別紙様式
1
(修士申請者用)修 士 学 位 論 文
フィードバックの内容が練習効果に
与える影響について ー不安の程度による検討−
(注:学位論文題名が英語の場合は和訳をつけること)。
(西暦) 2015 年 1 月 7日 提 出
首都大学東京大 学院
人間健康科学研究科博士前期課程人間健康科学専攻 理学療法科学域 学修番号 : 13895607
氏 名 : 立 花 貴 弘
[要旨}
特性不安の高い者に与える
FeedBack(FB
)が練習効果に及ぼす影響を検討した.対象は 健常成人29
名とし,状態特性不安検査の特性不安の点数により高不安群・対照群に分け,さらに
FB
の内容から各群をP o s i t i v eFB
群・N e g a t i v eFB
群に分けた.練習課題は長下 肢装具装着100m
歩行とし,評価課題は長下肢装具装着50m
歩行とM u l t i ‑ T a r g e tS t e p p i n g T e s t
を練習課題前・後に実施した.練習前テスト前に両群に予期不安を生起させるようなFB
を与え,練習後テスト前に群分けに応じたFB
を与えた.練習前テストで高不安N e g a t i v e
群は対照N e g a t i v e
群と比較して交感神経活動の指標であるLF/HF
値が高く,その後も高不安群は対照群と比較して高値で推移した.このことから不安が高い者にプレ ッシャーとなるような
FB
を与えることは,交感神経活動を高め,練習効果に影響を与え る可能性が示された.[キーワード]フィード、パック,不安,自律神経活動,練習効果
[背景と目的]
不安とは,対象のはっきりとしない漠然とした恐れを感じている状態を指す.それが過 度になった状態が不安障害である.疫学調査において,何らかの不安障害の生涯有病率は
9.2%
であることが報告されており 1),身近な障害であるといえる.理学療法を行う中で不安や恐怖が動きに影響を与えている場面がみられる.例えば,大 腿骨頭部骨折の症例で過去に立位姿勢をとり患側下肢で支持した時に疹痛を生じるような 経験をした場合,同様の動きを行う時に不安や恐怖心が惹起され,必要以上に健側下肢や 上肢で支持しようとしてしまう.それによって,結果と して患側下肢により一層ストレス が加わることになり,疹痛は増強することがある.これに対する対処方法として,立位姿 勢以外で主働筋と措抗筋のインバランスの調整,関節運動の協調性の誘導等,様々なアプ ローチにより患側方向への重心移動を促すことや,実際の立位姿勢にて徒手的に誘導する こと,歩行補助具の使用にて動きの補助を行い,不安を軽減することで動作の改善を図る 方法が行われている.不安に対するアプローチとして,先行研究では,虚弱高齢者を対象 に加速度計を用いて,支持物なし立位と平行棒内(接触しなし、)立位との
2
条件で姿勢動 揺を測定した研究2)や,不安定環境下で難易度の高いバランス保持能力を獲得する運動学 習課題において, 他動的介助下群,能動的支持群(杖を使用),非介助下群の3
条件で比 較する研究3)が行われている 前者では,支持物なし立位では平行棒内立位と比較して, 実効値面積(Root Means Square
)が有意に大きくなっており,内省報告でも支持物なし立 位では「怖し、」とか「不安Jなどの陰性の報告が目立ち,平行棒内立位では 「安心」や「落 ち着く」などの陽性の報告が目立った.また
,後者では他動的介助下群,能動的支持群で 練習を実施した群において,有意に立位保持時間の延長を認めた.これらより,不安を軽 減した環境での学習はパフォーマンスの向上に繋がることが推察される.
