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大学生のストレス反応に影響を与える諸要因の検討―

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(1)

大学生のストレス反応に影響を与える諸要因の検討

――共感性、先延ばし傾向、対人ストレスコーピングの視点から――

黒 山 竜 太

1)

,下 田 芳 幸

2)

) )

1)長崎国際大学 人間社会学部 社会福祉学科

2)富山大学附属人間発達科学研究実践総合センター

本研究では、大学生の感じるストレスに対してストレスコーピングのあり方がどのように関連している か、特に先延ばし傾向が及ぼす影響について男女別に検討した。対象者は大学生315名であった。質問紙 は、ストレスコーピングに関連のあるとされる共感尺度、先延ばし傾向尺度、対人ストレスコーピング尺 度、ストレス反応尺度で構成された。「抑うつ不安」「不機嫌怒り」「無気力」からなるストレス反応につ いて重回帰分析を行った結果、男子では全てのストレス反応に対して先延ばし傾向の影響が大きいことが 明らかとなった。また、女子では先延ばし傾向よりも被影響性の影響が大きいことがわかった。以上より ストレス反応に影響を与える傾向やコーピング手段が男女で異なり、ストレス反応の低減のために男子は 問題を後回しにしないことや独りよがりにならないこと、女子は男子の傾向に加えて周囲に影響を受けす ぎないことが重要であることが示唆された。

キーワード

大学生、対人ストレスコーピング、先延ばし傾向

1.はじめに

近年、大学生と接する中で、時々元気のなさ や目標の曖昧さが目につくことがある。対人的 な刺激をストレスに感じ、思うように自分の気 持ちを他者に表現することが難しく、その機会 を避けたりして過ごす学生が増えてきているよ うに見受けられる。その一方で、何かの目標が 見つかったり他者との関係が良好になること で、積極的に活動に取り組むようになる学生も 多い。こうした学生たちの動向には、発達的な いし世代的に様々な要因が関わっていると思わ れる。本研究は、以下に挙げる要因の関連性を 検討することによって学生支援の一助につなげ ることを目的とするものである。

人は日々、様々にストレスフルな出来事を体 験するが、頻繁に遭遇するものの一つに、対人 関係に起因する対人ストレスイベントがある

(加藤、2 0 0 0・2 0 0 1

a)

。対人ストレスイベント によって生じた対人関係ストレッサーは、その 経験頻度や、心理的ストレス反応の表出などの 心身への影響度に応じてともに大きくなること が 示 さ れ て お り(岡 安・嶋 田・丹 羽・森・矢 冨、1 9 9 2;尾関、1 9 9 3) 、したがってこのよう な対人ストレスイベントへの対処の仕方は、心 身の健康を考える上で非常に重要であるといえ る。

このような対人ストレスで生じる対処行動の うち、対人関係を直接扱うものは対人ストレス コーピングと呼ばれ、積極的にその対人関係を 改善することを試みるポジティブ関係コーピン グ(積極的に話をするようにした、など) 、そ うした対人関係を放棄するようなネガティブ関 係コーピング(無視するようにした、など) 、 問題を一時的に棚上げするといった解決先送り

(2)

コーピング(自然の成り行きにまかせた)の3 つに分類される(加藤、2 0 0 0・2 0 0 3) 。また加 藤の一連の研究により、ポジティブ関係コーピ ングはストレス反応を高める(加藤、2 0 0 6)ま たは低減しない(加藤、2 0 0 1

a・2

0 0 1

b)が、友

人関係の満足度を高めること(加藤2 0 0 1

a)

、ネ ガティブ関係コーピングはストレス反応を増加 させること(加藤2 0 0 1

a)

、解決先送りコーピン グはストレス反応や孤独感を減少させること

(加藤2 0 0 1

a・2

0 0 2

a)などが明らかとなってい

る。このように、対人ストレスコーピングがど のような効果を示すかについての知見は蓄積さ れている一方で、対人ストレスコーピングの実 行にどのような心理的変数が関与しているかに ついては、楽観性や自尊心(加藤、2 0 0 1

a)や

パーソナリティの基本次元である

Big Five

との 関連(加藤、2 0 0 1

b)などは検討されているも

のの、 まだ十分とは言い難い。 対人ストレッサー の影響度の大きさや、人間関係の希薄化などの 質的変容が多く言われる現在、対人ストレス コーピングの実行に関与する心理的変数をより 詳細に検討していくことは、対人ストレスコー ピングの望ましい変容や、その結果として対人 関係の改善を図るうえでも重要であり、意義が あると考えられる。

