ア オ ワ カ メの培 養 生 態 と養 殖 に関 す る研 究
右 田 清 治
Studies on Ecology and Culture of Undaria peterseniana
Seiji MIGITA
Undaria peterseniana, a species of Laminariales, grows in some limited districts in Japan, where it is used as food.
The author made experimental observation on this species, concerning the liberation and attaching of zoospores, the development of gametophytes, and the germination and development of sporophytes.
On the other hand, the sporophytes germinated in the laboratory were cultured in the sea, and their growth was investigated. The results are summarized as follows :
1) The shedding season of zoospores was from the middle of May to the middle of June, and the sea water temperature in this season was 18~23.5°C.
2) The number of zoospores liberated from 1 g. of half-dried sorus thallus was 1~
20 x 106, and when the thalli were put into sea water, most of zoospores were released within 10~20 minutes.
3) In the range of 15~30°C, the attaching number of zoospores was larger in lower temperature, and the attaching number was smaller in diluted sea water under 1.020 in specific gravity.
4) The shapes of zoospores and gametophytes of U. peterseniana were almost similar to those of U. pinnatifida as shown in Figs. 6 and 7.
5) The development of gametophytes, germination and development of sporo- phytes were satisfactory at 17.5~20°C in water temperature, at over 1.020 in sea water specific gravity, and at 2000~4000 lux in light intensity.
6) The germination of sporophytes was generally observed under 23 or 24°C. But when the culture water was left unchanged or poor in nutrient, the gametophytes did not become mature and failed to produce sporophytes.
7) The frond length of U. peterseniana which was cultured in the sea became twice as large as that of U. pinnatifida. But with its slender frond shape, the former was smaller than the latter in the rate of the frond weight to the frond length.
8) The culture grounds suitable for U. pinnatifida also gave a good crop of U. pete- rseniana.
24
本 邦 に 産 す る ワ カ メ 属 に は ワ カ メ,ア オ ワ カ メ,ヒ ロ メ の3種 が あ り,い ず れ も食 用 に 供 さ れ る が,ワ カ メ 以 外 の 種 類 は 棲 息、地 が 一 部 の 地 方 に 限 られ て い る.そ の う ちア オ ワ カ メ は 千 葉,神 奈 川,福 井,鳥 取,長 崎 な ど の 諸 県 で そ の 生 育 地 が 知 ら れ て い るが ⊥),産 地
アオワカメの培養生態と養殖に関する研究 25
が局地的で生育水深が深いことなどの7cめ品質が美味であるにかかわらず,収量は地元で 消費する程度に過ぎない.一方ワカメでは,その養殖事業がまず東北地方で普及し,九州 においてもこの数年来各地で企業化試験が試みられ,暖海で付着物が多く生育期間が短い などの不利な点があるが,かなり良好な収獲が得られることが実証されてきた2−4.そこ で,九州西岸の対馬鰐浦,五島若松瀬戸,壱岐,平戸瀬戸などに産するアオワカメを室内 培養の種苗によって養殖することを計画した.
養殖の基礎資料としての生麓的研究は,ワカメについては斉藤5−8)・の詳細な研究業績を はじめ多数の報告があるが,アオワカメではほとんど行われていないので,種苗培養の指 針となる配偶体や初期芽胞体の生態について実験的に観察し一応の結果を得ることがで
き,また海での養殖試験でも良好な成績をあげたので,それらの結果を報告する.
材 料 及 び 方 法
揚げられたアオワカメのうち 成熟体を材料に用いたが,主 な生態に関する実験や養殖種 苗の培養には,1962年5月29
日五島若松瀬戸で潜水採集さ れだ藻体を使用した.また生 態的実験の一部は,前年度養 殖しだ鯛麺を用いて1963年5 月下旬から6月上旬にかけて 游魚子付けして追試した.
培養基質にはスラ■ドグラ スや合成繊維撚糸を用い,配 偶体の着生,生長に関する実 験は前者に游走子付けして行 い,芽胞体の発生,生長は後 者に生育した配偶体の均一な ものを利用した.実験に際し ては100ccのガラス容器にス ライドグラス1枚,
などは各項で説明する.
アオワカメは天然の棲息地が:地域的に極限されていて,生育場所が深く潮流の速い所で あるため,採集がかなり困難である.この研究で配偶体や初期芽胞体の形態の観察には,
1960年6月4日平戸瀬所で打
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Fig.1. The map of七he of sou七hern Nagasaki Prefec七ure, showing七he experimen七al cul七ure grounds.
またはガラス上に固定した撚糸20cmを入れて培養しtcが,実験の条件 培養液には濾過,低温殺菌した海水14にNaNO30.19,
Na2HPo4・12H二〇〇.029を戸口え7c液を主に用い, i換水は2,3の実験を除いて1週間 毎に行い,培養照度は光量を変えだ実験以外は約1,0001uxの明るさであった.
配偶体の生長は,雨走子付け志すぐに夏の高温期になるので,実験の一部は水道水で冷 却しながら実施したが,培養が進むと雌雄の判定が困難であったので,約40個体の平均細 胞数で示し,雌雄のはっきりし7cものでも各20個体の総平均値で表わした.また初期芽胞 体の生長は上位40個体の平均体長で示した。
26 長崎大学水産学部研究報告 第15号(1963)
養殖種苗としての配偶体の培養は,筆者らがワカメで従来行ってきたガラス水槽による 集約培養法を採用した.この方法は合成短繊維の径1,5・一2mm(20#36一一45本)の撚糸をガラ ス板に緻密に巻きつけた基質板(Fig・2)を作り,樹脂加工してない撚糸ではか女などの
Fig.2. Subs七rata of synthetic twine for七he Undaria culture.
