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カテゴリー般化課題における個人差の影響
著者 桜井 茂男, 桜井 登世子
雑誌名 奈良教育大学紀要. 人文・社会科学
巻 38
号 1
ページ 215‑223
発行年 1989‑11‑25
その他のタイトル Effects of Individual Differences on the Category Generalization Task
URL http://hdl.handle.net/10105/2002
カテゴリ一般化課題における個人差の影響
桜 井 茂 男・桜 井 登牡子
(奈良教育大学心理学教室) (桜井人間科学研究所) (平成元年4月26日受理)
Garner (1974, 1976, 1983)は,様々なタイプの刺激の本質と,これらの刺激がその処理に どのように影響を及ぼすかを明らかにした。彼によると,分離可能(Separable)次元(たとえば, 大きさと明るさ)は各次元が相互に分離して知覚され,独立に処理されるので,一方の次元に注 目し,他方の次元を無視するのは容易である。これに対し,統合(integral)次元(たとえば彩 度と明度)は各次元が統合して知覚されるので,選択的に一方の次元に注目し,他方の次元を無 視するのは困難である。
separable‑Integralという区別は,主として刺激概念とみなされ,次元それ自体がSeparable あるいはIntegralとして特徴づけられ,全ての人々にそのように知覚されると思われてきたが, Separableな次元の刺激を知覚し処理する仕方には個人差があることが段々明らかになってきた。
たとえば,年少児は,大人にとってSeparableな次元の刺激を呈示されたとき, Integralな知覚 を示す反応をする(Shepp & Swarts, 1976; L.B.Smith & Kemler, 1977; Ward, 1980)。さらに,午 長の精神遅滞児(Kemler, 1982)と多動児(Fisher,1977)は,年少の健常で多動でない子供より
もIntegralな反応をする傾向がある。また,同年齢,同レベルの能力を持つ大人でも,ある特定 の刺激に対してSeparableあるいはIntegralな反応をする傾向には一貫した個人差がある (T.D.Smith & Baron, 1981; Ward, 1983)c
Ward (1985)は,強制分類課題(Restricted Classification Task)を用いてSeparableある いはIntegralな仕方で刺激を知覚し処理するこ
とに関する大人の個人差について吟味した。こ の課題において, Separableな刺激は次元構造 によって知覚され, Integralな刺激は全体的類 似性によって知覚されるというGarner (1974) の考えを用いている。強制分類課題では,図1 に示す様に,提示された3つの刺激(A, B, C) のうち2つを仲間にするように求められる。 B
とCを仲間にしたときは類似性によるIntegral な知覚であり, AとBを仲間にしたときは次元 によるSeparablな知覚であるとみなされる。
Ward (1985)は,強制分類課題の遂行に際し て認知能力の差が反映されると考え, Group Embedded Figures Test (GEFT)を用い,選択 的処理能力との関係を検討した。強制分類課題 を3ブロック行った結果,選択的処理能力が高 い群はブロックが進むにつれ次元反応数が増加
215
I NO IS Nu 王l C‑° um vA
1 2 3
VALUE °F DIMENSION 1
F叫1 強制分類課題
216
桜 井 茂 男・桜 井 登世子したが,低い群ではこのような変化がみられなかった。また,ブロック1では両群の次元反応数 の間に差がなかったが,ブロック2, 3では高群の方が次元反応数が有意に多かった。また,ス ピード分類課題における処理能力と強制分類課題との関係を検討したところ,スピード分類課題 で良い成績を示した者は,次元反応数が大きく増加した。これらのことから, Wardは基準次元 反応の増加を示す傾向は,選択的処理能力と非常に関係があると結論し,どんな処理能力が Separable‑Integralな知覚と関係があるのかを考えてみることの重要性を示唆しているo
Stagner & Ward (1983)は,強制分類課題において基準次元反応が多かった者は,ロールシャッ ハテストにおいて全体反応が多かったことを示した。ロールシャッハテストにおいて,全体反応 はプロットの部分を結合して全体を意味づけた場合であり,組織化の水準が高いとみなされる。
したがって,強制分類課題において基準次元反応が多かった者の方が認知レベルが高いとみなさ れるが,このことは,認知一知覚の発達がIntegralな知覚からSeparableな知覚へ進んでいくと いう従来の知見と一致する(Kemler Nelson, 1984; L.B.Smith, 1979; L.B.Smith & Kemler, 1977)。