また本研究では、対人ストレスに影響を及ぼ すことが予想される心理的変数として、先延ば し行動に着目した。先延ばし行動とは、 「主観 的な不安や不快感を経験する時点まで、不必要 に課題を遅らせる行為(Solomon & Rothblum,

1 9 8 4) 」であり、やるべきことを始めるまでに 時間がかかるなどの行為である。この行為その ものは一般的に行われることであるが、心身の 不健康との関連も示唆されており(e.g., Tice &

Baumeister,1

9 9 7) 、先 延 ば し 傾 向 を ス ト レ ス との関係で考えたとき、両者の間には何らかの 関連性があるのではないかと考えられる。先延 ばし傾向は失敗行動との関連(藤田、2 0 0 5)や セルフ・コントロールとの関連(藤田・野口、

2 0 0 9)などが検討されているが、対人ストレス

との関連ではまだほとんど焦点が当てられてい ないと考えられる。

さらに、本研究では共感性に着目し検討を行 うこととした。共感性とは、他者の体験してい る感情状態を観察した側の内面に、それと一致 した(他者が嬉しがっている様子を見て自分も 嬉しくなる) 、あるいは対応した(他者の苦痛 を見てかわいそうといった感情を抱く)感情的 反応が生じるといった、他者の経験についてあ る 個 人 が 示 す 反 応 に 関 す る 構 成 概 念 で あ る

(Davis,1 9 9 4;植 村・萩 原・及 川・大 内・葉 山・鈴木・倉住・櫻井、2 0 0 8) 。Davis(1 9 9 4)

のレビューによると、それ以前の共感性研究は

「他者の視点に立って考えてみる」といった認 知的側面と、 「悲しんでいる他者をかわいそう だと感じる」といった感情的側面のどちらかを 重視する研究が行われていたが、近年では認知 面・感情面両方を捉える多次元的な立場が中心 と な っ て い る(Davis,1 9 9 4;鈴 木・木 野、

2 0 0 8;登張、2 0 0 3;植村ら、2 0 0 8) 。

ところでこのような共感性は、単に他者を観 察して個人に何らかの反応が生じるといった個 人内で帰結するものでなく、向社会的行動の実 行(Hoffman,1 9 8 2)、思いやり、良好なコミュ ニケーション、対人葛藤の軽減とその適切な処 理(Davis,1 9 9 4) 、あるいは良好な社会的相互 作用(Eisenberg & Miller,1 9 8 7)に影響を及ぼ すことが明らかとなっており、これらの知見か ら、対他者への行動を動機づける要因でもある といえる。したがって、他者との関係で生じた ストレスを軽減する対人ストレスコーピングの 実行にも、影響を及ぼすことが予想される。ま た例えばアサーション・トレーニングにおいて 共感性が重要な要因の一つであること(園田、

2 0 0 2)など、心理教育においても共感性への関 心は高まっている。

こうした対人ストレスコーピング、先延ばし 傾向、共感性がストレス反応とどのような関係 にあるかに焦点を当て、本研究では、多次元的 な視点で捉えられた共感性や先延ばし傾向及び

(3)

対人ストレスコーピングがストレス反応に及ぼ す影響について、探索的に検討することを目的 とした。なお、ストレス反応および心理的変数 には男女差が現れることを予測し、男女間での 比較を軸に考察することとする。

2.方

対象 A大学に在籍する大学生3 4 1名に調査を 実施した。そのうち、回答に不備の見られたも のを除く3 1 5名(男性1 2 3名、女 性1 9 2名、平 均 年齢2 0. 0 2歳、SD =2. 3 0)を分析対象とした。

調査時期 2 0 0 9年6月であった。

手続き 本研究では、共感性、先延ばし傾向、

対人ストレスコーピングおよびストレス反応を 測定するために、以下の尺度を使用した。調査 は大学の講義時間の一部を利用して行われ、調 査の目的と回答が任意であることを説明したう えで実施・回収した。

!

