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桑  原  隆  行

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(1)

桑  原  隆  行

クールトリーヌ『家庭の平和』翻訳と解説

作家の書斎。奥にドア、右にドア。左に出入り可能な窓が垂 直壁で。絵、版画等々。プロンプター正面に、原稿の載った テーブル。前景、左の壁にもたせて、立ち仕事を習慣とする 作家たちのところで用いられる脚の高いあの書見台の一つ。

トリエル (ひとり、書見台の前に立ち、ひねり出したば かりの行数をペン先で数えながら) 274、276、278、

280、そして285。あと素晴らしい三十行を。その内、

改行を二十ばかり、省略符号を煎じ薬程度、そして 効果狙いの中断で終わりにする。これで、読者が満 足できないとぬかすなら、もう構わないでもらっ て結構。まったく下らん仕事だ。(ペンをインクに浸 し、書き出そうとして、ため息をつき、伸びをし、長々 とあくびをする。) うんざりか、ええ?・・・さあ、

頑張って。鱈肝油を飲んで。

決心して仕事に取りかかり、大声で自分に口述する。

「その間、サン=セヴランの古い大時計がずっと前から 夜の静寂の中、三時の三つの鐘を鳴り響かせていたにも かかわらず・・・」

中断して。

三時の三つの鐘だって!・・・下らん仕事!

あざ笑い、肩をすくめ、続ける。

「・・・老人はゆっくり行ったり来たりを続けていた。

くすんだ色の外套が頭から足まで彼を包み、目から落ち た涙が真っ白なひげで転がっていた。」

中断して。

すさまじく愚かな言葉・・・

続ける。

「何たる恥辱、と彼はつぶやいた。何とむごい暗殺、

二十年後もまだわしの名誉心にそのやけつく痛みが残さ れたままだ!」

中断して。

・・・そして心乱れるほどの愚劣さ。

続ける。

「何と、恥辱の重荷を永遠に背負っていくのか! 何 と、墓の入り口まで傷の血がゆっくり一滴ずつ流れるの を感じることになるのか!」

中断して。

この小作品はあまりに愚劣で、愚劣さでこれに匹敵する ものは何もないほどだ、これを楽しむ読者を除いては。

続ける。

「雪が降り始めた・・・」

右のドアで激しいノックの音。

さて、今度は妻か。

ペンを置く。ドアで新たにノックが矢継ぎ早に。

ちょっと待って。やれやれ。

ドアに行って、開ける。

第一場 翻 訳

家庭の平和

(2)

トリエル、ヴァランチーヌ

ヴァランチーヌ まあ、あやしいわね! 偽金作りでも してるの?

トリエル 全然。差し錠をかけていたのは、急ぎの原稿 があり、邪魔されたくなくてね。

ヴァランチーヌ (入りながら) 早くドアを閉めて、ア イデアが逃げないように。

トリエル いつもご親切に何かと役立つ忠告をどうも。

ヴァランチーヌ ねえ、だからといって、高級宝石店の ように鍵をかけて閉じこもるほど偉そうな顔をしよ うとは思いつきはしないけれど。まったく、うぬぼ れ過ぎよ。

トリエル ばかだなあ。

ヴァランチーヌ ともかく、わたしは滑稽にも自分をバ イロン卿と間違ったりしない。どう、まいったか!

目配せ。

トリエル ヴァランチーヌ、思い込みで意地悪を言うな よ。ぼくが自分をバイロン卿と間違えているなんて ことどうやったら思いつけるんだ? 説明したけれ ど、ぼくの仕事は・・・(仕事という言葉で、ヴァランチー ヌは派手に笑い出す。)面と向って仕事を言い立てに くるなんてタイミングが悪いよ。自分の楽しみのた めに仕事していると思っているなら、お前は間違っ ている。

ヴァランチーヌ 他人の楽しみのために仕事していると 思っているのなら、あなたはもっと間違っているわ。

トリエル ぼくには傷つけることだけ、あるいは傷つけ るつもりのことしか言わないなんて、何て奇妙な楽 しみを持てるんだろうね?・・・まあいいさ、二人 のうち、最後に笑うのがぼくだと今に分かる。(ヴァ ランチーヌは驚いて、彼を見つめる。)今に見てろ、

ハニー、今に!

ヴァランチーヌ 何ですって?

トリエル 今に見てろと言ってるのさ、その時は近い。

ヴァランチーヌ あなたを見てると何を思い出すか分か る?

トリエル 鹿。

ヴァランチーヌ すごーい。予知能力があるのね。

トリエル だろう? こうしてぼくらは、一行3スーで 書かれる新聞連載小説の話みたいになっている。で も、おそらく、愛の語らいにあまり入り込まずに、

真面目なことを話題にする方がいいよ。何か話があ るんだろう?

