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時間次元 における諸 自己像の関連性 と自我同一性 レヴェル

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(1)

209 J a p a n e s eJ o u r n a lo fEd u c a t i o n a lPs y c h o l o g y ,1 9 9 4 ,4 2 ,2 0 9‑2 1 5

時間次元 における諸 自己像の関連性 と自我同一性 レヴェル

杉 山 成

l

RELATI ONSHI P BETWEEN BOTH THE SELF‑ I MAGE ON THE TI ME DI MENSI ONS AND THE EGO‑ I DENTI TY LEVEL

Shi ge r uSUGI YAMA

Thepur po s eo ft hepr e s e nts t udywa st oe xa mi net her e l a t i o n s hi pa mo ngs e l f

‑ i ma ge si nt hepa s t , t hepr e s e nta ndt hef ut ur er e l a t e dt ot hee go‑ i d e nt i t yac hi e ve me nt l e ve l . I de nt i t y‑ c o nf us i o nq ue s t i o nnai r e( Sunada ,1979) a ndSe l f ‑ Di f f e r e nt i a l Sc a le ( Na ga s hi mae t .a l . ,1967) we r ead mi ni s t e r e dt o 205 uni ve r s i t ys t ud e nt s ,i no r de rt o me a s ur e" t hee go‑ i de nt i t ya c hi e ve me ntl e ve l "a nd" t hei ma ge so fpa s t ‑ s e l f ,pr e s e n t

‑ s e l fa ndf ut ur e ‑ s e l f( i d e al ‑ s e l fa ndpr e di c t e d‑ s e l fwe r eme a s ur e da sf ut ur e ‑ s e l f ) " . Re gr e s s i o na nal ys i swa sappl i e dt ot heda t abe t we e ni de nt i t y‑ c o nf us i o no fHi gha nd Lo wL gr o up・ Themai nf indi ngswe r ea sf ol l o ws =( 1 )Thei nf lue nc eo fpa s t ‑ s e l fupo n pr e s e nt ‑ s e l fwa ss t r o nge ri nt hei d e nt i t y‑ c o nf us i o nLo wgr o upt ha ni nt heHi g h gr o up;

( 2 )Thei n aue nc e so fpa s t ‑ s e l fa ndp r e s e nt ‑ s e l fupo npr e di c t e d‑ s e l fwa ss t r o nge ri nt he i d e nt i t y‑ c o nf us i o nLo w gr o upt ha ni nt heHi ghgr o up;and( 3 )Whe nt hede pe nde nt va r i a bl ewa si de al ‑ s e l f ,t hemul t i pl ec o r r e l a t i o nc o e f f i c i e n twa sc o ns i de r a bl yl o w.

Ke ywo r ds:pa s t ‑ s e l f ,pr e s e n t ‑ s e l f ,pr e di c t e d‑ s e l f ,i de al ‑ s e l f ,i de n t i t y‑ c o nf us i o n.

問 題

時間的展望 ( t i mep e r s p e c t i v e ) とは,その時,その時 における個人の未来 についての見方,経験,および過 去についての見方の総体である ( L e wi n ,1 9 5

1)0

Le wi n

( 1 9 4 2 ) は,場の理論の中で時間的展望 を生活空間を成 り立たせている重要な一面 として位置づけ,個人の生 活空間が現在だけでな く,未来や過去 をもその中に含 んでいるとし,集団や個人の行動,及び適応に影響 を 与 えるものと考 えた。その後,時間的展望 と社会階層 やパーソナ リティ指標 との関連が多 くの研究者 によっ て検討 されている。

時間的展望の研究対象には , 「 e xt e ns i o n :概念化 さ れた将来の時間的範囲の長 さ 」 , 「 de ns i t y: 個人が未来 に予想する出来事や,経験の数」などの認知的な側面

1

立教大学文学研究科 ( Ri k k y oUn i v e r s i t y )

に属する概念や , 「 di r e c t i o nal i t y: 現在の瞬間か ら未 来へ と移行する感覚」 , 「 pe r s o nalt i mepe r s pe c t i ve:

現在 と過去,現在 と未来 との間の主観的評価の差」 と いった情緒的な側面 に属す る概念が考 えられ る ( 都筑, 1 9 8 2 ) 。そして,その情緒的な側面の 1 つに時間的関連 性,および時間的連続 一不連続性の概念がある。