共感性:鈴木・木野(2 0 0 8)の多次元共感 性尺度を使用した。本尺度は共感性を多次元的 に捉えることを目的に作成されており、 「被影 響性」 、 「他者指向的反応」 、 「想像性」 、 「視点取 得」 、そして「自己指向的反応」からなってい る。 各下位尺度は、 自己指向的反応のみ4項目、

他は5項目ずつである。本尺度では、 「以下の 項目は、普段のあなたの考えや行動に、どれく らいあてはまりますか」という教示に続いて5 件法(非常にあてはまる、ややあてはまる、少 しあてはまる、ほとんどあてはまらない、全く あてはまらない;4―0点、逆転項目は0―4 点)で回答を求めた。

"

先延ばし傾向:林(2 0 0 7)の先延ばし尺度 日本語版を使用した。本尺度は1 3項目1因子構 造から構成されている。本尺度では、 「以下の 項目は、普段のあなたの考えや行動に、どれく らいあてはまりますか」という教示に続いて5 件法(非常にあてはまる、ややあてはまる、少 しあてはまる、ほとんどあてはまらない、全く あてはまらない;4―0点、逆転項目は0―4 点)で回答を求めた。

#

対人ストレスコーピング:加藤(2 0 0 0)が 作成した対人ストレスコーピング尺度の短縮版

(加藤、2 0 0 2

b)を使用した。本尺度は「ポジ

ティブ関係コーピング」 、 「ネガティブ関係コー ピング」および「解決先送りコーピング」の3 下位尺度各5項目から構成されており、加藤で 尺度の妥当性・信頼性が確認されている。本尺 度では、対人ストレスの説明をしたあとに「あ なたは、実際に経験した人間関係のストレスに たいして、普段、どのように考えたり、行動し たりしますかという教示に続いて4件法(よく あてはまる、あてはまる、少しあてはまる、あ てはまらない;3―0点)で回答を求めた。

$

ストレス反応:心理的ストレス反応測定尺 度(Stress Response Scale ‐ 1 8;以下

SRS

‐ 1 8と略 記する)を使用した。本尺度は「抑うつ・不安 感情」 、 「不機嫌・怒り感情」および「無気力的 認知・思考」の3下位尺度、各6項目からなっ ており、鈴木ら(1 9 9 7)で尺度の信頼性、妥当 性が検証されている。本尺度では、 「以下の項 目は、あなたのここ2、3日の気持ちや行動の 様子にどれくらい当てはまりますか」という教 示によって4件法 (そのとおりだ、 まあそうだ、

いくらかそうだ、全くちがう;3―0点)で回 答を求めた。

3.結果と考察

1)男女別ストレス反応

心理的ストレス反応 「抑うつ・不安感情」 、 「不 機嫌・怒り感情」 および 「無気力的認知・思考」

について、各被験者の尺度得点を鈴木らの判定 基準により 「弱い」 「普通」 「やや高い」 「高い」

の4レベルの反応に分類し、男女別に百分率で 集計した(図1、2参照) 。

その結果、 男性について 「抑うつ・不安感情」

で は〈や や 高 い(2 6. 0%) 〉 〈高 い(1 9. 5%) 〉 をつけた学生が全体の4 5. 5%に上ることがわ かった。次に「不機嫌・怒り感情」では目立っ た特徴は見られなかった。 一方 「無気力的認知・

思 考」で は〈や や 高 い(2 3. 6%) 〉 〈高 い

(4)

(3 3. 3%) 〉を つ け た 学 生 が 全 体 の 半 数 以 上

(5 6. 9%)に上ることがわかった。

また、女子学生についても「抑うつ・不安感 情」では〈やや高い(3 1. 3%)〉〈高い(1 5. 1%)〉

をつけた学生が全体の4 6. 4%に上ることがわ かった。 「不機嫌・怒り感情」では目立った特 徴は見られなかった。しかし、 「無気力的認知・

思 考」で は〈や や 高 い(2 7. 1%) 〉 〈高 い

(2 2. 4%) 〉と全体の4 9. 5%に上った。

以上より、男女ともに抑うつ・不安感情と無 気力的認知・思考に影響を与える要因について 詳細に分析する必要があるものと推察された。

2)ストレス反応に及ぼす諸要因の検討

"

ストレス反応と共感性、先延ばし傾向、対

人ストレスコーピングとの関連

共感性、先延ばし傾向、対人ストレスコーピ ングおよびストレス反応の関連を検討するた め、まず男女別に各下位尺度得点間の相関係数 を算出した(表1参照) 。

!

