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特発性側轡症患者における片脚立位時の重心動揺

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Academic year: 2021

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(1)

    ヌ       

横山 茂樹   大城 昌平   井口  茂   松坂 誠磨

要旨特発性側轡症患者の平衡機能を把握する目的で,本疾患患者20例を対象に 重心動揺を測定した.この結果, 健常者と比較して重心動揺測定値は増大していた.

また轡曲パターン別にみると,Double curve群における上位轡曲凹一下位轡曲凸側 の片脚立位時において,上位轡曲度ゐ影響を受けていることが窺えた.これらのこと から,特発性側轡症患者の片脚立位時の重心動揺には脳幹部平衡中枢系の異常ととも に脊柱の構築学的障害が関与していると推察された.

      長崎大医療技短大紀7:153−158,1993

騒ey wo越s:特発性側轡症,片脚立位,重心動揺

【はじめに】

 脊柱側轡症は脊柱の構成し,これを支持す る機構のいずれかに障害を生じて発症すると いわれている.中でも脊柱側轡症の3/4を

越える特発性側轡症(ldiopathic Scoliosis:

以下ISと略す)は成因もはっきりせず,思 春期に多く発症する.この疾患の臨床像の中 で山田1)2),山本3)らは高率に姿勢平衡障害 を認めると報告している.また田島4)らや山 本3)は,側轡症の運動療法として姿勢の矯正 や躯幹筋強化に加え,姿勢平衡反応の改善の 必要性を述べている.

 これらのことを踏まえ,今回我々はIS患 者の運動能力の一指標として,片脚立位時の 重心動揺評価を試み,平衡機能の特性にっい て検討した.

【対象と方法1

1.対象

 対象はISの診断を受けた20例(男子1例,

女子19例,平均年齢13.3±1.1歳)とした.

これをX線所見から轡曲パターンにより Simple curve群(以下S群)11例とDouble curve群(以下D群)9例の2群に分けた

(表1)。

 コントロー一ル群は健常者31例(男子13例,・

女子18例,平均年齢20.1±4.9歳)とした.

R.測定方法

 測定肢位は,開眼にて上肢を腕組みし,片 脚立位を保持させた.この時2m前方の壁に 目印(直径2cmの黒点)をっけ注視させた,

重心軌跡の測定には,重心動揺計(アニマ社 製G−5500)を用いた.測定時間は1分問,

取込周期を50msとして,左右それぞれ3回

長崎大学医学部附属病院理学療法部

長崎大学医療技術短期大学部理学療法学科

(2)

表1 側轡症患者のタイプ別内訳:S群とD群における轡曲パターン別の症例数を示す.

S群: Simple curve群

 左凸型  右凸型

11例 :轡曲度18.6±了.了。

  4例   7例

D群: Double curve群

右凹一左凸型 左凹一右凸型

9例 :胸椎轡曲14.6±4.3。

    腰椎轡曲12.G±了.1。

  8例   1例

噸 (

コンピューター

 2m

重心動揺計

図1測定方法

ずっ測定した(図1).

 得られたデータから評価指標として①重心 動揺面積(以下REC)②重心動揺集中面積

(以下SD)③重心動揺実効値(以下RMS)

を算出した.

皿.検討方法

 健常者の左右片脚立位時の重心動揺とS群 の凸凹側とD群の凹一凸・凸一凹側片脚立

位において比較した.

 またS群において轡曲の存在する高さの影 響を検討するため,頚椎〜胸椎レベルの上位 轡曲群6例と胸腰椎移行部〜腰椎レベルの下 位轡曲群5例に分けた.また轡曲度にっいて

表2 片脚立位時の重心動揺測定値:健常者とS群,D群を示す.

健常者 S群凸側 S群凹側 D群凸一凹側 D群凹一凸側

R E C

S D

尺M S

11.3±3.6

110。3±30.4

 8.8±1.4

15.0±6。6纏

137.1±53.了零

 9.9±2.1纏

13.0±4コ‡

128.7±40.1審

 9.了±1.4継

 14.1±5.0纏

127.3±33.3纏

 9.5±1.5蓼

 13,9±4.6韓

128.2±30.4轟

 9.5±1.4零

‡: p<0.05 ‡‡:P<0.01

(3)

Cobb法にて15。以下の軽度群6例と16。以 上の重度群5例に分けて轡曲度の影響を検討

した。

 D群では上位轡曲度が,Cobb法にて10。

以下の軽度群2例,11。以上15。以下の中等 度群4例,16。以上の重度群3例に分けて検 討した.また下位轡曲度が10。以下の軽度群 3例,11。以上15。以下の中等度群2例,16

。以上の重度群4例に分けて検討した.

 またデータの処理について,2群の差の検 定にはt一検定を用い,危険率P<0.05にて 有意とした.

【結  果】

亙.健常者との比較

 健常者,IS患者の片脚立位時における重 心動揺の各評価指標の平均値を(表2)に示

す、

 S群,D群ともに,コントロール群より全 ての指標において有意に増大していた.

H.S群における影響

 轡曲の高さの相違による各群では轡曲凸側 凹側の片脚立位時ともに有意差はみられなかっ た(図2).また轡曲度の影響にっいて,轡 曲凹側のRMSが有意に増大していたが,そ の他には有意差は認められなかった(図3).