時間的関連性 とは,過去,現在,未来が どの程度関 連性 をもって とらえられ,かつ統合 されているか ( Cot ‑

t l e ,1 9 6 7 )とい う概念であ り ,Co t t l e& Pl e c k ( 1 9 6 9 ) は, この指標 と顕現性不安,達成動機 といった領域 と の関連性 を確認 している。

また,時間的連続性 一不連続性 という概念 も時間的

関連性 とほぼ同じ内容 を扱 っていると考 えることがで

きる。少年鑑別所 に入所 している非行少年の時間的展

望 を検討 した勝俣 ・篠原 ・村上 ( 1 9 8 2 ) は,非行少年に

おける時間の不連続性 という特徴について言及 し,罪

行少年 は,過去,現在,未来 を不連続なもの として と

(2)

らえる傾向があるために,現実の行動 と未来 とを切 り 離 して受けとめている可能性があると指摘 している。

杉山 ・神田 ( 1 9 9 1 ) ち,対照群 よりも非行少年の過去, 現在,未来の評価の関連性が低いという傾向を確認 し ている。

一方, 自己の生涯発達的な観点か ら Er i ks o n ( 1 9 5 9 ) は,青年期 を 「自我同一 性対同一性拡散」の危機の時 期 とし,自己の連続性ないし一貫性,すなわち自分が 歴史的にどのように育って きたか, また,現在が自分 の過去にしっか り根 ざしていることに確信が もてるか どうか という感覚を自我同一 性形成の重要な心理的要 件 として とらえた。 さらに,人生 目標 をはじめ とする 自己の 「 未来」 は, この確信の上 に立って,はっきり と具体性 を持 って現実的なもの とな りうるとし,個人 の自我同一性の達成が時間的関連性の認知 を前提 に成 立することを示 している。 こうした見解か らは,時間 的関連性 または時間的連続一不連続 という概念が,特 に青年期において, 自我同一 性と深い関わ りを持つ こ とが予想 される。

都筑 ( 1 9 9 3 ) は,そうした時間的関連性 と Ma r c i a ( 1 9 6 6 ) の自我同一性地位 との関連性 について検討 した0時間 的関連性の測定には ,Co t t l e ( 1 9 6 7 ) のサークル ・テス トが使用され,過去 ・現在 ・未来の 3 つの円の重な り のパターンがその指標 とされた. 4 つの自我同一性地 位 を比較 した結果,同一性達成地位 と積極的モラ トリ アムにいる個人が,他の他位の個人 よりも, より統合 した形で 3 つの円を描 くことが示 され, 自我同一性地 位 と時間的関連性 との関連性が確認 された。 しか し, サークル ・テス トという手法 は,その性質上,各時間 次元の関連性 に関するカテゴリカルなデータ ( 3 つの円 が互いに接 しているか/内包 されているか/離れているか等)し か得 られず,関連の大 きさや Er i ks o n の指摘するよう な関連の方向性については検討することがで きないと いう限界がある。

そこで,本研究では個人の時間次元 における自己概 念 という観点か ら,個人の過去 ・現在 ・未来の時間次 元の関連性の大 きさや方向性について検討す ることを

目的 とする。

自己概念 とは, 自分 自身についての意識や記憶,感 情や価値づけ等々か らなる構造的ゲシュタル トであ り, その時々の自己意識 をその土台において支 え,枠づけ ているもの ( 梶田 , 1 9 8 8 ) である。そこには主要な要素 と して,他者か らみた自己像や,過去の自己像, 自己の 可能性や未来の自己像などといった多面的な数多 くの イメージが含 まれている。そして,それ らのイメージ

が現実の自己像 との間でダイナ ミックな相互関連 を持 つ ことで,新たな現実自己が形成 された り,新たな行 動へのモティベーションが生 じると考 えられる。すで に述べたように ,Er i ks o n ( 1 9 5 9 ) は,そうした自己像の 関連性 について,過去の自己 と現在の自己の連続性 を 確信することが自我同一性の形成の重要な要因であ り,