焔で細毛を焼き切って,それらを容量5eの角水槽に1.2〜2㎝の間隔で互に平行に並ぶよ うに垂下して培養した(Plate II, C).游走子付けは,胞子液ig 一一定量だけ水槽に入れ,水を 心心しtc後で放置して付着させ,着生後の半月〜1ケ月間はやや明るい2,000〜2,5001ux の場所で,その後は250〜5001uxの低照度に移して培養し,水槽の位置は平行に並んだ基 質板と同じ方向より光を受けるようにし7c.培養液は生態の実験と同様に海水に窒素,燐 酸を添加したものを用い,9月中旬以降はさらに微量要素としてProvasoli Pl処方に準
じた液を加え7ものを使用し,1〜2ケ月毎に換水し7c.培養は室温のもとで行っ7cが,
その期間の水温はFig・3に示し7c.
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May J岨. Jul. Aug・ Sep. Oct・ N。v.
Fig. 3. Water temperature in the culture vessel in each ten days during the experiments.
一e一 1962, 一・O… 1963.
海における養殖は,10月下旬か ら11月下旬にかけて,1〜3㎜に芽 胞体が生育した撚糸を径3㎝前後 の藁縄に生育部分が外側になるよ うに巻き付けて,それを孟宗竹1 本を浮竹とし7c簡易筏に結び2・一3 kgの石の重りをつけて垂下した.
また種糸を藁縄に挾み込む方法や 延縄式の養殖も試みた.養殖地は 島原市三会・安中,長崎市網場・
茂木・深堀・神ノ島・福田・式 見,佐世保市針尾,野母崎町野母 の10地点で,それらの場所はFig。
1に示しだ.海での芽胞体の生育 は約1ケ月毎に親縄を取上げて観察しtcが,生長は大型葉体(上位10%)の平均葉体長で
示した.
結
果
アオワカメの培養生態と養殖に関する研究 27
三三子の放出と着生,アオワ カメの 游走子嚢は,茎から葉に移行する部 分より上部に肥厚してできる中帯部 に形成されるが,天然における中帯 部の形成期や野州子放出期について は調査回数が少い7Cめ正確にはわか らなかった.九州西岸で採集した天 然産や養殖第2代目の解体で調べた 結果では;中帯部の形成は4月下旬 までに採集されたものでは認められ ず,5月上旬になって少数の個体で 識別されたが,二上子の放出は5月 中旬になって初めて観察さa一し7c.5 月下旬から6月中旬にかけては天然 産でも養殖したものでも普通に放出 がみられ,放出の盛期は5月下旬〜
6月上旬のようである.
成熱した図体を海中より取上げて しばらく室気中にさらし再び海水に 浸すと,多数の游走子が放出されて
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Time . min.
Fig.4. Change in七he七〇七al number of liberated zoospores during the tirst 40 minutes af七er sorus七hallus(1g)pu七in sea wa七er.
海水の色が褐色に変る.澱走子は長卵形をなし,その大きさは8.0〜8.7×5.4〜6.0μで,
前側部より2本の鞭毛を出し,游泳する際には1本は前方を他の1本は後方を向いていて 前者の長さは14〜18μ,後者は10〜13μである(Fig・5, a)。その体内には2〜4個の褐色 の色素粒を持った1つの色素体が後部にあり,全体に穎粒状物質が散在しているが,前部 Table t. Number of liberated zoospores in various temperature.
Water tempr
(eC) 15.0 17.5 20.0 22.5 25.0 27.5 30.o
・・ G臨3864×1035612 4431 4763 5290 3082 21 24 Figure shows the number of zoospores liberated from 1 g. of half.dried sQrus thallus.
Tab】e 2. Effβct of wa七er temperature oll at七aching of zoospores.
Wa七er七emp.(℃)
Number of a七七ached spores (/cm2)
15.0 17.5 20.0 22.5 25.0 27.5
4860 3122 3240 2568 .1295 1742
Table 3. Effec七bf specific gravi七y of sea wa七er on a七七aching of zoospores.
Specific gravi七y 1.0150 .1.0175 1.0200 1.0225 1.0250 1.0275 一1.0300
N盤i亀a踏dl 604125526412763256921・802342
28 長崎大学水産学部研究報告 :第L5号(1963)
はやや透明で,眼点は認められず幽光性も示さない.放出された上諭子はしばらく游泳し tc後で先端より基物に着生し,やがて丸くなるが,その時の直径は6〜7.5μである(Fig・
5, b)e
游走子の灘泳は海より取上げてから短時間のうちに放出されたものはきわめて活発であ るが,亡師状態で長時間経過したり遠くまで持ち帰ったりしたものでは,同様の処理をし7C ワカメと比べて游泳力が弱い傾向がみられる.これは游走子を出す中帯部が平面であるの で,乾燥がはやく他物にふれて傷み易いためで,急走子の本来の性質とはみられなかった.
この試走子の放出や着生の生態について2,3の環境条件のもとで実験を行った.
游走子の放出数は,個体によりかなりの変化があり,蔭干約4時間後の中帯蔀19の放
Table 4・ A七taching−ra七io of zoospores to subs七ra七a placed a七differen七angles 七〇七he plane.
O.