ヴァランチーヌ たぶんね。わざわざ、あなたと一緒で

いることを楽しみ、あなたの口からこぼれ落ちる言 葉を天の賜物のように受け取るために来たのでなけ ればね。

トリエル そんな期待をするつもりはない。それで、欲 しいのは?

ヴァランチーヌ お金。

トリエル もう無いのか?

ヴァランチーヌ 愚問! そう、無いの。10月1日なの よ。

トリエル 確かにそうだ。

ヴァランチーヌ もう無〜い!・・・も〜う無い!・・・

まだあるなら、どこで手にできるか分かればうれし いものだわ。夜起きて、あなたから盗むとでも思う?

トリエル ちぇ、誰がお前に盗みの話などするか、それ に、お前はどんな新たな口論の種を求めてる? 全 然想像できない。毎月一日に、家計に必要なお金を 渡している。月が過ぎる間、お金はどんどんなくな り、月末に財布はすっからかん。簡単な道理だ。

ヴァランチーヌ そういう事情だから、わたしがもらう 分を払って、そして、あなたの美辞麗句は取ってお いて、小説の中で使ったら。小説の方がわたしより 必要としているわ。まいったか!

目配せ。

トリエル 今に見てろ!

ヴァランチーヌ なーに?

トリエル 時は近い!・・・まさに近い、思っていたよ りも。

ヴァランチーヌ どういう気持ちにさせているか分か る?

トリエル うんざりさせてる。

ヴァランチーヌ まったく不思議! あなた占い師を始 めるべきよ。

トリエル 老後になったら考えてみる。さしあたり、

ちょっとぼくらの勘定を済ませよう。(テーブルに行 き、引き出しを動かして、そこから紙幣を引き出す。)

いくら?

ヴァランチーヌ 800フランよ、よく分かっているで しょ。

トリエル 800。(紙幣をめくりながら。)一、二、三・・・

ヴァランチーヌ 家賃の支払い期限よ。

トリエル それは別にぼくが払う・・・四、五、六・・・

残りは硬貨で渡す。

ヴァランチーヌ あなたがよければ。

トリエル お前の方にもっと便利だから。(小ポケット から金貨銀貨を少し取り出し、テーブルのへりに並べ 第二場

(3)

る。)と、五十で、六百五十。これで支払い終了。

ヴァランチーヌ(驚いて) 何、これ?

トリエル お前のお金さ。

ヴァランチーヌ 何のお金?

トリエル 月の分。

ヴァランチーヌ 計算が合ってない。

トリエル 何、合ってない?

ヴァランチーヌ ええ。

トリエル 合ってるさ。

ヴァランチーヌ 合ってない。馬鹿じゃない? 800フ ランから650引けば?

トリエル 150フランの残り。

ヴァランチーヌ それで?

トリエル それで、何?

ヴァランチーヌ 150フランちょうだい。

トリエル あっ、駄目だ。

ヴァランチーヌ どうして?

トリエル ぼくに借りているから。

ヴァランチーヌ わたしが?

トリエル そう、お前が。

ヴァランチーヌ 何、寝言を言っているの。借りてなん かいないわ。それに、あなたから前払いをかすめと る習慣もない。わたしは立派な主婦よ、おそらくね。

倹約家だし、整頓能力もある。結婚して五年、その ことに気づく時間はあったわよね、あなたには。

トリエル 問題から逸れているよ。お前の数少ない長所 のことじゃなくて、お前の欠点、何たることか、無 数にある欠点のことだ。ぼくを馬鹿にしているな。

それで、お前の150フランの罰金は?

ヴァランチーヌ まったく、ばかに話しているみたい。

150フランの罰金って何よ?

トリエル お前の場所柄をわきまえない発言、多様な無 礼な言辞、あらゆる種類の反抗的態度等々への罰と して、遺憾ながらお前に科すことになった150フラ ンの罰金。(ヴァランチーヌの唖然たる無言。)分から ない?

ヴァランチーヌ 皆目。

トリエル 詳細を読み上げてやる。それで、すっきり分 かるはずだ。

ポケットから小さな手帳を取り出して、開いて、読み始める。

9月。1日。最初の言葉を知りもしないまま問題を きっぱり解決して、それから、過ちを確信しながら、

それでも自分が正しくあり、控えめで辛抱強く穏和 なトリエル氏を激怒させんがため、甚だしい悪意か ら不公平にもその過ちにしがみついたが故に

3フラン95 ヴァランチーヌ ええ? 誰が? 何ですって? 何?

トリエル 2 日。 ト リ エ ル 氏 が15分 早 く 夕 食 を と り た い と い う 願 望 を 表 明 し た る に、15分 遅 く し た 上、

穏 や か に 不 平 を 洩 ら し た る 前 述 の ト リ エ ル 氏 に、

6フラン70

ヴァランチーヌ まさか・・・

トリエル 3日。錬鉄を模造した色付きガラスの手さげ ランプをトリエル氏が無駄で高価だとして購入を拒 んだからといって、彼をけちん坊、しみったれ扱い

したが故に 2フラン50

4 日。 ス ー プ に モ ツ が 入 っ て い な い こ と を 残 念 が る ト リ エ ル 氏 に、 毎 度 の モ ツ 欠 如 は 本 当 す ぎ る ほ ど 本 当 の こ と な の に、「 あ な た が 言 う の っ

1フラン45

5 日。「 あ な た が 朝 7 時 に 帰 っ て き た の を 許 し て

71フラン

ヴァランチーヌ(息がつまるほど驚いて) いくらですっ て?

