社会科学論集 第81号 1994.1
内生的価格分布 :概観 (下)
‑ 同 時 点 で の価 格 分 布 ‑ ̀*'
並 河 永
キーワー ド:流通,サーチモデル,戦略的価格決定,固定客,消費者利益
要 約
同時点での価格分布を 内生的に導 くサ ーチモデ ル とそ のバ 1)エー シ ョンが検討 され 声。 ここで も 異時点間の価格設定に付いて と同時に,価格分布 が正 当化 され るときには固定客や固定商圏に相 当 す るものが必ず モデルの中に含 まれ てい る。そ し て,い くつかのモデルではそ うした消費者 グルー プの問での外部効果や利害対立が導かれ てい る。
とすれ ば,価格 のば らつ きを現状 として受け入れ て分析を進め る際には,すべての消費者 の利益 と 一致す る一般的な 「消費者 の利益」 は必ず しも存 在 しない ことを念頭に置 く必要があ る。
1.サーチモデル
消費者が各企業 の価格を尋ね歩 くサ ーチモデル に付いては,Rothschild[1973],McKenna[1986
a] [1986b]とい ったす ぐれたサ ーベイがあ る。
これ らの業績 に依拠 しつつ,その応用に必要 な限 りでのサ ブセ ッ トを論 じたい。
サ ーチモデルを論 じる場合,モデルのタイムテ ーブルにはふたつ の要素が関係す る̀。 1期 にサ ‑ チす る回数は1回 とは限 らない。そ の期 のサ ーチ 回数はその期首 に決定 され ると仮定す ると, 1期 にn回のサーチを して最 も有利な申 し出を受け る がnは期待利得を最大化す るように決め られ る,
とい うモデル と,あ る留保価格が得 られ るまで1 期 に一度ずつサ ーチを続け る, とい うモデルが両 極端の定式化 と して考 え られ る.McK占nna[1986
a]は前者をFixedSampleSize(FSS)モデル, 後者を Sequentialモデル と呼んでい るJ。 のちに 述べ るNewspaperモデルはFSSモデルの特殊 ケ ース といえ る。
一般 に,各期 ごとにサ ンプル数を決めなが ら, そ の最良の値を見てサ ーチを続行す る か ど うか 決め ろ, とい うモデルにす る と,FSSモ デ ル と Sequentialモデルの長所を組み合わせた形 にな り, いずれか単独 よ りも消費者 の期待利得は高 まる。
(Morgan&Manning [1985])
FSSサ ーチのバ リエー シ ョンとして,1回のサ ーチで得 られ る価格情報 が何個 であ るか分か らな い (平均何個観察で きるか, と言 う意味 でのサ ー チ密度は選択 できる), と い う言 わ ば Random SampleSizeのサ ーチモデルが Wildel1977]で あ るが, これについては後述す る。
価格分布を既知 とした ときの Sequentialサ ー チモデルの解 は,一般にあ る値 以上 に有利 な価格 を得た らそ こでサ ーチを止め る,とい う「Optimal Stopping革ule」 になる。
一ほ とん どの Sequentialサ ーチモデルでは, 企 業 の価格分布は既知 であ り,サ ーチの結果 に よっ て価格分布に関す る消費者の予想は影響 され ない と仮定 され てい る。 ベイズルールに よって事後分 布を変 えるモデル(AdaptiveSearch)は非常 に少 23
81 数 であ る。(例 えばRosen丘eld
&
Shapiro[1981])その理 由は,ひ とつには事後分布 の導 出公式が一 様分布を除いて複雑 なこ とであ るが, も うひ とつ には事後分布 の導入に よる変化の方 向が定性的に 定 ま らないためであ る。低価格 の売 り手を見つけ る と,そ こでサ ーチをやめ る利益 も増すが,サ ー チを続けた ときの期待利得 も上昇す る。結果がパ ラメータに依存す るとすれば,事後分布を導入 し てモデルを複雑化す る利益はほ とん どない ことに な る。(McKenna[1986a])̀1'
過去にサ ーチ した売 り手が まだ オプ シ ョンとし て残 ってい る場合 も,同様 の問題が生 じる。過去 のオプシ ョンはサ ーチを止め ることの利益 と,サ ーチを続けた ときの期待利得 の両方を 引 き 上 げ る。あ るT時点 でサ ーチが強制的に中止 され るも の と仮定すれば
,T
時点 でのサ ーチ継続 の期待利 得はゼ ロにな るか ら,若干 の比較静学が可能 にな る。(McKenna[1986a])1価均衡 のケースで,独 占価格が付 くか競争価 格が付 くかは定式化 に応 じていずれ で も 有 り得 る。(McKenna [1986b])以下 では, 2価格以 上 の付 くケースを順 に検討す ることに しよ う。
2.スイ ッチ ングモデル
中間財取 引を念頭 に置いた, スイ ッチ ングコス トを伴 う取 引の理論 モデ ル に は,Demski,Sap‑
pington&Spiller[1987],Klenperer[1987a]
[1987b] [1989]とい った論文 があ る。 また,労 働経済学 の分野で これ に似たモデル として,雇用 者 に新規採用者訓練 のための クー ソオーバ ー コス トがかか るよ うな ジ ョブサ ーチモデル が あ る。
(Stiglitz [1985])長期契約に よる取 引 と短期的 なスポ ッ ト取 引の間での価格差は,確率的な シ ョ
ック‑の対応を分析 の中心に置いてい る限 り, こ の論文 で念頭に置いてい る 「価格分布」 には含 ま れ ない。 しか しStiglitzのモデルでは一定 の外生 的な確率に従 って退職す る労働者たちの賃金分布 に付いての分析が行われてい るので, 紹 介 し た い。
各労働者は毎期 自動的に On‑the‑Jobサ ーチを 24
して,現在 の職 よ り有利 であれば転職す る。ただ しサ ーチ回数は平均Sのポア ソン分布に従 うとす る。
生産関数が唯一 の生産要素であ る労働 について 一次同次だ とす る と,利潤を最大化す る企業は, 労働者ひ と りあた りか ら得 られ る利潤を最大化す る。労働者 の就職時に企業‑のSpeci丘cSkillの ためにTの訓練費用がかか るとす る。労働 の限界 生産物を a,賃金 Wの分布を F(W),利子率をY
とす ると,企業 の 目的関数は,
( 2 . 1 )
a‑l w+l s ( 1 ‑F(
uJ))+r ] T ]