Angles 1 900 600 450 300
(plane)
A七七aching−ra七io 1 4.6 7.7 8.4 12.2
出軍は,1〜20×106であった.しかし放出盛期においても大量放出をする個体はワカメと 比べて少く,また同一個体の放出数は中帯部の部位によって相違し放出初期は下部で後期 は上部で多かった.蔭干し弛中帯部を海水に浸した後の海水中の游走子数の経時変化は Fig・4のようになり,放出は短時間のうちに行われ10〜20分以内に大部分の游走子が放出
される。
水温の影響は2.5℃毎の温度差の恒温水槽内で,同一個体の同一字分の中帯部19を切 り取ってその放出数を調べたが,結果はTable 1のようになり,15〜30℃ではいずれも 放出がみられ,放出数は30℃でやや少い程度で明らかな差は認あられなかった.着生に及 ぼす水温の影響は100ccのビt一一カーの海水に1ccの胞子液(4×106/cc)を入れ,それらを 15〜27.5℃の恒温下におき,1日後に容器壁に垂直に立てたガラスに着生した胞子数を顕 微鏡10×10倍の10視野について数え7c.その結果は1c皿2当りに換算してTable 2』に示し
tcように各水温の着生数には大きな違いはないが,低温程多く,25,27.5℃ではやや少く 着生後の枯死もみられた.
海水比重が游走子の游泳並びに着生に及ぼす影響を知るため,正常海水に食塩まだは淡 水を加えて各比重の海水を作製し,その100ccをそれぞれビ t一・カt・一一に入れ1ccの胞子液:(4
×106/cc)を加え,5分後に游泳の様子を1日後に着生数を調べた.各比重の海水中にお ける焼絵子の游泳は,比重1.020〜1.030ではいずれも活発で游泳胞子数は全胞子の80%以 上であっだが,1.015では游泳力も弱くなり胞子数は50〜60%に減じ,1.OIOでは7〜15%,
1.005では1.5%以下であった.各比重の海水での着生数はTable 3のようになり,比重 1.020〜1.030では差は少いが,1.0175では着生数はそれらの約半数になり,1.015ではさ
らに1/4に減じている.
pHの着生に及ぼす影響は,海水にNaoHとHCIを加えてpH:値が6.5,7.3,8.2,
9.2,9.8になるように調製し,上記実験と同様にして2日後の着生数を数えtc.その結果 ではpH:9.8でやや着生数が少なかったが, pH:6・5〜9.2では明かな差は認められなかっ7a.
二丁子着生の際に,基質面が水平に対して傾斜しておかれだり,基質間の隙間が相違す ると,着生胞子数がかなり増減することは,ワカメの養殖種苗の游走子付けでよく経験す
アオワカメの培養生態と養殖に関する研究 29
Table 5. A七七aching・ra七io of zoospores to substra七a placed七〇ge七her at different spaces.
Interval of space (mm)
:A、七七aching−ra七io
1 1.5 3 6 12 22 40 80
1 1.26 1.49 2.36 3.27 3.8 3.32 3.75
るので,アオワカメでもこれらの点を実験的に観察し7.游走子液を入れて擬伴した海水 中に,ガラス板を水平に対して0,30,45,60,90度にな・るようにおき,またガラス板を1
㎜〜8㎝の隙間をおいて互に平行になるよう垂直に設置し, 2日後の着生数を同じ水深 の部位で調べfc.基質面の傾斜角度による着生の傾向はTable 4のようになり,垂直 面での着生数を1としだ場合,水平に近づく程着生数の比は増加する.この値は基質の 表面での計測値であるが,裏面ではこのような傾向はみられず,どの角度でも垂直面の
Fig.5. Zoospores of Undaria peterseniana and developmen七〇f七hem.
a;zoospores, b; attached zoospore, c tv f;2days old gametophyte,
9;male game七〇phyte,10 days old, h;female game七〇phy七e,10 days old, i;res七ing s七age of game七〇phy七e, j;regermination, a〜f; × ca 1200, g・Nvj ; × ca 800.
30 長崎大如水産学部研究報告 第15号(1963)
1に対して0.8雨後の均一な着生がみられた.基質問の隙間を変えて設置し7cガラス面へ の着生は1]mmの室間をおいたものの着生数を1としtc場合の比率でTable 5のようにな り,基質の間隔が大になると着生数が増加するが,12㎜以上になると着生数はほぼ一一定に なりそれ以上多くならなかっ7C.
游走子の着生は基質面の粗雑さによって相違することはすでによく知られているが,ア オワカメで行っ7c実験でも,着生数はガラスのような滑面では少く,カキ殻ではやや多
く,合成短繊維ではガラスの4〜5倍の着生がみられ7c.
養殖種苗の培養では前述しtcようにガラス板に合成短繊維を巻きつけ7c基質板を1.5〜2 cmの間隔で垂下して,灘走子液を投入撹梓して胞子付けを行ったが,着生は割合に均一で あって,一般に1cm 2当りの着生数は水槽内の海水1ccの胞子数の10〜20%であった.
c 翻
sspac, 一σ気 −o多. ecs
.Fig.6. Ma七ured game七〇phy七es and young sporophytes of Un4ariaカeterseniana.
a;皿a七ured female game七〇phy七e, o……oggonia, b;matured・male game−
tophy七e, s……sperma七〇zoid, c;germina七ioll of sporophy七e, d;25 days old sporophy七es, a・b; × ca 800, c ; × ca 520, d;× ca 350・
アオワカメの培養生態と養殖に関する研究 31
配偶体の形態 着生して球状になった游走子は直ちに発芽管を伸しはじめるが,その際 もとの細胞の内容は次第に発芽管部に移行して,やがて原胞子との間に隔膜が作られる
(Fig・5, c〜e)。次にこの発芽管細胞が伸びて新しい細胞膜が形成されるが(Fig.5,
f),これを繰返して次第に伸長し糸状細胞列の配偶体に生育する.発芽管部の細胞の長さや 太さは増養条件でかなり差があり,雌性配偶体は太く10〜14μ,雄性配偶体は細く6〜9μ であって,隔膜蔀でややくびれている(Fig.5,9, h).
これらの配偶体は水温が24,250cになったり,低比重海水で増養すると,亜鈴状に細胞 がふくらんできて,雌雄の区別が不明確になり,生長も遅れるようになる.さらに高水温 になると,細胞膜が厚くなって配偶体は休眠に似た状態となり(Fig・5, i)その際の細胞 は14〜20μ×17〜23μで,雄性配偶体がやや細いこともあるが,雌雄の識別は一般に困難 である.
