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田中英司

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(1)

ドイツにおける地上権の立法史に関する一考察(一)

−BGBの立法過程の段階について−

田中英司

目次

Ⅰはじめに

ⅡBGBの立法過程の段階について

1BGBによる地上権の創設の賛否をめぐって

2BGBにおける地上権の規整と契約自由の原則(以上,本号)

ⅢBGBのもとでの展開の段階について

Ⅳ「地上権令」の立法過程の段階について

Ⅴ結び

I はじめに

本稿は,わが国の借地権に対応するドイツのErbbaurecht,すなわち地上 権を対象とする比較研究に関するものであるが,筆者のこれまでの研究に引

き続く性格を有している。

この点を敷術して言うと,かつて,筆者は,旧赫こおいて,地上権に関す る法源である「地上権令」の法規範構造を一定の視角から分析し,きわめて 興味深い結果を得ていた。すなわち,「地上権令」は,概括的に言って,契 約自由の原則の余地をかなり残しており,地上権は,その内容につき,当事 者の合憲を重視したかなり柔軟な仕組みを有する法制度であること,さらに・

個別的にも,「地上権令」は,特に,地上権の一定の存続期間の保障,およ

(2)

び,契約の更新につき,完全に契約自由の原則に委ねていることである。こ れに対して,きわめて対照的なことであるが,わが国の「借地借家法」は,

強行法的構造をなしており,わが国における借地の法的関係は,周知のよう に,所有権の自由および契約自由の原則という「市民法」原理につき,その 変容が認められるひとつの典型的な領域を形成している。

それでは,何故, ドイツの「地上権令」とわが国の「借地借家法」の法規 範構造ないし法規範の間には,ごのような概括的および個別的な相違点が認 められるのであろうか。この理由をさまざまな角度から考察し解き明かすこ とが,比較研究を深めるためのさらなる課題となる。そして,そのような考 察を積み重ねる過程において,わが国における借地法学再構成の方向の示唆

も得られることになろう。

以上のような基本的な考え方にもとづき,本稿は,必要とされる多角的な 考察のひとつとして, ドイツにおける地上権の立法史に関して考察するもの であるごその際, ドイツ民法典(以下, BGB) の段階までさかのぼり,第 一に, BGB の立法過程の段階,第二に, BGB のもとでの展開の段階,およ び,第三に, I 地上権令」の立法過程の段階という三つの歴史的段階に分け て,考察を進めることにする。なお,わが国における既存の研究を踏まえ,

可能な限り重複を避けること,また,第一次資料を重視することは,いうま でもない。

( 1 ) 拙稿「ドイツ地上権制度比較研究序説付同一借地権の『第二所有権化』現象の観 点によるドイツ地上権令の法規範構造に関する一考察一一」六甲台論集 3 5 巻 3 号

( 1 9 8 8 )   2 0 0 頁以下, 3 5 巻 4 号(1 9 8 9 ) 7 1 頁以下。

( 2 )   なお,同様な考え方にもとづき,地上権制度に関して,若干の基礎理論的考察を行

ったものとして,拙稿「ドイツにおける地上権制度に関する基礎理論的一考察ークノ

ーテの所説に依拠して一」経営と経済 7 4 巻 4 号(1 9 9 5 ) 1 6 1 頁以下がある。

(3)

I I   BGB の立法過程の段階について

それでは,まず,第一に, BGB の立法過程の段階について考察すること から,はじめたい。

1  BGB による地上権の創設の賛否をめぐって

地上権は,一方において,ローマ法上の s u p e r f i c i e s (他人の土地上に建物 を所有しうる物権的な建築権),他方において,中世ドイツ法上の都市のエ ルプライエ(または,ボーデンライエないしバウライエ)を継承する権利と して, BGB によって創設された f しかし, BGB の立法過程においては,

BGB による地上権の創設の賛否をめぐって,かなり鋭い見解の対立が認め られたようである。すなわち, BGB による地上権の創設に対しては,疑念 がなかったわけではなく,相当強い異論も存在していたのである。

それでは, BGB による地上権の創設に賛成した見解と反対した見解は,

それぞれ,いかなる論拠にもとづいていたのであろうか。この点を確認して おくことは, BGB の立法過程の段階において,地上権ないし地上権の先行 形態であった権利に対して,いかなる認識・評価がなされていたかを知るこ

とになる。

( 1 )   BGB による地上権の創設に反対した見解の論拠

まず,反対した見解の論拠の主たるものは,大きく,三つに整理すること ができる,と思われる。

第一の論拠は,地上権が, ドグマ的・法政策的な観点からすると, (土地) 所有権との関係において,非常に問題がある,ということである。すなわち,

地上権(譲渡可能かつ相続可能な物権的な土地利用権)は,土地所有権を継

続的に拘束することになり,無制限な物支配を基準とする理念として, 1 9 世

紀に出現した所有権の観念に反し,地上権を認めることの中には,所有権が

(4)