それが達成 されることによって未来に対する展望 もま た具体性 をもち現実的な存在 になることを指摘 してい る。この Er i ks o n の見解か らは,自我同一性のレグェ ルが上昇するにつれて,現実の自己の形成 において過 去の自己像が重要にな り,未来の自己像が過去や現在 の自己のイメージに基づ くものになってい くことが考 えられる。 よって以下の仮説 を設定 した。すなわち,

「 青年期 における個人の現在 の自己は過去の自己に規 定 され,一方,未来の自己は過去 と現在の自己に規定 されているであろう。そして,そうした諸 自己像の関 連の強 さは自我同一性のレヴェル と関係があ り, 自我 同一性が混乱 している個人 よりも, 自我同一性確立の レヴェルの高い個人 において諸 自己像の関連性 は強い であろう」 というものである。本研究では自我同一 性 レヴェルの高 ・低群 における過去 ・現在 ・未来におけ る自己の認知像 を測定 してパス解析 を行い,現在の自 己に及ぼす過去の自己の影響力, また未来の自己に及 ぼす過去 ・現在の自己の影響力をそれぞれ検討する。

また,両群 における諸 自己像間の相関係数の検定 を行 うことによって, この青年期の自己の時間的関連性 に 関する仮説について検討する。

ところで, この時間次元 における諸 自己に関 して考 えた場合 , 「 過去の自己像 」 , 「 現在の自己像 」 , 「 未来の 自己像」の 3 つが想定 される。「 過去の自己像」は過去 の自分が どんな人間だったか という自己認知 を反映 し,

「 現在の自己」は現在,自分 をどんな人間 と思っている か という自己認知 を反映する。一方 , 「 未来の自己」は 個人 にとって唯一未だ経験のない自己であ り,それゆ え,その像 は願望 としての自己や,現実的な予想 とし ての自己などの混在 した もの となっていることが予想 される。 こうした 「な りたい」 という願望 としての理 想の自己 と,現実の連続 としての 「こうなっているで あろう」 という予想の自己 とは,同じ未来 に属する自 己であ りなが ら性質,特に現実のレグェルが異なるの ではないか と考 えられる。そこで,本研究では前者 を

「 理想 自己」,後者 を 「 予想 自己」として とらえ,別々 に測定を行 うこととする。

‑ 9 3‑

(3)

2 1 1 教 育 心 理 学 研 究 第 4 2 巻 第 2 号

方 法

被験者 ・調査手続

被験者 は大学生2 0 5 名 ( 男性 9 7 名, 女性 1 0 8 名)である。

年齢 は 1 8 才か ら 23 才であ り,平均年齢 は 19. 8 才 。 1992 年 8 月中の授業中に質問紙 を配布 し ,9 0 分の授業時間 内にすべての項 目について回答 させた。

質問項 目

( 1 ) 諸 自己像の測定およびそれ らの配置

長島 ・藤原 ・原野 ・斉藤 ・堀 ( 1 9 6 7 ) のセルフ ・ディ ファレンシャル尺度 を応用 し,過去 ・現在 ・理想 ・予 想 の自己像 を測定 した。形容詞対 は 1 2 対 で,長島 ら ( 1 9 6 7 ) の大学生で得 られた 6 つの因子 のそれぞれか ら,因子負荷量の大 きいものをとり , 7 件法で評定 さ せた。因子 とその項 目は以下のようなものである。向 悼( 外向的な一内向的な, おしゃべりな一無口な) ,情緒安定性 ( 丸い一角のある, 暖かい‑冷たい) ,強敵性 ( 腺病な一勇敢な, 弱々しい‑たくましい) ,誠実性 ( 誠実な一不誠実な,まじめな

‑ふまじめな) ,過敏性 ( 敏感な一鈍感な,安定な一不安定な) , 理知性 ( 理性的な一感情的な, 冷静な一情熱的な) 0

手順 としては, まず 「 過去の自己 」 「 現在の自己 」 「 理 想の自己」 とい うコンセプ トを与 え,それについて評 定 させた。その後,それ らの存在する年齢の記述 を求 めた。 このように 「 諸 自己像の存在時期」 を確認 した 上で , 『さて, ここまで 「 理想の自己」についての特徴 と,それの人生上の位置について答 えて もらいました。