Integra卜Separableという視点から認知一知覚の発達をとらえた研究は,強制分類課題の他に, カテゴリ一般化課題,分類学習課題を用いて行われてきた。
カテゴリ一般化課題は, L.B.Smith (1979)によって考案された。この課題では,グループAに 属する3つの刺激とグループBに属する3つの刺激を標本刺激としてブロック呈示し,それぞれ が仲間であることを教えた後で,別に用意した刺激を一枚ずつ呈示して,それがグループAに属 するか,グループBに属するかを判断させる。次元と類似性の両方で分類できる課題では,幼児 は類似性によって, 5年生は次元によって分類する者が多かったことから, L.B.Smithは, Integ‑
ralな知覚に基づく類似性による分類からSeparableな知覚に基づく基準次元による分類‑と発 達的に変化すると結論した。
分類学習課題を用いたKemlerNelson (1984)は,テスト事例の呈示(実験1)と学習の難易 皮(実験4)によって認知一知覚の発達を査定し,幼児と5年生の分類学習の難易度の結果から, Integralな知覚からSeparableな知覚へ発達的に進んでいくと示唆した。
以上のように, Ward (1985)は強制分類課題を用いてIntegral‑Separableな知覚における大人 の個人差を扱い, L.B.Smith (1979)はカテゴリ一般化課題を用いて, KemlerNelson (1984)は 分類学習課題を用いてIntegra卜Separableな知覚における発達的変化を扱っている。本研究では,
カテゴリ一般化課題を用いてIntegra卜Separableな知覚における類似反応一基準次元反応につい ての大人の個人差を吟味する Stagner&Ward (1983)はロールシャッハテストを指標として 大人の個人差を検討した。本研究でもロールシャッハテストを個人差の指標とするが, Stagner
& Wardは強制分類課題を用いていた.弓鋪u分類課題における認知的プロセスは,図2に示され るように, 4つのプロセスが考えられる。まず, ①標本事例を認知する。この後,基準次元反応 では②次元を認知し, ③次元価の同一性を兄いだす。類似反応では, ②次元を認知するが, ③事 例間の共通次元価の数を数える場合と, ②知覚的類似性を認知し, ③事例間の直感的な類似度に よる場合が考えられる。カテゴリ一般化課題では図3に示すような6つのプロセスが考えられる。
まず, ①標本事例を認知し, ②カテゴリーとしてとらえる場合と, ②個別にとらえる場合にわけ ることができる。その後,いずれの場合も③標本事例と学習事例との対照が行われる。カテゴリー としてとらえた場合,基準次元反応では④次元を認知し, ⑤次元価の同一性を兄いだし,類似反応 では④知覚的類似性を認知し, ⑤事例間の直感的類似度を兄いだす。標本事例を個別にとらえた場合 は④次元を認知し, ⑤事例間の共通次元価の数による類似反応と, ④知覚的な類似性を認知
図2 強制分類課題における認知的プロセス
[*]3 カテゴリー般化課題における認知的プロセス
218
桜 井 茂 男・桜 井 登世子し, ⑤最も類似している事例の探索による類似反応とが考えられる。このような強制分類課題と カテゴリ一般化課題の認知的プロセスを踏まえ, Integra卜Separableな知覚における類似反応一 基準次元反応とロールシャッハテストを指標としたときの大人の個人差との関係を検討する。
方 法
被験者 看護専門学校の学生68名であり,平均年齢は19: 6 (18: 1‑28: 2)であった。
刺 激 頭の形(ひし形,丸), 航の形(長方形,三角形),上半 身の形(半楕円形,逆三角形), スカートの形(半円,三角形), 足の形(三角形,長方形)の5次 元が2価で変化する全身図形。刺 激を1, 0の記号で表したものが 図4に示されている。図4におい てinnで表される事例は,頭が ひし形で,腕が長方形で,上半身 が半楕円形で,スカートが半円で,
足が三角形の全身図形であること
項類
Iズ】4 刺激を示し, 00000で表される事例は,頭が丸で,腕が三角形で,上半身が三角形で,スカートが三 角形で,足が長方形の全身図形であること示す。
課 題 カテゴリ‑1の典型価を1,カテゴリー0の典型価を0としたとき,図5は本研究で 用いた課題のカテゴリー構造を示している。
(a)標本事例 カテゴリ‑1では価1を4つ持つ4事例,カテゴリー0では価0を4つ持つ4事 例で構成されているo図が示すように, 1つの基準次元(たとえばa次元)においてカテゴリ‑
1では全ての事例が価1,カテゴリー0では全ての事例が価0であるので,この基準次元によっ てカテゴリ‑1とカテゴリー0に分類できる。また,カテゴリ‑1は価1を16,カテゴリー0は 価0を16持っているので,この典型価による類似性によってもカテゴリ‑1とカテゴリー0に分