単なる空虚な権利に変貌するという危険性が見て取れる,ということであ る 。

この点は,物権法についての Redaktor‑ V  o r 1 a g e において, BGB による 地上権の創設に反対した見解の根拠としてまとめられている,次の論述から 読み取ることができる。

すなわち, I より以前のドイツの法発展においては,土地所有権の継続的 な拘束が,土地所有権についてきわめてさまざまな権利を認めることによっ て,個人の意向に,ほとんど無制限に委ねられていたのに対して,学問の発 展,および,国民経済学の実際的な成果によって啓示を与えられた近代の立 法は,文化的に有害な法制度,および,高く評価すべき必要に相応していな い法制度を排除することによって,物権の体系を,可能な限り,簡素化する という傾向に従っている。 BGB の草案もまた,この考え方に立たなければ ならない。過去からわれわれに伝承された法制度は,それらの法制度をかつ て生ぜしめた必要が,今日もなお存在し,立法による考慮に値するかどうか,

入念に吟味されなければならない。 ・・・・物についての制限的な権利を設 定することによって,物に関する所有者の処分は,継続的に麻痔させられる。

したがって,そのような装置を認めることは,それによって,実際の継続的 な必要が満たされる場合にのみ,正当化される。 ・・・・土地の占有を通じ て示される継続的な必要が存在することなしに,他人の土地の利用について の,時間的に制限されていない,相続可能かつ譲渡可能な権利が,ある人に 認められる場合には,事情は異なる。 J ,また, I ヴェヒターの見解によると,

地上権者の地代支払義務は,本質的ではない。したがって, S u p e r f i z i e s と 所有権との聞には,所有権が空虚な名称になることを妨げうる限界は存在し ない。. . . .  S u p e r f i z i e s の内容を所有権の完全な内容まで拡張すること が当事者に許容される・・・・」,)という論述である。

第二の論拠は,地上権が,政治的・イデオロギー的な観点からすると,歴

史的な趨勢に反して,土地秩序の新たな「再封建化」をもたらすのではない

(5)

かと懸念される,ということである。この点は,周知のように,中世のグル ントヘルシャフトにおける分割所有権が, 1 9 世紀の初め以来,土地の耕作者 の下級所有権を完全な所有権へと変質させることによって,廃棄されていっ たことと関係する。すなわち,ライヒに統一的な BGB の中に地上権を創設 することは,土地についての利用権限と所有権との分割を撤廃することに向 けての歴史的な趨勢に矛盾し,いわば新たな種類の封建的な土地秩序が,相 応した経済的,社会的,および,政治的な帰結をともなって生じうるのでは ないかという不安を抱かせる ( 8 ) ということである。

この点も, R e d a k t o r ‑ V  o r l a g e において, BGB による地上権の創設に反対 した見解の根拠としてまとめられている,次の論述から,必ずしも十分では ないが,窺い知ることができょう。

すなわち, r 農村の所有地を永小作によって利用することに,国民経済的 な理由から,かなりの程度,抵抗感がある時代において,敷地としての都市 の土地の利用が,国民経済的に同様に不都合で,そのうえ,これまでまれに のみ取られた,相続可能かつ譲渡可能な Bodenmiete (地上権を指すと考え られる。)という方法へと指し示されてはならない,と思われる。」,

(9)

という 論述である。

第三の論拠は, BGB によって地上権を創設することが,実際的な必要性 の観点からすると,きわめて疑問視される,ということである。

というのは, BGB による地上権の創設に反対した見解は,次のような認 識を示していたからである。すなわち,地上権の先行形態であった権利は,

中世においては,多くの都市で妥当していたが,ローマ法の継受以後,著し

い適用範囲を与えられなかったこと,また,多くの諸邦等の立法が, BGB 

による地上権の創設につき,実際的な必要性が欠けていることを根拠づけて

いたこと,さらに, ドイツの裁判所の判決集において,地上権の先行形態で

あった権利は,散発的なわずかなケースにおいてのみ見いだされたことであ

る 。

(6)

以上のような三つの論拠に依拠していた反対論者の目からすると,要する に , [""地上権は,元来,特に促進されなければならないわけではない制度」

であったのである。

( 2 )   第一草案における起草委員等の見解の論拠

これに対して, BGB による地上権の創設に賛成した見解は,いかなる論 拠にもとづいていたのであろうか。ここでは, BGB による地上権の創設を 支持する決定をなした,第一草案における物権法の起草委員(ヨホフ),お