秋になって水温が約24℃以下になると,休眠状態の配偶体の各細胞は再び生長をはじめ るが,その際には雌では太く雄では先が徐kに細くなる細胞列が伸長し,1〜2週間後には 先端に蔵卵器と蔵精器が作られ受精が行われるようになる.蔵精器は雄性配偶体の側枝の ような形で形成され,単室で色がうすく,精虫は大きさ3。9〜4.3μ×2.7〜3.2μで側面よ
り2本の鞭毛を出して活i発に游泳する(Fig・6, b).蔵卵器はそれを支持する基部細胞と 内容が酷似しているが,長大であってその大さは12〜22μ×40〜70μで,色素体も幾分濃 い色をしている(Fig・6, a).卵は蔵卵器よりやや先端に押し出された位置で受精するが
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Days
Fig.7. Grow七h of game七〇phy七es in various wa七er七emperature・
Beginning da七e;Jun・1,1962,一●一15℃
一A一 17.5eC, 一一一 20 eC, 一〇一一一・ 22.50C
一△一25℃,一ロー2了.5℃
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Days
Fig・8. Grow七h of gametophy七es cu1七ured in differen七salini七ies of sea wa七er.
Beginning date ; Jun. 1, 1962, 一e一一 specific gravi七y l O15,一▲一1.Ol 75,一■→
1.020, 一〇一 1。0225, 一△一 1.025, 一[コー 1.0275, 一十一 1.030
32 長崎大学水産学監獄究報告 :第15号(1963)
稀には蔵卵器より離れることがあるi受精卵は一般に雌性配偶体上で発芽し,数日後には 5〜10細胞の芽胞体に生育し(Fig」6, c),,やがて仮根を出して直接基物に着生するよう になる(Fig・6, d).
なお,配偶体は水温24,23℃以下でその他の条件が好適であると,休眠期を経ないで藩 生後25〜30日で成熟受精を行い初夏に芽胞体が観察されることがある.
以上の配偶体,初期芽胞体の形態はワカメときわめてよく類似していて,両者の間には 識別できる特徴は見出せなかった.
配偶体の培養生態 コγブ科の海藻では配偶体の生長,成熟が培養液や水温などの条件 でかなり相違することが知られ,特にワカメでは斉藤6)7)などの詳細な研究がある.そこ でアオワカメでも水温,海水比重,照度などの増養条件が生長に及ぼす影響について実験
した。
水温の生長に及ぼす影響は,15〜27.50cの間で2.5℃つつ温度の違った恒温のもとで,
スライドグラスに均一に藩生した1日後の游走子を100ccのガラス容器に入れて培養し た.その結果は発芽部の細胞数でFig・7に示しt 7 J・・ ,配偶体の生長は15〜22.5℃では大 差なく,そのうちでも17.5,20℃で特に良好であった.25℃以上では生長がおくれ,27.5
℃では数細胞になった後で生長はほとんど停止し7.配偶体の形態は低水温で細長く雌雄 がはっきりしているが,22.5℃以上では細胞がところどころふくれ隔膜部でくびれて雌雄 の区別が困難であった.しかし実験の範囲の水温で他の培養条件がよければ,高温の7Cめ に枯死が多くなる傾向はみられず,一般の培養でも31,32℃の高水温でよく越序しtc.
海水比重の生長に及ぼす影響は,比:重1.015:一1.030の海水を調製し前述の実験と同様な 方法で20〜240cの水温で培養し7c.その結果はFig・8のようになり,配偶体の生長は比重 1.020以上で良好で,比重1.0175ではややおくれ,比重1.015ではさらにおそくなる.なお
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Fig 9・
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Da七θ Date
Grow七h of gametophy七es under various ligh七intensi七ies.
Beginning da七e;Jun・1 ,1 962, A;at cons七ant temp・of 16℃,
B:a七room七emp,一●一40001ux,一▲一一一20001ux,一■一10001ux,
一〇一5001ux,一△一 2501ux,一[コー 1001ux,一十一501ux.
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アオワ二二の培養生態と養殖に関する研究 33
実験しt海水比重の範囲で配偶体の生残率には大きな差は見出せなかった.
照度と生長の関係は,16℃の恒温室と普通の実験室内で,50〜4,0001uxの範囲で7段 階の明るさの場所で実験したが,これらの照度は自然光であるため1日平均の大略の値で
ある.その結果はFig・9のようになり,16℃の恒温では配偶体の生長は明るいほど良好 で,特に2,0001ux以上で優れていた.一方,20〜24℃の室温では成長は1,000 luxで最 もよいが,明るい所のものは珪藻の繁殖のため正確な判定ができなかった.また配偶体の 細胞はワカメで知られているように,明るい所では太く寸土下では細長くなる傾向がみら
れた.
Table 6・Effec七〇f pH on grow七h of game七〇phy七es.
pH 6.5 7.3 8.2 9.2 9,8
Number of celles 4,9 9.0 13.2 12.1 5.7
cu1七ure period;Jun.8〜Jun.24,1963
pHの影響については, NaoH, H:clを加えてpH 6.5,7.3,8.2,9.2,9.8の海水を 調製し2日毎に換水して実験した.その結果はTable 6のようになり,配偶体の生長は pH 8.2の正常海水で最もはやく,次いでpH g.2,7.3,9.8,6.3の順序で生育がおくれ pH:9.8,6.3での細胞数はpH 8.2の1/2以下であっtc.
