮定した窩洞周囲エナメル質色と着色象牙質の色で、2.5 mm の窩洞の深さであれば、BE はL*値が 23~66 程度の着色象牙質を遮蔽でき、周囲エナメル質と近似した色のコンポジットレジン修復ができるこ とが示された。一方、SO では軽度に E-D 背景色範囲が背景色知覚色差領域を逸脱しており、窩洞の深さや オペークレジンの考慮が望ましいことが示された。したがって、市販コンポジットレジンの TP 値標準曲線 が得られれば、コンポジットレジン修復の前に、基準白色背景とエナメル質、着色象牙質の 3 点測色法な らびに窩洞の深さの情報で、オペークレジンの要・不要が予測できるものと考えられ、臨床に応用できる 可能性だけでなくコンポジットレジンやオペークレジンの改良・開発に役立つものと思われた。

参照

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