とあ らわ され る。 この とき, 1賃金均衡 に始 まっ て,賃金 の連続分布す る均衡 まで,無数 の均衡 が あ ることが示せ る。
Stiglitz[1985]では,規模 に関 して収穫逓減 の 場合,労働者が正 の留保賃金を持 っていて,かつ 全企業が留保賃金 ち ょうどを払 う (そ してSの率 で辞職者が出る)端点解を排除す るための仮定を 置 いてい る。 この仮定があれは,対称均衡 の もと では均衡か らのかい離は企業 に取 って望 ま しくな い.端点解を排除す る仮定 とは,TXSが十分 に 大 き く,収穫逓減 の程度が十分 に小 さいので,離 職 が起 こらない よ うな賃金を払 うほ うが利潤が高 くなる, とい う仮定であ る。均衡賃金 よ り安い賃 金を付ければ,他の全企業 よ り安 い賃金を付けて い るのだか ら,難職率はSにな るが, これは上記 の端点解を防 ぐ仮定 に よって,企業 に取 っては均 衡賃金 よ り利潤が低 くな る。い っぽ う均衡賃金 よ
り高い賃金を付ければ,収穫逓減 の状況下 では企 業 の利潤はやは り減少す る。
この場合,ゼ ロ利潤 の均衡だけでな く,あ る範 囲の任意 の正の利潤を企業 に与 える よ うな均衡を 考 え ることがで きる。 また,やは り賃金が連続分 布す る均衡 (各企業 の利潤は同一) も 存 在 す る し,労働需要量が供給を下 回 り,高い賃金 の もと で 「非 自発 的失業」 が生 じる均衡 も存在す ること を Stiglitzは示 してい る。
また,雇用者が均一 の賃金を付ければ,社会的 に離職 の コス トを節約で きる, とい う含意があ る ことは容易 に分か る。道に言えば,Stiglitz[1985] の結論す るよ うに均衡 が無数 に存在す る とい うこ
とは,民間企業 の 自由な行動を許す限 り,社会的 なサ ーチ コス トが最小化 され ることはほ とん ど期 待 で きない, と言 うこ とであ る。
このモデルは ランダムに ウイ ン ドウシ ョッピン グをす る消費者 と小売店 の関係になぞ らえること が出来 る。 スイ ッチ ソグコス トの存在 と, Sobel
らのモデルに似た消費者 の フローを仮定すれば, 価格分布を同様に生 じさせ るモデルを作 ることが で きる。 しか しこの場合で も,消費者は現在取 り 引 きしてい る店 での価格は知 ってい るのでそれ以 上 の価格 では取 り引 き しない, とい うことが ポイ ン トになる。逆 に企業 の立場か らみれば,企業は あ るグループの消費者を 「固定客」 として持 って い ることにな る。
3 .
サーチ と外部性Sho ppe r / No n・ Sho ppe r
をめ ぐって消費者 の間でサ ーチ コス トが異 な ってい るな ど の理 由で,消費者 の一部 しかサ ーチ しない, と仮 定す るモデルがあ る。消費者全員がサ ーチをやめ て しまえばすべての企業がそれ ぞれ の消費者 に対 して独 占企業 としてふ るま うことがで きるか ら, サ ーチす る消費者が全消費者 のために価格抑制 の 役割を担 ってい ることにな る。
ここに外部性があ り, フ リー ライデ ィ ン グ の 問 題 が 生 じ る.(Grossman& Stiglit2;[1976] [1980]) サ ーチす る消費者 の割合が変化す る と企 業 の価格決定が ど うな って行 くか, とい う問題は Wilde
&
Schwartz[1979],Sadanand&
Wilde[1982], Schwartz&Wilde[1985]で扱われて い る。
Schwartz&Wilde[1985]のモデルでは,Unit Demandで
,A
人 の消費者がい る。A人 の うち比 率 alの消費者 (Non‑Shopper)は 企業をひ とつ だけ ランダムに選ぶが, 残 り(Shopper)は2つ の企業を選び, よ り望 ま しい方か ら買 う。ただ し どち らの消費者 も留保価格 よ り高ければ まった く 買わ ない。 このモデルではサ ーチ コス トは明示的 には考慮せず,サ ーチす るか ど うか の消費者 の意 志決定 も問わず,外生的にサ ーチす る消費者 の比率を定めてい る。
企業は高 品質 ・低 品質 の2種類 の財 のいずれか を生産す るO 固定費用 F,.と限界費用 ciがかか り, 1企業 の生産能力S,(i‑H,L)まで生産 し た とき平均費用が最低にな るとす る. F H≧ F L,
cH≧ cLと仮定す るが,「量産効果」 に よって高品 質の財が安 く生産 で きる, とい う事態を避け るた めに, sH≦ sL と仮定す る。 企業の参入 ・退 出は 自由であ るとす る。す るとこの とき, も し消費者 が費用 な しに 全企業に ア クセスで きれば S.・の も
とでの平均費用がその品質の財 の 「競争価格」 と い うことにな る。 この競争価格 の もとで,消費者 が高 品質の財を好むか,低品質 の財を好むかに よ って,消費者 に取 って望 ま しい状態 は変わ って く る。消費者が競争価格 で,好む方 の財を手 にす る ことが消費者に取 って もっとも望 ま しい。
い っぼ う企業 に取 って,つけ られ る最高 の価格 は,消費者 の留保価格 vH, VLであ る. この価格 の もとでの損益分岐点 とな る生産量は,それ ぞれ
aH‑ F H/(vH‑ CH), αL‑ F L/(vL‑ CL) とな る。
この とき, もし消費者が競争価格 で高品質を好 む な ら,全企業が高 品質 の財を競争価格 で供給す るこどが均衡 にな るためには,
(3.1) alSH≦min(aH,αLi
が必要十分条件であ る。 なぜ な ら,均衡か らはず れ る企業 の行動 としては,
(1)競争価格 よ り高い価格 (留保価格)を付け る
(2)低 品質の財を作 ってその留保価格 で売 りつ け る
の2種類だけを考 えれば良いが,いずれ も企業あ た りの Non‑Shopperの需要 しか 引 きつけ ること が出来ず,競争価格 の もとで A/SH個 の企業が競 争 してい る とき,その需要量は alSH だか らであ る。 これ と留保価格 の もとでの損益分岐点を比べ れば上記が成 り立つ。
消費者が高品質財を好む とす ると, alSH,αH, αLの3つの値 の うちいずれが 最 も小 さいかに よ って,均衡を上記 も含めて3つ の タイプに頬別す ることがで きる。 α〝 が最 も小 さい ときは,す く な くともい くらかの企業が競争価格 よ りも高い価