よび,その補助者の見解を中心として,考察することとする。

ただし,起草委員等の見解の論拠に入る前に,起草委員等は, BGBによ る地上権の創設に反対した見解の論拠に関して,いかなる立場にあったのか,

という点を確認しておかなければならない。

まず,第一の論拠,すなわち, ドグマ的・法政策的な観点からの地上権の 問題性に関してであるが,起草委員等も,同様に,その問題性を認識してい たようである。

というのは,地上権は, [""それが設定された物の所有権を,長い間には,

広範な範囲において弱め,いやそれどころか,消耗する J ,すなわち,所有 権を空洞化する危険性がある,との認識が示されていたからである。また,

地上権の設定により,ひとつの統一的な取引対象としての土地所有権から,

物についての利用権限を切り離すことによって,二つの取引対象がつくられ,

地上権設定契約に従って,所有者と地上権者の間で,権限の分配がなされる ことになるが,このような制度は, [""人工的な制度 J ( k u n s t 1 i c h e s  I n s t i t u t )   である;九表現されていたことの中にも,起草委員は,地上権の設定による 所有権と利用権の分割,それにともなう権限の分配を, ドグマ的・法政策的 な観点から,同様に,否定的に評価していた,ということを窺い知ることが できょう。

次に,第二の論拠,すなわち,政治的・イデオロギー的な観点からの地上

(7)

権に対する懸念に関してであるが,起草委員もまた,同様な懸念を感じてい たようである。

この点は,次の論述から,読み取ることができょう。すなわち. I 内容的 に制限のない,相続可能かっ譲渡可能な,土地についての利用権は,

‑常に,新たに,農業に関する問題を突きつけるであろう。すなわち,この ような利用権をドイツのきたるべき民法上の制度にしようとした場合,農業 に関する立法にとって,新たな課題と困難をもたらすことが問題であった。

草案は,やっとの思いで獲得した,完全な所有権にもとづく農業上の関係に ついての規整を,むしろ,強化しようと努めなければならない。 J . という論 述である。ここには,起草委員もまた,特に,農業上の関係に対する政治的

・イデオロギー的な観点からの地上権に対する懸念,すなわち,地上権が,

いわば新たな種類の封建的な土地秩序をもたらすのではないかという懸念を 感じていたことが現れている,といえよう。

最後に,第三の論拠,すなわち,実際的な必要性の観点、からの地上権の創 設に対する疑問に関してであるが,この点についても,起草委員等は,

BGB による地上権の創設につき,総じて,広範な実際の必要性はあまりな い,という認識を抱いていたようである。

この点については,二つの類型の地上権,すなわち,他人の土地の上に建 物を備えるための地上権と他人の土地の内部に地下の工作物を備えるための 地上権とに分けて,確認しておく必要がある。

まず,他人の土地の上に建物を備えるための地上権についてであるが,起 草委員等は,この類型における地上権ないし地上権の先行形態であった権利 が,従来,散発的にのみ設定されていたのみならず,今後. BGB のもとで もまた,例外的な利用のみがなされるであろう,という認識を示していた。

したがって,この類型における地上権の創設については,実際の必要性はあ まりない,ということになろう。

これに対して,他人の土地の内部に地下の工作物を備えるための地上権に

(8)

ついては,異なる認識が示されていた。すなわち,起草委員は,この類型に おける地上権の創設を認めることは, I ドイツにおいて,まさに不可欠であ ると思われるよ

8)

という認識を示していたのである o というのは,この類型 における地上権の先行形態であった K e l l e r r e c h t と呼ばれた権利が,従来,

ドイツの多くの地域,特に,山岳地帯において,それが国民の経済的な慣習 と一致することを受け入れなければならないほど多数存在していたからであ っ ア こ 。

この K e l l e r r e c h t と呼ばれた権利は,水平に区分された建物の区画である 地下室 ( H a u s k e l l e r ) に関するものではなしその表面を所有者自身が利用 した,建物が建てられていない土地,たいてい岩の多い土地の内部において,

通常,岩石を掘って造られ,山腹から出入りのできる地下室 ( F e l s e n k e l l e r ) を備える権利であり,そのような地下室は,特に,市町村の大規模な土地(市 町村の森林,放牧場)の岩の多い傾斜面に見いだされた J 九いうことである。

以上のように,起草委員は,第二の類型における地上権の創設については,

それが適用される範囲自体は限定的であるが,実際の必要性は高い,と認識 していたのである。しかし,第一の類型における地上権の創設については,

それが適用される範囲自体はかなり広いと考えられるが,実際の必要性はあ まりない,ということであったのであるから,起草委員等は, BGB による 地上権の創設につき,総じて,広範な実際の必要性はあまりない,という認 識を抱いていた,といえよう。要するに,起草委員等は,地上権という法制 度は,実際上,あまり重要な法制度ではない