:大 TC ‑K ‑TL
a b c d e a b c d e 1 1 1 1 0 0 0 0
標 本 事 例
I^M^MI H X
I 1 1 0 I
I^M^HI^H^MI
il 冗
テスト事例 1 1
0 0 0 0 0 0
0 0 0 0 0 0 0 0 0 0
図5 カテゴリー構造
闇
図6 カテゴリ一般化課題
類できる。
(ち)テスト事例 基準次元反応一類似反応を査定するために2つの事例が用いられた。 01111を カテゴリ‑1に, 10000をカテゴリー0に分類したときは,類似性によって分類し,類似反応を したと判定する。 01111をカテゴリー0に、 10000をカテゴリ‑ 1に分類したときは基準次元によ って分類し,基準次元反応をしたと判定するcOllllと10000を同一カテゴリーに分類したときは, 類似反応,基準次元反応のいずれでもないと判定し,不定とする。
手続き 集団用ロールシャッハ法式新版人格診断検査A型を実施し,その後でカテゴリ一般化 課題を行った。図6に示すように,カテゴリ‑1の4つの標本事例とカテゴリー0の4つの標本 事例を各々枠で囲み左右に並べ,下の中央にテスト事例を里示した。課題はオーバーヘッドプロ ジェクターを用いて集団で実施された。実験者は被験者に,枠で囲まれた4人の女の子達は各々 仲間であり,下の女の子はどっちの仲間と思うかをノートに記録するように教示した。刺激呈示 間隔(isi)は10秒であり, 5 (基準次元) ×2 (テスト事例)の合計10枚をランダムに里示した。
結果と考察
表1は,ロールシャッハテストにおける全体反応一部分反応,衝動傾向,形体反応と,カテゴ リ一般化課題における類似反応一基準次元反応との相関係数を示したものである。
類似反応は全体反応と有意な負の相関関係を示し,部分反応と正の相関関係を示している。基 準次元反応は全体反応と正の相関関係を示している。この結果は強制分類課題を用いたStagner
& Ward (1983)と一致するものであり,カテゴリ一般化課題においても類似反応は部分反応を する者について得られやすく,全体反応をする者については得られにくいことを示している。ロー
220 桜 井 茂 男・桜 井 登世子
表1類似反応一基準次元反応とロールシャッハテストとの相関係数(γ)
全体反応 部分反応 衝動傾向 形体反応
類 似 反 応 ‑0.29* 0.22"* ‑0.10 0.06基準次元 反応 0.19+ ‑0.13 0.03 0.06 +l<.10 ♪<.05 ルシャッハテストにおいていくつかの部分をうまく組み立てて,まとまった概念として説明して いる反応は良い反応であるとみなされ,プロットの2つの部分をうまく結び付けて,形の上で少 しも不自然でないとき,形体水準の評定値は高くなる。このような組織化(結合性)は知性診断 の手がかりとされており,知的水準の高い反応をしたとき,基準次元反応が得られやすく,低い 反応をしたときに類似反応が得られやすいという結果は, Integralな知覚による類似反応から Separableな知覚による基準次元反応へという発達的方向を支持するものである。
ロールシャッハテストにおける衝動傾向とは,動物が運動しているようにみえた場合であり, 人間の運動反応とは異なる。これは,低い発達段階にある子供達にみられる反応である。したがっ て,衝動傾向の強い者の方が類似反応をしやすいと思われたが,カテゴリ一般化課題における類 似反応,基準次元反応のいずれとも有意な相関関係は得られず,少なくともロールシャッハテス トにおける衝動傾向はカテゴリ一般化課題における反応と何ら関係はないといってよい。 Ward (1983, 1985)は,衝動的な者は全体的に情報を処理し(類似反応),熟慮的な者は分析的に情報 を処理する(基準次元反応)ことを報告している。しかし, J.D.Smith & KemlerNelson (1988) は, MFFT (Kagan's Matching Familiar Figures Test)によって衝動性一熟慮性を測定し,衝動 的な子供は分類課題で熟慮的な子供よりも全体的処理(類似反応)を行ったが,マッチング課題 で熟慮的な子供よりエラーが多かったことから,衝動性が必ずしも全体的処理(類似反応)を説 明するものではないことを示唆している。衝動性一熟慮性との関係については,今後さらに検討 する必要があろう。
形体反応についても,衝動傾向と同様にカテゴリ一般化課題における類似反応,基準次元反応 と何ら関係は兄いだされなかった。形体反応は,物を見るときに形にこだわることであり,著し く形にこう泥する人は思考上の硬さが指摘される。すなわち概念のもつある意味に固執して,刺 の意味に考え直す融通性に欠ける。本研究で用いたカテゴリ一般化課題は, 5次元全てが形の変 化であったために形体反応のしやすさとは無関係に, 「形」に注意が向けられたと思われる。形 の変化を含まない刺激を用いた場合について吟味する余地があるようである。