栄養塩と配偶体の生長の関係については,海水に窒素,燐を加え7aり,添加量を変えた りしてその大略を実験的に観察し7c.その結果はTable 7のようになり,窒素,燐を単 独に加えた場合は燐の方が生育がよく,両者を共に加えたものは燐だけのものと初期は差 がなないが約1ケ月後では生育が良好で,その濃度が濃いとやや抑制され,また海水だけ のものでは1〜2週間で多くの個体が枯死した.この結果は使用海水の肥沃度や生育個体 数でも相違すると考えられるが,違った地点で採水しtc海水での数回の増養でも同様な傾 向がみられた.
培養個体数の多少は生長と関係があることが当然考えられるので,着生密度が違うよう に游走子付けしtスライドグラス各1枚を100ccの海水で増養した.その結果はTable 8 のようになり,着生密度が疎なものほど生長が良好となっている.
養殖種苗の培養では,すでにワカメで得られている知見やこの実験結果も参考にして.
Table 7. Grow七h of game七〇phy七es in some enriched sea wa七er.
1・ 1962 (Jun・1 uJun.15)
Cul七ure wa七er
Number of cells
Sea wa七er 1!
十N
6.2 8.3
!!
十P
14.0 も
+ (N・P)
15.5
+5(N・P)
11,6
十10(N・P>
7.5
II・ 1963 (Jun・ 8rvJun. 22)
Cu1七ure wa七er
yS
da 7
yS
da 4
の自ΦO嗣︒
﹂①ρ日コ渚
Sea wa七er
3.1 6.0
十1/10(N・P);十1/2(N・P)
1
5.8 12.8
6.2 17.4
+(N・P)
5.2 14.1
+2(N:・P)
4.5 11.7
N ; NaNo3…O.1 g/e, P ; Na2HPO4 . 12H20…O.02 g/e
34 長崎大晶晶産学部研究報告 第15号(1963)
Tab】e 8. Rela七ion be七ween七he popula七ion of game七〇phy七es and the grow七h of七hem.
Number of growing
game七〇phy七es(/cm2) (69) × 1 02
yS
da 7
yS
da 4
の=Φo︸o
おρ白づ乞
3.6 7.8
(56) × !!
3.4 8.0
(45) × i!
(26)× !! ll (20)× i!
3.4 9.2
5.1
1R.4
4.4 17.2
Exp.;Jun.8−Jun.22,1963, cu1七ure wa七er;100 cc
数個水槽の培養管理を行った.『全般的にみ7配偶体の生育は前述した実験結果とよく一致 するが,水温は培養開始後まもなく夏の高温になり生長の適温に冷却することは困難で,
適照度下で長く培養すると雑藻の繁殖が配偶体の生残率に悪影響を与へ,しかも適温,適 照度で培養できるとしても早く受精したり生長し過ぎて基壇より離れ易くなる欠点が生じ tc.このように種苗培養の安定性を考慮すると,必ずしも生長に良い条件下で培養するの
『が有利とは云えない点もあっ7C.
実際の培養は室温のまま行ったが,海水に適当量の窒素,燐を添加し1〜1.5ケ月毎に換 寓することによって,夏の高温期(最高32℃)を温度だけの原因では枯死させることなく 1培養できた.しかし培養中には原生動物や墨型の繁殖,細菌によると思われる被害がみら
れた.
原生動物の食害は培養初期に被害が多く,メチレγブル1一の1〜5万倍稀釈水溶液に1 一一 2分浸漬して聖水することにより曇る程度その被害を防止でき,雑藻は培養1,2ケ月 一台からその障害が現われ易いが,培養液の栄養添加をやめて照度を2501ux以下にするこ
とにより被害を軽減することができtc. tt tc細菌によると考えられる病害は,水温が26,
二27℃になる頃から褐色になつtc基質板に不定形の白色斑が現われ(Plate I;L D),それが 一揖に拡大伝染するが,その部分の配偶体は死んでおり細胞の内外には無数の桿菌が観察さ 一れた.なお換領した直後に配偶体の色が急に黄化して大部分が枯死する場合があるが,こ れも細菌性の病害のように観察された.いずれもストレプトマイシンの10万単位50〜100 μ9/6の添加でかなり被害を軽減し,特に前者の斑をなして枯死する症状では病斑の拡
大を阻止し伝染を予防することができた.・
また基質に用いた市販の合成繊維のなかには,それよ・り溶出する成分が配偶体の生育を 抑制するものが少くなく,継る種の繊維ではアク抜きしても着生後の游走子がほとんど枯 死し7a例があった。配偶体が大きく生長すると基質より脱離し易くなるが,これはガラス のような面に着生し7c 6ので多く,合成繊維撚糸でも長繊維が短繊維より脱離が多い傾向
・がみられた.
芽胞体の発芽・生長 前述した如く夏期の高温期に休眠状態となった配偶体は,秋にな り水温が24,23℃に降下すると普通は再び伸長を始め,1〜2週間のうちに卵が受精して 芽胞体が発芽する.しかし配偶体の成熟並びに芽胞体の発芽は培養条件によ5て著しく遅 Tab1e g. Number of sporophy七es germina七ed in various wa七er七empera七ure.
Wa七er七emp。(℃) 17.5 20.0 22.5 25.0
∩∪7
SO eC μ七 3
︵凶薯\︶
﹄①ρ霞葺乞
54.0 88.7
75.2 86.5
48.7 55.7
∩︶2
Beginning da七e of She experimen七;Sep.23,1962.