トリエル 71フラン。

ヴァランチーヌ 高くはないわね。

トリエル 許してやったのなら、そのことをその人に始 終くどくど繰り返して言うべきじゃない。それに、

何を許したと? 最終列車に乗り遅れたと、お前に は何回も説明した。

ヴァランチーヌ あかんべえ。あやしいものだわ。

トリエル 思いたいように思っていろ。しかし、ぼくを お前の寛大さで責め立て、お前の魂の気高さで傷つ け、死する時まで、お前の親切の思い出で悩ませる ことになっているのなら、そういうものは自分のた めに取っておけばいい。お前の恨み言のほうがまし だ。どうせお前の犠牲者でなければならないのな ら、感謝しないでいるほうがいい。まいったか! 

(目配せ。)続けるぞ。

6日目。錬鉄を模造した色付きガラスのもう一つの ランプをトリエル氏に無理やり買わせる目的で、控 えの間の手さげランプをばらばらにしている最中を 見つけられたが故に 4フラン90 7日。・・・

ヴァランチーヌ まだまだ続くの?

トリエル 何だって? 罰金制度が? 権利もあるし、

今後は要求する尊敬、お前がその極めて正当な尊敬 の気持ちを取り戻さない限りは。

ヴァランチーヌ 尊敬ね!

トリエル そうだ。

ヴァランチーヌ 死ぬほどおかしい。

トリエル 当然だ。なんとかお前の不当を許そうとし て、そして、わざわざ自分に義務をつくり出してそ

(4)

れを果たそう気にかけてきて5年になる。お前がお そらく、ある日、一度、偶然、それに気づいて、心 打たれたことがあったかもと、今日、うぬぼれにも 考えてみる。ぼくが間違っていた。いいか、お前、

ぼくは間違っているし、間違ったままさ。もう我慢 できない、お前にはいい加減うんざりだ。

ヴァランチーヌ 馬小屋じゃないのよ。そんな口調で話 されるのに慣れてないわ。

トリエル 慣れようとすればいい。

ヴァランチーヌ いまに分かるわ。

トリエル もう分かった、この話はもう済みだ。

ヴァランチーヌ あなた・・・

トリエル 言い訳を始めたいのか。始めよう。いい気晴 らしになる。繰り返すけれど、5年になる、ぼくの 善意をお前の悪意と釣り合わせてから。お前の本心 を─そこにあるお前の本心、というのも、そいつ はそこにあるからだ─執拗に見つけ出そうとしな がら毎日、前日には期待しながら許しては、翌日は いつも期待を裏切られてから5年。結婚当初は、説 得を試みた。仲良しの利点、乱されることのない結 びつきの喜びがどれほど望ましいことかをお前に賛 美しながら、まさに優しさと寛大さに促されて一席 ぶった・・・徒労だった。一度、一時間論証で始め てみて無駄に終わってからは、辛抱も尽きた。立ち 上がり、お前のスカートの奥をつかみ、それからお 前を左腕でぴったりと抱えて、仕事中の洗濯女にな じみの仕草で右手を動かし体罰をくらわせた。

ヴァランチーヌ まったく華々しい見事なお手柄だった わね! 勝利を収めてみせて! 野蛮人! 卑怯 者! 無作法者!

トリエル お前の許可を使わせてもらって、権利にした がって勝利するさ。というのも、あの高圧的な態度 をぼくはまったく無駄に完了させたわけではなく、

そいつはお前に健全な内省を吹き込んでくれた。あ あ! あとは適切に新たに尻叩きを加えてやること で、その成果を保つかどうかはぼく次第だったの に。でも、最初の挑戦、そいつをぼくは動転したま ま、悲しさと嫌悪で気分が悪く終了したのだが、最 初の挑戦で二回目を試そうなんて気はすっかり失せ た。鞭打ち親父フエタールをまねる才能がないのが 分かった。ぼくは実際には、お前がうれしがって言 うような、卑怯者でも、無作法者でも、野蛮人でも ない。ただの、ちぇ、かわいそうな作家だ。

ヴァランチーヌ ・・・何の才能もない・・・

トリエル ・・・何の才能もない、でも、しかしながら、

その小さな家庭に、おそらくいつかは才能を獲得さ せてくれるような平和を見つけたいと思っている。

そこで、別の種類の訓練に移り、家具に八つ当たり しようと思いついた。

ヴァランチーヌ(皮肉たっぷりに。) なんて馬鹿だったの。

トリエル 大変な馬鹿さ。なぜなら、鏡つき洋服タンス の鏡をスツールの一撃で粉々にした日、お前は茫然 として無言のまま。そのことであまりに強烈な喜び を感じたぼくは六週間以内に、二脚の椅子、水差し、