25
号 格をつけ ることにな るが,低品質財 は生産 され な
い。 αLが最 も小 さい ときは, 低品質財 も供給 さ れ,かつ競争価格 よ り高い価格をつけ る企業が出 る。従 って消費者が高品質 の財を好む限 り,全企 業 が競争価格をつけ る均衡は,全企業が高品質 の 財を作 る均衡以外にはない, とい う結論 にな る。
これ に対 して,消費者 が競争価格 で低品質を好 む ときは, 2つ のケースが考 え られ るovH‑ CH<
vL‑ CLな らば,つ ま り高品質財 よ り低品質財 の方 が (限界収入) ‑ (限界費用)が大 きければ,高 品質財 の生産 され る余地 は な い。 そ うでなけれ ば,Non‑Shopper目当てに過剰 品質 の財 が生産 さ れ る可能性があ る。後者 の ケースを さらに検討す
る。
低品質財 のみが生産 され る (過剰品質 の財が生 産 され ない)条件を見 るには,競争価格 で全需要 を まかなえ る数 の企業が参入 してい るとき,企業 あた りの Non‑Shopperの需要が 留保価格 での損 益分岐点を越えてい るか ど うかを見 れ ば 良 い。
この企業数は A/SL,Non‑Shopperの需要合計は Aalだか ら, alSL≦ αLな らばすべての企業は競 争価格を付け,それが成 り立たなければ競争価格 を上 回 る価格を付け る。
この よ うに,どち らの ケースで も,Non‑Shopper の比率 alが十分に小 さい ことが競争価格が付け られ るための条件 となる。価格を抑制す るだけで な く,品質面 で消費者 の最 も好む水準 の財が供給 され るために も,消費者 のサ ーチが有 効 で あ っ て,消費者が 自分 で比較検討を行 うことが他の消 費者 に も及ぶ プラスの効果 を 持 つ, と言 うのが Schwarlz
&
Wildeの貢献 であ る。い っぼ うWilde[1977]は, 1回のサ ーチで観 察 で き る価 格 サ ンプル数 が ポア ソン分 布に従 う (平均 サ ンプル数は選択 で きる)Random Sample Sizeのモデルで,ここで も連続的な価格分布が生
じる。Wilde自身が指摘す るよ うに,価格を1個 だけ観察す る確率 と, 2個以上観察す る確率のい ずれかがゼ ロだ と価格分布は生 じない。価格を1 個だけ観察 した消 費 者 は, 観察 した企業以外に
(留保価格以上 な ら買わ ない とい う選択肢はあ る が)取 引先を選択す る余地はないが,選択 の機会
のあ る消費者 も別 にいなけれ ば価格分布は生 じな い と言 うことであ る。
これをサ ーチを受け る企業 の視点か ら言い換え れば, 自分 の店 にや って くる消費者 の中に,選択 の余地のない消費者 と,選択 の余地を残 した消費 者 が両方存在す る ときにだけ,多数を低価格 で売 って も少数を高価格 で売 って も利潤が同 じにな る よ うな状況が生 じる, とい うことであ る。 この場 合 の 「選択 の余地 のない消費者」 は 「固定客」 と い うよ り 「一見 さん」 と形容すべ きであろ うが, 企業選択 の余地 のない消費者がゼ ロで もな くすべ てで もない, とい う点 では, このモデルで価格分 布 の生 じる条件はすでに取 り上 げたモデル群 と共 通 してい る。
限界費用は一定 と仮定す るモデルが多い中で, Reinganum [1979]は企業 の限界費用が連続的な 分布 G(C)に従 うと仮定 してい る。 しか しUnit Demandの よ うに消費者 あた りの需要量があ らか
じめ固定 されてい るモデルでは,企業は 自らの費 用条件 に関わ らず消費者 の留保価格 〝をつけ るこ とが最適にな り,連続的な価格分布は現れ ない。
連続的な価格分 布 を 得 る た め に, Reinganum [1979]は消費者 がそれ ぞれ 需要 の 弾力性一定 の 需要関数を持 ち,価格が安ければ購入量を増やす (しか しあ ま り高い と次期 に需要を持 ち越 してふ たたびサ ーチす る) と仮定 した。
この場合,企業は消費者 に,通常の独 占価格を 提示す る。ただ し,独 占価格が来期 に需要を持 ち 越すための留保価格を上 回 った ときは,消費者を 逃がす よ りも留保価格を付けた方が得 になる。従 って,留保価格以上 の価格 は付かず,留保価格が 分布の質点 とな って, ここで価格 の分布関数 は不 連続 に増大す ることにな る。留保価格を下 回 る区 間では価格 は連続的に分布す る。
ただ し,需要 の価格弾力性が一定 と い う こ と は, よ く知 られてい るよ うに,消費者 の支払 う価 格 ×数量が一定 とい うことであ り,消費者 は どの 企業 に飛び込 んで も,価格が高ければ消費量を減 らして,常 に一定 の予算を使 って行 く こ と に な る。 こ うした特殊 な 「価格分布」 が どれだけ現実 を説 明で きるかは議論 の余地があろ う。
ところで,消費者 の中にShopperとNon‑Shopp‑
erがい る場合,その利害は必ず しも一致 しない。
よ り少ない数 の企業がお り低い価格を付け るよ う にな ると,Shopperに とって ほ 有 利 で あ るが, Non‑Shopperに とっては高価格 の企業に飛び込 4/
で しま う確率が高 くな る。Sta血l[1989]は,サ ー チにおけ るこ うした消費者 の グル ープ間での利害 の不一致を 明快 に示 した。
Stahlのモデルでは,UnitDemandではな く 右下が りの需要関数
D(
P)を各消費者 が持 ってし1,‑る。サ ーチルールはSequentialSearchで,最初 のサ ーチだけは無料 で行 え,その価格を もとにし て,消費者余剰の増加分 の期待値 とサ ーチ コス ト を見比べてサ ーチす るか ど うかを 決め る。 Shop‑
perは2回 目以降 のサ ーチ も無料 であ る。 消費者 の最適戦略はいわゆ るOptimalStopingRuleで, あ る留保価格を見つけ るまでサ ーチす るものにな るが,最初 のひ とつ の価格を ランダムに無料 で与 えてい るために,社会全体 では留保価格 にば らつ きが生 じうる(2)。
