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母親の不安特性が幼児の不安特性に与える影響

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Academic year: 2021

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− 109 − 母親の不安特性が幼児の不安特性に与える影響 人間教育専攻 臨床心理士養成コース 佐 々 木 麻 衣 1. 問題と目的 子どもが示す様々な問題の背景には不安があ るといわれている。しかし,子どもは不安を感 じたときに言葉で上手に表現することは難しく, 行動や身体症状で表現することも多い。乳幼児 期の子どもには,情緒が不安定なときに指しゃ ぶり行動がみられることがある(富田, 2007)。 また,分離不安障害を呈するような不安が強し、 子どもは,家から再齢、ることを極端に不安がり, 悲惨なほどに落ち着かず,母親から無理やり引 き離されると,元気がなくなり,無感情や悲哀 感を示し遊びにまったく集中できなくなる ({専田, 2006)。感情面において,乳幼児期の 子どもは,大人の感情を敏感に取り込み,それ に大きく影響を受けることがわかっており,常 に問題として取り上げられるのは“母親"との 関係における両者の感情状態のあり方である (田中, 2011)。田中 (200ω は,母親の情動を 調墜することで子どもの情動もコントロールす ることができると元ミ唆しているが,母親は母親 自身の情動特性を持っているため,自分の情動 をコントローノレすることは難しいと思われる。 そのため,子どもの情動特性も,母親の情動特 性の影響を受けるのではないだろうか。益子 (2013) は,両親の不仲,特に一方の親への悪 口を子どもに聞かせる行為により,そのときに 感じる感情を学習することで,子どもの自己肯 定感や家庭での心の持ちように影響を与えるこ とを明らかにしている。これらのことから,母 指導教員 小 倉 正 義 親が感情を表す会話や行動を子どもの前で表現 する程度によって,子どもの感情特性への影響 に違いがあるのではなし、かと考えられる。そこ で本研究では,感情の中でも不安に焦点を当て, 時見の不安特性と幼児の不安特性,母親が子ど もの前でどのように不安を表現しているかにつ いての質問紙調査を行い,子どもの不安特性に 影響を与えている要因について,母親の不安特 性と母親が子どもの前で見せる不安表現の2

から明らかにすることを目的とする。また子ど もの不安特性への影響について検討する際に, 母親の喜ひ帯性・喜び表現の影響にも着目する。 2. 方 法 調査対象 :A県内の5か所の私立幼稚園・認定 こども園に在籍する3"'6歳の子ども 429名の 保護者を対象に質問紙による調査を行い, 255 名から回答を得た。そのうち,回答に不備のな かった3"'6歳の子どもの母親 208名(平均月 齢 60.01ヶ月 ,SD=10.93)を分析対象とした。 質問紙の内容:フェイスシート(回答者と子ど もの関係,子どもの年齢,きょうだいの数,回 答者の就業形態,子育ての悩みを話せる人の数), 母親の不安・喜び特性尺度(不安5場面,喜び 6場面),子どもの不安特性尺度 (4因子, 28 項目),母親の不安・喜ひ判制尺度(各5項目) の3つの尺度から構成された。 手続き:幼稚園・認定こども闘に協力を依頼し た。質問紙と保護者向けの依頼文を1部ずつ封 筒に入れたものを子どもを通じて配布し,保護

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− 110 − 者に回答してもらった。回答後は,子どもに持 たせてもらうなどして園に提出してもらい,後 日調査者が直接園に行き,回収した。 3. 結果 母親の不安・喜び特性と母親の不安・喜U判 制の得点をもとにクラスタ分析を行い,その結 果 4つのクラスタが得られた。その後,得られ たクラスタを独立変数,子どもの不安持性を従 属変数として分散分析を行ったが,群間差がみ られなかった。そのため,母親の不安特性と母 親の不安抑制のみを使用し,母親の不安特性得 点のうち,

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標準偏差以上の得点を不安特性 高群, 1/2標準偏差以下の得点を不安特性低群 としてそれぞれ拍出した。母親の不安抑制得点 についても同様に不安抑制高群・低群を抽出し た。母親の不安特性高群・低群と母親の不安抑 制高群・低群を独立変数,子どもの不安特│、生尺 度の下位因子「社会不安J

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全般性不安J

r

分離 不安J

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特定の恐怖」を従属変数として2要因 分散分析を行ったところ分離不安

J

と「特定 の恐怖jにおいて母親の不安特性の主効果が有 意であり,母親の不安特性が高いと子どもの「分 離不安」と「特定の恐怖」が高いことが示され た。しかし,母親の不安抑制の主効果は有意で はなく,母親の不安特性と母親の不安抑制との 交互作用の効果も有意で、はなかった。 4. 考察 母親の不安特性が齢、子どもは母親の不安特 性が低い子どもと比較して分離不安J

r

特定 の恐怖jが高いことが明らかになった。しかし 母親の不安抑制の主効果や,母親の不安特性と 母親の不安抑制との交互作用の効果が有意では なかったことより,子どもの不安特性に母親の 不安表現は影響を与えているとはいえず,母親 の不安特性そのものが影響を与えていることが 示唆された。母親の不安特性が高い場合には, 子どもの前で不安を見せないように意識してい たとしても,実際には抑制ができておらず,子 どもの前で不安を表現しているのではなし、かと 考えられる。一方で母親の不安特性が低い場合 には,子どもの前で不安を見せたとしても不安 そのものが低いため,子どもの不安特性に影響 することはないと考えられる。また,不安特性 が高い母親の子どもは分離不安が高くなり,母 親から再断、ることに対して不安を訴えるように なると思われる。そのため,母親と子どもが一 緒に過ごす時間が多くなり,母親も無意識のう ちに子どもの前で不安を見せることで母親の不 安特性が予どもの不安特性に影響を与えるので はないだろうヵ、また「特定の恐怖Jは,子ど もにとって恐怖を感じる状況で、あるにも関わら ず母親も側にいない場合に生じる不安であると 推察され分離不安」と同じ要素がある不安な のではなし、かと考えられる。 一方で,母親の不 安表現は子どもの不安特性に影響がみられなか ったことについて,本研究での不安抑制の測定 方法は,母親が意識して不安を抑制している部 分のみの測定で、あったと思われる。そのため, 母親が不安抑制について自己評価するので、はな く,母子の様子を観察して母親が子どもの前で 不安をどのように表現しているかを客観的にみ る必要があると考える。また,鎌谷 (2009)は, 母親の分離不安と養育態度に関連があること, 相揮 (2014)は社交不安において,親から子ど もへの影響を媒介するものとして養育態度が注 目されていると指摘している。このことから, 子どもの不安特性に影響するのは,母親の不安 表現の程度ではなく,不安特性が影響を及ぼす 養育態度である可能性がある。これらの点は, 今後の課題として検討が必要である。

参照

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