(2

1)という認識を有していたので ある。

ところで,起草委員等のこのような認識は,もちろん,ひとり起草委員等 の偏った認識であったわけではない,と思われる。

というのは,中世において, ドイツの多くの都市の建設にあたって重要な

役割を果たしていた都市のエルプライエが,中世の終わりに,かつての被委

譲者の所有権となるという形で広範囲にわたって排除され,全く後景に退い

(9)

た後,地上権の先行形態で、あった権利は,以前の時代の単なる残浮を形成し ていたみらである。実際, 1 9 世紀において,地上権の先行形態であった権利 が適用されていた範囲は,法的な事実に関する資料から察知されうる限り,

肉やパンの売庖,比較的小さな居住用の建物,全く単に何らかの付属空間と して使用された物置,ならびに,さきに言及した地下室に限定されていたよ うであるケ)といわれている。したがって, 1 9 世紀においては,地上権の先行 形態であった権利には,取り立てて言うほどの国民経済的または社会的な意 義は,ほとんどなかった,と考えられるのである。

さて,以上,起草委員等は, BGB による地上権の創設に反対した見解の 論拠に関して,いかなる立場にあったのか,という点を検討してきた。まと めてみると,起草委員等もまた, ドグマ的・法政策的な観点からの地上権の 問題性を認識し,政治的・イデオロギー的な観点からの地上権に対する懸念 を感じ,ならびに, BGB による地上権の創設につき,総じて,広範な実際 の必要性はあまりない,という認識を抱いていたのであるから,反対した見 解の論拠に関して,基本的に同じ立場にあった,ということができる。した がって,起草委員等は,原則として,反対論者と同ーの諸前提から広範に出 発し,そこから,異なる結論を引き出した;九いうことになる。この点には,

十分留意しておく必要があろう。

それでは,起草委員等は, BGB による地上権の創設につき,一体,いか なる論拠にもとづいて理由づけたのであろうか。

起草委員等の見解の論拠は,主として二つある,と考えられる。

すなわち,一方において,起草委員等は,確かに, ドグマ的・法政策的な

観点からの地上権の問題性を認識し,政治的・イデオロギー的な観点からの

地上権に対する懸念を感じていたのであるが, しかし,実際に地上権が設定

されることは,従前どおりに,今後もまた,例外的な場合に限られると予想

されることにもとづくと,そのような問題性ないし懸念は,重大な程度に至

ることはなく,心配するには及ばない,ということを論拠としていたのであ

(10)

(29

包草委員等は,ここでは,反対論者の第三の論拠をいわば逆手に取って,

BGB による地上権の創設につき,肯定的な結論を導いたのである。

他方において,起草委員等は,確かに, BGB による地上権の創設につき,

総じて,広範な実際の必要性はあまりない,という認識を抱いていたのであ るが,しかし,同時に,限定された範囲においては,実際の必要性が認めら れる場合がある,ということを論拠としていたのであるご限定された範囲に おいて実際の必要性が認められる場合としては,すでに述べた,他人の土地 の内部に地下の工作物を備えるために地上権を設定する場合がそうであった が,起草委員等は,それに加えて,他人の土地の上に建物を備えるための地 上権についても,そのような場合が確かに存在する,というのである。

起草委員等により,他人の土地の上に建物を備えるための地上権について,

実際の必要性が認められる場合として考えられていたのは,次の場合である。

すなわち,第ーには, i その敷地が,公的な団体のものであり,若しくは,

家族世襲財産である場合,または,その他の理由から,土地についての所有 権を維持することに価値が置かれる場合 1 3 ) である。つまり,土地所有者が,

建物のための所在地として自己の土地を利用する際に,地上権者に土地を譲 渡することがなく,土地が自己の財産にとどまることに利益を見いだす場合 である。

第二には,他人の土地の上に建物を備えるために,その土地を利用すると いう事業が,確固たる経済的な基礎の上に置かれている場合である。この場 合には,そのような事業を行う者は,継続性については所有権に匹敵すると される,譲渡可能かつ相続可能な土地利用権である地上権を必要とする,と いうことであろう。

以上のような場合においては, BGB による地上権の創設につき,限定さ れた範囲ではあるが,実際の必要性が確かに認められ,このような考えが,

結局,起草委員等に,決定的な影響を与えた,と考えられる。すなわち,こ

れらの場合を考慮すると,地上権という法制度を全く創設しないで済ますこ

(11)

とはできない,と

d

思われたのである。

なお,起草委員等は, BGB による地上権の創設につき,副次的に,次の 論拠も付け加えていた。

すなわち,第ーには,当時の現行法が,法学的な構成に関しては相違があ るが,ローマ法上の s u p e r f i c i e s に相応する権利の創設を認めていた,とい うこと,第二には,土地に継続的な負担を加えることに対する近代の立法の 反感は,地上権の先行形態であった権利には及ばなかった