音楽キャビネット、ランプ、置き時計、スープ鉢、

お前のアルセーヌおじさんの胸像(ぼくらのみすぼ らしい客間の自慢の品だ)、そして他の多数の生活 必需品を、何の未練もなく、お前の無言を熾烈に渇 望して、犠牲にしたのだから。それが困ったこと に、ヴァランチーヌ、家具は自らの遺灰から再生す る不死鳥のようなわけにはいかない。ほかの家具を 買い直さなければならないと考えると、家具を壊し て味わう辛い喜びがすぐに台無しになった。もう一 度、別のことを探さなければならない。ただし、何?

出て行く? たぶん。でも、どこに行く? という のも、ブルジョワ趣味ゆえに同棲がみじめなホテル 暮らしのように嫌いな男にとって、肝心なのはそこ だ。絶望しかけたその時、以後お前の過ちはただた だお前に自腹を切って償ってもらうというアイデア が偶然浮かんだ。あえて、そう思うけれど、都合 がいい解決法で、ともかく決定的な解決法で、これ に決めた。だから、今からお前は、どんな口実であ れもう怒り出したりしないとのぼくからお前への誓 いをかさにきて、安心して、お前のすさまじい性格 の勢いのままに振る舞えばいい。お前が何を言おう と、何をしようと、指はじきも、ほんのわずかの警 告も受けることはない。ぼくはただ、それをノート に書き付けるだけだ。叫べ、どなれ、ほえろ、わめ き散らせ、好きなだけ騒ぎを起こせ、好きなだけ隣 近所の安眠を乱せ。何も気にかける必要はない。月 末に償ってもらうから。喧嘩はもうなし、うんざり だ。殴り合いはもうなし、嫌になった。家庭を平和 にすると断固決めたし、良法でも過激な手段でも手 に入れることができなかった以上、お前のお金で買 うと決心した。お前がただでくれていれば、こうは ならなかったのに。話はこれで終わり。もう引き止 めない。じゃあ、また。仕事に戻っていいよ。こん なに早く失礼するのは申し訳ないが、義務がぼくを 必要としているし、時間はせきたて、ぼくの新聞は 待ってくれない。

ヴァランチーヌ 話したいだけ話したら、教えてね。

トリエル 言いたいだけは言った。

ヴァランチーヌ よかった。私の150フランは。

トリエル びた一文出さない。

ヴァランチーヌ くれるつもりはないの?

トリエル ない。

ヴァランチーヌ 断固として?

トリエル そうだ。

(5)

ヴァランチーヌ 家の維持は重荷だわ。

トリエル 知っている。

ヴァランチーヌ 雑費もかかる。

トリエル それはそうだ。

ヴァランチーヌ 言っておくわ、650フランで、ちゃん と正面切ってはやっていけない。

トリエル 背を向けたら。

ヴァランチーヌ お好きなように。パンと水だけで済ま せましょう。

トリエル 絶対にいやだ。信じないぞ。できるように解 決しろよ。でも、ぼくの平静な意識の証拠たる旺盛 な食欲が求める傷んでいないたっぷりとした食べ物 が食事に出てこないなら、カフェに食べにいくぞ、

もちろん、お前のお金で。お前が手に負えなかった り、錬鉄を模造したもう一つのランプをぼくに買わ せるために、手さげランプをばらばらにしているの を捕まるたびに、パンしか与えられないなんて変だ ろう。

ヴァランチーヌ それ以上は一歩も譲れないと?

トリエル そうだ、一歩たりと。

ヴァランチーヌ わかりました。

(窓の方に腕を伸ばして。)私のお金をください、で ないと窓から飛び降りるわよ。

トリエル 窓から?

ヴァランチーヌ 窓から。

トリエル(平然と窓のところに行き、開ける。) 

飛び降りろ! (間)さあ、飛べ!

ヴァランチーヌはじっと動かずに、トリエルに憎しみに満ち た視線を注ぐ。ついに。

ヴァランチーヌ 満足でしょうね、人殺し!

トリエルは窓を閉めて、舞台前面に進む。

ヴァランチーヌ(追いかけて。) 人殺し! 人殺し! 

人殺し!

トリエル(テーブルで、手帳に身をかがめて。) 

10月。1日。自殺すると目の前でトリエル氏を脅 し、そうすることで、このすばらしい夫の愛情につ けこもうとしたが故に 4フラン95 ヴァランチーヌ 卑怯者! 卑怯者! 卑怯者!

トリエル 自殺しなかったが故に 10スー ヴァランチーヌ あぁ、分かったわ、まったく、あなた が求めているものが!・・・分かった、あなたがど うしたいのか! わたしの他界を待ち望んでいるの ね!