それでは,その 「 理想の自己」の時期 に,あなたは実 際にはどういう人間になっていると思いますか。その

「 予想の自己」についてお答 え ください』 という教示 を与 え,予想の自己像 についての評定 をさせた。 こう した手法 をとったのは理想の自己 とそれ と同じ時期に 存在する予想の自己 との相違 を被験者に明確 に意識 さ せる必要があったためである。

なお,被験者が調査者側の意図を読み とって意識的 に評定 を調整することを防 ぐために,諸 自己像の評定 の際には, 4 枚のA 4 用紙 に自己像の評定尺度を 1 つ ずつ配置 し, さらに,自己像 ごとに形容詞の順序 と方 向をランダムにした。

( 2 ) 自我同一性 レヴェルの測定

砂田 ( 1 9 7 9 ) の同一性混乱尺度 を用いた. これは東大 式パーソナ リティ検査,YG,MMPI ,Er i ks on の著作 を参考にして作 られている 。3 4 項 目で構成 され , 5 つ の下位概念 ( 時間的展望混乱 自意識過軌 役割固着, 労働麻揮, 同一性混乱, 両性的混乱 価値混乱)に分かれている。回答 は

3 件法で,同一性混乱の方向を示 している選択肢の反

応 を 2 点 , 「どちらで もない」を 1点,逆方向を 0点 と して点数化 を行 った。

結 果

項 目分析

まず,理想の自己 と予想の自己を未来の自己 と定義 したので,それを「 諸 自己像の存在時期」の対比 によっ て確認 した。その結果,過去の自己の年齢 は平均で約

1 4. 6 才 ( 標準偏差 3 . 5 8 ) ,現在 の自己の年齢 の平均 は約 19. 8 才 ( 標準偏差 1 . 5 3 ) ,理想 ・予想 自己の年齢の平均 は 約31 . 3 才 ( 標準偏差 8 . 5 2 ) であったO各ケースごとに調べ た結果,理想 ・予想 自己の年齢が,現在の自己の年齢 以下 というケースが男性 において 2 件だけあったので, その 2 ケースは以下の分析か ら除いた。 よって,以下 の分析 は 2 03 名が対象になっている。

過去 ・現在 ・理想 ・予想 における自己概念のセルフ・

ディファレンシャル尺度 は2 項 目ずつの 6 因子で構成 されているので,その 2 項 目ずつの相関係数を算出し た ところ, どの時間次元においても過敏性の因子にお いてのみ項 目間の相関が 1%水準で有意ではな く,他 の因子に比 して低いものであった。そこで以下では過 敏性の因子 に当たる項 目を削除 して分析 を進めた。

同‑性混乱尺度の各項 目得点 と当該の項 目を除 く合 計得点 との相関を算出した結果 , 1 つの項 目に関 して はその相関が有意ではなかったので削除することにし た。それ以外の3 3 個の項 目はすべて 1%水準で有意な 相関を持っていたため, この 33 項 目の合計得点 を同一 性混乱の指標 として採用することにする。全体の α 係 数 は 0. 7 9 とな り,一応の内的一貫性が認められるO得 点の平均 は 23. 7 で標準偏差 は 7. 51 。平均値の検定の結 果,男女間に有意な差がみられ,女性の方が有意に高 い傾向を示 した ( t ‑2 . 3 1 ,df ‑2 0 1 ,p〈 . 0 5 ) 0

解析

同一性混乱尺度の分布 は正規分布 に近かった。そこ で,メディアンにより,被験者全体 を同一性混乱高群

( n‑9 7 ) と低群 ( n‑1 0 6 ) に分割 した。

過去 ・現在 ・ 理想 ・予想のセルフ・ディファレンシャ

ル尺度 については,長島 ら ( 1 9 6 7 ) の結果に従 って,ポ

ジティブな方向に点数が高 くなるように各形容詞対の

方向を並び変 え,合計 した。 この合計得点 は向性,悼

緒安定性,強靭性,誠実性,理知性 という各側面にお

ける自己像の認知 されたポジティブさの総和 と考 えら

れるので,本研究ではこの合計得点 を各時間次元にお

ける自己像の指標 とする。 よって, この得点 は一番ネ

ガティブな自己像か らポジティブな自己像 まで,得点

(4)