(39)

ということであ

る 。

以上,起草委員等の見解の論拠をみてきたが,全般的に言うと,起草委員 等は, BGB による地上権の創設につき,あまり積極的な論拠にはもとづい ていなかった,ということができょう。

( 3 )   拙稿・前掲注( 1 ) 3 5 巻 3 号 2 1 1 ‑ 2 1 2 頁 。

( 4 )   R e i n h o l d  Johow ,  En

似IU

ゲe i n e sb u r g e r l i c h e n   G e s e t z b u c h

f u r ぬ sD e u t s c h e  R e i c h . … .   B u c h .   S a c h e n r e c h t .  B e g r n n d u n ι V o r l a g e  d e s  R e d a k t o r s ,  Z w e i t e r  Band ,  1 8 8 0 ,  S .  1 0 7 2 . なお,周 知のように,ヨホフは, BGB の第一草案において,物権法の起草を担当した委員であ った。大木雅夫『比較法講義~ (東京大学出版会, 1 9 9 2 ) ,  2 1 9 頁 。

( 5 )   Hans ‑G e o r g  Knothe ,  Das E r b b a u r e c h t  E t ' n e  r e c h t s d o g m a f t ' s c h e  und r e c h t s t o l t ' f t ' s c h e   U n t e r s u c h u n g ,  1 9 8 7 ,  S .  6 2 f . ,  6 4 .  

( 6 )   Johow(Fn. 4) ,  S .  1 0 8 5 f .   ( 7 )   Johow(Fn. 4) ,  S . 1 0 8 7 .   ( 8 )   Knothe ( F n .  5    , ) S .  6 3 ,  6 4 .   ( 9 )   Johow(Fn. 4) ,  S .  1 0 8 8 .  

(1~ Johow(Fn. 4) ,  S . 1 0 8 6 f .  ;  vg l .  K n o t h e ( F n .  5) ,  S .  6 5 .  

( 1 1 )   Benno Mugdan ,  D i e  g e s a m t e n  M a t e r i a l t ' e n  zum B u r g e r l t ' c h e n  G e s e t z b u c h  f u r  d a s   D e u t s c h e  R e i c h ,  m .   Band :  S a c h e n r e c h t ,  1 8 9 9 ,  P r o t o k o l l e ,  S .  3 8 4 5 .  

~~ Mugdan(Fn.ll) ,  M o t i v e ,  S .  4 6 6 .  

~~ Johow(Fn. 4) ,  S .  1 0 8 6 .  

(12)

(1~ Knothe ( F n .  5) ,  S .  6 5 .  

~5) この点については,第一草案は,最終的には,地上権の内容を,建物,または,地 下の工作物を備えるための土地についての利用権である,という形で限定することに なる(J ohow(Fn.4 ) ,  S .  1 0 9 0 . ) が,このような内容的な制限に関しては,特に,農業 上の関係に対する政治的・イデオロギー的な観点からの地上権に対する懸念が,強く 影響していた,と考えられる。

帥 Johow(Fn.4) ,  S .  1 0 6 9 f .  

制 Johow(Fn.4) ,  S . 1 0 9 0  ;  Mugdan(Fn. l 1 ) ,   M o t i v e ,  S .  4 6 7 .  

(1~ Johow(Fn. 4 ) ,  S . 1 0 9 0 .   ( 1 9 )   Johow(Fn. 4 ) ,  S .  1 0 9 0 .  

制 Johow(Fn.4) , S . 1 0 9 0 ;  Kn o t h e ( F n .  5) , S . 6 1 .   制 Mugdan(Fn. l 1 ) , M o t i v e ,  S .  4 6 8 .  

伺 Knothe ( F n .  5) ,  S .  6 2 ; 拙稿・前掲注 ( 1 ) 3 5 巻 3 号 2 1 1 ‑ 2 1 2 頁 。

~3) BGB による地上権の創設に反対した論者によると,これらの売庖は,公共の広場や 教会の周囲を狭め,かつ,外観を損ねている,と非難されていた。 Johow(Fn.4) ,  S .  1 0 8 8 .   糾 Knothe( F n .  5) ,  S .  6 l f .   ,  7 6 .  