トリエル 他界! (書きながら。) 75サンチーム・・・

会話の途中、ネポミュセーヌ・ルメルシエの語彙か ら借用の表現を使ったが故に。

ヴァランチーヌ ずーっと不平も言わずに我慢してき た、もううんざりだわ! 実家に帰ります。

風のように出て行く。

(6)

トリエル(ひとりで)

何も起こらなかったかのように、書見台に戻る。そこで。

トリエル(自分に口述しながら。) 「しかし、老人はもの 思いにふけったまま、それには気づかなかったみた いだ。突然、空にむけて高慢な挑むような眼差しを 上げて、叫んだ:いいか、無慈悲な神、不当な神よ、

呪われるがいい! わしの祈りを聞き届けてくれな かったお前、永遠に嫌われていろ! 来るべき世代 がお前の名前を嫌悪すればいい!」まったく、ふー んだ!

額を拭って。

下らん仕事!

続ける。

「彼がこのすさまじい冒涜的な言葉を終えようとした 時・・・」

中断して。

と、土木作業員が自分の境遇を嘆くなんて!

「・・・足音が通りの静寂を乱した。」

中断して。

さえない弟子が要求だって!

続ける。

「青から、老人は蒼白になった。」

御者がストだ!

続ける。

「もし、あいつなら、と彼はつぶやいた。あぁ、ついに あの敵を知り、喘ぐあいつを膝に押さえつけ、やつの恐 怖から最後のあえぎの中で告白を引き出すのだ! その 時、ド・ラ・アルプ通りからよそ者が出てきた。老人は 虎のように飛び跳ねた、しかしすぐに、奇妙な衰弱が全 身を捉えた。両脚が体の重みで曲がり、おそろしい叫び を上げて、彼は気絶した!」これは命令だった、素晴ら しい三十行が。素晴らしい。安心。三十行あるかどうか はまだ分からない。数えてみよう。

ペン先で足し算する。

旅行用外套を着て、手に旅行かばんを持って、ヴァランチー ヌ再登場。

第三場

(7)

ヴァランチーヌ、トリエル

ヴァランチーヌは舞台を通り抜けて、奥のドアに達する。

ヴァランチーヌ それじゃ、さようなら。

トリエル あぁ、お前か。行ってしまうんだ。それじゃ、

さようなら。

ヴァランチーヌ わたしに何も言うことはないの?

トリエル ない。なぜ?

ヴァランチーヌ わからないわ。思ったの、たぶん・・・

トリエル 間違いだよ。

ヴァランチーヌ ごめんなさい。

トリエル どういたしまして。

ヴァランチーヌ 結局、理解し合えずに別れることが あっても、互いに尊敬の気持ちを持っていることは できるわ。

トリエル 言うまでもないことさ。

ヴァランチーヌ でしょう?

トリエル おそらく。

ヴァランチーヌ それじゃ、了解なの?

トリエル 何が?

ヴァランチーヌ わたしに何も言うことはないの?

トリエル 何一つない。

ヴァランチーヌ それじゃ、さようなら。

トリエル それじゃ、さようなら。

トリエルはまた仕事に取りかかる。

ヴァランチーヌ どうでもいいわ、今日あなたにたたき 出されると、もし昨日言いに来られていたら、わた しすごく驚いていたでしょうから。

トリエル お前をたたき出したりはしない。

ヴァランチーヌ 猫ね。それじゃ、どうするの?

トリエル お前を引き止めはしない。それだけだ。

ヴァランチーヌ でも・・・

トリエル 出て行きたいんだから、出て行けば。力づく でお前を引き止めるとか、お前が嫌がっていること を無理強いするとか、腹部に釘を刺された大きな蝶 のようにお前を壁に固定すると思うなよ。

ヴァランチーヌ ・・・こんなで・・・あなた何ともな いの?

トリエル 何がぼくに何ともないって?

ヴァランチーヌ わたしが行ってしまうこと。

トリエル お前には関係ない。余計なおせっかいはやめ

ろよ。

ヴァランチーヌ でも、五年一緒に暮らしたあとで、や さしい言葉でわたしと別れてもあなたの評判を落と すことにはならないように思うんだけれど。

トリエル お前が元気でいることと、ぼくの家ではお前 に見つけてやることができなかった幸福を、お前の 行くところで見つけることを願っている。お前を少 しぶったことはすまなかった。お前への打擲はお前 以上にぼくにとって間違いなく苦しかったし、実の ところ、お前のせいで頭がどうにかなった日にぼく が気違いみたいに振る舞ったことは無理もないこと であるけれども。それはそれとして、訴訟はあの古 い物語の一頁として過ぎたことだ、ぼくは自分自身 と仲良く暮らす。やさしく貞淑な夫だったと自覚し ている。お前の要求には忍耐強く、厳しさに甘んじ、