皿.D群における影響

 上位轡曲度における各群では上位轡曲凸一 下位轡曲凹側片脚立位にて有意な差はみられ なかった.しかし上位凹一下位凸側では,各 評価指標において軽度群から重度群となるに 従って有意に増大しており(図4),轡曲度

と各指標の問には正の相関も認められた(p

<0.01).その一例としてRMSと轡曲度の 相関を(図5)に示す.

 下位轡曲度における各群では上位凹一下位 凸側にて軽度群と中等度群の間で各評価指標 は有意に増大していたが,この他では有意差 は認められなかった(図6).

翻上位群

E二1下位群

25

20

15

10

5

0

cm2

凸側片脚   凹側片脚

立位    立位

 REC

200

150

100

50

0

㎜2

凸側片脚   凹側片脚

立位    立位

  SD

図2 S群における轡曲の高さの髭響 15

10

5

o

凸側片脚 立位

凹側片脚 立位

:RM:S

(4)

園軽度群 團重度群

25

20

15

10 cm2

5臼

0

㎜2

250

200

150

100

50

凸側片脚   凹側片脚  立位     立位

R E C

0

凸側片脚  立位

S D

15

10

5

0

凹側片脚

立位

凸側片脚   凹側片脚  立位     立位

RM S

図3 S群における轡曲度の影響

   ※※

cm2r一

25

20

15

10

5 0

※﹃

上位凹下位凸  上位凸下位凹  側立位     側立位

   R E C

mm2一翻

200 n

150

100

50

0

図4

1

上位凹下位凸  上位凸下位凹  側立位     側立位

    S D

D群における上位轡曲度の影響

※※ Pく0。01

※pく0.05

   ※※

鷲「一

10

5

0

團軽度群

霞國中等度群

懸重度群

i

鰹 x

上位凹下位凸  上位凸下位凹

 側立位     側立位

   RM S

【考  察】

 はじめにも述べたように山田らはIS疾患 において脳幹部平衡機能障害の関与を報告し

ている.今回の結果からもIS患者では轡曲 凸側凹側に関係なく片脚立位時の重心動揺は 増大しており,平衡機能障害が関与している

と推測された.

(5)

㍗叫 nニ2了 r=0.713

10

6

健 常 者

   軽度群 中等度群 重度群 図5 D群の上位轡曲度と評価指標(RMS)

       との関係

禦君 是中 患左 者凸  ) 立位

図7

  ※

25 20 15 10

上位凹下位凸  上位凸下位凹  側立位     側立位

R E C

   ※ 200

適50

100

50

右片脚立位  左片脚立位      健常者とD群患者との比較

D群は上位右凸一下位左凸蟹曲である,矢印は脊柱の動きを示す,

       團軽度群

      ※圃。05   麗 中等度群

       懸重度群         ※

上位凹下位凸

 側立位 上位凸下位凹 側立位 15

10

      S D

図6 D群における下位轡曲度の影響

上位凹下位凸   上位凸下位凹

 側立位     側立位

RM S

 D群の上位凹一下位凸側片脚立位において 上位轡曲度が増加するに従い,重心動揺測定 値は増大し,上位轡曲度と重心動揺の各評価 指標の間に正の相関も認められた.このこと からD群では上位轡曲の影響を受けている

と思われる.この点にっいて,(図7)は上 段に健常者,下段に上位右凸一下位左凸のD 群患者の後方からみたシェーマを示す.健常 者の右片脚立位では,上段中央のように,骨 盤は左側回旋し,脊柱は上位右凸一下位左凸 となる.また左片脚立位もは反対に骨盤は右 側回旋し,脊柱は上位左凸一下位右凸となる.

IS患者の右片脚立位では,側轡轡曲の方向 が健常群の轡曲方向と一致する.これに対し て,左片脚立位では側轡が右凸一左凸となる ため健常者の片脚立位と反対の轡曲パターン になると考えられる.このため腰椎凸側の片 脚立位では側轡を矯正しながら姿勢を保持し ているので,重心動揺が大きくなったと思わ れる.これによりD群の上位凹一下位凸側 の重心動揺は有意に増大し,特に上位轡曲度 が大きく影響していると考えられる.

 以上のことからIS患者の重心動揺は脳幹

部の平衡機能障害による影響とともにD群

(6)

においては,上位轡曲度といった構築学的障 害の影響も受けていたことが窺えた.

 S群にっいては今回の結果では構築学的障 害の影響を受けていなかった.これは,側轡 の要素として①凸側への椎体回旋とこれに伴 う②凸側の肋骨隆起,及び③脊柱の側屈④前 蛮変形から成っセおり,これらの変形がS群 よりD群の方が複雑になっていることから,

S群に有意な差がなかったものと考えられる.

【おわりに】

 今回,IS患者における片脚立位時の重心 動揺測定を試みた.この結果から,平衡機能 障害の影響とD群における上位轡曲度の影

響が示唆された.

K参考・引用文献】

1)山田憲吾,山本博司:脊柱側轡症と体平  衡機能,臨整外,3:470−478,1986.

2)山田憲吾,山本博司:脊柱側轡症におけ   る体平衡に関わる神経学的考察,臨整外,

  3 :479−486,1986.

3)山本博司:脊柱側轡症の姿勢調整,総合

  リノ、, 13:117−123,1985.

4)田島直也,出口義宏,川野啓一郎:側轡  症のリハビリテーション,整形外科  MOOKNo55,渡辺英夫編,金原出版,

 東京,122−131,1988。

5)石田義人,野寄靖弘:側轡症,運動療法

  ガィド,宮下充正,武藤芳照編,日本馨

 事新報社,東京,152−160,1990.

参照

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