不安の状態を評価する方法として,状態・特性不安検査(
S t a t e ‑ T r a i tA n x i e t y I n v e n t o r y :
以下STAI
)や顕在性不安尺度(M a n i f e s tAnxiety S c a l e
:以下MAS
)などがある.STAI
はSp i e l b e r g e r
によって詳細に検討され体系づけられたもので,状態不安と特性不安を測 定することを目的に作成された.状態不安は,不安を喚起する事象に対する一過性の状況反応であって,その時々により変化し,脅威であると知覚された場面では,状態不安の水 準は高くなるが,危険性が全くないもしくはほとんどない場面では,状態不安は比較的低 いとされている. 一方,特性不安は,普段のいつもの自分に当てはまる不安の程度であり,
脅威を与えるさまざまな状況を同じように知覚し,そのような状況に対して同じように反 応する傾向をあらわし,不安傾向の比較的安定した個人差を示す4).
STAI
を評価指標として用いた研究では,STAI
の特性不安が高い者の方が開眼条件の立 位保持で重心動揺は減少したという報告5)などがあり,不安の強さの程度がパフォーマン スに何らかの影響を与える可能性があると考えることができる.パフォーマンスと不安と の関係については,不安を与えることによりパフォーマンスを向上させ,その結果学習が 促進されることを示している報告 6)7)や,それとは反対にプレッシャーによりパフォーマンスが低下するという報告もある 8)_不安はパフォーマンスを向上させることもあれば,
低下させることもあると考えられているが,不安は個体生存のために必要な基本的情動で あり,本来は適応的である. 一方で実際に危険がないときに強すぎる不安は不必要に反応 を抑制し,結果として生活を妨げる.しかし強すぎる状態になる前に適度な状態に戻すこ とができるならば生活に支障をきたすことはないといわれている 9).そのため,理学療法 場面における理学療法士の言語的な
FeedBack
(以下FB
)の工夫により,不安が強し、者 で、あっても適切に学習は進んでいくと考える.学習と
FB
の関係性について,FB
の頻度やタイミング,注意の向け方に関する研究は 数多く行われている 10)が,FB
の内容(P o s i t i v eFB
やNega t i v e FB
)が与える影響につ いて検討した研究は少ない. そこで本研究では,運動課題遂行時に特性不安の高い者に対して理学療法士の与える
FB
が練習効果に及ぼす影響について検討した.[方法
1
1 .
対象健常成人
29
名(男性1 0
名,女性1 9
名)とした平均年齢 (平均値土標準偏差)は23 . 9
± 1 . 9
[歳l
,身長 (平均値±標準偏差)は164 . 0 ± 6 . 0[ c m
],体重(平均値±標準偏差)は5 6 . 2 ± 6 . 1 [ k g
]で、あった.取り込み基準は(1
)身長が150 1 7 5 [ c m
]の者,(2
)既往に下肢の整 形外科疾患がない者とした.除外基準は,HF
値・LF
庄町値が各群の平均値の2SD
以上 のもの,自律神経指標の活動傾向が他の対象者と異なるものとした.群の分類は,1
日目 に実施したSTAI
の点数よりSTAI
マニュアルをもとに,高不安群(標準得点55
点以上)と高不安群以外(標準得点
54
点以下,以下対照群)に分けた.さらに各群をFB
の内容に より無作為にP o s i t i v e FB
群とN e g a t i v e FB
群の2
群に分けた.なお,本研究は平成26
年度首都大学東京荒川キャンパス研究安全倫理審査委員会の承認(承認番号 :1 4 0 49
)を 得て実施した.
対象者には研究参加に際し研究内容について書面および口頭で十分な説明を行い3 署名にて同意を得た.
2 .
実験手順(図 1,2 )
実験は
2
日間に分けて実施した.1
日目はSTAI, MAS , S t r e s s Coping I n v e n t o r y ( . 0 ,
下S C I )
を実施後,2
日目の実験手順を確認するために, 金属支柱付き長下肢装具を着用し− 装 具 な し で お 多 1 1 速 度
・ M T S T 課 題 図 1 研 究 デ ザ イ ン ( 1 日 目 )
ない状態で,評価課題を実施した.
2
日目はSTAI
を実施した後,教 示を与え,評価課題を実施した.その後,事前に分けた群に応じて
FB
を与え,練習を実施した後,再度評価課題を実施した.なお心 拍数は実験開始から終了時まで測 定し,唾液アミラーゼ値の測定は 実験開始時,
STAI
実施後,実験 終了時に測定した.質問紙への回苔
︷ 女 静 −
ST
Ai
実施
3 .