企業 の固定費用はな く,限界費用は 0で一定 と 仮定 されてい る。Shopperの比率が1の ときは事 実上 のベル トラソ競争にな り,比率 0の ときは独 占価格がつけ られ ることは直観通 りであ る。比率 が この中間の ときは混合戦略均衡がただひ とつ存 在す ることを Stahlは示 してい るが,Stahlの独 創的な点は,参入 自由,利潤 とい う条件を付けず に企業数を外生的に与 えた モデルを解 き,企莱数 の変化 に よる価格分布 の変化を調べた点にあ る。
それ に よれば,企業数が増加す ると混合戦略下 で最低価格を取れ る確率が低 くな るので,独 占価 格 に近い価格を よ り多 くつけ るよ うにな る(4'。 と ころが分布 の下 限は逆 にゼ ロに近づ き,極端 な廉 売企業が少数現れ る結果 にな る。 これ に関 して先 に述べた よ うに ShopperとNon‑Shopperの利害 は対立す るが,生産者余剰 も含めた トータルの社 会的余剰が増加す るための一般的条件はは っき り
しない。 しか し,企業 の参入が社会的余剰を減 ら す とい う数値例を StaIllは示 してい る。
Carlson& McAfee[1983]では,UnitDeman‑d に戻す代わ りに,生産 コス トとサ ーチ コス トの両
方 が連続的に分布す ると仮定 して,価格分布を導 いてい る。生産 コス トが連続分布す る と い う の は,なん らか の理 由で競争 メカニズムが働いてい ない ことを最初か ら仮定 してい ること に な る か ら,今回のサ ーベイの 目的にそ ぐわ ない。
4.Newspaper
モデル
消費者はあ らか じめ企業 の価格分布を知 ってい て,一定 のサ ーチ コス トを払 えばすべての企業 に ついてそれぞれ の価格が分か るが,サ ーチ コス ト を払わ なければ ランダムに店を選ぶ しかない とし よ う。すべての企業 の価格が書かれ てい るメデ ィ ア (Newspaper)があ る と仮定 し, サ ーチす るか わ りに この メデ ィアを買 う, と考 えて も良い。 こ れが Salop&Stiglitz[1977]の Newspaperモ
デルであ る。
Salop& Stiglitz[1977]では, サ ーチ コス ト の異なる2種塀 の消費者がい る場合 の均衡 に付い 七,サ ーチ コス トの高い消費者だけを相手に高い 価格 で少量を売 る企業 と, どち らの タイ プも引 き つけ る薄利多売の企業が併存す る (生産技術は固 定費用あ り,限界費用逓増,参入 自由 ・利潤 ゼ ロ) 均衡を導いてい る。
上記 の Salop& Stiglitzモデルは1期限 りの モデルであ るが, 2種頬の価格 のいずれを取 って も企業 の利潤はゼ ロで変わ らないか ら,すべての 企業が対称的な混合戦略を取 ってい る, と均衡を 解釈 して も良い。Varian [1980]は企業 に混合戦 略,つ ま り価格 の分布関数 F(P)を選ばせ,混合戦 略の範 囲での対称均衡を求めてい るが, じつは結 果 の差は平均費用 曲線がU字型になる (Salop
&
Stiglitz)か, 逓減す る (Varian)か とい う仮定 の差か ら生 じてい る。Salop& Stiglitzの均衡 も 各企業 の利潤はゼ ロなので, 2タイプの企業 の併 存を企業 の混合戦略 と解釈 して も差 し支 えないか らであ るふ
Varianモデルや, す でに述べた Schwartz&
Wildeのモデルでは,サ ーチす る消費者 の比率は 外生的に与 え られていて,サ ーチ コス トはゼ ロで あ る。(Salop & Stiglitz[1977]では少な くとも 27
号 ひ とつ のタイ プの消費者は正のサ ーチ コス トを持
ち,サ ーチ した方が得か ど うかを判断 した) この ため Varianのモデルではひ とつの価格が付 く純 戦略均衡 は最初か ら存在 しない状況に な っ て い
る。
Salop& StiglitZ;モデルや Schwartz&Wilde モデルでは,価格分布に質点があ る。つ ま り分布 関数が不連続 に ジャンプす るよ うな点があ って, その価格 ち ょうどをつけ る正 の確率があ るので, 2つ以上 の企業が同 じ価格を付け るケースを明示 的に考慮す る必要があ る。 しか し分布関数が連続 していれば,あ る特定 の価格を付け る確率はゼ ロ とみなす ことがで きるので,引 き分けは無視す る ことが出来 る。 Varianのモデルは質点が生 じな い ことが証 明で きる。 したが って企業数Ⅳ ,分布 関数F(P)の もとで 自分が最低価格を付け る確率 R(p) 紘,
(4.1) R(p)…[1‑F(P)]̀N 1'
とな る。最低価格を付け るとShopperの需要すべ てを引 きつけ ることが出来 る
。
Pで最低価格を引 き当てた ときの利潤を〝∫(♪),引 き当てなか った ときの利潤を〝′ (
♪) とお く。生産は需要 に合わ せて行われ,固定費用があ って平均費用は逓減すると仮定す るので
,
ガタ
(♪ ) >〝 ′ (
♪)であ る。混合戦略 に入 るどの価格を付けた ときも,期待 利潤は等 しくなければな らない し,参入 自由なの でそれ はゼ ロでなければな らない。従 って,密度 関数
f (
P) が正になるPでは,( 4 . 2 )
H s(p)R(p ) +Hf (
P)[1‑R(P ) ]‑0
が成 り立つ。 これを
R(
P) について解 き,(4.1) を代入す る と,( 4 . 3 ) 1 ‑F( P) ‑[ Hf ( ♪) /
( 1 I F (
P)‑
H s(p))][l/くN 1)】を得 る。左辺は正,右辺 の分母は負なので, (4.4)
1 7 ′ ( p )>0
が従 う。 また,平均費用が厳密に逓減す る とすれ ば,(4.3)の右辺は カ の厳密な減少関数 にな るの で,F(P) は Pの厳密な増加関数 にな る
。
Pは督 保価格 〝と最低平均費用♪ *
(Shopper全員 と企業 あた り平均 のNon‑Shopperの需要をみたす とき の平均費用) の間を連続分布す る。Varianは固定費用
k
, 限界費用 0の ケースを 例 と してい るが, こ の と き′(♪) は 1/[♪(1‑9/h)] に比例す ることが示せ る。つ ま り
f(
