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微小粒子状物質曝露影響調査報告書

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Academic year: 2021

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全文

(1)

(7)PM

2.5

抽出物が高血圧ラットの呼吸・循環機能に及ぼす影響に関する研究

要旨

大気環境中の浮遊粒子状物質の吸入により、呼吸器系のみならず心臓血管系に対するリスクが高 まることが指摘されているが十分に明らかにされてはいない。そこで、心臓血管系の病態モデルと

して自然発症高血圧ラット(SHR:Spontaneous Hypertensive Rat)を用いて、PM2.5抽出物及び

DEP 抽出物の影響について気管内投与を行い検討した。対照群として Wistar Kyoto ラット(WKY)

を用い、いずれの群も無麻酔、無拘束下で呼吸パターンならびに肺抵抗(Penh)と心電図を測定

し、R−R 間隔から心拍変動(HRV:Heart Rate Variability)解析を行い、自律神経活動について、

PM2.5抽出物とDEP 抽出物の影響を投与前、投与後 3 時間、投与後 24 時間で比較した。Penh は SHR で PM2.5抽出物、DEP 抽出物ともに投与後は投与前比べ、明らかな増加を示したが、24 時間 後には回復した。また、PM2.5抽出物の投与により R-R 間隔の延長、副交感神経活動の指標であ るHigh Frequency(HF)成分の増加を認めた。いずれも SHR に明らかな影響が認められた。

(7.1)背景・目的

ヒトの自律神経活動と虚血性心疾患及び心臓突然死のリスクは密接な関係があるとされており、 虚血性心疾患の発症には自律神経が大きく関与し、かつ突然死をもたらす重要な誘因が自律神経の バランスにあると考えられている。SHR は言うまでもなく成長とともに高血圧を呈する疾患動物 である。生後しばらくは正常ラットと同程度の血圧値を示すが、生後8 週以後より明らかな血圧上 昇を認めるようになる。したがって、正常血圧ラットのWKY と比較して心臓血管系への影響が鋭 敏に現れる可能性があり、今回の検討に適当な動物であると考えられた。 今回は、呼吸・循環器系への麻酔の影響を除くため、無麻酔、無拘束を条件にSHR と対照群で あるWKY に対する PM2.5抽出物とDEP 抽出物の急性効果について気道内投与を行い、呼吸パタ ーン、Penh、心拍変動解析から自律神経活動の変化について検討を行うことを目的とした。

(7.2)方法

動物は雄性のSHR と対照群である WKY をそれぞれ 10 週齢で購入し、少なくとも1週間の観察 を行った後、ネンブタール麻酔(45mg/kg ip)下で第Ⅱ誘導が行えるように心電図測定用の電線 を皮下に埋め込んだ。1週間後、動物が手術の侵襲から完全に回復した後、PM2.5抽出物及びDEP

抽出物を0.5mg/μl Dimethl Sulfoxide(DMSO)溶液で希釈し、PM2.5抽出物を3mg/kg、DEP

抽出物を3mg/kg、対照群として DMSO-Phosphate Buffer(PBS)をそれぞれ同量、ハロタン麻酔 下で気管内投与を行った(図2.7.2-1)。測定は、投与前、投与後 3 時間、24 時間後に呼吸測定シス テム(Baxco 社製)で呼吸パターンと Penh の測定を行った(図 2.7.2-2)。測定は原則として 10 分間の呼吸を連続測定し解析を行った。呼吸測定終了後、直ちに心電図を測定し、HRV の解析を 行った。HRV は測定した心電図の R-R 間隔から周波数解析を行い、0.27〜0.7Hz 成分を Low Frequency(LF)、0.75~3Hz 成分を HF とし、HF 成分を副交感神経活動、LF/HF を交感神経 活動の指標とした(フラクレットJr2 大日本製薬社)(図 2.7.2-3)。

(7.3)結果

Penh は、SHR、WKY のいずれも PM2.5抽出物の投与後3 時間で投与前に比べ明らかな増加を 示した。DEP 抽出物も同様に増加したが、増加の程度は PM2.5抽出物が顕著であった。SHR、WKY PM DEP 抽出物投与後 24 時間で投与前の値に回復した(図 2.7.3-1)。

(2)

抽出物の投与3 時間後で明らかな増加を示したが、DEP 抽出物の投与では変化がなかった。WKY は PM2.5抽出物の投与後 3 時間で HF が増加傾向を示したが、DEP 抽出物には変化を認めなかっ た。SHR、WKY とも 24 時間後には投与前と同様の値に回復した(図 2.7.3-3)。 交感神経活動の指標であるLF/HF は、SHR、WKY ともに PM2.5抽出物、DEP 抽出物の投与 による変化を示さなかった。 また、高血圧病態モデルであるSHR は、抽出物の投与前から正常血圧の WKY に比較して日状 的に交感神経活動が高い状態で維持されていることが確認できた(図2.7.3-4)。