ストレス反応と共感性の関連

「抑うつ・不安感情」 は男女とも 「被影響性」 、

「想像性」 、 「自己志向的反応」と有意な弱い正 の 相 関 を 示 し た(r =. 2 1〜. 3 8、p<. 0 1) 。ま た女子学生では、 「他者志向的反応」と有意な 弱い正の相関を示した(r=. 1 6、p<. 0 5)。「不 機嫌・怒り感情」は男女とも「被影響性」 「想 像性」 「自己志向的反応」と有意な弱い正の相 関 を 示 し た(r=. 2 0〜. 3 3、p<. 0 5ま た は

p

<. 0 1) 。また男子学生では、 「視点取得」と有

図1 男子学生のストレス反応

図2 女子学生のストレス反応

(5)

意 な 弱 い 負 の 相 関 を 示 し た(r =−. 2 1、p

<. 0 5)。「無気力的認知・思考」は男女とも「被 影響性」 「想像性」 「自己志向的反応」と有意な 非常に弱 い ま た は 弱 い 正 の 相 関 を 示 し た(r

=. 1 7〜. 3 7、p<. 0 5または

p<.

0 1) 。

!

ストレス反応と先延ばし傾向の関連

「抑うつ・不安感情」は男女とも「先延ばし 傾向」と有意な弱いまたは中程度の正の相関を 示 し た(r=. 3 2〜. 5 0、p<. 0 1) 。 「不 機 嫌・怒 り感情」は男女とも「先延ばし傾向」と有意な 弱 い 正 の 相 関 を 示 し た(r =. 2 9〜. 3 7、p

<. 0 1)。「無気力的認知・思考」は男女とも「先 延ばし傾向」と有意な弱いまたは中程度の正の 相関を示した(r =. 3 5〜. 5 9、p<. 0 1) 。

"

ストレス反応と対人ストレスコーピングの関

「不機嫌・怒り感情」は女子学生で「ネガティ ブ関係コーピング」と有意な弱い正の相関を示 し た(r=. 2 0、p<. 0 5) 。 「無 気 力 的 認 知・思 考」は男女とも「ネガティブ関係コーピング」

と非常に弱いまたは弱い正の相関を示した(r

=. 1 6〜. 2 2、p<. 0 5) 。

以上より、 「抑うつ・不安感情」には男女と も共感性の「被影響性」 「想像性」 「自己志向的 反応」 、 「先延ばし傾向」が関連しており、対人 ストレスコーピングとは関連が見られなかっ た。女子学生では加えて「他者志向的反応」と 弱い相関が見られた。このことから男女ともに

他者の影響を受ける一方で独りよがりになって しまうことが抑うつや不安と関連し、特に女子 学生では他者のためを思うことが抑うつ・不安 と関連することが示唆された。また、 「不機嫌・

怒り感情」には男女とも共感性の「被影響性」

「想像性」 「自己志向的反応」 、 「先延ばし傾向」

が関連しており、さらに男子学生では共感性の

「視点取得」 が、 女子学生では対人ストレスコー ピングの「ネガティブ関係コーピング」が関連 していることが示された。このことから男女と もに抑うつ・不安感情と同様の要因が関わるも のの、特に男子学生では客観的な視点を取得す ることがこれを抑制する要因として関連し、女 子学生では無視することや関わりを減らすこと が返って不機嫌・怒り感情を高める要因として 関連することが示唆された。そして「無気力的 認知・思考」にも同じく男女とも共感性の「被 影響性」 「想像性」 「自己志向的反応」 、 「先延ば し傾向」 、そして対人ストレスコーピングの 「ネ ガティブ関係コーピング」が関連していること が示された。このことから男女ともに抑うつ・

不安や不機嫌・怒りと同様の要因が関連してお り、無視することや関わりを減らすことが返っ て無気力的認知・志向を高める要因として関連 していることが示唆された。

一方、それぞれの相関の強さを見ると、 「先 延ばし傾向」については男子が「抑うつ・不安 感情」と「無気力的認知・思考」の2尺度につ

表1 各尺度の男女別の尺度間相関

被影響性 ** **‐. ** **‐. ‐. ‐. ** ** **

他者志向的反応 ‐.** **‐.* ‐. * ‐. 想像性 ** ** ** * ** ** * 視点取得 ‐. ** ‐. ‐. **‐.* ‐. ‐. ‐. 自己志向的反応 **‐. **‐. **‐.** ** ** ** **