アオワカメの培養生態と養殖に関する研究 35
速があるので,未受精の配偶体が均一に生育している撚糸20cm(5c皿4本)をスラ■ドグ ラス上に固定して100ccのガラス容器に入れ,それぞれの環境条件のもとで培養して芽胞 体の発生数を比較し,また均一に芽胞体が発生した撚糸を用いて初期芽胞体の生長を実験
した. ・
水温の影響は培養容器を恒温水槽内に入れて約1,000・1uxの照度で実験したが,その結 果はTable 9のようにな・り,芽胞体の発芽数は20℃で最も多く約2週間で大部分の卵が
Table 10. Number of sporophy七es germina七ed in differen七salini七ies of sea wa七er・
Specific gravity 1 1.0275 1.0250 ri SE Ee? 39
Oc七つ こ)
7
1.2250 1.0200 1.01 了5 、1.O15G
16.8 51 .2
22.7 46.5
25.4 53.1
18.2 47.0
1.9 11.3
o O.8
Beginning da七e of七he experi皿en七;Sep.23,1962.
受精し,17.5,22.5℃でも多いが,25℃ではほとんで受精しなかった.ま7 lll・通の種苗培・
養でも水温が23℃前後になると芽胞体の発芽が観察され,同時に増養したワカメと比べア オワカメが時期的にやや早く受精する傾向渉みられtc.初;期芽胞体の生長はFig. IOのよ うになり,生長は20℃で最もはやく,22.5,17.5,25℃の順序で遅れたが1特に25℃では
1000
800
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意6。。g・
400
200
o oce.s
O
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⑳
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⑳
9 Dato
16 2.]
Fig.10. Grow七h of young sporophy七es in VariOUS七empera七Ure.
Exp.1963,一⑳一25,℃,一丁一22.5℃
一▲一20.C,一〇一17.5。C,一[コー15。C
︵乏︶含し◎¢呂
ユ200
● i
口1
ユ000
o ;⁝
800
︸;き⁝
1
ヒ
600 11
△
←400 Aと占1
巴 △
200 §
6
o ﹄
octi.5 9
Date
16 25
Fig.11. Grow七h of young sporophy七es cu1七ured in differen七salini七ies of sea wa七er.
Exp.1962,一㊥一specific gravi七y 1・0275,
一國一 1.025, 一▲一 1.0225, 一〇一 1.02e,.
一[コー 1.Ol75, 一△一 1.Ol5
36 長崎大学水産学部研究報告 第15号(1963)
生育はかなり抑制される.
海水比重の影響は比重1.015〜1.0275の範囲で実験し,芽胞体の発芽数はTable 10の ように,比重1.020〜1,0275で多く,それ以下の比重では低舷になるほど少くなり,比重 1.0175では3週間の培養で正常海水の約1/3になり,比重1.O15ではほとんど受精しなかっ 元.まだ初期芽胞体の生長はFig・11のようになり,前実験と同様の影響がみられ,生長 は低鍼になると遅れ,比重1.015での体長は比重1.025の約1/2であった.
Table 11・Number of sporophy七es germina七ed under various ligh七in七ensi七ies.
L・igh七intensi七y (lux)
芭ゆS。p.27 昌皇()・t・3
2000 1000 500 250 100 50
3了.5 73.8
20.2 62.0
12.4 36.8
2.0 11.7
3
0 ∩︶0
Beginning, da七e of七he experimen七;Sep.23,1962
照度の影響は日中の平均照度で約50〜2,0001uxの6段階の場所に培養容器をおいて実 験した.芽胞体の発芽はTable 11のように光の強さに強く影響され,2,000,1,0001ux で受精が早く芽胞体数が多く,5001uxでもよく受精したが,2501uxではかなりおくれ,
100 lux L■下では20日後でも芽胞体の発生は稀であった.まだ初期芽胞体の生長はFig・12
ユ4◎o
1200
1000
C2 soo
葛
看、。。
400
200
Orm.t.5 9 16 2J
Date
Fig.12. Growth of young sporophy七es under various ligh七in七ensities.
Exp.1962,一㊦一20001ux,一圃一1000 1ux, 一A一 500, 一〇一 250 lux, 一N−
100 lux, 一A一 50 lux.
口▲
● oR▲
●雫φ !/ロ
o 一只:=一一一一一△一△
のように明るい所ほど良好であり,1 OOiux 以下の弱光下ではほとんど生育が停止し
だ.
芽胞体の発芽の有無や遅速には,このよ うに水温,比重,照度などが強く影響を及 ぼすが,このほかに換水,追撃液処方及び その濃度なども関係が深いので,それらに ついても実験し7c.まず換,水を1,2,4,
6日毎に行い対照の無貯水と比較しtcとこ ろ,芽胞体の発芽数はTable 12のように なり,塩水回数が多いほどよく発芽した.
また培養液処方でもTable 13のように芽 胞体の発芽数は大きく相違し,10日間の培 養で海水だけのものでは芽胞体はみられな かったが,窒素や燐を添加すると幾らか発 生し,さらに微量要素を加えるとその数は 多くなつだ.なお海水に添加する窒素,燐 の添加量を増減し7c実験結果では, Table 14のように芽胞体の発芽数はSchreiber処 方の標準添加量を1としナこ場合0.5,1で 最も多く,それ以上添加量が多くても少くてもその程度に応じて芽胞体i数は少なくなって
馬、る.
一般の種苗増養でもこのような実験結果にみられる傾向が観察されるが,培養条件のう ち水温が配偶体の再伸長,成熟,芽胞体の発芽に最も関係が深く,秋に水温が24℃前後に
:なると休眠状態の配偶体は各細胞より再び伸長し,その頃i換水して2,0001ux前後の明る
アオワカメの培養生態と養殖に関する研究 37
Table 12・Number of sporophy七es germina七ed by changing cu1七ure wa七er.
In七erval of
changing water every
day 2 days 4 days 6 days no change
著冒・・t・7
EこOc七一7
12.4 43.5
3.2 40,6
O.5 16.2
50
・
3 30・
Beginning da七e of the experi皿en七;Sep.28,1963.