練習課題P o s i t i v e FB ・ N e g a t i v e FB
を与 えた後,練習課題として,金属支 柱付き長下肢装具を着用しての100m
歩行を実施した.4 .
教示・FB
内容教示は予期不安を惹起するため に,練習前の評価課題を実施する 前に「目標タイムがある」ことと,
「多くの者は目標タイムに到達する」ことを口頭と紙にて伝えた.また,練習前の評価課 題実施後の
FB
としてP o s i t i v eFB
群には「目標タイムにほぼ近づいているのでその調子 であと1 0 0 m
練習してくださしリ,N e g a t i v e FB
群には「目標タイムにまったく達してい ないので,装具を着用してあと1 0 0 m
練習してくださしリと口頭と紙にて伝えた.片山ぷ s J
デザイン( 2 ぷ 日顎)
5 .
評価課題金属支柱付き長下肢装具を着用した
50m
歩行(以下50m
歩行) と長下肢装具を着用し てのM u l t i ‑ T a r g e t S t e p p i n g T e s t
(以下MTST
)を練習課題の前・後で実施した(練習前 テスト・練習後テスト).MTST
は転倒を予防するために開発されたエクササイズ 11)で,10m
の歩行区間にターゲットを1 5
個(赤・青・黄)配置し,指定されたマーカーをでき るだけ速く踏みながら歩く課題である.長下肢装具をつけてまっすぐ歩くのではなく,色 を選択しつつ歩く転移課題として実施した.6 .
不安の測定指標(1)質問紙
STAI
とMAS
を実施した.STAI
の検査は状態不安・特性不安それぞれ20
項目の質問 から構成され,各項目に対して感情の強さを最もよく表しているものを数字の中から選び,丸で囲む形式にて実施される.それぞれの数字は,状態不安は 「
1
全くあてはまらないJ「2 いく分あてはまる
J
「3 かなりよくあてはまる」「4:非常によくあてはまるJ
を表し,特性不安は 「
1
:ほとんどなしリ 「2
:ときどきある」「 3
:たびたびあるJ
「4
:ほとん どいつも」を表している.MAS
は個人が抱く不安すなわち身体的,精神的な不安で明ら かに意識されるものを測定し,その不安の程度を明らかにすることを目的とした 12)質問 紙である.50
項目の質問から構成され, 「そう」 「ちがうJの
うち当てはまるもの選ぶ形式 で実施される.( 2
)生理学的指標心拍数と唾液アミラーゼ活性値を測定した. 心拍数測定は
P o l a rRS800 ( P o l a r
社製), 唾液アミラーゼ活性値測定は唾液アミラーゼ、モニター(ニフ。ロ社製)を使用した7 .
その他の測定指標SCI
と実験終了後に質問紙にて実験中の内省を聴取した.SCI
はストレスに対してどの ような反応・対処の傾向があるかをとらえる方法として開発されたもの 13)で,64
項目の 質問から構成され,最近体験した「強し、緊張を感じた状況」とその対処の仕方について「あ てはまる」「少しあてはまる」「あてはまらなしリの中から選ぶ形式で実施される.本研究 では課題に対して取り組む思考過程を評価する目的で実施した.質問紙の内容は① 「練習 中にどういう点に注意しつつおこっていたか?」,② 「フィードパックを受けた後にどのよ うに感じましたか?またそのあと練習にどのように取り組もうと考えましたか?」の2
項 目とした.8 .
