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上越教育大学特別支援教育実践研究センター紀要,第17巻,49-50,平成23年3月
1 自作曲「トンタンシャン」
障害のある子どもたちも楽器を演奏することは大好きで、楽 器を見つけると手を出して音を出そうとする。なかでも太鼓な どの打楽器や鈴などのふって音を出す楽器が好きである。歌唱 教材のなかにも、楽器が登場する曲がたくさんある。「あわて んぼうのサンタクロース」「大きなたいこ」「山のおんがくか」
「たんぶりんのわ」「へい!たんぶりん」「おとのマーチ」「みん なおんがくか」などと数多くある。
「大きなたいこ」では、大きな太鼓(強)と小さな太鼓(弱)
を打ち分けることができる教材となっているが、複数の楽器を 使って分担奏をしたり、強弱をつけて演奏したりする曲は少な い。そこで、太鼓などの打楽器と鈴などのふって音を出す楽器 を分担して、交互に演奏したり、強弱をつけて演奏することが できる自作曲を開発した。
2 自作曲「トンタンシャン」の概要
自作曲「トンタンシャン」は、4/4拍子、ハ長調、12小節 の短い曲である。この曲では、1小節ごとに最初は打楽器で、
次に鈴で分担して交互に演奏できるように構成した。さらに、
最初の2小節は強く、次の2小節は弱く演奏するようにし、最 後に鈴を上から下に振りおろしながら音を出す奏法を加え、変 化をつけた。
最初に鳴らす打楽器は、ウッドブロックを想定して、歌詞を
「トンタン」とし、後に続く鈴の歌詞は「シャンシャンシャ ン」とした。「トンタントンタン」「シャンシャンシャン」の繰 り返しである。鈴を振りおろすところでの歌詞は「シャカシャ カシャカシャカ」とした。
また、鈴を鳴らす小節では、左手で鈴を持ち、右手を握っ て、左手のくるぶしの部分をたたくような奏法を取り、四分音 を3拍たたき、1拍休むパターンとしたが、メロディとリズム は付点と八分音が入ったものとし、楽しく弾んだ気持ちでたた けるようにした。
3 指導上の留意点
○ 最初に、「トンタンシャン」をピアノ演奏で児童に聞いて もらい、曲の構成や雰囲気を感じ取ってもらうようにする。
その際、児童の前にいる教師は、ウッドブロックをたたく動 作や鈴を鳴らす動作をしてみせる。また、強く鳴らすときに は大きな動作で、弱く鳴らすときには小さな動作で表現して みせる。
○ 次に、教員2人で楽器を分担し、実際に「トンタンシャ ン」に合わせて楽器を演奏してみせる。児童にはあらかじ め、「どっちの楽器をやってみたいか聞くからね」と伝えて おくようにする。そして、演奏後、どっちの楽器をやってみ たいか聞き、2つの楽器ごとのグループに分ける。
○ 2つの楽器群は向かい合って並び、お互いの演奏を見るこ とができる位置取りにする。椅子に座って演奏することもで きるが、位置を示すマット等を用意し、立って演奏するよう にする。
○ 両方の楽器とも、音を出さないときには自分の胸に当て て、音を出さないことがわかるようにする。
○ 曲に合わせて演奏する前に、それぞれの楽器の奏法につい て練習しておく。示範する先生は、児童と対面したときには 左右を逆にして楽器を持ち、演奏するようにする。ウッドブ ロックは、左手で取っ手を持ち、右手でばちを持って左右交 互にたたく楽器である。まずは「トンタントンタン」とたた く練習をする。鈴は、左手で鈴を持ち、右手を握って、左 手のくるぶしの部分をたたいて、「シャンシャンシャン(休 み)」とたたく練習と、鈴を持った左手を高く上げ、「シャカ シャカシャカシャカ」と振って音を出しながらおろす練習を する。
○ 次に曲に合わせて交替で楽器を演奏することを伝え、最初 は強く、2回目は弱く演奏するように伝える。そして、ピア ノ伴奏に合わせて楽器を演奏する。示範する先生は、前奏で 両手を胸に当て、楽器を鳴らさないことを伝える。2小節の 前奏が終わりそうなところで、ウッドブロック群に向きを 変え、大きな動作でウッドブロックを演奏するように指揮 し、1小節の終わりでウッドブロックの演奏を右手で閉じて みせ、鈴群に向き直り、鈴を演奏する動作を示し、3拍こぶ しを大きくたたいてみせ、4拍目で右手で演奏を閉じてみせ る。次の2小節は小さな動作で弱い音になるように児童に示 す。
「シャカシャカシャカシャカ」の部分は、鈴群に向かって 大きく右手を高くあげて、振りながらおろしていき、再度大 きく右手を高くあげて、振りながらおろす動作を示す。
再度、ウッドブロック群に向きを変え、演奏操作を見せ、
最後は鈴群に向かって演奏動作をみせて、4拍目で閉じる。
最後はまた、右手を胸に当て、演奏が終わったことと音を出 さないことを伝える。
強弱と楽器による打ち分けを練習するための自作曲
「トンタンシャン」
齋 藤 一 雄*
教材・教具の紹介
* 上越教育大学学校教育研究科臨床・健康教育学系
― ―50 齋 藤 一 雄
4 期待される教育的効果
まずは、ふだん楽器に触れて楽しむことを十分に行い、「ト ンタンシャン」を演奏することで、楽器の扱い方、音の出し方 や音を出さないことの重要性を感じたり、理解したりすること ができるのではないかと考える。合わせて、楽器の持ち方や演 奏のしかたを学び、左右の手の使い方に慣れるようになる。
また、2つの楽器群に分けることによって、楽器の選択や役 割取得、掛け合いの妙や楽しさを感じ取ることができる。言葉 と動作を結びつけることもでき、演奏しない小節では、演奏し ないようにコントロールすることもできるようになる。
このような短い曲で、2つの楽器を用い、役割を分担して演 奏することによって、より大きな曲を合奏するときにも、生か
すことができるようになるのではないかと考える。
5 実践の場面
対象は、特別支援学校(知的障害)小学部高学年の児童や中 学部の生徒、小学校特別支援学級の児童で、ウッドブロックや 鈴などの楽器に興味があり、やってみたいと思える子どもたち がよい。また、役割の交代や掛け合いがわかりそうな段階の子 どもたちで、課題にそって自分をコントロールすることが必要 な子どもたちを対象とするとよい。
学級活動として展開してもよいだろうし、音楽の時間に合奏 に入り基礎的な練習として取り上げるのもよいのではないかと 考える。