お前のどんなにつまらないわがままに細々と気配り することに隷従し、一日10時間も精を出して馬鹿げ た小説を書いた、馬鹿げた小説だったけれど、でも お前が暖かくしていられる家と美しくいられるドレ スをお前にあげられる喜びでもあった。お前を幸せ にするために何でもやった。気づいてくれなかった が、それで自分を責めるな、当然のなりゆきだ。女 は自分のためにしてくれることは絶対見ないで、し てくれないことだけ見る。

ヴァランチーヌ ともかく、キスしてくださらない。

トリエル お望みなら。

彼女のところへ行き、冷淡なキスをして、それから、また前 舞台に進んでくる。

ヴァランチーヌ(出て行く動作で。) それじゃ、さよう なら。

トリエル それじゃ、さようなら。

ヴァランチーヌはゆっくりドアを出て行く、しかし姿が見え なくなったと思うとすぐに戻って、旅行かばんを置き、夫の ところに戻る。

ヴァランチーヌ わたしの150フランちょうだい。

トリエル(優しく。) 駄目。

ヴァランチーヌ お願い!

トリエル あげられない、絶対に。

ヴァランチーヌ なぜ?

トリエル 弱気になって何度となくお前を許しては、高 すぎる代償を支払わされてきたから。というのも、

また言うが、お前たち女性との間では、中間がない。

女たちが我々男たちの支配にあわないなら、男たち 第四場

(8)

が女たちの支配にあう。ちくしょうめ!・・・(ヴァ ランチーヌが話そうとする。)しつこく言うな、いい か時間の無駄だ。それから、何してる? もう、出 て行かないのか? なにゆえ? 我慢してきたのだ と思っていた。さあ、ほら、お前、逃げて行けよ。

両親のそばに帰れよ。その方がぼくら二人にはいい。

ヴァランチーヌ お願い、どうかお願い、わたしの150 フランちょうだい。くれないなら、どうにかなるか らね!

トリエル 気分転換になるように・・・

ヴァランチーヌ ねえ。

トリエル(少しいらいらし、また少し面白がって。) あぁ!

ヴァランチーヌ(彼にしがみついて。) 話をさせて。150 フランのことだけど・・・

トリエル またか、150フランだって!

ヴァランチーヌ ・・・別の日、来月、好きな時に差し 引いて。でも今日は嫌、うわぁ、今日はだめ! い い、今日ほしいの!・・・必要なの!・・・要るのよ!

トリエル(言葉が発せられた仕方に驚いて。) そんな に?・・・ヴァランチーヌ、ちょっとぼくを見ろ。

ばかをしでかしたのか? (ヴァランチーヌの雄弁な 無言。)当然だな。何を?

ヴァランチーヌ あまり大声でどならないでね。

トリエル 努める。とにかく言ってみろ。

ヴァランチーヌ えーとね。今日支払う手形があるの。

トリエル 署名したのか?

ヴァランチーヌ ええ。

トリエル お前ならありそうなことだ。驚きだが、よく 手形を受け入れてもらえたな。妻が夫の許可なく手 形に署名することは法律で認められていないので、

お前の手形は無効で無価値だ。

ヴァランチーヌ ごめんなさい。

トリエル どうして謝る?

ヴァランチーヌ なるほど。(あっさりと。)あなたのだ と信じさせるために、あなたの署名を真似たの。

トリエル(唖然として。) それを平然とした顔で言いに きたのか?・・・ところで、そいつは偽造だろう!

ヴァランチーヌ それが何?

完全に率直な口調でなされたこの思いがけない返答に、トリ エルは言葉がでない。感嘆で心打たれたように、若い妻を長 い間見つめる。

トリエル さあ、これには答えるんだ!(どうにもでき ないという大きな身振りを加えて、自分の考えを完全 に示す。それから。)手形の額面は?

ヴァランチーヌ 150。

トリエル うわあ! 遠慮のないやつだ。(間)おそら く、購入したとか?

ヴァランチーヌ 買ったの、確かに。

トリエル 必要不可欠なのか?

ヴァランチーヌ そうとも言える。

トリエル 少なくとも、必要なんだろ?

ヴァランチーヌ 場合によるわね。

トリエル 要するに、役立つ?

ヴァランチーヌ どちらとも言えない。

トリエル(思いつきが脳裏をかすめる。) 色つきガラスの 手提げランプ?

ヴァランチーヌ(うなだれて) 錬鉄模造の。

トリエル 届いたんだな! やっぱりね!・・・分かっ てるか、お前ほどびんたを受けるに値しないこども でもびんたをもらうんだぞ。そんなにランプを欲し がるなんて考えられん!・・・(喧嘩口調のままでは あるが、もうそこには自信が欠けている。結局、この あまりの子供っぽさを前に狼狽しているのが感じられ る。)まあいい!・・・どこに放り込んだ、その芸 術品を? 探しに行ってこい、じっくり見てやるか ら!・・・うっとりとした目が陶然となるように!