データの解析方法と統計方法安静時の唾液アミラーゼ活性値を
1
として,練習後テストの値の比率で算出した.また,P o l a r RS800
により得られた心拍数をP o l a rPro T r a i n e r 5
へ転送し,周波数分析1 4
)を行 い,低周波成分(0 . 0 4 ‑ 0 . 1 5, low f r e q u e n c y
:以下LF
)・ 高周波成分(0 . 1 5 ‑ 0 . 5 0 H z; h i g h f r e q u e n c y :
以下HF
)のパワー値ならびにLF 厄 F
比を求め,安静時を1
として練習前テ スト,練習後テスト,終了時の値を比率で算出した.それぞれで得られた
50m
歩行時間,MTST
実施時間, 唾液アミラーゼ活性値,HF
値,LF/HF
値について対照P o s i t i v e
群,対照N e g a t i v e
群,高不安P o s i t i v e
群,高不安N e g a t i v e
群の4
群問 ・各群内にて比較を行った.4
群間の比較には特性不安の高さを一要因,フィ ード、パックの内容の違いを一要因としたこ元配置分散分析を行った.各群内の比較には50m
歩行時間・MTST
実施時間においては練習前テス ト・練習後テス トの値,HF
値・LF/HF
値においては安静時・練習前テスト後・練習後テスト後・終了時の値を一元配置分散分析と多重比較法(恒
1 k e y
法)を行った.なお統計ソフトはSPSS. Ver22(IBM
社製)を使用 し,有意水準は5 %
とした.[結果
1
1 .
各群の特性STAI
を実施した結果,高不安群は14
名(P o s i t i v e FB
群7
名,Ne g a t i v e FB
群7
名)で,STAI
の特性不安の得点(平均±標準偏差) は6 1 . 1 ± 5 . 1
点3 状態不安の得点 (平均士標準 偏差)は5 1 . 9 ± 6 . 6
点,状態不安の設問である「緊張しているJ
の項目に対する点数(平均±標準偏差)は
2.1±0.9
点であった.対照群は15
名(P o s i t i v e FB
群8
名,NegativeFB
群7
名)で,STAI
の特性不安の得点(平均±標準偏差)は48.2±5 . 2
点,状態不安の得 点(平均±標準偏差)は43.3±6.1
,「緊張しているJ
の項目に対する点数(平均±標準偏 差)は1 . 6 ± 0 . 6
点であった.各群間で年齢・身長・体重・5 0m
歩行時間(1
日目)に有意 差はなかった.2 . STAI
の信頼性・妥当性STAI
の一日目と二日目の点数の級内相関係数は0.90
であり,MAS
不安尺度との相関 はr= 0 . 6 6 ( p <0.01)
であった.
3 . 50m
歩行時間(表1 )
群間比較では,主効果・交互作用 ともに有意で、なかった.群内比較で は練習前テストと練習後テスト間で,
全ての群において
50m
歩行時間は 短縮しており,対照P o s i t i v e
群,高 不安P o s i t i v e
群,高不安Negative
群は練習後テストで有意な50m
歩 行 時 間 の 短 縮 を 認 め た ( 対 照表1練習前後における50m歩行時の歩行時間
平勾(so)
練習前テスら 練習後テスト 対照P
o s i t i v e( n = 8 ) 3878 ( 4 0 5 ) 3 5 3 4 ' ( 3 3 4 )
対照Ne g a t i v e ( n = 7 )
高不安
P o s i t i v e ( n = 7 )
高不安N e g a t i v e ( n = 7 )
:
GJ
wm
守y
m
﹃It
! 一 円U田町/﹄
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3 6 8 9 ( 5 6 5 ) 3475(62 5 )
︶
ハ河 川
v
nU IK JU
︵ − ku
A HB
つ リ
4 . MTST
遂行時間(表2 )
群間比較では,主効果・交互作用と もに有意で、なかった.群内比較では3
練習前テストと練習後テスト問で,全 ての群において
MTST
遂行時間は短 縮しており,対照P o s i t i v e
群,対照Negative
群,高不安Negative
群は練 習後テストで有意なM TST
遂行時間 の短縮を認めた.(対照P o s i t i v e
群p = 0 . 00
,対照Negative
群;p = 0.00
,高不安Ne g a t i v e
群;P=0 . 00 ) .
X:ρ<C.05 単位:fl;
P o s i t i v e
群 ;p = 0 . 00
,高不安P o s i t i v e
群;p = 0.00
,高不安Negative
群,P=0 . 0 2 ) .