先延ばし傾向 ** **‐. ** ** * ** ** **

ポジティブ関係C ‐. ** ** ‐.** ‐. ネガティブ関係C ‐.* * ‐.** * ‐.* ** ** * 解決先送りC ‐. ‐. ‐.** ‐. ** ‐. ‐. ‐. 0 抑うつ不安 **‐. **‐. ** ** ** **

1 不機嫌怒り * ‐. **‐.* ** **‐. ** **

2 無気力 **‐. **‐. ** ** * ** **

※Cはコーピングの略 男子学生 *相関係数は1%水準で有意(両側)

**相関係数は5%水準で有意(両側)

(6)

いて中程度の相関を示しており、男子学生のス トレスを考える上で先延ばし傾向は有効な要因 である可能性が示唆された。

!

各尺度得点における男女比較

次に、尺度得点について男女の平均値の差の 検定を行った(表2参照) 。その結果、共感性 のうち「被影響性」 「他者志向的 反 応」 「想 像 性」において女子学生の方が男子学生よりも有 意に得点が高いことが示された(それぞれ

t=

−2. 8 2、−4. 9 5、−2. 1 0、

p<.

0 5または

p<.

0 1)

ものの、ストレス反応について有意差は認めら れなかった。以上より、男女でストレス反応の 強さに大きな差があるとはいえないことが示さ れた。

"

共感性、先延ばし傾向、対人ストレスコー

ピングがストレス反応へ及ぼす影響

共感性、先延ばし傾向および対人ストレス コーピングがストレス反応へ及ぼす影響を検討 するため、ストレス反応の各下位尺度得点を基 準変数、共感性、先延ばし傾向、対人ストレス コーピングの各下位尺度得点をそれぞれ説明変 数とした、ステップワイズ法による重回帰分析 を行った。その結果をまとめたものを表3に示

す。

分析の結果、男子学生ではどのストレス反応 に対しても「先延ばし傾向」が大きく影響を与 えていることがわかった。また、共感性尺度の

「自己志向的反応」も同様にストレス反応全般 に対する影響が大きいことが示された。 「不機 嫌怒り」については、加えて「視点取得」がマ イナスの影響を及ぼすことが示された。つま り、ストレス反応を引き起こす要因として、や るべきことを始めるために時間がかかるなどし て思わず先に延ばしてしまうような傾向や、他 人の失敗や成功に対して自己中心的に考えてし まうような傾向が大きく関与していることが明 らかになった。特に先延ばし後には自動思考が 伴うことが指摘されており(林、2 0 0 9) 、先に 延ばすことそのものへの潜在的な罪悪感がスト レス反応を起こす契機となっているものと考え られる。よって、男子学生についてはできるだ け現在行うべきことを流さずに一つ一つ行って いけるよう援助を行うことが有益ではないかと 考える。また、相手の立場に立って物事を考え るような他者視点の取得を心がけることで、不 機嫌や怒りの感情は押さえることにつながる可 能性も示唆されており、他者との間で互いに認 めあえる関係の中に自分の存在意義を見いだせ

表2 各尺度得点の男女別の平均値(M )と標準偏差(SD )および平均値の差の検定

男子学生(N=123) 女子学生(N=192)

t

M SD M SD

1 被影響性 9.67 3.85 10.93 3.88 ‐2.82**

2 他者志向的反応 13.05 3.44 14.95 3.24 ‐4.95**

3 想像性 11.19 4.45 12.19 3.57 ‐2.10* 4 視点取得 12.33 3.33 12.85 3.09 ‐1.42n.s.

5 自己志向的反応 9.28 2.94 9.02 2.70 0.81n.s.

6 先延ばし傾向 27.02 6.01 27.39 5.75 ‐0.54n.s.

7 ポジティブ関係C 7.24 3.66 6.91 3.68 0.78n.s.

8 ネガティブ関係C 6.08 3.95 5.68 3.89 0.89n.s.

9 解決先送りC 9.72 3.81 8.82 4.31 1.89n.s.