P)は 両極端で高いU字型の分布である。Shilony[1977]はすべての消費者をい ったん各 企業 にすべて割 り当てた後 で,消費者 に移動費用 を課 して混合戦略均衡を求めてい る。企業数はⅣ で,それ ぞれ一定 の ローカル市場を持 ち,消費者 は このNヶ所 の p‑カル市場 に等分 されてい る。
消費者 の留保価格は1に標準化 され, 1を越え る 価格は付け られ ない もの と仮定す る。企業 の生産 費用はゼ ロとす る。
企業は同時に価格を決め,それ ぞれ の企業 の価 格は無料 で全消費者 に知 らされ る(Newspaperが 無料で配 られ るの と同 じ)。 消費者は 任意 の p‑
カル市場 に買いに行 って良いが,移動費用Cがか か る。 のちにみ るよ うに,分布は最低価格 ではな いあ る1点で しか質点を持たず,残 りの区間では 連続 なので,最低価格を2企業以上 が付け る確率 は無視す る。
あ る企業が価格 タをつけ ると,次の4種類の結 果 のいずれかを得 る。
① Pは最低価格 ではなか ったが,価格差がC
以下だ った。売上1。
② Pは最低価格だ ったが,最高価格 が
P+C
以下だ った。売上1。
(参 Pは最低価格 で, i個の企業が
P+
C以上 の価格を付けた.売上 (i+1 )
0④ 最低価格がp‑Cを下回 った.売上 ゼ ロO 分布関数 F(P)の連続性を仮定 し, これ らを集 計 して企業 の期待利潤 γを求め る。混合戦略で選 ばれ る少では期待利潤は等 しくなけれ ば な ら な い。
Shilonyが求めた混合戦略均衡は,最高価格 と 最低価格を持 ち,途中にま った く付け られない価 格帯が1箇所 あ り,その価格帯 の上端で質点があ る, とい う複雑 な ものであ った。 ここ で も や は り,価格分布を 内生的に生 じさせてい るのは,上 記 の①や② の よ うに,特定 の消費者 のみが取 引に 応 じる可能性の存在 であ る。③ と④ の可能性 のみ が残 されていれば,各企業 の売上 は需要すべてか
ゼ ロのいずれかにな り,かつ取 引はすべて同一 の 価格 で行われ るであろ う
5 .
価格宣伝モデル( DM
モデル,J o ur nal
モデル)企業 の側か らのサ ーチモデルは,広告を巡 る様 々なモデルのサ ブセ ッ トといえ る。広告 の機能 に 付いては,広告費 とい うサ ンクコス トを支 出す る ことが品質に関す るシグナル とな る, とい う扱 い 辛,広告 に よって消費者が説得 されて,あ る財か ら受け る効果が高 まる, とい う扱いな ど様 々な も のがあ るが,価格 と企業 の所在 に関す る広告を出 す ことで消費者 と企業 の間の取 引機会がは じめて 生 じる, とい う扱いが ここでの主題 であ る。
Butters[1977]は,企業側が ダイ レク トメール の よ うな宣伝を消費者 ごとに送 る, とい うタイプ のモデルを分析 してい るOひ とつの宣伝 にかか る 費用は み,生産 にかか る固定費用は0,限界費用 は Cで一定 であ る.消費者は留保価格yの1タイ プ しかいない。
宣伝を受け取 らなか った消費者は消費を しない と仮定す るか, 自分 でサ ーチす ると仮定す るかで 結論は多少違 って くる。
消費者 のサ ーチを考 えない場合,す くな くとも C+bの価格を付けなければ費用を回収で きず,こ れが価格分布の下限 とな る。 また
,P l >C
+bを衣 たす ♪1を全企業が宣伝す る純戦略対称均衡はあ りえない。♪1をわずかに下 回 る価格を付ければす べての消費者を引 きつけ ることが出来 るか らであ る。 また, [C+b,V]の範 囲で価格分布に不連続 な点があれば,不連続 区間の下限の価格を付けて い る企業はす こし価格を引 き下げて も顧客を減 ら さずにすむか ら,均衡価格分布は この範 囲で連続 しなければな らない。企業 の付け る価格 の分布関 数は(5.1) F(P)‑ln([♪‑C]/b)/ln([V‑C]/b) C+b
≦
p≦Vとなることが示せ る。
次に,消費者がサ ーチ コス トSでサ ーチで きる としよ う。消費者 はすべての宣伝を受け取 り,そ
の最低価格を見てサ ーチす るか ど うかを決め る。
逆 に言えば,消費者がサ ーチを決意す るよ うな価 格 ではい っさい取 引は成立 しない。 とすれ ば,実 際にサ ーチを行 うのは, 不運 に も 1通 も DM を 受け取 らなか った消費者 (の全員) であ り, 1回 限 りでは消費者は必ず 〝以下 の価格を見つけ る。
このサ ーチを行 う消費者 の全消費者 に 占め る比率 を (1‑γ) と置 く。γは消費者 のサ ーチに よる期 待消費者余剰がSに等 しくな るよ うに内生的に決 定 され る。
この場合の価格分布は,分布関数 の形 としては (9・1)式 に よく似てい るが, 下 限が C+br, 上 限 は C+br/(1‑r) とな る。下限は 自分 でサ ーチ し て くる消 費 者 が 現 れ た た め にす こし下 が ってい る。
消費者 のサ ーチがなければ,平均宣伝数ln([∽
‑C]/b) は社会的余剰‑宣伝費を最大化す るよ う に決 まってい ることが示せ る。 しか しサ ーチが認 め られた ときは,上記 の厚生 の指標か ら言 えば, サ ーチは過小,宣伝 は過大にな ってい るo
Stegeman[1991]は これに対 して,消費者 の留 保価格が一定ではな く,分布関数 で(〟)に従 うモ デルを分析 してい る。留保価格が上 限mを持つ も の とす ると,均 衡 で は Buttersのモデル と同時 に,あ る区間に広が った価格分布が生 じる。α(♪) を,消費者ひ と りあた りに発送 され る価格 少の宣 伝 メール数をあ らわす関数 としよ う。す なわ ちα はFに消費者あた り発送 メール数を掛けて得 られ るO この とき,社会的余剰一宣伝費は,
(5.2) Ⅵ′(α(♪))
‑ 招
qw(V‑C)(1‑e'‑a(q)')dT(V)‑bα(m)
であ ることを Stegemanは示 した。Buttersの ケ ースはFがあ る値 Vで 0か ら1に飛び上が る階段 関数 のケース として この式 に含 まれ るが, この場 合社会的余剰一宣伝費は常に
(5・3) W(α(p))‑(V‑C)(1‑ e'‑a
( p ' ' )
‑bα(V)
となる
O( m ‑
2 に注意 。)関数αのひ とつの値α(〟) だけが単な る変数 として右辺に登場す るが, F(V)‑1 であ ることか ら, α(V)は消費者あた り