5.唾液アミラーゼ活性値(表3)
群間比較では,比率・実測値ともに主 効果・交互作用は有意で、なかった.実験 終了時に唾液アミラーゼ活性値が最も増 加したのは対照
Pos i t i v e
群であり,次い で高不安P o s i t i v e
群,高不安Negative
群,対照Negative
群の順であった.表2練習前後におけるMTST遂行時間 平均(so)
対照P
o s i t i v e( n = 8 ) i f 1 4 ( 2 5 2 )
練習前テスト 練習後テスト
対照れJ
e g a t i v
,母(円ご?)1 3 . 6 6 ( 2 8 4 )
1 0 2 7 ( 2 3 5 )
1 1 . 0 3 ( 2
37)高不安
P o s i t i v e ( n = 7 ) 1074 ( 2 0 3 ) 9 . 7 6 ( 1 4 9 )
高不安N e g a t i v e ( n = 7 ) 1 1 ' 9 7 ( 1
卯)* 1 0 3 3 ( 1 6 3 )
表3日重;夜アミラーゼ活性{直
金 ド くC'.)5
平均(so)
。重液アミラーゼ
L芙験終了時/女静時) (安静時{直)実別{直
対照P
o s i t i v e( n = 8 ) 1 6 4 ( 1 1 5 )
対照Ne g a t i v e( n = 7 ) 0 . 9 2 ( 0 4 2 )
高不安P o s i t i v e ( n
ニ7 ) 1 . 5 3 ( 0 8 5 )
高不安i ' J e g a t i v e( n = 7 ) 1 1 8 ( 0 9 2 )
3 6 . 8 ( 1 9 2 ) 4 6 . 0 ( 3 0 7 ) 3 9 1 ( 1 9 2 ) 5 3 . 3 ( 5 4 5 )
〈安訴時を1として'.iitll) (単位,KUilJ
6 . LF/HF
値(表4 )
各群とも練習中は上昇し,終了時 に減少する傾向は同様であった.群 間比較では,練習前テスト後にて交 互作用はなく,要因(不安の程度)
で主効果を認め,対照
Negative
群 と比べ高不安Negative
群の方が有 意に高値であった(p= 0 . 0 2
).群内表4 LF/HF{直(交感神経活動指標) 平均(so) 練習前 練習後
安静時 終了時
テスト
H
み テスト後玄対 照 P o s i t i v e r
寸 「 行オでて才J
I300(15S) 630(239) 149(064) (n=8)
…町一
v対照
1 ¥ / e g a t i
山 岳(n=7) 高不安
P o s i t
時(n=7)
比較では対照
Positive
群では安静時 高不安I ¥ J e g a t i 1 . , e
1 9.26 (622ト1977 (369) 1.99 (136) (n=7)と比較し練習前テスト後(p
= 0 . 0 3
)・一 一 一 一 一
練習後テスト後(p
= 0 . 0 0
)で有意な増加を認めた.また,練習前テスト後と比較して練習後テス ト後で有意な増加を認め
( p = 0 . 00
),練習後テスト後と比較して終了時に有意な減少を認めた(p= 0 . 0 0
).高不安Positive
群では安静時と比較して練習前テスト後(p= 0 . 02
),練習後テス ト後(p= 0 . 0 2
)に有 意な増加を認めた.高不安群Negative
群では安静時比較して練習後テスト後において有 意な増加を認めた(p= 0 . 0 4
).そのほか統計的な有意差は認められなかったが,高不安群で は対照群と比較して練習中は高値で推移した.7 . HF
値(表5 )
各群とも練習中は減少し,終了時に 増加する傾向は同様であった.群問比 較では,主効果・交互作用ともに有意 で な か っ た . 群 内 比 較 で は
,
対 照Positive
群では安静時と比較して練習 前テスト後(p= 0 . 0 0
)と練習後テスト後( p = 0 . 0 0
)において有意な減少を認め,練習前テスト後と比較して練習後テス ト後に有意な減少を認めた(p
= 0 . 0 0 ) .