制 Knothe ( F n .  5) ,  S .  6 2 . クノーテによると,地上権の先行形態であった権利が法学文 献において存続していたことは,実際の必要よりも,ローマ起源に対する長敬の念に もとづいていた ( K n o t h e( F n .  5) ,  S .  6 2 .   ),とのことである。なお,地上権の先行形態 であった権利が,当時,実際上,あまり重要な法制度ではなかったとの認識は,たと えば, R u d o l f  von J h e r i n g ,  S c h e r z  und E r n s t  i n  d e r  f u r i s t r u d e n z ,  Z w o l f t e  A u f l a g e ,  1 9 2   , 1 S .  2 8 0 ;  H .  Erman ,  " E r b b a u r e c h t  und  K 1 e i n w o h n u n g s w e s e n " ,  f a h r b u c h  d e r  B o d e n r e f o n n ,  V i e r t e r  Band ,  1 9 0 8 ,  S .  2 9 1 においても見受けられる。

制 ただし,他方において, ドイツのある地域においては,地上権の先行形態であった 権利が,特記すべき数で設定されていた,との認識も示されている。たとえば,

M i c h a e l i s , Das E r b b a u r e c h t  und s e i n e   Z u k u n f t " ,  Z e n t r a l b l a t t  f u r  f r e i w i l l i g e   G e r i c h t s b a r k e i t ,  N o t a r i a t  und Z w a n g s v e r s t e i g e r u n g ,  1 9 .  J a h r g a n g ,  1 9 1 9 ,  S .  l f .  

伺 Knothe( F n .  5) ,  S .  6 5 .  

(13)

制 J o h o w ( F n .4) ,  S . 1 0 9 0 ;  Mugdan(Fn.ll) ,  M o t i v e ,  S .  4 6 7 .   帥 Vg 1 . Kn o t h e ( F n .  5) ,  S .  6 5 .  

~o) Vg 1 .   K n o t h e ( F n .  5) ,  S .  6 5 .  

例法律行為によって永久に処分を制限され,通常一定の相続順位により一定の者が相 続すべき旨を定められた財産のこと。後にワイマール期において,廃止された。山田

昆『ドイツ法律用語辞典~ (大学書林,改訂増補版, 1 9 9 3 )   2 2 4 頁 。

~~起草委員によると,大土地所有者は,自己の所有地の上に居住している労働者階級

を有し,同時に,その労働者階級が自己に全く依存していないプロレタリアートに堕 落することを回避することに利益がある(J ohow(Fn.4 ) ,   S . 1 0 9 0 . ) ,とのことである

0

~~ J o h o w ( F n .  4) ,  S .  1 0 9 0 .  

~4) Mugdan(Fn.ll) ,  M o t i v e ,  S .  4 6 6 .   制 Mugdan(Fn.l 1 ) , M o t i v e ,  S . 4 6 6 .  

~~ V  g 1 .   Knothe ( F n .  5) ,  S .  6 5 .   的 Knothe( F n .  5    , ) S .  6 6 .  

~~ Mugdan ( F n .  1 1 ) ,   M o t i v e ,  S . 4 6 6 .  

~9) Mugdan(Fn.ll) ,  M o t i v e ,  S . 4 6 6 .  

帥 Hermann Wittmaack ,  Das E r b b a u r e c h t  d e s  B u r g e r l i c h e n  G e s e t z b u c h s ,  1 9 0 6 ,  S .  1 5 にお いては, r w 理白書』の詳しい説明は,全般的に地上権を認めることについての,ほと んど言い訳のように聞こえる。 J ,と述べられていた。

2  BGB に お け る 地 上 権 の 規 整 と 契 約 自 由 の 原 則

さて, I I   1 における考察により, BGB の 立 法 過 程 の 段 階 に お い て , 地 上

権 な い し 地 上 権 の 先 行 形 態 で あ っ た 権 利 に 対 し て , い か な る 認 識 ・ 評 価 が な

されていたかを,おおむね理解することができた,と考えられるが,そのこ

とを前提として,次に, BGB に お い て は , 地 上 権 は ど の よ う に 規 整 さ れ て

いたのか,特に,契約自由の原則の余地はどの程度認められていたのか,と

いう点を考察してみることとする。

(14)

( 1 )   概括的な特徴

まず, BGB における地上権の規整の概括的な特徴を押さえておきたい。

I I   1 において考察したように, BGB の立法過程の段階においては,地上 権ないし地上権の先行形態であった権利に対して,基本的には,控えめな評 価(起草委員等),ないし,拒絶的な評価(反対論者)が支配していた,と いいうるが,このような基本的な評価は, BGB における地上権の規整に,

著しく影響を及ぼした,と考えられる。

具体的には,次の二つの概括的な特徴に,そのことが現れている,といえ よう。

すなわち,第ーには, BGB における地上権の規整が,きわめて簡潔・不 十分なことそある。というのは, BGB は,単に六か条(1 0 1 2 条ないし 1 0 1 7

条)のみをもって,地上権を規整したからである。このことは,まさに,地 上権は, BGB の体系において,例外的に認められた権利であるこ立弘顕 著に示している,と考えられる。