10 抑うつ不安 6.93 5.34 7.79 5.12 ‐1.43n.s.

11 不機嫌怒り 5.42 5.27 5.28 4.72 0.25n.s.

12 無気力 7.85 5.24 7.82 4.59 0.06n.s.

*相関係数は1%水準で有意(両側)

**相関係数は5%水準で有意(両側)

(7)

るような環境作りも効果があるのではないか。

また、女子学生ではすべてのストレス反応に 対しても「被影響性」が強く関与していること が示された。また、男子学生と同じく「先延ば し傾向」や「自己志向的反応」もストレス反応 を起こすきっかけとして関わっていることが示 された。 このことから女子学生では 「被影響性」

という他者の感情や意見に左右されたり流され やすかったりする傾向がストレス反応を引き出 すきっかけとして大きく作用している可能性が 考えられ、先延ばし傾向や自己志向的思考はさ らにそれを助長するものとなる可能性が示唆さ れた。一方で女子学生に特有の傾向として、 「抑 うつ・不安感情」に対しては解決先送りコーピ ングという「あまりこだわらない」とか「気に しないようにする」といった捉え方によってコ ントロールできる可能性も示された。以上よ り、女子学生はいかに周囲に影響を受けすぎず

自分を尊重していられるかがストレスへの対処 のキーポイントとなるのではないだろうかと考 える。しかし、女子学生の被影響性の高さを考 慮すると、信頼できる他者からの支持が重要で あり、他者との比較によって自分を確認するば かりではなく、信頼できる他者から自身の存在 を肯定してもらうことなどの体験がストレスを 低減するのではないだろうか。

4.まとめと今後の課題

本研究では、大学生のストレス状況の調査と ともにストレス反応に影響を及ぼす諸要因につ いて検討した。その結果、男子学生の方がより 無気力傾向の得点が高いことが見受けられ、そ の要因として先延ばし傾向が大きな問題となっ ている可能性が示唆された。一方女子学生につ いてはストレス反応に対する被影響性の関連が 大きな特徴として挙げられた。

表3 共感性、先延ばし傾向および対人ストレスコーピングを説明変数、ストレス反応を基準変数 とした重回帰分析結果

基準変数(ストレス反応)

説明変数 抑うつ不安 不機嫌怒り 無気力

β t β t β t

男子学生 共感性

被影響性 ― ― ― ― ― ―

他者志向的反応 ― ― ― ― ― ―

想像性 ― ― ― ― ― ―

視点取得 ― ― ‐.19 ‐2.27 ― ― 自己志向的反応 .16 2.03 .18 2.07 .19 2.56 先延ばし傾向 .46 5.65 .31 3.58 .53 7.04

対人ストレスC

ポジティブ関係C ― ― ― ― ― ―

ネガティブ関係C ― ― ― ― ― ―

解決先送りC ― ― ― ― ― ―

R(R .53 .28 .45 .20 .61 .38

女子学生 共感性

被影響性 .28 4.03 .24 3.43 .25 3.56

他者志向的反応 ― ― ― ― ― ―

想像性 ― ― ― ― ― ―

視点取得 ― ― ― ― ― ―

自己志向的反応 ― ― .27 3.88 .17 2.44 先延ばし傾向 .24 3.42 ― ― .20 2.80

対人ストレスC

ポジティブ関係C ― ― ― ― ― ―

ネガティブ関係C ― ― ― ― ― ―

解決先送りC ‐.15 ‐2.18 ― ― ― ―

R(R .45 .20 .40 .16 .46 .22

(8)

ここには、学生たちの主体性のもてなさや自 信のなさ、やるべき・目指すべきことの曖昧さ が潜在しているのではないかと考えられる。例 えば山田・天野(2 0 0 3)は、自己不確実感や不 全感を訴える学生は、学業に意欲を持てず無気 力状態となり、大学生活への適応に大きな困難 を抱えると述べている。学生たちの主体性をい かに引き出すべきか、そして学生自身が「自分 はこうあるべき」というアイデンティティの形 成をどのようにして支援できればよいのかとい う問題を内包しているように感じられる。今 後、自尊感情やアイデンティティ達成、目的意 識などの要因を絡めることでストレスとの関係 がより詳細に理解でき、さらなる有効な支援へ の示唆につなげることができるであろう。

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参照

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