ロールシャッハテストにおける個人差のうち,従来の研究を考慮して全体反応一部分反応,徳 動傾向,形体反応と, Integral‑Separableという観点からカテゴリ一般化課題における類似反応 一基準次元反応との関係を検討した。カテゴリ一般化課題を用いた類似反応一基準次元反応につ いての研究は幼児・児童を対象として行われ,実験的操作を加えた場合について検討されてきた (桜井・桜井, 1988; Smith, 1979; Sugimura & Inoue, 1987a, 1987b)。
カテゴリ一般化課題は,日常場面において幼児が概念を獲得していく事態と類似している。し たがって,外的に実験的操作を加えた場合だけでなく.どのような認知能力が関与しているのか
を検討していくことは重要であると思われる。本研究は大人における個人差について吟味したが, 幼児の個人差との関係について吟味し,概念獲得のプロセスを明らかにしていくことが今後の課 題であろう。
要 約
Ward (1985)は強制分類課題を用いてIntegral‑Separableな知覚における大人の個人差につい て検討した0本研究では5次元2価の図式的な女の子の絵で構成されたカテゴリ一般化課題を用 い, Integralな知覚における類似反応‑Separableな知覚における基準次元反応とロールシャッ ハテストによって測定された大人の個人差との関係を吟味した。
被験者は看護専門学校の学生であり,ロールシャッハテストを実施したあと,カテゴリ一般化 課題を行った。その結果,カテゴリ一般化課題における類似反応は,ロールシャッハテストにお いて全体反応をした者については得られにくく,部分反応をした者について得られやすかった。
基準次元反応は全体反応をした者について得られやすかった。カテゴリ一般化課題における類似 反応一基準次元反応とロールシャッハテストにおける衝動傾向および形体反応とは何ら関係が得 られなかった。
5 ff1 3t Iki
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Toyoko SAKURAI
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Ward (1985) investigated individual differences in the tendency to process stimulus dimen‑
sions in a manner亡hat is either primarily separable or integral. He employed a restricted classi‑
fication task that allows participants to classify items on the basis of component dimensions (separable perception) or overall similarity (integral perception)
The purpose of the present study was to examine the relations between integral‑separable perception and the responses on the Rorschach inkblot test.
In this experiment, sixty‑eight students in the nurses training school were given the Rors‑
chach inkblot test and then showed the category generalization task of schematic girls with five dimensions varying in two values and they were required to classify the test exemplars.
The results showed that individuals who attempted whole responses on the Rorschach inkblot test gave more separable responses in the category generalization task than did individuals who attempted part responses. There was no relation between integral‑separable perception in the category generalization task and reflection‑impulsivity on the Rorschach inkblot test.