 (しかし、ヴァランチーヌは動かない。)さあ、走れ、

飛べ、駆けろ! あれ? (ヴァランチーヌは実際、

顔を振って、困惑したように嫌だと示す。)嫌だと? 

(ヴァランチーヌの同じ仕草。)おやおやおや・・・

もう一度、ぼくを見ろ。(すごく優しく。)壊した?

ヴァランチーヌ 運んでいる時に。(トリエルが彼女に歓 喜に満ちた視線をじっと注ぐので。)粗悪品だとして も、わたしのせいじゃないわ。ランプには目が、そ う目がついていたの! 誰でもそれに捕まってしま う。だから、どうしろと? ただ気を引かれるまま だった・・・その結果、お店の人に、あなたの代理 で来たかのように、書き付けと引き換えに月末ま で掛け売りしてくれるよう申し出た。すると、お店 の人は了解だと言った。そこで、書き付けを渡した の・・・前もって用意しておいたのをね。すると、

大きな紙で包んだランプを渡してくれた。いったん 帰宅して、ランプを手にしようと紙をはがしたその 時、それがわたしの手に残り、物は別の手に。以上 が壊れた事情なの。

この話は、抑え切れないすすり泣きで揺れるかわいそうな少 女の涙まじりの声で言われた。トリエルは、値踏みするよう にばかにする同意を示す顔振りで時々顔を動かして、口を挟 まずに、厳かに聞いている。

しかし、ヴァランチーヌが話終えたので。

トリエル(茶化しながら。) それがお前の手に残り、物 は別の手にね!・・・(口調を変える。)いいか、お前 のばかにも程がある、怒る気も失せる! ほら、お 前の150フランだ。それから、また、ぼくの署名を

(9)

真似るといい。少しは分かれ。今回は、お前を投獄 させないでおく。恥ずかしくないのか。

ヴァランチーヌ ありがとう、エドゥアール。

トリエル(怒ったふりで。) 偽造者!・・・悪党!・・・

鼻をかめよ!

ヴァランチーヌ 他のは?

トリエル 他の何だよ?

ヴァランチーヌ 他の150フラン。

トリエル 何だって、まさか、あんまりだ! まだ要る のか?・・・

ヴァランチーヌ もちろん! そのとおり。さっきの は、あなたの手形を払うため。

トリエル(天を仰いで。) ぼくの手形! さあ、出て行 け! もうお前を見たくない、もうお前のことは聞 きたくない!

ヴァランチーヌ それで、あなた?

トリエル 銀行が通りかかれば、どうにかしてやらない でもない。

その途端、減額の心配と罰を受ける恐れから同時に解放され て、ヴァランチーヌは自分が感動していると感じる。トリエ ルのところに行き、彼の目の中をじっと見つめる。それから、

思いがけない発見をした人の心からの驚きが表れた声で。

ヴァランチーヌ あなたがいい夫だというのは本当なの ね。

トリエル うまくお前を怖がらせることができた日に やっと、気づいてもらうなんて残念だ。

彼女は体をちょっと優しく甘ったるく動かして答える。後悔 が愛撫になる。彼の腕の中に滑り込み、それから、無理やり、

その腕を自分の腰に回し、若い男の肩に頭をもたせかけたま ま、恥じ入って、じっと抱かれたままでいる。男は何も言わ ずにそうさせておく。

トリエル 「きオ イ ア ケ フ ァ レ カ イ エ グ ケ フ ァ ロ ヌ ウ ク エ ケ イ ユ

れいな顔でも、おつむは空っぽ」だと、

イソップの狐は言っている。

ヴァランチーヌ 何て言ったの?

トリエル 何でもない。ギリシア語だ。

ヴァランチーヌ(多少は喜んで。) あなたってその気に なればすごくやさしいのね。

彼女はお金を手に、ゆっくりと抜け出る。トリエルは彼女を 目で追う。ちぇ、何と幼稚な!・・・何たる自覚のなさ!・・・

何たる弱さ!・・・ついに彼女は姿を消す。トリエルは一人 残る。それから、肩をそびやかし、そして、ほとんど聞こえ ない声で、同情に満ちた心で、そのただの嘆声をつぶやく。

トリエル ああ、なんて悲しいことだろう!・・・

しかしながら、仕事が彼を必要としている。再び、書見台に 戻り、彼の連続小説の規模を点検し終えて。

317、319、320。計算はこれでよし。(こう言って、イン クに羽ペンを浸け、それから自分に口述して。)「続きは次 号。」

(10)

 翻訳に用いたのは、Courteline, La Paix chez soi et autres pièces, Larousse, 2006. である。九編所収の中の 一編La Paix chez soiだけを訳出した。これを選んだの は、ゼミで読んでいる最中でタイミングがよかったとい う単純な事情による。他を訳せずに終わったのは時間的 な余裕がなかったことが最大唯一の理由である。残り八 編のどれもが面白い。