の レンジ は10 点 か ら 70 点 とな る。 それ ぞれ の 自己像得 点 の平均点 と標準偏差 は,過去 の 自己像 で42. 0 ( 標準偏 差 6 . 2 2) ,現在 の 自己像 で44. 0( 標準偏差5 . 6 6 ) ,理想 の 自 己像 で52. 1 ( 標準偏差6 . 3 0 ) ,予想 の 自己像 で47. 0( 標準偏 差6 . 4 5 )で あった。

そ して,同一性混乱 の 2 群 それ ぞれ に諸 自己像得点 を算 出 し,平均値 の検 定 を行 った ( TABLE 1 ) 。 その結 果,過去 ・現在 ・理想 ・予想 すべての 自己像得点 にお いて, 同一性拡散低群 は高群 よ りも有意 に高 い得点 を 示 し, その差 は過去 と予想 にお いて 5%水準 ( 過去の自 己:t ‑2 . 4 2 ,df ‑2 0 1 , pく . 0 5 , 予想の自己: t =2 . 4 1 , df ‑2 01 , pく . 0 5 ) , 現在 において は 1%水準 で有意 な もの ( t ‑2 . 7 3 ,df ‑2 0 1 , pく ・ 0 1 ) で あったが,理想 の 自己像 において は,その差 は 有意 で はなか った ( n. S . ,t ‑0 . 4 1 ,df ‑2 0 1 ) 。 なお, 同一性 混乱 2 群 間 の諸 自己像 の因子別 の平均値 の検定 の結果

は TABLE 2 の ようになった。

TABLE l 同一性混乱 の高 ・低群 に よる各 自己像 得点 の平均値 の検定

同一性混乱

低群 ( ∩‑1 0 6 ) 高群 ( n‑9 7 ) t( 2 0 1 ) 過去の自己 4 3. 0( 6. 0 0 ) 4 0. 9( 6. 3 2 ) 2. 4 2

現在の自己 4 5. 0( 5. ll ) 4 2. 9( 6. 0 5) 2. 7 3日 理想の自己 5 2. 2( 6. ll ) 51. 9( 6. 5 4 ) 0. 41 予想の自己 4 8. 0( 6. 6 6 ) 4 5. 9( 6. 0 4 ) 2. 41

*

‑ pく. 0

1

★pく. 0 5 ( )内は標準偏差

TABLE 2 同

性 混 乱 の高 ・低 群 に よ る因子

との 各 自己像 得 点 の平 均 値 の検定

群 (

∩‑106) 高

群 (

n

9 7 ) t ( 2 01 ) 向 性 8 . 5 ( 2 . 64 ) 8 . 0 ( 2

.

62)

過 情緒安定性 8 . 4 ( 2 . 40) 8 . 4 ( 2

.

33) 強 靭 性 7 . 9 ( 2. 2 8) 7 . 1 ( 2 . 32) 去 誠 実 性 1 0 . 3 ( 2. 32) 1 0 . 0 ( 2 . 32) 理 知 性 7 . 6 ( 2. 7 3 ) 7 . 2 ( 2

.

71)

向 性 9 . 0 ( 2. 56 ) 8 . 7 ( 2

.

37) 0. 6 5

現 情緒安定性 9 . 0 ( 2. 1 6) 9 . 1 ( 2

.

05) ‑0. 3 0

強 靭 性 8 . 3 ( 2. 1 3) 7 . 4 ( 1

.

96) 3. 1 5日

在 誠 実 性 1 0 . 2 ( 1. 93) 9 . 9( 2 . 04) 1. 0 9 理 知 性 8 . 3 ( 2. 54 ) 7 . 5( 2

.

57) 2. 1 9*

向 性 9 . 4 ( 2. 31 ) 8 . 8( 2

.

17) 1. 9 7 予 情緒安定性 9 . 9 ( 2. 4 5) 9 . 9 ( 1 . 97) ‑0. 1 3 強 靭 性 9 . 8 ( 2. 1 9) 8 . 9 ( 2

.

04) 3. 3 3 = 想 誠 実 性 1 0 . 4 ( 1 . 9 3) 1 0 . 2 ( 2

.

15) 0. 7 2

理 知 性 8 . 3 ( 2 . 4 5 ) 7 . 9 ( 2 . 24) 1. 1 3

向 性 1 0 . 3 ( 1 . 89 ) 9 . 9 ( 1

.