い場所に移すと,24,23℃以下の水温で1〜2週間のうちに芽胞体が多i数みられるように なつ7C.しかし適水温になっても長く冠水しなかっ7Cり,低照度で培養しtcりすると,配 偶体の受精が行われない場合がある.また密植した配偶体や越夏時期に極度に不適な条件 下で培養したもの,或いは使用した合成繊維の品質によって,配偶体の休眠後の再発芽が 遅れたり,発芽しても枝が伸長するのみで受精しない場合があっ7C.そのような配偶体は 三水,施肥,送気などを行っ7cり,超音波で数分間刺戟しtaり,1〜2日間海に出して再 び室内で培養することなどにより受精を促進させることができた.
Table 13. Number of spoτophy七es germina七ed in some enriched cu1七ure wd七er.
Culture water
&r, Oc七.7
彦bOc七・17朗
Sea wa七er
o O.3
Sea wa七er
十N
0 1.6
!!
十P
O.5 3.3
ヲ
十N.P
4.7 8.1
〃 Ar七ificia1輯 十N。P.Pr瀞 sea wa七er
り乙貧∪47∩∠凶寸
16.7 25.4
Beginning da七e of七he experiment;Sep.28,1963.
ee Mod. Provasoli solution EDTA−Na2 6, FeC13.6H20 O.77, MnC12.4H20 O・8,
ZnC12 O.06, CoC12.6H20 O.02, CuSO .5H20 O・007 mg/e・
eeee Distilled water 1 e, NaCl 24, MgC12 .6H20 5, MgSO4 e 7H20 1, CaC12 . 2H20 2.5, NaHCO3 O.2, NaNO3 O.1, Na2HPO4.12H20 O・02, H3BO3 O・02 g/e, tur一 七her added Mod. Provasoli solu七ion.
Table 14. Number of sporophy七es germina七ed in Schreiber solu七io11七〇which were added differen七concen七ra七ion of Ni七rogen and Phosphorus source.
Concen・ヒra七ion of N, P
七 7
OC
L 7
OC
︵︒・自\︶
おρ8ロ乞
Sea wa七er
0 2.0
1/10N・P
O.1 2.2
1/2N・P
4.5 18.0
!!
NeP
3.7 14.5
2N・:P
1.9 8.4
5N・P
O.2 5.3
Beginning.da七e of七he experimen七;Sep.28.1963, N;NaNO30・19〃,
P ; Na2HPO4・12H20 O・Q2g/e
養 殖 室内で増養しtc芽胞体は10月下旬から11月下旬にかけて前述しだ方法で養殖 し7c.10ケ所(Fig,1)の養殖試験のうち佐世保,長崎市の各1ケ所では筏の流失により 養殖後期の結果が得られなかったが,その他の試験地においてワカメ養殖で好成績を得だ 場所でな,アオワカメでも例外なく良好な成績であった.
海に垂下し7c初期の芽胞体の生育経過は,長崎市地先のものについて2,3日毎に種糸 を取上げて観察した.発芽数はいずれも2〜5日までは多くなり,特に未受精卵の多いも のでは急に芽胞体が増加しアこが,1〜2週間後からは小さい芽が少くなる傾向がみられ
.た.しかしいずれの地点のものでも肉眼的にはかなり多数の芽胞体が生き残り,約20日後
38 長崎大学水産学部研究報告 第15号(1963)
には5 mm〜1cmに生長したが,その頃より立地条件の悪い地点(長崎市網場,福田)では 小さい芽が砥とんど消失し,1cm以上の幼芽も生育が止まりやや硬くなって流失するもの が多くなつfc。一・方良好な芽付きを養殖後期まで保った島原市三会,長崎市茂木,野母崎 町では,芽の消失は比較的に少なく,葉体長1m以上に達する頃でも親縄1m当りそれぞ れ平均122,220,147個体の生育がみられた.また種糸を海に出した直後に波浪によって 芽胞体が脱落することが考えられるが,種糸を強い波の当る岸壁に設置して観察したとこ ろ,1日後の調査ではほとんど脱落したものはみられず,また水道水を強く流して(約3 m/sec)実験し76のでも,5分後に脱離した芽胞体は5%以下で少なかった.海での芽 胞体の脱落:は種 苗の培養管理や芽胞体の生長の程度でも相違があるが,一般に休眠後短期 間に発生しfC卵の基部をなす支持細胞列の短いもので脱落が少なく,配偶体が再発芽して 長く伸長し7C枝の上で発育しだ芽胞体で脱落が多い傾向がみられた.
海での付着物の着生は,水温の高い早期に海に入れたものほど多く,また砂泥質の地盤 では水深が深い部分が多かっ.た.付着生物は場所によって幾らか相違しtcが,フサコケム シ,ヒメフサづケムシなどのコケムシ類が初期に多く着生し,そのほかホヤ類の担体やフ ジツボ類,カサネカγザシの着生もみられた.これらは着生面を覆うtcめ養i殖初期に被害 を与える場合があり,島原沿岸では冬になって棲管性端脚類が親縄を2〜3c皿の厚さで被 覆して小さい導体の生育を阻害し,ま 7clcm以上の葉体ヘワレカラ類がむ らがって食害するのが観察された.こ れらの付着動物のほかに珪藻類アオ ノリ類,シオミドロi類,セイヨウハバ ノリなどの海藻が着生したが,海藻の 付着が大きな被害を与えている例はみ られなかった.
海への垂下適期については10月下旬 から11月下旬まで10日越きに垂下して 試験したが,試験地の長崎市網場がア オワカメ,ワカメ共に試験成績が不良 であったため,明確な結果が得られな
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Nov. Dec. Jsn. r. eb. 1−lar. Apr.
Fig. 13. Water temperature of the culture grounds (1962−1963)・
一〇一 Shimabara 一一Te一 Nomo.