 作者のジョルジュ・クールトリーヌは1858年生まれ で、1929年死亡。飲酒、喫煙、薬物摂取、美食、漁色、

放蕩など何であれ、それが過度で過剰、依存症の様相を 呈するほどになると、いつか体は大きなつけを支払わな ければならなくなる。クールトリーヌの場合、暴飲暴食、

放蕩生活のつけが糖尿病となって現れる。病巣は彼の脚 を蝕む。邪悪な暴風にちぎられていくように、足の親指 の切除(1924年)に続いて、右脚の切断手術(1925年)

が施される。残っていた左脚も1929年に切断される。そ の手術後、昏睡状態に陥り、5月25日永眠。

 クールトリーヌが活躍していた時期は、これまたブル ジョワ劇の代表的な劇作家の一人であったジョルジュ・

フェドー(名前も同じだ)と大体重なる。フェドーは 1862年生まれで、1921年5月5日死亡。

 クールトリーヌの芝居は、多くの場合登場人物の数が 二人であり、室内劇である。これが、セネート saynète と呼ばれる一幕物の小喜劇の基本的な特徴だからだ。彼 の戯曲の登場人物の言葉は噛み合わず、ずれていくこと が笑いを生む。しかし、その笑いは単純な開放的な笑い ではなくて、苦く、ブラックで、不気味で不条理な笑い なのだ。読者=観客は、自分が隠したがっている、隠し ている暗部が舞台で情け容赦なく露呈され、辛辣に笑わ れているのを目撃させられている気がする。怒り出すの は無作法だし醜い。無邪気に大笑いするのは馬鹿だ。確 かにそうだよな、と寛大なふうを装いつつ曖昧な苦笑い を浮かべるのが賢明なやり方ということになるだろう。

 『家庭の平和』に関して言うと、トリエルとヴァラン チーヌの夫婦喧嘩を見る現在既婚者、今は一人だとして も過去に結婚という愚行を経験したことがある者で、自 分の家庭、配偶者を重ね合わせて見ない人はいないと思 う。さらに読者=観客は、いくつもの言葉のレベルの混 在を楽しむことができる。作者がトリエルを作家に設定 したことが効果的に作用している。トリエルが自ら口述 筆記している物語の大仰で文学的な無意味な言葉。それ

にうんざりしているトリエルの自己憐憫、自己嘲笑の生なま の日常言葉。作家商売の計算高い醒めた、倦怠を湛えた 言葉。ヴァランチーヌ相手の距離を置くための妙に回り くどい、気取った法律文書ふうの言葉。それでも時々抑 えつけられずに口をついて出てしまう罵り言葉。夫を軽 んじていることが滲み出ているヴァランチーヌの執拗で 感情まかせの幼稚な言葉。

 モンマルトルにキャバレー「黒猫」がオープンしたの は1881年、クールトリーヌが23歳の時である。1884年か ら1900年までの16年間、クールトリーヌはモンマルトル のカフェというカフェの常連だった。遊び暮らし、放蕩 を味わい尽くした時期だった。最初の妻になるシュザン ヌ・フルリと出会うのはこの時期の半ば、1892年のこ とである。1902年、シュザンヌ死亡。『家庭の平和』の 発表は、その1年後の1903年。中に、トリエルが以前の 朝帰りを蒸し返されたことに対して、ヴァランチーヌに 71フランの罰金を課すと読み上げる部分がある。ここに は、クールトリーヌ自身の実体験の一部が戯画化され誇 張され、グロテスクに投影されていると想像してもおそ らく間違いではない。

 クールトリーヌの女好き。女好きの男が感じる女性恐 怖、理解しがたい女性に対する諦めと敗北感、怒りと愛 おしさ。トリエルからは、こうした作者の体験に根ざし た女性観が感じ取れる。そして、私は不意に、実在した 作家夏目漱石や太宰治の妻たち、他の多くの作家たちの 妻を、作家とその妻の関係をぼんやり想像してみたりす る。

 2009年5月1日、三年ぶりのパリ。その到着初日、最 初に乗ったメトロは2番線で、ブランシュからナシオン まで。ナシオンで1番線に乗り換えてポルト・ド・ヴァ ンセンヌで降りた。そこが待ち合わせ場所だったから だ。少し歩いていくと、クールトリーヌ通りがある。最 初の夕食は、その待ち合わせ相手とパリ市外のサン=マ ンデという町のレストランで食べた。クールトリーヌが 通ったかもしれない「黒猫」がブランシュ駅の前に、今 もある。私が滞在したホテルはそこからムーラン・ルー ジュの前を通り過ぎてすぐの所にあった。ホテル近くの モンマルトル墓地には、フェドーの墓、そしてこれもブ ルジョワ劇の作家の一人ウジェーヌ・ラビッシュの墓が ある。

小解説

参照

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