91) 理 情緒安定性 1 0 . 9 ( 2 . 34) 1 1 . 2 ( 2

.

09) 一

強 靭 性 1 1 . 4 ( 2 . 01 ) 1 1 . 3 ( 2

.

15)

想 誠 実 性 1 1 . 3 ( 1 . 81 ) 1 1 . 2 ( 2

.

05)

理 知 性 8 . 1 ( 2 . 84 ) 8 . 1 ( 2

.

70)

‑ pく. 0

1

*pく. 0 5 ( )内 は標 準 偏差

次 に,仮説検証 のために時間次元 にお ける諸 自己像 間 のパ ス解析 を行 い, さ らに,説 明変数 と基準変数 の 間 の単純相 関係数 を算 出 した。説明変数 の選択 は仮 説 に基づ いた。 したが って,現在 の 自己 を基準変数 とし た ときの説明変数 は過去 の 自己で あ り,理想 自己 ・予 想 自己 を基準変数 とした ときの説明変数 は過去 の 自己 と現在 の 自己であ る。変数 の投入 は一括投入法 で行 っ た 。 TABLE3 は全体 のデー タにお けるパ ス解析 の結果 お よび説 明変数 ・基準変数間 の単純相 関係 数 を示 した ものであ り , TABLE 4‑1は同一性混乱高群 , TABLE 4‑2は低群 にお ける同様 の分析 の結果 であ る。全体 お よび同一性混乱 高 ・低群 それ ぞれ にお いて 3 回ずつの 重 回帰分析 を行 った こ とにな るが, その重相 関係数 は す べ て有 意 な もの で あ っ た 。 FI GURE 1‑ 1 は TABLE

TABLE 3 各 自己像 間 の重 回帰分析 の結果 ( 全体)

基 準 変 数

現在の自己 予想の自己 理想の自己

β r β r β r

萌 過去の自 己 震 現在の自己

4 5 川 .

4

7 日 . 2 5日 . 4 5

*

* . 0 6 . 2 0

ゆ す . 4 5… t . 5 6H I . 3 2

*

ホ . 3 4日

重相関係数 . 4 5 H . 6 0

H

. 3 4日 H p(. 0

1

*pく. 0 5 β は標準偏回帰係数,rは単純相関係数

TABLE 4‑1 各自己像間の重回帰分析の結果( 同一性混乱高群)

基 準

現在の自己 予想の自己 理想の自己

β r β r β r

過去の自 己 . 3 7日 . 3 8日 . 2 1

. 3 3* *‑. 1 0 . 01 現在の自己 中 少 . 3 4H . 4 1H . 3 0日 . 3 5

H

重相関係数 . 3 7

H

. 4 6日 . 2 8 * ホ

H p (. 01 *p(. 0 5 β は標準偏回帰係数 , r は単純相関係数

TABLE 4‑2 各自己像間の重回帰分析の結果( 同一性混乱低群)

基 準

現在の自己 予想の自己 理想の自己

β r β r β r

賀 過去の自己 藁 現在の自己

5 0H . 5 4日 . 2 4日 . 5 2日 .

2 2

* . 3 8

や + . 5 6H . 6 8

H .32*

* . 4 3

重相関係数 . 5 0

. 7 1 H . 4 7日

‑ p(. 01 *p(. 0 5 ,β は標準偏回帰係数 ,r は単純相関係数

‑ 9 5 ‑

(5)

2 1 3

. 3 6 6 I ( T 良‑. 3 7)

教 育 心 理 学 研 究 第 4 2 巻 第 2 号

理想の自己 ( R‑. 28)

予 想 の 自 己

( R‑. 4 6) . 2 0 6

FI GURE l ‑1 各自己像のパス・ ダイアグラム( 同一性混乱高群) 注)矢印付近の数字は標準偏回帰係数を,( ) 内の数字は重相関

係数をあらわしている 。5% 水準で有意なパスのみ記した。

. 2 21

過去の自己 ‑ . ̲ /=現在の自己 . 4 9 7 ー ( ‑ i‑. 5 0 )