しかし,この不十分さを理由として BGB の起草者たちを非難することは,

BGB の立法過程の段階における状況をほとんど考慮、していないことになる,

といわれている。というのは,地上権が, ドグマ的・法政策的に憂慮すべき であり,ならびに,実際の重要性が乏しいことについての確信は, BGB の 起草者たちの特別な偏狭さにもとづいていたのではなく,むしろ, 1 9 世紀の 間 , ドイツの内外において,一般に支配的であったのであり,比較可能な法 典編纂事業が,地上権に相応した権利を,より不当に軽んじていたからであ る。たとえば,フランス民法典,および,たいていのその子法には,このよ うな法制度は,全く知られていなかったし,ザクセン民法典,および,最初 の文言におけるスイス民法典は,このような権利を,唯一の規定においての み,規整していた,とのことである。

第二には,すでに注刊において触れたように, BGB においては,地上権

の権利の内容は,広範に認められたのではなく,建物,または,地下の工作

(15)

物を備えるための土地についての利用権である,という形で限定されたこ とである。

「これに対して,今後は,建物の一区画,たとえば,階層,地上若しくは 地下の個々の小部屋,若しくは,若干の小部屋,または,井戸,坑,壁等々 のような個別的な施設,または,栽培地に限定される地上権は,認められな いことになった。 J ,のである。

さて, BGB における地上権の規整の概括的な特徴としては,ここで,さ らに,もうひとつの点を指摘することができる。

それは, BGB においては,地上権の権利の内容につき,建物,または,

地下の工作物を備えるための,譲渡可能かっ相続可能な権利である,という 形で規定された以外の点においては,契約自由の原則の余地が広範に認めら れていたことである。この点については,項目を改めて,考察することとす る 。

( 2 )   契約自由の原則の余地

ここでは,起草委員等の論述を整理しながら,考察を進めたい。

まず,全般的には,次のようである。

すなわち, BGB においては,地上権の権利の内容につき,たとえば, I 用 益権の内容と同じように,当事者が場合によってはあり得る法定内容の制限 についてのみ合意しなければならないというほどに,法定されてはいな い。」。したがって, BGB においては,地上権の権利の内容は, I それぞれの 個別的な場合において,権利の設定の際に行われる確定にもとづいて,定め られる了)ことになり,権利の内容につき,契約自由の原則の余地が広範に認 められていたのである。

その結果, I 地上権の約定内容は,きわめて細目にわたりうる」)ことにな り , I 地上権の設定は,それによって取引対象が新たにつくられ, しかも,

それは,その内容にかんがみても,設定者たちの任意によって定められる取

(16)

引対象であるという特質を有する。 J ,といわれたのである。

ただし, BGB が,地上権の権利の内容につき,契約自由の原則に広範に 委ねたことについて,起草委員等の論述から,その積極的な理由を見いだす ことはできないようである。この点には,十分留意しなければならないであ ろう。

次に,この点も全般的なことであるが, BGB においては,地上権の権利 の内容につき,当事者の契約上の意思表示を補充する任意規定もまた,置か れなかった。

起草委員等によると,その主たる理由は,次のように述べられていた。

すなわち, i 地上権の権利の内容を法定することは,その確定によって,

圧倒的な大多数の場合における当事者の意図が,適切に表現され,したがっ て,権利に認められうる内容に関する一致が,法取引において明らかである ことを前提とするであろう。(しかし)そのような一致は見られない。これ についての理由は,地上権の内容につき,地上権者の権限の平均的な基準を 確定することを妨げている,非常に緩やかに設定された法律上の枠組みが存 在することにある。とりわけ,地上権は,場合によっては物権的な賃借権の 代わりとして利用される,時間的に限定された権利としても,時間的に限定 されていない権利としても設定されうること,さらに,地上権者には,とき には,建物を建てるための敷地の利用のみが,ときには,すでに建てられた 建物の利用が委ねられることが考慮されるのである。」 f 2 ) とのことである。

ここでは, BGB が,地上権の権利の内容につき,契約自由の原則に広範 に委ねた結果,権利の内容に関して,法取引において,一致した取扱いがな されず,権利の内容を確定することができないことが,理由とされていた。

しかも,契約自由の原則の余地が広範に認められていたこと自体については,

ここでも,その積極的な理由は見いだされないのであり,むしろ,いささか 否定的な評価が窺われるようである。

最後に,個別的には, BGB においては,地上権の一定の存続期間の保障,

(17)

契約の更新,ならびに,投下未償却資本の回収につき,全く規定が設けられ ることはなく,完全に契約自由の原則に委ねられていた。

このうち,起草委員等によって明示的に論じられていたのは,筆者の知り うる限り,地上権の存続期間についてのみであり,契約の更新,ならびに,

投下未償却資本の回収については, BGB の立法過程の段階においては,特 に問題とされることもなかったようである。そこで,ここでは,地上権の存 続期間についてのみ,考察することとする。