29
号 発送 メール数 (書いてい る価格 に関わ らず集計 し
た もの) にはかな らない。右辺には 少が登場 しな い ことに注意 したい。つ ま り, Buttersのモデル は,消費者 あた りの メール数 さえ最適に決 まれば, それ ぞれ の メールに留保価格を上 回 らない どんな 価格が書いてあろ うと,社会的余剰一宣伝費は変 化 しない特殊 ケースなのであ る。 こ うした ケース で各企業 の利潤が相等 しくなるとい う条件を置け ば,代表的企業 は まず社会的余剰を最大にす る宣 伝量を選び,ついでその中か ら利潤を最大にす る 価格分布を選ぶ ことにな るので,す でに述べた よ うにButtersモデルでは社会的に最適 な宣伝量が 実現す る。 (5.2)式 の よ うに留保価格 の分布がひ とつ の値 に退化 しない ケースでは,必ず しもそ う ではない。
Stegemanは(5.2)式 の もとで,どの価格 の宣伝 でめれ,宣伝をす こ し増やす ことが必ずⅥ′を増大 させ ることを示 した。(Stegeman[1991]命 題 1) つ ま り,留保価格 の分布が1点集中でない とき, 宣伝は常に過小なのであ る。
Stege血anは これに加 えて 次 の よ うな説 明を し てい る。サ ーチ としての宣伝 も含めて,一般 にサ ーチには2種類 の外部性があ る. サ ーチに よって 得 られた取 引機会か ら くる利益は,サ ーチ した主 体 と取 引相手 の間で分配 され る。 この場合,外部 性はサ ーチを過小にす る。(SearchExternality) これ に対 して,宣伝 に よって他社 の顧客を奪 うよ うに,サ ーチに よって同種 の主体か ら取 引機会を 奪 うとい う外部性 もあ り, これはサ ーチを過大に す る方 向に働 く。 (Undercut Externality)どち らの外部性が強 く働 くかほサ ーチ活動 の定式化 に 依存す る。上記 の彼 の命題1の証 明は,次の よ う な筋立てに よるものであ る。
(1)UndercutExternalityの働か ない最高価格 mでの宣伝 は過小 であ る (宣伝をわずかに増 やせば肝 が増加す る)0
(2)桝 よ り低い価格 の宣伝を増やす と,∽の宣 伝を同 じ量だけ増やす よ りも
,
肝 は大 き くな る。従 って どの価格 の宣伝 も,わずかに増や せば,肝 は増加す る。Stegemanの行 った も うひ とつ の拡張は, 複数 30
の宣伝 メデ ィアが存在 して,それ ぞれの購売老層 が異な った留保価格分布を持 ってい る場合の分析 であ る。 これをJournalモデル と呼ぶ ことに した
い 。
Stegemanの Journalモデルには, 2種類 の留 保価格 S,m(S<m)と2種類 の メデ ィアか ら宣 伝を受け取 る確率に よって,つ ご う3種額の消費 者 が同数だけい る。
① 留保価格 ぶ, メデ ィアDのみ購読
② 留保価格m, メデ ィアFのみ購読
@ 留保価格m,両方 の メデ ィアを購読(4) それ ぞれ, 自分 の購読す るメデ ィアか ら1‑g α
の確率で宣伝を受け取 ることは今 まで 通 りで あ る。
上記 の命題 の証 明 と同 じ論理 で, メデ ィアの最 高価格 は必ず宣伝が過小 になることが示せ るが, メデ ィアDでの最高価格を宣伝す る と,③ に属す る消費者 のい くらかをUndercutで きる。つ ま り, 不運に もメデ ィアDの最高価格を上 回 る価格 の宣 伝 だけを メデ ィアFか ら受け取 ってい た 消 費 者 紘, よ り有利 な申 し出に応 じて くる。 メデ ィアの 敬,消費者 の比率な どに よって,UndercutExter‑ nalityが Search Externalityを必ず上 回 るわ け ではない が,上 記 の3種 叛 の 消 費 者 のモデルで は, メデ ィアD の宣 伝 が 常 に 過 大 になることを Stegemanは示 してい る。(命題3)
ButtersやStegemanのモデルの価格分布には 質点がな く,かつ連続 であ る。つ ま り,あ る特定 の価格が 「ち ょうど」付け られ る確率はゼ ロであ り,あ る消費者 にまった く同 じ価格を書いたDM が2通以上届 く確率 もゼ ロであ る。 また,消費者 の留保価格 の範囲内で どんなに高い価格を付けて ち, それ よ り低い価格 のDM が同時に届か ない 確率が,た とえわずかで も常に存在す る。従 って,
ここで もやは り,消費者 の選択 の機会を制限す る ことで,は じめて価格分布が導かれ てい るのであ る。
も し特定の消費者 に DM を確実に 届け ること が出来 るのであれば,そのモデルはその消費者 に 対す るFirst‑PriceSealed‑Bidのモデル と同 じも のになる。 この とき,消費者 の需要関数をBidder
で あ る企 業が 知 って い れ ば,価格分布は生 じな い。
6 .
経 験 財購入後には じめて品質が消費者 に分か る財を経 験財 (ExperienceGoods)とい う。経験財 のサ ー チでは,消費者 は晶質 の一部に不確実性(Residual Uncertainty)を残 しなが ら 意志決定す る 必要が
あ る。 これ について簡単に見てお きたい。
消費者 の留保価格 即が,その財 のパ ラ メ ー タ ql,qlZに依存す るとしよ う。ただ し, qlは消費 者 に取 って観察可能 だが q2は観察不可能 であ る
としよ う。
(6.1) V‑V(ql,q2)
この よ うな財をSequentialSearchした場合, qlが q2の単調 な シグナル とな るか ど うかが問題
とな る。 もしq2の分布関数 ¢(q21ql)が,
( 6 . 2
)‑ q x w
(d¢/dql)dq2>0を満たせば, E[V]は qlの単調 関数 にな り,サ ーチを継続すべ きか ど うかは, qlがあ る 値を越 えてい るか ど うかで 決 ま る(Hey& McKenna l1981],Milgrom l1981]).qlとq2の単調 な関 係 (単調尤度比条件 ;Milgrom [1981])が 満 た されない ケ‑スではあ らゆ ることが起 こ り う る が,実際問題‑の適用上 あ ま り興味を引 くケース ではないであろ う。
7 .