理想の自己 ( R ‑ . 47) 予想の自己

. 2 4 1

FI GUR 】 ∃1 ‑2 各自己像のパス・ ダイアグラム( 同一性混乱低群) 注)矢印付近の数字は標準偏回帰係数を,( ) 内の数字は重相関 係数をあらわしている 。5% 水準で有意なパスのみ記した。

4‑1 ,FI GURE 1 ‑2 は TABLE 4‑2 をもとにして作成 したパス ・ダイアグラムであ り,パ スは標準偏回帰係 数が 5% 水準で有意 になった ものだけ表示 している。

まず,全体 のデータで は, ほぼ予想 された結果が得 られている。現在の自己 は過去の自己か ら有意 な影響 を受 けている。未来の 2 つの自己のうち,予想 自己 は 過去 と現在の自己の有意 な影響 を受 けてお り,一方の 理想 自己 は現在 の自己か らの有意な影響 は受 けている ちのの,過去の自己か らの影響力 は有意で はない。 こ の未来 の 2 つの自己における傾向の違いは ,TABLE 1 における両者の違 い と同様 に,その性質の違いを反映 しているもの と考 えられ る。 この点 について後 に検討 す る。

次 に ,TABLE 4‑1 の同一 一性混乱高群 と TABLE 4‑

2の低群 を比較す る。まず,現在の自己 を基準変数 とし た分析で は, ほぼ仮説 を支持す る結果が得 られた。過 去の自己が現在 の自己 を規定す る標準偏回帰係数 は両 群 において有意ではあるが, その値 は同一性混乱低群

において, より大 きい ものであった。

基準変数 を予想 自己 とした分析 においては,同一性 混乱の 2 群の差が, より顕著 に認 められる。重相関係 数では,同一性混乱高群 の ものが,約 0. 4 6 であるのに 対 し,低群で は約 0. 7 1 とはるかに高かった。説明変数

間の関係 をみると,両群 において傾向は共通 してお り, 現在の自己の方が過去の自己 よりも予想 自己に対 して 強い影響力 を持 っている。 そして特 に,同一 性混乱低 群 にお ける現在 の 自己 の予想 自己へ の影響力 が強 く

( 標準偏回帰係数で約 0 . 5 6 ) ,これ は同一性混乱 の程度が低 い個人 における,現在 の自己の延長 としての予想 自己 を認知す る傾向の強 さを示す もの といえる。

最後 に理想 自己 を基準変数 とした分析で も仮説 とほ ぼ一致 した傾 向がみ られる。同一性混乱 の低群 の方が 高群 よりも重相関係数が高 く,説明変数によって説明 され る割合が高い。説明変数の傾向 としては,同一性 混乱 の低群 において は,現在 の自己のほかに過去の自 己の標準偏 回帰係数 も有意であったが,高群 において は,現在 の自己の標準偏 回帰係数のみが有意であった。

なお,同一性混乱の 2 群 における諸 自己像 の関連性 の大 きさに統計的に有意 な差があるか検討するために, 独立 した 2 標本 における相関係数の差 の検定法 を当て

はめ,諸 自己像間の単純相関係数の差の検定 を行 った ところ,同一性混乱高 ・低群間に 5% 水準で有意差の あった単純相関係数 は,過去の自己 と理想 自己,過去 の自己 と予想 自己,現在 の自己 と予想 自己 との単純相 関係数であった。一方,過去の自己 と現在 の自己,お よび現在 の自己 と理想 自己 との単純相関係数の両群 の 差 は有意で はなかった。

考 察

過去 ・現在 ・予想 ・理想 の自己像得点 は,理想 自己 に関 しては同一性混乱高 ・低群間に有意差がみ られず, その他の自己 に関 してはすべて有意 に同一性混乱低群 の方が高かった ( TABL E l ) 。 また TABLE 3 のパス解析 の結果 において も,予想 自己 は現在 ・過去の自己か ら 有意 なパスを受 けているのに対 して,理想 自己 におい ては過去の自己か らのパスが有意で はなかった。重相 関係数 において も,理想 の自己の重相関係数 は,予想 自己のそれに比 してかな り低い。