また,練習後テスト後と比較して終了表5 HF憧(副交感神経活動指
t
艶 平均(s o )
練習前 練習後安静時 終了時
テスト後 テスト後世
:.K F四_::!ふ一一・1
対照
P o s i t i v e
汁 て てf " b . 1 5 '
1( 0 1 3 ) 008 ( 0 0 6 ) 090(060 )
(n=8) 五
対照~.Jegative Y 令訂 0 3 8 )0 . 1 7 ( 0 2 7 ) 0 6 0 ( 0 4 1 )
(n=7) 、高不安
P o s i t i v e ( n
二7 )
高不安トl
吉田t i v e
1 0 . 4 1 ( 0 5 街 。 1 7 ( o l s )1 1 6 ( 1 t ) 1 )
日とみ'0~古す78)
l安喜和寺を1としてii&)Z:が0.05
時に有意な増加を認めた(p=0.00)
.
対照Negative
群では安静時と比較して練習前テスト 後と練習後テスト後に有意な減少を認めた(p=0.00)
高不安Positive
群では安静時と比 較して練習後テスト後に有意な減少を認め(p= 0 . 0 3
),練習後テスト後と比較して終了時 に有意な増加を認めた(p= 0 . 0 1
).高不安Negative
群では安静時と比較して練習後テスト 後に有意な減少を認め(p= 0 . 0 1
),練習前テスト後と比較して練習後テスト後に有意な減少(p=0.00
)を認めた.また,練習後テスト後と比較して終了時に有意な増加を認めた( p = 0 . 0 0 ) .
8 .
質問紙「練習中にどういう点に注意しつつおこっていたか?」 の質問に対しては,
2 9名中 23
名が 「転ばないように」,「つま先がひっかからないように」など転倒に注意する回答がみられ,特につま先の引っかかりに対して注意したものが
1 7
名であった.「フィードパック を受けた後にどのように感じましたか?」の質問に対しては, 対照Po s i t i v e
群では, 「も っと速く歩かなきゃいけないのJ,「目標にはまだ遠しリ, 「練習すれば速くなるだろう」な どの回答が8
名中4
名にあった.対照、Neg a t i v e
群では「緊張したJ,「焦った」などの回 答が7
名中2
名にあった.高不安P o s i t i v e
群では「嬉ししリ,「もう少し頑張ろうん 「どうしたら速くなるかjなどの回答が多数聞かれた.高不安
Nega t i v e
群では,「もっと速く 歩かなければいけないのかJ
,「申し訳なし、」などの回答が7
名中4
名にあった.9.SC I (
表6 )
各群で
S C I
のある特定の点数のみが高いということはなく,傾向性はみられなかった.また,
5 0m
歩行時間・MTS T
遂行時間・生理学的指標(LF/H F
値・HF
値 ・アミラーゼ活 性値) とは相関はみられなかった.表 6 $Q I
の点数co E m P i a Con See Ace Se l Esc D i s P o s i 1 7 2 4 8 6 。 5 6 10 3 3 22 28 6 1 1 。 7 9 6 8 2 39 36 1 1 7 9 6 12 6 10 1 3 対照 P i s i t i v e 群 5 14 4 3 7 8 7 5 。
29 32 7 9 4 8 9 8 1 1 6 37 36 10 6 4 1 5 1 2 6 1 1 10 4 1 3 1 13 1 0 9 5 8 4 9 1 5 33 33 7 8 6 5 4 6 6 4 36 35 8 9 1 1 9 9 9 7 8 34 34 6 9 12 10 5 6 7 1 3 35 17 12 7 5 7 9 2 4 6 対照N e g a t i ve 群 25 22 10 2 7 10 4 3 10
28 16 6 5 4 14 9 3 3 19 1 5 7 5 5 1 3 13 2 8 10 13 3 1 3 6 4 2 8 10 4 6 12 27 3 5 8 2 7 6 6 6 55 44 1 5 7 1 2 1 3 1 2 9 10 1 6 39 2 1 1 0 12 9 8 5 3 4 9
高不安P o s i t i ve 群 1 8 10 8 3 2 6 2 2 。 5 3 1 1 7 1 0 4 3 7 7 2 6 9 15 25 2 3 2 6 5 6 5 1 1 34 22 9 6 5 1 1 8 4 4 8 36 35 8 9 1 1 9 9 9 7 8 34 34 6 9 1 2 10 5 6 7 1 3 35 1 7 1 2 7 5 7 9 2 4 6
高不安N e g a t i v e 群 25 22 1 0 2 7 10 4 3 10
28 1 6 6 5 4 14 9 3 3
19 15 7 5 5 1 3 1 3 2 8 1 0
13 3 1 3 6 4 2 8 1 0 4 6
各対象者の結果を示す.c o
・Em
は64
点満点,その他の項目は1 6
点満点である.c o
:認知的ストラテジー(事件に対してチャレンジする傾向)Em:
.情動的ストラテジー(事件からの圧力に耐えられないので,情動の軽減を図る傾向)Pla
:計画型Con
対決型See
.社会支援模索型Ace
:責任受容型S e l :
自己コントロール型Esc
:逃避型Dis
: 隔離型Pos
:肯定評価型[考察
1
1 .