BGB においては,地上権の一定の存続期間を保障する規定,すなわち,

契約に期間の定めがない場合の存続期間の規定,および,契約で定めうる最 短存続期間の規定は,存在しなかった。また,他方において,契約で定めう

る最長存続期間の規定も,置かれなかったのである。

まず,最長存続期間の規定が置かれなかった理由は,起草委員等によると,

次のようである。

すなわち,第ーには,地上権の先行形態であった権利は, r 散発的にのみ 見いだされ,通常,比較的わずかな土地にのみ設定されている。したがって,

地上権は,その存続期間を限定しないことの経済的な影響に関して,農業上 の負担と比較することはできない。」?のとのことである。つまり,地上権の先 行形態であった権利が実際に設定されることは,例外的な場合に限られたの であるから,土地所有権の継続的な拘束を阻止するために,地上権の最長存 続期間の規定を設ける必要はない,ということである。

第二には, BGB の立法過程の段階における現行法によると,地上権の先 行形態であった権利は, r 永久に,または,時間的な限定をもって,設定さ れうる。」(?とされていたが, r ドイツにおいては,限定された期間において,

地代と引き換えに,建物を建築する目的で土地を委譲することは,全く,一 般に行われていない。」?のとのことである。

第三には,最長存続期間の規定を設けるとすると,地上権は,経済的に,

イングランドのリースと同等となり,それに対しては,重大な懸念が生じ

(18)

(56)

とのことである。この点は,イングランドにおいては,そこで一般に行 われていた 9 9 年のリースに関して,大土地所有者の地代の不当利得,および,

建築投機家の賃料の不当利得という,都市や地方の住民を搾取する二重の不 当利得が生じ,きわめて悲惨な経験がなされた,との認識にもとづいていた のである。

これに対して,最短存続期間の規定が設けられなかった理由は, BGB の 第一草案の『理白書』によると,次のようである。

すなわち,第ーには, I 短期の存続期間の地上権は,草案が知らない物権 的な賃借権の代わりとして,用いることができる。」?)とのことである。

第二には,解除条件,または,終期を付加した地上権を設定することは排 除されえないのであるから,最短存続期間の規定を置くことは, (あまり意 味がないこととなり),断念されるであろう?とのことである了)

) 1 K n o t h e ( F n .  5 ) ,  S .  6 4 .  

制 K n o t h e( F n .  5) ,  S .  6 6 .  

制 Mugdan(Fn.ll) , M o t i v e ,  S . 4 6 6 .   例以上, K n o t h e ( F n .  5 ) ,  S .  6 6 .   制 J o h o w ( F n .4 ) ,  S . 1 0 9 0 .   同 J o h o w ( F n .4 ) ,  S . 1 0 9 0 .   制 Mugdan(Fn.ll) , M o t i v e ,  S . 4 7 1 .   同 J o h o w ( F n .4 ) ,  S . 1 0 9 9 .   制 Mugdan(Fn.ll) , M o t i v e ,  S . 4 7 2 .  

$~ J o h o w ( F n .  4) ,  S .  1 0 9 8 .  

制 Mugdan(Fn.ll) , M o t i v e , S . 4 7 3 ;  J o h o w ( F n .  4 ) , S . 1 0 9 8 .   倒 Mugdan(Fn.ll) , M o t i v e ,  S . 4 7 3 .  

制 Mugdan(Fn.ll) , M o t i v e ,  S . 4 6 7 .  

$~ J o h o w ( F n .  4) ,  S .  1 0 9 5 .  

(未完)

(19)

$~ J o h o w ( F n .  4) ,  S .  1 0 9 5 f .  

$~ J o h o w ( F n .  4 ) ,  S . 1 0 9 5 f .   制 J o h o w ( F n .4 ) ,  S . 1 0 9 6 .   制 Mugdan(Fn.ll) , M o t i v e ,  S . 4 6 7 .  

$ 9 )   Mugdan(Fn.ll) ,  M o t i v e ,  S . 4 6 7 .  

帥 なお,起草委員・ヨホフは,最短存続期間の規定につき, w 理白書』とは異なる見解

であったようである。すなわち,ヨホフは,一方において,普通法上の実務において

一定の最短存続期間が維持されていたことは証明できないし, ドイツ,ならびに,ベ

ルギー,オランダの法典においても,最短存続期間の規定は置かれていなかった,と

いう認識を示していたが,他方において,賃借権の最長存続期間が規定されることを

前提として,その最長存続期間を超える期間を地上権の最短存続期間として規定する

ことが得策と思われる,という趣旨のことを述べていた。 J o h o w ( F n .4 )   ,  S . 1 0 9 5 ,  1 0 9 7 .  

参照

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