予想 自己 は,すでに記 したように過去,現在 の自己 の延長 と定義 され るものであ り,一方の理想の自己 は

「こうな りたい」 という自分 に対する願望である。諸 自己像 の相関関係 はこれ らの性質 を反映 した もの と考 えられ る。 これ らの結果か らは一般的に,過去の自己, 現在 の自己,および予想 自己 は,個人 の生活空間のな かで強い関連性 を持 った 1 本の時間軸上の自己像群 と して存在 しているのに対 して,理想 自己 はそうした直 線 とは比較的関連 の弱い,独立 した存在であることが 考 えられ る。

‑ 9 6

(6)

同一 性混乱の程度 によって分類 した 2 群 における パ ス解析 においては,未来 の自己のうち,予想 自己にお いて仮説 を支持す る結果が得 られた。過去の自己 と現 在の自己が予想 の自己に及ぼす影響力 は,同一性混乱 低群 の方が大 きい ものであ り,現在の自己 と予想 自己 との単純相関係数 には同一 J陸混乱高 ・低群間 において

5% 水準で有意 な差があった.一方,未来の自己の も う 1 つの側面である理想 自己 は,同一 性混乱低群 の方 が過去 ・現在の自己か ら受 ける影響力 は高い ものの, 予想 自己 を基準変数 とした ときと比較すると,その重 相関係数 はかな り低い ものであった。 また,現在 の自 己 と理想 自己 との単純相関係数 について同一 一隆混乱の 高 ・低群間に有意な差 はみ られなかった。 これ らのこ とか ら ,Er i ks o n( 1 9 5 9 ) の指摘するような, 自己の 「 未 来」の概念 に対応するのは,理想 の自己で はな く,個 人が未来 に予想する自己であると考 えられ る。

Le wi n( 1 9 4 2 ) は,時間的展望の発達の 1 つの側面 と して,現実 と非現実の分化 とい う現象 をあげてお り, 個人が成熟 して自己統制がで きるようになることで, 個人 の生活空間が現実の水準 と空想や夢 といった非現 実の水準 に分化す るとしている。その視点か らみれば, 予想の自己 は現実の自分 の延長,すなわち 「 未来 にお

ける現実」であ り,一方の理想の自己 は 「 未来 におけ る理想」である。本研究の結果か らは,未来展望 にお ける理想 と現実 の分化 が, 自我 同一性 の レヴェル に よって異な り,同一性混乱の高群 は,予想 と理想の未 分化な未来の自己 を想定 していることが示唆 され る。

一方,過去の自己の現在の自己への影響力 は,標準 偏 回帰係数の数値で見 る限 りにおいては同一性混乱低 群 の方が高群 よりも大 きい ことが確認 されたものの, 単純相関係数の差 の検定 を行 った結果で は,両群 の差 は有意 には至 らなかった。 この結果 は,現在 の自己 と 過去の自己の関連性 は自我同一 J性確立のレグェルの高 い個人 において強い, と考 えた本研究の仮説 とは一致 しない。

その原因のひ とつ として ,Er i ks o n の指摘 にあるよ うな現在 に強い影響力 を持つ 「 過去」 と,本研究 にお いて指標 とした 「 過去の自己の認知像」 との間に概念 的な不一致があった可能性が考 えられ る. た とえば, 伊藤 ( 1 9 9 1 ) は, 自己受容 の 2 次元性 について検討 し,

自己受容 には評価 の次元 のほかに, もっ と感覚的な好 一嫌の次元があることを指摘 している。 自我同一 性の 前提条件 となるような過去 に対する態度 というものは, 評価 というよりも,過去の自己に対する感覚的な側面

であるのか もしれない。今後, この過去への態度 とい

う問題 は自己受容 という観点か らの再検討の必要があ る。

また, この ことに開通 して,現在の自我 を支 えてい る諸条件 の変化 によって過去 の自己像が変容 す る ( 水 口 , 1 9 8 2 ) ことも考 えられる。このことか らは,自我同一 性 の確立が,現在 に影響 を及ぼ しうるように過去の自 己認知の変容 を導 く機能 を持つ ということも予想 され るであろう。 そうした自己像変容 のプロセスについて の検討 は今後 の課題である。

引 用 文 献

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謝 辞

論文作成 にあた り, ご指導いただいた立教大学 水 口薦治先生, 白梅学園短期大学 神田信彦先生 に深謝 いた します。

( 1 9 9 4. 3. 1 受稿 ,3. 1 9 受理)

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参照

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