パフォーマンス能力について50 m
歩行時間において,練習前後で各群内では歩行時間は短縮しており,対照Negative
群以外は有意な50m
歩行時間の短縮を認めた.健常者における長下肢装具装着下での歩行 パターンは, トゥクリアランスを確保するために,装着肢の遊脚初期に非装着肢の足関節 が底屈するパターンや,装着肢の遊脚期に非装着肢の股関節の外転に伴い体幹が非装着肢 に傾斜するパターン,装着肢の遊脚期に体幹の傾斜が生じずに骨盤が装着肢側に拳上する パターンを使用し,代償するとの報告 15)がある.内省報告でも長下肢装具を着用してい る足部の引っかかりに注意する回答が多数みられたことや歩容の観察から,各対象者にお いてこれらの代償を活用することで 練習を通して長下肢装具装着下での歩行の学習が進 んだことにより50m
歩行時聞が短縮したと考える.
また,転移課題として実施したMTST
においても練習前後で有意に遂行時聞が短縮したことは, 長下肢装具での歩行練習を通し て,まっすぐ歩くことだけでなく,速度も変化させながら色を選択しつつ歩くこともでき,長下肢装具を使いこなせるようになったことを示していると考える.仮説として,各群聞 の比較では,練習前テストにおいて高不安群のパフォーマンス(
50m
歩行,MTST
)は対 照群と比べ低いが,P o s i t i v eFBを与えることにより学習を促進し,不安が高い者で
も学 習が進み,練習後テストにおいて高不安P o s i t i v e
群は対照群と差がなくなると考えていた.しかし,各群間で練習前テスト・練習後テストにおいて有意差はなく,各群ともに
FB
の 違いに左右されず,同様に学習が進んでいた.Oxendine(1970
)は,複雑な技術, 繊細で微 妙な筋肉の運動,調整,安定度,集中などを必要とする運動は高い喚起によりかえって悪 影響を受ける 16)とした.本研究で用いた課題は,歩行という粗大で周期的な運動であった ため,影響を受けにくく,その結果,各群でパフォーマンス能力に違いが生じなかったと 考える.2 .