プライス‑ ミックス( The o r yo fRe t a i l i n g)
一般に,小売店は2種類以上 の商品を扱 ってい る。消費者は,ひ とつ の小売店に足を 運 ぶ こ と で,複数 の財 の取 引磯会を得 る。 いわば,小売店 はいろいろな財 の取 引に付いて範 囲の経済を提供 す ることになる。 も しそ の うちひ とつの財 の価格 が隣の小売店 よ り高か った として も,2軒 の小売 店を回 ることは消費者 に取 ってかえ って費用が高 いか も しれ ない。それ な らば逆 に,小売店 にかか る固定費用を,すべての財 について同 じマージン
を取 ることで回収す ることは,小売店に取 って最 適 ではないか も知れ ない。
Bliss[1988]は, こ うした小売業者 の品ぞろえ (Sorting)機能, あ るいは 消費者 に 取 っての ワ ン‑ス トップ‑ シ エツピソグの利益 と,それ に伴 って生 じる固定費用 (間接費) の配賦問題を扱 っ てい る。仮 に,小売店 の費用関数 が,
数量割引のない卸売価格 ベ ク トル po +固定費用 G
とい う形 であ った とす る。そ して,消費者は貨幣 評価 した移動費用Tを計算にいれて,間接効用V が一定 の値 V.を下 回れば買い物 に行 くことをや め る, とす る。 Voは競争す る小売店 の与 え る効 用, と解釈す ることもで きる。 この とき, マーシ ャルの需要関数を ∬(・), 消費者 の初期予算をJ とおけば,企業 の問題は,
( 7 . 1 )
malllx∽・∬(♪o+桝,∫ ) ‑C o
s.t.V(po+m,I‑T)≧Vo
と書け る。Blissは, この問題は最適間接税を求 め るRamseyの問題 と同 じ形だ と指摘す る。つ ま り,間接税 ベ ク トルmに よって税収 Roを確保 し つつ,消費者 の間接効用を最大化す る問題,
(7.2) maxT
n
(po十m,I‑T) S.t.m・x(♪o十m,I)≧R
oとまった く同 じ1階条件を得 るのであ る。 この1 階条件は RamseyRuleと呼ばれてい る。 なお最 適 間接税問題 ではT は 課税 の 対象 とな らない活 動,つ ま り余暇 と解釈で きる。
Ramsey Ruleに従 って決め られ るマ‑ジ ン率 桝は必ず しも均等 ではない し,論理的には必ず し も正 ではない (補助金 に相 当す る)。 また,(7.2) の
R
oを Coで置 き換えれば,費用を償 いつつ消 費者 の効用を最大化す る,いわ ば生協 の問題 とな る。・この間題 も同 じ1階条件を得 るか ら,私企業 と生協 は 目的関数 こそ違 え,消費者 にまった く同 じ効用を与 え ることにな る。では, このモデルで2種類以上 の小売店 に よる 価格分布は生 じるのだろ うか。 どの小売店 に行 く のに も等 しく費用Tがかか り,2軒 の小売店 に行
くのに費用が27'かか る とすれば,規模 の経済や 31
社会科学論集 第81号 不経済がない限 り,均衡 では2種類 の小売店は現
れ ない ことを Blissは示 してい る。 も し特定 の財 が圧倒的に安い 「カテ ゴ 1)一 ・キ ラー」 が存在す れば,それは (同 じ流通の ノウ‑ ウを持つ)企業 に取 って利潤を最大化 しないのは もちろん,消費 者 の税動費用を高め る うえ, も う一方 の小売店 の Ramsey Ruleに よる価格設定を崩 し, 結局消費 者 に高い買い物を させ る可能性があ る。ただ し, 小売店‑の数量割引を排除 しての結論 であ ること は強調 して置 くべ きであろ う。
このモデルは,価格分布 の定式化 の難 しさを逆 説的に示 してい るといえ る。 2つ の財をそれぞれ 差別化 された代替財 とみなせば,価格 の違 いは も とよ り,流通 マージン率の差が生 じることも簡単 に正当化 で きる。 ところが消費者か ら見 て対称的 な小売店 のあいだで,同一 の財についての価格分 布が生 じることは, ここで も正当化で きないので あ る。
8 .
結 論以上を ま とめ ると,次の よ うな結論を得 る。
命題1 同一 の財 の価格分布が内生的に生 じる モデルでは,特定 の企業に固定的 な商圏 または固 定的な消費者 と,価格 に反応 して取 引相手を変え る消費者 の両方 が存在す ることが仮定 さ れ て い る。
系1 固定的な商圏 ・固定客の存在を仮定すれ ば,流通業者 にサ ー ビスの付加 ・宣伝 な どの機能 があ ることを仮定せずに,市場 で2つ以上 の価格 が付け られ ることを説 明で きる。
商業論 ない しマーケテ ィングの用語 で,最寄品 とい う財 の類型があ る。 これは通常の場合,消費 者が価格を比較せずに最寄 りの小売店か ら購入す る財 であ る。 これに対 して,消費者が2企業以上 の価格を比較す ることが一般的な財は買回品 と呼 ばれ る。 この用語法になぞ らえれば,価格分布が 生 じるためには最寄客 と買回客の両方 が必要 であ
る, といえ よ う。
流通の経済分析では,独 占的な商圏を持つ流通 業者が独 占企業か ら財を購入す るDoubleMargi‑ nalizationモデルを応用す ることが多 く,系列専 売店 と非系列併売店 の比較 もこれに沿 って行われ ることもあ る。 しか し,系列店が固定的な顧客を 持 ち,複数 の非系列店が消費者 に取 って対称的な 取 引磯会を与 え るので あ れ ば, ア フターサ ー ビ ス ・商 品説 明な ど系列店 の機能をなん ら仮定す る こ とな く,固定客の存在 のみか ら価格差を導 くこ とが可能であ る。 これが系1の含意 であ る。 も し 系列店がなにか積極的なサ ー ビスの付加を行 うも の と考 えて,それ に よって消費者 に対 して価格差 を償 ってい ると考 えるのであれば,両 タイ プの小 売店を消費者 に対 して対称的な位置に置いた モデ ルを組む必要があ るであろ う。
次 の命題2は, Shopper/Non‑Shopperを 巡 る 議論 と,Stahl[1989]の議論か ら従 う。
命題2 同一 の財 の価格分布が内生的に生 じる モデルでは,相対的に価格感応的な消費者 と,そ うでない消費者 との間で,外部経済 ・外部不経済 が存在す ることがあ る。 また, どの よ うな価格分 布が望 ま しいかについて,上記 の消費者間での利 害は一致 しない ことがあ る。