(7.4)考察

今回の研究では、高血圧ラットであるSHR と正常血圧群である WKY の 2 群を用いて PM2.5 抽 出物と DEP 抽出物が呼吸器及び循環器系に及ぼす影響について検討した。PM2.5抽出物の影響に ついては、気管内投与後3時間でPenh に明らかな増加が認められ、24 時間後には投与前と同様の 値に回復した。このことから、PM2.5抽出物が気道あるいは肺に一過性の変化をもたらしたことは 明らかである。また、同量のDEP 抽出物の投与の影響は PM2.5抽出物に比べて軽度であり、PM2.5 抽出物のほうがその影響が強く現れた。これまでDEP 抽出物の投与による Penh の増加について は報告されているが、PM2.5抽出物の効果が強く現れたことは興味深い。 一般的に気道内の異物は、気道粘膜下のirritant receptor を介して迷走神経を刺激し、その結果、 呼吸数が増加し換気量に変化をもたらすものと考えられている。しかし、これまでのわれわれの検 討から呼吸数に著しい変化は認められず、PM2.5の影響は必ずしも気道からの迷走神経反射による 変化だけでないことも予測される。 また、SHR において PM2.5抽出物の影響がR-R 間隔の延長、すなわち心拍数の減少をもたらし、 副交感神経活動の指標であるHF 成分が有意に増加した。対照群である WKY は PM2.5抽出物の気 管内投与後にHF 成分は増加傾向を示したものの、SHR の増加に比べて変化は緩やかであった。 PM2.5の影響がどのような経路を介して生じているかは今回の結果からは明らかでないが、肺毛 細血管から血液中に取り込まれた粒子が血流を介して心臓あるいは神経活動に影響を与えている 可能性が考えられる。 一方、交感神経活動の指標であるLF/HF には PM2.5抽出物、DEP 抽出物の投与による変化を 示さなかった。

(7.5)結論

循環器疾患モデルとしてSHR を用いて、PM2.5抽出物、DEP 抽出物を気管内投与し、呼吸・循 環器系にもたらす影響について検討した。SHR において PM2.5抽出物の投与後、明らかな肺抵抗 の増加、心電図R-R 間隔に延長すなわち心拍数の減少と副交感神経活動の増加を認めた。

(3)

1week

Operation

0h

3h

24h

Measurement

of Lung resistance

Measurement

of electrocardiogram

Intratracheal

instilation

Control(DMSO-PBS) PM2.5 extract DEP extract Dose ; 3mg/kg

Before

After

24hr. after

--Rat--hypertensive

(SH) Wistar/Kyoto (WKY) (8/1group, 11w) 図 2.7.2-1 実験プロトコール Expiration Inspiration Box pressure

+

-Ti Te Tr PIP PEP start of breath end of breath

Penh ( Enhanced Pause )

= Pause x (

PEP

/

PIP

)

Pause = (Te-Tr) / Ti

36%

(4)

Electrode

Operation

R-R

R R

Low frequency (LF) range ; 0.27 ~ 0.75 Hz High frequency (HF) range

; 0.75 ~ 3 Hz P Q S T 図 2.7.2.-3 心電図測定方法 0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0 Cont. PM2.5 DEP 0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0 1.2 Cont. PM2.5 DEP

WKY

SHR

Penh Penh *** ** ** * After 24hr. after

Before After 24hr. after Before

(5)

0 40 80 120 160 200 Cont. DEP PM2.5 0 40 80 120 160 200 Cont. DEP PM2.5

WKY

SHR

R-R (msec) R-R (msec) ** After 24hr. after

Before After 24hr. after Before

図 2.7.3-2 PM2.5抽出物及び DEP 抽出物気管内投与による R-R 間隔の影響 0 0.1 0.2 0.3 0.4 Cont. DEP PM2.5 After 24hr. after 0 0.1 0.2 0.3 0.4 Cont. DEP PM2.5

WKY

SHR

HF (msec/√Hz) HF (msec/√Hz) ** P≒0.07

Before After 24hr. after Before

(6)

0 0.5 1.0 1.5 2.0 Cont. DEP PM2.5

Before After 24hr. after

0 0.5 1.0 1.5 2.0 Cont. DEP PM2.5

WKY

SHR

LF/HF (msec/√Hz) LF/HF (msec/√Hz)

Before After 24hr. after

図 2.7.2-2  肺抵抗(Penh)の測定方法
図 2.7.3-1  PM 抽出物及び DEP 抽出物気管内投与による肺抵抗の影響
図 2.7.3-2  PM 2.5 抽出物及び DEP 抽出物気管内投与による R-R 間隔の影響  00.10.20.30.4 Cont.DEP PM2.5 After 24hr
図 2.7.3-4  PM2.5 抽出物及び DEP 抽出物気管内投与による LF/HF の影響

参照

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