生理学的指標3 主観的反応(STAI状態不安,質問紙)の相違について本研究では実験中の生理学的指標の変化を観察する目的で心拍数と唾液アミラーゼ活性 値を測定した.心拍数から得られる指標として,
HF
値とLF
値があり,HF
値は副交感神 経活動の指標,LF/HF
値は交感神経活動の指標として使用されている 不安ではその身体 的な反応から交感神経優位になることがいわれており 17),不安群(STAI64 . 3 6
土1 0 . 6 6 )
が対照群と比べ,副交感神経指標(HF
)が低くなる傾向がみられ,相対的に交感神経優位 な状態であったとの報告がある 13).唾液アミラーゼ活性値は3 スト レス評価における交感 神経の指標として利用されている 19.)不快な刺激では唾液アミラーゼ活性は上昇し,快適 な刺激では唾液アミラーゼ活性は低下するといわれており20),スピーチ課題において発表 環境(聴衆の数)の違いにより,高ストレス群と低ストレス群を分け,比較した研究では 高ス トレス群の方が,唾液アミラーゼ活性値は上昇したとの報告がある21)仮説として,高不安
N e g a t i v eFB
群はN e g a t i v eFB
を与え練習を行ったことにより,より緊張を感じ,練習後テスト後において
LF/HF
値は最も高値になり,唾液アミラーゼ 活性値は課題を実施することへの不安によるストレスで実験終了時に最も高くなると考え ていた.結果は,
LF/HF
値は練習前テスト後において高不安N e g a t i v e
群で対照P o s i t i v e
群と比 較して有意に高値であり,練習中,高不安群ではLF
厄F
値は高値で推移した.また唾液 アミラーゼ活性値は各群問で差は認めず,実験終了時において高不安群は安静時と比較し て増加していたが,対照P o s i t i v e
群が最も高かった.主観的反応では,STAI
の状態不安 の設問である「緊張している」の項目に対する点数は高不安群が対照群よりも高かった.また, 対照
P o s i t i v e
群は質問紙にてFB
に対して否定的なことを感じていた.これらの結果より,高不安群は,予期不安(課題実施前に目標タイムがあると伝える)
を与えたことや,実験という環境で課題を行うこと自体で緊張を感じ,より交感神経の活 動が高くなった状態で課題を実施していたと考える.また,その結果,終了時のアミラー ゼ活性値も増加したと考える.唾液アミラーゼ活性値が終了時で高値であった対照
P o s i t i v e
群は, 質問紙よりP o s i t i v eFB
に対して否定的なことを感じており,多くの者が 課題を達成できるとの情報が予め与えられたことで,FB
後にさらに練習と課題を行わな ければいけないことに対してストレスを感じた可能性が推測され,唾液アミラーゼ活性値 は増加したと考える.今回の研究において交感神経活動は高不安群で高値であったが,唾 液アミラーゼ活性値はその結果を反映していなかった.唾液アミラーゼモニターは急性の ストレス評価に有効であると考えられており,測定条件(座位)の統ーや測定手順のため に課題実施直後に唾液アミラーゼの測定を行えず,数分の休息を挟んだため,課題による ストレスを反映した測定が行えなかったことで,交感神経活動の値と一致しなかった可能 性があると考える.[まとめ}
本研究において仮説として不安が高いことでパフォーマンスの低下がおこるが,理学療 法士の声掛けの方法により不安が高いものでも適切に学習していくと考え行った.結果で は,各群間でパフォーマンス能力に違いはみられず,どの群でも同様に学習が進んだ.し かし,同じ結果を得るのに高不安群では実験中に交感神経活動が高値を示したことから,
より緊張を感じながら課題に取り組んでいたと考える また,生理学的指標では変化はな いが,質問紙にて高不安
P o s i t i v e
群では目標に近いので「もっと頑張ろう」という肯定的 な回答が多く,高不安N e g a t i v e FB
では半数が否定的な回答聞かれた.スポーツ心理学 において,優れた競技成績をあげることやよりよいプレーを行うためには最適緊張水準が あり,覚醒・緊張が高すぎるとパフォーマンスは低下すると考えられている 22).これらの ことから,今回の実験ではFB
の違いにより,パフォーマンスの改善の違いに統計学的有 意差はなかったものの,不安が高い者に課題実施前にプレッシャーとなるような予期不安 を与えることは,交感神経の活動を高め,練習効果に影響を与える可能性が示された.ま たそれらが過度になることによりストレスの増加や実施する課題によってはパフォーマン スに影響を与える可能性があると考える.[結論]どの群でも同様に学習は進んだが,同じ結果を得るのに高不安群では実験中によ り緊張を感じ,交感神経活動が高くなっていた.このことから不安が高い者に課題実施前 にプレッシャーとなるような予期不安を与えることは,交感神経の活動を高め,練習効果 に影響を与える可能性が示された.
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