水温(:Fig・13)は200c前後であっ7c.
各試験地での養殖成績はかなり優劣があり,
かった.しかしその他の試験地の全般 的な養殖結果から判断して,11月上旬 に垂下したものが発生株数が多くその 後の生育も良好であり;その時期の海
発生株数が多く生長の良好でであった場 所は島原市三会,長崎市茂木,野母崎町で,島原市安中,長崎二神ノ島,深堀でもL応の 好成績を収めたが,長崎市網場,福田では発生株数が少なく生育も悪かった.この結果は ワカメでも同様であって,アオワカメ養殖の適地条件はワ:カメとよく類似しているようで ある.好成績を収め7c場所はいずれも潮流の速い所か,港湾の出口で肥沃な水の動きのあ る所で,外海の比較的貧栄養で水流が停滞する場所では不成績に終った.なお普通の垂下 養殖で不良であった長崎市網場において,竹に種糸を巻き付ける方法で養殖し7ところ,
アオワカメの培養生態と養殖に関する研究 39
竹では幾らか抗流性があり相対的な流 水が速いtcめか,芽付き生育共に順調 であった.
葉体の生長経過は,.調査回数が比較 的に多かった島原市三会(11月7日垂 下),長崎市茂木(11月22日垂下),野 母崎町(11月21日垂下)の3ケ所のも のについて最:大生紬縞(上位約10%)
の葉体長の平均値としてFig・14に示
:し7a.いずれも1月までの生長はおそ くワカメと比べて大差はなかったが,
その後はアオワ多軸が急に伸びて特 に適期に垂下し海況もよかっ7島原 のものでは2月11日に約1m,3月26
日に2.8m,4月16日に3.3mに達し,
その時の最大葉体長は4.05mであり,
長崎市茂木,野母崎町のものは垂下時 期が遅く,末枯期が早く来たので葉体 長はあまり長くならなかったが,それ でも生育良好なものは2.5m以上に達
した.
養殖水深による生長の差は,野母崎 町のもので2月19日に測定したが,こ こは透明度5〜7の海であるにかかわ らず,T4ble Z5のように浅い所ほど生 長が良好であり,ワカメでも同じ傾向 がみられた.
ムーm
3
2
調ρbo信ΦH唱鶴︒ぬ自
1
o Nov. Dec. Jan. Peb. Mar.
Date
Fig.14. Grow七h of sporophy七es of Un4aria Peterseniana and U・ Pinnatifiaa
cu1七ured in七he sea,.
Culture period,; 1962t v1963, 一 U. Peter−
seniana, ・・・… U. Pinnatifida 一e・.・・ Shima−
bara,一團…Mogi,一血…Nomo・
禽!A
ノノ
ITI.F:A m.p.
しかし養殖後期の3月以降は浅い所ほど末枯れするものが多かっ7c.
アオワカメの形態は,「わにうらこんぶ」「ながわかめ」などの俗名があるように一般に 細長く,この養殖試験で発生したものも葉体長約10c皿までの葉形はワカメと似ているが,
(Plate II, A)生長するにしたがって狭長となった(Plate皿,:B).葉体長1m前後の形 態を,葉体長を100とした場合の各部の長さの比率と共に模式的に示すとFig・14のように なり,茎が長く葉体の巾が狭いのが注目される.Fig・15は葉体重量,葉巾,茎長,茎重 量などを葉体長の各段階の平均値で示し7aもので, Fig・16は葉体長と重量の関係を野母 崎町で養殖しtcものでワカメと共に示したものであり,同じ葉体長のものではアオワカメ がワカメよりかなり軽くなっている.この野母崎町の結果はワカメが末枯れして葉巾が広
Tab亙e 15. Grow七h of sporophy七es a七differen七dep七h in七he sea.
Dep七h(田) 1 O.2tvO.5 O.8一一1.2 1.4 vl,6
s U. Peterseniana
$) σ『・力伽ati.tiaaぎ曾
156 88
123 84
116 73
2.7 一3.2
りQOO75
Cu1七ure ground;Nomo, hanging da七e;Nov.22,1962, measuring
date ; Feb・ 19, 1963・
40 長崎大宙水産学部研究報告 第15号(1963)
Fig. 15. Sdhema of fronds of Undavia Peterseni−
ana and length−ratio of various parts.
Figure shows the average of 20 fronds o± . 80・一v 120㎝,…;minimum and maximum frond wid七h.
40
ユ50
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20
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50
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Ne [.K /
尋
影回
いものが多かっだため平均した値としては 受取れないようで,島原, 茂木の養殖例を 含めると,』般に1〜2mの葉体長では同 長のワカメの1/2〜2/3の重量となつ7c.し かし島原市で養殖しだアオワカメの葉体長
と重量の桐関々係はFig・17のようにな り,葉体長が長くなると1個体の重量も重 くなり0.5kg以上に達した,ものも多かっ ta.収量は3月下旬に調査し7cところ島原 では親縄1m当りの生重量5〜7kg,茂木,
野母崎町では3〜3.5kgであっだ.なお食 品価値としての品質は,各地で養殖したも のでワカメと共に試食しtcが,いずれもア オワカメが遜かく美味であった.
養殖アオワカメの一部は流失するま.で海 に残して,その後の経過を観察した.その 結果では葉体が21n以上に伸長し、だもの で根が親縄より離れて脱落するのがみられ たが,ワカメではこのような例は稀であっ た.また葉先が黄自色に変って部分的に枯
︒ 20 40/r/」iji)e/ si...,,.>ttior//
。夢。1些箇 一〇一
4::》峯
の ゴ/// ︐// /. /
0 20e
O 50 100 150 ,
cm Fig・16・Rations of some parts to frond leng七h in various s七ages「of Undaria Peterseniana, cultured in the sea.