命題2は単独 では従来か ら知 られていた特殊 ケ ースの羅列に過 ぎないが,命題1と合わせ ると次 の命題が導かれ,無視で きない含意を持つ もの と な る。 2タイ プ以上 の消費者がいなければそ もそ も価格分布な ど起 こらないのだ, とい うのが命題 1の主張であ るか ら,2タイ プ以上 の消費者がい る とす る と何 が起 こるか, とい う命題2は命題1 に よって一般性を帯びて くる。
命題3 同一 の財 の価格分布が内生的に生 じる モデルでは,消費者一般 の利益を量 る尺度は必ず しも存在 しない。 なん らか の ウェイ トで集計 され た社会的厚生関数を定義す ることは出来 て も,そ の社会的厚生関数 の増減 とすべての消費者 の効用 の増減を一致 させ ることは,市場外の分配 システ
ムが ないか ぎ り不 可能 であ る。
消 費者 の効用 を最 も高 め る流通 システ ムが最 も 望 ま しい流 通 シス テ ムであ る, とい う考 えはおそ ら く,経 済学 者 が一 致 して (漠 然 と)持 って いた 見解 であ ろ う。 しか しまた ,そ の見解 の危 うさに 付 い て も,多 くの経 済学者 が一 致す るであ ろ う。
(三輪 ・西村 [1991]28‑29頁)
この論 文 の指摘す る問題 か ら,抽 象度 の高 い議 論 一般 を排 除す るのは妥 当 で ない。 しか し流 通 問 題 を扱 うさいに は,価格 水準全 体 で は な く,一 部 の小売店 の付 け る価格 が問題 とな る ケ ースのほ う がむ しろ多 い。 それ らは例 えば (ヤ ミ)再 販 であ
り,量 販店 や併 売店 を残 した流通系 列化 であ り, 不 当廉 売規制 であ り,廉 売店 や個 人輸 入 とい う抜 け道 を伴 った 内外価格 差 問題 であ る。 流通 と名 を 関す る分 析 には , いわ ゆ る価格 理論 よ りも高 い具 体性 が期 待 され ,要 求 され る よ うに思わ れ る。
価 格 に敏感 な一 部 の消 費者 の動 き, またそれ ら の消 費者 の発 信す る価 格情 報 に よって,市場 全体 の価格 水準 が抑制 され てい る とい うの も一面 の事 実 であ ろ う。 しか し逆 に例 えば, ま った く新 しい 製 品の場 合 ,普 及 して価格 が低下 す るのを待 ち き れ ない一 部 の消 費者 に よって メー カーの初期 の採 算 が維持 され る こ ともまた一面 の事 実 であ ろ う。
そ うした消費者 を探 し情 報 を伝 え る こ とは,流通 業者 に (一 時 的 に) 違 った機 能 を要 求す る こ とに な ろ う。 つ ま り消費者 のため に市場 が存 在 す る, と言 う一 方 通行 の関係 だ け で な く,特 定 の消費者 グノレユプが市場 全体 に ど うい う影響 を及 ぼすか , とい うところ まで立 ち入 った分 析 が必要 に な って くるが ,そ の具体 的 な分析 は今後 の課題 と して残 され てい る。
≪注 ≫
(*) (上)を含めて, この論文には, 東京大学, 宇 都宮大学,学習院大学,南山大学のセ ミナー出席 者か ら有益な コメン トを 頂 い た。 記 して感謝す る。また,南山大学の ワークショップ 出 席 に 際 し,南山大学経営研究センターか ら助成を受けて いる。
(1) Gabszewicz
&
Garella[1986]は,2企業の線 分上でのHotellingモデルで,消費者が近いほ うの価格を知 り,遠いほ うの企業の価格を推測 し, サーチす ることの期待利益が大 きければサ‑チす る, とい うモデルを示 している。 この場合,サー チ コス トも距離に比例す るか ら,企業は高い価格 を付けるほど近 くの客までサーチに走 らせ ること になる。いったんサーチした消費者は安いほ うの 企業 と取 り引 きす る。
このタイプのモデルの問題点は,消費者の想定 する主観的な価格の分布が実際に企業が採用す る 混合戦略 とはまった く異なっているため,妥当な 仮定であるのか どうか判断が付けに くいことであ るO彼 らのモデルでは2種類の仮定が試 され,一 方では(2企業の初期位置が十分離れていれば) 純戦略均衡があるが, もう一方では存在 しないこ
とが示 されている。
(2) Shopper/Non‑Shopperの定式化は, もともと FSSサ‑チのモデルで分析 され て きた た め, SequentialSearchにそのまま持ち込むには次の ような難点がある。全企業が独占価格を付けた と しよう。 価格分布を知 るShopperが留保価格を 1回観察 してそこでス トップす るのであれば,す べての消費者は最初の無料のサーチで留保価格を 得て しまい,ShopperとNon‑Shopperの行動に 差が生 じない。そ こで Stahlは,Shopperは少 な くとも2回分布の下限を観察す るまでサーチを 続けること,そ して分布の下限が測度ゼ ロでしか 付けられない ような分布のときは,全サ ンプルを サ‑チす ることを仮定に加えたo
SequentialSearchで価格分布が生 じるモデル は非常に少ない。 Stahlのモデルで価格分布ない し廃合戦略が生 じているのは,明らかにShopper/ Non‑Shopperを導入 したためである。
(3) Stahlは,価格の分布関数が独占価格1点に退 化 した分布に弱収束す ること を 示 した。(Stahl l1989];命題4)つま り,ある特定の価格qを取
り,ある正の数 Sを どんなに小 さく取 っても,企 業数Ⅳがある値を越 えれば,クでの分布関数の値 はゼ ロか ら一定の幅 Eの範囲に納 まっていること が保証される, と言 うことである。その反面,負 低価格は下がって行 くのだか ら,最低価格周辺で は Sの枠の中での確率の増加はあってもよいわけ である。
(4) Dはdiscount,Fはfull・priceの略である。
<参 考 文 献>
三輪芳朗 ・西村清彦 【199
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